【文献】
DUCRY, Laurent et al.,Antibody-Drug Conjugates: Linking Cytotoxic Payloads to Monoclonal Antibodies,Bioconjugate Chem.,2010年,Vol.21,Pages 5-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)任意選択的に、細胞ががん細胞であり、任意選択的に、がん細胞が胃がん細胞、膵臓がん細胞、結腸直腸がん細胞、肺がん細胞、食道がん細胞、胆嚢がん細胞、頭頸部がん細胞、肝がん細胞、子宮内膜がん細胞、唾液腺がん細胞、リンパ腫細胞、乳がん細胞、子宮頸がん細胞、又は卵巣がん細胞である、細胞を死滅させる際に使用するため;又は
(b)任意選択的に、がんが胃がん、膵臓がん、結腸直腸がん、肺がん、食道がん、胆嚢がん、頭頸部がん、肝がん、子宮内膜がん、唾液腺がん、リンパ腫、乳がん、子宮頸がん、又は卵巣がんである、癌の治療において使用するための、
請求項1から11の何れか一項に記載の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体。
任意選択的に、がんの治療における使用説明書を更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を含むキット。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本実施態様のあるADCの逆相HPLC特性化を示す。
図1(A)は、h5F1Ca.1/Tap−18Hに関するクロマトグラムを示す。
図1(B)は、h5F1Ca.1/MMAEに関するクロマトグラムを示す。
【
図2】
図2は、胃がんSNU−16に対するh5F1Ca.1/Tap18Hによるインビボ抗腫瘍活性を示す。
【
図3】
図3は、胃がんSNU−16に対するh5F1Ca.1−コンジュゲートADCのインビボ抗腫瘍活性を示す。
【
図4】
図4は、結腸直腸がんDLD−1に対するc5D7−コンジュゲートADCのインビボ抗腫瘍活性を示す。
【
図5】
図5は、Tap−18HのNMRスペクトルを示す。
【
図6】
図6は、Tap−18Hr1のNMRスペクトルを示す。
【
図7】
図7は、Tap−18Hr2のNMRスペクトルを示す。
【0031】
定義
以下の用語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有する。定義されていないあらゆる用語は、当該技術分野で認識される意味を有する。
【0032】
「アルキル」とは、1から10個の炭素原子、好ましくは1から6個の炭素原子を有する一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。例として、この用語は、直線状及び分枝状のヒドロカルビル基、例えば、メチル(CH
3−)、エチル(CH
3CH
2−)、n−プロピル(CH
3CH
2CH
2−)、イソプロピル((CH
3)
2CH−)、n−ブチル(CH
3CH
2CH
2CH
2−)、イソブチル((CH
3)
2CHCH
2−)、sec−ブチル((CH
3)(CH
3CH
2)CH−)、t−ブチル((CH
3)
3C−)、n−ペンチル(CH
3CH
2CH
2CH
2CH
2−)、ネオペンチル((CH
3)
3CCH
2−)、及びn−ヘキシル(CH
3(CH
2)
5−)を含む。
【0033】
「アルキレン」とは、好ましくは1から10個、より好ましくは1から3個の炭素原子を有する、直鎖状又は分枝鎖状の、二価の脂肪族ヒドロカルビレン基を指す。例として、この用語は、メチレン(−CH
2−)、エチレン(−CH
2CH
2−)、n−プロピレン(−CH
2CH
2CH
2−)、イソ−プロピレン(−CH
2CH(CH
3)−)、(−C(CH
3)
2CH
2CH
2−)、(−C(CH
3)
2CH
2C(O)−)、(−C(CH
3)
2CH
2C(O)NH−)、(−CH(CH
3)CH
2−)等を含む。
【0034】
「アルケニル」とは、2から10個の炭素原子、好ましくは2から4個の炭素原子を有し、少なくとも1、好ましくは1から2の二重結合不飽和部位を有する、直鎖状又は分枝状のヒドロカルビル基を指す。例として、この用語は、ビ−ビニル、アリル、及びブタ−3−エン−1−イルを含む。この用語に含まれるものは、シス及びトランス異性体又はそれらの異性体の混合物である。
【0035】
「アルケニレン」とは、2から10個の炭素原子、好ましくは2から4個の炭素原子を有し、少なくとも1、好ましくは1から2の二重結合不飽和部位を有する、直鎖状又は分枝状のヒドロカルビレン基を指す。例として、この用語は、ビ−ビニル、アリル、及びブタ−3−エン−1−イルを含む。この用語に含まれるものは、シス及びトランス異性体又はそれらの異性体の混合物である。
【0036】
「アルキニル」とは、2から6個の炭素原子、好ましくは2から3個の炭素原子を有し、少なくとも1、好ましくは1から2の三重結合不飽和部位を有する、直線状又は分枝状のヒドロカルビル基を指す。そのようなアルキニル基の例は、アセチレニル(−C≡CH)、及びプロパルギル(−CH
2C≡CH)を含む。
【0037】
「アルキニレン」とは、2から6個の炭素原子、好ましくは2から3個の炭素原子を有し、少なくとも1、好ましくは1から2の三重結合不飽和部位を有する、直線状又は分枝状のヒドロカルビレン基を指す。そのようなアルキニル基の例は、アセチレニル(−C≡CH)、及びプロパルギル(−CH
2C≡CH)を含む。
【0038】
「アミノ」とは、基−NH
2を指す。
【0039】
「置換アミノ」とは、少なくとも一のRは水素ではないことを条件として、各Rが、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルからなる群より独立して選択される基−NRRを指す。
【0040】
「アリール」とは、単環(例えばフェニル基に存在)又は複数の縮合環(結合点が芳香族環の原子を通じていることを条件として、縮合環は芳香族であっても、そうでなくてもよい)を有する環系(そのような芳香族環系の例は、ナフチル、アントリル及びインダニルを含む)を有する、6から18個の炭素原子の一価の芳香族炭素環式基を指す。例として、この用語は、フェニル及びナフチルを含む。アリール置換基の定義により別段制約されない限り、そのようなアリール基は、アシルオキシ、ヒドロキシ、チオール、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換アルキル、置換アルコキシ、置換アルケニル、置換アルキニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリール、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、カルボキシルエステル、シアノ、ハロゲン、ニトロ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、スルホニルアミノ、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO
2−アルキル、−SO
2−置換アルキル、−SO
2−アリール、−SO
2−ヘテロアリール及びトリハロメチルから選択される1から5の置換基、又は1から3の置換基で置換されていてもよい。
【0041】
「シクロアルキル」とは、縮合、架橋及びスピロ環系を含む単環又は複環を有する、3から10個の炭素原子の環状アルキル基を指す。適切なシクロアルキル基の例は、例えばアダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル等を含む。例として、そのようなシクロアルキル基は、単環構造、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル等、又は複環構造、例えばアダマンチル等を含む。
【0042】
「ヘテロアリール」とは、1から15個の炭素原子、例えば1から10個の炭素原子並びに酸素、窒素及び環中の硫黄からなる群より選択される1から10個のヘテロ原子の芳香族基を指す。そのようなヘテロアリール基は、単環(例えばピリジニル、イミダゾリル若しくはフリル)、又は環系中の複数の縮合環(環系中の少なくとも一の環は芳香族であり、結合点が芳香族環の原子を通じていることを条件として、環系中の少なくとも一の環が芳香族である)(この基の例としては、インドリジニル、キノリニル、ベンゾフラン、ベンズイミダゾリル又はベンゾチエニル)を有し得る。ある実施態様において、ヘテロアリール基の窒素及び/又は硫黄環原子(複数可)は、N−オキシド(N→O)、スルフィニル又はスルホニル部分を提供するために酸化されていてもよい。例として、この用語は、ピリジニル、ピロリル、インドリル、チオフェニル、及びフラニルを含む。ヘテロアリール置換基の定義により別段制約されない限り、そのようなヘテロアリール基は、アシルオキシ、ヒドロキシ、チオール、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換アルキル、置換アルコキシ、置換アルケニル、置換アルキニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリール、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、カルボキシルエステル、シアノ、ハロゲン、ニトロ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、スルホニルアミノ、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO
2−アルキル、−SO
2−置換アルキル、−SO
2−アリール及び−SO
2−ヘテロアリール、並びにトリハロメチルから選択される1から5の置換基、又は1から3の置換基で置換されていてもよい。
【0043】
ヘテロアリールの例は、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、プリン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンチリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、ピペリジン、ピペラジン、フタルイミド、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン、チアゾール、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン等を含むが、これらに限定されない。
【0044】
「複素環」、「複素環式」、「ヘテロシクロアルキル」又は「ヘテロシクリル」とは、縮合、架橋、若しくはスピロ環系を含む単環又は複数の縮合環を有し、且つ1から10個のヘテロ原子を含む3から20個の環原子を有する、飽和した基又は部分的に飽和した基を指す。これらの環原子は、炭素、窒素、硫黄、又は酸素からなる群より選択され、ここで、縮合環系において、結合点が非芳香族環を通じていることを条件として、一又は複数の環は、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり得る。ある実施態様において、複素環式基の窒素及び/又は硫黄原子(複数可)は、N−オキシド、−S(O)−、又は−SO
2−部分を提供するために酸化されていてもよい。
【0045】
複素環の例は、アゼチジン、ジヒドロインドール、インダゾール、キノリジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、チアゾリジン、モルホリニル、チオモルホリニル(チアモルホリニルとも称される)、1,1−ジオキソチオモルホリニル、ピペリジニル、ピロリジン、テトラヒドロフラニル等を含むが、これらに限定されない。
【0046】
ヘテロアリール基又は複素環式基が「置換されている」場合、ヘテロアリール置換基又は複素環式置換基の定義により別段制約されない限り、そのようなヘテロアリール基又は複素環式基は、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルエステル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、スルホニルアミノ、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−ヘテロシクリル、−SO
2−アルキル、−SO
2−置換アルキル、−SO
2−アリール、−SO
2−ヘテロアリール、及び−SO
2−ヘテロシクリルから選択される1から5、又は1から3の置換基で置換され得る。
【0047】
「ポリアルキレングリコール」とは、直線状又は分枝状のポリアルキレングリコールポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリブチレングリコールを指す。ポリアルキレングリコールのサブユニットは、単一ポリアルキレングリコールユニットである。例えば、ポリエチレングリコールサブユニットの例は、鎖終結点で水素でキャップされた、エチレングリコール、−O−CH
2−CH
2−O−、又はプロピレングリコール、−O−CH
2−CH
2−CH
2−O−であろう。ポリ(アルキレングリコール)のその他の例は、PEG、PEG誘導体、例えばメトキシポリ(エチレングリコール)(mPEG)、ポリ(エチレンオキシド)、PPG、ポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)、又はコポリマー及びそれらの組合せを含むが、それらに限定されない。
【0048】
「ポリアミン」とは、ポリアルキレンイミンにあるような骨格中に包含されているか、又は、ポリビニルアミンにあるようなペンダント基中のモノマー単位においてアミン機能性を有するポリマーを指す。
【0049】
本明細書中の開示に加えて、「置換(された)」なる用語は、特定の基又はラジカルを修飾するのに使用される場合、特定の基又はラジカルの一又は複数の水素原子はそれぞれ、互いに独立して、以下に定義される同一又は異なる置換基で置き換えられることも意味し得る。
【0050】
本明細書中の個々の用語に関して開示された基に加えて、特定の基又はラジカル中飽和炭素原子上の一又は複数の水素(飽和炭素原子上の任意の二の水素は=O、=NR
70、=N−OR
70、=N
2又は=Sで置換され得る)を置換する置換基は、別記されない限り、−R
60、ハロ、=O、−OR
70、−SR
70、−NR
80R
80、トリハロメチル、−CN、−OCN、−SCN、−NO、−NO
2、=N
2、−N
3、−S(O)R
70、−SO
2R
70、−SO
2O
−M
+、−SO
2OR
70、−OSO
2R
70、−OSO
2O
−M
+、−OSO
2OR
70、−P(O)(O
−)
2(M
+)
2、−P(O)(OR
70)O
−M
+、−P(O)(OR
70)
2、−C(O)R
70、−C(S)R
70、−C(NR
70)R
70、−C(O)O
−M
+、−C(O)OR
70、−C(S)OR
70、−C(O)NR
80R
80、−C(NR
70)NR
80R
80、−OC(O)R
70、−OC(S)R
70、−OC(O)O
−M
+、−OC(O)OR
70、−OC(S)OR
70、−NR
70C(O)R
70、−NR
70C(S)R
70、−NR
70CO
2−M
+、−NR
70CO
2R
70、−NR
70C(S)OR
70、−NR
70C(O)NR
80R
80、−NR
70C(NR
70)R
70及び−NR
70C(NR
70)NR
80R
80であって、R
60は、置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール及びヘテロアリールアルキルからなる群より選択され、各R
70は、独立して水素又はR
60であり;各R
80は、独立してR
70あるいは、二のR
80’は、それが結合する窒素原子と共に、3員、4員、5員、6員、若しくは7員ヘテロシクロアルキル(O、N及びSからなる群より選択される同一若しくは異なる追加のヘテロ原子を1から4個含んでいてもよく、そのNは−H、C
1−C
4アルキル、−C(O)C
1−4アルキル、−CO
2C
1−4アルキル、若しくは−SO
2C
1−4アルキル置換基を有していてもよい)を形成し;且つ各M
+は、正味単一正電荷を持つ対イオンである。各M
+は、独立して、例えば、K
+、Na
+、Li
+等のアルカリイオン;
+N(R
60)
4等のアンモニウムイオン;[Ca
2+]
0.5、[Mg
2+]
0.5、又は[Ba
2+]
0.5等のアルカリ土類イオン(下付きの0.5は、そのような二価のアルカリ土類イオンに対する対イオンのうちの一方が実施態様の化合物のイオン化形態であり、他方が塩化物等の典型的な対イオンであり得るか、又は本明細書中に開示される二のイオン化化合物がそのような二価のアルカリ土類イオンに対する対イオンとして作用し得るか、又は実施態様の二重イオン化化合物がそのような二価のアルカリ土類イオンに対する対イオンとして作用し得ることを意味する)であってもよい。
【0051】
本明細書中の開示に加えて、「置換」アルケン、アルキン、アリール及びヘテロアリール基中の飽和炭素原子上の水素に対する置換基は、別記されない限り、−R
60、ハロ、−O
−M
+、−OR
70、−SR
70、−S
−M
+、−NR
80R
80、トリハロメチル、−CF
3、−CN、−OCN、−SCN、−NO、−NO
2、−N
3、−S(O)R
70、−SO
2R
70、−SO
3−M
+、−SO
3R
70、−OSO
2R
70、−OSO
3−M
+、−OSO
3R
70、−PO
3−2(M
+)
2、−P(O)(OR
70)O
−M
+、−P(O)(OR
70)
2、−C(O)R
70、−C(S)R
70、−C(NR
70)R
70、−CO
2−M
+、−CO
2R
70、−C(S)OR
70、−C(O)NR
80R
80、−C(NR
70)NR
80R
80、−OC(O)R
70、−OC(S)R
70、−OCO
2−M
+、−OCO
2R
70、−OC(S)OR
70、−NR
70C(O)R
70、−NR
70C(S)R
70、−NR
70CO
2−M
+、−NR
70CO
2R
70、−NR
70C(S)OR
70、−NR
70C(O)NR
80R
80、−NR
70C(NR
70)R
70及び−NR
70C(NR
70)NR
80R
80であって、置換アルケン又はアルキンの場合、置換基は−O
−M
+、−OR
70、−SR
70、又は−S
−M
+ではないことを条件として、R
60、R
70、R
80及びM
+は先に定義された通りである。
【0052】
本明細書中の個々の用語に関して開示された置換基に加えて、「置換」ヘテロシクロアルキル及びシクロアルキル基中の窒素原子上の水素に対する置換基は、別記されない限り、−R
60、−O
−M
+、−OR
70、−SR
70、−S
−M
+、−NR
80R
80、トリハロメチル、−CF
3、−CN、−NO、−NO
2、−S(O)R
70、−S(O)
2R
70、−S(O)
2O
−M
+、−S(O)
2OR
70、−OS(O)
2R
70、−OS(O)
2O
−M
+、−OS(O)
2OR
70、−P(O)(O
−)
2(M
+)
2、−P(O)(OR
70)O
−M
+、−P(O)(OR
70)(OR
70)、−C(O)R
70、−C(S)R
70、−C(NR
70)R
70、−C(O)OR
70、−C(S)OR
70、−C(O)NR
80R
80、−C(NR
70)NR
80R
80、−OC(O)R
70、−OC(S)R
70、−OC(O)OR
70、−OC(S)OR
70、−NR
70C(O)R
70、−NR
70C(S)R
70、−NR
70C(O)OR
70、−NR
70C(S)OR
70、−NR
70C(O)NR
80R
80、−NR
70C(NR
70)R
70及び−NR
70C(NR
70)NR
80R
80であって、R
60、R
70、R
80及びM
+は先に定義された通りである。
【0053】
本明細書中の開示に加えて、ある実施態様において、置換されている基は、1、2、3若しくは4の置換基、1、2若しくは3の置換基、1若しくは2の置換基、又は1の置換基を有する。
【0054】
上で定義された全ての置換基において、置換基をそれら自体に対する更なる置換基(例えば、それ自体が置換アリール基で置換された置換基としての置換アリール基を有する置換アリール、これは置換アリール基等により更に置換される)で定義することにより導かれたポリマーは、本明細書中に含まれることを意図されていない。そのような場合、かかる置換基の最大数は3である。例えば、本明細書中で特に検討される置換アリール基の一連の置換基は、置換アリール−(置換アリール)−置換アリールに限定される。
【0055】
別段の指示がない限り、本明細書中に明確に定義されていない置換基の命名法は、官能基の末端部、続いて結合点に向かって隣接する官能基を名づけることにより導かれる。例えば、置換基「アリールアルキルオキシカルボニル」とは、基(アリール)−(アルキル)−O−C(O)−を指す。
【0056】
一又は複数の置換基を含む、本明細書中に開示されるいずれかの基に関し、当然、そのような基は立体的に非現実的な及び/又は合成的に実現不可能な任意の置換又は置換パターンを含まないことが理解される。加えて、対象化合物は、これらの化合物の置換により生じる全ての立体化学異性体を含む。
【0057】
用語「薬学的に許容される塩」とは、哺乳動物等の患者に対して投与するための許容される塩(所定の投与レジームに対して許容できる哺乳動物の安全性を有する対イオンを含む塩)を意味する。そのような塩は、薬学的に許容される無機又は有機塩基から、及び薬学的に許容される無機又は有機酸に由来し得る。「薬学的に許容される塩」とは、化合物の薬学的に許容される塩を指し、その塩は、当該技術分野でよく知られている様々な有機及び無機対イオンに由来し、単なる例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムテトラアルキルアンモニウム等を含み;分子が塩基性機能を含有する場合は、有機又は無機酸の塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、ベシル酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩等を含む。
【0058】
用語「その塩」とは、酸のプロトンが陽イオン、例えば金属陽イオン又は有機陽イオン等で置き換えられた場合に形成される化合物を意味する。患者への投与が意図されていない中間体化合物の塩に必要とされないが、必要に応じて、塩は薬学的に許容される塩である。例として、本化合物の塩は、化合物が、塩の陰イオン成分としての無機又は有機酸のコンジュゲート塩基と共に、無機又は有機酸によりプロトン化され、陽イオンを形成する塩を含む。
【0059】
「溶媒和物」とは、溶媒分子と溶質の分子又はイオンとを組み合わせることにより形成された複合体を指す。溶媒は、有機化合物、無機化合物又は両方の混合物であり得る。溶媒のいくつかの例は、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド及び水を含むが、これらに限定されない。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物である。
【0060】
「立体異性体」とは、同一の原子連結性と異なる原子の空間配列を有する化合物を指す。立体異性体は、シス−トランス異性体、E及びZ異性体、光学異性体、並びにジアステレオマーを含む。
【0061】
「互変異性体」とは、原子の電子結合及び/又はプロトンの位においてのみ異なる分子の代替形態、例えば、エノール−ケト及びイミン−エナミン互変異性体、又は−N=C(H)−NH−環原子配列を含むヘテロアリール基の互変異性形態、例えば、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、及びテトラテトラゾールを指す。当業者は、他の互変異性環原子配列も可能であることを認識するであろう。
【0062】
用語「又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体」は、塩、溶媒和物及び立体異性体、例えば、対象化合物の立体異性体の薬学的に許容される塩の溶媒和物の全順列を含むことを意図されることが理解されるであろう。
【0063】
本明細書中で使用される場合、薬物、化合物、コンジュゲート、薬物コンジュゲート、抗体薬物コンジュゲート若しくは薬学的組成物の「有効用量」又は「有効量」とは、有益な又は所望の結果をもたらすのに十分な量である。予防的使用に関し、有益な若しくは所望の結果は、リスクを排除する若しくは低減する、重症度を緩和する、又は疾病の生化学的、組織学的及び/若しくは行動上の症状、その合併症及び疾病の進行中に出現する中間体病理学的表現型を含む疾病の発病を遅らせる等の結果を含む。治療的使用に関し、有益な若しくは所望の結果は、疾病により生じる一又は複数の症状を減少させる、疾病に罹患している対象の生活の質を向上させる、疾病を治療するのに必要な他の投薬用量を減少させる、例えば標的化を介して別の投薬の効果を増強する、疾病の進行を遅らせる、及び/又は生存期間を延長する等の臨床結果を含む。がん又は腫瘍の場合、有効量の薬物は、がん細胞数を縮小させ;腫瘍の大きさを縮小させ;末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害し(即ち、ある程度遅らせ、好ましくは停止させる);腫瘍転移を阻害し(即ち、ある程度遅らせ、好ましくは停止させる);腫瘍増殖をある程度阻害し;及び/又はがんに関連する一又は複数の徴候をある程度緩和する効果を有し得る。有効投薬量は、一又は複数回の投与で投与され得る。本開示の目的上、薬物、化合物又は薬学的組成物の投薬量は、予防的又は治療的処置を直接的又は間接的に達成するのに十分な量である。臨床状況において理解されるように、薬物、化合物又は薬学的組成物の有効投薬量は、別の薬物、化合物又は薬学的組成物とのコンジュゲーションにおいて達成されても、そうでなくてもよい。したがって、「有効投薬量」は、一又は複数の治療剤を投与する状況において考慮されてもよく、一又は複数の他の薬剤とのコンジュゲートにおいて所望の結果が達成され得るか又は達成される場合、単一薬剤が有効量で与えられると考えられてもよい。
【0064】
本明細書中で使用される場合、「〜とのコンジュゲート」とは、一の治療法に加えて別の治療法を投与することを指す。又は、「〜とのコンジュゲート」とは、一の治療法を他の治療法の投与の前、最中若しくは後に、個体に投与することを指す。
【0065】
本明細書中で使用される場合、「治療」又は「治療する」とは、好ましくは臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るための手法である。本開示の目的上、有益な又は所望の臨床結果は、一又は複数の以下を含むが、これらに限定されない:がん性細胞の増殖を減少させる(若しくは破壊する)こと、疾病により生じる症状を減少させること、疾病に罹患する対象の生活の質を向上させること、疾病を治療するのに必要な他の投薬用量を減少させること、疾病の進行を遅らせること、及び/又は生存期間を延長すること。
【0066】
本明細書中で使用される場合、「疾病の発病を遅らせること」とは、疾病(例えばがん)の発病を引き延ばす、妨げる、減速させる、遅滞させる、安定させる、及び/又は延期させることを意味する。病歴及び/又は治療されている個体により、この遅れの時間は様々である。当業者にとっては明白であるように、十分な又は有意な遅れには、実質的に、個体が疾病を発病しない予防が含まれる。例えば、末期がん、例えば転移発症は遅らせられ得る。
【0067】
「個体」又は「被検体」は、哺乳類、より好ましくはヒトである。哺乳類は、家畜、競技用動物、ペット(ネコ、イヌ、ウマ等)、霊長類、マウス及びラットも含むが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書中で使用される場合、用語「特異的に認識する」又は「特異的に結合する」とは、測定可能及び再現可能な相互作用、例えば標的と抗体(又は分子若しくは成分)との間の引力又は結合を指し、これは、生物学的分子を含む分子の不均一集団の存在中の標的の存在を決定する。例えば、エピトープと特異的に若しくは優先的に結合する抗体は、標的若しくは非標的エピトープの他のエピトープに結合するよりも、より高い親和性(affinity、avidity)で、より容易に、及び/又はより長い持続時間で、このエピトープを結合する抗体である。また、例えば、第一の標的と特異的に又は優先的に結合する抗体(又は成分若しくはエピトープ)は、第二の標的と特異的に又は優先的に結合しても、そうでなくてもよい。又は、「特異的な結合」若しくは「優先的な結合」とは、排他的な結合を(含み得るが)必ずしも必要としない。標的と特異的に結合する抗体は、少なくとも約10
3M
−1若しくは10
4M
−1、時には約10
5M
−1若しくは10
6M
−1、他の例では約10
6M
−1若しくは10
7M
−1、約10
8M
−1から10
9M
−1、又は約10
10M
−1から10
11M
−1あるいはそれ以上の結合定数を有してもよい。特定のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するための様々なイムノアッセイフォーマットが使用され得る。例えば、固体相ELISAイムノアッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応するモノクローナル抗体を選択するために、常套的に使用される。特定の免疫反応を決定するために使用され得るイムノアッセイフォーマット及び条件についての記載に関しては、例えば、Harlow and Lane (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New Yorkを参照のこと。
【0069】
「がん」、「腫瘍」、「がん性」及び「悪性」なる用語は、本明細書で使用される場合、調節されない細胞増殖によって典型的に特徴づけられる、哺乳動物の生理学的状態を指すか又は表わす。がんの例は、腺癌、リンパ腫、芽細胞腫、黒色腫及び肉腫を含む癌を含むが、これらに限定されない。更に特定の例は、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺癌、肺扁平上皮癌、消化管がん、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、神経膠腫、卵巣がん、肝がん及び肝細胞がん等の肝臓がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜若しくは子宮癌、唾液腺癌、腎細胞癌及びウィルムス腫瘍等の腎臓がん、基底細胞癌、黒色腫、中皮腫、前立腺がん、甲状腺がん、精巣がん、食道がん、胆嚢がん、並びに様々な種類の頭頸部がんを含む。
【0070】
本明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他を指さない限り複数形を含む。例えば、「抗体」への言及は、一から多数の抗体、例えばモル量に対する言及であり、当該技術分野の当業者に知られているそれらと同等のものなどを含む。
【0071】
本明細書中の「およそ」の値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータ自体に対する実施態様を含む(記載する)。例えば、「およそX」との記載には「X」の記載が含まれる。
【0072】
本明細書に記載の本発明の態様及び変形形態は、態様及び変形形態「からなる」及び/又は「本質的にからなる」を含む。
【0073】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を持つ。本明細書中に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び物質も本発明の実施又は試験において使用され得るが、好ましい方法及び物質はここに記載される。本明細書中で言及される全ての出版物は、出版物が引用されることに関連する方法及び/又は物質を開示し、記載するために、参照により本明細書に援用される。
【0074】
別記されない限り、本実施態様の方法及び技術は、当該技術分野でよく知られている従来からの方法に従って、並びに、本明細書を通して引用及び検討される様々な一般的な及びより具体的な参照文献に記載されているように、一般的に実施される。例えば、Loudon, Organic Chemistry, 4
th edition, New York: Oxford University Press, 2002, pp. 360-361, 1084-1085; Smith and March, March’s Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 5
th edition, Wiley-Interscience, 2001を参照のこと。
【0075】
対象化合物を命名するための本明細書中で使用される命名法は、本明細書中の実施例で説明される。この命名法は、一般的に市販のAutoNomソフトウェア(MDL, San Leandro, Calif.)を使用して生成される。
【0076】
明確にするために別個の実施態様の文脈中に記載される本発明のある特徴は、一の実施態様中で組合せで提供されてもよいことが理解される。反対に、簡潔にするために一の実施態様の文脈中に記載される本発明の様々な特徴は、別々に又は任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。変数により表される化学基に関連する実施態様の全ての組合せは、本発明に特に包含され、且つそのような組合せが安定した化合物(即ち、単離され、特徴づけられ、生物学的活性に関して試験され得る化合物)を包含する程度に、一つ一つの組合せが個別に且つ明確に開示されるかのように、本明細書中に開示される。加えて、そのような変数を記載する実施態様に列挙される化学基の全てのサブコンビネーションもまた、本発明に特に包含され、且つ化学基の一つ一つのサブコンビネーションが個別に且つ明確に本明細書に開示されるかのように、本明細書中に開示される。
【0077】
詳細な記載
本開示は、適切な条件下で開裂可能であってもよく、親水基を包含して化合物の溶解度を高める、親水性の自壊性リンカーを提供する。親水性の自壊性リンカーは、しばしば疎水性である細胞傷害性薬物に関する薬物コンジュゲートの溶解度の増加を提供し得る。薬物コンジュゲートに親水性の自壊性リンカーを使用するその他の利点は、薬物コンジュゲートの安定性の増加及び薬物コンジュゲートの凝集の低下を含む。
【0078】
本開示は、優れた血清安定性を有し得る薬物コンジュゲートを提供する。例えば、薬物のヒドロキシル基が水性バッファー又はヒト血清中の急速な加水分解の影響を受けやすい不安定な炭素結合を介してスペーサーに結合している、薬物コンジュゲートとは対照的に、ベンジルオキシカルボニル結合を利用した本実施態様の薬物コンジュゲートは、同一条件下で比較的より安定し得、且つ選択的に断片化を受けて、プロテアーゼ、例えばカテプシンBでの治療の際に薬物を放出し得る。血清安定性は、薬物コンジュゲートに対する望ましい特性であり、不活性な薬物を患者の血清に投与し、リガンドを用いてその不活性な薬物を標的で濃縮させ、次いでその薬物コンジュゲートを標的の付近においてのみ活性型に変換させることが望ましい。
【0079】
本開示は、低下した凝集を有し得る薬物コンジュゲートを提供する。いくつかの酵素不安定リンカーの関連した疎水性の増加は、特に、高い疎水性を持つ薬物との薬物コンジュゲートの凝集をもたらし得る。親水基をリンカーへ包含することにより、薬物コンジュゲートの凝集が減少されてもよい。
【0080】
本開示の化合物は、薬物部位、選択された細胞集団を標的とする能力のある標的化部位、並びに、アシル単位、薬物部位と標的化部位との間に距離を与えるための任意のスペーサー単位、適切な条件下で開裂可能であるペプチドリンカー、親水性の自壊性リンカー、及び任意の第二の自壊性スペーサー又は環化自己脱離リンカーを含むリンカーを含む。それぞれの特徴を以下で説明する。
【0081】
本開示は、式(I):
[式中:
Dは薬物部位であり;
Tは標的化部位であり;
Xは
親水性の自壊性リンカーであり;
L
1は結合、第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーであり;
L
2は結合又は第二の自壊性リンカーであって;
ここで、L
1が第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーである場合に、L
2は結合であり;
ここで、L
2が第二の自壊性リンカーである場合に、L
1は結合であり;
L
3はペプチドリンカーであり;
L
4は結合又はスペーサーであり;且つ
Aはアシル単位である]
の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を提供する。
【0082】
いくつかの実施態様において、標的化部位は、薬物部位への結合に関して一又は複数の結合部位を有する。例えば、標的化部位Tは、リンカー−薬物部位への結合に関して複数の部位を有し得る(例えば、A−L
4−L
3−L
2−X−L
1−D)。したがって、式(Ia):
[式中、D、T、X、L
1、L
2、L
3、L
4及びAは、式(I)に定義される通りであり、pは1から20である]の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体が提供される。いくつかの実施態様において、pは1から8である。いくつかの実施態様において、pは1から6である。いくつかの実施態様において、pは1から4である。いくつかの実施態様において、pは2から4である。いくつかの実施態様において、pは1、2、3又は4である。いくつかの実施態様において、pは2である。いくつかの実施態様において、pは3である。いくつかの実施態様において、pは4である。
【0083】
ペプチドリンカー
式(I)において、L
3はペプチドリンカーであり;ある実施態様において、L
3は、1から10のアミノ酸残基のペプチドリンカーである。ある実施態様において、L
3は、2から4のアミノ酸残基のペプチドリンカーである。ある例において、L
3は、ジペプチドリンカーである。
【0084】
アミノ酸残基は、天然に存在するか又は非天然のアミノ酸残基であり得る。用語「天然アミノ酸」及び「天然に存在するアミノ酸」なる用語は、Ala、Asp、Cys、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、及びTyrを指す。「非天然アミノ酸」(すなわち、天然には存在しないアミノ酸)は、非制限的な例として、ホモセリン、ホモアルギニン、シトルリン、フェニルグリシン、タウリン、ヨードチロシン、セレノ−システイン、ノルロイシン(「Nle」)、ノルバリン(「Nva」)、ベータ−アラニン、L−又はD−ナフタラニン、オルニチン(「Orn」)等を含む。
【0085】
アミノ酸は、D型の天然及び非天然アミノ酸も含む。「D−」は、天然に存在する(「L−」)アミノ酸の構造とは対照的に、「D」(右旋性の)立体構造を有するアミノ酸を指す。特定の立体構造が示される場合、当業者は、アミノ酸とはL−アミノ酸であることを理解するであろう。しかしながら、アミノ酸は、D−及びL−立体構造のラセミ混合物中にあり得る。天然及び非天然アミノ酸は、購入され得るか(Sigma Chemical Co.; Advanced Chemtech)又は当該技術分野で知られている方法を使用して合成され得る。アミノ酸置換基は、その生物学的活性が保持される限り、残基の両極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/又は両親媒性の性質における類似性に基づいて作製され得る。
【0086】
アミノ酸残基配列は、一又は複数の腫瘍関連プロテアーゼによって生じたペプチジル誘導体薬物コンジュゲートから選択的に酵素により切断されるように、特に適合され得る。
【0087】
ある実施態様において、L
3は、少なくとも一のリシン又はアルギニン残基を含むペプチドリンカーである。
【0088】
ある実施態様において、L
3は、リシン、D−リシン、シトルリン、アルギニン、プロリン、ヒスチジン、オルニチン及びグルタミンから選択されるアミノ酸残基を含むペプチドリンカーである。
【0089】
ある実施態様において、L
3は、バリン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、アラニン、ロイシン、トリプトファン及びチロシンから選択されるアミノ酸残基を含むペプチドリンカーである。
【0090】
L
3は、バリン−シトルリン、プロリン−リシン、メチオニン−D−リシン、アスパラギン−D−リシン、イソロイシン−プロリン、フェニルアラニン−リシン、及びバリン−リシンから選択されるジペプチドリンカーである。ある実施態様において、L
3はバリン−シトルリンである。
【0091】
本開示での使用に適した多数の特定のペプチドリンカー分子は、特定の腫瘍関連プロテアーゼによる酵素的切断に関するその選択性において設計され、最適化され得る。本開示での使用のためのあるペプチドリンカーは、プロテアーゼ、カテプシンB及びDに対して最適化されたものである。
【0092】
親水性の自壊性リンカー
式(I)において、Xは親水性の自壊性リンカーである。
【0093】
本開示の化合物は、スペースを空け、薬物部位及び標的化部位と共有結合し、親水基を包含する親水性の自壊性スペーサー部分を採用しており、これは、化合物の高い溶解度を提供する。いくつかの酵素不安定リンカーの関連した疎水性の増加は、特に、高い疎水性を持つ薬物との薬物コンジュゲートの凝集をもたらす。親水基をリンカーへ包含することにより、薬物コンジュゲートの凝集が減少されてもよい。
【0094】
自壊性スペーサーは、通常安定している三構成の分子中に二のスペースが空いた化学的部分と共有結合する能力があり、酵素的切断の手段により三構成の分子からスペースが空いた化学的部分のうちの一方を放出し得、且つ酵素的切断に続いて、残りの分子から自発的に切断してスペースが開いた化学的部分のうちの他方を放出し得る、二官能性の化学的部分として定義されてもよい。
【0095】
ある実施態様において、Xは、ベンジルオキシカルボニル基である。ある実施態様において、Xは、
[式中、R
1は水素、未置換若しくは置換C
1−3アルキル、又は未置換若しくは置換ヘテロシクリルである]である。
【0096】
そのような例において、本開示は、式(II):
[式中:
Dは薬物部位であり;
Tは標的化部位であり;
R
1は水素、未置換若しくは置換C
1−3アルキル、又は未置換若しくは置換ヘテロシクリルであり;
L
1は結合、第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーであり;
L
2は結合、第二の自壊性リンカーであって;
ここで、L
1が第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーである場合に、L
2は結合であり;
ここで、L
2が第二の自壊性リンカーである場合に、L
1は結合であり;
L
3はペプチドリンカーであり;
L
4は結合又はスペーサーであり;且つ
Aはアシル単位である]
の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を提供する。
【0097】
いくつかの実施態様において、式(IIa):
[式中、D、T、L
1、L
2、L
3、L
4及びAは、式(II)に定義される通りであり、pは1から20である]の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体が提供される。いくつかの実施態様において、pは1から8である。いくつかの実施態様において、pは1から6である。いくつかの実施態様において、pは1から4である。いくつかの実施態様において、pは2から4である。いくつかの実施態様において、pは1、2、3又は4である。いくつかの実施態様において、pは2である。いくつかの実施態様において、pは3である。いくつかの実施態様において、pは4である。式(II)又は(IIa)のある実施態様において、R
1は水素である。ある実施態様において、R
1はメチルである。
【0098】
薬物部位の放出は、アミノベンジルオキシカルボニル基の自己脱離反応に基づく。便宜上、結合した薬物及びペプチドと共にアミノベンジルオキシカルボニル基を用いた反応スキームを以下に示す。
【0099】
【0100】
スキーム1に関して、ペプチドからの切断の際、アミノベンジルオキシカルボニルが形成され、自発的な1,6脱離を受けてシクロヘキサ−2,5−ジエニミン誘導体及び二酸化炭素を形成し、薬物を放出し得る。
【0101】
任意選択的な第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカー
第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーは、薬物部位を放出するために化合物の切断を微調整することを可能にするための追加のリンカーを提供する。
【0102】
式(I)又は(Ia)において、L
1は、結合、第二の自壊性リンカー、又は環化自己脱離リンカーであり;L
2は、結合又は第二の自壊性リンカーであって;ここで、L
1が第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーである場合に、L
2は結合であり;ここで、L
2が第二の自壊性リンカーである場合に、L
1は結合である。したがって、親水性の自壊性リンカーに隣接する任意選択的な第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーが存在する。
【0103】
ある実施態様において、L
1は結合であり、且つL
2は結合である。ある実施態様において、L
1は第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーであり、L
2は結合である。ある実施態様において、L
1は結合であり、L
2は第二の自壊性リンカーである。
【0104】
ある実施態様において、式(I)又は(Ia)では、L
1は結合である。ある実施態様において、L
1は第二の自壊性スペーサー又は環化自己脱離リンカーであり、親水性の自壊性リンカーと薬物部位を分離する。ある実施態様において、L
1はアミノベンジルオキシカルボニルリンカーである。
【0105】
ある実施態様において、L
1は:
[式中、nは、1又は2である]
から選択される。
【0106】
ある例において、第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーは、使用され得る多種多様な部分に関する設計潜在性を提供する。例えば、式(II)又は(IIa)において、親水性の自壊性リンカーと薬物部位との間のカルバメート結合、(−O−C(O)−N(H)−)結合は、安定した薬物コンジュゲートを提供し、遊離薬物部位を提供するために容易に切断するであろう。親水性の自壊性リンカーは、典型的にはオキシカルボニル基(−O−C(O)−)で終結する。薬物部位が、カルバメート基を形成するよう反応するために使用され得るアミノ反応基を有する場合、第二の自壊性ユニット又は環化自己脱離リンカーは、採用されてもよいが、必要ではない。しかしながら、薬物がアミノ基を含まず、他の反応官能基を含む場合、そのような薬物は、薬物部位とアミノベンジルオキシカルボニル基との間の第二の、中間体自壊性スペーサー又は環化自己脱離リンカーを含めることにより、本実施態様のアミノベンジルオキシカルボニル含有化合物中に包含されていてもよい。
【0107】
以下のL
1の環化自己脱離リンカーは、親水性の自壊性リンカーのアミノベンジルオキシカルボニル基
に対するヒドロキシル含有又はチオール含有薬物部位の結合を提供する。
【0108】
実施態様の化合物中の環化自己脱離リンカーは、化合物の切断を提供し、薬物部位を放出する。隣接する親水性の自壊性リンカーの脱離メカニズムは、L
1のアミノ基を示すであろう。次いで、アミノ基は、L
1のカルバメート基又はチオカルバメート結合及びヒドロキシル含有又はチオール含有薬物部位を放出する環化反応中の薬物部位と反応し得る。
【0109】
ある実施態様において、式(I)又は(Ia)では、L
2は結合である。ある実施態様において、L
2は第二の自壊性スペーサーであり、親水性の自壊性リンカーとペプチドリンカーを分離する。ある実施態様において、L
2はアミノベンジルオキシカルボニルリンカーである。
【0110】
ある実施態様において、L
2は、
[式中、nは、1又は2である]
から選択される。
【0111】
任意選択的なスペーサー
式(I)又は(Ia)において、L
4は結合又はスペーサーである。ある実施態様において、L
4は結合である。ある実施態様において、L
4はスペーサーであり、それは薬物部位と標的化部位との間に距離を提供し得る。
【0112】
ある実施態様において、スペーサーは、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、置換複素環式及びヘテロ原子、並びにそれらの組合せから選択される。スペーサーは、その原子含有量(例えば、炭素原子のみを含有するスペーサー又は炭素原子とスペーサー上に存在する一又は複数のヘテロ原子を含有するスペーサー)において均一又は不均一であり得る。好ましくは、スペーサーは、1から50個の炭素原子並びに酸素、窒素及び硫黄から選択される0から30個のヘテロ原子を含む。スペーサーはまた、キラル若しくはアキラル、直線状、分枝状又は環状であってもよい。
【0113】
ある実施態様において、L
4は、ポリアルキレングリコール、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、及びポリアミンから選択されるスペーサーである。アルケニレンの例は、ビニレン(−CH=CH−)、アリレン(−CH
2C=C−)、及びブタ−3−エン−1−イレン(−CH
2CH
2C=CH−)を含むが、これらに限定されない。アルケニレンの例は、アセチレニレン(−C≡C−)、及びプロパルギレン(−CH
2C≡C−)を含むが、これらに限定されない。
【0114】
ある実施態様において、L
4は、ペプチド結合の末端に結合を提供する官能基を含むスペーサーである。官能基、例えばC(O)、C(O)−NH、S(O)
2、及びS(O)
2−NHは、ペプチド結合の末端に結合を提供し得る。ある例において、L
4はL
4a−C(O)、L
4a−C(O)−NH、L
4a−S(O)
2、L
4a−S(O)
2−NHであって、L
4aはポリアルキレングリコール、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、及びポリアミンから選択される。ある例において、L
4はL
4a−C(O)であって、L
4aはポリアルキレングリコール、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、及びポリアミンから選択される。
【0115】
ある実施態様において、L
4はL
4a−C(O)であって、L
4aはポリアルキレングリコールである。ある実施態様において、L
4はL
4a−C(O)であって、L
4aはポリエチレングリコールである。ある実施態様において、スペーサーは−CH
2−(CH
2−O−CH
2)
m−CH
2−C(O)−の式であって、mは0から30の整数である。
【0116】
ある実施態様において、L
4はL
4a−C(O)であって、L
4aはアルキレンである。ある実施態様において、L
4はL
4a−C(O)であって、L
4aはC
1−10アルキレン、C
1−8アルキレン、又はC
1−6アルキレンである。ある実施態様において、L
4はL
4a−C(O)であって、L
4aはC
4アルキレン、C
5アルキレン、又はC
6アルキレンである。ある実施態様において、L
4はL
4a−C(O)であって、L
4aはC
5アルキレンである。
【0117】
アシル単位
式(I)又は(Ia)において、Aはアシル単位である。ある実施態様において、アシル単位「A」は、硫黄原子を含み、標的化部位に由来する硫黄原子を介して標的化部位に結合される。そのような例において、ジチオ結合は、アシル単位と標的化部位との間で形成される。
【0118】
ある実施態様において、Aは、
[式中、Q
2はNH又はOであり、各qは独立して1から10の整数である]から選択される。
【0119】
ある実施態様において、Aは
[式中、Q
2はNH又はOであり、qは1から10の整数である]である。ある例において、qは2から5の数字、例えば、2、3、4、又は5である。
【0120】
ある実施態様において、Aは
[式中、Q
2はNH又はOであり、qは1から10の整数である]である。ある例において、qは2から5の数字、例えば、2、3、4、又は5である。
【0121】
ある実施態様において、Aは、
[式中、Q
2はNH又はOである]から選択される。
【0122】
薬物部位
本実施態様の薬物部分は、対応する薬物が効果的である通常の目的に有効であり、標的化部位に固有の能力により、特に有益な所望の細胞に薬物を輸送する優れた有効性を有する。
【0123】
本実施態様での使用のための好ましい薬物は、細胞傷害性薬物、例えばがんの治療のために使用されるものなどである。そのような薬物は、一般的に、DNA損傷剤、抗代謝物、天然産物及びそれらの類似体を含む。細胞傷害性薬物のあるクラスは、例えば、酵素阻害剤、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤、チミジル酸合成酵素阻害剤、DNAインターカレーター、DNA切断剤、トポイソメラーゼ阻害剤、薬物のアントラサイクリンファミリー、ビンカ薬物、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞傷害性ヌクレオシド、薬物のプテリジンファミリー、ジイネン、ポドフィロトキシン、分化誘導剤及びタキソールを含む。これらのクラスのある有用な要素は、例えば、メトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、シトシンアラビノシド、メルファラン、ロイロシン、ロイロシデイン、アクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、マイトマイシンC、マイトマイシンA、カルミノマイシン、アミノプテリン、タリソマイシン、ポドフィロトキシン及びポドフィロトキシン誘導体(例えばエトポシド又はリン酸エトポシド)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソール、タキソテールレチノイン酸、酪酸、N
8−アセチルスペルミジン、並びにそれらの類似体を含む。その他の薬物は、ドラスタチン及びデュオカルマイシンを含む。
【0124】
当業者は、本発明のコンジュゲートを作成する目的で化合物の反応をより簡便にするために、所望の化合物に対して化学修飾をなしてもよい。
【0125】
ある実施態様において、Dは、薬物がL
1又はXに結合されていることにより、化学的に反応性のある官能基を有する薬物部位である。ある例において、官能基は、第一級アミン、第二級アミン、ヒドロキシル及びスルフヒドリルから選択される。ある例において、官能基は第一級アミン又は第二級アミンである。ある例において、官能基はヒドロキシルである。ある例において、官能基はスルフヒドリルである。
【0126】
上記のように、親水性の自壊性リンカーは、典型的にはオキシカルボニル基(−O−C(O)−)で終結する。したがって、アミノ含有薬物部位は、オキシカルボニル基と容易に反応し、カルバメート基を形成するであろう。ある実施態様において、Dはアミノ含有薬物部位であり、薬物は、アミノ基を通じてL
1又はXに結合されている。
【0127】
しかしながら、薬物部位がアミノ基を含まない場合、L
1の第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーは、使用され得る多種多様な成分に関する設計可能性を提供し得る。ある実施態様において、Dはヒドロキシル含有又はスルフヒドリル含有薬物部位であり、薬物は、ヒドロキシル又はスルフヒドリル基を通じてL
1に結合されている。
【0128】
代表的なアミノ含有薬物は、マイトマイシン−C、マイトマイシン−A、ダウノルビシン、ドキソルビシン、アミノプテリン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、9−アミノカンプトテシン、N
8−アセチルスペルミジン、1−(2−クロロエチル)−1,2−ジメタンスフホニルヒドラジン、タリソマイシン、シタラビン、ドラスタチン及びそれらの誘導体を含む。アミノ含有薬物は、天然にはアミノ基を含まない薬物のアミノ誘導体も含む。ある実施態様において、Dはデュオカルマイシン、ドラスタチン、ツブリシン、ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル若しくはマイトマイシンC(MMC)、又はそのアミノ誘導体である。
【0129】
代表的なヒドロキシル含有薬物は、エトポシド、カンプトテシン、タキソール、エスペラマイシン、1,8−ジヒドロキシ−ビシクロ[7.3.1]トリデカ−4−9−ジエン−2,6−ジイン−13−オン(米国特許第5198560号)、ポドフィロトキシン、アングイジン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、モルホリン−ドキソルビシン、n−(5,5−ジアセトキシ−ペンチル)ドキソルビシン、デュオカルマイシン及びそれらの誘導体を含む。
【0130】
代表的なスルフヒドリル含有薬物は、エスペラマイシン及び6−メルカプトプリン、並びにそれらの誘導体を含む。
【0131】
本実施態様における薬物としての使用のための細胞傷害性薬物のある基は、以下の式:
の薬物を含む。
【0132】
標的化部位
本開示において記載されるような標的化部位とは、所与の細胞集団を特異的に結合する、それと複合体を形成する、それと反応する、又はそれと会合する成分又は分子を指す。例えば、標的化部位は、所与の細胞集団(例えば、治療的に処置されるかそうでなければ生物学的に修飾されることが求められる細胞集団)を特異的に結合し、それと複合体を形成し、それと反応し、又はそれと会合してもよい。本明細書中に記載されるコンジュゲートにおいて、本明細書中に記載される標的化部位は、リンカーを通してコンジュゲート中の薬物部位に結合される。いくつかの実施態様において、標的化部位は、標的化部位がそれと結合し、それと複合体を形成し、それと反応し、又はそれと会合する特定の標的細胞集団に薬物部位(例えば、治療目的で使用される薬物部位)を送達する能力がある。
【0133】
例えば、標的化部位は、例えば抗体等の高分子量タンパク質、低分子量タンパク質、ポリペプチド、又はペプチド、並びに非ペプチジル成分を含んでもよい。本明細書中に記載されるタンパク質、ポリペプチド、又はペプチド成分は、例えば、トランスフェリン、血清アルブミン、上皮増殖因子(「EGF」)、ボンベシン、ガストリン、ガストリン放出ペプチド、血小板由来増殖因子、IL−2、IL−6、例えばTGF−α及びTGF−βの腫瘍増殖因子(「TGF」)、ワクシニア増殖因子(「VGF」)、インスリン並びにインスリン様増殖因子I及びIIを含んでもよい。非ペプチジル成分は、例えば、炭化水素、レクチン、及び低比重リポタンパクからのアポタンパク質を含んでもよい。ある実施態様におけるタンパク質、抗体、ポリペプチド、又はペプチドとは、その未修飾形態、リンカーに結合するのに使用されているような、本明細書中に記載されるコンジュゲートにおいて使用されるために修飾されている形態、又は本明細書中に記載されているコンジュゲート中にある成分を指してもよい。
【0134】
いくつかの実施態様において、標的化部位は抗体(又は抗体成分若しくは抗体標的化部位)である。いくつかの実施態様において、標的化部位は抗体を含む。いくつかの実施態様において、標的化部位は、スルフヒドリル(−SH)基(例えば遊離した反応性スルフヒドリル(−SH)基)を含むか、又はそのようなスルフヒドリル基を含むように改変され得る。いくつかの実施態様において、標的化部位は、スルフヒドリル基(例えば遊離した反応性スルフヒドリル基)を有する抗体を含む。いくつかの実施態様において、標的化部位は、遊離したチオール基、例えば遊離したチオール基を有する抗体を含むか、又はそのようなチオ基を含むように改変され得る。いくつかの実施態様において、標的化部位は、スルフヒドリル基中の硫黄原子を介した、リンカーへのスルフヒドリル基又はチオール基結合を含む。
【0135】
いくつかの実施態様において、標的化部位(例えば抗体標的化部位)は、薬物部位への結合に関して一又は複数の結合部位を有する。例えば、標的化部位T(例えば抗体)は、リンカー−薬物部位(例えば、Aは標的抗体のスルフヒドリル基への結合に適している、A−L
4−L
3−L
2−X−L
1−D)への結合のための複数の部位(例えば複数のスルフヒドリル基)を有し得る。いくつかの実施態様において、標的化部位は、1から20の結合部位を有し得る。いくつかの実施態様において、標的化部位は、1から20、1から10、1から8、1から6、1から4、2から8、2から4、又は2から4の結合部位を有し得る。いくつかの実施態様において、標的化部位は、1、2、3、4、5、6、7、又は8の結合部位を有する。いくつかの実施態様において、標的化部位は、2の結合部位を有する。いくつかの実施態様において、標的化部位は、1の結合部位を有する。いくつかの実施態様において、標的化部位は、4の結合部位を有する。いくつかの例において、ある潜在的な結合部位は薬物部位への結合に利用できなくてもよい。したがって、標的化部位T中の結合部位の数は、潜在的な結合部位の数よりも少ない数の結合した薬物部位を有する薬物コンジュゲートをもたらす。いくつかの実施態様において、一又は複数の結合部位は薬物部位の結合に利用されてもよい。例えば、抗体標的化部位は、抗体の各鎖上にリンカーを介した薬物部位への結合に利用できる一又は二のスルフヒドリル基を有し得る。
【0136】
いくつかの実施態様において、標的化部位は抗体又は抗体標的化部位である。本明細書中に記載される抗体とは、例えば、少なくとも一の抗原認識部位を通じて、免疫グロブリン分子の可変領域に存在する炭化水素、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド等の標的に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を指す。本明細書中で使用される場合、用語「抗体」とは、インタクトなポリクローナル又はモノクローナル抗体だけではなく、その抗原結合断片(例えばFab、Fab’、F(ab’)
2、Fv)、一本鎖、その変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子のその他修正された立体配置を包含する。抗体は、IgG、IgA、若しくはIgM(又はそれらのサブクラス)等のあらゆるクラスの抗体を含み、特定のクラスに属している必要はない。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスが割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主要なクラスがあり:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2に分けられ得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれアルファ、デルタ、エプシロン、ガンマ、及びミューと称される。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られている。
【0137】
本明細書中に記載される標的化部位(又は抗体標的化部位)中に含まれるか又は使用される抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えばFab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、Fc等)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体(例えば完全ヒト抗体)、一本鎖(ScFv)、二重特異性抗体、その変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、及び必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子のその他修正された立体配置を包含し得る。抗体は、マウス、ラット、ラクダ、ヒト、又はその他期限(ヒト化抗体を含む)であってもよい。いくつかの実施態様において、本明細書中に記載される標的化部位(又は抗体標的化部位)中に使用される抗体は、以下のうちのいずれか一つである:二重特異性抗体、多重特異性抗体、一本鎖、二官能性、並びに少なくとも一の抗体の超可変領域(HVR)又は相補性決定領域(CDR)によりもたらされたポリペプチドに対する親和性を有するキメラ及びヒト化分子。本開示中に使用される抗体は、抗体重鎖の可変領域か又は抗体軽鎖の可変領域である単一ドメイン抗体も含む。Holt et al., Trends Biotechnol. 21:484-490, 2003。抗体から天然に発生する六のHVR若しくはCDRのうちの三を含む、抗体重鎖の可変領域か又は抗体軽鎖の可変領域を含むドメイン抗体を作製する方法は、当該技術分野で知られている。Muyldermans, Rev. Mol. Biotechnol. 74:277-302, 2001を参照のこと。
【0138】
いくつかの実施態様において、本明細書中に記載される標的化部位(又は抗体標的化部位)中に含まれるか又は使用される抗体は、モノクローナル抗体である。本明細書中で使用される場合、モノクローナル抗体とは、実質的に均一な抗体の抗体、すなわち、集団を含む個々の抗体が、若干存在してもよい天然に存在する変異の可能性を除いて同一であることを指す。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体は個別抗体の混合物ではない。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で作製しなければならないことを意味するものではない。例えば、本開示で使用されるモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, 1975, Nature, 256:495により最初に記載されたハイブリドーマ法により作製されてもよく、又は、米国特許第4816567号に記載されるような組換えDNA法により作製されてもよい。モノクローナル抗体はまた、例えばMcCafferty et al., Nature 348:552-554に記載される技術を使用して生成されるファージライブラリーから単離されてもよい。
【0139】
いくつかの実施態様において、本明細書中に記載される標的化部位(又は抗体標的化部位)中に含まれるか又は使用される抗体は、キメラ抗体である。本明細書中で使用される場合、キメラ抗体とは、第一の種から可変領域又は可変領域の一部と第二の種から定常領域を有する抗体を指す。インタクトなキメラ抗体は、キメラ軽鎖の二のコピーとキメラ重鎖の二のコピーを含む。キメラ抗体の生成は当該技術分野で知られている(Cabilly et al. (1984), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:3273-3277; Harlow and Lane (1988), Antibodies: a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory)。典型的には、これらのキメラ抗体において軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、哺乳動物の一種に由来する抗体の可変領域を模倣し、その一方、定常部分は、別の種に由来する抗体中の配列と相同である。そのようなキメラ形態に対する一つの明確な利点は、例えば、可変領域は、非ヒト宿主生物体からの容易に利用できるハイブリドーマ若しくはB細胞を使用して、例えばヒト細胞調製物に由来する定常領域との組み合わせで、現在知られている源に簡便に由来し得る点である。可変領域が調製を容易にする利点を有し、特異性がその源に影響されないのに対し、ヒトである定常領域は、抗体が注入された場合、非ヒト源からの定常領域よりも、ヒト対象からの免疫反応を引き起こす可能性が低い。しかしながら、定義はこの特定の例に限定されない。
【0140】
いくつかの実施態様において、本明細書中に記載される標的化部位(又は抗体標的化部位)中に含まれるか又は使用される抗体は、ヒト化抗体である。本明細書中で使用される場合、ヒト化抗体とは、特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又は非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含むそれらの断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)
2若しくはその他抗体の抗原結合配列)である非ヒト(例えばマウス)抗体の形態を指す。大抵の場合、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR若しくはCDR由来の残基が、非ヒト種、例えば、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット又はウサギのHVR若しくはCDR(ドナー抗体)由来の残基により置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例においては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも輸入されたHVR若しくはCDR又はフレームワーク配列にも見られないが、抗体パフォーマンスを更に改良し最適化するために含まれる残基を含んでもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの全てを実質的に含み、HVR若しくはCDR領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである。また、ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン、通常はヒト免疫グロブリンの定常領域又はドメイン(Fc)の少なくとも一部を含む。抗体は国際公開第99/58572に記載されるように修飾されたFc領域を有してもよい。ヒト化抗体のその他形態は、元の抗体に関して変更された一又は複数のHVR又はCDR(一、二、三、四、五、六)を含み、これは、元の抗体からの一又は複数のHVR若しくはCDR「に由来する」一又は複数のHVR又はCDRとも称される。
【0141】
いくつかの実施態様において、本明細書中に記載される標的化部位(又は抗体標的化部位)中に含まれるか又は使用される抗体は、ヒト抗体である。本明細書中で使用される場合、ヒト抗体とは、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する抗体、及び/又は当該技術分野で知られるヒト抗体を製造するための任意の技術を使用して作製された抗体である。本明細書中で使用されるヒト抗体は、少なくとも一のヒト重鎖ポリペプチド又は少なくとも一のヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体を含む。そのような例の一つは、マウスの軽鎖及びヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で公知の様々な技術を用いて産生することができる。一実施態様において、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現させるファージライブラリーから選択される(Vaughan et al., 1996, Nature Biotechnology, 14:309-314; Sheets et al., 1998, PNAS, (USA) 95:6157-6162; Hoogenboom and Winter, 1991, J. Mol. Biol., 227:381; Marks et al., 1991, J. Mol. Biol., 222:581)。ヒト抗体はまた、内因性の免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されている、マウス等の遺伝子組換え動物にヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することにより、作製され得る。この手法は、米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;及び同第5661016号に記載されている。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に対する抗体を産生する不死化ヒトBリンパ球により調製されてもよい(そのようなBリンパ球は固体から回収されてもよく、又はインビトロで免疫化されてもよい)。例えば、Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); Boerner et al., 1991, J. Immunol., 147 (1):86-95;及び米国特許第5750373号を参照のこと。
【0142】
いくつかの実施態様において、本明細書中に記載される標的化部位(又は抗体標的化部位)中に含まれるか又は使用される抗体は、非造血性のがん細胞(例えば結腸直腸がん、膵臓がん又は胃がん細胞)等のがん細胞上の抗原に特異的に結合する。いくつかの実施態様において、抗体は、CD43上の炭化水素含有エピトープ、例えば米国特許第7674605号、米国特許第7982017号、PCT/US2007/013587(国際公開第2007/146172号)、又はPCT/US2008/087515(国際公開第2009/079649号)に記載される(各文献の内容は参照により本明細書中に援用される)抗体に特異的に結合する。いくつかの実施態様において、抗体はh5F1Ca.1抗体である。
【0143】
以下の表1は、ヒト化5F1Ca.1(h5F1Ca.1)重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を示す。
表1(A).h5F1Ca.1重鎖アミノ酸配列(配列番号1)(いくつかの実施態様におけるKabat CDRには下線が付されている;定常領域中の配列はイタリック体で表す)
表1(B).h5F1Ca.1軽鎖アミノ酸配列(配列番号2)(いくつかの実施態様におけるKabat CDRには下線が付されている;定常領域中の配列はイタリック体で表す)
【0144】
いくつかの実施態様において、抗体は、抗体h5F1Ca.1又は抗体h5F1Ca.1由来の抗体である。h5F1Ca.1の重鎖及び軽鎖配列は、それぞれ配列番号1及び配列番号2に記載される。いくつかの実施態様において、抗体は、抗体h5F1Ca.1(又は抗体h5F1Ca.1由来の抗体)の軽鎖及び/又は重鎖からの一、二、又は三のHVR(又はCDR)を含む。いくつかの実施態様において、抗体は、抗体h5F1Ca.1の断片又は領域を含む。一実施態様において、断片は抗体h5F1Ca.1の軽鎖である。別の実施態様において、断片は抗体h5F1Ca.1の重鎖である。更に別の実施態様において、断片は、抗体h5F1Ca.1(又は抗体h5F1Ca.1由来の抗体)の軽鎖及び/又は重鎖からの一又は複数の可変領域を含む。更に別の実施態様において、断片は、抗体h5F1Ca.1(又はh5F1Ca.1由来の抗体)の軽鎖及び/又は重鎖からの一、二、又は三のHVR(又はCDR)を含む。いくつかの実施態様において、抗体h5F1Ca.1由来の一又は複数のHVR(又はCDR)は、h5F1Ca.1の少なくとも一、少なくとも二、少なくとも三、少なくとも四、少なくとも五、又は少なくとも六のHVR(又はCDR)と、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%同一である。いくつかの実施態様において、抗体は、配列番号1からの一、二又は三のHVR(又はCDR)を含む重鎖及び/又は配列番号2からの一、二又は三のHVR(又はCDR)を含む軽鎖を含む。いくつかの実施態様において、抗体は、配列番号1からの三のHVR(又はCDR)を含む重鎖及び/又は配列番号2からの三のHVR(又はCDR)を含む軽鎖を含む。いくつかの実施態様において、抗体は、配列番号1のアミノ1−118を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号2のアミノ酸1−113を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、抗体はキメラ抗体である。いくつかの実施態様において、抗体はヒト化抗体である。
【0145】
いくつかの実施態様において、本明細書中に記載される標的化部位(又は抗体標的化部位)中に含まれるか又は使用される抗体は、非造血性のがん細胞(例えば肺がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、肝臓がん、子宮内膜がん、結腸直腸がん、膵臓がん又は胃がん細胞)により発現したトランスフェリン受容体(ヒトトランスフェリン受容体等)に特異的に結合する。抗体は、非造血性のがん細胞により発現したトランスフェリン受容体上の修飾(炭化水素等)に特異的に結合してもよい。いくつかの実施態様において、抗体は、非造血性のがん細胞により発現したトランスフェリン受容体上の炭化水素に特異的に結合する。いくつかの実施態様において、トランスフェリン受容体上の抗体は炭化水素含有エピトープ、例えば、米国仮特許出願第61/584125号(2012年1月6日出願)又はPCT特許出願第PCT/US2013/020263号(国際公開第2013/103800として公開されている)に記載される(各文献の内容は参照により本明細書中に援用される)抗体に特異的に結合する。いくつかの実施態様において、抗体はキメラ5D7−54.17抗体(c5D7)、5D7−54.17、又は5D7−54.17抗体由来の抗体(例えば、米国仮特許出願第61/584125)である。いくつかの実施態様において、抗体はc5D7抗体である。
【0146】
以下の表2は、c5D7抗体の重鎖配列及び軽鎖配列のアミノ酸配列を示す。
表2(A).c5D7重鎖配列(配列番号3)(いくつかの実施態様におけるKabat CDRには下線が付されている;定常領域中の配列はイタリック体で表す)
表2(B).c5D7軽鎖配列(配列番号4)(いくつかの実施態様におけるKabat CDRには下線が付されている;定常領域中の配列はイタリック体で表す)
【0147】
いくつかの実施態様において、抗体は、c5D7抗体又はc5D7抗体由来の抗体である。c5D7抗体の重鎖及び軽鎖配列は、それぞれ配列番号3及び配列番号4に記載される(表2を参照のこと)。いくつかの実施態様において、抗体は、c5D7抗体(又はc5D7抗体由来の抗体)の軽鎖及び/又は重鎖からの一、二、又は三のHVR(又はCDR)を含む。いくつかの実施態様において、抗体は、c5D7抗体の断片又は領域を含む。一実施態様において、断片はc5D7抗体の軽鎖である。一実施態様において、断片はc5D7抗体の重鎖である。更に別の実施態様において、断片は、c5D7抗体(又はc5D7抗体由来の抗体)の軽鎖及び/又は重鎖からの一又は複数の可変領域を含む。更に別の実施態様において、断片は、c5D7抗体(又はc5D71由来の抗体)の軽鎖及び/又は重鎖からの一、二、又は三のHVR(又はCDR)を含む。いくつかの実施態様において、c5D7抗体由来の一又は複数のHVR(又はCDR)は、c5D7抗体の少なくとも一、少なくとも二、少なくとも三、少なくとも四、少なくとも五、又は少なくとも六のHVR(又はCDR)と、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%同一である。いくつかの実施態様において、抗体は、配列番号3からの一、二又は三のHVR(又はCDR)を含む重鎖及び/又は配列番号4からの一、二又は三のHVR(又はCDR)を含む軽鎖を含む。いくつかの実施態様において、抗体は、配列番号3からの三のHVR(又はCDR)を含む重鎖及び/又は配列番号4からの三のHVR(又はCDR)を含む軽鎖を含む。いくつかの実施態様において、抗体は、配列番号3のアミノ1−119を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号4のアミノ酸1−108を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、抗体はキメラ抗体である。いくつかの実施態様において、抗体はヒト化抗体である。
【0148】
本明細書中で使用される場合、配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」及び「相同性」とは、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入した後、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、特定の配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントを指す。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN、又はMEGALIGN
TM(DNASTAR)ソフトウェアのような公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0149】
いくつかの実施態様において、本明細書中に記載されるCDRは、Kabat CDR、Chothia CDR、又は接触CDRである。いくつかの実施態様において、CDRはKabat CDRである。いくつかの実施態様において、CDRはChothia CDRである。その他の実施態様において、CDRはKabat及びChocia CDRの組合せである(「組合せCDR」又は「拡大CDR」とも称される)。言い換えれば、一以上のCDRを含む所与の実施態様に関し、CDRは、Kabat、Chochia及び/又は組合せのいずれかであってもよい。CDRを決定する方法は、当分野で知られている。
【0150】
抗体の可変領域とは、抗体軽鎖の可変領域若しくは抗体重鎖の可変領域の単独又は組合せを指す。一般的に、可変領域は、抗原結合を媒介し、特定の抗体の特定の抗原に関する特異性を定義する。可変領域は、「超可変領域」(「HVR」)(例えばそれぞれ9〜12アミノ酸長であるHVR)と呼ばれる極度の可変性のより短い領域で分割されている、フレームワーク領域(FR)(例えば15〜30個のアミノ酸のFR)と呼ばれる比較的不変のストレッチを有してもよい。いくつかの実施態様において、天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ四つのFRを含み、大部分がベータシート立体配置をとり三つの超可変領域により繋がっており、この三つの超可変領域はベータシート構造と繋がり、場合によってはβシート構造の一部を形成している、ループを形成する。各鎖における超可変領域は、FRにより互いに極めて近接した状態で保持されてもよく、他の鎖由来の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与してもよい(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗原との抗体の結合には直接関わっていなくてもよいが、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)における抗体の関与など、多様なエフェクター機能を呈してもよい。抗体の定常領域とは、抗体軽鎖の定常領域若しくは抗体重鎖の定常領域の単独又は組合せを指す。抗体の定常領域は、一般的に、構造安定性並びに抗体鎖会合、分泌、経胎盤可動性、及び補体結合等のその他生物学的機能を提供するが、抗原に対する結合には関係していない。定常領域の遺伝子中のアミノ酸配列及び対応するエクソン配列は、それが由来する種に依拠することになるが、アロタイプをもたらすアミノ酸配列中の変異体は、種における特定の定常領域に比較的限定されることになる。各鎖の可変領域は、結合ポリペプチド配列により定常領域につながっている。結合配列は、軽鎖遺伝子中の「J」配列、及び重鎖遺伝子中の「D」配列と「J」配列との組み合わせによりコードされる。
【0151】
用語「超可変領域」(「HRV」)とは、本明細書中で使用される場合、抗原結合性を生じる抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般的に、「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、VLの残基24−34(Ll)、50−56(L2)及び89−97(L3)、並びにVHの残基約31−35B(Hl)、50−65(H2)及び95−102(H3)(一実施態様において、Hlは約31−35); Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest. 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))、及び/又は「超可変ループ」からの残基(例えば、VLの残基26−32(Ll)、50−52(L2)及び91−96(L3)、並びにVHの残基26−32(Hl)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917(1987))を含む。CDRを決定するための方法が多数あり、例えば、異種間配列変化に基づく手法(すなわち、Kabat et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest, (5th ed., 1991, National Institutes of Health, Bethesda MD));及び抗原抗体複合体の結晶学的研究に基づく手法(Al-lazikani et al.(1997)J. Mol. Biol. 273:927-948))がある。Kabat相補性決定領域(CDR)であるHVRは、配列変化に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat et al.、上記)。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置に言及している(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM HVRは、Kabat CDRとChothia構造的ループの間の妥協を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用できる複合体結晶構造の解析に基づく。本明細書中で使用される場合、CDRは、該手法のうちのいずれかにより、又は該手法のうちの二若しくは三の組合せにより定義されるCDRであってもよい。CDRはKabat CDR、Chothia CDR、又は接触CDRであってもよい。これらの各HVRからの残基は以下に記される。

【0152】
HVRは次のような「拡大HVR」を含んでもよい:VLの24−36又は4−34(L1)、46−56又は50−56(L2)及び89−97又は89−96(L3)と、VH.の26−35(H1)、50−65又は49−65(好ましい実施態様)(H2)及び93−102、94−102、又は95−102(H3)。可変ドメイン残基には、これらの拡大HVR各々を定義するために、上記のKabat等に従って番号を付した。
【0153】
いくつかの実施態様において、抗体は、重鎖又は軽鎖中に遊離システインアミノ酸を含むシステイン操作抗体である。抗体中の遊離システインアミノ酸の操作は、特定の部位で薬物分子を有する(すなわち、部位特異的コンジュゲーション)抗体薬物コンジュゲート(ADC)等の抗体コンジュゲート化合物を更に可能にする、反応性の求電子的機能を提供し得る。システイン操作抗体及びシステイン操作抗体の生成手段の例は、Junutula, JR et al., (2008) Nat. Biotech. 26(8):925-932; Lyons, A et al., (1990) Prot. Engineering 3(8):703-708;及びStimmel, JB et al., (2000) J. Biol. Chem. 275(39):30445-30450により提供される。いくつかの実施態様において、システイン残基の反応性チオール基が、抗体の折り畳み若しくは集合にほとんど影響を及ぼさないか又は全く影響を及ぼさず、且つ抗原結合を有意に変更しないことを条件として、抗体は、重鎖又は軽鎖上のアミノ酸残基(例えば、天然に存在するアミノ酸)を一又は複数のシステイン残基と置換するために操作される。いくつかの実施態様において、システイン残基は、新たに導入、操作されたシステインチオール基の反応性に関して評価される。チオール反応性値は、相対的な、0から1.0の範囲の数値であり、任意のシステイン操作抗体に関して測定され得る。いくつかの実施態様において、半発明のシステイン操作抗体のチオール反応性値は、約0.6から1.0;0.7から1.0;又は0.8から1.0のいずれか一つである。部位特異的コンジュゲートに関するシステイン操作抗体は国際公開第2006/034488号、国際公開第2010/141902号、国際公開第2013/093809号、国際公開第2008/038024号、国際公開第2008/070593号、国際公開第2009/092011号、国際公開第2011/005481号及び国際公開第2011/156328号により提供される。
【0154】
システイン操作抗体は、一又は複数のアミノ酸残基をシステインで置き換えてシステイン操作抗体をコードすることにより、親抗体の核酸配列を突然変異させること;システイン操作抗体を発現させること;及びシステイン操作抗体を単離することにより調製され得る。いくつかの実施態様において、システイン操作抗体は抗体断片;例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、又は一本鎖(ScFv)抗体である。いくつかの実施態様において、抗体は、アミノ酸残基S157、T169及びS442(EU番号付け)の一又は複数のシステイン置換基を含むように操作される。本発明のいくつかの実施態様において、h5F1Ca.1、c5D7抗体又はh5F1Ca.1若しくはc5D7抗体に由来する抗体は、一又は複数の遊離システイン残基を含むように操作される。
【0155】
いくつかの実施態様において、IgG重鎖の任意の一又は複数の以下の位置における一又は複数のアミノ酸残基は、Kabat等のEUインデックス(1991, NIH Publication 91- 3242, National Technical Information Service, Springfield, VA, 以下「Kabat」と称する)に従って付番されたシステイン残基:40、43、84、88、103、112、113、114、115、131、132、133、134、135、136、137、138、139、161、168、172、234、235、237、239、246、249、265、267、269、270、276、278、282、283、284、287、289、292、293、297、298、299、300、302、303、312、314、315、318、320、324、326、327、330、332、333、334、335、336、337、339、345、347、354、355、356、358、359、360、361、362、370、373、376、378、380、382、383、384、386、388、398、390、392、393、400、401、404、411、413、414、416、418、419、421、422、428、431、432、437、438、439、440、442、443、及び444で置き換えられる。
【0156】
いくつかの実施態様において、IgG重鎖の以下の位置の組合せにおける一、二、三、四、五、六、七、八、九若しくは十、又はそれ以上のアミノ酸残基は、KabatのEUインデックスに従って付番されたシステイン残基:40、43、84、88、103、112、113、114、115、131、132、133、134、135、136、137、138、139、161、168、172、234、235、237、239、246、249、265、267、269、270、276、278、282、283、284、287、289、292、293、297、298、299、300、302、303、312、314、315、318、320、324、326、327、330、332、333、334、335、336、337、339、345、347、354、355、356、358、359、360、361、362、370、373、376、378、380、382、383、384、386、388、398、390、392、393、400、401、404、411、413、414、416、418、419、421、422、428、431、432、437、438、439、440、442、443、及び444で置き換えられる。
【0157】
いくつかの実施態様において、IgGラムダ軽鎖の一又は複数の以下の位置における一又は複数のアミノ酸残基は、KabatのEUインデックスに従ってシステイン残基:7、15、20、22、25、43、110、111、125、144、149、155、158、161、168、185、188、189、191、197、205、206、207、208及び210で置き換えられる。
【0158】
いくつかの実施態様において、IgGラムダ軽鎖の以下の位置の組合せにおける一、二、三、四、五、六、七、八、九若しくは十、又はそれ以上のアミノ酸残基は、KabatのEUインデックスに従って、システイン残基:7、15、20、22、25、43、110、111、125、144、149、155、158、161、168、185、188、189、191、197、205、206、207、208及び210で置き換えられる。
【0159】
いくつかの実施態様において、IgGカッパ軽鎖の一又は複数の以下の位置における一又は複数のアミノ酸残基は、KabatのEUインデックスに従ってシステイン残基:7、15、20、22、25、43、110、111、144、168、183及び210で置き換えられる。
【0160】
いくつかの実施態様において、IgGカッパ軽鎖の以下の位置の組合せにおける一、二、三、四、五、六、七、八、九若しくは十、又はそれ以上のアミノ酸残基は、KabatのEUインデックスに従って、システイン残基:7、15、20、22、25、43、110、111、144、168、183及び210で置き換えられる。
【0161】
いくつかの実施態様において、抗体は単離されている。単離された抗体とは、その自然環境の成分から単離され、分離され、及び/又は回収された抗体を指す。いくつかの実施態様において、抗体は実質的に純粋である。用語「実質的に純粋」とは、少なくとも50%純粋(即ち、混入物が存在しない)、より好ましくは少なくとも90%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、より好ましくは少なくとも98%純粋、より好ましくは少なくとも99%純粋である物質を指してもよい。いくつかの実施態様において、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施態様において、抗体はヒト化抗体である。いくつかの実施態様において、抗体はキメラ抗体である。いくつかの実施態様において、抗体はヒト抗体である。いくつかの実施態様において、抗体はIgG(例えばIgG
1、IgG
2、又はIgG
4)である。いくつかの実施態様において、抗体はヒトIgG、例えばヒトIgG
1である。
【0162】
共有結合によって抗体がその抗原結合免疫特異性を保持することが可能となる限り、本明細書中に記載される抗体は、任意の型の分子の共有結合により修飾されている類似体又は誘導体を更に含んでもよい。例えば、抗体の誘導体及び類似体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、誘導体化、既知の保護基によるタンパク質分解的切断、細胞リガンド又はその他タンパク質に対する結合等により更に修飾されたものを含む。化学修飾は、特異的な化学的切断、アセチル化、処方等を含むがこれらに限定されない既知の技術によって行われ得る。加えて、類似体又は誘導体は、一又は複数の非天然アミノ酸を含み得る。
【0163】
いくつかの実施態様において、式(I)−(V)の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体中の抗体標的化部位Tは、追加の薬物部位と更に結合し得るように、薬物部位と部分的にコンジュゲートされている。したがって、いくつかの実施態様において、式(I)の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体は、式(Ia)の化合物又はその塩若しくはその溶媒和物若しくは立体異性体を包含することが意図される。同様に、式(II)の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体は、式(IIa)の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を包含することが意図され;式(III)の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体は、式(IIIa)の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を包含することが意図され;式(IV)の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体は、式(IVa)の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を包含することが意図され;且つ式(V)の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体は、式(Va)の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を包含することが意図される。
【0164】
本明細書中に記載される抗体は、がん細胞抗原又はがんの治療に関する抗体に対して免疫特異的な抗体を含んでもよい。がん細胞抗原に対して免疫特異的な抗体を作製する方法は、当該技術分野で知られている。抗体は以下のいずれかを含んでもよい:ヒト化抗HER2 モノクローナル抗体等の抗HER2抗体(例えばHERCEPTIN(トラスツズマブ;Genentech, CA))、キメラ抗CD20モノクローナル抗体等の抗CD20抗体(例えばRITUXAN(リツキシマブ;Genentech))、オバレックス(AltaRex Corporation, MA)、パノレックス(Glaxo Wellcome, NC)、BEC2(ImClone Systems Inc., NY)、IMC−C225(ImClone Systems Inc.,NY)、ビタキシン(MedImmune, Inc., MD)、キャンパスI/H(Leukosite, MA)、スマートMI95(Protein Design Labs, Inc., CA)、リンフォシド(Immunomedics, Inc., NJ)、スマートID10(Protein Design Labs、Inc.,CA)、オンコリム(Techniclone, Inc., CA)、ヒト化抗CD2mAb等の抗CD2抗体(例えばアロムン(BioTransplant、CA))、ヒト化抗VEGF抗体等の抗VEGF抗体(例えばベバシズマブ(Genentech、Inc.,CA))、CEAシド(Immunomedics, NJ)、抗KDRキメラ抗体等の抗KDR抗体(例えばIMC−1C11(ImClone Systems, NJ))、抗EGFRキメラ抗体等の抗EGFR抗体(例えばセツキシマブ(ImClone, NJ))、BR96 mAb(Trail, P. A. et al., Science 1993, 261, 212-215)、BR64(Trail, P A et al., Cancer Research 1997, 57, 100-105)、抗CD30抗体、及びS2C6 mAb等のCD40抗原に対するmAb。抗体は以下の抗原のいずれかに対する抗体を更に含んでもよい:CA125、CA15−3、CA19−9、L6、ルイスY、ルイスX、アルファフェトプロテイン、CA 242、炭酸脱水酵素IX(CAIX/CA9)、CA6、クリプト、メソテリン、αv−インテグリン、LIV−1(LC39A6又はZIP6としても知られる)、SLC44A4(AGS−5)、グアニル酸シクラーゼC(GCC)、ENPP3、FOLR1、EGFRvIII、MUC16、エンドセリアン受容体ETB(ETBR)、NaPi2b(ナトリウム依存性リン酸輸送タンパク質2b、SLC34A2としても知られる)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、5T4、STEAP1、ネクチン−4、GPNMB、上皮細胞接着分子(EpCAM)、EphA2、葉酸受容体アルファ(FRA)、CanAg、ヒト非筋肉型ミオシン重鎖A(nmMHCA)、SLITRK6、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン1(TIM−1、HAVCR1としても知られる)、組織因子(TF)、胎盤型アルカリフォスファターゼ、前立腺特異的抗原、前立腺酸性フォスファターゼ、上皮成長因子、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−4、抗トランスフェリン受容体、p97、MUC1−KLH、CEA、gp100、MART1、PSA、IL−2受容体、CD20、CD52、CD33、CD22、CD138(シンデカン−1)、CD79b、CD74、CD70、CD56、CD37、CD19、がん胎児性抗原関連細胞接着分子5(CEACAM5、CD66eとしても知られる)、上皮糖タンパク質−1(EGP−1、またTROP2、TACSTD2、GA733−1、M1S1としても知られる)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、CD38、CD40、ムチン、P21、MPG並びにNeuがん遺伝子産物。
【0165】
本明細書中に記載される抗体は、活性化したリンパ球上に発現した受容体又は受容体複合体の両方に結合し得る抗体を更に含んでもよい。受容体又は受容体複合体は、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーメンバー、TNF受容体スーパーファミリーメンバー、インテグリン、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、主要組織適合性タンパク質、レクチン、又は補体制御タンパク質を含み得る。適切な免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーの非制限的な例は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD19、CD22、CD28、CD79、CD90、CD152/CTLA−4、PD−1、及びICOSである。適切なTNF受容体スーパーファミリーメンバーの非制限的な例は、CD27、CD40、CD95/Fas、CD134/OX40、CD137/4−1BB、TNF−R1、TNFR−2、RANK、TACI、BCMA、オステオプロテゲリン、Apo2/TRAIL−R1、TRAIL−R2、TRAIL−R3、TRAIL−R4、及びAPO−3である。適切なインテグリンの非制限的な例は、CD11a、CD11b、CD11c、CD18、CD29、CD41、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD103、及びCD104である。適切なレクチンの非制限的な例は、C型、S型、及びI型レクチンである。本明細書中に記載される抗体は、ウイルス性又は微生物抗原に対して免疫特異的である抗体を更に含んでもよい。ウイルス抗原は、以下のいずれかを含んでもよい:免疫反応を引き起こすことのできるウイルスペプチド、ポリペプチドタンパク質(例えばHIV gp120、HIV nef、RSV F糖タンパク質、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ、インフルエンザウイルス血球凝集素、HTLV tax、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質(例えばgB、gC、gD及びgE)並びにB型肝炎表面抗原)。微生物抗原は、以下のいずれかを含んでもよい:免疫反応を引き起こすことのできる微生物ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、サッカリド、ポリサッカリド又は脂質分子(例えば細菌、真菌、病原性原生動物又は例えばLPS及び被膜ポリサッカリド5/8を含む酵母ポリペプチド)。
【0166】
標的化部位(例えば抗体、ポリペプチド、ペプチド又は非ペプチジル成分)を作製する方法は、米国特許第7674605号、同第7982017号、PCT/US2007/013587(国際公開第2007/146172号)、又はPCT/US2008/087515(国際公開第2009/079649号)に記載されている方法のように当該技術分野で知られている。
【0167】
代表的なリンカー
ある例において、式(I)、(Ia)、(II)又は(IIa)の化合物中の「−A−L
4−L
3−L
2−」又は「−A−L
4−L
3−」部分は:
である。
【0168】
ある例において、式(I)、(Ia)、(II)又は(IIa)の化合物中の「−A−L
4−L
3−L
2−」又は「−A−L
4−L
3−」部分は:
である。
【0169】
ある例において、式(I)、(Ia)、(II)又は(IIa)の化合物中の「−A−L
4−L
3−L
2−」又は「−A−L
4−L
3−」部分は:
である。
【0170】
ある例において、式(I)、(Ia)、(II)又は(IIa)の化合物中の「−A−L
4−L
3−L
2−X−L
1−D」部分は:
である。
【0171】
そのような例において、本開示は、式(III):
[式中、Tは標的化部位である]の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を提供する。ある例において、式(III)中、Tは抗体である。ある実施態様において、抗体はh5F1Ca.1又はc5D7である。
【0172】
いくつかの実施態様において、式(IIIa):
[式中、Tは標的化部位であり、pは1から20である]の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体が提供される。いくつかの実施態様において、pは1から8である。いくつかの実施態様において、pは1から6である。いくつかの実施態様において、pは1から4である。いくつかの実施態様において、pは2から4である。いくつかの実施態様において、pは1、2、3又は4である。いくつかの実施態様において、pは2である。いくつかの実施態様において、pは3である。いくつかの実施態様において、pは4である。ある例において、式(IIIa)中、Tは抗体であり、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の一又は複数のアミノ酸残基はシステイン残基で置き換えられていてもよい。ある実施態様において、抗体は、h5F1Ca.1若しくはc5D7であるか、又は抗体の重鎖及び/又は軽鎖の一若しくは複数のアミノ酸残基がシステイン残基で置き換えられているh5F1Ca.1、あるいは抗体の重鎖及び/又は軽鎖の一若しくは複数のアミノ酸残基がシステイン残基で置き換えられている5D7である。
【0173】
ある実施態様において、本開示は式(I)の化合物の合成のための中間体を提供する。本開示は、式(VI):
の化合物又はその塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0174】
本開示は、式(IX):
の化合物又はその塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0175】
ある例において、式(I)、(Ia)、(II)又は(IIa)の化合物中の「−A−L
4−L
3−L
2−X−L
1−D」部分は:
である。
【0176】
そのような例において、本開示は、式(IV):
[式中、Tは標的化部位である]の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を提供する。ある例において、式(IV)中、Tは抗体である。ある実施態様において、抗体はh5F1Ca.1又はc5D7である。
【0177】
いくつかの実施態様において、式(IVa):
[式中、Tは標的化部位であり、pは1から20である]の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体が提供される。いくつかの実施態様において、pは1から8である。いくつかの実施態様において、pは1から6である。いくつかの実施態様において、pは1から4である。いくつかの実施態様において、pは2から4である。いくつかの実施態様において、pは1、2、3又は4である。いくつかの実施態様において、pは2である。いくつかの実施態様において、pは3である。いくつかの実施態様において、pは4である。ある例において、式(IVa)中、Tは抗体であり、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の一又は複数のアミノ酸残基はシステイン残基で置き換えられていてもよい。ある実施態様において、抗体は、h5F1Ca.1若しくはc5D7であるか、又は抗体の重鎖及び/又は軽鎖の一若しくは複数のアミノ酸残基がシステイン残基で置き換えられているh5F1Ca.1、あるいは抗体の重鎖及び/又は軽鎖の一若しくは複数のアミノ酸残基がシステイン残基で置き換えられている5D7である。
【0178】
ある実施態様において、本開示は式(I)又は(Ia)の化合物の合成のための中間体を提供する。本開示は、式(VII):
の化合物又はその塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0179】
本開示は、式(X):
の化合物又はその塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0180】
ある例において、式(I)、(Ia)、(II)又は(IIa)の化合物中の「−A−L
4−L
3−L
2−X−L
1−D」部分は:
である。
【0181】
そのような例において、本開示は、式(V):
[式中、Tは標的化部位である]の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を提供する。ある例において、式(V)中、Tは抗体である。ある実施態様において、抗体はh5F1Ca.1又はc5D7である。
【0182】
いくつかの実施態様において、式(Va):
[式中、Tは標的化部位であり、pは1から20である]の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体が提供される。いくつかの実施態様において、pは1から8である。いくつかの実施態様において、pは1から6である。いくつかの実施態様において、pは1から4である。いくつかの実施態様において、pは2から4である。いくつかの実施態様において、pは1、2、3又は4である。いくつかの実施態様において、pは2である。いくつかの実施態様において、pは3である。いくつかの実施態様において、pは4である。ある例において、式(Va)中、Tは抗体であり、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の一又は複数のアミノ酸残基はシステイン残基で置き換えられていてもよい。ある実施態様において、抗体は、h5F1Ca.1若しくはc5D7であるか、又は抗体の重鎖及び/又は軽鎖の一若しくは複数のアミノ酸残基がシステイン残基で置き換えられているh5F1Ca.1、あるいは抗体の重鎖及び/又は軽鎖の一若しくは複数のアミノ酸残基がシステイン残基で置き換えられている5D7である。
【0183】
ある実施態様において、本開示は式(I)の化合物の合成のための中間体を提供する。本開示は、式(VIII):
の化合物又はその塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0184】
本開示は、式(XI):
の化合物又はその塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0185】
本開示は、式(XII):
[式中、RはNO
2又はNH
2である]の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を提供する。
【0186】
式(I)−(V)又は(Ia)−(Va)の化合物は、薬学的に許容される塩として調製及び/又は製剤化され得る。薬学的に許容される塩は、遊離基の所望の薬理的活性を有する化合物の遊離基形態の非毒性の塩である。これらの塩は、無機又は有機酸に由来してもよい。薬学的に許容される塩の非限定的な例は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソブチル酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、プロピルスルホン酸塩、ベシル酸塩、キシレンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニルブチル酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシブチル酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、及びマンデル酸塩を含む。その他適切な薬学的に許容される塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th Edition, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985にある。
【0187】
塩基性窒素を含む式(I)−(V)又は(Ia)−(Va)のいずれか一つの化合物に関し、薬学的に許容される塩は、当該技術分野で利用できる適切な方法により調製されてもよく、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸、ボロン酸、リン酸等の無機酸を有するか、又は酢酸、フェニル酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸、乳酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、イセチオン酸、コハク酸、バレリアン酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ピラノシジル酸(例えばグルクロン酸若しくはガラクツロン酸)、アルファ−ヒドロキシ酸(例えばマンデル酸、クエン酸若しくは酒石酸)、アミノ酸(例えばアスパラギン酸若しくはグルタミン酸)、芳香族酸(例えば安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、ナフトエ酸若しくは桂皮酸)、スルホン酸(例えばラウリルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸若しくはエタンスルホン酸)等の有機酸を有する遊離基、あるいは本明細書中で例として挙げられたような酸の任意の互換性のある混合物、並びにこの技術において通常のレベルを考慮すると同等物若しくは許容される置換基としてみなされるその他酸及びその混合物の処理により調製されてもよい。
【0188】
また、式(I)−(V)若しくは(Ia)−(Va)の一又は複数の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体も提供される。式(I)−(V)若しくは(Ia)−(Va)の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体において、標的化部位は、薬物部位に結合するための一又は複数の結合部位を有し得る。標的化部位中の結合部位への可触性及びコンジュゲートを形成する際の薬物部位の相対濃度に応じて、結合部位の一部分は、形成されたコンジュゲートにおける薬物部位に結合されなくてもよい。各標的化部位に数多くの薬物部位を有する化合物を形成してもよい。したがって、式(Ia)−(Va)の一若しくは複数の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を含む組成物も提供される。例えば、4の結合部位を有する標的分子に関して、組成物は、pが1である式(Ia)の化合物、pが2である式(Ia)の化合物、pが3である式(Ia)の化合物、及びpが4である式(Ia)の化合物から選択される一又は複数の化合物を含んでもよい。組成物中の化合物の相対的な量は、薬物部位と標的化部位との間の所望の比率を達成するよう調整されてもよい。いくつかの実施態様において、組成物は、主に一又は二の化合物を含む。
【0189】
本発明の化合物又は組成物中の「薬物抗体比」(DAR)は、化合物又は組成物中の薬物部位と化合物又は組成物中の抗体との間のモル比率として定義される。抗体が一以上の結合部位を有する場合、一以上の薬物部位が各抗体に結合されてもよい。いくつかの例において、一以上の抗体薬物コンジュゲート(ADC)分子を含む混合物が得られる。抗体薬物コンジュゲートの薬物抗体比は、当該技術分野で知られる分析的方法、例えば、Jeffrey, et al., Bioconjug. Chem. 24(7):1256-1263 (2013);及びSun et al., Bioconjug. Chem. 16(5):1282-1290 (2005)に記載される方法により測定され得る。いくつかの実施態様において、本明細書中で詳述される一又は複数のADCを含む組成物は、約0.5から約6、約1から約5、約1から約4、約1.5から約3.5、又は約2から約4の平均DARを有する。いくつかの好ましい実施態様において、組成物は、約1.5から約3.5又は約2から約3、又は約2、又は約3の平均DARを有する。いくつかのその他好ましい実施態様において、組成物は約2.5±10%の平均DARを有する。いくつかの実施態様において、標的抗体はシステイン操作結合部位を含み、組成物は約2.0の平均DARを有する。
【0190】
薬学的組成物
治療目的上、実施態様の薬学的組成物は、式(I)−(V)若しくは(Ia)−(Va)の少なくとも一の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。薬学的組成物は、一又は複数の薬学的に許容される賦形剤又は薬学的に許容される担体を更に含んでもよい。薬学的に許容される賦形剤は、非毒性であり、そうでなければ対象への投与に関して生物学的に適している物質である。そのような賦形剤は、本明細書に記載される化合物の投与を容易にし、活性成分と互換性がある。薬学的に許容される賦形剤の例は、安定剤、潤滑剤、界面活性剤、希釈剤、酸化防止剤、結合剤、着色料、充填剤、乳化剤又は呈味改変剤を含む。好ましい実施態様において、実施態様による薬学的組成物は無菌の組成物である。薬学的組成物は既知の配合技術又は当業者が利用できるようになる配合技術を使用して調製されてもよい。
【0191】
無菌の組成物は実施態様により検討もされており、そのような組成物を支配する国及び地方の規制に従う組成物を含む。
【0192】
本明細書中に記載される薬学的組成物及び化合物は、溶液、乳液、懸濁液、分散液、又は適切な薬学的溶媒若しくは担体中のシクロデキストリン等の包接錯体として、あるいは、様々な投薬形態の調製に関して当該技術分野で知られている従来からの方法に従って丸薬、錠剤、ロゼンジ、坐剤、サシェ、ドラジェ、顆粒、粉末、再構成用粉末、又は固形担体を伴うカプセルとして製剤化されてもよい。実施態様の薬学的組成物は、経口、非経口、経直腸、経鼻、局所若しくは眼球経路等の適切な送達経路により、又は吸入により投与されてもよい。好ましくは、組成物は、静脈内投与又は経口投与のために製剤化される。
【0193】
経口投与に関して、実施態様の化合物は、錠剤又はカプセル等の固形形態で、又は溶液、乳液若しくは懸濁液として提供されてもよい。経口組成物を調製するために、実施態様の化合物は例えば、一日当たり約0.01から約50mg/kg、又は一日当たり約0.05から約20mg/kg、又は一日当たり約0.1から約10mg/kgの投薬量を生じるように調製されてもよい。経口錠剤は、互換性のある薬学的に許容される賦形剤、例えば希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、甘味料、香味料、着色料及び保存料と混合された活性成分(複数可)を含んでもよい。適切な不活性な充填剤は、炭酸ナトリウム及び炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム及びリン酸カルシウム、ラクトース、澱粉、糖類、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトール等を含む。典型的な液体経口賦形剤は、エタノール、グリセロール、水等を含む。澱粉、ポリビニル−ピロリドン(PVP)、デンプングリコール酸ナトリウム、微結晶性セルロース、及びアルギン酸は典型的な崩壊剤である。結合剤は澱粉及びゼラチンを含んでもよい。潤滑剤は、存在する場合、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクであってもよい。必要である場合、錠剤は、消化管での吸収を遅らせるために、モノステアリン酸グリセリン若しくはジステアリン酸グリセリル等の物質でコーティングされてもよく、又は腸溶コーティングでコーティングされてもよい。
【0194】
経口投与のためのカプセルは、硬質及び軟質ゼラチンカプセルを含む。硬質ゼラチンカプセルを調製するために、活性成分(複数可)は固体、半固体又は液体の希釈剤と混合されてもよい。軟質ゼラチンカプセルは、活性成分を水、油例えば落花生油若しくはオリーブ油、流動パラフィン、短鎖脂肪酸のモノグリセリドとジグリセリドの混合物、ポリエチレングリコール 400、又はプロピレングリコールと混合させることにより調整されてもよい。
【0195】
経口投与のための液体は、懸濁液、溶液、乳液若しくはシロップの形態であってもよく、使用前に水若しくはその他適切なビヒクルとの再構成のための乾燥製品として凍結乾燥又は提示されてもよい。そのような液体組成物は、薬学的に許容される賦形剤、例えば懸濁剤(例えばソルビトール、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル等);非水ビヒクル、例えば油(例えばアーモンド油若しくはヤシ油)、プロピレングリコール、エチルアルコール又は水;保存料(例えばメチル若しくはプロピルp−ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸);湿潤剤、例えばレシチン;並びに、必要であれば、香味料若しくは着色料を含んでもよい。
【0196】
実施態様の組成物は、坐薬のような直腸投与のために製剤化されてもよい。実施態様の薬剤は、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内又は皮下経路を含む非経口使用のために、適切なpH及び等張性に鑑賞された無菌の水溶液又は懸濁液中で、又は非経口的に許容される油中で提供されてもよい。適切な水性ビヒクルは、リンゲル液及び等張の塩化ナトリウムを含む。そのような形態は、アンプル若しくは使い捨て注入器具等の単位投与形態、適切な用量が取り出され得るバイアル等の複数回投与形態、又は固体形態若しくは注射可能な製剤を調製するのに使用され得る予備濃縮物で提示されてもよい。実例となる注入量は、数分から数日の範囲の期間にわたり薬学的担体と混合された薬剤の約1から1000μg/kg/分の範囲である。
【0197】
実施態様の薬学的組成物は、鼻腔、吸入又は経口投与のために、例えば、適切な担体も含むスプレー製剤を使用して投与されてもよい。
【0198】
実施態様の化合物は、局所適用のために、好ましくは、クリーム若しくは軟膏又は局所投与に適した同様のビヒクルとして製剤化される。本発明の化合物は、局所投与のために、ビヒクルに対して約0.1%から約10%の薬物の濃度で薬学的担体と混合されてもよい。実施態様の薬剤の別の投与様式は、経皮送達に作用するパッチ製剤を利用してもよい。
【0199】
本開示は、細胞を死滅させるのに十分な量の式(I)−(V)又は(Ia)−(Va)の化合物を細胞に投与することを含む、細胞を死滅させる方法を提供する。ある実施態様において、細胞はがん細胞である。ある実施態様において、がん細胞は胃がん細胞、膵臓がん細胞、結腸直腸がん細胞、肺がん細胞又は卵巣がん細胞である。
【0200】
別の態様において、本開示は、がんの治療を必要とする個体においてがんを治療する方法であって、該個体に式(I)−(V)又は(Ia)−(Va)の化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。ある実施態様において、がん細胞は胃がん細胞、膵臓がん細胞、結腸直腸がん細胞、肺がん細胞又は卵巣がん細胞である。
【0201】
キット
本開示は、がんの治療又は予防に有用な式(I)−(V)又は(Ia)−(Va)の化合物を含む一又は複数の容器を含む薬学的パック又はキットを提供する。キットはがんの治療における使用説明書を更に含み得る。
【0202】
本開示は、本実施態様の一又は複数の薬学的組成物の成分を含む一又は複数の容器を含む薬学的パック又はキットも提供する。そのような容器(複数可)に関連してもよいものは、医薬品若しくは生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する行政機関により規定された形態の注記であってもよく、その注記はヒトへの投与に関する製造、使用若しくは販売の当局による承認を反映させる。
【0203】
薬物コンジュゲートの合成
実施態様はまた、対象化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を調製するのに有用なプロセス及び中間体に向けられている。
【0204】
開示された化合物を合成するのに有用な一般的に知られる化学合成スキーム及び条件を提供する多くの一般的な参照文献が入手可能である(例えばSmith and March, March’s Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, Fifth Edition, Wiley-Interscience, 2001を参照のこと)。
【0205】
本明細書中に記載されるような化合物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、分取薄層クロマトグラフィー、フラッシュカラムクロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー手段を含む当該技術分野で知られる手段のいずれかにより精製され得る。順相及び逆相並びにイオン樹脂を含む任意の適切な固相が使用され得る。最も典型的には、開示された化合物は、シリカゲル及び/又はアルミニウムクロマトグラフィーを介して精製される。例えば、Introduction to Modern Liquid Chromatography, 2nd ed., ed. L. R. Snyder and J. J. Kirkland, John Wiley and Sons, 1979;及びThin Layer Chromatography, E. Stahl (ed.), Springer-Verlag, New York, 1969を参照のこと。
【0206】
対象化合物の調製のためのプロセスのいずれかの間、関係する分子のいずれかの感受性又は反応基を保護することが必要及び/又は所望とされてもよい。これは、T. W. Greene and P. G. M. Wuts, 「Protective Groups in Organic Synthesis,」 4
thed., Wiley, New York 2006等の標準的な著作物に記載されるような従来の保護基の手段により達成され得る。保護基は、当該技術分野で知られる方法を使用して、後に続く簡便な段階で除去されてもよい。
【0207】
実施態様の方法において有用な例示的な化学物質は、本明細書中の一般的な調製のための実例となる合成スキーム及び後に続く特定の実施例を参照することにより、記載されることになる。当業者は、本明細書中の様々な化合物を得るためには、最終的な所望の置換基が、所望の生成物を得るために必要に応じて、保護の有無にかかわらず、反応スキームを通じて運ばれるように出発物質が適切に選択されてもよいことを認識するであろう。あるいは、最終的な所望の置換基の代わりに、反応スキームを通じて運ばれ得、所望の置換基で必要に応じて置き換えられ得る適切な基を用いることが必要又は所望とされてもよい。更に、当業者は、以下のスキームに示される変換が、特定のペンダント基の機能性と互換性のある任意の順序で実施されてもよいことを認識するであろう。一般スキームに表される反応のそれぞれは、好ましくは、約0℃から使用される有機溶媒の還流温度で実行される。別段の記載がない限り、変数は式(I)に関して上で定義された通りである。
【0208】
本実施態様のコンジュゲートは、親水性の自壊性スペーサーを含むリンカーを通じて薬物部位を抗体と結合させることにより構成されてもよい。
【0209】
式(I)の化合物のリンカー部分に関する代表的な合成は以下のスキームに記載され、特定の実施例が続く。
【0210】
4−ニトロベンゼンアルデヒドからの化合物Cの合成がスキーム2で以下に示す。SOCl
2、PCl
3、又はPCl
5等の塩素化剤を使用して、4−ニトロフェニルグリコール酸を対応する酸塩化物に変換する。次いで、酸塩化物を1−メチルピペラジンと反応させ、ケトンアミド中間体を得る。あるいは、EDCI等のカップリング剤を使用して、4−ニトロフェニルグリコール酸を1−メチルピペラジンとカップリングさせ得る。ケトンアミド中間体はケト基を含み、次いでこれをDIBAL−H、BH
3、LiAlH
4−AlCl
3、LiAlH
4−BF
3−Et
2O、又はホウ化水素ナトリウム等の還元試薬を用いて還元する。
【0211】
スキーム3に関し、化合物Cのニトロ基を還元して、パラジウム、ニッケル又は白金等の触媒での接触水素化により、化合物I中のアニリン基を得る。適切な水素化触媒の例は、Pd/C及びRaneyニッケルを含む。
【0212】
スキーム4に関し、化合物Iは本実施態様の化合物中の親水性の自壊性リンカー部分を提供する。化合物Iのアミノ基は、化合物Xを精製するための標準的なペプチドカップリング条件を通じて化合物Wと反応し得る。DIEA等の塩基又は当業者に知られているその他塩基の存在下、適切な溶媒中でEDCI/HOBt、HOBt、PyBOP、HATU若しくはBEM(Carpino, L. A. J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 4397. Carpino, L. A.; El-Faham, A. J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 5401. Li, P.; Xu, J. C. J. Pept. Res. 2001, 58, 129.)等の試薬が使用され得る。
【0213】
更にスキーム4に関し、4−ニトロフェニルクロロホルメートを使用して、化合物Xのヒドロキシル基を活性炭酸塩に変換する。化合物Yを用いて、アミノ基を有する薬物と反応させることにより化合物Zを生成し得る。薬物がアミノ基を含まない場合、第二の、中間体自壊性スペーサー又は環化自己脱離リンカーは、上記のように薬物部位とアミノベンジルオキシカルボニル基との間に位置し得る。
【0214】
ある実施態様において、以下のスキーム5に関し、リンカーの-L
3−L
2−部分は化合物Iに結合される。次いで、-A−L
4−部分が結合される。
【0215】
本実施態様の化合物を調製するためのプロセスは、バッファー中の抗体の溶液を調製すること及びTCEP等の還元剤の溶液で処理することを含む。遊離チオールの量を決定する。遊離チオールの量が所定量に達した場合、部分的に還元した抗体は、リンカー−薬物部分でアルキル化される。
【0216】
いくつかの実施態様において、式(I)又は(Ia):
[式中、D、T、X、L
1、L
2、L
3、L
4、A及びpは、適用できる場合、式(I)又は(Ia)のために定義された通りであり、標的化部位Tを含む化合物を式:A−L
4−L
3−L
2−X−L
1−Dの化合物と反応させることを含む]の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を作製するためのプロセスが提供される。いくつかの実施態様において、このプロセスにより生成させる化合物が提供される。さらに、このプロセスにより生成される一又は複数の化合物を含む組成物が提供される。
【0217】
いくつかの実施態様において、式(II)又は(IIa):
[式中、D、T、L
1、L
2、L
3、L
4、A及びpは、適用できる場合、式(II)又は(IIa)のために定義された通りであり、一又は複数の遊離チオール(又はスルフヒドリル基)を生じさせる抗体を化合物Z:
又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体と反応させることを含む]
の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を作製するためのプロセスが提供される。いくつかの実施態様において、一又は複数の遊離チオール(又はスルフヒドリル基)を生じさせる抗体はh5F1Ca.1又はc5D7である。いくつかの実施態様において、一又は複数の遊離チオール(又はスルフヒドリル基)を生じさせる抗体は、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の一若しくは複数のアミノ酸残基がシステイン残基で置き換えられているh5F1Ca.1、あるいは抗体の重鎖及び/又は軽鎖の一若しくは複数のアミノ酸残基がシステイン残基で置き換えられている5D7である。いくつかの実施態様において、該プロセスは、本明細書中で詳述されるような化合物Zを調製するための方法を更に含む。いくつかの実施態様において、該プロセスは、本明細書中で詳述されるような化合物Zをもたらす一又は複数の合成中間体(例えば化合物及びY化合物X)を調製するための方法を更に含む。いくつかの実施態様において、本明細書中で詳述されるプロセスのいずれかにより生成される化合物が更に提供される。本明細書中で詳述されるプロセスのいずれかにより生成される一又は複数の化合物を含む組成物が更に提供される。
【0218】
いくつかの実施態様において、式(II):
[式中:
Dは薬物部位であり;
Tは抗体であり;
R
1は水素、未置換若しくは置換C
1−3アルキル、又は未置換若しくは置換ヘテロシクリルであり;
L
1は結合、第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーであり;
L
2は結合又は第二の自壊性リンカーであって;
ここで、L
1が第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーである場合に、L
2は結合であり;
ここで、L
2が第二の自壊性リンカーである場合に、L
1は結合であり;
L
3はペプチドリンカーであり;
L
4は結合又はスペーサーであり;且つ
Aはアシル単位である]
の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を作製するためのプロセスであって、
抗体を化合物Z:
又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体と反応させることを含むプロセスが提供される。
【0219】
いくつかの実施態様において、式(II):
[式中:
pは1から20であり;
Dは薬物部位であり;
Tは抗体であり;
R
1は水素、未置換若しくは置換C
1−3アルキル、又は未置換若しくは置換ヘテロシクリルであり;
L
1は結合、第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーであり;
L
2は結合又は第二の自壊性リンカーであって;
ここで、L
1が第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーである場合に、L
2は結合であり;
ここで、L
2が第二の自壊性リンカーである場合に、L
1は結合であり;
L
3はペプチドリンカーであり;
L
4は結合又はスペーサーであり;且つ
Aはアシル単位である]
の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を作製するためのプロセスであって、
抗体を化合物Z:
又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体と反応させることを含むプロセスが提供される。
【0220】
化合物を作製するプロセス及び/又は本明細書中で詳述される化合物を調製する方法のいずれかにより生成される化合物が更に提供される。化合物を作製するプロセス及び/又は本明細書中で詳述される化合物を調製する方法のいずれかにより生成される一又は複数の化合物を含む組成物(例えば薬学的組成物)もまた提供される。
【0221】
本開示は、スキーム4及び5中の化合物及び中間体の調製のためのプロセスを提供する。スキーム4及び5中に提示される化合物は、完全原子価を有する又は、適切な場合、任意の保護基若しくは脱離基で適切に覆われていることを意図されている。例えば、「化合物TAP−18Hの合成」のスキームに示されるL
3−L
2は
であり得る。
【0222】
本開示は、化合物X:
[式中:
L
2は結合又は第二の自壊性リンカーであって;
ここで、L
1が第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーである場合に、L
2は結合であり;
ここで、L
2が第二の自壊性リンカーである場合に、L
1は結合であり;
L
3はペプチドリンカーであり;
L
4は結合又はスペーサーであり;且つ
Aはアシル単位であり;且つ
R
1は水素、未置換若しくは置換C
1−3アルキル、又は未置換若しくは置換ヘテロシクリルである]
又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を調製する方法であって
化合物W:A−L
4−L
3−L
2と化合物I:
と反応させることを含む方法を提供する。
【0223】
本開示は、化合物Z:
[式中:
Dは薬物部位であり;
L
1は結合、第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーであり;
L
2は結合又は第二の自壊性リンカーであって;
ここで、L
1が第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーである場合に、L
2は結合であり;
ここで、L
2が第二の自壊性リンカーである場合に、L
1は結合であり;
L
3はペプチドリンカーであり;
L
4は結合又はスペーサーであり;且つ
Aはアシル単位であり;且つ
R
1は水素、未置換若しくは置換C
1−3アルキル、又は未置換若しくは置換ヘテロシクリルである]
又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を調製する方法であって
化合物X:
とp−ニトロフェニルクロロホルメートを反応させて化合物Y:
を形成することと;
化合物YをL
1−Dを含む化合物と反応させることを含む方法を提供する。
【0224】
本開示は、化合物X
1:
[式中:
L
2は結合又は第二の自壊性リンカーであって;
ここで、L
1が第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーである場合に、L
2は結合であり;
ここで、L
2が第二の自壊性リンカーである場合に、L
1は結合であり;
L
3はペプチドリンカーであり;且つ
R
1は水素、未置換若しくは置換C
1−3アルキル、又は未置換若しくは置換ヘテロシクリルである]
又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を調製する方法であって
化合物W
1:L
3−L
2と化合物I:
を反応させることを含む方法を提供する。
【0225】
本開示は、化合物Y
1:
[式中:
Dは薬物部位であり;
L
1は結合、第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーであり;
L
2は結合又は第二の自壊性リンカーであって;
ここで、L
1が第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーである場合に、L
2は結合であり;
ここで、L
2が第二の自壊性リンカーである場合に、L
1は結合であり;
L
3はペプチドリンカーであり;且つ
R
1は水素、未置換若しくは置換C
1−3アルキル、又は未置換若しくは置換ヘテロシクリルである]
又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を調製する方法であって
化合物X
1:
とL
1−Dを含む化合物を反応させることを含む方法を提供する。
【0226】
本開示は、化合物Z:
[式中:
Dは薬物部位であり;
L
1は結合、第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーであり;
L
2は結合又は第二の自壊性リンカーであって;
ここで、L
1が第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーである場合に、L
2は結合であり;
ここで、L
2が第二の自壊性リンカーである場合に、L
1は結合であり;
L
3はペプチドリンカーであり;
L
4は結合又はスペーサーであり;
Aはアシル単位であり;且つ
R
1は水素、未置換若しくは置換C
1−3アルキル、又は未置換若しくは置換ヘテロシクリルである]
又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を調製する方法であって
化合物Y
1:
とA−L
4を含む化合物を反応させることを含む方法を提供する。
【0227】
本開示は、式:
[式中:
L
2は結合又は第二の自壊性リンカーであって;
ここで、L
1が第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーである場合に、L
2は結合であり;
ここで、L
2が第二の自壊性リンカーである場合に、L
1は結合であり;
L
3はペプチドリンカーであり;
L
4は結合又はスペーサーであり;且つ
Aはアシル単位であり;且つ
R
1は水素、未置換若しくは置換C
1−3アルキル、又は未置換若しくは置換ヘテロシクリルである]
の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を提供する。
【0228】
本開示は、式:
[式中:
Dは薬物部位であり;
L
1は結合、第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーであり;
L
2は結合又は第二の自壊性リンカーであって;
ここで、L
1が第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーである場合に、L
2は結合であり;
ここで、L
2が第二の自壊性リンカーである場合に、L
1は結合であり;
L
3はペプチドリンカーであり;
L
4は結合又はスペーサーであり;且つ
Aはアシル単位であり;且つ
R
1は水素、未置換若しくは置換C
1−3アルキル、又は未置換若しくは置換ヘテロシクリルである]
又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体の化合物を提供する。
【0229】
本開示は、式:
[式中:
L
2は結合又は第二の自壊性リンカーであって;
ここで、L
1が第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーである場合に、L
2は結合であり;
ここで、L
2が第二の自壊性リンカーである場合に、L
1は結合であり;
L
3はペプチドリンカーであり;且つ
R
1は水素、未置換若しくは置換C
1−3アルキル、又は未置換若しくは置換ヘテロシクリルである]
の化合物を又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体提供する。
【0230】
本開示は、式:
[式中:
Dは薬物部位であり;
L
1は結合、第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーであり;
L
2は結合又は第二の自壊性リンカーであって;
ここで、L
1が第二の自壊性リンカー又は環化自己脱離リンカーである場合に、L
2は結合であり;
ここで、L
2が第二の自壊性リンカーである場合に、L
1は結合であり;
L
3はペプチドリンカーであり;且つ
R
1は水素、未置換若しくは置換C
1−3アルキル、又は未置換若しくは置換ヘテロシクリルである]
の化合物又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体を提供する。
【実施例】
【0231】
以下の実施例は説明のために提供されるものであり、本発明を限定するために提供されるものではない。
【0232】
実施例1
物質及び方法
5F1抗体のヒト化
ヒト化5F1Ca.1(h5F1Ca.1)の可変領域を発生させるために、相補性決定領域(CDR)移植を使用した。簡潔には、組換えDNA技術により、マウス5F1可変領域のCDRをヒト可変領域のフレームワーク(受容体抗体)中に組み込んだ。非冗長のGenebankデータベース全体に対するBLASTP検索によってヒトフレームワーク受容体の選定を行った。ヒト抗体CAA79298(Genebank番号CAA79298)のVH(マウス5F1重鎖可変領域と67.8%同一であった)及びヒト抗体ABI74084(Genebank番号ABI74084)のVL(マウス5F1軽鎖可変領域と80.4%同一であった)を受容体抗体として使用した。受容体抗体のいくつかの残基をマウス対応残基に変異させ、可変領域の構造変化を妨げた。h5F1Ca.1重鎖及び軽鎖の最終アミノ酸配列を表1に示す。
【0233】
次いで、それぞれ重鎖及び軽鎖に関するNheI部位及びAvrII部位を介して、VH及びVL断片をpcDNA5−FRT−hIgG1κベクターに挿入した。h5F1Ca.1の重鎖及び軽鎖遺伝子の両方を含む、完全集合したプラスミドを使用して、h5F1Ca.1抗体を発現させた。
【0234】
リンカー−薬物の合成
化合物Tap−18Hの合成を以下のスキームに示す。中間体化合物M及びOの合成も以下のスキームに示す。
化合物TAP−18Hの合成
【0235】
化合物Tap−18Hの合成のスキームに関して、PCl
5か又はEDCIとIPr
2Etが入ったDMFか又は2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジンが入ったCH
2Cl
2及びN−メチルモルホリンをカップリング剤として使用して、市販の4−ニトロフェニルグリコール酸をN−メチルピペラジンで凝縮し、所望のケトンアミドを生成した。典型的な手順において、CH
2Cl
2(20ml)、N−メチルモルホリン(15mmol)に2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン(5mmol)が入った溶液を連続撹拌下で0-5℃で添加した。30−40分後、白色の懸濁液が形成され、この混合物に4−ニトロフェニルグリコール酸が入ったCH
2Cl
2(10ml)を添加し、透明な溶液の形成をもたらした。混合物を1時間撹拌した後、N−メチルピペラジン(5mmol)を室温で添加した。反応(TLC、10分間)の完了後、混合物を10%のNaHCO
3水溶液(2×10ml)、続いてH
2O(3×10ml)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去して粗生成物を得、これを再結晶化又はカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=8:2)により更に精製した。
【0236】
THF又はDIBAL−H又は水素化ホウ素ナトリウムの存在下、LiAlH
4の0.5当量でケトンアミド化合物を更に還元してニトロ化合物Cを生成した[B. P. Bandgar and S. S. Pandit, Tetrahedron Letters 44 (2003) 3855-3858]。
【0237】
SnCl
2での処理か又はメタノール中の触媒としてのPd/C(10%w/w)との接触水素化により、室温で約6−11時間、収率65−81%でニトロ化合物Cをアニリン化合物Iに還元した。それをRB04−50 Reactor Bを備えるMultiMaxIRシステムを使用した以下の手順を通じて得た。反応器を初めに35mlのメタノール、0.03mgの10% Pd/C及び0.0252モルのニトロ化合物Cで充填し、水素を6.3バールの気圧まで反応器中に添加した(H
2、const.)。
【0238】
化合物Mの合成のスキームに関して、Boc保護L−バリンをN−ヒドロキシスクシンイミドとEDAC−HClが入ったDCM又はN−ヒドロキシスクシンイミドとEDCが入ったDCMで処理し、スクシンイミドエステルを得た。この活性化エステルをL−シトルリン及びCH
3CN、H
2O、NaHCO
3と反応させ、Boc保護化合物Mを得た。
【0239】
化合物Tap−18Hの合成のスキームに関して、アニリン化合物Iを、DCC/HOBtが入ったDMFを用いて、室温で32時間Boc保護化合物Mとカップリングさせ、化合物N(収率78−82%)を得たか又は、PS−カルボジイミドとカップリングさせた(この反応において、2当量のPS−カルボジイミド及び1.7当量のHOBtが入ったDCMの存在下、1.5当量のアニリン化合物Iで100mgの化合物Mから出発させて、24時間、化合物Nの合成を行った)。LC/MSによる分析は、所望の質量を有するピーク及び50−60%の変換を示した。
【0240】
カップリングした生成物である化合物Nを4−ニトロフェニルクロロホルメートで、2,6−ルチジンが入ったDCMの存在下、室温で8時間反応させて炭酸塩化合物Pを得、LC/MSは所望の質量を有するピークを示した。
【0241】
HOAtとEt
3Nが入ったDMFの存在下のモノメチルドラスタチン10での炭酸塩化合物Pの処理は、化合物Qの形成をもたらした。
【0242】
化合物Oの合成のスキームに関して、βアラニンを無水マレイン酸が入ったDMFで処理し、そのように得た酸をDCCカップリング下、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)と反応させ、NHS−エステルを得た。市販のt−blc−N−アミド−dPEG4−酸中のBOC保護基をTFAでの処理により除去し、アミンのTFA塩を得、これを先で合成させたNHSエステルと反応させた。そのように得たカルボキシル酸を単離させ、EDCIを使用してN−ヒドロキシスクシンイミドとカップリングさせ、NHSエステル化合物Oを得た。
【0243】
化合物Tap−18Hの合成のスキームに関して、化合物Q中のBoc保護基をTFAで除去し、無水アセトニトリル及びNaHCO
3中、室温で12−36時間、遊離アミンをNHSエステル化合物Oとカップリングさせ、最終生成物Tap−18Hを収率35−45%で生成させた。
【0244】
図5はTap−18HのNMRスペクトルを示す。
【0245】
化合物TAP−18Hr1の合成
Tap−18Hr1を以下の式を用いて合成した。
図6はTap−18Hr1のNMRスペクトルを示す。
【0246】
化合物TAP−18Hr2の合成
Tap−18Hr2を以下の式を用いて合成した。
図7はTap−18Hr2のNMRスペクトルを示す。
【0247】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)の調製
h5F1Ca.1を伝統的な方法で調製した。DTT及びDTPAをSigma−Aldrich(St. Louis, MO)から入手した。TCEPをAcros(Morris Plains, NJ)から入手した。DTNBをThermo Scientific(Rockford, IL)から入手した。リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム及び塩化ナトリウムをJ.T.Baker(Center Valley, PA)から入手した。システインをAlfa Aesar(Ward Hill, MA)から入手した。
【0248】
約1.3当量のTCEPが入ったpH8の0.025M ホウ酸ナトリウム、0.025M NaCl、1mM DTPAで、h5F1Ca.1を37℃で2時間還元した。1.0mg/mL溶液に関して280nmで1.42の吸光度値を使用してタンパク質濃度を数値化し、150000g/molの分子量を使用してモル濃度を決定した。生成されたmAb−システインチオールの濃度をDTNBで滴定して決定した。1.3モル当量のTCEPを使用した場合、典型的には、約2.0から2.5チオール/mAbをもたらした。
【0249】
部分的に還元したh5F1Ca.1を1.2モルのマレイミドカプロイル−薬物/mAb−システインチオール又はマレイミド−薬物/mAb−システインチオールでアルキル化した。アルキル化反応を10℃で60分間実施した。システイン(1mM最終)を使用して未反応物の余剰マレイミドカプロイル−薬物又はマレイミド−薬物をクエンチした。ADCを初めに1Mの酢酸でpH5に調整し、HiTrap
TMSP FFカラム(GE Healthcare)を1mL/分の流速で適用した。カラムサイズは10mgのADC当たり1mLであった。カラムを先に5カラム容量の結合バッファー、15% DMSO pH5を含む25mMの酢酸ナトリウムで平衡化した。適用に続き、カラムを10カラム容量の結合バッファーで洗浄し、次いで溶出バッファー、25mMの酢酸ナトリウムpH5、0−15% DMSO、300mMのNaClで溶出した。精製したADCを4℃で一晩透析してリン酸緩衝生理食塩水に変化させた。
【0250】
細胞株
胃がん細胞SNU−16(BCRC、カタログ番号60212)、結腸直腸がん細胞COLO 205(ATCC、カタログ番号CCL−222)、DLD−1(ATCC、カタログ番号CCL−221)及びSW480(ATCC、カタログ番号CCL−228)を、10% FBS(GIBCO、カタログ番号26140)及び100U/mL ペニシリン/100μg/mL ストレプトマイシン(GIBCO、カタログ番号15140)が補充されたRPMI Medium 1640(GIBCO、カタログ番号22400)中で培養した。
【0251】
結腸直腸がん細胞株DLD−1(BCRC、カタログ番号60132)を、10% FBS、1mM ピルビン酸ナトリウム(GIBCO、カタログ番号11360)、及び100U/mLペニシリン/100μg/mLストレプトマイシンが補充されたRPMI Medium 1640中で培養した。
【0252】
膵臓がん細胞株PANC−1(BCRC、カタログ番号60284)を、10% FBS及び100U/mL ペニシリン/ 100μ/mL ストレプトマイシンが補充されたダルベッコ変法イーグル培地(GIBCO、カタログ番号11965)中で培養した。
【0253】
膵臓がん細胞Panc 02.03BをPanc 02.03(ATCC、カタログ番号CRL−2553)から適合し、15% FBS、100U/mLペニシリン/100μg/mLストレプトマイシン及び1mMピルビン酸ナトリウム(GIBCO、カタログ番号11360)が補充されたRPMI Medium 1640中でインスリンを伴わずに培養した。
【0254】
逆相HPLCによるADCの分析
変性及び還元条件下、25mM DTT、3M 塩酸グアニジンを伴って80℃で10分間加熱することにより、ADCを分析した。50μgの変性ADCをPLRP−Sカラム(2.1x150mm、8μm、1000A、Aligent(Santa Clara, CA))に適用した。流速は0.8mL/分であり、カラム温度は80℃であった。溶媒Aは0.05%トリフルオロ酢酸が入った水であり、溶媒Bは0.04%トリフルオロ酢酸が入ったアセトニトリルであった。該方法には以下が含まれた:アイソクラチック25% Bを3分間;50% Bへ25分間直線勾配;95% Bへ2分間直線勾配;25% Bへ1分間直線勾配;及びアイソクラチック25% Bを2分間。ピーク指定を非コンジュゲートh5F1Ca.1(L0及びH0)で行った。L1、H1、H2、及びH3をそれらの溶出時間、UVスペクトル(薬物ローディングによりA248/280比増加)及びSDS−PAGEプロファイル(軽鎖及び重鎖)により指定した。
【0255】
WST−1アッセイによるインビトロ細胞傷害性
がん細胞SNU−16、Panc 02.03B、COLO 205及びSW480をそれぞれ1x10
4、3x10
3、2x10
4及び1.2x10
4細胞/ウェルで96ウェルマイクロタイタープレート上に播種した。がん細胞DLD−1及びPANC−1を1x10
4細胞/ウェルで96ウェルマイクロタイタープレート上に播種した。h5F1Ca.1/Tap18H ADC、h5F1Ca.1/Tap18Hr1又は裸の抗体h5F1Ca.1を3μg/mL及び1μg/mLの最終濃度又は最終指示濃度で、最終容量200μL/ウェルで、3重に添加した。次いで、細胞を37℃、5% CO
2でインキュベートし、製造業者の指示に従い細胞増殖試薬WST−1(Roche(Nutley, NJ)、カタログ番号11644807001)により72時間又は96時間で細胞生存を検出した。簡潔には、インキュベーション終了後、100μLの培地を取り出し、10μL/ウェルのWST−1を試験細胞株に添加した。最適な発色後(未治療コントロールのOD
450≧1.00の場合)、450nmでの吸光度(OD
450値)を分光光度計(Molecular Devices(Sunnyvale, CA)、VERSAmaxマイクロプレートリーダー)により測定した。3重の平均を得、バックグラウンド(培地コントロール)を差し引いた。次いで、得られたOD
450値を使用して、以下の式:[OD
450溶媒−OD
450試料]/[OD
450溶媒]*100に従って、%阻害を計算した。溶媒は未治療コントロールを示す。
【0256】
がん異種移植モデルにおけるADC治療
皮下異種移植モデルを確立するために、5x10
6SNU−16細胞をC.B−17 SCIDマウス(Lasco、台北、台湾)の右わき腹に移植した。平均腫瘍体積が110−120mm
3に達したとき(第1日として記録)、ADC治療を開始した。h5F1Ca.1/Tap18H又はh5F1Ca.1/Tap18Hr1を100μL中1又は2mg/kgで静脈内に注射した。二垂直寸法中キャリパーで腫瘍体積を週に2回測定し、式(0.52**長さ**幅**幅)に従って計算した。
【0257】
結果
逆相HPLCによるADCの分析
還元及び変性逆相HPLCを使用して、異なる薬物を含む軽鎖及び重鎖を分離し、特徴づけた。この方法において、3M塩酸グアニジン及び余剰のDTTを用いたADCの80℃での前処理は、抗体を変性させ、鎖間及び鎖内ジスルフィドを切断し、0又は1の薬物を含む軽鎖(L0及びL1)及び0、1、2、3の薬物を含む重鎖(H0、H1、H2、H3)の分離を可能にする(
図1)。一般に、ドラスタチン−10はMMAEよりも疎水的である。しかしながら、ドラスタチン−10薬物を含む重鎖及び軽鎖は、L1、H1、H2、及びH3ピークにおいてモノメチルアウリスタチンE(MMAE)薬物よりも早く溶出することを示す。これは、ドラスタチン−10ベースの薬物中の余分なピペラジン基が分子の疎水性を低下させることを示す。ピペラジン基のこの特徴は、ドラスタチン−10の疎水性により、高い薬物負荷のADCの原因における凝集の可能性を低減し得る。
【0258】
図1は、ADCの逆相HPLC特性化を示す。
図1(A)は、h5F1Ca.1/Tap−18Hに関するクロマトグラムを示す。
図1(B)は、h5F1Ca.1/MMAEに関するクロマトグラムを示す。0又は1の薬物を有する軽鎖(L0及びL1)と0、1、2、3の薬物を有する重鎖(H0、H1、H2、H3)が示される。
【0259】
インビトロ細胞傷害性
h5F1Ca.1抗原陽性がん細胞株(SNU−16、COLO 205及びPanc02.03B)並びに抗原陰性細胞株(SW480)において、h5F1Ca.1/Tap18Hのインビトロ細胞傷害性を評価した。裸のh5F1Ca.1抗体による細胞傷害性も並行して試験した。表3に示すように、h5F1Ca.1単独では試験濃度(3及び1μg/mL)で細胞傷害性を誘導できなかったのに対し、h5F1Ca.1/Tap18Hはがん細胞株、SNU−16、COLO 205及びPanc02.03Bの成長を効率的に阻害した。抗原陰性細胞株SW480においては、毒性は観察されず、これはADCの消滅が特定の標的メカニズムを介していることを示していた。これらの結果は、ADCが抗原特異性を有する標的がん細胞に細胞傷害性薬物を送達したことを実証する。
【0260】
h5F1Ca.1/Tap18Hr1の細胞傷害性活性も別個の実験において評価した。同様に、h5F1Ca.1/Tap18Hr1により、結合陽性胃がん細胞株SNU−16中では効果的な阻害が誘導されたが、結合陰性結腸直腸がん細胞株SW480中では誘導されなかった(表4)。
【0261】
ADCのインビボ評価
ADC h5F1Ca.1/Tap18Hの効力を胃がん細胞SNU−16に対してインビボで評価した。接種した腫瘍サイズが120mm
3に達した場合(第1日として記録)、マウスをADC又はビヒクルの2mg/kgの単回投与で治療した。腫瘍が急速に成長し、第12日に400mm
3に匹敵したビヒクル群と比較して、h5F1Ca.1/Tap18H群は第5日に寛解を示し、平均腫瘍サイズは第12日に更に<20mm
3に抑えられた(
図2)。これらのマウスの体重は、治療群とビヒクル群の両方で不変のままであった。したがって、データは、h5F1Ca.1/Tap18HがSCIDマウスにおける抗原陽性腫瘍の成長を効率的に阻害し得ることを示す。
【0262】
図2は胃がんSNU−16に対するh5F1Ca.1/Tap18Hによるインビボ抗腫瘍活性のグラフを示す。
【0263】
ADC h5F1Ca.1/Tap18Hr1の効力を胃がん細胞SNU−16に対してインビボで評価した。接種した腫瘍サイズが100mm
3に達した場合(第1日として記録)、マウスをビヒクル又はADCの1mg/kgの週2回投与で治療した。
図3に示すように、h5F1Ca.1/Tap18Hr1の投与は腫瘍抗体を引き起こし、平均腫瘍サイズは<10mm
3に抑えられた。これらのマウスの体重は、治療群とビヒクル群の両方で不変のままであった。したがって、データは、h5F1Ca.1/Tap18Hr1がSCIDマウスにおける抗原陽性腫瘍の成長を効率的に阻害し得ることを示す。
【0264】
実施例2:腫瘍成長の阻害における抗体薬物コンジュゲート(ADC)に基づく抗TfR抗体の効果
抗体薬物コンジュゲート(ADC)の調製
マウス5D7−54.17の重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子を含む発現ベクター、pcDNA5−FRT−hIgG1でトランスフェクトされたFlp−In CHO細胞からキメラ5D7−54.17(c5D7)を生成した。次いで、c5D7抗体を細胞傷害性薬物モノメチルドラスタチン10にコンジュゲートさせ、そのインビボの抗腫瘍効果をピペラジン含有リンカーを介して評価した(構造は表5を参照のこと)。一例において、精製したc5D7を3.0当量のTCEP(又はトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)が入った0.025M ホウ酸ナトリウム pH8、0.025M NaCl、1mM DTPA(又はペンテト酸若しくはジエチレントリアミン5酢酸)を用いて37℃で2時間初めに還元した。1.0mg/mL溶液に関して280nmで1.346の吸光度値を使用してタンパク質濃度を数値化し、145194g/molの分子量を使用してモル濃度を決定した。生成したmAb−システインチオールの濃度をDTNB(又は5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸))で滴定して決定した。3.0モル当量のTCEPを使用した場合、典型的には、約4.0から4.5チオール/mAbを生成した。部分的に還元したc5D7を2.4モルのマレイミドカプロイル−モノメチルドラスタチン10/mAb−システインチオールでアルキル化した。アルキル化反応を10℃で30分間実施した。システイン(1mM最終)を使用して未反応物の余剰マレイミドカプロイル−モノメチルドラスタチン10薬物をクエンチした。得られたADCを4℃で一晩透析してリン酸緩衝生理食塩水に変化させた。
【0265】
Tap−18Hr1を以下の式を用いて合成した。
図6はTap−18Hr1のNMRスペクトルを示す。
表5:抗体−薬物コンジュゲートのリンカー−薬物部分
【0266】
出願人は、結合陽性結腸直腸がん細胞株DLD−1及び結合陰性膵臓細胞株PANC−1におけるc5D7/Tap18Hr1のインビボ細胞傷害性活性を更に調査した。上に提示されたデータと一致して、DLD−1細胞における効果的な成長阻害はc5D7/Tap18Hr1により誘導されたが、c5D7抗体単独では誘導されなかった(表6)。また、指示容量での結合陰性細胞株でも阻害は観察されなかった。まとめると、これらの結果は、出願人のADCが細胞傷害性薬物を特異的抗原を発現させる標的がん細胞のみに送達したことを実証する。
【0267】
がん異種移植モデルにおけるADC治療
皮下異種移植モデルを確立するために、5x10
6DLD−1結腸直腸がん細胞をC.B−17 SCIDマウス(Lasco、台北、台湾)の右わき腹に移植した。薬物−コンジュゲートしたc5D7 ADCを腫瘍接種後第1日及び第5日に3mg/kgで静脈内投与した。二垂直寸法中キャリパーで腫瘍体積を週に2回測定し、式(0.52×長さ×幅×幅)に従って計算した。
【0268】
結果
抗体薬物コンジュゲート(ADC)、c5D7/Tap18Hr1の調製にキメラ5D7−54.17抗体(c5D7)を使用した(ADCの作製方法に関しては上記を参照のこと)。c5D7/Tap18Hr1の抗腫瘍活性をDLD−1移植SCIDマウス上インビボで評価した。ビヒクル又はADC3mg/kgを用いた腫瘍接種後第1日及び第5日に治療を開始した。第14日に腫瘍が500mm
3に匹敵したビヒクル群と比較して、c5D7/Tap18Hr1は研究期間を通して腫瘍成長を完全に抑えた(
図4)。どちらの群のマウスの体重も治療後不変のままであった(平均25)。抗トランスフェリン受容体c5D7による細胞傷害性薬物のがん標的送達は、インビボ腫瘍成長を効果的に阻害することができた。
【0269】
参照文献
1.Carter, PJ and Senter, PD. Antibody-drug conjugates for cancer therapy. Cancer J. 2008; 14: 154-169.
2.Teicher, BA. Antibody-drug conjugate targets. Current cancer Drug Targets 2009, 9: 982-1004.
3.Ducry, L and Stump, B. Antibody-drug conjugates: linking cytotoxic payloads to monoclonal antibodies. Bioconjugate chem., 2010, 21: 5-13
4.Koblinski, JE., Ahram, M and Sloane, BF. Unraveling the role of proteases in cancer. Clin. Chem. Acta 2000; 291:113-135.