(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
【0045】
図1は、本発明にかかるシートベルトリトラクタの実施の形態の一例を備えるシートベルト装置を模式的に示す図である。
【0046】
図1に示すように、この例のシートベルト装置1は、従来公知の三点式シートベルト装置と同じである。図中、1はシートベルト装置、2は車両シート、3は車両シート2の近傍に配設されたシートベルトリトラクタ、4はシートベルトリトラクタ3に引き出し可能に巻き取られかつ先端のシートベルトアンカー4aが車体の床あるいは車両シート2に固定されるシートベルト、5はシートベルトリトラクタ3から引き出されたシートベルト4を乗員のショルダーの方へガイドするガイドアンカー、6はこのガイドアンカー5からガイドされてきたシートベルト4に摺動自在に支持されたタング、7は車体の床あるいは車両シートに固定されかつタング6が係脱可能に挿入係止されるバックルである。このシートベルト装置1におけるシートベルト4の装着操作および装着解除操作も、従来公知のシートベルト装置と同じである。
【0047】
図2は、第1実施形態のシートベルトリトラクタの分解斜視図である。
図3、
図4及び
図5は、第1実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構20を示す斜視図である。
図6は、第1実施形態のシートベルトリトラクタの駆動機構35を示す斜視図である。
図7は、第1実施形態のシートベルトリトラクタの駆動機構35を示す側面図である。
図8は、第1実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構20と駆動機構35を示す正面図である。
図9は、
図7のA−A線における断面図である。
図10は、
図8のB−B線における断面図である。
図11は、
図9のC部分の拡大図である。
図12は、第1実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構20の一部を示す拡大斜視図である。
【0048】
図2に示すように、第1実施形態におけるシートベルトリトラクタ3は、フレーム11と、スプール12と、スプリング部13と、EA機構20と、駆動機構35と、減速度感知手段40と、プリテンショナー機構50と、ロック機構60と、を備える。なお、EA機構20は、エネルギ吸収機構を構成する。
【0049】
フレーム11は、背板11aと、この背板11aの両側端から直交する方向に突設された左右の側壁11b,11cと、を備え、断面コ字状を形成している。フレーム11の左右の側壁11b,11cには、それぞれ円形状の開口が形成される。
【0050】
スプール12は、
図3及び
図9に示すように、中間部12aと、中間部12aの一方端で外周側に突出する第1フランジ12bと、中間部12aの他方端で外周側に突出する第2フランジ12cと、第1フランジ12bの外側でEA機構20の一部を保持する保持部12dと、を有する。
【0051】
中間部12aの外周には、
図1に示したシートベルト4の一端が係止され、シートベルト4が巻き付けられる。また、中間部12a、第1フランジ12b及び第2フランジ12cには、軸中心に共通の孔部12eが軸方向に形成され、外周に溝部12fが軸方向に形成されている。孔部12eと溝部12fは、一部で連通してもよい。溝部12fの第2フランジ12c側の端部には、後述する第2トーションバー24と係合するスプライン状の係合部12f
1が形成される。
【0052】
保持部12dにも、第1フランジ12bから連通し、中心から外周側に長孔状の孔部12eが形成される。保持部12d外周には、後述するEA機構20の一部を保持する第1溝12d
1、第2溝12d
2、及び第3溝12d
3が形成される。孔部12eと外周の間には、リブ12gが形成される。
【0053】
スプリング部13は、一端がスプール12の軸部を構成する後述する第1トーションバー21に連結され、他端がケースに取り付けられ、スプール12をベルト巻取方向に付勢する図示しないスプリングを有する。
【0054】
EA機構20は、第1トーションバー21と、第1ギヤ22と、第2ギヤ23と、第2トーションバー24と、タイプレート25と、リリースリングホルダ26と、リリースリング27と、カバー28と、プッシュナット29と、を有する。また、駆動機構35は、ハウジング30と、レバーリング31と、マイクロガスジェネレータ32と、Oリング33と、ピストン34と、を有する。リリースリングホルダ26は移動部材ホルダを構成し、リリースリング27は移動部材を構成し、カバー28はカバー部材を構成し、レバーリング31は押圧部材を構成し、マイクロガスジェネレータ32は駆動部材を構成する。さらに、第1トーションバー21は第1エネルギ吸収部材を構成し、第1ギヤ22は第1エネルギ伝達部材を構成し、第2ギヤ23は第2エネルギ伝達部材を構成し、第2トーションバー24は第2エネルギ吸収部材を構成する。
【0055】
第1トーションバー21は、スプール12の孔部12eに
図3に示した矢印Xの方向から挿入され、スプール12を貫通する。第1トーションバー21の一端部21aは、第1ギヤ22を貫通してスプリング部13に保持される。第1トーションバー21の他端部21bは、スプール12の第2フランジ12c側で後述するロック機構60のロックベース61と一体に回転するように保持される。また、第1トーションバー21の一端部21a側には、第1ギヤ22の内側に嵌め込まれる嵌合部21cが形成される。
【0056】
第1ギヤ22は、第1トーションバー21が貫通する孔部22aが形成される。第1ギヤ22の外周の軸方向の一方には、小径の第1噛合歯22bが形成され、外周の軸方向の他方には、大径の第2噛合歯22cが形成される。第1ギヤ22は、第1トーションバー21の一端部21a側に第1噛合歯22b、他端部21b側に第2噛合歯22cとなるように、内周側に形成された凹凸孔22dに第1トーションバー21の嵌合部21cが嵌め込まれ、第1トーションバー21と一体に回転する。第1ギヤ22は、第1トーションバー21と共にスプール12に挿入され、スプール12の保持部12dに形成された長孔状の孔部12eの一部に配置される。
【0057】
第2ギヤ23は、軸方向の一方に突部23cが形成され、他方に第2トーションバー24が挿入される孔部23aが形成され、外周に第3噛合歯23bが形成されている。第2ギヤ23は、第2トーションバー24の一端部24a側に一体に回転するように取り付けられる。第2ギヤ23は、スプール12の保持部12dに形成された長孔状の孔部12eの内側の一部に、第1ギヤ22と噛み合うように設置される。
【0058】
第2トーションバー24は、スプール12の中間部12aに形成された溝部12fに、保持部12d及び第1フランジ12bの孔部12eを介して、
図3に示した矢印Yの方向から挿入される。第2トーションバー24の一端部24aは、第2ギヤ23の孔部23aに一体に回転するように挿入される。第2トーションバー24の他端部24bは、スプライン状に形成され、溝部12fに形成された係合部12f
1に係合する。
【0059】
タイプレート25は、
図4に示すように、スプール12の保持部12dに形成された孔12eを覆う板状の部材である。タイプレート25には、第1孔25aと、第2孔25bとが形成される。第1孔25aは、第1ギヤ22の第1噛合歯22bを囲むように配置される。第2孔25bは、第2ギヤ23の突部23cを支持する。
【0060】
リリースリングホルダ26は、板状の環状部26aと、環状部26aの外周側から軸方向で第1フランジ12b側に突出した突出部26bと、環状部26aの外周から内周側に凹んだ凹部26cと、環状部26aの外周から内周側に凹んだ位置から軸方向で第1フランジ12b側に突出した係合部26dと、が形成される。
【0061】
突出部26bの先端には、外周側に突出した止め部26b
1が形成される。係合部26dは、環状部26aから離間するにつれて徐々に外周側に傾斜して形成される。
【0062】
リリースリング27は、リリースリングホルダ26の環状部26aより径が大きい環状部27aと、環状部27aの内周側から軸方向で第1フランジ12bとは反対側に突出した突出部27bと、環状部27aの内周側から径方向に突出した凸部27cが形成される。
【0063】
カバー28は、円盤状の部材であって、中央部分にスプライン状の孔28aが形成される。また、カバー28は、外周から内周側に凹んだ凹部28bが形成される。
【0064】
リリースリングホルダ26及びリリースリング27は、保持部12dの周囲に設置される。
【0065】
リリースリングホルダ26を設置する際には、突出部26bが保持部12dの第1溝12d
1へ挿入され、凹部26cが第2溝12d
2と形状が合致するように配置され、係合部26dが第3溝12d
3へ挿入される。
【0066】
リリースリング27を設置する際には、突出部27bがリリースリングホルダ26の凹部26c及び保持部12dの第2溝12d
2に挿入され、凸部27cがリリースリングホルダ26の係合部26dを乗り越えて保持部12dの第3溝12d
3へ挿入される。
【0067】
リリースリングホルダ26及びリリースリング27が保持部12dに設置された状態では、環状部27aの移動が止め部26b
1によって規制され、凸部27cの移動が係合部26dによって規制される。したがって、リリースリング27は、リリースリングホルダ26によって、保持される。
【0068】
カバー28の孔28aは、第1ギヤ22の第1噛合歯22bに噛み合わせる。カバー28の凹部28bは、リリースリング27の突出部27bに嵌め合わせる。そして、
図5に示すように、プッシュナット29をカバー28の外側から第1トーションバー21の一端部21aに取り付ける。したがって、カバー28は、保持部12dを覆うように取り付けられる。
【0069】
ハウジング30には、ハウジング本体30aと、ハウジング本体30aの表面30a
1に形成された凹部30a
2の側面の一部を構成する壁部30bと、壁部30bから凹部の内側に突出する段部30cと、段部30cから底面までの凹部30a
2の側面の一部を構成する筒壁部30dと、凹部30a
2の底面を構成する板部30eと、ハウジング本体30aの側面から外側に突出する突出部30fと、を有する。
【0070】
ハウジング本体30aは、表面30a
1に凹部30a
2が形成される。凹部30a
2は、壁部30b、段部30c、筒壁部30d、及び板部30eで構成される。筒壁部30dは板部30eから立設され、段部30cは筒壁部30dの上端から外側に広がる面であり、壁部30bは段部30cから表面30a
1まで立設される。
【0071】
段部30cは、環状の第1段部30c
1と、第1段部30c
1の一部からさらに外側に広がる略四角形状の面からなる第2段部30c
2と、を有する。第1段部30c
1に立設する壁部30bは第1壁部30b
1とし、第2段部30c
2に立設する壁部30bは第2壁部30b
2とする。第1段部30c
1の第1壁部30b
1側には、周方向に形成された斜面30c
11及び斜面30c
11の最高位置に形成された頂面30c
12を有する複数のカム部30c
10が形成されている。
【0072】
ハウジング本体30aには、外側面にガスジェネレータ取付部30fが設けられる。ガスジェネレータ取付部30fは、筒状の部分であって、ガスジェネレータ取付部30fに形成された連結孔30f
1は、第2段部30c
2に立設された第2壁部30b
2に連通される。連結孔30f
1には、
図2に示すように、マイクロガスジェネレータ32、Oリング33、及びピストン34が取り付けられる。
【0073】
レバーリング31は、リング部31aと、レバー部31bと、切欠部31cと、を有する。リング部31aは、環状の部分であって、ハウジング30の第1段部30c
1に載置される。レバー部31bは、リング部31aの外周から径方向に突出し、ハウジング30の第2段部30c
2に載置される。
図7に示すように、レバー部31bには、マイクロガスジェネレータ32のピストン34で押圧される受け部31b
1が形成されている。切欠部31cは、リング部31aの外周で第1段部30c
1のカム部30c
10に対応するように形成される。
【0074】
マイクロガスジェネレータ32は、ピストン34を内蔵し、Oリング33を介して連結孔30f
1に取り付けられる。
【0075】
また、シートベルトリトラクタ3は、減速度感知手段40と、プリテンショナー機構50と、ロック機構60を有する。これらは、従来からある通常の構成でよい。
【0076】
ロック機構60は、図示しないロックパウルと、ロッキングベース61と、を有する。ロックパウルは、ロッキングベース61に回転可能に設置される。ロッキングベース61は、
図9に示すように、第1トーションバー21の他端部21bに結合される。すなわちロッキングベース61と第1トーションバー21とは、一体に回転する。また、ロックパウルは、ロッキングベース61に取り付けられた軸を中心に回転することでフレーム11の側壁11bの開口に形成された歯と噛み合い、ロッキングベース61及び第1トーションバー21の回転をロックする。
【0077】
次に、第1実施形態のシートベルトリトラクタ3の作動について説明する。
【0078】
第1実施形態のシートベルトリトラクタ3では、まず、減速度感知手段40が緊急時に発生する大きな車両減速度を感知してプリテンショナー機構50及びロック機構60が作動を開始する。
【0079】
その後、EA機構20を作動させるが、第1実施形態のEA機構20は、駆動機構非作動状態と駆動機構作動状態の2種類の作動方法がある。
【0080】
まず、駆動機構35のマイクロガスジェネレータ32が作動しない駆動機構非作動状態について説明する。
【0081】
駆動機構非作動状態では、EA機構20及び駆動機構35は、マイクロガスジェネレータ32が作動しないので、
図5〜
図12に示された状態である。
図2に示したプリテンショナー機構50が作動し、スプール12が巻き取り方向に回転した後、乗員の慣性で
図1に示したシートベルト4が引き出されようとして、スプール12は、ベルト引出方向に回転する。
【0082】
駆動機構非作動状態では、リリースリング27は、突出部27bがカバー28の凹部28bに噛み合っている第1の位置にある。したがって、スプール12が回転すると、保持部12dの第2溝12d
2及び第3溝12d
3からリリースリング27の突出部27b及び凸部27cへそれぞれ回転力が伝達され、リリースリング27が回転する。
【0083】
その後、リリースリング27の突出部27bからカバー28の凹部28bへ回転力が伝達され、カバー28が回転する。カバー28の孔28aは、第1ギヤ22の第1噛合歯22bに噛み合っているので、カバー28が回転すると、第1ギヤ22が回転する。第1ギヤ22は、第1トーションバー21と一体なので、第1ギヤ22が回転すると、第1トーションバー21に回転力が伝達される。
【0084】
しかしながら、第1トーションバー21の他端部21bはロッキングベース61に保持されているので、第1トーションバー21は回転することができない。したがって、第1トーションバー21には捩れが生じる。すなわち、第1トーションバー21は、フォースリミッタ荷重が作用しながら、
図1に示した所定のシートベルト4の引き出しを許容し、エネルギを吸収する。
【0085】
この時、第2ギヤ23は、第3噛合歯23が第1ギヤ22の第2噛合歯22cに噛み合っているので、スプール12と共に回転し、第1ギヤ22の回りを回転する。したがって、一端部24aが第2ギヤ23と一体に取り付けられ、他端部24bがスプール12の溝部12fに形成された係合部12f
1に係合する第2トーションバー24は、スプール12と共に回転する。すなわち、第2トーションバー24には、捩れが生じない。
【0086】
つまり、第1実施形態のシートベルトリトラクタ3のマイクロガスジェネレータ32が作動しない駆動機構非作動状態では、第1トーションバー21のみが作用して、エネルギを吸収する。
【0087】
次に、マイクロガスジェネレータ32が作動する駆動機構作動状態について説明する。
【0088】
図13は、第1実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構20の駆動機構作動状態を示す斜視図である。
図14は、第1実施形態のシートベルトリトラクタのマイクロガスジェネレータ作動後を示す斜視図である。
図15は、マイクロガスジェネレータ作動後の
図8のB−B線における断面図である。
図16は、マイクロガスジェネレータ作動後の
図9のC部分の拡大図である。
【0089】
駆動機構作動状態では、EA機構20及び駆動機構35は、マイクロガスジェネレータ32が作動するので、
図13〜
図16に示された状態となる。
図2に示したプリテンショナー機構50が作動し、スプール12が巻き取り方向に回転した後、乗員の慣性で
図1に示したシートベルト4が引き出されようとしてスプール12は、ベルト引出方向に回転する。
【0090】
駆動機構作動状態では、
図14及び
図15に示すように、マイクロガスジェネレータ32が作動し、ピストン34が発射される。ピストン34は、レバーリング31のレバー部31bの受け部31b
1を押圧する。そして、レバー部31bを押圧されたレバーリング31は、回転を始める。すると、レバーリング31のリング部31aが切欠部31cに配置されていたハウジング30の第1段部30c
1に形成されたカム部30c
10の斜面30c
11に沿って移動し、頂面30c
12に乗り上げる。
【0091】
この時、
図16に示すように、移動したレバーリング31がリリースリング27を矢印D方向に押圧する。リリースリング27は、
図13に示すように、保持部12dの第2溝12d
2及び第3溝12d
3を第1フランジ12b側へ移動して、止め部26b
1をせん断し第2の位置に移動する。すると、リリースリング27の突出部27bがカバー28の凹部28b及びリリースリングホルダ26の凹部26cから離間する。カバー28は、第1トーションバー21の他端部21bがロッキングベース61に保持されているので、第1トーションバー21と共に固定される。
【0092】
この状態で、スプール12が回転すると、第2ギヤ23が第1ギヤ21の周囲を回転する。そのため、第2ギヤ23は、第2トーションバー24を中心に回転する。しかしながら、第2トーションバー24の他端部24bは、スプール12と共に回転しているが、第2トーションバー24を中心に回転することはない。したがって、第2トーションバー24には捩れが生じる。すなわち、第2トーションバー24は、フォースリミッタ荷重が作用しながら、
図1に示した所定のシートベルト4の引き出しを許容し、エネルギを吸収する。
【0093】
つまり、第1実施形態のシートベルトリトラクタ3の駆動機構35のマイクロガスジェネレータ32が作動する駆動機構作動状態では、第2トーションバー24のみが作用して、エネルギを吸収する。
【0094】
次に、第1実施形態のシートベルトリトラクタの制御について説明する。
【0095】
図17は、第1実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構のシステム図である。
【0096】
図17に示すように、この例のシートベルトリトラクタにおいては、制御部77は、シートウェイトセンサ71、シートスライド位置検出センサ72、加速度センサ73、フロントサテライトセンサ74、ベルト伸び出し量センサ75、及びバックルスイッチ76等の乗員情報取得部70からの各出力信号に基づいて、緊急時の状況に応じてプリテンショナー機構50及びマイクロガスジェネレータ32の作動を制御する。制御部77は、CPU等によって構成される。
【0097】
図18は、第1実施形態のシートベルトリトラクタの制御フローチャートを示す図である。
図19は、第1実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の制御フローチャートを示す図である。
【0098】
まず、ステップ11で、緊急時か否かを判定する(ST11)。緊急時か否かの判定は、衝突等によって加速度センサ73が予め定めた所定の値を超える急減速を検知したか否かによって判定する。ステップ11において、緊急時でないと判定された場合、ステップ11に戻る。
【0099】
ステップ11において、緊急時と判定された場合、ステップ12で、プリテンショナー機構50が作動する(ST12)。
【0100】
次に、ステップ13で、EA機構作動状態選択制御を実行する(ST13)。なお、ステップ13は、ステップ11及びステップ12のうち少なくともどちらか1つよりも前に実行してもよい。
【0101】
EA機構作動状態選択制御では、まず、ステップ111で、乗員情報を取得する(ST111)。乗員情報は、
図17に示した各センサ等から取得する。
【0102】
次に、ステップ112で、ステップ111において取得した乗員情報が予め定めた所定の条件を満足するか否かを判定する(ST112)。例えば、シートウェイトセンサ71によって取得される荷重が予め定めた所定の値以上か、所定の値より小さいかを判定する。
【0103】
ステップ112において、条件を満足する場合、ステップ113で、マイクロガスジェネレータ32を作動しない駆動機構非作動状態を選択する(ST113)。ステップ32において、条件を満足しない場合、ステップ114で、マイクロガスジェネレータ32を作動する駆動機構作動状態を選択する(ST114)。EA機構の作動状態を選択処理した後、EA機構作動状態選択制御を終了する。
【0104】
例えば、シートウェイトセンサ71によって取得される荷重が予め定めた所定の値以上の場合、第1の作動状態を選択し、シートウェイトセンサ71によって取得される荷重が予め定めた所定の値より小さい場合、駆動機構作動状態を選択する。
【0105】
次に、ステップ14で、プリテンショナー機構50の作動が終了する(ST14)。
【0106】
次に、ステップ15で、ステップ13のEA機構作動状態選択制御において駆動機構作動状態が選択されたか否かを判定する(ST15)。
【0107】
ステップ15において、駆動機構作動状態であると判定した場合、ステップ16で、駆動機構としてのマイクロガスジェネレータ32を作動する(ST16)。ステップ15において、駆動機構作動状態でないと判定した場合、すなわち、駆動機構非作動状態であると判定した場合、ステップ17に進む。
【0108】
次に、ステップ17で、EA機構20によりエネルギを吸収する(ST17)。
【0109】
次に、ステップ18で、EA機構20によるエネルギの吸収を終了する(ST18)。
【0110】
図20は、第1実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の駆動機構非作動状態でのストロークに対する荷重を示す図である。
図21は、第1実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の駆動機構作動状態でのストロークに対する荷重を示す図である。
【0111】
このように、この例のシートベルトリトラクタ3によれば、予め事前にわかる情報(例えば、乗員の体重の情報、シートスライド位置の情報等)、衝突を予知した衝突予知情報、および衝突の厳しさの情報(例えば、衝突速度の情報、衝突加減速度の情報、衝突の仕方等の情報)等の緊急時の状況の情報に基づいて、作動と非作動を切り換える第1トーションバー21と第2トーションバー24により緊急時のシートベルト4の制限荷重を変更するようにしている。
【0112】
言い換えれば、第1ギヤ22のシートベルト引出し方向の回転が阻止されてスプール12が第1ギヤ22に対してシートベルト引出方向に相対回転するとき、シートベルト4にかかる荷重を第1トーションバー21のみで制限するか、またはシートベルト3にかかる荷重を第2トーションバー24のみによって制限する。
【0113】
したがって、衝突等の緊急時のシートベルトの制限荷重を緊急時の状況および乗員の体格の大きさ等の緊急時の情報に応じて設定することができる。これにより、緊急時に乗員をより効果的にかつより適切に拘束することができるようになる。
【0114】
さらに、第2トーションバー24をスプール12内に設けているので、シートベルトリトラクタ3を上下方向に小型コンパクトに形成することができる。これにより、車室内の有効空間をその分広くすることができる。
【0115】
なお、前述の例では、レバーリング31のレバー部31bを押圧させる駆動部材として、マイクロガスジェネレータ32を用いるものとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、駆動部材として、例えば電磁ソレノイドによる電磁力でレバー部31bを押圧させる等の他の手段による駆動力でレバー部31bを押圧させることもできる。その場合には、電磁ソレノイドを制御部77で前述の例と同様に駆動制御すればよい。
【0116】
ここで、荷重の伝達について説明する。
【0117】
図22は、第1実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の駆動機構非作動状態でのプリテンショナー機構の回転力の伝達を示す断面図である。
【0118】
プリテンショナー機構50が作動している状態では、第1トーションバー21、第1ギヤ22、第2ギヤ23、第2トーションバー24、及びスプール12が一体に回転し、図示しないシートベルト4にプリテンショナー機構50で巻き取る際の回転力F1が作用する。
【0119】
図23は、第1実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の駆動機構非作動状態の荷重の伝達を示す断面図である。なお、図中、2点鎖線は、捩れの状態を模式的に示したものである。
【0120】
プリテンショナー機構50が作動し、スプール12が巻き取り方向に回転した後、乗員の慣性で、スプール12は、ベルト引出方向に回転する。
【0121】
駆動機構非作動状態では、リリースリング27は、カバー28に噛み合っている第1の位置にある。したがって、スプール12が回転すると、リリースリング27、カバー28、第1ギヤ22、及び第1トーションバー21に荷重が順に伝達される。
【0122】
しかしながら、第1トーションバー21はロッキングベース61に保持されているので、第1トーションバー21は回転することができない。したがって、第1トーションバー21には捩れが生じる。すなわち、第1トーションバー21は、フォースリミッタ荷重が作用しながら、エネルギを吸収する。
【0123】
図24は、第1実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の駆動機構作動状態の荷重の伝達を示す断面図である。なお、図中、2点鎖線は、捩れの状態を模式的に示したものである。
【0124】
駆動機構作動状態では、
図14に示したマイクロガスジェネレータ32が作動し、リリースリング27は、カバー28及びリリースリングホルダ26から離間する。カバー28、第1ギヤ22は、第1トーションバー21がロッキングベース61に保持されているので、第1トーションバー21と共に固定される。
【0125】
この状態で、スプール12が回転すると、第2ギヤ23が第1ギヤ22の周囲を回転するが、第2トーションバー24自身は、回転することはないので、第2トーションバー24には捩れが生じる。すなわち、第2トーションバー24は、フォースリミッタ荷重が作用しながら、エネルギを吸収する。
【0126】
つまり、第1実施形態のシートベルトリトラクタ3のマイクロガスジェネレータ32が作動する駆動機構作動状態では、第2トーションバー24のみが作用して、エネルギを吸収する。
【0127】
図25は、第2実施形態のシートベルトリトラクタの分解斜視図である。
図26は、第2実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構を示す分解斜視図である。
【0128】
図25に示すように、第2実施形態のシートベルトリトラクタ3は、第1実施形態と同様に、フレーム11と、スプール12と、スプリング部13と、EA機構20と、駆動機構35と、減速度感知手段40と、プリテンショナー機構50と、ロック機構60と、を備える。
【0129】
第2実施形態のシートベルトリトラクタ3は、第1ギヤ22及びカバー28と共に回転するピニオン200を有し、プリテンショナー機構50が作動するとピニオン200を回転させる構造としたものである。なお、その他の構造は、第1実施形態とほぼ同じ構造なので、説明を省略する。
【0130】
図26に示すように、ピニオン200のスプール12とは反対側の外周には、第1歯部200aが形成される。第1歯部200aは、プリテンショナー機構50の一部に対して噛み合い可能に設置される。
【0131】
ピニオン200のスプール12側の外周には、嵌合部200bが形成される。嵌合部200bは、カバー28の内周に嵌め込まれる。したがって、ピニオン200は、カバー28と共に回転する。
【0132】
ピニオン200のスプール12側の内周には、第2歯部200cが形成される。第2歯部200cは、第1ギヤ22に噛み合う。したがって、ピニオン200は、第1ギヤ22と共に回転する。
【0133】
次に、第2実施形態のシートベルトリトラクタ3の作動について説明する。
【0134】
第2実施形態のシートベルトリトラクタ3では、まず、
図25に示した減速度感知手段40が緊急時に発生する大きな車両減速度を感知してプリテンショナー機構50及びロック機構60が作動を開始する。
【0135】
図27は、第2実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構を示す斜視図である。
図28は、第2実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の駆動機構非作動状態でプリテンショナー機構の回転力の伝達を示す断面図である。
【0136】
プリテンショナー機構50が作動している状態では、ピニオン200、カバー28、リリースリング27、及びスプール12が一体に回転し、図示しないシートベルト4にプリテンショナー機構50で巻き取る際の回転力F1が作用する。したがって、第1トーションバー21及び第2トーションバー24を介さずにスプール12を回転させることができるため、第1トーションバー21及び第2トーションバー24の捩れが生じることなく、迅速且つ的確に荷重を伝達させることが可能となる。
【0137】
その後、EA機構20を作動させるが、第2実施形態のEA機構20は、駆動機構非作動状態と駆動機構作動状態の2種類の作動方法がある。
【0138】
図29は、第2実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の駆動機構非作動状態の荷重の伝達を示す断面図である。なお、図中、2点鎖線は、捩れの状態を模式的に示したものである。
【0139】
プリテンショナー機構50が作動し、スプール12が巻き取り方向に回転した後、乗員の慣性で、スプール12は、ベルト引出方向に回転する。
【0140】
駆動機構非作動状態では、リリースリング27は、カバー28に噛み合っている第1の位置にある。したがって、スプール12が回転すると、リリースリング27、カバー28、ピニオン200、第1ギヤ22、及び第1トーションバー21に荷重F2が順に伝達される。
【0141】
しかしながら、第1トーションバー21はロッキングベース61に保持されているので、第1トーションバー21は回転することができない。したがって、第1トーションバー21には捩れが生じる。すなわち、第1トーションバー21は、フォースリミッタ荷重が作用しながら、エネルギを吸収する。
【0142】
図30は、第2実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の駆動機構作動状態を示す斜視図である。
図31は、
図30に示した駆動機構作動状態での荷重の伝達を示す断面図である。なお、図中、2点鎖線は、捩れの状態を模式的に示したものである。
【0143】
駆動機構作動状態では、
図25に示したマイクロガスジェネレータ32が作動し、リリースリング27は、カバー28及びリリースリングホルダ26から離間する。カバー28、ピニオン200、第1ギヤ22は、第1トーションバー21がロッキングベース61に保持されているので、第1トーションバー21と共に固定される。
【0144】
この状態で、スプール12が回転すると、第2ギヤ23が第1ギヤ21の周囲を回転するが、第2トーションバー24自身は、回転することはないので、第2トーションバー24には捩れが生じる。すなわち、第2トーションバー24は、フォースリミッタ荷重F3が作用しながら、エネルギを吸収する。
【0145】
つまり、第2実施形態のシートベルトリトラクタ3のマイクロガスジェネレータ32が作動する駆動機構作動状態では、第2トーションバー24のみが作用して、エネルギを吸収する。
【0146】
図32は、第2実施形態のシートベルトリトラクタの駆動機構の作動とプリテンショナー機構の作動とEA機構の第1の作動タイミングを示す。
【0147】
第2実施形態のシートベルトリトラクタ3は、プリテンショナー機構50が作動を開始し、プリテンショナー機構50によるシートベルト4の巻き取りが完了した後、シートウェイトセンサ71によって取得される荷重が予め定めた所定の値より小さい場合、マイクロガスジェネレータ32を作動させる。なお、
図18に示した第1実施形態のシートベルトリトラクタのプリテンショナー機構の作動とEA機構の作動タイミングと同様でよい。
【0148】
このように、プリテンショナー機構50が作動を終えてから駆動機構35を作動させることで、プリテンショナー機構50でシートベルト4を巻き取る性能を保持することが可能となる。
【0149】
次に、シートベルトリトラクタの駆動機構35の第2の作動タイミングについて説明する。
【0150】
図33は、第2実施形態のシートベルトリトラクタの制御フローチャートを示す図である。
【0151】
まず、ステップ21で、緊急時か否かを判定する(ST21)。緊急時か否かの判定は、衝突等によって加速度センサ73が予め定めた所定の値を超える急減速を検知したか否かによって判定する。ステップ21において、緊急時でないと判定された場合、ステップ21に戻る。
【0152】
ステップ21において、緊急時と判定された場合、ステップ22で、EA機構作動状態選択制御を実行する(ST22)。EA機構作動状態選択制御は、
図19で示したフローチャートと同様に制御する。なお、ステップ22のEA機構作動状態選択制御は、ステップ21よりも前に実行してもよい。
【0153】
次に、ステップ23で、ステップ22のEA機構作動状態選択制御において駆動機構作動状態が選択されたか否かを判定する(ST23)。
【0154】
ステップ23において、駆動機構作動状態であると判断した場合、ステップ24で、駆動機構としてのマイクロガスジェネレータ32を作動する(ST24)。ステップ23において、駆動機構作動状態でないと判断した場合、すなわち、駆動機構非作動状態であると判定した場合、ステップ25に進む。
【0155】
次に、ステップ25で、プリテンショナー機構50が作動する(ST25)。
【0156】
次に、ステップ26で、プリテンショナー機構50の作動が終了する(ST26)。
【0157】
次に、ステップ27で、EA機構20を作動する(ST27)。
【0158】
次に、ステップ28で、EA機構20の作動を終了する(ST28)。
【0159】
次に、第2実施形態の荷重の伝達について説明する。
【0160】
第2実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構20の駆動機構非作動状態でプリテンショナー機構50の回転力の伝達は、
図28と同様である。第2実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構20の駆動機構非作動状態の荷重の伝達は、
図29と同様である。また、第2実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構20の駆動機構作動状態の荷重の伝達は、
図31と同様である。
【0161】
図34は、第2実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の駆動機構作動状態で、プリテンショナー機構50の回転力の伝達を示す断面図である。なお、図中、2点鎖線は、捩れの状態を模式的に示したものである。
【0162】
プリテンショナー機構50の作動前にマイクロガスジェネレータ32が作動すると、リリースリング27は、カバー28及びリリースリングホルダ26から離間する。カバー28は、第1トーションバー21がロッキングベース61に保持されているので、第1トーションバー21と共に固定される。
【0163】
この状態で、プリテンショナー機構50の回転力は、ピニオン200、第1ギヤ22、第2ギヤ23、第2トーションバー24を介してスプール12に伝達される。しかしながらプリテンショナー機構50の回転力は、第2トーションバー24の捩れる力より大きいため、第2トーションバー24に捩れが生じる。すなわち、スプール12の巻き取り時の荷重が軽減することができる。
【0164】
図35は、第2実施形態のシートベルトリトラクタの駆動機構の作動とプリテンショナー機構の作動とEA機構の作動タイミングを示す。
【0165】
第2実施形態のシートベルトリトラクタ3は、プリテンショナー機構50が作動を開始する前又はプリテンショナー機構50が作動すると同時に、シートウェイトセンサ71によって取得される荷重が予め定めた所定の値より小さい場合、マイクロガスジェネレータ32を作動させる。
【0166】
プリテンショナー機構50の作動前又はプリテンショナー機構50が作動すると同時に、マイクロジェネレータ32を作動させることによって、1つのプリテンショナー機構50の回転力を乗員の重量の違いによって的確に切り替えることが可能となる。
【0167】
例えば、低荷重の乗員の場合には、マイクロジェネレータ32を作動させ、第2トーションバー24の捩れを生じさせて、プリテンショナー機構50の回転力を減少させればよいので、プリテンショナー機構50の回転力は、高荷重の乗員に合わせて十分な巻き取り性能を確保できるように設定すればよい。
【0168】
図36は、第3実施形態のシートベルトリトラクタの断面図である。
図37は、
図36のE−E線から矢印方向を見た断面図である。
【0169】
第3実施形態のシートベルトリトラクタ3は、EA機構20として、第1トーションバー21及び第2トーションバー22に加えて、第3エネルギ吸収部材を構成する弾性部材80を有する。なお、第3実施形態のシートベルトリトラクタ3のその他の点は、第2実施形態のリトラクタ3と同様の構成なので、説明は省略する。
【0170】
弾性部材80は、弾性を有する部材からなり、支持部80aと、変形部80bと、を有する。支持部80aは、
図26に示したピニオン200の嵌合部200bの外周に固着される。変形部80bは、一端が支持部80aに固定され、中央部分が湾曲されて、他端がスプール12の掛止部12eに引っ掛けられる。なお、弾性部材80は、金属の帯状プレートであって、所定の変形までは弾性力で元に戻るが、所定の変形を超えると塑性変形する。
【0171】
次に、第3実施形態のシートベルトリトラクタ3の作動について説明する。
【0172】
第3実施形態のEA機構20は、駆動機構非作動状態と駆動機構作動状態の2種類の作動方法がある。駆動機構作動状態は、第1の作動タイミングと第2の作動タイミングのいずれかで作動する。
【0173】
第1の作動タイミングは、プリテンショナー機構50が作動を開始し、プリテンショナー機構50によるシートベルト4の巻き取りが完了した後、シートウェイトセンサ71等によって取得される荷重が予め定めた所定の値より小さい場合、マイクロガスジェネレータ32を作動させる。
【0174】
第2の作動タイミングは、プリテンショナー機構50が作動を開始する前又はプリテンショナー機構50が作動すると同時に、シートウェイトセンサ71によって取得される荷重が予め定めた所定の値より小さい場合、マイクロガスジェネレータ32を作動させる。
【0175】
第3実施形態の駆動機構非作動状態は、マイクロガスジェネレータ32が作動しない状態であって、第2実施形態と同様に作動するので、説明は省略する。
【0176】
次に、第3実施形態のシートベルトリトラクタ3に用いる弾性部材80の作動について説明する。
【0177】
図38は、第3実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の第1の作動タイミングでの弾性部材を示す断面図である。
【0178】
第1の作動タイミングでは、プリテンショナー機構50によるシートベルト4の巻き取りが完了した後、
図25に示したマイクロガスジェネレータ32が作動する。
【0179】
マイクロガスジェネレータ32が作動し、
図31に示した第2実施形態と同様に、リリースリング27は、カバー28及びリリースリングホルダ26から離間する。カバー28、ピニオン200、第1ギヤ22は、第1トーションバー21がロッキングベース61に保持されているので、第1トーションバー21と共に固定される。
【0180】
この状態で、スプール12が回転すると、第2ギヤ23が第1ギヤ21の周囲を回転するが、第2トーションバー24自身は、回転することはないので、第2トーションバー24には捩れが生じる。すなわち、第2トーションバー24は、
図36に示したフォースリミッタ荷重F3が作用しながら、エネルギを吸収する。
【0181】
また、ピニオン200が固定されているので、スプール12が回転すると、
図38(a)の状態から
図38(b)に示すように、弾性部材80の変形部80bの湾曲位置が移動する。すなわち、弾性部材80の変形部80bは、
図36に示したフォースリミッタ荷重F4が作用しながら、エネルギを吸収する。その後、さらにスプール12が回転すると、
図38(c)に示すように、変形部80bの他端がスプール12の掛止部12eから外れ、フォースリミッタ荷重F4が作用しなくなる。
【0182】
つまり、第3実施形態のシートベルトリトラクタ3のプリテンショナー機構50によるシートベルト4の巻き取りが完了した後、マイクロガスジェネレータ32が作動する第1の作動タイミングでは、駆動機構が作動すると、当初第2トーションバー24と弾性部材80が作用して、エネルギを吸収する。その後、第2トーションバー24のみが作用して、エネルギを吸収する。
【0183】
図39は、第3実施形態のシートベルトリトラクタの第1の作動タイミングを示す。
【0184】
第1の作動タイミングでは、第3実施形態のシートベルトリトラクタ3は、プリテンショナー機構50が作動を開始し、プリテンショナー機構50によるシートベルト4の巻き取りが完了した後、シートウェイトセンサ71等によって取得される荷重が予め定めた所定の値より小さい場合、マイクロガスジェネレータ32を作動させる。
【0185】
このように、プリテンショナー機構50が作動を終えてからEA機構20を作動させることで、プリテンショナー機構50でシートベルト4を巻き取る性能を保持することが可能となる。
【0186】
また、第3実施形態のシートベルトリトラクタの駆動機構を、第1の作動タイミングによって作動させると、当初第2トーションバー24と弾性部材80が作用して、エネルギを吸収する。その後、第2トーションバー24のみが作用して、エネルギを吸収するので、駆動機構非作動状態における第1トーションバー21によるエネルギ吸収よりも小さく、駆動機構作動状態の第2作動タイミングにおける第2トーションバー24のみによるエネルギ吸収よりも大きいエネルギ吸収ができ、エネルギの吸収を3段階に分けて行うことが可能となる。したがって、乗員にあわせたEA機構の制御を行うことが可能となる。
【0187】
図40は、第3実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の第2の作動タイミングのプリテンショナー機構作動中での弾性部材を示す断面図である。
【0188】
第3実施形態のシートベルトリトラクタ3の第2の作動タイミングは、プリテンショナー機構50が作動を開始する前又はプリテンショナー機構50が作動すると同時に、シートウェイトセンサ71によって取得される荷重が予め定めた所定の値より小さい場合、マイクロガスジェネレータ32を作動させる。
【0189】
プリテンショナー機構50の作動前にマイクロガスジェネレータ32が作動すると、リリースリング27は、カバー28及びリリースリングホルダ26から離間する。カバー28は、第1トーションバー21がロッキングベース61に保持されているので、第1トーションバー21と共に固定される。
【0190】
この状態で、プリテンショナー機構50によってスプール12が巻き取られると、プリテンショナー機構50の巻き取り速度とスプール12の回転速度に差が生じることによって第2トーションバー24には捩れが生じ、巻き取り荷重を軽減する。
【0191】
同時に、ピニオン200とスプール12にも回転差が生じ、
図40(a)の状態から
図40(b)に示すように、弾性部材80の変形部80bの湾曲位置が移動する。すなわち、弾性部材80の変形部80bは、巻き取り荷重を軽減する。その後、さらにスプール12が回転すると、
図40(c)に示すように、変形部80bの他端がスプール12の掛止部12eから外れ、第2トーションバー24のみ捩れが生じる。
【0192】
したがって、プリテンショナー機構50の作動前又はプリテンショナー機構50が作動すると同時に、マイクロジェネレータ32を作動させることによって、1つのプリテンショナー機構50の巻き取り力を乗員の重量の違いによって的確に切り替えることが可能となる。すなわち、スプール12の巻き取り時の荷重が軽減することができる。
【0193】
図41は、第3実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の第2の作動タイミングのプリテンショナー機構作動後の弾性部材を示す断面図である。
【0194】
プリテンショナー機構50作動後、弾性部材80の変形部80bの他端は、スプール12の掛止部12eから外れており、
図41(a)の状態から
図41(b)の状態に示すように、スプール12とピニオン200の間の荷重の伝達がなくなり、相対回転可能となる。
【0195】
つまり、第3実施形態のシートベルトリトラクタ3のプリテンショナー機構50によるシートベルト4の巻き取りが完了した後、弾性部材80はエネルギを吸収せず、第2トーションバー24のみが作用して、エネルギを吸収する。
【0196】
図42は、第3実施形態のシートベルトリトラクタの第2の作動タイミングを示す。
【0197】
第2の作動タイミングでは、第3実施形態のシートベルトリトラクタ3は、シートウェイトセンサ71等によって取得される荷重が予め定めた所定の値より小さい場合、マイクロガスジェネレータ32を作動させた後、プリテンショナー機構50が作動を開始し、プリテンショナー機構50によってシートベルト4を巻き取る。
【0198】
また、第3実施形態のシートベルトリトラクタのマイクロガスジェネレータ32を、第2の作動タイミングによって作動させると、その後、第2トーションバー24のみが作用して、エネルギを吸収するので、駆動機構非作動状態における第1トーションバー21によるエネルギ吸収よりも小さく、駆動機構作動状態の第1作動タイミングにおける第2トーションバー24と弾性部材80によるエネルギ吸収よりも小さいエネルギ吸収ができ、エネルギの吸収を3段階に分けて行うことが可能となる。したがって、乗員にあわせたEA機構の制御を行うことが可能となる。
【0199】
次に、第3実施形態のシートベルトリトラクタの制御について説明する。
【0200】
図43は、第3実施形態のシートベルトリトラクタの制御フローチャートを示す図である。
図44は、第3実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の制御フローチャートを示す図である。
【0201】
まず、ステップ31で、緊急時か否かを判定する(ST31)。緊急時か否かの判定は、衝突等によって加速度センサ73が予め定めた所定の値を超える急減速を検知したか否かによって判定する。ステップ31において、緊急時でないと判定された場合、ステップ31に戻る。
【0202】
ステップ31において、緊急時と判定された場合、ステップ32で、EA機構作動状態選択制御を実行する(ST32)。
【0203】
EA機構作動状態選択制御では、まず、ステップ131で、乗員情報を取得する(ST131)。乗員情報は、
図17に示した各センサ等から取得する。
【0204】
次に、ステップ132で、ステップ131において取得した乗員情報が予め定めた所定荷重以上か否かを判定する(ST132)。例えば、シートウェイトセンサ71によって取得される荷重が予め定めた所定の値以上か、所定の値より小さいかを判定する。
【0205】
ステップ132において、取得した乗員情報が予め定めた所定荷重以上の場合、ステップ133で、マイクロガスジェネレータ32を作動しない駆動機構非作動状態を選択する(ST133)。ステップ132において、条件を満足しない場合、ステップ134で、ステップ131において取得した乗員情報が予め定めた所定荷重以下か否かを判定する(ST134)。
【0206】
ステップ134において、取得した乗員情報が予め定めた所定荷重以下の場合、ステップ135で、マイクロガスジェネレータ32を作動しない駆動機構作動状態第2作動タイミングを選択する(ST135)。ステップ134において、取得した乗員情報が予め定めた所定荷重より大きい場合、ステップ136で、マイクロガスジェネレータ32を作動しない駆動機構作動状態第1作動タイミングを選択する(ST136)。EA機構の作動状態を選択処理した後、EA機構作動状態選択制御を終了する。
【0207】
次に、ステップ33で、ステップ22のEA機構作動状態選択制御において駆動機構非作動状態が選択されたか否かを判定する(ST33)。
【0208】
ステップ33において、駆動機構非作動状態であると判定した場合、ステップ34で、プリテンショナー機構50が作動する(ST34)。
【0209】
次に、ステップ35で、プリテンショナー機構50の作動が終了する(ST35)。
【0210】
次に、ステップ36で、EA機構20を作動する(ST36)。
【0211】
次に、ステップ37で、EA機構20の作動を終了し(ST37)、制御を終了する。
【0212】
ステップ33において、駆動機構作動状態であると判定した場合、ステップ38で、駆動機構作動状態第1作動タイミングが選択されたか否かを判定する(ST38)。
【0213】
ステップ38において、駆動機構作動状態第1作動タイミングが選択されたと判定した場合、ステップ39で、プリテンショナー機構50が作動する(ST39)。
【0214】
次に、ステップ40で、プリテンショナー機構50の作動が終了する(ST40)。
【0215】
次に、ステップ41で、駆動機構であるマイクロガスジェネレータ32を作動する(ST41)。
【0216】
次に、ステップ42で、EA機構20を作動する(ST42)。
【0217】
次に、ステップ43で、EA機構20の作動を終了し(ST43)、制御を終了する。
【0218】
ステップ38において、駆動機構作動状態第1作動タイミングが選択されていないと判定した場合、ステップ44で、駆動機構としてのマイクロガスジェネレータ32を作動する(ST44)。
【0219】
次に、ステップ45で、プリテンショナー機構50が作動する(ST45)。
【0220】
次に、ステップ46で、プリテンショナー機構50の作動が終了する(ST46)。
【0221】
次に、ステップ47で、EA機構20を作動する(ST47)。
【0222】
次に、ステップ48で、EA機構20の作動を終了し(ST48)、制御を終了する。
【0223】
次に、EA機構20の他の例について説明する。
【0224】
図45は、摩擦部材91を用いたEA機構20の例を示す。
【0225】
図45に示すEA機構90の例は、第2エネルギ吸収部材として第2トーションバーに代えて摩擦部材91を用いる。また、この例の第2ギヤ23は、第1ギヤ22に噛み合う第3噛合歯23bの軸方向の一方側にネジ部23dを形成する。ネジ部23dには、ナット92をはめ込む。そして、摩擦部材91は、第2ギヤ23の第3噛合歯23bとナット92との間に取り付けられる。また、ナット92の外周は、スプール12に対して移動しないように取り付けられる。
【0226】
摩擦部材91を用いたEA機構20は、駆動機構作動状態で、スプール12が回転すると、第2ギヤ23が第1ギヤ21の周囲を回転する。そのため、第2ギヤ23とネジ部23dは軸を中心に回転する。しかしながら、ナット92は、スプール12と共に回転しているが、第2ギヤ23を中心に回転することはない。したがって、ナット92が摩擦部材91の摩擦抵抗を受けながらネジ部23dに締め付けられる。すなわち、摩擦抵抗がフォースリミッタ荷重として作用しながら、所定のシートベルト4の引き出しを許容し、エネルギを吸収する。
【0227】
つまり、この例のシートベルトリトラクタ3のマイクロガスジェネレータ32が作動する駆動機構作動状態では、摩擦部材91とナット92との摩擦抵抗が作用して、エネルギを吸収する。
【0228】
図46は、弾性部材93を用いたEA機構20の例を示す。
【0229】
図46に示すEA機構90の例は、第2エネルギ吸収部材として第2トーションバーに代えて弾性部材93を用いる。また、この例の第2ギヤ23は、第1ギヤ22に噛み合う第3噛合歯23bの軸方向の一方側にネジ部23dを形成する。ネジ部23dには、ナット92をはめ込む。そして、弾性部材93は、第2ギヤ23の第3噛合歯23bとナット92とにそれぞれ固着される。また、ナット92の外周は、スプール12に対して移動しないように取り付けられる。なお、弾性部材93は、スプリング等が好ましい。
【0230】
弾性部材93を用いたEA機構20は、駆動機構作動状態で、スプール12が回転すると、第2ギヤ23が第1ギヤ21の周囲を回転する。そのため、第2ギヤ23とネジ部23dは軸を中心に回転する。しかしながら、ナット92は、スプール12と共に回転しているが、第2ギヤ23を中心に回転することはない。したがって、ナット92が弾性部材93の弾性力を受けながらネジ部23dに締め付けられる。すなわち、弾性力がフォースリミッタ荷重として作用しながら、所定のシートベルト4の引き出しを許容し、エネルギを吸収する。
【0231】
つまり、この例のシートベルトリトラクタ3のマイクロガスジェネレータ32が作動する駆動機構作動状態では、弾性部材93の弾性力が作用して、エネルギを吸収する。
【0232】
図47は、曲げ部材94を用いたEA機構20の例を示す。
【0233】
図47に示すEA機構90の例は、第2エネルギ吸収部材として第2トーションバーに代えて曲げ部材94を用いる。また、この例の第2ギヤ23は、第1ギヤ22に噛み合う第3噛合歯23bの軸方向の一方側にネジ部23dを形成する。ネジ部23dには、ナット92をはめ込む。そして、曲げ部材94は、第2ギヤ23の第3噛合歯23bとナット92との間に取り付けられる。また、ナット92の外周は、スプール12に対して移動しないように取り付けられる。
【0234】
曲げ部材94を用いたEA機構20は、駆動機構作動状態で、スプール12が回転すると、第2ギヤ23が第1ギヤ21の周囲を回転する。そのため、第2ギヤ23とネジ部23dは軸を中心に回転する。しかしながら、ナット92は、スプール12と共に回転しているが、第2ギヤ23を中心に回転することはない。したがって、ナット92が曲げ部材94の曲げ力を受けながらネジ部23dに締め付けられる。すなわち、曲げ力がフォースリミッタ荷重として作用しながら、所定のシートベルト4の引き出しを許容し、エネルギを吸収する。
【0235】
つまり、この例のシートベルトリトラクタ3のマイクロガスジェネレータ32が作動する駆動機構作動状態では、曲げ部材94の曲げ力が作用して、エネルギを吸収する。
【0236】
図48は、しごきピン95を用いたEA機構20の例を示す。
【0237】
図48に示すEA機構90の例は、第2エネルギ吸収部材として第2トーションバー24に代えてしごきピン95を用いる。また、この例のスプール12は、第1ギヤ22と第2ギヤ23を含む軸方向に垂直な断面に複数の突出ピン12hが形成される。なお、スプール12とは別の部材を用いて突出ピンを形成してもよい。しごきピン95は、一端が第2ギヤ23に固着され、他端側が複数の突出ピン12h間を接触しながらジグザグに通過するように設置される。
【0238】
しごきピン95を用いたEA機構20は、駆動機構作動状態で、スプール12が回転すると、第2ギヤ23が第1ギヤ21の周囲を回転する。そのため、第2ギヤ23は軸を中心に回転する。すると、しごきピン95の一端が第2ギヤ23に引っ張られる。したがって、しごきピン95の他端側が突出ピン12hにしごかれ、摩擦力が生じる。すなわち、摩擦力がフォースリミッタ荷重として作用しながら、所定のシートベルト4の引き出しを許容し、エネルギを吸収する。
【0239】
つまり、この例のシートベルトリトラクタ3のマイクロガスジェネレータ32が作動する駆動機構作動状態では、しごきピン95と突出ピン12hの摩擦力が作用して、エネルギを吸収する。
【0240】
図49は、弾性ピン96を用いたEA機構20の例を示す。
【0241】
図49に示すEA機構90の例は、第2エネルギ吸収部材として第2トーションバー24に代えて弾性ピン96を用いる。弾性ピン96は、一端が第2ギヤ23に固着され、他端が第1ギヤ22に固着される。
【0242】
弾性ピン96を用いたEA機構20は、駆動機構作動状態で、スプール12が回転すると、第2ギヤ23が第1ギヤ21の周囲を回転する。そのため、第2ギヤ23は軸を中心に回転する。すると、弾性ピン96の一端が第2ギヤ23に引っ張られる。しかしながら、弾性ピン96の他端が固着されている第1ギヤ22は、軸を中心に回転しないので、弾性ピン96がたわみ弾性力が生じる。すなわち、弾性力がフォースリミッタ荷重として作用しながら、所定のシートベルト4の引き出しを許容し、エネルギを吸収する。
【0243】
つまり、この例のシートベルトリトラクタ3のマイクロガスジェネレータ32が作動する駆動機構作動状態では、弾性ピン96の弾性力が作用して、エネルギを吸収する。
【0244】
図50は、曲げピン97を用いたEA機構20の例を示す。
図51は、
図50のG−G断面図である。
【0245】
図50及び
図51に示すEA機構90の例は、第2エネルギ吸収部材として第2トーションバーに代えて曲げピン97を用いる。曲げピン97は、一端が第2ギヤ23に取り付けられ、他端は、スプール12に取り付けられる。例えば、この例では、スプール12に形成された孔に挿入される。
【0246】
曲げピン97を用いたEA機構20は、駆動機構作動状態で、スプール12が回転すると、第2ギヤ23が第1ギヤ21の周囲を回転する。しかしながら、曲げピン97は、スプール12と共に回転しているが、第2ギヤ23を中心に回転することはない。したがって、曲げピン97の曲げ力を受けながら第2ギヤ23が回転する。すなわち、曲げ力がフォースリミッタ荷重として作用しながら、所定のシートベルト4の引き出しを許容し、エネルギを吸収する。
【0247】
次に、第4実施形態について説明する。
【0248】
図52は、第4実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の駆動機構非作動状態でプリテンショナー機構の回転力の伝達を示す断面図である。
【0249】
図52に示すように、第4実施形態のシートベルトリトラクタ3は、第2実施形態の第2トーションバー24を2つに増やして、第2エネルギ吸収部材としての第2トーションバー241及び第2トーションバー241と並列な関係で第3エネルギ吸収部材としての第3トーションバー242を設けた構造としたものである。また、それらに対応して、第2エネルギ伝達部材としての第2ギヤ231及び第3エネルギ伝達部材としての第3ギヤ232を設けた構造としたものである。なお、その他の構造は、第2実施形態とほぼ同じ構造なので、説明を省略する。
【0250】
第2ギヤ231は、第2トーションバー241が挿入される孔部231aが形成され、外周に第3噛合歯231bが形成されている。第2ギヤ231は、第2トーションバー241の一端部241a側に一体に回転するように取り付けられる。第2ギヤ231は、スプール12の保持部12dに形成された第1孔部121eの内側の一部に配置され、第3噛合歯231bが第1ギヤ22と噛み合うように設置される。
【0251】
第2トーションバー241の一端部241aは、第2ギヤ231の孔部231aに一体に回転するように挿入される。第2トーションバー241の他端部241bは、スプライン状に形成され、第1溝部121fに形成された第1係合部121f
1に係合する。
【0252】
第3ギヤ232は、第3トーションバー242が挿入される孔部232aが形成され、外周に第4噛合歯232bが形成されている。第3ギヤ232は、第3トーションバー242の一端部242a側に一体に回転するように取り付けられる。第3ギヤ232は、スプール12の保持部12dに形成された第2孔部122eの内側の一部に配置され、第4噛合歯232bが第1ギヤ22と噛み合うように設置される。
【0253】
第3トーションバー242の一端部242aは、第3ギヤ232の孔部232aに一体に回転するように挿入される。第3トーションバー242の他端部242bは、スプライン状に形成され、第2溝部122fに形成された第2係合部122f
1に係合する。
【0254】
次に、第4実施形態のシートベルトリトラクタ3の作動について説明する。
【0255】
第4実施形態のシートベルトリトラクタ3では、まず、
図25に示した減速度感知手段40が緊急時に発生する大きな車両減速度を感知してプリテンショナー機構50及びロック機構60が作動を開始する。
【0256】
プリテンショナー機構50が作動している状態では、ピニオン200、カバー28、リリースリング27、及びスプール12が一体に回転し、図示しないシートベルト4にプリテンショナー機構50で巻き取る際の回転力F1が作用する。したがって、第1トーションバー21、第2トーションバー241、及び第3トーションバー242を介さずにスプール12を回転させることができるため、第1トーションバー21、第2トーションバー241、及び第3トーションバー242の捩れが生じることなく、迅速且つ的確に荷重を伝達させることが可能となる。
【0257】
その後、EA機構20を作動させるが、第4実施形態のEA機構20は、駆動機構非作動状態と駆動機構作動状態の2種類の作動方法がある。
【0258】
図53は、第4実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の駆動機構非作動状態の荷重の伝達を示す断面図である。なお、図中、2点鎖線は、捩れの状態を模式的に示したものである。
【0259】
プリテンショナー機構50が作動し、スプール12が巻き取り方向に回転した後、乗員の慣性で、スプール12は、ベルト引出方向に回転する。
【0260】
駆動機構非作動状態では、リリースリング27は、カバー28に噛み合っている第1の位置にある。したがって、スプール12が回転すると、リリースリング27、カバー28、ピニオン200、第1ギヤ22、及び第1トーションバー21に荷重F2が順に伝達される。
【0261】
しかしながら、第1トーションバー21はロッキングベース61に保持されているので、第1トーションバー21は回転することができない。したがって、第1トーションバー21には捩れが生じる。すなわち、第1トーションバー21は、フォースリミッタ荷重が作用しながら、エネルギを吸収する。
【0262】
図54は、第4実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の駆動機構作動状態での荷重の伝達を示す断面図である。
【0263】
駆動機構作動状態では、
図25に示したマイクロガスジェネレータ32が作動し、リリースリング27は、カバー28及びリリースリングホルダ26から離間する。カバー28、ピニオン200、第1ギヤ22は、第1トーションバー21がロッキングベース61に保持されているので、第1トーションバー21と共に固定される。
【0264】
この状態で、スプール12が回転すると、第2ギヤ231及び第3ギヤ232が第1ギヤ21の周囲を回転するが、第2トーションバー241及び第3トーションバー242自身は、回転することはないので、第2トーションバー241及び第3トーションバー242には捩れが生じる。すなわち、第2トーションバー241及び第3トーションバー242は、それぞれフォースリミッタ荷重F3が作用しながら、エネルギを吸収する。
【0265】
つまり、第4実施形態のシートベルトリトラクタ3のマイクロガスジェネレータ32が作動する駆動機構作動状態では、第2トーションバー241及び第3トーションバー242が作用して、エネルギを吸収する。
【0266】
第4実施形態のシートベルトリトラクタ3は、
図32に示した第2実施形態と同様に、プリテンショナー機構50が作動を開始し、プリテンショナー機構50によるシートベルト4の巻き取りが完了した後、シートウェイトセンサ71によって取得される荷重が予め定めた所定の値より小さい場合、マイクロガスジェネレータ32を作動させればよい。なお、
図18に示した第1実施形態のシートベルトリトラクタのプリテンショナー機構の作動とEA機構の作動タイミングと同様でよい。
【0267】
このように、プリテンショナー機構50が作動を終えてから駆動機構35を作動させることで、プリテンショナー機構50でシートベルト4を巻き取る性能を保持することが可能となる。
【0268】
また、第4実施形態のシートベルトリトラクタ3は、
図33に示した第2実施形態のシートベルトリトラクタのプリテンショナー機構の作動とEA機構の作動タイミングと同様でもよい。
【0269】
この場合の荷重の伝達について説明する。
【0270】
図55は、第4実施形態のシートベルトリトラクタのEA機構の駆動機構作動状態でプリテンショナー機構の回転力の伝達を示す断面図である。なお、図中、2点鎖線は、捩れの状態を模式的に示したものである。
【0271】
プリテンショナー機構50の作動前にマイクロガスジェネレータ32が作動すると、リリースリング27は、カバー28及びリリースリングホルダ26から離間する。カバー28は、第1トーションバー21がロッキングベース61に保持されているので、第1トーションバー21と共に固定される。
【0272】
この状態で、プリテンショナー機構50の回転力は、ピニオン200、第1ギヤ22から、第2ギヤ231及び第2トーションバー241、並びに、第3ギヤ232及び第3トーションバー242を介してスプール12に伝達される。しかしながらプリテンショナー機構50の回転力は、第2トーションバー241及び第3トーションバー242の捩れる力より大きいため、第2トーションバー241及び第3トーションバー242に捩れが生じる。すなわち、スプール12の巻き取り時の荷重が軽減することができる。
【0273】
第4実施形態のシートベルトリトラクタの駆動機構の作動とプリテンショナー機構の作動とEA機構の作動タイミングは、
図35に示した第2実施形態と同様である。
【0274】
第4実施形態のシートベルトリトラクタ3は、プリテンショナー機構50が作動を開始する前又はプリテンショナー機構50が作動すると同時に、シートウェイトセンサ71によって取得される荷重が予め定めた所定の値より小さい場合、マイクロガスジェネレータ32を作動させる。
【0275】
プリテンショナー機構50の作動前又はプリテンショナー機構50が作動すると同時に、マイクロジェネレータ32を作動させることによって、1つのプリテンショナー機構50の回転力を乗員の重量の違いによって的確に切り替えることが可能となる。
【0276】
例えば、低荷重の乗員の場合には、マイクロジェネレータ32を作動させ、第2トーションバー241及び第3トーションバー242の捩れを生じさせて、プリテンショナー機構50の回転力を減少させればよいので、プリテンショナー機構50の回転力は、高荷重の乗員に合わせて十分な巻き取り性能を確保できるように設定すればよい。
【0277】
以上、本実施形態のシートベルトリトラクタ3によれば、フレーム11と、シートベルト4と、フレーム11に回転可能に支持されるとともにシートベルトを巻き取るスプール12と、非作動時にスプール12の回転を許容し、作動時にスプール12のシートベルト引出し方向の回転を阻止するロック機構60と、シートベルト4にかかる荷重を制限して乗員のエネルギを吸収するエネルギ吸収機構20と、を備え、エネルギ吸収機構20は、スプール12とロック機構60との回転差によってエネルギを吸収する第1エネルギ吸収部材21と、第1エネルギ吸収部材21の一端部側に取り付けられる第1エネルギ伝達部材22と、第1エネルギ伝達部材22と噛み合う第2エネルギ伝達部材23と、第2エネルギ伝達部材23とスプール12との回転差によってエネルギを吸収する第2エネルギ吸収部材24と、を有するので、シートベルト4にかかる荷重を制限してエネルギを吸収する際に、より安定した荷重を発生することが可能となる。
【0278】
また、本実施形態のシートベルトリトラクタ3では、エネルギ吸収機構20は、第2エネルギ伝達部材23とスプール12との回転差によってエネルギを吸収する第3エネルギ吸収機構80を有するので、エネルギの吸収を3段階に分けて行うことができ、乗員にあわせたEA機構の制御を行うことが可能となる。
【0279】
また、本実施形態のシートベルトリトラクタ3では、エネルギ吸収機構20は、第1エネルギ伝達部材21と噛み合う第3エネルギ伝達部材232と、第2エネルギ伝達部材231に並列な関係で第3エネルギ伝達部材232とスプール12との回転差によってエネルギを吸収する第3エネルギ吸収部材242と、を有するので、乗員にあわせたEA機構の制御を行うことが可能となる。
【0280】
また、本実施形態のシートベルトリトラクタ3では、エネルギ吸収機構20は、スプール12と一体に回転すると共に、スプール12に対して第1の位置と第1の位置とは異なる第2の位置とに移動するリリースリング27と、リリースリング27が第1の位置にある場合、リリースリング27の回転を第1エネルギ伝達部材22に伝達し、リリースリング27が第2の位置にある場合、リリースリング27と離間するカバー部材28と、を有するので、エネルギ吸収の段階を的確に切り替えることが可能となる。
【0281】
また、本実施形態のシートベルトリトラクタ3では、エネルギ吸収機構20は、リリースリング27が第1の位置にある際、リリースリング27を保持するリリースリングホルダ26を有するので、リリースリング27を的確に保持することが可能となる。
【0282】
また、本実施形態のシートベルトリトラクタ3では、リリースリング27を移動させる駆動機構35を備えるので、リリースリング27を的確に移動させることが可能となる。
【0283】
また、本実施形態のシートベルトリトラクタでは、駆動機構35は、マイクロガスジェネレータ32と、マイクロガスジェネレータ32によって駆動され、リリースリング27を第1の位置と第2の位置とに移動させるレバーリング31と、レバーリング31を移動可能に支持すると共に、マイクロガスジェネレータ32が設置されるハウジング30と、を有するので、強固なハウジング30に設置された駆動機構35によって、レバーリング31を駆動し、リリースリング27を移動させることで、各部材が相互に作用し、さらに的確な動作が可能となる。
【0284】
また、本実施形態のシートベルトリトラクタでは、ハウジング30は、レバーリング31が当接可能なカム部30c
10を有し、マイクロガスジェネレータ32が作動する前、レバーリング31はカム部30c
10と離間しており、マイクロガスジェネレータ32が作動した時、レバーリング31はカム部30c
10と当接するので、リリースリング27の移動をレバーリング31とカム部30c
10との当接によって行うことで、さらに的確な動作が可能となる。
【0285】
また、本実施形態のシートベルトリトラクタ3では、乗員情報を取得する乗員情報取得部70と、乗員情報取得部70が取得した情報が予め定めた条件を満足するか否かを判定し、判定した結果に応じて、駆動機構35を作動させる制御部77と、を備えるので、乗員に応じた制御が可能となり、さらに的確な動作が可能となる。
【0286】
また、本実施形態のシートベルトリトラクタ3では、緊急時にスプール12をシートベルト4の巻き取り方向へ回転させるプリテンショナー機構50を備えるので、緊急時に迅速にシートベルト4を巻き取ることが可能となる。
【0287】
また、本実施形態のシートベルトリトラクタ3では、制御部77は、判定した結果に応じて、プリテンショナー機構50がシートベルト4の巻き取りを完了した後、駆動機構35を作動させるので、緊急時に的確にシートベルト4を巻き取ることが可能となる。
【0288】
また、本実施形態のシートベルトリトラクタ3では、制御部77は、判定した結果に応じて、プリテンショナー機構50がシートベルト4の巻き取りを始める前又は同時に、駆動機構35を作動させるので、プリテンショナー機構50でシートベルトを巻き取る時の荷重を軽減させることが可能となる。
【0289】
さらに、本実施形態のシートベルトリトラクタ3は、フレーム11と、シートベルト4と、フレーム11に回転可能に支持されるとともにシートベルト4を巻き取るスプール12と、非作動時にスプール12の回転を許容し、作動時にスプール12のシートベルト引出し方向の回転を阻止するロック機構60と、シートベルト4にかかる荷重を制限して乗員のエネルギを吸収するエネルギ吸収機構20と、エネルギ吸収機構20が吸収するエネルギを切り替える駆動機構34と、緊急時にスプール12をシートベルト4の巻き取り方向へ回転させるプリテンショナー機構50と、乗員情報を取得する乗員情報取得部70と、乗員情報取得部70が取得した情報が予め定めた条件を満足するか否かを判定し、判定した結果に応じて、駆動機構35を作動させる制御部77と、を備え、制御部77は、判定した結果に応じて、プリテンショナー機構50がシートベルト4の巻き取りを完了した後、駆動機構35を作動させるので、緊急時に的確にシートベルト4を巻き取ることが可能となる。
【0290】
さらに、本実施形態のシートベルトリトラクタ3は、フレーム11と、シートベルト4と、フレーム12に回転可能に支持されるとともにシートベルト4を巻き取るスプール12と、非作動時にスプール12の回転を許容し、作動時にスプール12のシートベルト引出し方向の回転を阻止するロック機構60と、シートベルト4にかかる荷重を制限して乗員のエネルギを吸収するエネルギ吸収機構20と、エネルギ吸収機構20が吸収するエネルギを切り替える駆動機構35と、緊急時にスプール12をシートベルト4の巻き取り方向へ回転させるプリテンショナー機構50と、乗員情報を取得する乗員情報取得部70と、乗員情報取得部70が取得した情報が予め定めた条件を満足するか否かを判定し、判定した結果に応じて、駆動機構35を作動させる制御部77と、を備え、制御部77は、判定した結果に応じて、プリテンショナー機構50がシートベルト4の巻き取りを始める前又は同時に、駆動機構35を作動させるので、プリテンショナー機構50でシートベルト4を巻き取る時の荷重を軽減させることが可能となる。
【0291】
さらに、本実施形態のシートベルト装置1は、乗員を拘束するシートベルト4と、シートベルト4を引き出し可能に巻き取るとともに、緊急時に作動してシートベルト4の引出しを阻止するシートベルトリトラクタ3と、シートベルトリトラクタ3から引き出されたシートベルト4に摺動可能に支持されたタング4aと、車体または車両シート2に設けられ、タング4aが離脱可能に係止されるバックル7と、を少なくとも備えるシートベルト装置1において、シートベルトリトラクタ3に、前記シートベルトリトラクタ3が用いられているので、シートベルト4にかかる荷重を制限してエネルギを吸収する際に、より安定した荷重を発生することが可能となると共に、シートベルトリトラクタ3をコンパクトにできることから、シートベルト装置1の各部品の配置の自由度をより高くすることが可能となる。