特許第6482377号(P6482377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6482377可溶性材料層の溶解除去方法、部材の製造方法、電子部品用ソケット、および電気・電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482377
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】可溶性材料層の溶解除去方法、部材の製造方法、電子部品用ソケット、および電気・電子機器
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/02 20060101AFI20190304BHJP
   H01R 13/6598 20110101ALI20190304BHJP
【FI】
   C23F1/02
   H01R13/6598
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-100518(P2015-100518)
(22)【出願日】2015年5月15日
(65)【公開番号】特開2016-216765(P2016-216765A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】管野 広之
(72)【発明者】
【氏名】小池 正祐
【審査官】 越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−228190(JP,A)
【文献】 特開昭55−150297(JP,A)
【文献】 特開平05−140758(JP,A)
【文献】 特開2010−065836(JP,A)
【文献】 実開昭59−153377(JP,U)
【文献】 特開2004−006604(JP,A)
【文献】 特開平10−247714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/00− 1/04
C25F 7/00
C25D 5/00− 5/56
H01R 13/56−13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に形成された可溶性材料層を溶解除去する方法であって、
前記基材の表面は、前記可溶性材料層を形成すべき領域の周縁に沿う環状段差により画成された凹部を備え、前記凹部内及び前記環状段差の上面にまたがって前記可溶性材料層が形成されており、
前記可溶性材料層の前記凹部内に形成された部分に弾性部材を当接させ、前記環状段差の上面と側面とが交差する角部が全体にわたって前記弾性部材に食い込みかつ前記環状段差の上面にある前記可溶性材料層と前記弾性部材とが非接触となるように、前記弾性部材を押圧して変形させ、この弾性部材の変形形状を維持しつつ前記可溶性材料層を溶解可能な液体に浸漬させることを特徴とする可溶性材料層の溶解除去方法。
【請求項2】
前記弾性部材と異なる硬さを有する他の弾性部材と前記弾性部材との間に前記基材を挟んだ状態で、前記他の弾性部材に向けて前記弾性部材を相対的に押圧して変形させる、請求項1に記載の可溶性材料層の溶解除去方法。
【請求項3】
前記弾性部材が、前記他の弾性部材の硬さより高い硬さを有する、請求項2に記載の可溶性材料層の溶解除去方法。
【請求項4】
前記可溶性材料層はめっき層を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の部材の製造方法。
【請求項5】
基材と、前記基材の表面の一部に形成された可溶性材料層とを備える部材の製造方法であって、
前記基板の表面に前記可溶性材料層を形成するステップと、
請求項1から4のいずれかに記載される溶解除去方法を含んで、前記可溶性材料層を部分的に除去するステップと、
を備えることを特徴とする部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面に形成された可溶性材料層の溶解除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂基材へのめっき処理方法として、(1)樹脂基材の表面をエッチング処理する工程と、(2)当該エッチング処理後の処理表面に金属触媒を吸着させる触媒吸着処理を行う工程と、(3)当該触媒吸着処理後の処理表面に、無電解めっき処理を行う工程と、(4)当該無電解めっき処理後の処理表面に、金属めっき処理を行う工程と、を含むめっき処理方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−031306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、プリント基板にICを実装するためのICソケットなどコネクタにおいては、合成樹脂製のハウジング表面に金属めっき層を形成することにより電磁シールド機能を持たせて、端子間のクロストークノイズなどを抑制している。このようなハウジングは、短絡などの不具合を回避するために金属めっき層を形成すべき箇所が規制されている。そのため、ハウジング表面の広い範囲に金属めっき層を形成したのち、エッチング処理により不要な部分を溶解除去することで所望の箇所に金属めっき層を設けている。
【0005】
上記エッチング処理では、例えば、金属めっき層の必要な部分にシリコーンゴムなどの弾性部材を押し当てて保護(マスク)することにより、保護されていない不要な部分をエッチング液で溶解除去する。しかしながら、金属めっきの必要な部分と不要な部分との境界において、金属めっき層の除去が不十分となってしまうおそれがあり、金属めっき層の形成精度に問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、基材の表面に形成された可溶性材料層を精度よく溶解除去することができる方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記の方法を備える部材の製造方法、上記の製造方法により製造された部材を備える電子部品用ソケット、および上記の電子部品用ソケットを備える電気・電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、一態様として、基材の表面に形成された可溶性材料層を溶解除去する方法であって、前記基材の表面は、前記可溶性材料層を形成すべき領域の周縁に沿う環状段差により画成された凹部を備え、前記凹部内及び前記環状段差の上面にまたがって前記可溶性材料層が形成されており、前記可溶性材料層の前記領域内に形成された部分に弾性部材を当接させ、前記環状段差の上面と側面とが交差する角部が全体にわたって前記弾性部材に食い込みかつ前記環状段差の上面にある前記可溶性材料層と前記弾性部材とが非接触となるように、前記弾性部材を押圧して変形させ、この弾性部材の変形形状を維持しつつ前記可溶性材料層を溶解可能な液体に浸漬させることを特徴とする可溶性材料層の溶解除去方法を提供する。
【0008】
上記可溶性材料層の溶解除去方法によれば、環状段差の角部が全体にわたって弾性部材に食い込むことにより、基材の表面における可溶性材料層を形成すべき領域を密閉しつつ環状段差の上面を露出することができるので、液体に浸漬したときに環状段差の内側に液体が浸入することを抑制しつつ環状段差の上面にある可溶性材料層を溶解することができる。
【0009】
上記可溶性材料層の溶解除去方法は、前記弾性部材と異なる硬さを有する他の弾性部材と前記弾性部材との間に前記基材を挟んだ状態で、前記他の弾性部材に向けて前記弾性部材を相対的に押圧して変形させることが好ましい。このようにすることで、弾性部材の硬さと他の弾性部材の硬さとを同一にした構成に比べて、弾性部材を精度よく変形させることができる。
【0010】
上記可溶性材料層の溶解除去方法は、前記弾性部材が、前記他の弾性部材の硬さより高い硬さを有していてもよい。例えば、基材の表面における他の弾性部材が接する箇所にも可溶性材料層が形成されている場合に、弾性部材が他の弾性部材の硬さより低い硬さを有していると、弾性部材が他の弾性部材より大きく変形することにより押圧力が吸収されてしまい他の弾性部材を基材の表面に十分に密着させることができず、他の弾性部材と基材の表面との間に液体が浸入して必要以上に可溶性材料層を除去してしまうおそれがある。そこで、弾性部材が、他の弾性部材の硬さより高い硬さを有することで、弾性部材が他の弾性部材より大きく変形することを抑制することができる。なお、本明細書において、弾性部材の硬さは国際ゴム硬さに基づいて定義されるものとする。
【0011】
上記可溶性材料層はめっき層を含んでもよい。めっき層は、無電解めっき処理により形成されためっき層であってもよいし、電気めっき処理により形成されためっき層であってもよい。
【0012】
本発明は、別の一態様として、基材と、前記基材の表面の一部に形成された可溶性材料層とを備える部材の製造方法であって、前記基材の表面に前記可溶性材料層を形成するステップと、上記の本発明に係る溶解除去方法を含んで、前記可溶性材料層を部分的に除去するステップと、を備えることを特徴とする部材の製造方法を提供する。
【0013】
本発明は、また別の一態様として、上記の本発明に係る製造方法により製造された部材を備える電子部品用ソケットを提供する。
【0014】
本発明は、さらに別の一態様として、上記の本発明に係る電子部品用ソケットを備える電気・電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基材の表面に形成された可溶性材料層を精度よく溶解除去することができる。また、本発明により、基材と、当該基材の表面の一部に形成された可溶性材料とを備える部材の製造方法、上記の製造方法により製造された部材を備える電子部品用ソケット、および上記の電子部品用ソケットを備える電気・電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態にかかる可溶性材料層の溶解除去方法を用いて作製されたコネクタハウジングの平面図である。
図2図1のコネクタハウジングの底面図である。
図3図1のコネクタハウジングの模式的な断面図である。
図4】ハウジング本体の表面に無電解ニッケルめっき層が形成された状態を模式的に示す断面図である。
図5】ハウジング本体の表面に形成された無電解ニッケルめっき層に弾性部材が当接された状態を模式的に示す断面図である。
図6】弾性部材を無電解ニッケルめっき層に押しつけている状態を模式的に示す断面図である。
図7図6における環状突部近傍を模式的に示す拡大断面図である。
図8】ハウジング本体の表面に第1めっき層が形成された状態を模式的に示す断面図である。
図9】ハウジング本体の上面における第1めっき層のはみ出し量を計測する箇所を示す平面図である。
図10】ハウジング本体の表面における第1めっき層のはみ出し量を計測する箇所を示す他の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。また、「上下左右」を示す記載は各部材間の相対的な位置関係を説明するために便宜的に用いているものであり、絶対的な位置関係を示すものではない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態にかかる可溶性材料層の溶解除去方法を用いて作製されたコネクタハウジングの平面図である。図2は、図1のコネクタハウジングの底面図である。図3は、図1のコネクタハウジングの模式的な断面図である。
【0019】
図1図2に示すように、コネクタハウジング10は、平面視正方形の平板状に形成された合成樹脂製のハウジング本体11を有しており、ハウジング本体11にはめっき層20が設けられている。
【0020】
ハウジング本体11は、上面11aから下面11bに貫通する矩形状の開口12が中央部に設けられ、この開口12を囲むように多数の端子挿通孔13が設けられている。多数の端子挿通孔13は、図示左右に分かれた2つの挿通孔群14、15を構成している。ハウジング本体11の上面11aには、これら2つの挿通孔群14、15をそれぞれ囲む環状段差16、17により画成された凹部36、37が形成されている。ハウジング本体11の上面11a側の四隅には、当該上面11aに載置されるICの位置決め突部が設けられている。ハウジング本体11の下面11bには、複数の肉抜き穴18が設けられている。
【0021】
めっき層20は、図3に示すように、ハウジング本体11の表面に重なる無電解ニッケルめっき層からなる第1めっき層21と、第1めっき層21に重なる無電解金めっき層からなる第2めっき層22と、を有している。
【0022】
めっき層20は、具体的には、ハウジング本体11の上面11aにおける環状段差16、17により画成された凹部36、37の内側の領域R1、R2、ハウジング本体11の下面11bにおける多数の端子挿通孔13を内側に含む所定の領域R3、及び、多数の端子挿通孔13の内周面に設けられている。即ち、領域R1、R2、R3は、めっき層20を形成すべき領域である。なお、図3図8は、断面を模式的に示すものであり、多数の端子挿通孔13の記載については省略している。
【0023】
次に、ハウジング本体11の表面にめっき層20を形成する工程について、図4図8を参照して説明する。
【0024】
図4は、ハウジング本体の表面に無電解ニッケルめっき層が形成された状態を模式的に示す断面図である。図5は、ハウジング本体の表面に形成された無電解ニッケルめっき層に弾性部材が当接された状態を模式的に示す断面図である。図6は、弾性部材を無電解ニッケルめっき層に押しつけている状態を模式的に示す断面図である。図7は、図6における環状突部近傍を模式的に示す拡大断面図である。図8は、ハウジング本体の表面に第1めっき層が形成された状態を模式的に示す断面図である。
【0025】
最初に、ハウジング本体11の上面11a、下面11b及び多数の端子挿通孔13の内周面を含む表面全体に無電解ニッケルめっき層L1を形成する。具体的には、ハウジング本体11の表面を脱脂したのち、エッチング液中に浸してハウジング本体11の表面を荒らす。次に、ハウジング本体11の表面にパラジウムなどの触媒を付着させて、そのあと、無電解ニッケルめっき液中に浸すことで、図4に示すように、無電解ニッケルめっき層L1を形成する。具体的には、凹部36、37内の領域R1、R2及び環状段差16、17の上面にまたがって、可溶性材料層としての無電解ニッケルめっき層L1が形成される。
【0026】
次に、無電解ニッケルめっき層L1の不要な部分を溶解除去して、第1めっき層21を形成する。具体的には、図5に示すように、無電解ニッケルめっき層L1におけるハウジング本体11の上面11aの上記領域R1、R2に形成された部分に第1弾性部材51を当接させ、ハウジング本体11の下面11bの上記領域R2に形成された部分に第2弾性部材52を当接させて、第1弾性部材51及び第2弾性部材52を、一対の金属製の板部材53、54で挟む。第1弾性部材51の上記領域R1、R2に接する部分の平面視形状は、上記領域R1、R2よりひとまわり小さく形成されており、これにより、環状段差16、17の全周にわたって第1弾性部材51と間隔(例えば、0.1mm)があいている。第1弾性部材51は、第2弾性部材52の硬さより高い硬さを有しており、本実施形態では、第1弾性部材51の硬さを50とし、第2弾性部材52の硬さを30としている。
【0027】
次に、板部材53を板部材54に向けて相対的に押圧して、第1弾性部材51及び第2弾性部材52を変形させる。具体的には、図6に示すように、板部材53、54の間を狭めることにより、第1弾性部材51及び第2弾性部材52を図示上下方向に潰し、これら第1弾性部材51及び第2弾性部材52を上記領域R1、R2及びR3に形成された無電解ニッケルめっき層L1に密着させる。
【0028】
このとき、図7に示すように、上記領域R1において、第1弾性部材51が図示上下方向に潰れることで図示左右方向に膨らみ、環状段差16の上面16aと側面16bとが交差する角部16cが全体にわたって無電解ニッケルめっき層L1を間に挟んで第1弾性部材51に食い込みかつ環状段差16の上面16aにある無電解ニッケルめっき層L1と第1弾性部材51とが非接触となるように、第1弾性部材51を押圧して変形させる。これにより、環状段差16の角部16cより内側の部分、すなわち、凹部36内の領域R1が第1弾性部材51により密封され、環状段差16の上面16aにある無電解ニッケルめっき層L1が露出された状態となる。上記領域R2においても同様である。また、第2弾性部材52も図示上下方向に潰れるように変形し上記領域R3に押しつけられる。
【0029】
そして、第1弾性部材51及び第2弾性部材52の変形形状を保ったまま、無電解ニッケルめっき層L1を溶解可能な溶解液にハウジング本体11を浸漬させる。これにより、無電解ニッケルめっき層L1の露出している部分が溶解液により溶解して除去されて、図8に示すように、領域R1、領域R2および領域R3に第1めっき層21が形成される。
【0030】
最後に、無電解金めっき液中に浸すことで、第1めっき層21の上に無電解金めっき層からなる第2めっき層22を形成して、図3に示すコネクタハウジング10が完成する。
【0031】
上述した本実施形態によれば、無電解ニッケルめっき層L1における凹部36内の領域R1に形成された部分に第1弾性部材51を当接させ、環状段差16の上面16aと側面16bとが交差する角部16cが全体にわたって第1弾性部材51に食い込みかつ環状段差16の上面16aにある無電解ニッケルめっき層L1と第1弾性部材51とが非接触となるように、第1弾性部材51を押圧して変形させる。そして、この第1弾性部材51の変形形状を維持しつつ無電解ニッケルめっき層L1を溶解可能な溶解液に浸漬させる。このようにしたことから、環状段差16の角部16cが全体にわたって第1弾性部材51に食い込むことにより、上記領域R1を密閉しつつ環状段差16の上面16aを露出することができるので、溶解液に浸漬したときに環状段差16の内側、すなわち、凹部36内の領域R1に溶解液が浸入することを抑制しつつ、環状段差16の上面16aにある無電解ニッケルめっき層L1を溶解することができる。上記領域R2内においても同様である。
【0032】
また、第1弾性部材51と異なる硬さを有する第2弾性部材52と第1弾性部材51との間に無電解ニッケルめっき層L1が形成されたハウジング本体11を挟んだ状態で、第2弾性部材52に向けて第1弾性部材51を相対的に押圧して変形させる。このようにすることで、第1弾性部材51の硬さと第2弾性部材52の硬さとを同一にした構成に比べて、第1弾性部材51を精度よく変形させることができる。
【0033】
また、第1弾性部材51が、第2弾性部材52の硬さより高い硬さを有している。例えば、ハウジング本体11の表面における第2弾性部材52が接する箇所にも無電解ニッケルめっき層L1が形成されている場合に、第1弾性部材51が第2弾性部材52の硬さより低い硬さを有していると、第1弾性部材51が第2弾性部材52より大きく変形することにより押圧力が吸収されてしまい第2弾性部材52をハウジング本体11の表面に十分に密着させることができず、第2弾性部材52とハウジング本体11の表面との間に溶解液が浸入して必要以上に無電解ニッケルめっき層L1を除去してしまうおそれがある。そこで、第1弾性部材51が、第2弾性部材52の硬さより高い硬さを有することで、第1弾性部材51が第2弾性部材52より大きく変形することを抑制することができる。
【0034】
このように本実施形態によれば、ハウジング本体11の表面に形成された無電解ニッケルめっき層L1を精度よく溶解除去することができる。
【0035】
上記の可溶性材料層の溶解除去方法を含むことにより、基材(ハウジング本体11)と、前記基材の表面の一部に形成された可溶性材料層とを備える部材を製造することができる。かかる製造方法は、基材の表面に可溶性材料層を形成するステップと、上記の溶解除去方法を含んで、前記可溶性材料層を部分的に除去するステップと、を備える。
【0036】
上記の製造方法により製造された部材は、可溶性材料層が適切に基材上に形成されているため、電子部品用ソケットとして好適に用いることができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る電子部品用ソケットは、上記の製造方法により製造された部材を備える。また、本発明の一実施形態に係る電気・電子部品は、上記の電子部品用ソケットを備える。
【0037】
なお、上記に本実施形態及びその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の各実施形態又はその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0038】
たとえば、上記の説明では、領域R1、領域R2および領域R3に形成された可溶性材料層は無電解ニッケルめっき層であったが、これに限定されない。他のめっき層であってもよいし、スパッタや蒸着などのドライプロセスにより形成された層であってもよし、印刷などにより形成された層であってもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
ハウジング本体11の表面全体に無電解ニッケルめっき層L1を形成し、第1弾性部材51及び第2弾性部材52の間に挟むとともに7.35Nの力で押しつけた状態で溶解液に浸漬して、ハウジング本体11の上面11a及び下面11bに第1めっき層21を形成した。実施例1では、無電解ニッケルめっき層L1の厚さを0.811μmとし、第1弾性部材51及び第2弾性部材52の硬さをそれぞれ50、50とした。
【0041】
(実施例2)
実施例2では、無電解ニッケルめっき層L1の厚さを1.002μmとし、第1弾性部材51及び第2弾性部材52の硬さをそれぞれ50、30とした以外は、実施例1と同一にした。
【0042】
(比較例1)
比較例1では、ハウジング本体11の環状段差16、17を設けずにハウジング本体11の上面11aを平面とし、第1弾性部材51の上記領域R1、R2に接する部分の平面視形状を上記領域R1、R2と同一にし、そして、無電解ニッケルめっき層L1の厚さを0.849μmとした以外は、実施例1と同一にした。
【0043】
(比較例2)
比較例2では、無電解ニッケルめっき層L1の厚さを1.240μmとした以外は、比較例1と同一にした。
【0044】
第1めっき層21の図9に示す領域R1の周縁における(1)〜(8)の箇所、及び、図10に示す領域R2の周縁における(9)〜(16)の箇所についてはみ出し量を計測して、以下の判定基準に基づいて判定した。
A・・・はみ出し量が0.10mmを超える箇所が1つもない。
B・・・はみ出し量が0.10mmを超える箇所が1つ以上あるが、0.15mmを超える箇所が1つもない。
C・・・弾性部材下のめっき膜が溶解する。
【0045】
実施例1、2及び比較例1、2の構成を表1に示す。これら実施例1、2及び比較例1、2のはみ出し量の測定結果を表2、表3に示し(表2および3中の数値の単位はmmである。)、判定結果を表4に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
表2、表3に示すように、実施例1では、はみ出し量が0.10μmを超える箇所が1箇所あるが、0.15μmを超える箇所がひとつもなく、実施例2では、はみ出し量が0.10μmを超える箇所が1つもない。一方、比較例1、2では、段差が無いことが影響し、シール性が不十分となり、弾性部材下のめっき膜が溶解する。
【0051】
このことからも、本発明によれば、ハウジング本体11の表面に形成された無電解ニッケルめっき層L1を精度よく溶解除去することができることが明らかとなり、特に、第1弾性部材51が、第2弾性部材52の硬さより高い硬さを有していることが好ましいことが明らかとなった。
【符号の説明】
【0052】
10 コネクタハウジング
11 ハウジング本体(基材)
11a (ハウジング本体の)上面
11b (ハウジング本体の)下面
12 (ハウジング本体の)開口
13 端子挿通孔
14、15 挿通孔群
16、17 環状段差
16a (環状段差の)上面
16b (環状段差の)側面
16c (環状段差の)角部
18 肉抜き穴
20 めっき層
21 第1めっき層
22 第2めっき層
36、37 (環状段差により画成される)凹部
51 第1弾性部材
52 第2弾性部材
53、54 板部材
L1 無電解ニッケルめっき層
R1、R2 ハウジング本体の上面における環状段差の内側の領域
R3 ハウジング本体の下面における多数の端子挿通孔を内側に含む所定の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10