【文献】
VIRxSYS Corporation, FDA Biological Response Modifiers Advisory Committee Meeting Briefing Package, Autologous T cells Transduced with VRX496, an HIV-1 based lentiviral vector for the treatment of patient-subjects infected with HIV-1, 2001, <URL:https://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/01/briefing/3794b3_13_sponsor.pdf> [Retrieved on 2018-01-09]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記混入物が、エンドトキシン、マイコプラズマ、抗CD3/抗CD28でコーティングされた残留ビーズ、マウス抗体、プールされたヒト血清、ウシ血清アルブミン、ウシ血清、培養培地構成成分、ベクターパッケージング細胞またはプラスミド構成成分、細菌および真菌からなる群より選択されるうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1記載の方法。
前記細菌が、アルガリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、大腸菌(Escherichia coli)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)、および化膿性連鎖球菌A群(Streptococcus pyogenes group A)からなる群より選択されるうちの少なくとも1つである、請求項3または4記載の方法。
前記腫瘍抗原が、CD19、CD20、CD22、ROR1、メソテリン、CD33/IL3Ra、c-Met、PSMA、糖脂質F77、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1 TCR、MAGE A3 TCR、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項9記載の方法。
前記共刺激シグナル伝達領域が、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される共刺激分子の細胞内ドメインを含む、請求項1記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本発明は、ヒト対象への投与を予定しているT細胞の形質導入に適しているキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含むベクターを作製する方法に関する。本発明はまた、ヒト対象への投与を予定しているT細胞に、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含むベクターによって形質導入を行う方法にも関する。好ましい態様において、ベクターはレンチウイルスベクターである。本発明は、CARを発現するようにレンチウイルスベクターによって形質導入されたT細胞の養子細胞移入に関する。CARとは、特異的な抗腫瘍細胞免疫活性を呈するキメラタンパク質を作製するために、抗体に基づく所望の標的抗原(例えば、腫瘍抗原)に対する特異性と、T細胞受容体を活性化する細胞内ドメインとを組み合わせた分子のことである。
【0023】
いくつかの態様において、本発明の方法は、ヒト対象への投与を予定しているT細胞の形質導入のために有用なベクター上清を分析する方法に関する。他の態様において、本発明の方法は、ヒト対象への投与を予定しているT細胞を分析する方法に関する。さまざまな態様において、本発明の分析方法は、T細胞の生存度、T細胞の特徴(例えば、CD3、CD4、CD8、CD25、CD27、CD45RA、CD57、CD62L、CD95、CD127、CD134、CD244. CCR7、CD40L、CTLA4、PD-1、HLA-DR、TIM3、Ki-67、パーフォリン、および/またはグランザイムの発現)、形質導入効率を分析する方法、ならびに製造過程に付随する混入物、例えば、エンドトキシン、マイコプラズマ、複製能を有するレンチウイルス(RCL)、p24、VSV-G核酸、HlVgag、抗CD3/抗CD28でコーティングされた残留ビーズ、マウス抗体、プールされたヒト血清、ウシ血清アルブミン、ウシ血清、培養培地構成成分、ベクターパッケージング細胞またはプラスミド構成成分、細菌(例えば、アルガリゲネス・フェカリス、カンジダ・アルビカンス、大腸菌、インフルエンザ菌、髄膜炎菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、および化膿性連鎖球菌A群)、および真菌などの検出および定量の方法を含む。本発明は、いかなる特定の混入物にも限定されない。より正確には、本発明は、形質導入T細胞の安全性または有効性に影響を及ぼすあらゆる混入物の分析の方法を含む。
【0024】
本発明は、全体として、所望のCARを安定して発現するようにT細胞を遺伝子改変するためのベクターの使用に関する。CARを発現するT細胞を、本明細書では、CAR T細胞またはCAR改変T細胞と称する。細胞を、抗体結合ドメインをその表面で安定して発現し、MHCに依存しない新規な抗原特異性を付与するように遺伝子改変することが好ましい。場合によっては、T細胞は一般に、特異的抗体の抗原認識ドメインとCD3-ζ鎖またはFcγRIタンパク質の細胞内ドメインとを組み合わせて単一のキメラタンパク質としたCARを安定して発現するように遺伝子改変される。
【0025】
1つの態様において、本発明のCARは、抗原認識ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを有する細胞外ドメインを含む。1つの態様においては、CARの中のドメインの1つに天然に付随する膜貫通ドメインを用いる。もう1つの態様において、膜貫通ドメインを、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるために、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに対するそのようなドメインの結合を避けるように選択すること、またはそのためのアミノ酸置換によって選択もしくは改変することもできる。好ましくは、膜貫通ドメインはCD8αヒンジドメインである。
【0026】
細胞質ドメインに関して、本発明のCARは、CD28および/または4-1BBシグナル伝達ドメインを単独で、または本発明のCARに関連して有用な他の任意の所望の細胞質ドメインと組み合わせて含むように設計することができる。1つの態様において、CARの細胞質ドメインは、CD3-ζのシグナル伝達ドメインをさらに含むように設計することができる。例えば、CARの細胞質ドメインは、CD3-ζ、4-1BBおよびCD28のシグナル伝達モジュール、ならびにこれらの組み合わせを非限定的に含みうる。したがって、本発明は、CAR T細胞、および養子療法のためのそれらの使用の方法に関する。
【0027】
本発明は、CD3-ζおよび4-1BBの共刺激ドメインの両方を含む抗CD19 CARをコードする核酸を含むベクターを作製する方法を含んだ。1つの態様において、ベクターは、所望のCAR、例えば、抗CD19、CD8aのヒンジおよび膜貫通ドメイン、ならびにヒト4-1BBおよびCD3ζのシグナル伝達ドメインを含むCARを含む。本発明は、抗CD19を含むCARに限定されず、CD137(4-1BB)シグナル伝達ドメイン、CD28シグナル伝達ドメイン、CD3ζシグナルドメイン、およびこれらの任意の組み合わせの群から選択される1つまたは複数の細胞内ドメインと融合した、あらゆる抗原結合モイエティーも含む。好ましい態様において、ベクターはレンチウイルスベクターである。
【0028】
定義
別に定める場合を除き、本明細書で用いる技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書中に記載されたものと同様または同等な任意の方法および材料を本発明の試験のために実地に用いることができるが、本明細書では好ましい材料および方法について説明する。本発明の説明および特許請求を行う上では、以下の専門用語を用いる。
【0029】
また、本明細書中で用いる専門用語は、特定の態様を説明することのみを目的とし、限定的であることは意図しないことも理解される必要がある。
【0030】
「1つの(a)」および「1つの(an)」という冠詞は、本明細書において、その冠詞の文法的目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指して用いられる。一例として、「1つの要素」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0031】
量、時間的長さなどの測定可能な値に言及する場合に本明細書で用いる「約」は、特定された値からの±20%または±10%、場合によっては±5%、場合によっては±1%、および場合によっては±0.1%のばらつきを範囲に含むものとするが、これはそのようなばらつきが、開示された方法を実施する上で妥当なためである。
【0032】
「活性化」とは、本明細書で用いる場合、検出可能な細胞増殖を誘導するように十分に刺激されたT細胞の状態のことを指す。また、活性化が、サイトカイン産生の誘導および検出可能なエフェクター機能を伴うこともある。「活性化されたT細胞」という用語は、とりわけ、細胞分裂を行っているT細胞のことを指す。
【0033】
「抗体」という用語は、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子のことを指す。抗体は、天然供給源または組換え供給源に由来する無傷の免疫グロブリンであってもよく、無傷の免疫グロブリンの免疫応答部分であってもよい。抗体は典型的には、免疫グロブリン分子のテトラマーである。本発明における抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab)
2、ならびに単鎖抗体およびヒト化抗体を含む、種々の形態で存在しうる(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY;Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York;Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。
【0034】
「抗体フラグメント」という用語は、無傷の抗体の一部分のことを指し、無傷の抗体の抗原決定可変領域のことも指す。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFvフラグメント、直鎖状抗体、ScFv抗体、ならびに抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が非限定的に含まれる。
【0035】
「抗体重鎖」とは、本明細書で用いる場合、天然に存在するコンフォメーションにあるすべての抗体分子中に存在する2種類のポリペプチド鎖のうち、大きい方のことを指す。
【0036】
「抗体軽鎖」とは、本明細書で用いる場合、天然に存在するコンフォメーションにあるすべての抗体分子中に存在する2種類のポリペプチド鎖のうち、小さい方のことを指す。κ軽鎖およびλ軽鎖とは、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプのことを指す。
【0037】
本明細書で用いる「合成抗体」とは、組換えDNA技術を用いて作製される抗体、例えば、本明細書に記載のバクテリオファージによって発現される抗体のことを意味する。この用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成によって作製される抗体であって、そのDNA分子が抗体タンパク質またはその抗体を指定するアミノ酸配列を発現し、そのDNA配列またはアミノ酸配列が、利用可能であって当技術分野において周知であるDNA配列またはアミノ酸配列の合成技術を用いて得られたような抗体も意味するとみなされるべきである。
【0038】
本明細書で用いる「抗原」または「Ag」という用語は、免疫応答を誘発する分子と定義される。この免疫応答には、抗体産生、または特異的免疫適格細胞の活性化のいずれかまたは両方が含まれうる。当業者は、事実上すべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原としての役を果たしうることを理解するであろう。その上、抗原が組換えDNAまたはゲノムDNAに由来してもよい。当業者は、免疫応答を惹起するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、それ故に、本明細書中でその用語が用いられる通りの「抗原」をコードすることを理解するであろう。その上、当業者は、抗原が遺伝子の完全長ヌクレオチド配列のみによってコードされる必要はないことも理解するであろう。本発明が複数の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を非限定的に含むこと、およびこれらのヌクレオチド配列が所望の免疫応答を惹起するさまざまな組み合わせで並べられていることは直ちに明らかである。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要が全くないことも理解するであろう。抗原を合成して作製することもでき、または生物試料から得ることもできることは直ちに明らかである。そのような生物試料には、組織試料、腫瘍試料、細胞または生体液が非限定的に含まれうる。
【0039】
本明細書で用いる「抗腫瘍効果」という用語は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞の数の減少、転移の数の減少、期待余命の延長、または癌性病状に付随するさまざまな生理的症状の改善によって明らかになる生物学的効果のことを指す。「抗腫瘍効果」はまた、腫瘍のそもそもの発生を予防する、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞および抗体の能力によっても明らかになる。
【0040】
「自己抗原」という用語は、本発明によれば、免疫系によって外来性であると誤って認識されるあらゆる自己抗原のことを意味する。自己抗原には、細胞表面受容体を含む、細胞タンパク質、リンタンパク質、細胞表面タンパク質、細胞脂質、核酸、糖タンパク質が非限定的に含まれる。
【0041】
本明細書で用いる「自己免疫疾患」は、自己免疫反応に起因する障害と定義される。自己免疫疾患は、自己抗原に対する不適切かつ過剰な反応の結果である。自己免疫疾患の例には、とりわけ、アジソン病、円形脱毛症(alopecia greata)、強直性脊椎炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性耳下腺炎、クローン病、糖尿病(1型)、栄養障害型表皮水疱症、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー(Guillain-Barr)症候群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、甲状腺炎、血管炎、尋常性白斑、粘液水腫、悪性貧血、潰瘍性大腸炎が非限定的に含まれる。
【0042】
本明細書で用いる場合、「自己」という用語は、後にその個体に再び導入される、同じ個体に由来する任意の材料を指すものとする。
【0043】
「同種」とは、同じ種の異なる動物に由来する移植片のことを指す。
【0044】
「異種」とは、異なる種の動物に由来する移植片のことを指す。
【0045】
本明細書で用いる「癌」という用語は、異常細胞の急速かつ制御不能な増殖を特徴とする疾患と定義される。癌細胞は局所的に広がることもあれば、または血流およびリンパ系を通じて身体の他の部分に広がることもある。さまざまな癌の例には、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵癌、結腸直腸癌、腎癌、肝臓癌、脳悪性腫瘍、リンパ腫、白血病、肺癌などが非限定的に含まれる。
【0046】
「共刺激リガンド」には、この用語が本明細書で用いられる場合、T細胞上のコグネイト共刺激分子と特異的に結合し、それにより、例えば、ペプチドが負荷されたMHC分子のTCR/CD3複合体への結合によって与えられる一次シグナルに加えて、増殖、活性化、分化などを非限定的に含むT細胞応答を媒介するシグナルも与えることのできる、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上の分子が含まれる。共刺激リガンドには、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞内接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、Tollリガンド受容体に結合するアゴニストまたは抗体、およびB7-H3に特異的に結合するリガンドが非限定的に含まれる。共刺激リガンドはまた、とりわけ、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3などの、ただしこれらに限定されない、T細胞上に存在する共刺激分子に特異的に結合する抗体、およびCD83に特異的に結合するリガンドも包含する。
【0047】
「共刺激分子」とは、共刺激リガンドに特異的に結合し、それにより、増殖などの、ただしこれに限定されない、T細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上のコグネイト結合パートナーのことを指す。共刺激分子には、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体が非限定的に含まれる。
【0048】
「共刺激シグナル」とは、本明細書で用いる場合、TCR/CD3連結などの一次シグナルとの組み合わせで、T細胞の増殖、および/または鍵となる分子のアップレギュレーションもしくはダウンレギュレーションを導く分子のことを指す。
【0049】
「疾患」とは、動物が恒常性を維持することができず、その疾患が改善しなければその動物の健康が悪化し続ける、動物の健康状態のことを指す。対照的に、動物における「障害」とは、その動物が恒常性を維持することはできるが、その動物の健康状態が、障害の非存在下にあるよりもより不都合である健康状態のことである。治療されないままであっても、障害は必ずしもその動物の健康状態のさらなる低下を引き起こすとは限らない。
【0050】
本明細書で用いる「有効量」とは、治療的または予防処置的な有益性をもたらす量のことを意味する。
【0051】
「コードする」とは、所定のヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)または所定のアミノ酸配列のいずれか、およびそれに起因する生物学的特性を有する、生物過程において他のポリマーおよび高分子の合成のためのテンプレートとして働く、遺伝子、cDNAまたはmRNAなどのポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列の固有の特性のことを指す。すなわち、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳によって細胞または他の生体系においてタンパク質が産生される場合、そのタンパク質をコードする。mRNA配列と同一であって通常は配列表として提示されるヌクレオチド配列を有するコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のためのテンプレートとして用いられる非コード鎖の両方を、タンパク質、またはその遺伝子もしくはcDNAの他の産物をコードすると称することができる。
【0052】
本明細書で用いる場合、「内因性」とは、生物体、細胞、組織もしくは系に由来するか、またはその内部で産生される任意の材料のことを指す。
【0053】
本明細書で用いる場合、「外因性」という用語は、生物体、細胞、組織もしくは系に導入されるか、またはそれらの外部で産生される任意の材料のことを指す。
【0054】
本明細書で用いる「発現」という用語は、そのプロモーターによって作動する特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳と定義される。
【0055】
「発現ベクター」とは、発現させようとするヌクレオチド配列と機能的に連結した発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターのことを指す。発現ベクターは、発現のために十分なシス作用エレメントを含む;発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、またはインビトロ発現系において供給されうる。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドを組み入れたコスミド、プラスミド(例えば、裸のもの、またはリポソーム中に含まれるもの)およびウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)といった、当技術分野において公知であるすべてのものが含まれる。
【0056】
「相同な」とは、2つのポリペプチドの間または2つの核酸分子の間の配列類似性または配列同一性のことを指す。比較する2つの配列の両方において、ある位置が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットによって占められている場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれにおいて、ある位置がアデニンによって占められている場合には、それらの分子はその位置で相同である。2つの配列間の相同度(percent of homology)は、2つの配列が共通して持つ一致する位置または相同な位置の数を、比較する位置の数によって除算した上で100を掛けた関数である。例えば、2つの配列中の10個の位置のうち6個が一致するかまたは相同であるならば、2つの配列は60%相同である。一例として、DNA配列ATTGCCおよびTATGGCは50%の相同性を有する。一般に、比較は、最大の相同性が得られるように2つの配列のアラインメントを行った上で行われる。
【0057】
「免疫グロブリン」または「Ig」という用語は、本明細書で用いる場合、抗体として機能するタンパク質のクラスと定義される。B細胞によって発現される抗体は、BCR(B細胞受容体)または抗原受容体と称されることも時にある。このタンパク質のクラスに含まれる5つのメンバーは、IgA、IgG、IgM、IgDおよびIgEである。IgAは、唾液、涙液、母乳、消化管分泌物、ならびに気道および泌尿生殖路の粘液分泌物などの身体分泌物中に存在する主要な抗体である。IgGは、最も一般的な流血中抗体である。IgMは、ほとんどの哺乳動物で一次免疫応答において産生される主な免疫グロブリンである。これは凝集反応、補体固定および他の抗体応答において最も効率的な免疫グロブリンであり、細菌およびウイルスに対する防御に重要である。IgDは抗体機能が判明していない免疫グロブリンであるが、抗原受容体として働いている可能性がある。IgEは、アレルゲンに対する曝露時にマスト細胞および好塩基球からのメディエーターの放出を引き起こすことによって即時型過敏症を媒介する免疫グロブリンである。
【0058】
本明細書で用いる場合、「説明材料(instructional material」には、本発明の組成物および方法の有用性を伝えるために用いうる、刊行物、記録、略図または他の任意の表現媒体が含まれる。本発明のキットの説明材料は、例えば、本発明の核酸、ペプチドおよび/もしくは組成物を含む容器に添付してもよく、または核酸、ペプチドおよび/もしくは組成物を含む容器と一緒に出荷してもよい。または、説明材料および化合物がレシピエントによって一体として用いられることを意図して、説明材料を容器と別に出荷してもよい。
【0059】
「単離された」とは、天然の状態から変更されるかまたは取り出されたことを意味する。例えば、生きた動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離されて」いないが、その天然の状態で共存する物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは、「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することもでき、または例えば宿主細胞などの非ネイティブ性環境で存在することもできる。
【0060】
本発明に関連して、一般的に存在する核酸塩基に関しては以下の略語を用いる。「A」はアデノシンのことを指し、「C」はシトシンのことを指し、「G」はグアノシンのことを指し、「T」はチミジンのことを指し、「U」はウリジンのことを指す。
【0061】
本明細書で用いる「レンチウイルス」とは、レトロウイルス科(Retroviridae)ファミリーの属のことを指す。レンチウイルスは、非分裂細胞を感染させうるという点で、レトロウイルスの中でも独特である;それらはかなりの量の遺伝情報を宿主細胞のDNA中に送達することができるため、それらは遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIVおよびFIVはすべて、レンチウイルスの例である。レンチウイルスに由来するベクターは、インビボでかなり高いレベルの遺伝子移入を達成するための手段を与える。
【0062】
「モジュレートする」という用語は、本明細書で用いる場合、治療もしくは化合物の非存在下でのその対象における反応のレベルと比較して、および/または他の点では同一であるが治療を受けていない対象における反応のレベルと比較して、対象における反応のレベルの検出可能な増加または減少を媒介することを意味する。この用語は、対象、好ましくはヒトにおいて、ネイティブ性のシグナルまたは反応を擾乱させるか、および/またはそれに影響を及ぼして、それにより、有益な治療反応を媒介することを包含する。
【0063】
別に指定する場合を除き、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、相互に縮重型であって、かつ同じアミノ酸配列をコードする、すべてのヌクレオチドが含まれる。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列が、イントロンを含んでもよい。
【0064】
「機能的に連結した」という用語は、調節配列と異種核酸配列との間の、後者の発現を結果的にもたらす機能的連結のことを指す。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列との機能的関係の下で配置されている場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と機能的に連結している。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼすならば、プロモーターはコード配列と機能的に連結している。一般に、機能的に連結したDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を連結することが必要な場合には、同一のリーディングフレーム内にある。
【0065】
「過剰発現された」腫瘍抗原または腫瘍抗原の「過剰発現」という用語は、患者の特定の組織または臓器の内部にある固形腫瘍のような疾患領域からの細胞における腫瘍抗原の発現が、その組織または臓器からの正常細胞における発現のレベルに比して異常なレベルであることを指し示すことを意図している。腫瘍抗原の過剰発現を特徴とする固形腫瘍または血液悪性腫瘍を有する患者は、当技術分野において公知の標準的なアッセイによって判定することができる。
【0066】
免疫原性組成物の「非経口的」投与には、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)または胸骨内の注射法または輸注法が含まれる。
【0067】
「患者」、「対象」、「個体」などの用語は、本明細書において互換的に用いられ、本明細書に記載の方法を適用しうる、インビトロまたはインサイチューの別を問わない、任意の動物またはその細胞のことを指す。ある非限定的な態様において、患者、対象または個体はヒトである。
【0068】
本明細書で用いる「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの連鎖と定義される。その上、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書で用いる核酸およびポリヌクレオチドは互換的である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、それらはモノマー性「ヌクレオチド」に加水分解されうるという一般知識を有する。モノマー性ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解されうる。本明細書で用いるポリヌクレオチドには、組換え手段、すなわち通常のクローニング技術およびPCRなどを用いて組換えライブラリーまたは細胞ゲノムから核酸配列をクローニングすること、および合成手段を非限定的に含む、当技術分野で利用可能な任意の手段によって得られる、すべての核酸配列が非限定的に含まれる。
【0069】
本明細書で用いる場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は互換的に用いられ、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基で構成される化合物のことを指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなくてはならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成しうるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって相互に結合した2つまたはそれ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が含まれる。本明細書で用いる場合、この用語は、例えば、当技術分野において一般的にはペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも称される短鎖、ならびに当技術分野において一般にタンパク質と称される長鎖の両方のことを指し、それらには多くの種類がある。「ポリペプチド」には、いくつか例を挙げると、例えば、生物学的活性断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0070】
本明細書で用いる「プロモーター」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始させるために必要な、細胞の合成機構または導入された合成機構によって認識されるDNA配列と定義される。
【0071】
本明細書で用いる場合、「プロモーター/調節配列」という用語は、プロモーター/調節配列と機能的に連結した遺伝子産物の発現のために必要とされる核酸配列を意味する。ある場合には、この配列はコアプロモーター配列であってよく、また別の場合には、この配列が、遺伝子産物の発現に必要とされるエンハンサー配列および他の制御エレメントをも含んでもよい。プロモーター/制御配列は、例えば、組織特異的な様式で遺伝子産物を発現させるものであってもよい。
【0072】
「構成性」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、細胞のほとんどまたはすべての生理学的条件下で、その遺伝子産物が細胞内で産生されるようにするヌクレオチド配列のことである。
【0073】
「誘導性」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、実質的にはそのプロモーターに対応する誘導物質が細胞内に存在する場合にのみ、その遺伝子産物が細胞内で産生されるようにするヌクレオチド配列のことである。
【0074】
「組織特異的」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、実質的には細胞がそのプロモーターに対応する組織型の細胞である場合にのみ、その遺伝子産物が細胞内で産生されるようにするヌクレオチド配列のことである。
【0075】
「特異的に結合する」という用語は、抗体に関して本明細書で用いる場合、試料中の特異的な抗原を認識するが、他の分子は実質的に認識もせず、それらと結合もしない抗体のことを意味する。例えば、1つの種由来の抗原と特異的に結合する抗体が、1つまたは複数の種由来のその抗原と結合してもよい。しかし、そのような種間反応性はそれ自体では、抗体の分類を特異的として変更させることはない。もう1つの例において、抗原と特異的に結合する抗体が、その抗原の異なるアレル形態と結合してもよい。しかし、そのような交差反応性はそれ自体では、抗体の分類を特異的として変更させることはない。場合によっては、「特異的結合」または「特異的に結合する」という用語を、抗体、タンパク質またはペプチドの第2の化学種との相互作用に言及して、その相互作用が、化学種での特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することを意味して用いることができる;例えば、ある抗体は、タンパク質全体ではなく特定のタンパク質構造を認識してそれと結合する。抗体がエピトープ「A」に対して特異的であるならば、エピトープAを含有する分子(または遊離した非標識A)の存在は、標識「A」およびその抗体を含む反応において、その抗体と結合した標識Aの量を減少させると考えられる。
【0076】
「刺激」という用語は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)がそのコグネイトリガンドと結合して、それにより、TCR/CD3複合体を介するシグナル伝達などの、ただしこれには限定されないシグナル伝達イベントを媒介することによって誘導される、一次応答のことを意味する。刺激は、TGF-βのダウンレギュレーション、および/または細胞骨格構造の再構築などのような、ある種の分子の発現の改変を媒介してもよい。
【0077】
「刺激分子」とは、この用語が本明細書で用いられる場合、抗原提示細胞上に存在するコグネイト刺激リガンドに特異的に結合する、T細胞上の分子のことを意味する。
【0078】
「刺激リガンド」とは、本明細書で用いる場合、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上に存在する場合に、T細胞上のコグネイト結合パートナー(本明細書では「刺激分子」と称する)と特異的に結合して、それにより、活性化、免疫応答の開始、増殖などを非限定的に含む、T細胞による一次応答を媒介することのできるリガンドのことを意味する。刺激リガンドは当技術分野において周知であり、とりわけ、ペプチドが負荷されたMHCクラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体およびスーパーアゴニスト抗CD2抗体を包含する。
【0079】
「対象」という用語は、免疫応答を惹起させることができる、生きている生物(例えば、哺乳動物)を含むことを意図している。対象の例には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種が含まれる。
【0080】
本明細書で用いる場合、「実質的に精製された」細胞とは、他の細胞型を本質的に含まない細胞のことである。また、実質的に精製された細胞とは、その天然の状態に本来付随する他の細胞型から分離された細胞のことも指す。場合によっては、実質的に精製された細胞の集団とは、均一な細胞集団のことを指す。また別の場合には、この用語は、単に、天然の状態において本来付随する細胞から分離された細胞のことを指す。いくつかの態様において、細胞はインビトロで培養される。他の態様において、細胞はインビトロでは培養されない。
【0081】
本明細書で用いる「治療的」という用語は、治療および/または予防処置のことを意味する。治療効果は、疾病状態の抑制、寛解または根絶によって得られる。
【0082】
「治療的有効量」という用語は、研究者、獣医、医師または他の臨床専門家が詳しく調べようとしている、組織、系または対象の生物学的または医学的な反応を誘発すると考えられる対象化合物の量のことを指す。「治療的有効量」という用語には、投与された場合に、治療される障害または疾患の徴候または症状のうち1つもしくは複数の発生を予防するか、またはそれをある程度改善するのに十分な、化合物の量が含まれる。治療的有効量は、化合物、疾患およびその重症度、ならびに治療される対象の年齢、体重などに応じて異なると考えられる。
【0083】
ある疾患を「治療する」とは、この用語が本明細書で用いられる場合、対象が被っている疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状の頻度または重症度を軽減することを意味する。
【0084】
本明細書で用いる「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞内に移入または導入される過程のことを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞とは、外因性核酸によってトランスフェクトされた、形質転換された、または形質導入されたもののことである。この細胞には初代対象細胞およびその子孫が含まれる。
【0085】
本明細書で用いる「転写制御下」または「機能的に連結した」という語句は、プロモーターが、RNAポリメラーゼによる転写の開始およびポリヌクレオチドの発現を制御するために正しい位置および向きにあることを意味する。
【0086】
「ベクター」とは、単離された核酸を含み、かつ核酸を細胞の内部に送達するために用いうる組成物のことである。直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスを非限定的に含む数多くのベクターが、当技術分野において公知である。したがって、「ベクター」という用語は、自律複製性プラスミドまたはウイルスを含む。この用語は、例えばポリリジン化合物、リポソームなどのような、細胞内への核酸の移入を容易にする非プラスミド性および非ウイルス性の化合物も含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが非限定的に含まれる。
【0087】
範囲:本開示の全体を通じて、本発明のさまざまな局面を、範囲形式で提示することができる。範囲形式による記載は、単に便宜上かつ簡潔さのためであって、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定とみなされるべきではないことが理解される必要がある。したがって、ある範囲の記載は、その範囲内におけるすべての可能な部分的範囲とともに、個々の数値も具体的に開示されていると考慮されるべきである。例えば、1〜6などの範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などの部分的範囲とともに、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3および6も、具体的に開示されていると考慮されるべきである。これは範囲の幅広さとは関係なく適用される。
【0088】
説明
本発明は、ヒト対象への投与を予定しているT細胞の形質導入のために有用なベクター上清を分析する方法を提供する。本発明はまた、ヒト対象への投与を予定しているT細胞、およびそれらの上清を分析する方法にも関する。さまざまな態様において、本発明の分析方法は、T細胞の生存度、T細胞の特徴(例えば、CD3、CD4、CD8、CD25、CD27、CD45RA、CD57、CD62L、CD95、CD127、CD134、CD244. CCR7、CD40L、CTLA4、PD-1、HLA-DR、TIM3、Ki-67、パーフォリン、および/またはグランザイムの発現)、形質導入効率、エンドトキシンの有無および数量、マイコプラズマの有無および数量、複製能を有するレンチウイルス(RCL)の有無および数量、p24の有無および数量、レンチウイルスプラスミドのパッケージングのために用いたプラスミドのそれぞれに由来する核酸および/またはタンパク質の有無および数量、VSV-G核酸および/またはタンパク質、HIVgag、抗CD3/抗CD28でコーティングされた残留ビーズ、マウス抗体、プールされたヒト血清、ウシ血清アルブミン、ウシ血清、培養培地構成成分、ベクターパッケージング細胞またはプラスミド構成成分の有無および数量、細菌(例えば、アルガリゲネス・フェカリス、カンジダ・アルビカンス、大腸菌、インフルエンザ菌、髄膜炎菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、および化膿性連鎖球菌A群)、または免疫系を活性化および/もしくはモジュレートする細菌産物(例えば、LPS、核酸、RNAなど)の有無および数量、ならびに真菌の有無および数量を分析する方法を含む。
【0089】
いくつかの態様において、ヒト対象は癌を有してよい。さまざまな態様において、癌は、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、原発性または転移性の腫瘍であってよい。好ましくは、癌は血液悪性腫瘍であり、より好ましくは、癌は慢性リンパ性白血病(CLL)である。本発明の組成物および方法を用いて治療しうる他の疾患には、ウイルス感染症、細菌感染症および寄生虫感染症、ならびに自己免疫疾患が含まれる。
【0090】
1つの態様において、ベクターは、CARをコードする核酸配列を含み、T細胞が該CARを発現すると、CAR T細胞は抗腫瘍性を呈する。CARは、T細胞抗原受容体複合体ζ鎖(例えば、CD3ζ)の細胞内シグナル伝達ドメインと融合した抗原結合ドメインを有する細胞外ドメインを含むように操作することができる。CARは、T細胞で発現された場合に、抗原結合特異性に基づく抗原認識を再誘導することができる。例示的な抗原はCD19であるが、これはこの抗原が悪性B細胞上で発現されるためである。しかし、本発明は、CD19を認識するCARには限定されない。より正確には、本発明は、そのコグネイト抗原と結合した場合に腫瘍細胞に影響を及ぼし、その結果、腫瘍細胞が成長できなくなるか、死滅するように促されるか、または患者における腫瘍総量(tumor burden)が漸減するかもしくは消失する他の様式で影響を受けるような、あらゆる抗原結合モイエティーを含む。抗原結合モイエティーは、共刺激分子およびζ鎖のうち1つまたは複数からの細胞内ドメインと融合していることが好ましい。抗原結合モイエティーは、CD137(4-1BB)シグナル伝達ドメイン、CD28シグナル伝達ドメイン、CD3ζシグナルドメイン、およびこれらの任意の組み合わせの群から選択される1つまたは複数の細胞内ドメインと融合していることが好ましい。
【0091】
1つの態様において、本発明のベクターは、CD137(4-1BB)シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列を含む。これは、CARにより媒介されるT細胞応答が、共刺激ドメインの付加によってさらに強化されうるためである。例えば、CD137(4-1BB)シグナル伝達ドメインを含めることにより、CD137(4-1BB)を発現するように操作されていないこと以外は同一なCAR T細胞と比較して、CAR T細胞の抗腫瘍活性およびインビボ存続性が有意に増加する。CARを用いてT細胞を遺伝子改変する方法は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるPCT/US11/64191に記載されている。
【0092】
組成物
本発明は、CARをコードする核酸を含むベクターを提供し、該CARは細胞外および細胞内のドメインを含む。細胞外ドメインは、別の言い方では抗原結合モイエティーとも称される標的特異的結合エレメントを含む。細胞内ドメイン、または別の言い方では細胞質ドメインは、共刺激シグナル伝達領域およびζ鎖部分を含む。共刺激シグナル伝達領域とは、共刺激分子の細胞内ドメインを含む、CARの一部分のことを指す。共刺激分子とは、抗原に対するリンパ球の効率的な反応のために必要とされる、抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子のことである。
【0093】
CARの細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間、またはCARの細胞質ドメインと膜貫通ドメインとの間に、スペーサードメインを組み入れてもよい。本明細書で用いる場合、「スペーサードメイン」という用語は、一般に、ポリペプチド鎖中の膜貫通ドメインを、細胞外ドメインまたは細胞質ドメインのいずれかと連結させる働きをするオリゴペプチドまたはポリペプチドのことを意味する。スペーサードメインは、最大で300アミノ酸、好ましくは10〜100アミノ酸、最も好ましくは25〜50アミノ酸で構成されうる。
【0094】
抗原結合モイエティー
1つの態様において、本発明のベクターはCARをコードする核酸を含み、該CARは、別の言い方では抗原結合モイエティーとも称される標的特異的結合エレメントを含む。モイエティーの選択は、標的細胞の表面を規定するリガンドの種類および数によって決まる。例えば、抗原結合ドメインを、特定の疾病状態と関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用するリガンドを認識するように選択することができる。このように、本発明のCARにおける抗原モイエティードメインとして作用しうる細胞表面マーカーの例には、ウイルス感染、細菌感染症および寄生虫感染症、自己免疫疾患ならびに癌細胞と関連するものが含まれる。
【0095】
1つの態様において、本発明のベクターはCARをコードする核酸を含み、該CARは、腫瘍細胞上の抗原と特異的に結合する所望の抗原結合モイエティーを作製することによって、関心対象の腫瘍抗原を標的とするように操作される。本発明に関連して、「腫瘍抗原」または「過剰増殖性(hyperporoliferative)障害抗原」または「過剰増殖性障害と関連する抗原」とは、癌などの特定の過剰増殖性障害に共通する抗原のことを指す。本明細書で考察する抗原は、単に一例として含めているに過ぎない。リストは排他的であることを意図してはおらず、そのほかの例も当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0096】
腫瘍抗原とは、免疫応答、特にT細胞媒介性免疫応答を誘発する腫瘍細胞によって産生されるタンパク質のことである。本発明の抗原結合モイエティーの選択は、治療される癌の具体的な種類に依存すると考えられる。腫瘍抗原は当技術分野において周知であり、これには例えば、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、αフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、チログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her2/neu、サバイビンおよびテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体ならびにメソテリンが含まれる。
【0097】
1つの態様において、腫瘍抗原は、悪性腫瘍と関連する1つまたは複数の抗原性癌エピトープを含む。悪性腫瘍は、免疫攻撃のための標的抗原としての役を果たしうる数多くのタンパク質を発現する。これらの分子には、黒色腫におけるMART-1、チロシナーゼおよびGP 100、ならびに前立腺癌における前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)および前立腺特異的抗原(PSA)などの組織特異的抗原が非限定的に含まれる。他の標的分子には、腫瘍遺伝子HER-2/Neu/ErbB-2などの形質転換関連分子の群に属するものがある。標的抗原のさらにもう1つの群には、腫瘍胎児性抗原などの癌胎児性抗原(CEA)がある。B細胞リンパ腫において、腫瘍特異的イディオタイプ免疫グロブリンは、個々の腫瘍に固有である、真に腫瘍特異的である免疫グロブリン抗原で構成される。CD19、CD20およびCD37などのB細胞分化抗原は、B細胞リンパ腫における標的抗原の別の候補である。これらの抗原のいくつか(CEA、HER-2、CD19、CD20、イディオタイプ)は、モノクローナル抗体を用いる受動免疫療法の標的として用いられ、ある程度の成果を上げている。
【0098】
本発明において言及される腫瘍抗原の種類は、腫瘍特異的抗原(TSA)または腫瘍関連抗原(TAA)であってもよい。TSAは腫瘍細胞に固有であり、体内の他の細胞上には存在しない。TAA関連抗原は腫瘍細胞に固有ではなく、抗原に対する免疫寛容の状態を誘導することができない条件下で、正常細胞上でも発現される。腫瘍上での抗原の発現は、免疫系が抗原に応答することを可能にする条件下で起こりうる。TAAは、免疫系が未熟であって応答することができない胎児発生中に正常細胞上で発現される抗原であってよく、またはそれらは、正常細胞上に極めて低いレベルで通常存在するが、腫瘍細胞上でははるかに高いレベルで発現される抗原であってもよい。
【0099】
TSA抗原またはTAA抗原の非限定的な例には、以下のものが含まれる:MART-1/MelanA(MART-1)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2などの分化抗原、およびMAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15などの腫瘍特異的多系列抗原;過剰発現される胎児抗原、例えばCEAなど;過剰発現される腫瘍遺伝子および突然変異した腫瘍抑制遺伝子、例えばp53、Ras、HER-2/neuなど;染色体転座に起因する固有の腫瘍抗原;BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RARなど;ならびに、ウイルス抗原、例えばエプスタイン・バーウイルス抗原EBVAならびにヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7など。その他の大型のタンパク質ベースの抗原には、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、β-カテニン、CDK4、Mum-1、p 15、p 16、43-9F、5T4、791Tgp72、α-フェトプロテイン、β-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、およびTPSが含まれる。
【0100】
1つの好ましい態様において、CARの抗原結合モイエティー部分は、CD19、CD20、CD22、ROR1、メソテリン、CD33/IL3Ra、c-Met、PSMA、糖脂質F77、EGFRvIII、GD-2、MY-ESO-1 TCR、MAGE A3 TCRなどを非限定的に含む抗原を標的とする。
【0101】
標的にすることが望まれる抗原に応じて、本発明のCARを、所望の抗原標的に対して特異的な適切な抗原結合モイエティーを含むように操作することができる。例えば、標的にすることが望まれる抗原がCD19であるならば、CD19に対する抗体を、本発明のCARに組み入れるための抗原結合モイエティーとして用いることができる。
【0102】
1つの態様において、本発明のベクターはCARをコードする核酸を含み、本発明のCARの抗原結合モイエティー部分は、CD19を標的とする。
【0103】
膜貫通ドメイン
CARの膜貫通ドメインは、CARの細胞外ドメインと融合した膜貫通ドメインを含むように設計することができる。1つの態様においては、CARの中のドメインの1つに天然に付随する膜貫通ドメインを用いる。場合によっては、膜貫通ドメインを、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるために、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに対するそのようなドメインの結合を避けるように選択すること、またはそのためのアミノ酸置換によって選択もしくは改変することもできる。
【0104】
膜貫通ドメインは、天然供給源または合成供給源のいずれに由来してもよい。供給源が天然である場合には、ドメインは任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来しうる。本発明において特に有用性のある膜貫通領域は、T細胞受容体のα、βまたはζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154に由来しうる(すなわち、それらの少なくとも膜貫通領域を含む)。または、膜貫通ドメインが合成性であってもよく、この場合には、それは主として、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を含むと考えられる。好ましくは、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットが合成膜貫通ドメインの各末端に認められるであろう。任意で、好ましくは長さが2〜10アミノ酸である短いオリゴペプチドまたはポリペプチドのリンカーが、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間の連鎖を形成してもよい。グリシン-セリンのダブレットは特に適したリンカーとなる。
【0105】
好ましくは、本発明のベクターのCARにおける膜貫通ドメインはCD8膜貫通ドメインである。場合によっては、本発明のCARの膜貫通ドメインは、CD8αヒンジドメインを含む。
【0106】
細胞質ドメイン
本発明のベクターのCARの細胞質ドメイン、または別の言い方では細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが入れられた免疫細胞の正常なエフェクター機能のうち少なくとも1つの活性化の原因となる。「エフェクター機能」という用語は、細胞の特化した機能のことを指す。例えば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性、またはサイトカインの分泌を含むヘルパー活性であろう。したがって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達して、細胞が特化した機能を遂行するように導く、タンパク質の部分を指す。通常は細胞内シグナル伝達ドメインの全体を使用しうるが、多くの場合には、その鎖全体を用いることは必要でない。細胞内シグナル伝達ドメインの短縮部分(truncated portion)が用いられる範囲内において、そのような短縮部分は、それがエフェクター機能シグナルを伝達する限り、無傷の鎖の代わりに用いることができる。細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、それ故に、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な、細胞内シグナル伝達ドメインの任意の短縮部分を含むものとする。
【0107】
本発明のベクターのCARに用いるための細胞内シグナル伝達ドメインの好ましい例には、抗原と受容体との係合後にシグナル伝達を惹起するように協調的に作用するT細胞受容体(TCR)および補助受容体の細胞質配列、ならびに、同じ機能的能力を有する、これらの配列の任意の誘導体または変異体および任意の合成配列が含まれる。
【0108】
TCRのみを通じて生成されるシグナルは、T細胞の完全な活性化のためには不十分であること、および二次シグナルまたは共刺激シグナルも必要とされることが公知である。このため、T細胞活性化は、2つの別個のクラスの細胞質シグナル伝達配列によって媒介されると言うことができる:TCRを通じての抗原依存的な一次活性化を惹起するもの(一次細胞質シグナル伝達配列)、および、抗原非依存的な様式で作用して二次シグナルまたは共刺激シグナルをもたらすもの(二次細胞質シグナル伝達配列)。
【0109】
一次細胞質シグナル伝達配列は、刺激的な方式または阻害的な方式で、TCR複合体の一次活性化を調節する。刺激的な様式で作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体活性化チロシンモチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)すなわちITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含有しうる。
【0110】
本発明において特に有用性のある、ITAMを含有する一次細胞質シグナル伝達配列の例には、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが含まれる。本発明のCARにおける細胞質シグナル伝達分子は、CD3ζに由来する細胞質シグナル伝達配列を含むことが特に好ましい。
【0111】
1つの好ましい態様において、CARの細胞質ドメインは、CD3-ζシグナル伝達ドメインを、それ自体で、または本発明のCARの文脈において有用な他の任意の所望の細胞質ドメインと組み合わせて含むように、設計することができる。例えば、CARの細胞質ドメインは、CD3ζ鎖部分および共刺激シグナル伝達領域を含むことができる。共刺激シグナル伝達領域とは、共刺激分子の細胞内ドメインを含む、CARの一部分のことを指す。共刺激分子とは、抗原に対するリンパ球の効率的な反応のために必要とされる、抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子のことである。そのような分子の例には、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、およびCD83と特異的に結合するリガンドなどが含まれる。したがって、本発明は、主として4-1BBを共刺激シグナル伝達エレメントとして用いて例示されるものの、他の共刺激エレメントも本発明の範囲内にある。
【0112】
本発明のCARの細胞質シグナル伝達部分の内部の細胞質シグナル伝達配列は、ランダムな順序または指定された順序で互いに連結させることができる。任意で、好ましくは長さが2〜10アミノ酸である短いオリゴペプチドまたはポリペプチドのリンカーが連鎖を形成してもよい。グリシン-セリンのダブレットは特に適したリンカーとなる。
【0113】
1つの態様において、細胞質ドメインは、CD3-ζのシグナル伝達ドメインおよびCD28のシグナル伝達ドメインを含むように設計される。もう1つの態様において、細胞質ドメインは、CD3-ζのシグナル伝達ドメインおよび4-1BBのシグナル伝達ドメインを含むように設計される。さらにもう1つの態様において、細胞質ドメインは、CD3-ζのシグナル伝達ドメインならびにCD28および4-1BBのシグナル伝達ドメインを含むように設計される。
【0114】
1つの態様において、本発明のCARにおける細胞質ドメインは、4-1BBのシグナル伝達ドメインおよびCD3-ζのシグナル伝達ドメインを含むように設計される。
【0115】
ベクター
本発明は、CARの配列を含むベクターを作製する方法を包含し、ここでその配列は、細胞内ドメインの核酸配列と機能的に連結された抗原結合モイエティーの核酸配列を含む。本発明のベクターのCARにおいて用いうる例示的な細胞内ドメインには、CD3-ζ、CD28、4-1BBなどの細胞内ドメインが非限定的に含まれる。場合によっては、CARは、CD3-ζ、CD28、4-1BBなどの任意の組み合わせを含みうる。
【0116】
1つの態様において、本発明のベクターのCARは、抗CD19 scFv、ヒトCD8のヒンジおよび膜貫通ドメイン、ならびにヒト4-1BBおよびCD3ζのシグナル伝達ドメインを含む。
【0117】
所望の分子をコードする核酸配列は、当技術分野において公知の組換え方法、例えば、標準的な手法を用いて、その遺伝子を発現する細胞からのライブラリーをスクリーニングすることによって、それを含むことが公知であるベクターから遺伝子を導き出すことによって、またはそれを含有する細胞および組織から直接的に単離することなどによって、入手することができる。または、関心対象の遺伝子を、クローニングするのではなくて、合成によって作製することもできる。
【0118】
本発明はまた、本発明のDNAが挿入されたベクターも提供する。レンチウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクターは、長期的遺伝子移入を達成するための適したツールであるが、これはそれらが、導入遺伝子の長期的で安定的な組み込み、および娘細胞におけるその伝播を可能にするためである。レンチウイルスベクターは、マウス白血病ウイルスなどのオンコレトロウイルスに由来するベクターを上回る利点を有するが、これはそれらが、肝細胞などの非増殖性細胞の形質導入も行うことができるためである。また、それらには免疫原性が低いという利点も加わっている。
【0119】
概要を述べると、CARをコードする天然性または合成性の核酸の発現は、典型的には、CARポリペプチドまたはその部分をコードする核酸をプロモーターと機能的に連結させて、その構築物を発現ベクター中に組み入れることによって達成される。ベクターは、真核生物における複製および組み込みのために適している。典型的なクローニングベクターは、転写ターミネーターおよび翻訳ターミネーター、開始配列、ならびに所望の核酸配列の発現の調節のために有用なプロモーターを含有する。
【0120】
また、本発明の発現構築物を、標準的な遺伝子送達プロトコールを用いる核酸免疫処置および遺伝子治療のために用いることもできる。遺伝子送達のための方法は、当技術分野において公知である。例えば、米国特許第5,399,346号、第5,580,859号、第5,589,466号を参照されたく、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。もう1つの態様において、本発明は、遺伝子療法ベクターを提供する。
【0121】
核酸は、さまざまな種類のベクター中にクローニングすることができる。例えば、核酸を、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルスおよびコスミドを非限定的に含むベクター中にクローニングすることができる。特に関心が持たれるベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクターおよびシークエンシングベクターが含まれる。
【0122】
さらに、発現ベクターを、ウイルスベクターの形態で細胞に与えることもできる。ウイルスベクター技術は当技術分野において周知であり、例えば、Sambrookら(2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)、ならびにウイルス学および分子生物学の他のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスが非限定的に含まれる。一般に、適したベクターは、少なくとも1つの生物において機能する複製起点、プロモーター配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1つまたは複数の選択可能なマーカーを含有する(例えば、WO 01/96584号;WO 01/29058号;および米国特許第6,326,193号を参照)。
【0123】
数多くのウイルスベースの系が、哺乳動物細胞への遺伝子移入のために開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達系のための好都合なプラットフォームとなる。当技術分野において公知の手法を用いて、選択された遺伝子をベクターに挿入し、レトロウイルス粒子の中にパッケージングすることができる。続いて、組換えウイルスを単離して、対象の細胞にインビボまたはエクスビボで送達することができる。数多くのレトロウイルス系が当技術分野において公知である。いくつかの態様においては、アデノウイルスベクターを用いる。数多くのアデノウイルスベクターが当技術分野において公知である。1つの態様においては、レンチウイルスベクターを用いる。
【0124】
そのほかのプロモーターエレメント、例えばエンハンサーなどは、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは開始部位の30〜110bp上流の領域に位置するが、数多くのプロモーターは、開始部位の下流にも機能的エレメントを含むことが最近示されている。多くの場合、プロモーターエレメント間の間隔には柔軟性があり、そのため、エレメントが互いに対して逆位になったり移動したりしてもプロモーター機能は保持される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、反応性の低下を起こすことなく、プロモーターエレメント間の間隔を50bpまで隔てることができる。プロモーターによっては、個々のエレメントが協調的に、または独立して、転写を活性化しうるように思われる。
【0125】
適したプロモーターの一例は、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それと機能的に連結した任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を作動させることのできる、強力な構成性プロモーター配列である。適したプロモーターのもう1つの例は、伸長成長因子-1α(Elongation Growth Factor-1α)(EF-1α)である。しかし、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ならびに、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーターおよびクレアチンキナーゼプロモーターなどの、ただしこれらには限定されないヒト遺伝子プロモーターを非限定的に含む、他の構成性プロモーター配列を用いることもできる。さらに、本発明は、構成性プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターも本発明の一部として想定している。誘導性プロモーターの使用により、それと機能的に連結しているポリヌクレオチド配列の発現を、そのような発現が所望である場合には有効にし、発現が所望でない場合には発現を無効にすることができる、分子スイッチがもたらされる。誘導性プロモーターの例には、メタロチオネイン(metallothionine)プロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーターおよびテトラサイクリンプロモーターが非限定的に含まれる。
【0126】
CARポリペプチドまたはその部分の発現を評価する目的で、ウイルスベクターによってトランスフェクトまたは感染させようとする細胞の集団からの発現細胞の同定および選択を容易にするために、細胞に導入される発現ベクターに、選択マーカー遺伝子もしくはレポーター遺伝子またはその両方を含有させることもできる。他の局面において、選択マーカーを別個のDHA小片上に保有させて、同時トランスフェクション手順に用いることもできる。宿主細胞における発現を可能にするために、選択マーカー遺伝子およびレポーター遺伝子をいずれも、適切な調節配列に隣接させることができる。有用な選択マーカーには、例えば、neoなどの抗生物質耐性遺伝子が含まれる。
【0127】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされた可能性のある細胞を同定するため、および調節配列の機能性を評価するために用いられる。一般に、レポーター遺伝子とは、レシピエント生物または組織に存在しないかまたはそれらによって発現されず、かつ、その発現が何らかの容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性によって顕在化するポリペプチドをコードする、遺伝子のことである。レポーター遺伝子の発現は、そのDNAがレシピエント細胞に導入された後の適した時点でアッセイされる。適したレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌性アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、または緑色蛍光性タンパク質の遺伝子が含まれうる(例えば、Ui-Tei et al., 2000 FEBS Letters 479:79-82)。適した発現系は周知であり、公知の手法を用いて調製すること、または販売されているものを入手することができる。一般に、レポーター遺伝子の最も高レベルでの発現を示す最小限の5'フランキング領域を有する構築物が、プロモーターとして同定される。そのようなプロモーター領域をレポーター遺伝子と連結させて、プロモーターにより作動する転写を作用物質がモジュレートする能力を評価するために用いることができる。
【0128】
細胞に遺伝子を導入して発現させる方法は、当技術分野において公知である。発現ベクターに関連して、ベクターは、宿主細胞、例えば、哺乳動物細胞、細菌細胞、酵母細胞または昆虫細胞に、当技術分野における任意の方法によって容易に導入することができる。例えば、発現ベクターを、当該技術分野のいずれの方法によっても、宿主細胞、例えば哺乳動物細胞、細菌細胞、酵母細胞または昆虫細胞にベクターを容易に導入することができる。例えば、発現ベクターを、物理的、化学的または生物学的手段によって宿主細胞に導入することができる。
【0129】
宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿法、リポフェクション、微粒子銃法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが含まれる。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を作製するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Sambrookら(2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)を参照されたい。宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入のために好ましい方法の1つは、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0130】
関心対象のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法には、DNAベクターおよびRNAベクターの使用が含まれる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物細胞、例えばヒト細胞に遺伝子を挿入するために最も広く使用される方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスなどに由来しうる。例えば、米国特許第5,350,674号および第5,585,362号を参照されたい。
【0131】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段には、コロイド分散系、例えば高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズなど、ならびに、水中油型エマルション、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質ベースの系が含まれる。インビトロおよびインビボで送達媒体として用いるための例示的なコロイド系の1つは、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0132】
非ウイルス性送達系を利用する場合には、例示的な送達媒体の1つはリポソームである。脂質製剤の使用を、宿主細胞への核酸の導入のために想定している(インビトロ、エクスビボまたはインビボ)。もう1つの局面において、核酸を脂質と付随させてもよい。脂質と付随した核酸をリポソームの水性内部の中に封入し、リポソームの脂質二重層の内部に配置させ、リポソームおよびオリゴヌクレオチドの両方と付随する連結分子を介してリポソームと連結させ、リポソーム内に封じ込め、リポソームと複合体化させ、脂質を含有する溶液中に分散させ、脂質と混合し、脂質と配合し、脂質中に懸濁物として含有させ、ミセル中に含有させるかもしくは複合体化させ、または他の様式で脂質と付随させることができる。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクターが付随する組成物は、溶液中のいかなる特定の構造にも限定されない。例えば、それらは二重層構造の中に、ミセルとして、または「崩壊した」構造として存在しうる。それらはまた、溶液中に単に点在していて、大きさも形状も均一でない凝集物を形成する可能性があってもよい。脂質とは、天然脂質または合成脂質であってよい脂肪性物質のことである。例えば、脂質には、細胞質中に天然に存在する脂肪小滴、ならびに長鎖脂肪族炭化水素およびそれらの誘導体を含む化合物のクラス、例えば脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコールおよびアルデヒドなどが含まれる。
【0133】
使用に適した脂質は、販売元から入手することができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)はSigma, St. Louis, MOから入手することができ;ジアセチルホスファート(「DCP」)はK & K Laboratories(Plainview, NY)から入手することができ;コレステロール(「Choi」)はCalbiochem-Behringから入手することができ;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)および他の脂質は、Avanti Polar Lipids, Inc.(Birmingham, AL)から入手することができる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中にある脂質の貯蔵溶液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムはメタノールよりも容易に蒸発するので、それを唯一の溶媒として用いることが好ましい。「リポソーム」とは、閉じた脂質二重層または凝集物の生成によって形成される、種々の単層および多重層の脂質媒体を包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜による小胞構造および内部の水性媒質を有するものとして特徴づけることができる。多重層リポソームは、水性媒質によって隔てられた複数の脂質層を有する。それらはリン脂質を過剰量の水性溶液中に懸濁させると自発的に形成される。脂質成分は自己再配列を起こし、その後に閉鎖構造の形成が起こり、水および溶解溶質を脂質二重層の間に封じ込める(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5:505-10)。しかし、溶液中で通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物も想定している。例えば、脂質がミセル構造をとってもよく、または単に脂質分子の不均一な凝集物として存在してもよい。また、リポフェクタミン-核酸複合体も想定している。
【0134】
宿主細胞における組換えDNA配列の存在を確かめる目的で、宿主細胞に外因性核酸を導入するため、または他の様式で細胞を本発明の阻害因子に曝露させるために用いられる方法にかかわらず、種々のアッセイを用いることができる。そのようなアッセイには、例えば、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ、例えば、サザンブロット法およびノーザンブロット法、RT-PCRおよびPCRなど;「生化学的」アッセイ、例えば、免疫学的手段(ELlSAおよびウエスタンブロット)または本発明の範囲内にある作用物質を同定するための本明細書に記載のアッセイにによって、特定のペプチドの有無を検出すること、などが含まれる。
【0135】
T細胞の供給源
本発明のT細胞の増大および遺伝子改変の前に、T細胞の供給源を対象から入手する。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含む、数多くの供給源から入手することができる。本発明のある態様において、当技術分野において入手可能な任意のさまざまなT細胞株を用いることができる。本発明のある態様において、T細胞は、フィコール(商標)分離などの、当業者に公知の任意のさまざまな手法を用いて対象から収集された血液ユニットから得られる。1つの好ましい態様において、個体の流血由来の細胞はアフェレーシスによって入手される。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞を含むリンパ球、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含む。1つの態様においては、アフェレーシスによって収集された細胞を、血漿画分を除去するために洗浄した上で、その後の処理段階のために細胞を適切な緩衝液または培地中に配置することができる。本発明の1つの態様においては、これらの細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄する。1つの代替的な態様において、洗浄溶液はカルシウムを含まず、かつ、マグネシウムを含まないか、またはすべてではないものの多くの二価カチオンを含まない。この場合にも、驚くべきことに、カルシウム非存在下での最初の活性化段階により、活性化の増強がもたらされる。当業者は容易に理解するであろうが、洗浄段階は、標準的な遠心分離器、半自動化された「フロースルー」遠心分離器(例えば、Cobe 2991細胞プロセッサー、Baxter CytoMate、またはHaemonetics Cell Saver 5など)を製造元の指示に従って用いることなどによって、当技術分野において公知の方法によって実現することができる。洗浄の後に、細胞を、例えば、Ca
2+非含有、Mg
2+非含有PBS、PlasmaLyte A、0.45%塩化ナトリウム中の5%デキストロース、または緩衝剤の任意の組み合わせを含むかもしくは含まない他の食塩液といった、種々の生体適合性緩衝液中に再懸濁させることができる。または、アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去して、細胞を培養培地中に直接再懸濁させてもよい。
【0136】
もう1つの態様においては、赤血球を溶解させた上で、例えばPERCOLL(商標)勾配での遠心分離によるか、または、向流遠心分離溶出法、もしくはMiltenyi CliniMACS、もしくは磁気ビーズ、もしくは抗体に連結した磁気ビーズによって単球を枯渇させることによって、T細胞を末梢血リンパ球から単離する。CD3
+、CD28
+、CD4
+、CD8
+、CD45RA
+、CD45RO
+、CD62L
+、CD127
+ T細胞といったT細胞の特定の部分集団を、陽性選択法または陰性選択法によってさらに単離するか枯渇させることができる。例えば、1つの好ましい態様において、T細胞は、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tなどの抗CD3/抗CD28(すなわち、3x28)結合ビーズとの、所望のT細胞の陽性選択に十分な期間にわたるインキュベーションによって単離される。1つの態様において、この期間は約30分間である。1つのさらなる態様において、この期間は、30分間〜36時間またはそれ以上、およびそれらの間の全ての整数値の範囲にわたる。1つのさらなる態様において、この期間は、少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間または6時間である。さらにもう1つの好ましい態様において、この期間は10〜24時間である。1つの好ましい態様において、インキュベーション期間は24時間である。白血病の患者からのT細胞の単離のためには、24時間といった比較的長いインキュベーション時間を用いることにより、細胞収量を増やすことができる。腫瘍組織または免疫機能低下個体から腫瘍内浸潤リンパ球(TIL)を単離する際のように、他の細胞型と比較してT細胞がわずかしか存在しないあらゆる状況で、T細胞を単離するために比較的長いインキュベーション時間を用いることができる。さらに、比較的長いインキュベーション時間の使用により、CD8+ T細胞の捕捉効率を高めることもできる。したがって、単にこの時間を短縮または延長することによって、T細胞はCD3/CD28ビーズへの結合が可能になるか、および/またはビーズのT細胞に対する比を増加もしくは減少することにより(本明細書でさらに説明するように)、T細胞の部分集団は、培養開始時もしくはこの過程の他の時点で、これについてもしくはこれに対して優先的に選択されうる。加えて、ビーズまたは他の表面上の抗CD3および/または抗CD28抗体の比を増加または減少することにより、T細胞部分集団は、培養開始時もしくは他の望ましい時点で、これについてまたはこれに対して優先的に選択される。当業者は、本発明の状況において複数回の選択を使用することができることを認めると思われる。ある態様においては、この選択手順を実行し、活性化および増大の過程において「選択されない」細胞を使用することが望ましいことがある。「選択されない」細胞に、さらに選択を施すこともできる。
【0137】
陰性選択によるT細胞集団の濃縮は、陰性選択された細胞への独自の表面マーカーに対する抗体の組合せにより実行することができる。1つの方法は、陰性選択された細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体カクテルを使用する、負磁気免疫接着またはフローサイトメトリーによる細胞ソーティングおよび/または選択である。例えば、陰性選択によってCD4
+細胞を濃縮するためのモノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。ある態様において、典型的にはCD4
+、CD25
+、CD62L
hi、GITR
+、およびFoxP3
+を発現する調節性T細胞を濃縮するかまたは陽性選択することが望ましいことがある。または、ある態様においては、抗C25結合ビーズまたは他の類似の選択方法によって、調節性T細胞を枯渇させる。
【0138】
陽性または陰性選択によって望ましい細胞集団を単離するために、細胞および表面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度を変化させることができる。ある態様においては、細胞とビーズの最大接触を確実にするために、ビーズおよび細胞が一緒に混合される容積の著しい減少(すなわち、細胞の濃度の増加)が望ましいことがある。例えば、1つの態様においては、細胞20億個/mlの濃度を用いる。1つの態様において、細胞10億個/mlの濃度を用いる。さらなる態様においては、細胞1億個/mlよりも高いものを用いる。さらなる態様においては、1000万個/ml、1500万個/ml、2000万個/ml、2500万個/ml、3000万個/ml、3500万個/ml、4000万個/ml、4500万個/mlまたは5000万個/mlの細胞濃度を用いる。さらにもう1つの態様においては、7500万個/ml、8000万個/ml、8500万個/ml、9000万個/ml、9500万個/ml、または1億個/mlからの細胞濃度を用いる。さらなる態様においては、1億2500万個/mlまたは1億5000万個/mlの濃度を用いることができる。高濃度を用いることにより、増加した細胞収量、細胞活性化および細胞増大を生じることができる。さらに、高い細胞濃度の使用は、CD28陰性T細胞のような、または多くの腫瘍細胞が存在する試料(すなわち、白血病血、腫瘍組織など)からの、関心のある標的抗原を弱く発現する細胞の捕捉効率を高めることができる。そのような細胞集団は、治療的価値があり、かつ得ることが望ましい。例えば、高い濃度の細胞の使用は、通常弱くCD28を発現するCD8
+ T細胞をより効率的に選択することを可能にする。
【0139】
1つの関連した態様においては、より低い濃度の細胞を用いることが望ましいことがある。T細胞および表面(例えばビーズなどの粒子)の混合物の高度の希釈により、粒子と細胞間の相互作用は最小化される。これにより、これらの粒子と結合する所望の抗原を大量発現する細胞が選択される。例えば、CD4
+ T細胞は、より高いレベルのCD28を発現し、希釈した濃度でCD8
+ T細胞よりもより効率的に捕捉される。1つの態様において、用いられる細胞濃度は、5×10
6個/mlである。他の態様において、用いられる濃度は、約1×10
5個/ml〜1×10
6個/ml、およびその間の任意の整数であることができる。
【0140】
他の態様において、細胞を、回転器にて、さまざまな時間にわたって、さまざまな速度で、2〜37℃のいずれかで、インキュベートすることもできる。
【0141】
また、刺激のためのT細胞を、洗浄段階の後に凍結することもできる。理論に拘束されることは望まないが、凍結段階およびそれに続く解凍段階は、細胞集団における顆粒球およびある程度の単球を除去することによって、より均一な製品を提供する。血漿および血小板を除去する洗浄段階の後に、これらの細胞を凍結液中に懸濁させてもよい。多くの凍結液およびパラメーターが当技術分野において公知であり、かつこの状況において有用であるが、1つの方法は、20% DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、または、10%デキストラン40および5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミンおよび7.5% DMSO、または31.25% Plasmalyte-A、31.25%デキストロース5%、0.45% NaCl、10%デキストラン40および5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミンおよび7.5% DMSO、または例えばHespanもしくはペンタスターチおよびPlasmaLyte Aを含有する他の適した細胞凍結培地の使用を伴い、続いてこれらの細胞は、1分間に1℃の速度で-80℃に凍結され、液体窒素貯蔵タンク内で気相中に貯蔵される。その他の制御された凍結法に加え、即時-20℃または液体窒素中の制御されない凍結を使用してもよい。
【0142】
ある態様においては、凍結保存細胞を本明細書に記載の通りに解凍および洗浄して、室温で1時間静置した後に、本発明の方法を用いる活性化を行う。
【0143】
また、本発明に関連して、本明細書に記載されたような増大された細胞が必要となる前の期間での、対象からの血液試料またはアフェレーシス産物の収集も想定している。そのために、増大させようとする細胞の供給源を、必要な任意の時点で収集し、T細胞などの所望の細胞を、本明細書に記載された説明されたもののような、T細胞療法による恩恵を受けると考えられる任意のさまざまな疾患または病状に対するT細胞療法に後に用いるために単離して凍結することができる。1つの態様においては、血液試料またはアフェレーシス物を、全般的に健常な対象から採取する。ある態様においては、血液試料またはアフェレーシス物を、疾患を発症するリスクがあるが、まだ疾患を発症していない全般的に健常な対象から採取し、関心対象の細胞を、後に用いるために単離して凍結する。ある態様においては、T細胞を増大させ、凍結して、後の時点で用いる。ある態様においては、本明細書に記載されたような特定の疾患の診断後間もなく、しかしいかなる治療も行わないうちに、患者から試料を収集する。1つのさらなる態様においては、細胞を、ナタリズマブ、エファリズマブ、抗ウイルス薬、化学療法、放射線療法、例えばシクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレートおよびFK506などの免疫抑制剤、抗体、または他の免疫除去薬、例えばCAMPATH、抗CD3抗体、サイトキサン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、および照射などの作用因子による治療を非限定的に含む、任意のさまざまな妥当な治療様式の前の対象由来の血液試料またはアフェレーシス物から単離する。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリンを阻害するか(シクロスポリンおよびFK506)、または増殖因子で誘導されるシグナル伝達にとって重要なp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)(Liu et al., Cell, 66:807-815,1991;Henderson et al., Immun., 73:316-321,1991;Bierer et al., Curr. Opin. Immun., 5:763-773,1993)。1つのさらなる態様においては、細胞を患者のために単離して、骨髄移植もしくは幹細胞移植、フルダラビンなどの化学療法薬、外部ビーム照射療法(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3もしくはCAMPATHなどの抗体のいずれかを用いるT細胞除去療法とともに(例えば、その前、同時またはその後に)、後に用いるために凍結する。もう1つの態様においては、細胞を事前に単離した上で、CD20と反応する薬剤、例えばリツキサンなどによるB細胞除去療法後の治療のために後で用いるために凍結する。
【0144】
本発明の1つのさらなる態様においては、T細胞を、治療後に患者から直接入手する。これに関して、ある種の癌治療、特に免疫系を障害を及ぼす薬物による治療の後には、患者が通常であれば治療から回復中であると考えられる治療後間もない時点で、得られるT細胞の品質が、それらがエクスビボで増大する能力の点で最適であるか改善されていることが観察されている。同様に、本明細書に記載された方法を用いるエクスビボ操作の後にも、これらの細胞は生着およびインビボ増大の増強のために好ましい状態にある可能性がある。したがって、本発明に関連して、この回復相の間に、T細胞、樹状細胞、または造血系統の他の細胞を含む血液細胞を収集することを想定している。さらに、ある態様においては、動員(例えば、GM-CSFによる動員)レジメンおよび条件付けレジメンを用いて、特定の細胞型の再増殖、再循環、再生および/または増大にとって有利に働く状態を、特に治療法の後のある規定された時間枠の間に、対象において作り出すことができる。例示的な細胞型には、T細胞、B細胞、樹状細胞および免疫系の他の細胞が含まれる。
【0145】
T細胞の活性化および増大
所望のCARを発現させるためのT細胞の遺伝子改変の前または後のいずれかにおいて、一般に、例えば、米国特許第6,352,694号;第6,534,055号;第6,905,680号;第6,692,964号;第5,858,358号;第6,887,466号;第6,905,681 号;第7,144,575号;第7,067,318号;第7,172,869号;第7,232,566号;第7,175,843号;第5,883,223号;第6,905,874号;第6,797,514号;第6,867,041号;ならびに米国特許出願公開第20060121005号に記載された方法を用いて、T細胞を活性化して増大させることができる。
【0146】
一般に、本発明のT細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する作用物質、およびT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドが結びつけられた表面との接触によって増大させられる。特に、T細胞集団は、本明細書に記載されたように、例えば、表面上に固定化された抗CD3抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは抗CD2抗体との接触によって、またはカルシウムイオノフォアを伴うプロテインキナーゼCアクチベーター(例えば、ブリオスタチン)との接触などによって、刺激することができる。T細胞の表面上のアクセサリー分子の同時刺激のためには、アクセサリー分子と結合するリガンドが用いられる。例えば、T細胞の集団を、T細胞の増殖を刺激するのに適した条件下で、抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させることができる。CD4
+ T細胞またはCD8
+ T細胞のいずれかの増殖を刺激するためには、抗CD3抗体および抗CD28抗体。抗CD28抗体の例には、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone, Besancon, France)が含まれ、当技術分野において一般に公知である他の方法と同様に用いることができる(Berg et al., Transplant Proc. 30(8):3975-3977, 1998;Haanen et al., J. Exp. Med. 190(9):13191328, 1999;Garland et al., J. Immunol Meth. 227(1-2):53-63, 1999)。
【0147】
ある態様において、T細胞に対する一次刺激シグナルおよび共刺激シグナルは、さまざまなプロトコールによって与えることができる。例えば、各シグナルを与える作用物質は、溶液中にあってもよく、または表面と結びつけてもよい。表面と結びつける場合、これらの作用物質を同じ表面に結びつけてもよく(すなわち、「シス」フォーメーション)、または別々の表面に結びつけてもよい(すなわち、「トランス」フォーメーション)。または、一方の作用物質を溶液中の表面に結びつけ、もう一方の作用物質が溶液中にあってもよい。1つの態様においては、共刺激シグナルを与える作用物質を細胞表面と結合させ、一次活性化シグナルを与える作用物質は溶液中にあるか、または表面と結びつける。ある態様においては、両方の作用物質が溶液中にあってもよい。もう1つの態様において、これらの物質は可溶形態にあり、続いて、Fc受容体を発現する細胞または抗体またはこれらの物質と結合する他の結合物質などの表面と架橋結合することができる。これに関しては、例えば、本発明においてT細胞を活性化および増大させるために用いることを想定している人工抗原提示細胞(aAPC)についての、米国特許出願公開第20040101519号および第20060034810号を参照されたい。
【0148】
1つの態様においては、2種の作用物質を、同じビーズ上に、すなわち「シス」か、または別々のビーズ上に、すなわち「トランス」かのいずれかとして、ビーズ上に固定化する。一例として、一次活性化シグナルを与える作用物質は抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントであり、共刺激シグナルを与える作用物質は抗CD28抗体またはその抗原結合フラグメントである;そして、両方の作用物質を等モル量で同じビーズに同時固定化する。1つの態様においては、CD4
+ T細胞の増大およびT細胞増殖のためにビーズと結合させる各抗体を1:1の比で用いる。本発明のある局面においては、ビーズと結合させる抗CD3:CD28抗体の比として、1:1の比を用いて観察される増大と比較してT細胞増大の増加が観察されるようなものを用いる。1つの特定の態様においては、1:1の比を用いて観察される増大と比較して約1〜約3倍の増加が観察される。1つの態様においては、ビーズと結合させるCD3:CD28抗体の比は、100:1〜1:100、およびそれらの間のすべての整数の範囲にある。本発明の1つの局面においては、抗CD3抗体よりも多くの抗CD28抗体が粒子と結合され、すなわちCD3:CD28の比は1未満である。本発明のある態様において、ビーズと結合させる抗CD28抗体と抗CD3抗体との比は、2:1よりも大きい。1つの特定の態様においては、ビーズと結合させる抗体に1:100のCD3:CD28比を用いる。もう1つの態様においては、ビーズと結合させる抗体に1:75のCD3:CD28比を用いる。さらなる態様においては、ビーズと結合させる抗体に1:50のCD3:CD28比を用いる。もう1つの態様においては、ビーズと結合させる抗体に1:30のCD3:CD28比を用いる。1つの好ましい態様においては、ビーズと結合させる抗体に1:10のCD3:CD28比を用いる。もう1つの態様においては、ビーズと結合させる抗体に1:3のCD3:CD28比を用いる。さらにもう1つの態様においては、ビーズと結合させる抗体に3:1のCD3:CD28比を用いる。
【0149】
T細胞または他の細胞標的を刺激するには、粒子と細胞との比として1:500〜500:1およびその間の任意の整数値を用いることができる。当業者が容易に理解するように、粒子と細胞との比は、標的細胞に対する粒子サイズに依存しうる。例えば、小さいサイズのビーズは2、3個の細胞と結合しうるに過ぎないが、一方、より大きいビーズは多くと結合しうると考えられる。ある態様において、細胞と粒子との比は1:100〜100:1およびその間の任意の整数値の範囲にあり、さらなる態様において、この比は1:9〜9:1およびその間の任意の整数値を含み、これを同じくT細胞を刺激するために用いることができる。T細胞の刺激をもたらす、抗CD3および抗CD28が結びついた粒子とT細胞との比は、上述したようにさまざまでありうるが、いくつかの好ましい値には、1:100、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1および15:1が含まれ、1つの好ましい比は、T細胞1個につき粒子が少なくとも1:1である。1つの態様においては、1:1またはそれ未満である粒子と細胞との比を用いる。1つの特定の態様において、好ましい粒子:細胞比は1:5である。さらなる態様において、粒子と細胞との比は、刺激の日に応じて変化しうる。例えば、1つの態様において、粒子と細胞との比は第1日に1:1〜10:1であり、その後最長10日間にわたって毎日または1日おきに追加の粒子を細胞に添加して、最終的な比が1:1〜1:10となる(添加の日の細胞数に基づく)。1つの特定の態様において、粒子と細胞との比は刺激の1日目に1:1であり、刺激の3日目および5日目に1:5に調節される。もう1つの態様において、粒子は毎日または1日おきに添加され、最終的な比は1日目に1:1であり、刺激の3日目および5日目には1:5である。もう1つの態様において、粒子と細胞との比は刺激の1日目に2:1であり、刺激の3日目および5日目に1:10に調節される。もう1つの態様において、粒子は毎日または1日おきに添加され、最終的な比は1日目に1:1であり、刺激の3日目および5日目には1:10である。当業者は、さまざまな他の比が、本発明における使用に適することを理解するであろう。特に、比は粒子サイズならびに細胞のサイズおよび型に応じて多様であると考えられる。
【0150】
本発明のさらなる態様においては、T細胞などの細胞を、作用物質でコーティングされたビーズと一緒にし、その後にビーズと細胞を分離した上で、続いて細胞を培養する。1つの代替的な態様においては、培養の前に、作用物質でコーティングされたビーズと細胞を分離せずに、一緒に培養する。1つのさらなる態様においては、ビーズおよび細胞を磁力などの力の印加によってまず濃縮して、細胞表面マーカーの連結を増加させて、それにより、細胞刺激を誘導する。
【0151】
例として、抗CD3および抗CD28が結びつけられた常磁性ビーズ(3x28ビーズ)をT細胞と接触させることによって、細胞表面タンパク質を連結させることができる。1つの態様においては、細胞(例えば、10
4〜10
9個のT細胞)およびビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T常磁性ビーズ、1:1の比)を、緩衝液中、好ましくはPBS(カルシウムおよびマグネシウムなどの二価カチオンを含まない)中で一緒にする。この場合も、当業者は、あらゆる細胞濃度を用いうることを容易に理解するであろう。例えば、標的細胞が試料中に非常に稀であって、試料のわずかに0.01%を構成してもよく、または試料の全体(すなわち、100%)が関心対象の標的細胞で構成されてもよい。したがって、あらゆる細胞数が本発明の状況の範囲に含まれる。ある態様においては、粒子と細胞を一緒にして混合する容積を著しく減らして(すなわち、細胞の濃度を高めて)、細胞と粒子の最大の接触を確実にすることが望ましいと考えられる。例えば、1つの態様においては、細胞約20億個/mlの濃度を用いる。もう1つの態様においては、細胞1億個/ml超を用いる。1つのさらなる態様においては、1000万個、1500万個、2000万個、2500万個、3000万個、3500万個、4000万個、4500万個、または5000万個/mlの細胞濃度を用いる。さらにもう1つの態様においては、7500万個、8000万個、8500万個、9000万個、9500万個または1億個/mlの細胞濃度を用いる。さらなる態様において、細胞1億2500万または1億5000万個/mlの濃度を用いることができる。高濃度を用いることにより、細胞収量、細胞活性化、および細胞増大の増加がもたらされうる。さらに、高い細胞濃度を用いることにより、CD28陰性T細胞のように関心対象の標的抗原を弱く発現する細胞のより効率的な捕捉が可能になる。ある態様においては、そのような細胞集団は治療的価値を有する可能性があり、入手することが望ましいと考えられる。例えば、高濃度の細胞を用いることにより、通常は比較的弱いCD28発現を有するCD8+ T細胞のより効率的な選択が可能にある。
【0152】
本発明の1つの態様においては、混合物を、数時間(約3時間)〜約14日間、またはその間の任意の整数値単位の時間にわたって培養しうる。もう1つの態様において、混合物を21日間培養しうる。本発明の1つの態様においては、ビーズとT細胞を約8日間一緒に培養する。もう1つの態様においては、ビーズとT細胞は2〜3日間一緒に培養する。数回の刺激サイクルも望ましく、その結果、T細胞の培養時間は60日間またはそれより長くなる。T細胞の培養に適した条件には、血清(例えばウシ胎仔血清またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFβおよびTNF-α、または当業者に公知である細胞増殖のための他の添加物を含む、増殖および生存のために必要な因子を含みうる適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI Medium 1640または、X-vivo 15(Lonza))が含まれる。細胞の増殖のための他の添加剤には、界面活性剤、プラスマネート、および還元剤、例えばN-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールなどが非限定的に含まれる。培地には、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびビタミンが添加された、血清非含有であるか、またはT細胞の増殖および増大のために十分な、適量の血清(または血漿)もしくは規定されたホルモンのセットおよび/もしくは一定量のサイトカインが加えられた、RPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo 15、およびX-Vivo 20が含まれうる。ペニシリンおよびストレプトマイシンなどの抗生物質は実験培養物のみに含められ、対象に輸注される細胞の培養物には含められない。標的細胞は、増殖を支えるために必要な条件下、例えば適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気+5% CO
2)の下で維持される。
【0153】
多様な刺激時間にわたって曝露されたT細胞は、異なる特性を示しうる。例えば、典型的な血液またはアフェレーシスを受けた末梢血単核細胞の産物は、ヘルパーT細胞集団(T
H、CD4
+)を、細胞傷害性またはサプレッサーT細胞集団(T
C、CD8
+)よりも多く有する。CD3受容体およびCD28受容体を刺激することによるT細胞のエクスビボ増大では、約8〜9日目より前には主としてT
H細胞からなるT細胞集団が生じるが、約8〜9日目以後、T細胞の集団はT
C細胞の集団を次第に多く含むようになる。したがって、治療の目的によっては、主としてT
H細胞で構成されるT細胞集団を対象に輸注することが有利な場合がある。同様に、T
C細胞の抗原特異的サブセットが単離されている場合には、このサブセットをより高度に増大させることが有益な場合がある。
【0154】
さらに、CD4およびCD8マーカーのほかに、他の表現型マーカーも、細胞増大の過程で顕著に、しかし大部分は再現性を伴って変動する。このため、そのような再現性により、活性化T細胞製品を特定の目的に合わせて作ることが可能になる。
【0155】
治療適用
本発明は、ベクター(例えばレンチウイルスベクター(LV))によって形質導入された細胞(例えば、T細胞)を包含する。例えば、LVは、特異的抗体の抗原認識ドメインを、CD3-ζ、CD28、4-1BBの細胞内ドメインまたはこれらの任意の組み合わせと組み合わせたCARをコードする。このため、場合によっては、形質導入されたT細胞は、CARにより媒介されるT細胞応答を誘発することができる。
【0156】
本発明は、一次T細胞の特異性を腫瘍抗原に向けて再誘導するためのCARの使用を提供する。したがって、本発明はまた、哺乳動物において標的細胞集団または組織に対するT細胞媒介性免疫応答を刺激するための方法であって、CARを発現するT細胞を哺乳動物に投与する段階を含み、該CARが、所定の標的と特異的に相互作用する結合モイエティー、例えばヒトCD3ζの細胞内ドメインを含むζ鎖部分、および共刺激シグナル伝達領域を含む、方法を提供する。
【0157】
1つの態様において、本発明は、CARを発現するようにT細胞を遺伝子改変し、そのCAR T細胞をそれを必要とするレシピエントに輸注する、一種の細胞療法を含む。輸注された細胞は、レシピエントにおける腫瘍細胞を死滅させることができる。抗体療法とは異なり、CAR T細胞はインビボで複製して、持続的腫瘍制御につながりうる長期存続性をもたらすことができる。
【0158】
1つの態様において、本発明のCAR T細胞は、頑強なインビボT細胞増大を起こすことができ、より延長した時間にわたって存続することができる。もう1つの態様において、本発明のCAR T細胞は、あらゆる追加的な腫瘍形成または増殖を阻害するように再活性化されうる、特異的なメモリーT細胞になることができる。例えば、本発明のCART19細胞が頑強なインビボT細胞増大を起こして、血液および骨髄において延長した時間にわたって高レベルに存続して、かつ特異的なメモリーT細胞を形成しうることは予想外であった。いかなる特定の理論にも拘束されることは望まないが、CAR T細胞は、インビボでサロゲート抗原を発現する標的細胞に遭遇するとセントラルメモリー様状態に分化することができ、その後にそれを排除することができる。
【0159】
いかなる特定の理論にも拘束されることは望まないが、CAR改変T細胞によって誘発される抗腫瘍免疫応答は、能動的な免疫応答でも受動的な免疫応答でもありうる。加えて、CARにより媒介される免疫応答は、CAR改変T細胞がCARにおける抗原結合モイエティーに対して特異的な免疫応答を誘導する養子免疫療法アプローチの一部となりうる。例えば、CART19細胞は、CD19を発現する細胞に対して特異的な免疫応答を誘発する。
【0160】
本明細書に開示されたデータは、FMC63マウスモノクローナル抗体に由来する抗CD19 scFv、ヒトCD8αのヒンジおよび膜貫通ドメイン、ならびにヒト4-1BBおよびCD3ζのシグナル伝達ドメインを含むレンチウイルスベクターを具体的に開示しているが、本発明は、本明細書中の別所に記載されたような構築物の構成要素のそれぞれに関してあらゆるさまざまな変形物を含むとみなされるべきである。すなわち、本発明は、抗原結合モイエティーに対して特異的な、CARにより媒介されるT細胞応答を生じさせるための、CARにおける任意の抗原結合モイエティーの使用を含む。例えば、本発明のCARにおける抗原結合モイエティーは、癌の治療を目的として腫瘍抗原を標的とすることができる。
【0161】
治療しうる可能性のある癌には、血管が発達していないか、またはまだ実質的に血管が発達していない腫瘍、ならびに血管が発達した腫瘍が含まれる。癌は非固形腫瘍(血液腫瘍、例えば、白血病およびリンパ腫)を含んでもよく、または固形腫瘍を含んでもよい。本発明のCARを用いて治療される癌の種類には、癌腫、芽細胞腫および肉腫、ある種の白血病またはリンパ性悪性腫瘍、良性および悪性腫瘍、ならびに悪性腫瘍、例えば、肉腫、癌腫および黒色腫が非限定的に含まれる。成人腫瘍/癌および小児腫瘍/癌も含められる。
【0162】
血液悪性腫瘍は、血液または骨髄の癌である。血液(または造血器)悪性腫瘍の例には、白血病、急性白血病(急性リンパ性白血病、急性骨髄急性白血病、急性骨髄性白血病、ならびに骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性の白血病および赤白血病など)、慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病および慢性リンパ性白血病など)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(無症候型およびハイグレード型)、多発性骨髄腫、ワルデンストローム・マクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、毛様細胞白血病および骨髄異形成が含まれる。
【0163】
固形腫瘍とは、通常は嚢胞も液体領域も含まない組織の異常腫瘤のことである。固形腫瘍は良性のことも悪性のこともある。さまざまな種類の固形腫瘍が、それを形成する細胞の種類によって名付けられている(肉腫、癌腫およびリンパ腫など)。肉腫および癌腫などの固形腫瘍の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ性悪性腫瘍、膵癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞種 皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、セミノーマ、膀胱癌、黒色腫、ならびにCNS腫瘍(神経膠腫(脳幹神経膠腫および混合神経膠腫など)、神経膠芽細胞腫(多形性神経膠芽細胞腫としても知られる)、星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽細胞腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起細胞腫、髄膜腫(menangioma)、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫および脳転移など)が含まれる。
【0164】
1つの態様において、本発明のCARのモイエティー部分と結合する抗原は、特定の癌を治療するように設計される。例えば、CD19を標的とするように設計されたCARを、プレB ALL(小児適応)、成人ALL、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、同種骨髄移植後サルベージなどを非限定的に含む癌および障害を治療するために用いることができる。
【0165】
もう1つの態様において、CARを、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を治療するために、CD22を標的とするように設計することができる。
【0166】
1つの態様において、CD19、CD20、CD22およびROR1を標的とするCARの組み合わせを用いて治療しうる癌および障害には、プレB ALL(小児適応)、成人ALL、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、同種骨髄移植後サルベージなどが非限定的に含まれる。
【0167】
1つの態様において、CARを、中皮腫、膵癌、卵巣癌などを治療するために、メソテリンを標的とするように設計することができる。
【0168】
1つの態様において、CARを、急性骨髄性白血病などを治療するために、標的CD33/IL3Raを標的とするように設計することができる。
【0169】
1つの態様において、CARを、トリプルネガティブ乳癌、非小細胞肺癌などを治療するために、c-Metを標的とするように設計することができる。
【0170】
1つの態様において、CARを、前立腺癌などを治療するために、PSMAを標的とするように設計することができる。
【0171】
1つの態様において、CARを、前立腺癌などを治療するために、糖脂質F77を標的とするように設計することができる。
【0172】
1つの態様において、CARを、神経膠芽細胞腫(gliobastoma)などを治療するために、EGFRvIIIを標的とするように設計することができる。
【0173】
1つの態様において、CARを、神経芽細胞腫、黒色腫などを治療するために、GD-2を標的とするように設計することができる。
【0174】
1つの態様において、CARを、骨髄腫、肉腫、黒色腫などを治療するために、NY-ESO-1 TCRを標的とするように設計することができる。
【0175】
1つの態様において、CARを、骨髄腫、肉腫、黒色腫などを治療するために、MAGE A3 TCRを標的とするように設計することができる。
【0176】
しかし、本発明は、本明細書に開示された抗原標的および疾患のみに限定されるとみなされるべきではない。より正確には、本発明は、疾患を治療するためにCARを用いうる疾患と関連するあらゆる抗原標的を含むとみなされるべきである。
【0177】
本発明のCAR改変T細胞はまた、哺乳動物におけるエクスビボ免疫処置および/またはインビボ治療法のためのワクチンの一種としても役立つことができる。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0178】
エクスビボ免疫処置に関しては、細胞を哺乳動物に投与する前に、以下の少なくとも1つをインビトロで行う:i)細胞の増大、ii)CARをコードする核酸を細胞に導入すること、および/またはiii)細胞の凍結保存。
【0179】
エクスビボ手順は当技術分野において周知であり、以下でより詳細に考察する。手短に述べると、細胞を哺乳動物(好ましくはヒト)から単離した上で、本明細書で開示されたCARを発現するベクターによって遺伝子改変する(すなわち、インビトロで形質導入またはトランスフェクトを行う)。CAR改変細胞を哺乳動物レシピエントに投与することにより、治療的利益を得ることができる。哺乳動物レシピエントはヒトであってよく、CAR改変細胞はレシピエントに対して自己であることができる。または、細胞がレシピエントに対して同種、同系または異種であることもできる。
【0180】
造血幹細胞および始原細胞のエクスビボ増大のための手順は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,199,942号に記載されており、これを本発明の細胞に適用することができる。他の適した方法は当技術分野において公知であり、このため、本発明は、エクスビボ細胞の増大のいかなる特定の方法にも限定されない。手短に述べると、T細胞のエクスビボ培養および増大は以下を含む:(1)CD34+造血幹細胞および始原細胞を哺乳動物から、末梢血採取物または骨髄エクスプラントから収集すること;ならびに(2)そのような細胞をエクスビボを増大させること。米国特許第5,199,942号に記載された細胞増殖因子のほかに、flt3-L、IL-1、IL-3およびc-kitリガンドなどの他の因子を、細胞の培養および増大のために用いることができる。
【0181】
エクスビボ免疫処置に関して細胞ベースのワクチンを用いることに加えて、本発明はまた、患者における抗原に向けての免疫応答を誘発するためのインビボ免疫処置のための組成物および方法も提供する。
【0182】
一般に、本明細書に記載の通りに活性化および増大された細胞は、免疫機能が低下した個体において生じる疾患の治療および予防に利用することができる。特に、本発明のCAR改変T細胞は、CCLの治療に用いられる。ある態様において、本発明の細胞は、CCLを発症するリスクのある患者の治療に用いられる。したがって、本発明は、CCLの治療または予防のための方法であって、それを必要とする対象に対して、本発明のCAR改変T細胞の治療的有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0183】
本発明のCAR改変T細胞は、単独で、または希釈剤および/またはIL-2もしくは他のサイトカインもしくは細胞集団などの他の成分と組み合わせた薬学的組成物として投与することができる。手短に述べると、本発明の薬学的組成物は、本明細書に記載の標的細胞集団を、1つまたは複数の薬学的または生理的に許容される担体、希釈剤または添加剤と組み合わせて含みうる。そのような組成物は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水などの緩衝液;ブドウ糖、マンノース、ショ糖またはデキストラン、マンニトールのような炭水化物;タンパク質;ポリペプチドまたはグリシンのようなアミノ酸;酸化防止剤;EDTAまたはグルタチオンのようなキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);並びに保存剤を含有してもよい。本発明の組成物は、静脈内投与用に製剤されることが好ましい。
【0184】
本発明の薬学的組成物は、治療(または予防)される疾患に適した方法で投与することができる。投与量および投与回数は、患者の状態、並びに患者の疾患の種類および重症度などの因子により決定されるが、適量は臨床試験により決定され得る。
【0185】
「免疫学的有効量」、「抗腫瘍的有効量」、「腫瘍阻害的有効量」または「治療量」が指示される場合、投与される本発明の組成物の正確な量は、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染症または転移の程度、および患者(対象)の状態の個体差を考慮して、医師が決定することができる。一般に、本明細書に記載のT細胞を含む薬学的組成物は、細胞10
4〜10
9個/kg体重、好ましくは細胞10
5〜10
6個/kg体重であって、これらの範囲内のすべての整数値を含む投与量で投与することができる。また、T細胞組成物をこれらの用量で多回投与することもできる。細胞は、免疫療法において一般的に公知である輸注手法を用いることによって投与することができる(例えば、Rosenberg et al., New Eng. J. of Med. 319:1676, 1988を参照)。特定の患者に関する最適な投与量および治療レジメンは、疾患の徴候に関して患者をモニタリングして、それに応じて治療を調節することによって、医療の当業者によって容易に決定されうる。
【0186】
ある態様においては、活性化されたT細胞を対象に投与し、続いてその後に血液を再び採取して(またはアフェレーシスを行って)、それ由来のT細胞を本発明に従って活性化した上で、これらの活性化および増大されたT細胞を患者に再び輸注することが望まれると考えられる。この過程を2、3週毎に複数回行うことができる。ある態様において、T細胞は10cc〜400ccの採取血から活性化させることができる。ある態様において、T細胞は20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90ccまたは100ccの採取血から再活性化される。理論に拘束されるわけではないが、この複数回の採血/複数回の再輸注プロトコールを用いることは、T細胞のある特定の集団を選別するために役立つ可能性がある。
【0187】
本組成物の投与は、エアゾール吸引、注射、経口摂取、輸液、植え付けまたは移植を含む、任意の好都合な様式で実施することができる。本明細書に記載された組成物は、患者に対して、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射により、または腹腔内に投与することができる。1つの態様において、本発明のT細胞組成物は、患者に対して、皮内注射または皮下注射によって投与される。もう1つの態様において、本発明のT細胞組成物は、好ましくは静脈内注射または腹腔内注射によって投与される。T細胞の組成物を腫瘍内、リンパ節内または感染部位に直接注射してもよい。
【0188】
本発明のある態様においては、本明細書に記載の方法、またはT細胞を治療的レベルまで増大させることが当技術分野において公知である他の方法を用いて活性化および増大された細胞を、MS患者に対する抗ウイルス療法、シドホビルおよびインターロイキン-2、シタラビン(ARA-Cとしても公知)もしくはナタリズマブ治療、乾癬患者に対するエファリズマブ治療、またはPML患者に対する他の治療などの薬剤による治療を非限定的に含む、任意のさまざまな妥当な治療様式とともに(例えば、前に、同時に、または後に)患者に投与する。さらなる態様において、本発明のT細胞を、化学療法、放射線照射、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレートおよびFK506など、抗体、またはCAMPATHなどの他の免疫除去薬、抗CD3抗体または他の抗体療法、サイトキシン、フルダリビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、および照射と組み合わせて用いてもよい。これらの薬物は、カルシウム依存型ホスファターゼのカルシニューリンを阻害するか(シクロスポリンおよびFK506)、または増殖因子が誘導したシグナル伝達に重要であるp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)かのいずれかである(Liu et al., Cell, 66:807-815, 1991;Henderson et al., Immun., 73:316-321, 1991;Bierer et al., Curr. Opin. Immun. 5:763-773, 1993)。1つのさらなる態様において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、フルダラビンなどの化学療法薬、外部ビーム照射(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3もしくはCAMPATHなどの抗体のいずれかを用いるT細胞除去療法と組み合わせて(例えば、その前、同時またはその後に)、患者に投与される。もう1つの態様において、本発明の細胞組成物は、CD20と反応する薬剤、例えばリツキサンなどによるB細胞除去療法の後に投与される。例えば、1つの態様において、対象は、高用量の化学療法薬に続いて末梢血幹細胞移植を行う標準治療を受けることができる。ある態様においては、移植後に、対象は本発明の増大された免疫細胞の輸注を受ける。1つの追加的な態様において、増大された細胞は、手術の前または後に投与される。
【0189】
患者に投与される上記の治療の投与量は、治療される病状および治療のレシピエントの正確な性質に応じて異なると考えられる。ヒトへの投与に関する投与量の増減は、当技術分野において許容される実践に従って行うことができる。例えば、CAMPATHの用量は、一般に成人患者について1〜約100mgの範囲であり、通常は1〜30日の期間にわたって毎日投与される。好ましい一日量は1〜10mg/日であるが、場合によっては、最大40mg/日までのより多くの用量を用いることもできる(米国特許第6,120,766号に記載)。
【実施例】
【0190】
実験例
ここで本発明を、以下の実験例を参照しながら説明する。これらの例は例示のみを目的として提供されるものであり、本発明はこれらの例に限定されるとは全くみなされるべきではなく、本明細書で提供される教示の結果として明らかになる任意かつすべての変更も包含するとみなされるべきである。
【0191】
それ以上の説明がなくても、当業者は、前記の説明および以下の例示的な例を用いて、本発明の化合物を作成して利用し、請求される方法を実施することができる。以下の実施例は、このため、本発明の好ましい態様を具体的に指摘しており、本開示の残りを限定するものとは全くみなされるべきでない。
【0192】
実施例1:混入物に関する分析
ヒト対象への投与を予定している、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように形質導入されたリンパ球を、形質導入の過程の間に導入される恐れのある混入物の検出および定量のために分析する。
【0193】
検査に関する一般的記載
研究試料の処理、凍結および検査分析は、優良試験所基準(Good Laboratory Practice)または優良製造基準(Good Manufacturing Practices)の規範に則って、試料の受け取り、処理、凍結および分析に関する確立されたSOPおよび/またはプロトコールを用いて行った。
【0194】
ベクターの作製
記載の通りに(Milone et al., 2009, Mol Ther. 17:1453-1464)、CD19-BB-z導入遺伝子(GeMCRIS 0607-793)を設計して構築した。レンチウイルスベクターは、記載の通りに(Zufferey et al., 1997, Nature biotechnol 15:871-875)、Lentigen Corporationにおいて、3プラスミド作製アプローチを用いて、現行の優良製造基準に準拠して作製された。以前の報告の通りに(Milone et al., 2009, Mol Ther, 17:1453-64)、自己不活性化レンチウイルスベクター(GeMCRIS 0607-793)を設計して、前臨床安全性試験に供した。T細胞の調製方法も以前に記載されている(Porter et al, 2006, Blood, 107:1325-31)。
【0195】
CART-19 T細胞の調製
CD19に対する特異性を有する細胞外単鎖抗体(scFv)を発現するように自己T細胞を操作する。細胞外scFvは、悪性細胞および正常B細胞の表面に発現が限られる分子であるCD19を発現する細胞に対して、形質導入T細胞の特異性を再誘導することができる。CD19 scFvに加えて、TCRζ鎖、または4-1BBおよびTCRζのシグナル伝達モジュールで構成される縦列シグナル伝達ドメインのいずれかで構成される細胞内シグナル伝達分子も発現するように細胞に形質導入する。scFvはマウスモノクローナル抗体に由来し、それ故にマウス配列を含有しており、シグナル伝達ドメインはすべてがネイティブ性ヒト配列のものである。CART-19 T細胞は、アフェレーシスによってT細胞を単離して、レンチウイルスベクター技術(Dropulic et al., 2006, Human Gene Therapy, 17:577-88;Naldini et al., 1996, Science, 272:263-7;Dull et al., 1998, J Virol, 72:8463-71)を用いてscFv:TCRζ:4-1BBをCD4およびCD8 T細胞に導入することによって製造される。何人かの患者には、競合的再増殖実験のために対照scFv:TCRζ:を細胞の一部分に導入する。これらの受容体は、MHC非依存的な様式で抗原と結合する点で「万能的(universal)」であり、このため、単一の受容体構築物を、CD19抗原陽性腫瘍を有する患者の集団を治療するために用いることができる。
【0196】
CAR構築物はUniversity of Pennsylvaniaで開発され、臨床グレードのベクターはLentigen Corporationで製造された。CART-19細胞は、University of PennsylvaniaのClinical Cell and Vaccine Production Facilityで、
図2に示された過程に従って製造される。細胞培養が終わったところで、細胞を輸注可能な凍結媒体中で凍結保存する。
【0197】
T細胞の生存度
形質導入後のT細胞の生存度は、トリパンブルー排除アッセイ(0.4% Trypan Blue Stain(Gibco BRLカタログ番号15250-061に培地または希釈剤を加えたもの、およびBright-Line Hemacytometer(Hausser Scientific Company))を用いる)を用いるか、または生細胞の割合を判定するための7-AAD(BD ViaProbe(カタログ番号555815、BD Biosciences Pharmingen)およびフローサイトメーターを用いて判定した。
【0198】
T細胞の特徴
本明細書中の他所に記載した特定のT細胞マーカーを発現するかまたは発現しない形質導入細胞の割合を、細胞染色およびフローサイトメトリーを用いて判定した。
【0199】
形質導入効率
T細胞の形質導入効率は、フローサイトメトリー、定量的PCR、またはフローサイトメトリーと定量的PCRの両方を用いて判定した。
【0200】
エンドトキシンの有無および数量
形質導入T細胞の培養物におけるエンドトキシンの有無は、ゲルクロットアッセイを用いて評価した。
3.1.1 Endosafe PTS-キネティック・リーダー(Kinetic reader)
Charles River Laboratories,
3.1.2 PTS Loggerソフトウエア
3.1.3 使い捨て式Inhibition/Enhancementカートリッジ
Charles River/カタログ番号PTS220
3.1.4 使い捨て式LALカートリッジ 試験カートリッジ(0.01〜1.0/mL)および分析証明書、各ロットごと
Charles River/カタログ番号PTS2001F
3.1.5 使い捨て式LALカートリッジ 試験カートリッジ(0.005〜0.5EU/mL)および分析証明書、各ロットごと
Charles River/カタログ番号PTS20005F
発色エンドポイントアッセイ‐分光光度計で読み取り
3.1.6停止試薬:20%w/v氷酢酸
カタログ番号BP2401-212、Fisher Scientific, Pittsburgh, PA
Tel: 1-800-766-7000
3.1.7 カブトガニアメーバ様細胞溶解物試験キット
カタログ番号50-648U(試験300回)または50-647U(試験120回)、Cambrex 8830 Biggs Ford Road, Walkersville, MD 21793
Tel: 800-654-4452、ext.7822、Fax: 301-845-2924
3.1.7.1 大腸菌エンドトキシン
3.1.7.2 発色性基質
3.1.7.3 発色性カブトガニアメーバ様細胞溶解物(LAL)
3.1.7.4 LAL Reagent Water(試験120回キットのみ)
3.1.8 LAL Reagent Water
カタログ番号W50-640、Cambrex, 8830 Biggs Ford Road, Walkersville, MD 21793
Tel: 800-654-4452、Fax: 301-845-2924
発色動態アッセイ‐分光光度計で読み取り
3.1.9 停止試薬:20%w/v氷酢酸
カタログ番号BP2401-212、Fisher Scientific
3.1.10 カブトガニアメーバ様細胞溶解物(LAL)Kinetic-QCLエンドトキシンアッセイキット
カタログ番号50-650U(試験192回)、Lonza/Cambrex
3.1.10.1 大腸菌エンドトキシン
3.1.10.2 Kinetic-QCL試薬(LAL/発色性基質の混合物)
LAL Reagent Water
ゲルクロットアッセイ
4.1.1 多回試験カブトガニアメーバ様細胞溶解物、PYROGENT(登録商標)Plus 試験200回 感度0.125EU/mL
カタログ番号N294-125、Lonza
4.1.1.1 カブトガニアメーバ様細胞溶解物(LAL)、感度0.125EU/mL
4.1.1.1.1 4×50回の試験用バイアル(5.2mL/バイアル)
4.1.1.2 大腸菌エンドトキシンO55:B5、10ng/バイアル、凍結乾燥、対照標準エンドトキシン(CSE)
4.1.1.2.1 注:分析証明書ではEU/mL単位でのCSE力価が指定されている。COAはこのキットにはもう提供されていない。
4.1.1.2.2 分析証明書を評価するには、http://www.lonzabio.com/2506.htmlを訪れ、キットボックスの前面の製品ラベルにあるカタログ番号およびロット番号を入力する。
4.1.2 LAL試薬、溶解物感度0.125EU/mL(Charles River Laboratories、カタログ番号R11012)
4.1.2.1 12のパック
4.1.3 対照標準エンドトキシン10ng/バイアル(Charles River Laboratories、カタログ番号E120_
4.1.3.1 6のパック
4.1.4 LAL Reagent Water(LRW)、30mL/バイアル
カタログ番号W130、Charles River Laboratories
【0201】
マイコプラズマの有無および数量
形質導入T細胞の培養物におけるマイコプラズマの有無は、mycoalertアッセイを用いて評価した。
3.1.11 MycoAlertマイコプラズマ検出キット(Lonza、カタログ番号LT07-318)-試験100回
3.1.12 MycoAlertアッセイ対照セット(Lonzaカタログ番号LT07-518)
3.1.13 96ウェルの不透明な白底マイクロプレート(Corning Incorporated カタログ番号3912)
Corning Incorporated Life Sciences 45 Nagog Park, Acton MA 01720
Tel: 1-978-635-2200、Fax: 1-978-635-2476
ルミノメーターで読み取り
MycoProbeマイコプラズマELISA:
http://www.rndsystems.com/pdf/CUL001B.pdf
【0202】
複製能を有するレンチウイルス(RCL)の有無および数量
形質導入T細胞の培養物におけるRCLの有無は、VSV-GおよびHIVgagを評価するPCRアッセイ、ならびにp24に関するELISAを用いて評価した。
【0203】
p24の有無および数量
形質導入T細胞の培養物におけるp24の有無は、ELISAアッセイを用いて評価した。
5.1.1 PerkinElmer HIV-1 p24 ELISAキット
カタログ番号NEK050(1×96ウェルプレート)、
NEK050A(2×96ウェルプレート)
NEK050B(5×96ウェルプレート)
PerkinElmer, Inc, 940 Winter Street, Waltham, Massachusetts 02451,
Tel:800-762-4000
【0204】
VSV-G核酸の有無および数量
形質導入T細胞の培養物におけるVSV-G核酸の有無は、標準的なABI増幅条件下でVSV-G配列を特異的に増幅させて検出するプライマー/プローブの組み合わせを用いる定量的PCRアッセイを用いて評価した。上記のプライマーを用いてVSV-G DNAを定量するのに適格のQPCRアッセイは確立されている。この適格アッセイでは、VSV-G遺伝子配列を含むプラスミドpC1-VSV-Gによるスパイク刺激を受けたPBMCから単離されたゲノムDNAから作成された標準曲線を利用する;標準曲線は1×10
6〜10コピーのVSV-G/100ng PBMCの範囲にわたる。各最終製品に関して、該製品から単離されたおよそ200ngのゲノムDNAを用いる3回ずつの反応により、残留VSV-G DNAの有無を評価する。残留VSV-Gプラスミドの量は標準曲線から求め、投入DNAの量に関する補正および正規化を行った後に、VSV-Gプラスミドのコピー数/μgゲノムDNAとして報告する。追加のパッケージング用プラスミド(LIST)のそれぞれに関する混入性プラスミド核酸の有無は、パッケージング段階に用いた各プラスミド(VSVG、Gag pol、P24、pRSV.rev)に対して特異的なプライマー/プローブの組み合わせを用いて、この様式で判定することができる。
【0205】
細菌の有無および定量
形質導入T細胞の培養物における細菌の有無は、形質導入T細胞の培養物からの材料を用いて細菌の培養を試みることによって評価した。細菌混入に関する試験にはBACTECアッセイが用いられる。BACTEC培養バイアルは一般的な好気性微生物の増殖を援助するものであり、それらは1〜3mlの培養培地を含有する滅菌シリンジによって接種される。増殖の検出は、CO
2濃度の経時的な上昇を測定するBACTEC 9050装置を用いて行う。このアッセイは、本明細書中の他所に提示されているSOP 0361に準拠して、CVPFで行う。CVPF検査室におけるこの試験の感度は確かめられていないが、発表済みの研究により、BACTECの方がCFR法よりも感度が高く、検出までの時間が迅速で、偽陽性の結果が生じにくいことが指し示されている(Khuu et al, 2004 and 2006)。
【0206】
真菌の有無および数量
形質導入T細胞の培養物における真菌の有無は、形質導入T細胞の培養物からの材料を用いて細菌の培養を試みることによって評価した。真菌混入に関する試験は、Gorman, 1967の処方に基づくサブロー脳心臓浸出液寒天培地を用いて、HUP Clinical Microbiology laboratoriesで行われる。培地は真菌回収が向上するように最適化されており、真菌増殖と競合する可能性のある細菌の増生を妨げるためにさまざまな抗菌薬も含む。培養培地には画線法によって接種を行う。培養物を14日間経過観察した上で、陰性と判定する。このアッセイの感度は、Clinical Microbiology Laboratoryによっては明らかになっていない。このアッセイの陽性対照には、ブラストミセス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ・アルビカンス、およびトリコフィトン-メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)という3種の真菌が含まれ、生存に適した培地であることを指し示すにはこれらが増殖する必要がある。抗微生物薬の力価をモニターするには、対照プレートに大腸菌を接種して、部分的阻害から完全阻害までを観察する必要がある。
【0207】
貯蔵
CART-19形質導入T細胞を含有するバッグ(容量10〜100ml)は監視下にある-135℃冷凍庫内で血液銀行の条件下で貯蔵する。輸注バッグは必要時まで冷凍庫で貯蔵する。
【0208】
細胞の解凍
治験薬剤部(investigational pharmacy)で細胞の記録をとった後に、凍結細胞をドライアイス中にて対象のベッドサイドまで搬送する。36℃〜38℃に維持した水浴を用いて、細胞をベッドサイドで一度に1バッグずつ解凍する。細胞がちょうど解凍するまで、バッグを丁寧にもみほぐす。凍結塊を容器内に残さないようにすべきである。
【0209】
投与/輸注
輸注は化学療法の完了から1〜2日後に開始する。初回輸注の日に、患者には分画を含むCBC、ならびにCD3、CD4およびCD8数の評価を行うが、これは化学療法を一つにはリンパ球減少症を誘導するために行うためである。いかなる特定の理論にも拘束されることは望まないが、2.5〜5×10
9個のCART-19細胞という初回静脈内用量がこのプロトコールには最適であると考えられている。健常成人には約1×10
12個のT細胞が存在するため、提唱される総用量はT細胞の体内総量の約0.5%に相当する(Roederer, 1995, Nat Med, 1:621-7;Macallan et al., 2003, Eur J Immunol, 33: 2316-26)。1回目の用量は分割投与を用いて第0日(10%)、第1日(30%)および第2日(60%)に投与する。対象は隔離された部屋で輸注を受ける。本明細書中の別所に記載したように、細胞は患者のベッドサイドで解凍する。解凍した細胞は耐容しうる限りできるだけ速い輸注速度で投与し、その結果、輸注の持続時間はおよそ10〜15分となる。形質導入されたT細胞は、三方活栓付きの18ゲージのラテックス非含有Y型輸血セットによって、毎分およそ10mL〜20mLの流速で急速静脈内輸注によって投与する。輸注の持続時間はおよそ15分とする。CART-19改変細胞のバッグを1つまたは2つ、氷上にて搬送し、細胞を低温のまま対象に投与する。CART-19細胞の混合物を投与される対象では、混合を促す目的で、Y-アダプターを用いて細胞を同時に投与する。対象には本明細書中の別所に記載したように輸注および前投薬を行う。対象のバイタルサインの評価およびパルスオキシメトリー検査を、投与の前、輸注の終了時、およびその後は15分毎に1時間、そしてこれらが安定して良好になるまで行う。ベースラインCART-19レベルの決定のための血液試料は、輸注前および輸注20分後に入手する。先行して彼らに行った細胞減少化学療法による毒性を来した患者では、これらの毒性が消失するまで輸注スケジュールを遅らせる。T細胞輸注を遅らせる根拠となる具体的な毒性には以下が含まれる:1)肺:飽和度を95%超に保つために酸素補給が必要、または胸部X線上の進行性である放射線学的異常の存在;2)心臓:医学的管理によってコントロールされていない新たな心不整脈。3)昇圧サポートを必要とする低血圧。4)活動性感染症:T細胞輸注から48時間以内の細菌、真菌またはウイルスに関する血液培養が陽性。カリウムおよび尿酸に関する血清試料を収集し、初回輸注の前ならびに以後の各輸注の2時間後。
【0210】
本明細書に引用された特許、特許出願および刊行物のそれぞれおよびすべての開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。具体的な態様を参照しながら本発明を開示してきたが、本発明の真の趣旨および範囲を逸脱することなく、本発明の他の態様および変形物も当業者によって考案されうることは明らかである。添付された特許請求の範囲は、そのようなすべての態様および等価な変形物を含むことを意図している。