(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0022】
<複合粒子の概要>
本実施形態に係る複合粒子は、カチオン基を持つポリマー粒子(A)と、金属粒子(B)と、無機物粒子(C)と、を有し、前記(A)が、前記(C)を吸着しており、前記(A)が、前記(C)を介して金属粒子(B)を固着している。このように構成されているため、本実施形態の複合粒子は、塗膜とした際に、優れた導電性、低粘着性を発現することができる。すなわち、本実施形態の複合粒子は、導電性の塗膜を形成するために用いることができ、塗膜化した際に、金属粒子が粒子融着界面に局在化する傾向にある。このように金属粒子をポリマー粒子と複合化することにより、金属粒子が持つ固有の性能が安定的に発現することができる。結果として、当該金属粒子の使用量が少ない場合でも、十分な導電性を発現させることができる。したがって、本実施形態の複合粒子は、特に金属粒子として高価な貴金属類の粒子を用いる場合に有用である。
【0023】
本実施形態において、所望の効果が奏される理由としては、以下に限定する趣旨ではないが、次のように推察される。すなわち、ポリマー粒子は、塗膜化可能な低いガラス転移点を持つため、粘着性を持つのが通常であるが、当該ポリマー粒子がカチオン性であるため、アニオン基を持つ無機粒子を吸着できるため、ポリマー粒子の周りに硬い無機粒子が存在することになる。結果として、複合粒子の水分散液が乾燥に伴い塗膜化する際、ポリマー粒子固有の粘着性の発現が無機粒子によって回避されると考えられる。さらに、本実施形態においては、金属粒子(B)が該無機物粒子(C)を介してカチオン基を持つポリマー粒子(A)に固着されているため、(B)が(A)の粒子内部へもぐりこむことなく(A)の表面に固着することになると考えられる。このような複合粒子を塗膜化したとき、粒子融着界面に(B)が位置することとなり、(B)同士の十分な接触を確保できると考えられる。
【0024】
本実施形態に係る複合粒子は、例えば、カチオン基を持つポリマー粒子(A)が無機物粒子(C)を吸着し、分散している分散液中で金属錯体を還元剤により還元して、カチオン基を持つポリマー粒子(A)に吸着した無機物粒子(C)表面に固着された金属粒子を形成する工程を含む方法により得ることができる。このように、金属粒子(B)を単純に混合するのではなく、金属錯体を還元剤により還元して金属粒子(B)を発生させることで、塗膜化した際に金属粒子が塗膜表面等へ移動することなく、カチオン基を持つポリマー粒子間に留まり、塗膜全体へ導電性を与えることができる。
【0025】
<カチオン基を持つポリマー粒子(A)>
カチオン基を持つポリマー粒子(A)(以下、単に「(A)成分」又は「(A)」と記載する場合がある。)は、ポリマーから構成される粒子である。カチオン基を持つポリマー粒子(A)を構成するポリマーは、特に限定されないが、ビニル系ポリマー、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ジエン系ポリマー、メラミン・ベンゾグアナミン系ポリマー、芳香族系ポリマー、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリカプロラクトン、硫黄系ポリマー及び天然高分子から選択されることが好ましい。なお、1種以上を組み合わせてもよく、(A)はその他の添加物を含んでもよい。本実施形態の複合粒子より得られる塗膜の透明性及び耐光性をより良好なものとする観点から(A)成分を構成するポリマーは、ビニル系ポリマーの中でもアクリルポリマーであることが好ましい。
【0026】
(A)の最低成膜温度(MFT)は、好ましくは50℃以下であり、さらに好ましくは20℃以下である。MFTがこのような範囲である場合、室温で容易に成膜できる傾向にある。MFTは、共重合物によりTgを調節すること、及び/又は、可塑剤を添加すること等によって調節できる。
【0027】
(A)が後述する無機物粒子(C)を吸着している。本実施形態において、吸着とは、化学的な結合を介して、無機物粒子(C)が、(A)の表面に付着することを意味する。無機物粒子(A)が(C)を吸着していることは、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、ウエット透過型顕微鏡により観察することで確認でき、また、粒子径測定による粒子径の肥大化等によっても確認することができる。
【0028】
カチオン基を持つポリマー粒子(A)の粒径は、特に限定されないが、5nm〜50μmであることが好ましい。より好ましくは、8nm〜2μmであり、さらに好ましくは、10nm〜500nmである。
【0029】
カチオン基を持つポリマー粒子(A)は、通常の粒子形状のほか、中空粒子、多孔体などの形状を有していてもよく、楕円球体、金平糖型、ダルマ状などその形状は特に限定されない。利用のし易さを考慮すれば、通常、粒子形状として球形が好ましい。
【0030】
本実施形態において、(A)は、その表面に吸着した無機物粒子(C)により、分散安定化されているともいえる。(C)成分を吸着した(A)成分は、アニオン型として分散安定化されていることが好ましい。(C)成分を吸着した(A)成分がアニオン型の分散状態にあることは、(C)成分が有するアニオン基や混在しうる他の成分が有するアニオン基の総量が(A)成分のカチオン基量を上回ることに起因する。なお、(C)成分を吸着した(A)成分がアニオン型の分散状態にあることは、ゼータ電位計で確認できる。
【0031】
無機物粒子(C)を吸着している(A)の調製方法としては、特に限定されないが、カチオン基が導入されたポリマー粒子を、無機物粒子(C)で分散安定化して、無機物粒子(C)を吸着している(A)を得る方法が好ましい。
【0032】
また、カチオン基が導入されたポリマー粒子を得るために、カチオン系物質(D)を用いることが好ましい。カチオン系物質(D)としては、以下に限定されないが、例えば、カチオン性ラジカル重合開始剤、カチオン性エチレン性不飽和単量体等が挙げられる。カチオン系物質(D)に由来するカチオン基は、無機物粒子(C)にイオン的結合することができ、全体としてアニオン性を発現する。
【0033】
本明細書において、「カチオン基」は、正に帯電した基、及び、水素イオン等の付加により正に帯電し得る基を意味する。カチオン基としては、以下に限定されないが、例えば、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、4級化アミノ基が挙げられる。
【0034】
カチオン性ラジカル重合開始剤としては、以下に限定されないが、例えば、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド等が挙げられる。
【0035】
カチオン性エチレン性不飽和単量体としては、以下に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アミノアルキル又は、へテロ原子が窒素である5若しくは6員環複素環を有する化合物が挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸−N,N−ジアルキル(炭素数1〜6)アミノアルキル(炭素数2〜3)エステルが好ましい。その具体例としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノプロピルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノt−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノt−ブチルエステルが挙げられる。その他、(メタ)アクリル酸トリエタノールアミン、ビニルアミン、ビニルピリジンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、適宜併用してもよい。
【0036】
カチオン系物質(D)がカチオン性ラジカル開始剤の場合は、カチオン系物質(D)によりエチレン性不飽和単量体を重合させることで、カチオン基を持つポリマー粒子(A)を得ることができる。また、カチオン系物質(D)がカチオン性エチレン性不飽和単量体の場合は、カチオン系物質(D)をエチレン性不飽和単量体と共重合することによってカチオン基を持つポリマー粒子(A)を得ることができる。
【0037】
エチレン性不飽和単量体としては、特に限定されないが、具体例としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル(本明細書においてアクリル酸及び又はメタクリル酸をまとめて(メタ)アクリル酸と表す)が挙げられる。当該(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体は、特に限定されないが、その具体例を示せば、(メタ)アクリルアミド系単量体類、シアン化ビニル類等が挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステルの例としては、以下に限定されないが、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレンオキシド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレート、エチレンオキシド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸アダマンチル等が挙げられる。
【0040】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。
【0041】
(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートの具体例としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートの具体例としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
【0042】
(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、以下に限定されないが、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリルアミド系単量体類としては、以下に限定されないが、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。また、シアン化ビニル類としては、以下に限定されないが、例えば(メタ)アクリロニトリル、N,N'-メチレンビスアクリルアミドなどが挙げられる。
【0044】
また、アルド基又はケト基を有するエチレン性不飽和単量体を用いてもよく、それらの具体例としては、以下に限定されないが、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、ホルミルスチロール等や、その併用が挙げられる。
【0045】
上記以外のエチレン性不飽和単量体の具体例としては、以下に限定されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、さらに、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピロメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロルプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2,3−シクロヘキセンオキサイド、(メタ)アクリル酸アリル、メタクリル酸アシッドホスホオキシエチル、メタクリル酸3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピル、メチルプロパンスルホン酸アクリルアミド、ジビニルベンゼン等やそれらの併用が挙げられる。
【0046】
カチオン基を持つエチレン性不飽和単量体としては、以下に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルおよび塩、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルおよび塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピルおよび塩、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミドおよび塩、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドおよび塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよび塩、ビニルピリジン、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミドエピクロロヒドリン付加物のハロゲン化塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドエピクロロヒドリン付加物のハロゲン化塩及びアルキルスルホン酸塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチルエピクロロヒドリン付加物のハロゲン化塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピルエピクロロルヒドリン付加物のハロゲン化塩及びアルキルスルホン酸塩などが挙げられる。
【0047】
本実施形態において、ラジカル重合性開始剤として用いられる上記のカチオン性ラジカル重合開始剤に加えて、水溶性開始剤を用いることもできる。水溶性開始剤の例としては、以下に限定されないが、水溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が使用できる。その具体例としては、以下に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライドが挙げられる。また、上記のカチオン性ラジカル重合開始剤に加えて、油溶性開始剤を用いることもでき、その具体例としては、以下に限定されないが、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等がある。
【0048】
またさらに、(A)と(C)の吸着をより強固にする観点から、エチレン性不飽和基を有する加水分解性シランを併用できる。加水分解性シランの例としては、以下に限定されないが、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジエトキシメチルシランなどが挙げられる。これらは単独又は二種以上含んでいてもよい。
【0049】
<無機物粒子(C)>
本実施形態において、無機物粒子(C)(以下、単に「(C)成分」又は「(C)」と記載する場合がある。)は、種々公知のものを使用できる。なお、本明細書において、後に詳述する金属粒子(B)に該当するものは、(C)に包含されないものとする。(C)としては、特に限定されないが、例えば、金属化合物(例えば金属酸化物、金属塩、半金属化合物)及び非金属化合物が好ましい。
【0050】
金属酸化物の例としては、以下に限定されないが、二酸化チタン(例えば、石原産業(株)製)、酸化ジルコニウム、酸化スズ(例えば、日産化学(株)製)、酸化アルミニウム(例えば、日産化学(株)製)、酸化バリウム、酸化マグネシウム、種々の酸化鉄(例えば、ウエスタイト、ヘマタイト及びマグネタイト)、酸化クロム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化銅、酸化イットリウム、酸化セリウム、これらの非晶質及び/又はその種々の結晶変態、並びに、そのヒドロキシ酸化物(例えば、ヒドロキシチタン酸化物、ヒドロキシジルコニウム酸化物、ヒドロキシアルミニウム酸化物及びヒドロキシ鉄酸化物)、これらの非晶質又はその種々の結晶変態を含む。
【0051】
また、以下の非晶質及び/又はその種々の結晶構造で存在する金属塩を本実施形態における(C)として使用できる:硫化物(例えば、硫化鉄、二硫化鉄、硫化スズ、硫化水銀、硫化カドミウム、硫化亜鉛、硫化銅、硫化銀、硫化ニッケル、硫化コバルト、硫化マンガン、硫化クロム、硫化チタン、硫化チタン、硫化ジルコニウム、硫化アンチモン、硫化ビスマス)、水酸化物(例えば、水酸化スズ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、水酸化鉄)、硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸鉛)、炭酸塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸ジルコニウム、炭酸鉄)、オルトリン酸塩(例えば、オルトリン酸リチウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸亜鉛、オルトリン酸マグネシウム、オルトリン酸アルミニウム、オルトリン酸スズ、オルトリン酸鉄)、メタリン酸塩(例えば、メタリン酸リチウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸アルミニウム)、ピロリン酸塩(例えば、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸亜鉛、ピロリン酸鉄、ピロリン酸スズ)、アンモニウムリン酸塩(例えば、アンモニウムリン酸マグネシウム、アンモニウムリン酸亜鉛)、ヒドロキシルアパタイト、オルトケイ酸塩(例えば、オルトケイ酸リチウム、オルトケイ酸カルシウム/マグネシウム、オルトケイ酸アルミニウム、オルトケイ酸鉄、オルトケイ酸マグネシウム、オルトケイ酸亜鉛、オルトケイ酸ジルコニウム)、メタケイ酸塩(例えば、メタケイ酸リチウム、メタケイ酸カルシウム/マグネシウム、メタケイ酸カルシウム、メタケイ酸マグネシウム、メタケイ酸亜鉛)、層状ケイ酸塩(例えば、アルミニウムケイ酸ナトリウム及びマグネシウムケイ酸ナトリウム、特に自発的に離層した形、例えばOprigel(登録商標)(ロックウッド社製)、Saponite(登録商標)、Hektorite(登録商標)(ヘキスト社製)及びLaponite(登録商標)(ロックウッド社製))、アルミン酸塩(例えば、アルミン酸リチウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸亜鉛)、ホウ酸塩(例えば、メタホウ酸マグネシウム、オルトホウ酸マグネシウム)、シュウ酸塩(例えば、シュウ酸カルシウム、シュウ酸ジルコニウム、シュウ酸亜鉛、シュウ酸アルミニウム)、酒石酸塩(例えば、酒石酸カルシウム)、アセチルアセトネート(例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネート)、サリチル酸塩(例えば、サリチル酸アルミニウム)、クエン酸塩(例えば、クエン酸カルシウム、クエン酸鉄、クエン酸亜鉛)、パルミチン酸塩(例えば、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸マグネシウム)、ステアリン酸塩(例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛)、ラウレート(例えばカルシウムラウレート)、リノレイン酸塩(例えばリノレイン酸カルシウム)、オレイン酸塩(例えばオレイン酸鉄又はオレイン酸亜鉛)。ただし、上記に示した例に限定されるものではない。
【0052】
本実施形態における(C)として使用可能な半金属化合物としては、以下に限定されないが、例えば、非晶質及び/又は種々の結晶構造で存在する二酸化ケイ素が挙げられる。二酸化ケイ素としては、市販品も好ましく用いることができ、例えば、Aerosil(登録商標)(デグッサ社製)、Levasil(登録商標)(バイエル社製)、Ludox(登録商標)(デュポン社製)、Nyacol(登録商標)(ナヤコール社製)及びBindzil(登録商標)(アクゾ−ノーベル社製)、Snowtex(登録商標)(日産化学工業社の商標)、アデライト(登録商標)(アデカ(株)製)として入手できる。非金属化合物の好ましい例としては、コロイド状で存在するグラファイト又はダイヤモンドである。
【0053】
本実施形態における(C)として、好ましくは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化ヒドロキシアルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸マグネシウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化鉄、二酸化チタン、ヒドロキシルアパタイト、酸化亜鉛及び硫化亜鉛を含む群から選択される。(C)の表面をシリカ処理したあらゆるもの、負の符号を有するゼータ電位を示すコロイダルシリカがさらに好ましい。
【0054】
本実施形態において、(C)の粒径(平均粒径)は、複合粒子から形成される塗膜の透明性の観点から、好ましくは1nm〜5μmであり、さらに好ましくは1nm〜500nmであり、特に好ましくは3nm〜250nmである。(C)の流体力学的直径は、大塚電子(株)製ELSZ−1000ZS等を用いた動的光散乱法にて測定し、キュムラント法解析にて求めることができる。また数平均粒子径は日本電子(株)製JEM-2000EX透過型電子顕微鏡を用いて取得する画像から求めることができる。
【0055】
本実施形態において、無機酸化物粒子(C)とカチオン基を持つポリマー粒子(A)の質量比(C)/(A)は、0.1〜10が好ましく、より好ましくは0.2〜5である。(C)/(A)が0.1以上である場合、カチオン基を持つポリマー粒子(A)の分散安定性が十分に確保され、凝集が防止される傾向にあり、(C)/(A)が10以下である場合、塗膜とした際の導電性が十分に確保される傾向にある。
【0056】
<金属粒子(B)>
金属粒子(B)(以下、単に「(B)成分」又は「(B)」と記載する場合がある。)は、金属を含む粒子である。金属としては、特に限定されないが、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、金、ニッケル、コバルト、マンガン、銀、アルミニウム、錫、チタン、ジルコニウム、インジウム、クロム、鉄、銅、モリブデン、タングステン等の導電性を有する金属が挙げられる。金属粒子(B)は、2種以上の金属を含んでもよく、合金や混合物であってもよい。
【0057】
金属粒子(B)の粒径は、複合粒子から形成される塗膜の透明性の観点から、ポリマー粒子(A)の平均粒径よりも小さいことが好ましい。金属粒子(B)の粒径は、より好ましくは、1nm〜1μmであり、さらに好ましくは、1nm〜100nmであり、よりさらに好ましくは3nm〜50nmである。
【0058】
金属粒子(B)の形態、形状としては、特に限定されないが、粒子形状として球形であることが好ましい。
【0059】
金属粒子(B)は、例えば、(C)を吸着している(A)の存在下、金属錯体(B−1)を還元剤(B−2)により還元することで、他の成分と複合化することができる。
【0060】
本実施形態における金属錯体(B−1)としては、以下に限定されないが、例えば、塩化白金酸、ヘキサアンミン白金塩化物、ジニトロジアンミン白金、塩化パラジウム、テトラアンミンパラジウム塩化物、塩化ロジウム、塩化ルテニウム、ヘキサクロロイリジウム酸、四塩化金酸、四塩化金酸塩、三塩化金、三臭化金、シアン化金、シアン化金カリウム、三塩化ジエチルアミン金酸、エチレンジアミン金錯体、ジメチル金β−ジケトン誘導体金錯体、ジエチル金β−ジケトン誘導体金錯体、塩化ニッケル、塩化クロム、塩化コバルト、塩化マンガン、硝酸銀、酢酸パラジウムが挙げられる。
【0061】
本実施形態における還元剤(B−2)としては、以下に限定されないが、例えば、水素化ホウ素ナトリウム類、アルキルアミンボラン類、アルキルボラン類、水素、二酸化硫黄、亜硝酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ロンガリットなどが挙げられる。また、有機系還元剤も用いることができ、その具体例としては、以下に限定されないが、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、メタノール、クエン酸及びその塩(例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸マグネシウム)、シュウ酸及びその塩、グルコース、エチレングリコール、L−アスコルビン酸、アルキルアミン類、アニリン等のアリールアミン類、アルカノールアミン類、ヒドロキシアミン、ピロール、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、t−ブチルアミンボランなどが挙げられる。上記した中でも、好ましくはピロールを挙げることができる。ピロールを還元剤として用いる場合、還元剤自身がポリマー化するため、また、ピロール自体がカチオン性物質であるため、ピロールは静電的相互作用により無機粒子に吸着しながらポリマー化し、そのポリピロール部分に金属粒子が発生し、より強固に金属粒子が固着される傾向にあると考えられる。また、ポリピロールのような導電性ポリマーが(B)と混在して存在することにより、塗膜内に通電する道筋をより確保しやすくなり、塗膜の全体にわたって優れた導電性が付与される傾向にあると考えられる。
【0062】
金属錯体(B−1)と還元剤(B−2)が使用される比率は下記式で表され、該比率は、0.01〜100が好ましく、より好ましくは0.1〜20である。該比率が少ないと、金属粒子のカチオン基を持つポリマー粒子(A)への固着をより容易にする観点から、該比率を0.01以上とすることが好ましく、還元反応を充分に進行させて金属粒子を十分に生成させる観点から、該比率を100以下とすることが好ましい。
金属錯体−還元剤比率 = (金属錯体(B−1)のモル数×金属錯体(B−1)の金属イオン価数) / 還元剤(B−2)のモル数
【0063】
<複合粒子>
複合粒子が、(A)、(B)、(C)を有し、前記(A)が(C)を吸着しており、さらに(A)が、(C)を介して(B)を固着していることが好ましい。本実施形態において、固着とは、吸着あるいは静電的相互作用によるのではなく、(C)に接触してその部分で発生した金属粒子が(C)に付着した状態を表している。特に、「(A)が(C)を介して(B)を固着している」とは、(C)粒子を担体として(B)粒子が付着している状態を意味し、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、ウエット透過型顕微鏡、粒子径測定、XPS(X線光電子分光)、XRD、ICP発光分析装置により確認することができる。なお、(B)成分が、(C)成分上に吸着した還元剤に由来する成分に固着される態様も、「(A)が(C)を介して(B)を固着している」に含まれるものとする。
【0064】
本実施形態において、複合粒子は、その表面に吸着した無機物粒子(C)を介して金属粒子(B)を固着することにより、分散安定化されている。このとき、本実施形態の複合粒子はアニオン型として分散安定化されていることが好ましい。本実施形態の複合粒子がアニオン型の分散状態にあることは、(C)成分がアニオン基を有すること及び混在しうる他の成分がアニオン基を有することに起因する。本実施形態の複合粒子がアニオン性であることは、ゼータ電位計で確認できる。
【0065】
複合粒子の粒子径は、10nm〜10μmであることが好ましい。より好ましくは、20nm〜5μmであり、さらに好ましくは、50nm〜1μmである。
【0066】
本実施形態の複合粒子は、金属粒子のポリマー粒子(A)に対する量は、固着される金属粒子の大きさ、並びにポリマー粒子表面にどの程度の量の金属を固定化するかにより異なる。金属粒子のポリマー粒子への固着量は水性媒体の濃度と量により、例えば0.01質量%〜100質量%の範囲で調整することができる。したがって、金属固着量に応じて、水性媒体の金属錯体濃度や水性媒体の使用量、および還元剤は金属錯体モル量に応じた前記金属錯体−還元剤比率範囲内で決めればよい。さらに詳しくは、(C)を吸着している(A)と金属錯体(B−1)と還元剤(B−2)とを含む場合において、それらの質量比{(B−1)+(B−2)}/{(A)+(C)}は、0.01〜5.0であることが好ましく、より好ましくは0.02〜2.0、さらに好ましくは、0.03〜1.0である。上記質量比が0.01以上である場合、導電性が十分に確保される傾向にあり、5.0以下である場合、分散系の凝集が十分に防止される傾向にある。
【0067】
<複合粒子の製造方法>
本実施形態の複合粒子を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、次の方法が挙げられる:
(1)無機物粒子(C)を吸着している(A)を製造する工程;
(2)無機物粒子(C)を吸着している(A)を精製する工程;
(3)(A)に金属錯体(B−1)と還元剤(B−2)とを混合し、金属粒子(B)を複合化する工程;
(4)複合粒子の精製工程。
なお、本実施形態の複合粒子を製造する方法は、上記した各工程を順次に終了して実施する方法に限定されない。
【0068】
(1)無機物粒子(C)を吸着している(A)を製造する工程
水性媒体中において、無機物粒子(C)とカチオン系物質(D)存在下で、例えば、乳化重合又はミニエマルション重合を行い、(C)を吸着している(A)を得ることができる。上記の他、無機物粒子(C)とカチオン基を持つポリマー粒子(A)を配合する方法で(C)を吸着している(A)を得てもよい。
【0069】
上記において、乳化重合又はミニエマルション重合を実施する際のpHは、通常1.5〜13、好ましくは4〜11であり、より好ましくは5〜10.5であり、分散安定性が適正に確保できる範囲で製造する。前記の重合温度は、開始剤が分解する範囲で決定され、反応溶液として水を用いる場合、温度は水の沸点(100℃)以下であればよく、特に限定されないが、通常40℃から90℃までの範囲が好ましい。重合時濃度は通常50%以下、好ましくは40%以下であり、分散安定性が適正に確保できる範囲で決定される。
【0070】
水性媒体の具体例としては、水のみ、または水と水に溶解する有機溶媒からなり、水に溶解する有機溶媒であれば特に限定されず、低級アルコール類、アセトンを含むケトン類、テトラハイドロフラン等が挙げられる。
【0071】
該製造工程では、乳化重合又はミニエマルション重合の際、(A)の分散安定性を補助する目的で、下記の分散安定剤を使用することが好ましい。分散安定剤の具体例としては、以下に限定されないが、ノニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子が挙げられ、ポリビニルピロリドンであることがより好ましい。
【0072】
(2)無機物粒子(C)を吸着している(A)を精製する工程
吸着していない余分な無機物粒子(C)を除くために、水で希釈して遠心分離機にて遠心分離し上澄みを除去後、沈殿物へ水を加え超音波洗浄機あるいは超音波分散機を用いて再分散し再度遠心分離する方法を繰り返すことによって、無機物粒子(C)を吸着している(A)を得ることができる。
【0073】
(3)(A)に金属錯体(B−1)と還元剤(B−2)とを混合し、金属粒子(B)を複合化する工程
(C)を吸着している(A)の存在下で、金属錯体(B−1)を還元剤(B−2)により還元し、金属粒子(B)を他の成分と複合化する。(A)を金属粒子(B)と複合粒子化する工程の簡便さから、(A)は、水性媒体中に分散して存在することが好ましい。
【0074】
水性媒体中の(A)の分散液に金属錯体(B−1)を添加するに際して、金属錯体(B−1)は、そのまま(A)の分散液に加えられてもよいが、予め(B−1)の水性溶液とした後に、(A)の分散液に加えられることが好ましい。このとき、金属錯体(B−1)は一度に加えられてもよいし、数回に分けて加えられてもよい。金属錯体(B−1)を加えた(A)の分散液は、ゆっくりと撹拌されることが好ましい。また、金属錯体(B−1)の水性溶液に対して、(A)の分散液を加えてもよい。
【0075】
上記の製造工程では、(A)及び生成される複合粒子の分散安定性を補助する目的で前記の分散安定剤を使用することが好ましく、ポリビニルアルコールであることがより好ましい。
【0076】
水性分散液のpHは、通常1.5〜13であり、好ましくは2〜9であり、使用する還元剤(B−2)によって適正な範囲を決定することができる。温度は、担体として使用される高分子材料の軟化が起こらない範囲で、かつ分散液の沸点以下とすることが好ましい。例えば、水性媒体として水を用いる場合、温度は水の沸点(100℃)以下であればよく、特に限定されないが、通常0℃から90℃までの範囲とされる。還元剤(B−2)を用いるときには特に0℃から30℃とすることが好ましい。
【0077】
還元剤(B−2)の反応系への導入速度は、特に限定されるものではないが、比較的短時間で導入を終了することが好ましい。導入は連続的でなくてもよく、ある時間をおいて間歇的に添加が行われてもよい。このように、金化合物の種類と濃度、溶液の種類とpH、還元剤(B−2)の種類と濃度、還元反応の温度、及び溶液に添加する添加剤の種類と濃度を適切に制御することが好ましい。
【0078】
4)複合粒子の精製工程
具体的な方法としては、上記の反応終了後、複合粒子の分散液を遠心分離機を使用して高速回転にて遠心分離し、上澄み液を除去した後、沈殿物へ水を加え超音波分散機を用いて再分散する方法が挙げられる。このサイクルを数回繰り返し、精製された複合粒子の分散液を得ることができる。
【0079】
<水性分散液>
本実施形態の水性分散液は、水性媒体と、当該水性媒体中に存在する本実施形態の複合粒子と、を含有する。本実施形態の水性分散液は、上記のように構成されているため、塗膜とした際に、優れた導電性、透明性、耐光性を発現することができる。本実施形態の水性分散液は、例えば、上述した工程(1)〜(4)を経て製造することができる。なお、本実施形態の水性分散液は、例えば、次の工程により、塗膜とすることができる。すなわち、水性分散液を所望の濃度に調整し、スブレー塗装、ロール塗装、スピンコートなどの通常の塗装方法で塗装することができ、室温ないし加熱などの強制乾燥により塗膜化することで複合粒子の塗膜を得ることができる。
【0080】
<用途>
本実施形態に係る複合粒子は、導電性ポリマー塗膜を形成するために利用することができ、該導複合粒子を含む塗膜は優れた導電性、透明性、耐光性を発現することができる。複合粒子の塗膜は、例えば、水等の水性媒体及び該水性媒体中に分散する複合粒子を含む粒子分散液を塗布し、塗布された粒子分散液から水性媒体を除去する方法により、形成することができるため、透明導電膜、電極のバインダー又は該接着層等に利用できる。
【実施例】
【0081】
以下に、実施例などを用いて本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
【0082】
<粒子径>
レーザー回折式粒度分布測定装置 (Malvern、MASTER−SIZER 2000)を用い、体積平均粒子径を測定した。測定には水にて適宜希釈し、分散ユニット (Malvern、Hydro 2000SM)で2,000 rpmの撹拌条件で測定を行った。
【0083】
<塗膜抵抗値>
複合粒子の水分散体をマイクロピペットでガラス板に一滴滴下し、約24時間室温にて乾燥した。その後、凍結乾燥機を用いて乾燥した後、テスター(株式会社エー・アンド・デイ製:AD−5522)を用いた2探針法(針の距離を1mm以上)による生成物の抵抗率を測定し、以下の基準に基づいて判定をした。
〇:32MΩ未満
×:32MΩ以上
【0084】
<粘着性>
プローブタック試験機(テスター産業株式会社,TE−6002 恒温槽付プローブタックテスター)を用いて、プローブタックを測定した。
複合粒子の水分散体をアプリケーターを用いて、あるいは一定厚みの型枠内へ流延して、常温にて乾燥させ、厚さ約150〜125μmのフィルムを作製し、そのフィルムを2cm四方に裁断し試験片とした。この試験片を10gの試料保持リングに張り付け、プローブタック試験機(テスター産業株式会社,TE−6002恒温槽付プローブタックテスター、プローブ直径5mm)を用いてフィルムのタックを測定した。なお、プローブタックの測定は、測定温度23±1℃、接触速度10mm/秒、剥離速度10mm/秒、接触時間30秒の条件で行い、以下の基準に基づいて判定をした。
〇:0.01MPa未満
△:0.01以上0.05MPa未満
×:0.05MPa以上
【0085】
[製造例1](無機物粒子を吸着しているカチオン基を持つポリマー粒子の製造−1)
250mLの丸底フラスコに水88gを注ぎ、マグネットスターラーで攪拌しながらpoly(N−vinylpyrrolidone)(PNVP;分子量=360000,和光純薬工業株式会社)を0.50gを溶解させた。その後コロイダルシリカ(40質量%の水分散体、EkaChemicals製Bindzil2040)20gをマイクロピペット(Eppendorf;1,000μL)を用いて少しずつ撹拌しながら添加し、さらに2,2’−azobis(2−methylpropionamidine)dihydrochloride(AIBA;純度97%,シグマアルドリッチジャパン株式会社製)を0.15g加え完全に溶解させた。その後、セプタムで蓋をし、窒素置換を行った。そこへアクリル酸ブチル10gをシリンジにより注入し、70℃まで昇温し、そのまま撹拌を続け24時間保持した。反応終了後、反応液を遠心分離機(日立工機(株)、CF16RXII形)を使用して2000rpmで10分間遠心分離し、沈殿した凝集物を除去した。さらに残液について7000rpmで30分間遠心分離を行い、上澄み液を除去し、沈殿物に水を加え、超音波洗浄機(Yamato,BRANSONIC221)を用いて再分散した。このサイクルを5回行い、無機物粒子を吸着しているカチオン基を持つポリマー粒子を得た。前記粒子のレーザー回折式粒度分布測定結果より、体積平均粒子径(Dv)が0.13±0.043μmの単分散粒子であった。
【0086】
[実施例1](複合粒子の製造)
50mLサンプル瓶に、無機物粒子を吸着している製造例1のカチオン基を持つポリマー粒子の水分散液を11.09g(固形分濃度4.51質量%)計りとった。次いで、マグネットスターラーで攪拌しながらポリビニルアルコール(PVA;けん化度:88.0±1.5mol%,SIGMA−ALDRICHInc.)0.075gを添加し、24時間撹拌することで水媒体中に溶解させた。その後25℃を維持したまま、ピロール0.0125gを加え、水1.06gに塩化金酸3水和物(HAuCl
4・3H
2O)0.057gを溶解した水溶液を、マイクロピペット(Eppendorf;1,000μL)を用いて、80分かけて添加し、25℃で24時間撹拌を継続した。反応終了後、遠心分離機(日立工機(株)、CF16RXII形)を使用して7,000rpmで40分間遠心分離し、上澄み液を除去した後、水を加え、超音波洗浄機(Yamato,BRANSONIC221)を用いて再分散した。このサイクルを4回行い複合粒子の分散液(固形分濃度10.2質量%)を得た。塗膜抵抗値、粘着性試験結果を表1に示す。
【0087】
〔実施例2〕(複合粒子の製造)
50mLサンプル瓶に、無機物粒子を吸着している製造例1のカチオン基を持つポリマー粒子の水分散液を11.09g(固形分濃度4.51質量%)計りとった。次いで、マグネットスターラーで攪拌しながらポリビニルアルコール(PVA;けん化度:88.0±1.5mol%,SIGMA−ALDRICHInc.)0.075gを添加し、24時間撹拌することで水媒体中に溶解させた。その後25℃を維持したまま、ピロール0.05gを加え、水1.06gに塩化金酸3水和物(HAuCl
4・3H
2O)0.228gを溶解した水溶液を、マイクロピペット(Eppendorf;1,000μL)を用いて、90分かけて添加し、25℃で24時間撹拌を継続した。反応終了後、遠心分離機(日立工機(株)、CF16RXII形)を使用して7,000rpmで40分間遠心分離し、上澄み液を除去した後、水を加え、超音波洗浄機(Yamato,BRANSONIC221)を用いて再分散した。このサイクルを4回行い複合粒子の分散液(固形分濃度10.6質量%)を得た。塗膜抵抗値、粘着性試験結果を表1に示す。
【0088】
[製造例2](カチオン基を持っていないポリマー粒子の製造)
250mLの丸底フラスコに水88gを注ぎ、マグネットスターラーで攪拌しながらpoly(N−vinylpyrrolidone)(PNVP;分子量=360000,和光純薬工業株式会社)を0.50gを溶解させた。その後コロイダルシリカ(40質量%の水分散体、EkaChemicals製Bindzil2040)20gをマイクロピペット(Eppendorf;1,000μL)を用いて少しずつ撹拌しながら添加し、さらに過硫酸ナトリウムを0.15g加え完全に溶解させた。その後、セプタムで蓋をし、窒素置換を行った。そこへメタクリル酸ブチル5gと、メタクリル酸メチル5gの混合物をシリンジにより注入し、70℃まで昇温し、そのまま撹拌を続け24時間保持した。反応終了後、反応液を遠心分離機(日立工機(株)、CF16RXII形)を使用して2000rpmで10分間遠心分離し、沈殿した凝集物を除去した。さらに残液について7000rpmで30分間遠心分離を行い、上澄み液を除去し、沈殿物に水を加え、超音波洗浄機(Yamato,BRANSONIC221)を用いて再分散した。このサイクルを5回行い、無機物粒子を含んだポリマー粒子を得た。
【0089】
〔比較例1〕
50mLサンプル瓶に、無機物粒子を吸着している製造例2のカチオン基を持つポリマー粒子の水分散液を11.08g(固形分濃度4.53質量%)計りとった。次いで、マグネットスターラーで攪拌しながらポリビニルアルコール(PVA;けん化度:88.0±1.5mol%,SIGMA−ALDRICHInc.)0.075gを添加し、24時間撹拌することで水媒体中に溶解させた。その後25℃を維持したまま、ピロール0.0125gを加え、水1.06gに塩化金酸3水和物(HAuCl
4・3H
2O)0.057gを溶解した水溶液を、マイクロピペット(Eppendorf;1,000μL)を用いて、80分かけて添加し、25℃で24時間撹拌を継続した。反応終了後、遠心分離機(日立工機(株)、CF16RXII形)を使用して7,000rpmで40分間遠心分離し、上澄み液を除去した後、水を加え、超音波洗浄機(Yamato,BRANSONIC221)を用いて再分散した。このサイクルを4回行い複合粒子の分散液(固形分濃度10.2質量%)を得た。塗膜抵抗値、粘着性試験結果を表1に示す。
【0090】
[比較例2]
500mLの丸底フラスコに水290gを注ぎ、マグネットスターラーで撹拌しながらアクリル酸ブチル30.0gを加えた。その後、セプタムで蓋をし、窒素置換を行い、70℃昇温した。過硫酸アンモニウム0.30gと水10gの混合物を投入した後、70℃で24時間保持し、無機物粒子を吸着していないポリマー粒子の水分散液(固形分濃度9.1質量%)を得た。前記粒子のレーザー回折式粒度分布測定結果より、体積平均粒子径(Dv)が0.32±0.072μmの単分散粒子であった。
この水分散液を22.0gを100mLサンプル瓶に計りとった。次いで、マグネットスターラーで攪拌しながらポリビニルアルコール(PVA;けん化度:88.0±1.5mol%,SIGMA−ALDRICHInc.)0.1gを添加し、24時間撹拌することで水媒体中に溶解させた。その後25℃を維持したまま、ピロール0.05gを加え、水1.06gに塩化金酸3水和物(HAuCl
4・3H
2O)0.228gを溶解した水溶液を、マイクロピペット(Eppendorf;1,000μL)を用いて、90分かけて添加し、25℃で24時間撹拌を継続した。反応終了後、遠心分離機(日立工機(株)、CF16RXII形)を使用して7,000rpmで40分間遠心分離し、上澄み液を除去した後、水を加え、超音波洗浄機(Yamato,BRANSONIC221)を用いて再分散した。このサイクルを4回行い複合粒子の分散液(固形分濃度10.3質量%)を得た。塗膜抵抗値、粘着性試験結果を表1に示す。
【0091】
【表1】