特許第6482457号(P6482457)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482457
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】骨代謝解析支援プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
   A61B6/03 360J
   A61B6/03 360M
   A61B6/03 370Z
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-257708(P2015-257708)
(22)【出願日】2015年12月29日
(65)【公開番号】特開2017-119056(P2017-119056A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2017年8月23日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 骨・関節・軟骨治療のための新製品開発と臨床ニーズ,第5章第1節第3項,「4DQCT法による骨折リスク予測、治療のフォローアップソフト TRI/3D−BON−FCSCL」,株式会社技術情報協会,平成27年10月30日発行
(73)【特許権者】
【識別番号】591150498
【氏名又は名称】ラトックシステムエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南郷 脩史
【審査官】 原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−108073(JP,A)
【文献】 特開2003−230557(JP,A)
【文献】 特開2007−190208(JP,A)
【文献】 特開2011−125476(JP,A)
【文献】 特開2011−167388(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0004043(US,A1)
【文献】 特開2016−059593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象骨の海綿骨における骨代謝により生じる構造変動の解析を支援するための骨代謝解析支援プログラムであって、
コンピュータを、
前記測定対象骨を第1時点においてX線撮像して得られた第1投影データ群に基づいて、再構成処理により前記海綿骨を含む第1時点骨像を含む第1X線画像を形成し、前記測定対象骨を第1時点とは異なる第2時点においてX線撮像して得られた第2投影データ群に基づいて、再構成処理により前記海綿骨を含む第2時点骨像を含む第2X線画像を形成するX線画像形成手段と、
前記第1時点骨像及び前記第2時点骨像それぞれから、前記測定対象骨における、少なくとも前記海綿骨よりも骨代謝量が少ない部分の形状である特徴形状を抽出する特徴形状抽出手段と、
抽出された前記特徴形状に基づいて、前記第1時点骨像及び前記第2時点骨像の位置合わせ処理を行う位置合わせ手段と、
前記第1時点骨像及び前記第2時点骨像に含まれる各画素について、骨梁に対応する骨画素であるか、骨梁以外の部分に対応する非骨画素であるかを識別する画素識別手段と、
第1時点骨像の画素と、当該画素に位置的に対応する第2時点骨像の画素とを比較することで、第1時点骨像において非骨画素であり第2時点骨像において骨画素に変化した画素の集合である骨形成領域と、第1時点骨像において骨画素であり第2時点骨像において非骨画素に変化した画素の集合である骨吸収領域と、第1時点骨像及び第2時点骨像のいずれにおいても骨画素である画素並びに第1時点骨像及び第2時点骨像のいずれにおいても非骨画素である画素の集合である維持領域と、が識別された骨代謝画像を形成する骨代謝画像形成手段と、
前記骨代謝画像を表示部に表示させる表示手段と、
として機能させることを特徴とする、骨代謝解析支援プログラム。
【請求項2】
前記特徴形状は、前記測定対象骨の皮質骨の形状である、
ことを特徴とする、請求項に記載の骨代謝解析支援プログラム。
【請求項3】
前記コンピュータを、さらに、
前記第1時点骨像及び前記第2時点骨像それぞれにおいて、非骨画素毎に、当該非骨画素から複数の方向における非骨画素の連結量を示す指標である非骨部連結量を演算する非骨部連結量演算手段と、
前記第1時点骨像において演算された複数の非骨部連結量をマッピングして第1非骨部体積指標画像を形成し、前記第2時点骨像において演算された複数の非骨部連結量をマッピングして第2非骨部体積指標画像を形成する非骨部体積指標画像形成手段と、
として機能させ、
前記表示手段は、第1非骨部体積指標画像及び第2非骨部体積指標画像を並列表示させる、
ことを特徴とする、請求項に記載の骨代謝解析支援プログラム。
【請求項4】
前記コンピュータを、さらに、
前記第1時点骨像及び前記第2時点骨像それぞれにおいて、骨画素毎に、当該骨画素から複数の方向における骨画素の連結量を示す指標である骨部連結量を演算する骨部連結量演算手段と、
前記第1時点骨像において演算された複数の骨部連結量をマッピングして第1骨部体積指標画像を形成し、前記第2時点骨像において演算された複数の骨部連結量をマッピングして第2骨部体積指標画像を形成する骨部体積指標画像形成手段と、
として機能させ、
前記表示手段は、第1骨部体積指標画像及び第2骨部体積指標画像を並列表示させる、
ことを特徴とする、請求項又はに記載の骨代謝解析支援プログラム。
【請求項5】
測定対象骨の海綿骨における骨代謝により生じる構造変動の解析を支援するための骨代謝解析支援方法であって、
コンピュータが、
前記測定対象骨を第1時点においてX線撮像して得られた第1投影データ群に基づいて、再構成処理により前記海綿骨を含む第1時点骨像を含む第1X線画像を形成し、前記測定対象骨を第1時点とは異なる第2時点においてX線撮像して得られた第2投影データ群に基づいて、再構成処理により前記海綿骨を含む第2時点骨像を含む第2X線画像を形成するX線画像形成ステップと、
前記第1時点骨像及び前記第2時点骨像それぞれから、前記測定対象骨における、少なくとも前記海綿骨よりも骨代謝量が少ない部分の形状である特徴形状を抽出する特徴形状抽出ステップと、
抽出された前記特徴形状に基づいて、前記第1時点骨像及び前記第2時点骨像の位置合わせ処理を行う位置合わせステップと、
前記第1時点骨像及び前記第2時点骨像に含まれる各画素について、骨梁に対応する骨画素であるか、骨梁以外の部分に対応する非骨画素であるかを識別する画素識別ステップと、
第1時点骨像の画素と、当該画素に位置的に対応する第2時点骨像の画素とを比較することで、第1時点骨像において非骨画素であり第2時点骨像において骨画素に変化した画素の集合である骨形成領域と、第1時点骨像において骨画素であり第2時点骨像において非骨画素に変化した画素の集合である骨吸収領域と、第1時点骨像及び第2時点骨像のいずれにおいても骨画素である画素並びに第1時点骨像及び第2時点骨像のいずれにおいても非骨画素である画素の集合である維持領域と、が識別された骨代謝画像を形成する骨代謝画像形成ステップと、
前記骨代謝画像を表示部に表示させる表示ステップと、
を実行することを特徴とする、骨代謝解析支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨代謝解析支援プログラム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨においては、古い骨が破壊(吸収)される骨吸収と、新しい骨が形成される骨形成とが繰り返し行われており、これらをまとめて骨代謝と呼んでいる。加齢、特定の病気、あるいは薬の服用などにより、骨代謝において骨吸収量が骨形成量を上回ることがある。これが骨粗鬆症を引き起こす原因となる。
【0003】
骨は、その外側を覆う皮質骨と、皮質骨の内側に存在するスポンジ状の海綿骨を有している。海綿骨は、体積当りの表面積が大きく、骨のその他の部分よりも骨吸収量が多いことが知られている。例えば、海綿骨の骨吸収量は、皮質骨のそれよりも約6倍程度多い。したがって、骨吸収量が骨形成量を上回る現象は、海綿骨において生じやすい。骨吸収が進み、海綿骨内の所定部分において、骨梁(海綿骨における骨組)が欠けた部分である骨髄腔が広がると、当該部分には新たな骨は形成されず、骨髄腔が維持され、あるいはさらに骨髄腔が広がることになる。これにより、骨構造(海綿骨内)において、骨折を生じさせ易い脆弱部位が形成されることになる。このことから、骨粗鬆症を要因とする主な骨折部位は、橈骨遠位端、胸腰椎移行部、あるいは大腿骨近位部など、海綿骨の豊富な部位である。
【0004】
さらに、海綿骨における骨梁の喪失は、皮質骨を連結する梁を失うことであり、これにより皮質骨も骨折し易くなる。
【0005】
以上のことから、海綿骨の骨量あるいは骨密度(以下単に「骨密度」と記載する)を測定することが、骨粗鬆症に起因する骨折を防止するために有効であると考えられ、従来、海綿骨の骨密度が測定されている。例えば、非特許文献1には、X線画像であるMDCT(Multi−row Detector Computed Tomography)画像を用い、骨代謝による海綿骨の骨密度を定量的に測定することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Masako Ito et al. Multi-Detector Row CT Imaging of Vertebral Microstructure for Evaluation of Fracture Risk. JOURNAL OF BONE AND MINERAL RESEARCH Volume 20, November 10, 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の骨密度測定においては、測定対象骨像を含むX線画像上において測定者などによって指定された関心領域(ROI;Region Of Interest)内における骨量の和あるいは平均骨密度が数値として算出されていた。従来の骨密度測定法によれば、異なる時点における2つの測定値を比較することで、ROI内全体の骨量あるいは平均骨密度の増減は把握できるものの、算出される数値だけでは、ROI内のうち具体的にどの部分(位置)が脆弱部位であるのか分からないという問題が生じる。
【0008】
また、骨の各位置の骨密度を輝度などで表して画像化した骨密度画像が形成され、異なる時点に対応する2つの骨密度画像を比較することも従来行われている。しかし、従来においては、当該2つの骨密度画像を並べて測定者が目視で比較しており、海綿骨領域の骨密度の微妙な変化などを把握することは困難であった。特に、同じ骨を撮像したものであっても、骨密度画像中における測定対象骨像の位置や向きが異なっている場合は、適切な比較が非常に困難となる。
【0009】
本発明の目的は、骨代謝による海綿骨の構造変動を測定者がより容易に把握することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、測定対象骨の海綿骨における骨代謝により生じる構造変動の解析を支援するための骨代謝解析支援プログラムであって、コンピュータを、前記測定対象骨を第1時点においてX線撮像して得られた第1検出データ群に基づいて、前記海綿骨を含む第1時点骨像を含む第1X線画像を形成し、前記測定対象骨を第1時点とは異なる第2時点においてX線撮像して得られた第2検出データ群に基づいて、前記海綿骨を含む第2時点骨像を含む第2X線画像を形成するX線画像形成手段と、前記第1時点骨像及び前記第2時点骨像それぞれから特徴形状を抽出する特徴形状抽出手段と、抽出された前記特徴形状に基づいて、前記第1時点骨像及び前記第2時点骨像の位置合わせ処理を行う位置合わせ手段と、前記位置合わせ処理された前記第1時点骨像及び第2時点骨像に基づいて、骨代謝による前記海綿骨の構造変動を表す骨代謝画像を形成する骨代謝画像形成手段と、前記骨代謝画像を表示部に表示させる表示手段と、として機能させることを特徴とする。
【0011】
望ましくは、前記特徴形状は、前記測定対象骨における、少なくとも前記海綿骨よりも骨代謝量が少ない部分の形状である。
【0012】
望ましくは、前記特徴形状は、前記測定対象骨の皮質骨の形状である。
【0013】
望ましくは、前記第1X線画像は、前記測定対象骨の骨密度が、第1の色における輝度値によって表現された画像であり、前記第2X線画像は、前記測定対象骨の骨密度が、第2の色における輝度値によって表現された画像であり、前記骨代謝画像は、位置合わせされた前記第1時点骨像及び前記第2時点骨像を合成することで形成され、前記骨代謝画像の各画素の色が、前記第1時点骨像の画素の色と位置的に対応する第2時点骨像の画素の色との合成色である。
【0014】
望ましくは、前記コンピュータを、さらに、前記第1時点骨像及び前記第2時点骨像に含まれる各画素について、骨梁に対応する骨画素であるか、骨梁以外の部分に対応する非骨画素であるかを識別する画素識別手段、として機能させ、前記骨代謝画像は、第1時点骨像の画素と、当該画素に位置的に対応する第2時点骨像の画素との比較において、第1時点骨像において非骨画素であり第2時点骨像において骨画素に変化した画素の集合である骨形成領域と、第1時点骨像において骨画素であり第2時点骨像において非骨画素に変化した画素の集合である骨吸収領域と、第1時点骨像及び第2時点骨像のいずれにおいても骨画素である画素並びに第1時点骨像及び第2時点骨像のいずれにおいても非骨画素である画素の集合である維持領域と、が識別された画像である、ことを特徴とする。
【0015】
望ましくは、前記コンピュータを、さらに、前記第1時点骨像及び前記第2時点骨像それぞれにおいて、非骨画素毎に、当該非骨画素から複数の方向における非骨画素の連結量を示す指標である非骨部連結量を演算する非骨部連結量演算手段と、前記第1時点骨像において演算された複数の非骨部連結量をマッピングして第1非骨部体積指標画像を形成し、前記第2時点骨像において演算された複数の非骨部連結量をマッピングして第2非骨部体積指標画像を形成する非骨部体積指標画像形成手段と、として機能させ、前記表示手段は、第1非骨部体積指標画像及び第2非骨部体積指標画像を並列表示させる、ことを特徴とする。
【0016】
望ましくは、前記コンピュータを、さらに、前記第1時点骨像及び前記第2時点骨像それぞれにおいて、骨画素毎に、当該骨画素から複数の方向における骨画素の連結量を示す指標である骨部連結量を演算する骨部連結量演算手段と、前記第1時点骨像において演算された複数の骨部連結量をマッピングして第1骨部体積指標画像を形成し、前記第2時点骨像において演算された複数の骨部連結量をマッピングして第2骨部体積指標画像を形成する骨部体積指標画像形成手段と、として機能させ、前記表示手段は、第1骨部体積指標画像及び第2骨部体積指標画像を並列表示させる、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、測定対象骨の海綿骨における骨代謝により生じる構造変動の解析を支援するための骨代謝解析支援方法であって、コンピュータが、前記測定対象骨を第1時点においてX線撮像して得られた第1検出データ群に基づいて、前記海綿骨を含む第1時点骨像を含む第1X線画像を形成し、前記測定対象骨を第1時点とは異なる第2時点においてX線撮像して得られた第2検出データ群に基づいて、前記海綿骨を含む第2時点骨像を含む第2X線画像を形成するX線画像形成ステップと、前記第1時点骨像及び前記第2時点骨像それぞれから特徴形状を抽出する特徴形状抽出ステップと、抽出された前記特徴形状に基づいて、前記第1時点骨像及び前記第2時点骨像の位置合わせ処理を行う位置合わせステップと、前記位置合わせ処理された前記第1時点骨像及び第2時点骨像に基づいて、骨代謝による前記海綿骨の構造変動を表す骨代謝画像を形成する骨代謝画像形成ステップと、前記骨代謝画像を表示部に表示させる表示ステップと、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、骨代謝による海綿骨の構造変動を測定者がより容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係るプログラムを実行するための装置の構成概略図である。
図2】処理部が有する複数の機能を図示したブロック図である。
図3】治療前における椎骨のX線断層画像である。
図4】治療後における椎骨のX線断層画像である。
図5】治療前X線断層画像における特徴形状抽出を説明するための図である。
図6】本実施形態における骨代謝画像の例を示す図である。
図7】スターボリューム法による体積指標値演算処理を説明するための図である。
図8】非骨部体積指標画像の表示例を示す図である。
図9】骨部体積指標画像の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るプログラムを実行するための装置の構成概略図である。本実施形態に係るプログラムは、端末10上において実行される。端末10は、汎用PC(Personal Computer)など、当該プログラムが実行可能なコンピュータであれば足りる。
【0022】
端末10は、CPUなどで構成される処理部12、ハードディスクあるいはメモリなどから構成された記憶部14、キーボード、マウス、あるいはタッチパネルなどから構成され、医師などの測定者(ユーザ)の指示を処理部12へ入力するための入力部16、及び液晶パネルなどから構成される表示部18を含んで構成されている。各部はバスを介して接続されており、処理部12から各部へ対してアクセス可能となっている。端末10は、この他、ネットワークに接続するための通信部などが設けられてよい。
【0023】
本実施形態に係るプログラムは、処理部12が読み出し可能な記憶媒体に記憶される。例えば、記憶部14に予め記憶されていてもよく、DVDなどの形態で提供されてもよく、ネットワークを介して提供されてもよい。当該プログラムは、これらの記憶媒体に非一時的に記憶される。処理部12は、プログラムに従って動作することで複数の機能を発揮する。処理部12が有する複数の機能については図2を用いて後述する。
【0024】
端末10には、X線測定装置(不図示)において、被検体の測定対象骨に対してX線撮像が実施され、その結果得られた検出データ群が送られる。当該検出データ群に含まれる各検出データは、被検体を透過したX線の減衰量を元に形成されたものであり、被検体の各位置を透過した各X線経路に対応するものである。つまり、各検出データは、被検体の各位置に対応する座標情報を持っている。各検出データに基づいて、測定対象骨の各位置の骨密度などが演算される。検出データ群を端末10へ送る方法としては、通信部を介して送られてもよいし、携帯メモリなどを介して送られてもよい。また、検出データ群は記憶部14に一旦記憶される。
【0025】
より詳しくは、端末10には、同一被検体の同一測定対象骨について異なる時点におけるX線撮像で取得された少なくとも2つの検出データ群が送られる。本実施形態においては、骨粗鬆症治療薬(ビスホスホネート、テリパラチド、ラロキシフェンなど)の投与前に取得された治療前検出データ群と、骨粗鬆症治療薬の投与後に取得された治療後検出データ群の2つの検出データ群が端末10へ送られる。もちろん、2以上の複数の時点における2以上の検出データ群が端末10へ送られてもよい。
【0026】
図2は、処理部が有する複数の機能を図示したブロック図である。
【0027】
骨密度画像形成部30は、X線測定装置から送られた検出データ群に基づいて、測定対象骨における骨密度の位置的分布を表すX線画像である骨密度画像を形成する。測定対象骨の各位置における骨密度は、骨密度画像が有する各画素の輝度あるいは色相などで表現される。骨密度画像には、測定対象骨に対応する像である測定対象骨像が含まれている。当該測定対象骨像には皮質骨領域及び海綿骨領域が含まれる。
【0028】
骨密度画像形成部30は、治療前における測定対象骨の骨密度分布を表す治療前骨密度画像を治療前検出データ群に基づいて形成し、治療後における測定対象骨の骨密度分布を表す治療後骨密度画像を治療後検出データ群に基づいて形成する。以後、治療前骨密度画像に含まれる測定対象骨像を治療前骨像と、治療後骨密度画像に含まれる測定対象骨像を治療後骨像と記載する。
【0029】
本実施形態においては、治療前骨密度画像においては、骨密度が第1の色(例えば赤色)における輝度で表現されている。詳しくは、骨密度が所定値以上の部分である骨部に対応する画素は第1の色で着色され、その輝度が骨密度に応じて決定される。一方、海綿骨における骨髄部分、軟組織部分(筋肉又は脂肪)、あるいはエア部分などの骨密度がほぼ0(所定値未満)の部分(骨部以外の部分)に対応する画素は輝度値0(つまり黒)で表現される。治療後骨密度画像も同様であるが、骨密度が第1の色とは異なる第2の色(例えば緑色)における輝度で表現されている点において治療前骨密度画像とは異なる。
【0030】
特徴抽出部32は、骨密度画像形成部30が形成した治療前骨密度画像及び治療後骨密度画像をそれぞれ解析し、各骨密度画像に含まれる各測定対象骨像から特徴形状を抽出する。具体的には、治療前骨密度画像に含まれる治療前骨像と、治療後骨密度画像に含まれる治療後骨像とから、同じ処理(基準)において特徴形状をそれぞれ抽出する。
【0031】
後述のように、特徴形状は、治療前骨像及び治療後骨像の位置合わせに用いられるものである。したがって、当該特徴形状は、それによって骨密度画像中における測定対象骨像の位置及び向きを特定するに足りる特徴を有する部分である。位置合わせのためには、両画像において変わらない特徴形状を抽出する必要があるところ、本実施形態においては、位置合わせされる2つの骨像は、骨代謝によってその構造が変動している可能性がある。その事情を鑑みて、特徴形状としては、骨代謝により骨密度が変化しにくい部分の形状が抽出される。詳しくは、少なくとも海綿骨よりも骨代謝量が少ない部分の形状が抽出される。本実施形態では、そのような特徴形状として、各測定対象骨像に含まれる皮質骨の形状が抽出される。皮質骨形状の抽出方法の詳細については、図5を用いて後述する。
【0032】
位置合わせ部34は、治療前骨像及び治療後骨像からそれぞれ抽出された特徴形状に基づいて、治療前骨密度画像と治療後骨密度画像の位置合わせを行う。具体的には、治療前骨密度画像と治療後骨密度画像を重ね合わせたときに、治療前骨像から抽出された特徴形状と治療後骨像から抽出された特徴形状とが丁度重なるように両画像の位置合わせを行う。つまり、両画像の位置合わせとは、それらに含まれる治療前骨像と治療後骨像の位置合わせを行うことである。位置合わせ処理としては、例えば、治療前骨密度画像及び治療後骨密度画像の少なくとも一方について、拡大・縮小処理、平行移動処理、あるいは回転処理を行う。位置合わせ処理においては、既知の画像処理技術を用いることができる。例えば、SSD法による位置合わせ、あるいは相互情報量に基づく位置合わせを行うことができる。
【0033】
位置合わせ処理後、抽出された特徴形状(特徴形状内の所定画素)を基準として、治療前骨密度画像及び治療後骨密度画像の各画素の座標が合わせられるようにしてもよい。このようにすれば、治療前骨密度画像及び治療後骨密度画像において、同一座標の画素が測定対象骨の同一位置を表すものとなるから、以後の演算処理を簡素化することができる。
【0034】
画素識別部36は、治療前骨密度画像及び治療後骨密度画像が有する各画素の画素種を識別する。具体的には、両画像の各画素について、皮質骨や、海綿骨における骨梁などの骨部に対応する骨画素であるのか、それ以外の部分(例えば海綿骨における骨髄、軟組織部分、あるいはエア領域)に対応する非骨画素であるのかを識別する。画素識別部36は、各画像に含まれる各画素の画素値に基づいて、骨画素と非骨画素を識別する。例えば、骨密度が画素の輝度値で表現されている場合は、ある所定の閾値以上の輝度値を有する画素を骨画素と判断し、当該閾値未満の輝度値を有する画素を非骨画素と判断する。
【0035】
骨代謝画像形成部38は、位置合わせされた治療前骨密度画像と治療後骨密度画像に基づいて、測定対象骨の海綿骨における骨代謝による骨梁の形状変動を表す骨代謝画像を形成する。骨代謝画像は、治療前骨密度画像において骨画素だった画素が治療後骨密度画像における対応する画素において非骨画素となった画素の集合である骨吸収領域、治療前骨密度画像において非骨画素だった画素が治療後骨密度画像における対応する画素において骨画素となった画素の集合である骨形成領域、治療前骨密度画像及び治療後骨密度画像においていずれも骨画素だった画素の集合である骨維持領域、及び治療前骨密度画像及び治療後骨密度画像においていずれも非骨画素だった画素の集合である非骨維持領域が識別可能に表現された画像である。骨代謝画像形成の処理内容の詳細については後述する。
【0036】
スターボリューム解析部40は、治療前骨密度画像及び治療後骨密度画像のそれぞれに対してスターボリューム解析処理を行う。本実施形態においては、スターボリューム解析は、骨梁以外の部分(主に骨髄や孔隙、以下単に「骨髄」と記載する)の連結量、つまり骨髄領域(骨髄に対応する画素群)におけるある1点(1画素)から見て骨髄(骨髄に対応する画素)が全方向に向けてどの程度広がっているか示す骨髄体積指標値を演算するものである。また、骨梁の連結量、つまり骨梁領域(骨梁に対応する画素群)におけるある1点(1画素)から見て骨梁(骨梁に対応する画素)が全方向に向けてどの程度広がっているか示す骨梁体積指標値を演算するものである。
【0037】
スターボリューム解析部40は、画素識別部36が識別した治療前骨密度画像及び治療後骨密度画像の各画素の画素種(骨画素であるか非骨画素であるか)に基づいて、骨髄体積指標値及び骨梁体積指標値を演算する。骨髄体積指標値及び骨梁体積指標値は、画素毎に演算される。スターボリューム解析処理の詳細については、図7を用いて後述する。
【0038】
体積指標画像形成部42は、スターボリューム解析部40が治療前骨密度画像の非骨画素毎に演算した複数の骨髄体積指標値をマッピングして治療前骨髄体積指標画像を形成する。各骨髄体積指標値がマッピングされる座標は、対応する非骨画素の座標である。治療前骨髄体積指標画像における骨髄体積指標値は、画素の色相や輝度で表現される。
【0039】
また、体積指標画像形成部42は、スターボリューム解析部40が治療前骨密度画像の骨画素毎に演算した複数の骨梁体積指標値をマッピングして治療前骨梁体積指標画像を形成する。各骨梁体積指標値がマッピングされる座標は、対応する骨画素の座標である。治療前骨梁体積指標画像における骨梁体積指標値も、画素の色相や輝度で表現される。
【0040】
さらに、体積指標画像形成部42は、治療後骨密度画像の非骨画素毎に演算した複数の骨髄体積指標値、及び、治療後骨密度画像の骨画素毎に演算した複数の骨梁体積指標値に基づいて、上記同様に、治療後骨髄体積指標画像及び治療後骨梁体積指標画像を形成する。
【0041】
後述のように、治療前骨梁体積指標画像と治療後骨梁体積指標画像とは並べられて表示され、また、治療前骨髄体積指標画像及び治療後骨髄体積指標画像も並べられて表示される。したがって、体積指標画像形成部42は、位置合わせ部34により位置合わせ処理された後の治療前骨密度画像及び治療後骨密度画像の座標に基づいて上記各体積指標画像を形成するのが好ましい。それにより、測定者が並べられた2つの画像を容易に比較することができる。各体積指標画像の表示態様の詳細については、図8及び図9を用いて後述する。
【0042】
表示制御部44は、骨代謝画像形成部38が形成した骨代謝画像を表示部18に表示させる処理を行う。また、表示制御部44は、体積指標画像形成部42が形成した各体積指標画像を表示部18に表示させる処理を行う。表示制御部44は、治療前骨梁体積指標画像及び治療後骨梁体積指標画像を並べて同時に表示する。同様に、治療前骨髄体積指標画像及び治療後骨髄体積指標画像を並べて同時に表示する。
【0043】
本実施形態に係るプログラムを実行するための装置の構成概略は以上の通りである。以下、椎骨の海綿骨の構造変動解析をする例において、処理部12がプログラムに従って発揮する各機能の処理の詳細について説明する。
【0044】
図3は、骨密度画像形成部30が形成した治療前骨密度画像50の一例が示されている。図3には、測定対象骨像(治療前骨像)として椎骨のX線断層像から構築された3D骨像が示されている。図3においては色が表現されていないが、治療前骨密度画像50においては、骨密度が赤色の輝度値で表現されている。つまり、図3におけるグレー色の部分が本来赤色である。図3に示される通り、治療前骨像における断面の輪郭近傍に対応する画素は、その輝度値が特に高くなっており、つまり骨密度が高くなっている。当該部分が椎骨の皮質骨領域を示している。
【0045】
皮質骨内側の部分は、着色された(輝度値が所定値以上の)部分と、着色されず黒い(輝度値が所定値未満の)部分とが入り乱れており、この部分が海綿骨領域を示している。海綿骨領域のうち着色部が骨梁を表し、非着色部が骨髄を表す。なお、治療前骨像の周囲の黒色部分は軟組織領域であり、骨密度がほぼ0の領域である。
【0046】
図4は、骨密度画像形成部30が形成した治療後骨密度画像52の一例が示されている。図4は、図3に示された同じ椎骨についての治療後のX線断層像から構築された3D骨像(治療後骨像)が示されている。図4においても色が表現されていないが、治療後骨密度画像52においては、骨密度が緑色の輝度で表現されている。つまり、図4におけるグレー色の部分が本来緑色である。図3図4をよく見比べると、海綿骨領域においては、着色部(骨梁)及び非着色部(骨髄)の分布が多少異なっている。これは、骨代謝によって海綿骨の構造が変化したことを示す。具体的には、骨梁及び骨髄の分布が変化している。従来、図3及び図4に示されたような治療前骨密度画像50と治療後骨密度画像52とを並べて、医師などの測定者が各骨像を見比べることで、骨代謝による海綿骨の構造変動を確認していた。図3及び図4を比較すれば分かるように、海綿骨の構造変動はよほど注意して両画像を見比べる必要があり、少なくとも一見してどこが変わったのかを把握することは難しい。
【0047】
一方、治療前骨像と治療後骨像を見比べると、皮質骨の形状、あるいは皮質骨に対応する画素の輝度はほとんど変化がない。つまり、皮質骨は骨代謝による形状変動及び骨密度変動がほとんどないことが分かる。上述の通り、少なくとも、皮質骨は海綿骨よりも骨代謝量が少ない。したがって、特徴抽出部32は、治療前骨像及び治療後骨像から特徴形状として皮質骨の形状を抽出し、位置合わせ部34は、両骨像から抽出された各皮質骨の形状に基づいて両骨像の位置合わせを行う。以下、当該処理について説明する。
【0048】
図5は、特徴抽出部32による皮質骨の形状抽出処理を説明するための図である。なお、図5には、図3と同じ治療前骨密度画像50が示されている。特徴抽出部32は、既知の画像処理技術を利用して治療前骨密度画像50から皮質骨の形状を抽出できる。例えば、治療前骨密度画像50に対して微分フィルタなどを用いてエッジ検出処理を行い、検出されたエッジの一方側において高輝度画素(輝度が所定値以上の画素)が所定量連なっている場合に、当該エッジが皮質骨の外側輪郭であると識別できる。そのようにして識別された皮質骨の外側輪郭が、図5において破線で示されている。
【0049】
皮質骨の外側輪郭が検出された後、当該外側輪郭の内側領域における低輝度画素(輝度が所定値未満の画素)、つまり骨髄に対応する画素の分布などに基づいて皮質骨の内側輪郭(海綿骨領域の外側輪郭)が検出される。そのように検出された皮質骨の内側輪郭が、図5において1点鎖線で示されている。そして、検出された外側輪郭と内側輪郭とで囲まれた領域が皮質骨であるから、当該領域の形状が皮質骨の形状として抽出される。治療後骨密度画像52に対しても同様の処理がなされ、皮質骨の形状が抽出される。両画像から皮質骨の形状が抽出されると、上述の通り、位置合わせ部34により治療前骨像と治療後骨像が位置合わせされる。
【0050】
以下、骨代謝画像形成部38による骨代謝画像の形成方法の詳細について説明する。骨代謝画像の形成方法としては様々な方法を採用することができる。例えば、本実施形態のように、治療前骨密度画像において骨密度が第1の色(赤色)の輝度で表現され、治療後骨密度画像において骨密度が第1の色とは異なる第2の色(緑色)の輝度で表現されている場合、位置合わせされた両画像を合成することで骨代謝画像を得ることができる。具体的には、両画像を重ね合わせた上で、合成画像の各画素の色を、治療前骨密度画像の各画素の色と、位置的に対応する治療後骨密度画像の各画素の色との合成色とすることにより骨代謝画像を得ることができる。
【0051】
図6には、そのような合成処理で得られた骨代謝画像54が示されている。骨代謝画像54においては、治療前骨密度画像と治療後骨密度画像のいずれにおいても着色された部分(つまり所定値以上の輝度値(骨密度値)を有する画素)は、赤色と緑色の合成色である黄色(図6においてグレー色)で示される。また、治療前骨密度画像において赤色で着色され、治療後骨密度画像において着色されなかった部分(つまり黒)は、赤色と黒の合成色である赤色(図6においてドット)で示される。また、治療前骨密度画像において着色されず、治療後骨密度画像において緑色で着色された部分は、黒と緑色の合成色である緑色(図6において斜線)で示される。さらに、治療前骨密度画像と治療後骨密度画像のいずれにおいても着色されなかった部分は、黒と黒の合成色である黒で示される。
【0052】
骨代謝画像54において、海綿骨領域に着目すると、黄色で示された部分(画素群)は、治療前後において骨梁が維持されたか、あるいは一度骨吸収により消失し再度骨形成により骨梁が出現した骨維持領域を表す。また、赤色で示された部分(画素群)は、治療前において骨梁が有ったのに治療後において骨梁が消失した骨吸収領域を表す。また、緑色で示された部分(画素群)は、治療前において骨梁が無かったのに治療後において骨梁が出現した骨形成領域を表す。さらに、黒で示された部分(画素群)は、治療前後のいずれにおいても骨梁が現れなかった部分(非骨維持領域)を表す。このように、当該骨代謝画像においては、上記各領域が色によって識別されており、つまり海綿骨における構造変動が表現されている。
【0053】
骨代謝画像54においては、骨維持領域、骨吸収領域、骨形成領域、及び非骨維持領域が識別されているから、測定者は、容易に海綿骨構造の変動を把握することができる。例えば、骨代謝画像54において骨吸収領域(赤色領域)が固まって表れていれば、海綿骨のうち、当該位置が骨代謝により弱体化したこと、つまり骨折の危険性が高い位置であることが分かる。一方、骨代謝画像54において骨形成領域(緑色領域)が多く現れていれば、骨粗鬆症治療薬の効果がよく現れていることなどが容易に把握することができる。このように、本実施形態によれば、測定対象骨の海綿骨において、具体的にどの部分が弱体化したのか、あるいは強化したのかを容易に把握することができる。
【0054】
さらに、骨代謝画像54によれば、骨吸収領域(赤色領域)における画素の輝度に基づいて、測定者は、骨代謝により失われた骨梁による海綿骨の弱体化度を推し量ることができる。詳しくは、骨代謝画像54の骨吸収領域おける赤色の高輝度部分は、治療前においては、高い骨密度の骨梁が存在していたのに、治療後においてそれが消失したことを意味する。したがって、骨代謝画像54における赤色の高輝度部分は、骨代謝によって海綿骨が大きく弱体化した箇所であると判断できる。同様に、骨形成領域(緑色領域)における画素の輝度に基づいて、測定者は、骨代謝により形成された骨梁による海綿骨構造の強化度を推し量ることができる。詳しくは、骨代謝画像54の骨形成領域おける緑色の高輝度部分は、治療前においては、骨梁が存在していなかったのに、治療後において高骨密度の骨梁が形成されたことを示す。したがって、骨代謝画像54における緑色の高輝度部分は、骨代謝によって海綿骨が大きく強化された箇所であると判断できる。
【0055】
なお、当該骨代謝画像の形成方法を採用するならば、骨代謝画像の形成過程において画素識別部36の処理を省略することができる。
【0056】
また、骨代謝画像形成部38は、画素識別部36の処理結果を利用して骨代謝画像を形成することができる。具体的には、位置合わせ後における治療前骨密度画像の各画素と、それと位置的に対応する治療後骨密度画像の各画素との比較において、治療前骨密度画像において非骨画素であり治療後骨密度画像において骨画素となった画素を抽出してまとめて骨形成領域とする。同様に、治療前骨密度画像において骨画素であり治療後骨密度画像において非骨画素となった画素を抽出してまとめて骨吸収領域とする。また、両画像において骨画素である画素を抽出してまとめて骨維持領域とし、両画像において非骨画素である画素を抽出してまとめて非骨維持領域とする。その後、骨代謝画像形成部38は、各領域を識別可能な態様で組み合わせることで、骨代謝画像を形成する。例えば、各画素群を色相で識別してもよいし、輝度で識別してもよい。
【0057】
以下、スターボリューム解析部40及び体積指標画像形成部42の処理の詳細について説明する。
【0058】
図7には、治療前骨密度画像(あるいは治療後骨密度画像)における海綿骨領域における骨梁領域(画素群)60と、その周囲に存在する骨髄領域(画素群)62を模した図が示されている。骨梁領域60及び骨髄領域62は、画素識別部36によって識別されている。
【0059】
まず、骨髄領域62に含まれる各画素についての骨髄体積指標値の演算方法について説明する。スターボリューム解析部40は、最初に、骨髄領域62に含まれる画素のうちの1つである注目画素64を指定する。そして、注目画素64から複数の方向に向けて複数の直線66a〜fを形成する。図7の例においては、当該直線は6本示されているが、それ以外の本数であってもよい。直線の数が多い程骨髄体積指標値の精度が高まるため、より多い本数の直線が形成されるのが好ましい。
【0060】
各直線66a〜fは、注目画素64から、骨画素(骨梁領域60に含まれる画素あるいは皮質骨領域に含まれる画素)に至るまで延伸する。つまり、各直線の長さは、注目画素64から各方向における骨画素までの距離、換言すれば、各方向における非骨画素の連結量を示すものである。そのように形成された複数の直線66a〜fの長さに基づいて、注目画素64についての骨髄体積指標が演算される。例えば、複数の直線66a〜fの長さの平均値に基づいて骨髄体積指標が演算される。このように演算された骨髄体積指標は、注目画素64から複数の方向に対する非骨画素の連結量を示す指標である。これは、注目画素64を中心とした骨髄領域の複数の方向への広がり量を示す指標として利用できる。上記演算処理が、骨髄領域62に含まれる全画素(全非骨画素)について行われ、骨髄領域62に含まれる各非骨画素について骨髄体積指標が演算される。
【0061】
上記と同様の処理によって、骨梁領域60に含まれる各画素についての骨梁体積指標が演算される。スターボリューム解析部40は、骨梁領域60に含まれる画素のうちの1つである注目画素68を指定する。そして、注目画素68から複数の方向に向けて複数の直線70a〜fを形成する。もちろん、直線の数はこれに限られない。複数の直線70a〜fは、注目画素68から非骨画素に至るまで延伸する。そして、複数の直線70a〜fの長さに基づいて、注目画素68についての骨梁体積指標が演算される。骨梁領域60においても、各画素について上記演算が行われ、骨梁領域60に含まれる各骨画素について骨梁体積指標が演算される。
【0062】
図8には、治療前骨髄体積指標画像80及び治療後骨髄体積指標画像82の表示例が示されている。図8に示されるように、2つの画像は並べられて表示される。本実施形態においては、各画素の骨髄体積指標値は画素の色で表現されている。具体的には、両画像中における骨髄体積指標値が最大の画素は赤色で着色され、骨髄体積指標値が最小の画素は青色で着色され、その間の値を有する画素は、当該値に応じて赤から青までの色相環に従った色で着色される。
【0063】
治療前骨髄体積指標画像80の右上に赤色画素群80aが認められる。赤色画素群80aに含まれる各画素の骨髄体積指標値は非常に大きいことを意味する。つまり、赤色画素群80aが存在する位置は、当該位置からその周囲にある骨梁までの距離の平均値が大きい部分であるといえる。したがって、赤色画素群80aが存在する位置に骨髄腔があると把握できる。赤色画素群80aの面積が大きい程、当該骨髄腔が大きく広がっているといえる。
【0064】
治療後骨髄体積指標画像82の右上にも赤色画素群82aが認められる。つまり、治療後においても、赤色画素群82aが存在する位置に骨髄腔があることになるが、治療前骨髄体積指標画像80の赤色画素群80aの面積に比して、治療後骨髄体積指標画像82の赤色画素群82aの面積が小さくなっている。このことから、治療前にあった骨髄腔が小さくなった(つまり治療前にあった骨髄腔の外側輪郭近傍に新たな骨梁が形成された)ことが把握できる。
【0065】
上述のように、治療前骨髄体積指標画像80及び治療後骨髄体積指標画像82は、位置合わせされた治療前骨密度画像及び治療後骨密度画像に基づいて形成されるため、治療前骨髄体積指標画像80及び治療後骨髄体積指標画像82は、その拡大率と向きが合わせられた状態において並列表示される。これにより、両画像の比較がより容易になっている。
【0066】
図9には、治療前骨梁体積指標画像90及び治療後骨梁体積指標画像92の表示例が示されている。骨髄体積指標画像と同様に、治療前骨梁体積指標画像90及び治療後骨梁体積指標画像92も並べられて表示される。骨梁体積指標画像においても、各画素の骨梁体積指標値は画素の色で表現されている。
【0067】
治療後骨梁体積指標画像92の右上に、治療前骨梁体積指標画像90の当該位置には認められなかった赤色画素群92aが認められる。赤色画素群92aに含まれる各画素の骨梁体積指標値は非常に大きいことを意味する。つまり、赤色画素群92aが存在する位置は、当該位置からその周囲にある骨髄までの距離の平均値が大きい部分であるといえ、すなわち骨梁の連結度が高いということである。したがって、治療前骨梁体積指標画像90及び治療後骨梁体積指標画像92を見比べることで、赤色画素群92aの位置において骨梁の連結度が向上したことが把握できる。
【0068】
このように、各体積指標画像によれば、骨髄腔の大きさあるいは骨梁の連結度を容易に把握することが可能になる。さらに、治療前骨髄体積指標画像80及び治療後骨髄体積指標画像82、あるいは、治療前骨梁体積指標画像90及び治療後骨梁体積指標画像92を並べて表示させることにより、治療前後における骨髄腔の大きさの変動、あるいは骨梁の連結度の変動を容易に把握することが可能になる。
【0069】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 端末、12 処理部、14 記憶部、16 入力部、18 表示部、30 骨密度画像形成部、32 特徴抽出部、34 位置合わせ部、36 画素識別部、38 骨代謝画像形成部、40 スターボリューム解析部、42 体積指標画像形成部、44 表示制御部、50 治療前画像、52 治療後画像、54 骨代謝画像、60 骨梁領域、62 骨髄領域、64,68 注目画素、66a〜f,70a〜f 直線、80 治療前骨髄体積指標画像、80a,82a,92a 赤色画素群、82 治療後骨髄体積指標画像、90 治療前骨梁体積指標画像、92 治療後骨梁体積指標画像。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9