(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482496
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】紐の端末カバー
(51)【国際特許分類】
A44B 99/00 20100101AFI20190304BHJP
【FI】
A44B99/00 611N
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-100626(P2016-100626)
(22)【出願日】2016年5月19日
(65)【公開番号】特開2017-205345(P2017-205345A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2018年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100077241
【弁理士】
【氏名又は名称】桑原 稔
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋兵
【審査官】
木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−164007(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/004827(WO,A1)
【文献】
特開2012−130538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐の端末に取り付けられる端末カバーであって、
第一指掛け面を備えた指掛け突部と、第二指掛け面を備えた基部とを備えており、
前記第二指掛け面を、前記第一指掛け面を利用して前記紐に引っ張り力を作用させたときに、前記第一指掛け面を支点とした前記端末カバーの回転を抑止する位置に備えさせてなり、
前記紐の前記端末に対する係止部を備えたロック部材と、このロック部材が内部にはめ込まれると共に前記内部に前記係止部と協働して前記端末に前記端末カバーを固定させる係止面を備えたケース部材とを備えており、
前記ケース部材を、前記指掛け突部の一部となる突出部を有していると共に、前記突出部における前記第一指掛け面の形成側と反対の側に前記ロック部材のはめ込み開口を形成させ、かつ、前記第一指掛け面の形成側に前記紐の引き出し開口を形成させたものとしてなる、紐の端末カバー。
【請求項2】
前記第一指掛け面は仮想の第一平面に実質的に沿うように形成され、前記第二指掛け面は仮想の第二平面に実質的に沿うように形成されていると共に、
前記第一平面と前記第二平面とのなす劣角が鋭角となるようにしてなる、請求項1に記載の紐の端末カバー。
【請求項3】
前記第一指掛け面及び前記第二指掛け面を、いずれも、仮想の円の円弧に沿うように形成させてなる、請求項1又は請求項2に記載の紐の端末カバー。
【請求項4】
前記基部に、貫通孔を形成させてなる、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の紐の端末カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紐の端末カバーの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
紐の端部を収容する筒状のソケットと、このソケットにはめ込まれるプラグとからなり、二つの紐の端部間にプラグの脚部を介在した状態からプラグの脚部側をソケットにはめ込むことでプラグの脚部とソケットとの間で紐の端部を挟み付けて紐の端部に取り付けられる紐止め具がある(特許文献1参照)。
【0003】
かかる紐止め具は、紐を引っ張る操作を行うときに把持される引き手ともなる。しかるに、特許文献1のソケットは単純な扁平角筒状を呈しているに過ぎず、前記把持を容易とする格別の形状は施されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4528687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の紐の端末カバーを掴みやすく、また、掴んだ状態で紐に十分な引っ張り力を作用させることができるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、紐の端末カバーを、紐の端末に取り付けられる端末カバーであって、
第一指掛け面を備えた指掛け突部と、第二指掛け面を備えた基部とを備えており、
前記第二指掛け面を、前記第一指掛け面を利用して前記紐に引っ張り力を作用させたときに、前記第一指掛け面を支点とした前記端末カバーの回転を抑止する位置に備えさせてなる、ものとした。
【0007】
前記第一指掛け面と前記第二指掛け面とによって、端末カバーは掴みやすく、また、掴んだ状態で紐に十分な引っ張り力を作用させることができる。例えば、手袋をした状態でもグリップ性高く端末カバーを掴むことができ、また、その状態で紐に十分な引っ張り力を作用させることができる。
【0008】
前記第一指掛け面は仮想の第一平面に実質的に沿うように形成され、前記第二指掛け面は仮想の第二平面に実質的に沿うように形成されていると共に、
前記第一平面と前記第二平面とのなす劣角が鋭角となるようにしておくことが、この発明の好ましい態様の一つとされる。
【0009】
前記第一指掛け面及び前記第二指掛け面を、いずれも、仮想の円の円弧に沿うように形成させてておくことが、この発明の好ましい態様の一つとされる。
【0010】
また、前記端末カバーは、前記紐の前記端末に対する係止部を備えたロック部材と、このロック部材が内部にはめ込まれると共に前記内部に前記係止部と協働して前記端末に前記端末カバーを固定させる係止面を備えたケース部材とを備えてなるものとすることが、この発明の好ましい態様の一つとされる。
【0011】
また、前記ケース部材を、前記指掛け突部の一部となる突出部を有していると共に、前記突出部における前記第一指掛け面の形成側と反対の側に前記ロック部材のはめ込み開口を形成させ
、かつ、前記第一指掛け面の形成側に前記紐の引き出し開口を形成させたものとすることが、この発明の好ましい態様の一つとされる。
【0012】
また、前記基部に、貫通孔を形成させてなるものとすることが、この発明の好ましい態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、紐の端末カバーを掴みやすく、とりわけ手袋をした状態や、握力の低下した状態でも掴みやすく、また、掴んだ状態で紐に十分な引っ張り力を作用可能なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、この発明の一実施の形態にかかる紐の端末カバーの分離斜視図である。
【
図2】
図2は、前記端末カバーの分離正面図である。
【
図3】
図3は、前記端末カバーの分離背面図である。
【
図4】
図4は、前記端末カバーの使用状態を示した正面図である。
【
図9】
図8は、前記端末カバーの側面図であり、
図8の右側からこれを見て示している。
【
図10】
図10は、前記端末カバーを構成するケース部材の側面図である。
【
図12】
図12は、前記端末カバーを構成するロック部材ケース部材の側の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1〜
図14に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる紐Sの端末カバーCは、紐Sの端末Saを内部に納めてこの端末Saに取り付けられるものである。かかる紐Sは、このように端末カバーCが取り付け可能なものであれば、その形状(丸紐S、平紐Sなど)、材質や構造(編み紐S、ゴム紐S、合成樹脂製の紐Sなど)は問われない。かかる端末カバーCは、各種の物品に備えられる紐Sの端末Saの意匠性を向上させる。また、かかる端末カバーCは、前記紐Sの端末Saのほどけを防ぐ。また、かかる端末カバーCは、前記紐Sを引っ張る操作などを行いやすくする。
【0016】
前記端末カバーCは、第一指掛け面5を備えた指掛け突部1と、第二指掛け面6を備えた基部2とを備えている。
【0017】
前記第二指掛け面6は、前記第一指掛け面5を利用して前記紐Sに引っ張り力(
図5における符号fの向きの力)を作用させたときに、前記第一指掛け面5を支点とした前記端末カバーCの回転(
図5における符号rの向きの回転)を抑止する位置に備えられている。
【0018】
図示の例では、
図5における左側に位置される第一指掛け面5に右手又は左手の手指の一つ、例えば親指を掛け、
図5における上側に位置される第二指掛け面6に右手又は左手の手指の他の一つ、例えば人差し指をあてがい、
図5における右側に端末カバーCを介して紐Sを引っ張る操作が可能とされる。
【0019】
前記第一指掛け面5と前記第二指掛け面6とによって、端末カバーCは掴みやすく、また、掴んだ状態で紐Sに十分な引っ張り力を作用させることができる。例えば、手袋をした状態でもグリップ性高く端末カバーCを掴むことができ、また、その状態で紐Sに十分な引っ張り力を作用させることができる。
【0020】
前記第一指掛け面5は仮想の第一平面m1(
図5参照)に実質的に沿うように形成され、前記第二指掛け面6は仮想の第二平面m2(
図5参照)に実質的に沿うように形成されている。それと共に、前記第一平面m1と前記第二平面m2とのなす劣角θ(
図5参照)は鋭角となるようになっている。
【0021】
これにより、前記紐Sに引っ張り力を作用させたときにの前記端末カバーCの回転を効果的に抑止するようになっている。
【0022】
また、前記第一指掛け面5及び前記第二指掛け面6は、いずれも、仮想の円の円弧に沿うように形成されている。具体的には、前記第一指掛け面5及び前記第二指掛け面6はいずれも、前記劣角側を湾曲外側とするように緩やかに湾曲した面となっている。
【0023】
これにより、前記第一指掛け面5及び前記第二指掛け面6には指をあてがいやすく、グリップ性高く端末カバーCを掴むことができるようになっている。
【0024】
図示の例では、端末カバーCは、ロック部材3と、ケース部材4とから構成されている。
【0025】
前記ケース部材4は、前記指掛け突部1の一部となる突出部22を有している。また、前記基部2は前記ケース部材4に備えられている。
【0026】
図示の例では、ケース部材4の基部2は、長さと幅とを備え、正面視の状態において実質的に四角形状を呈している。基部2の二箇所の幅側辺部7、7のうちの一方は他方より長く、基部2は
図6における右側から左側に近づくに連れて幅を漸減させるように構成されている。
【0027】
基部2の長さ方向中程の位置と、長い幅側辺部7(
図6の右側)との間には、貫通孔8が形成されている。貫通孔8は、基部2の外郭形状に倣った孔内形状を備えている。基部2の長さ方向に沿う向きでの貫通孔8の長さは、基部2の一面側9(第二指掛け面6の形成側)で大きく、基部2の他面側10で小さくなっており、これにより、基部2の長さ方向中程の位置にある貫通孔8の孔内壁8aは、基部2の他面側10に向かうに連れて貫通孔8の長さを減ずる傾斜面となっている。これにより、この実施の形態にあっては、かかる貫通孔8に紐Sなどを通すことにより、端末カバーCを介して端末カバーCの取り付けられた紐Sと、前記貫通孔8に通された紐Sなどとを連結できるようになっている。
【0028】
基部2の短い幅側辺部7(
図6の左側)には、前記第一指掛け面5に対して実質的に直交する厚さ側端面11が形成されている。この厚さ側端面11と貫通孔8との間には、基部2の他面側10において、前記突出部22が形成されている。前記突出部22は、頂部22aに近づくに連れて基部2の長さ方向に沿う向きでの厚さを減ずる山状に形成されており、前記厚さ側端面11に続く前記第一指掛け面5と、この第一指掛け面5の反対の側に位置される面22bとをいずれも傾斜させている。すなわち、前記突出部22は、前記基部2の幅方向に沿った長さを持った頂部22aと、前記第一指掛け面5と、前記反対の側に位置される面22bと、両面間5、22bに位置される突出部22の厚さとなる面22c(基部2の長さ方向に沿った基部2の側面の一部)とを備えている。
【0029】
前記基部2における、前記貫通孔8と前記突出部22の頂部22aとの間には、前記ロック部材3のはめ込み開口12が形成されている。また、前記基部2の厚さ側端面11には、紐Sの引き出し孔13が形成されている。
【0030】
前記基部2の内部には、前記傾斜面となっている貫通孔8の孔内壁8aを構成する部分、前記基部2の一面側9を構成する部分、前記突出部22の前記第一指掛け面5を構成する部分、前記突出部22の厚さとなる面22cを構成する部分によって囲繞された前記ロック部材3のはめ込み空間14が形成されている。
【0031】
一方、前記ロック部材3は、前記紐Sの前記端末Saに対する係止部16を備えている。
【0032】
図示の例では、ロック部材3は、基板部17と、この基板部17との間に紐Sの端末Saを納める間隔を開けて配される挟持板部18と、基板部17と挟持板部18とを連接する連接部19とを備えている。連接部19はその両側にそれぞれ、紐Sの端末Saを収容できるように前記基板部17と挟持板部18とを連接しており、基板部17及び挟持板部18の互いに向き合う内面のいずれにも直交する壁状を呈している。
【0033】
前記係止部16は、前記連接部19から突き出す爪状を呈している。前記係止部16は、前記連接部19の両側にそれぞれ形成されている。係止部16は、ロック部材3における収容される紐Sの引き出し側となる
図12の左側に形成されている。係止部16の形成側と反対の側となる
図12の右側には、基板部17の内面から立ち上がる立ち上がり部20が形成されている。
【0034】
ロック部材3は、前記挟持板部18の外面を前記基部2の一面側9を構成する部分の内面に接しさせる向きで、
図12における左側から前記はめ込み開口12を通じて前記はめ込み空間14内にはめ込むことができるようになっている。このはめ込み状態において、前記基板部17の外面によって前記はめ込み開口12が塞がれるようになっている。また、このはめ込み状態は、基部2の前記傾斜面となっている貫通孔8の孔内壁8aを構成する部分に形成された係合孔23に前記基板部17の前記立ち上がり部20の外面に形成された係合突部21がはめ込み終了位置でケース部材4及びロック部材3の双方又はいずれか一方の弾性復帰によって納まることにより、維持されるようになっている。
【0035】
前記ケース部材4の内部としての前記はめ込み空間14には、前記係止部16と協働して前記端末に前記端末カバーCを固定させる係止面15が形成されている。図示の例では、かかる係止面15は、前記突出部22の厚さとなる面22cを構成する部分の内面によって構成されている。
【0036】
ロック部材3の連接部19の両側にそれぞれ紐Sの端末Saを収容すると共に、ロック部材3から引き出される紐Sをケース部材4のはめ込み開口12を通じて引き出し孔13から引き出した状態(
図1〜
図3)から、ロック部材3をはめ込み空間14に前記のようにはめ込むと、前記係止面15と前記係止部16との間で紐Sが締め付けられ、紐Sに前記係止部16が食い込むようになっている(
図4)。これにより、前記紐Sの前記端末Saに前記端末カバーCが固定される。
【0037】
前記ケース部材4及び前記ロック部材3の双方又はいずれか一方をプラスチックの成形品とすることで、これらの双方又はいずれか一方に所要の弾性変形特性を適切に備えさせることができる。
【0038】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施形態を含むものである。
【符号の説明】
【0039】
S 紐
Sa 端末
C 端末カバー
1 指掛け突部
2 基部
5 第一指掛け面
6 第二指掛け面