特許第6482499号(P6482499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482499
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】圃場溝掘機
(51)【国際特許分類】
   A01B 13/00 20060101AFI20190304BHJP
   A01B 35/00 20060101ALI20190304BHJP
   E02F 5/02 20060101ALI20190304BHJP
   A01B 29/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   A01B13/00
   A01B35/00 Z
   E02F5/02 A
   A01B29/00
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-112959(P2016-112959)
(22)【出願日】2016年6月6日
(65)【公開番号】特開2017-216918(P2017-216918A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2018年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】395008849
【氏名又は名称】株式会社富士トレーラー製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092691
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 勇治
(74)【代理人】
【識別番号】100199543
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】皆川 功
(72)【発明者】
【氏名】皆川 俊男
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 貴行
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅文
【審査官】 後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−116157(JP,A)
【文献】 特開2000−139107(JP,A)
【文献】 特開2014−223032(JP,A)
【文献】 特開平05−161403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 3/00−25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に連結機構により機枠を連結し、該機枠に圃場土を掬い取って側方に排出して圃場面に掘取溝を形成可能なすき部材を設けてなり、上記圃場土を圧潰可能な圧潰部材を上下揺動自在に設け、上記すき部材の掘り取りによる既存の掘取溝との交差部分に生ずる閉塞土、あるいは、すき部材により掘り取られて側方に排出された掘取土の既存の掘取溝内への落ち込みにより生ずる既存の掘取溝内の閉塞土としての上記掘取溝の進行形成に起因して既存の掘取溝内に生起される閉塞土を該圧潰部材により圧潰する圧潰構造を備えてなることを特徴とする圃場溝掘機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば水田等の圃場に水はけ排水用の掘取溝を形成する圃場溝掘機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の圃場溝掘機として、走行機体に連結機構により機枠を連結し、機枠に圃場面に溝切り可能な溝切体を設け、機枠に溝切体の進行方向前方位置の圃場面に散在する藁屑等の圃場散在物を側方に排出可能な前処理部材を回転自在に設け、かつ、機枠に溝切体の進行方向後方位置の圃場土を掬い取って側方に排出して圃場面に掘取溝を形成可能なすき部材を設け、更に、機枠にすき部材により掘り取られた掘取溝の左右の両上角縁部を形成する圃場上縁面及び溝内側面に摺接可能な安定部材を設けた構造のものが知られている。
【0003】
しかして、走行機体により機枠を走行進行すると、溝切体は回転しつつ進行して圃場面に条溝が溝切りされ、溝切体の進行方向前方の圃場面に散在する藁屑等の圃場散在物は前処理部材の回転により側方に排出され、溝切体により溝切りされた土壌はその後方のすき部材により掘り取られて側方に排出され、圃場に掘取溝が掘り取られ、すき部材により掘り取られた掘取溝の左右の両上角縁部を形成する圃場上縁面及び溝内側面に安定部材が摺接し、これにより、圃場面に連続的に掘取溝が形成されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3479781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来構造の場合、既存の掘取溝に交差して掘取溝を進行形成するに際し、すき部材の掬い取り動作及び側方排出動作により交差する既存の掘取溝内に圃場土が堆積され、これら堆積土が掘取溝の流路を塞ぐ障壁となる閉塞土として作用し、しかして、上記掘取溝の進行形成に起因して既存の掘取溝内に閉塞土が生起され、閉塞土が既存の掘取溝の流路を塞ぐ障壁となり、掘取溝の水路機能を低下させることがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、請求項1記載の発明は、走行機体に連結機構により機枠を連結し、該機枠に圃場土を掬い取って側方に排出して圃場面に掘取溝を形成可能なすき部材を設けてなり、上記圃場土を圧潰可能な圧潰部材を上下揺動自在に設け、上記すき部材の掘り取りによる既存の掘取溝との交差部分に生ずる閉塞土、あるいは、すき部材により掘り取られて側方に排出された掘取土の既存の掘取溝内への落ち込みにより生ずる既存の掘取溝内の閉塞土としての上記掘取溝の進行形成に起因して既存の掘取溝内に生起される閉塞土を該圧潰部材により圧潰する圧潰構造を備えてなることを特徴とする圃場溝掘機にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述の如く、請求項1記載の発明にあっては、走行機体により機枠を走行させることになり、圃場面の土壌はすき部材により掘り取られて側方に排出され、圃場面に溝掘り作業を行うことができ、かつ、上記圃場土を圧潰可能な圧潰部材を上下揺動自在に設け、上記すき部材の掘り取りによる既存の掘取溝との交差部分に生ずる閉塞土、あるいは、すき部材により掘り取られて側方に排出された掘取土の既存の掘取溝内への落ち込みにより生ずる既存の掘取溝内の閉塞土としての上記掘取溝の進行形成に起因して既存の掘取溝内に生起される閉塞土を圧潰部材により圧潰する圧潰構造を備えてなるから、圧潰部材は上記既存の掘取溝内への下降揺動動作及び上記圃場面への乗り上がり上昇揺動動作を繰り返し、この圧潰部材の既存の掘取溝内への下降揺動動作により圧潰部材は既存の掘取溝の流路を塞ぐ障壁としての閉塞土を圧潰して掘取溝の流路を確保することができ、水はけ排水性を妨げることがなくなり、掘取溝の排水機能を確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態例の全体側面図である。
図2】本発明の実施の形態例の拡大側断面図である。
図3】本発明の実施の形態例の部分平面図である。
図4】本発明の実施の形態例の部分縦断面図である。
図5】本発明の実施の形態例の部分側断面図である。
図6】本発明の実施の形態例の部分縦断面図である。
図7】本発明の実施の形態例の部分斜視図ある。
図8】本発明の実施の形態例の説明部分後縦断面図である。
図9】本発明の実施の形態例の説明部分後縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1乃至図9は本発明の実施の形態例を示し、図1図2の如く、1は走行機体、この場合、トラクタであって、走行機体1の後部には連結機構2により機枠3が連結され、連結機構2は左右の下部リンク4、上部リンク5、油圧アーム6及び吊上リンク7から構成され、油圧アーム6の揺動により機枠3を上下揺動自在に設けている。
【0010】
8・8は一対の溝切体であって、図2の如く、外周部に数個の刃部8aを切欠して有し、前記機枠3に支持部材3aを前下り状に固定垂設し、支持部材3aの下端部に対向一対の取付片3b・3bを形成し、取付片3b・3b間に車筒9を取付け、車筒9に車軸10を回転自在に軸受し、車軸10の左右両端部に溝切体8・8を所定間隔を置いて取付けて構成している。
【0011】
11はすき部材であって、この場合、図2図3の如く、すき部材11の先端部は前記溝切体8・8間の幅と略同幅の先細掘取部11aに形成されると共に後部は掘取土Dを側方に排出するようにひねった排出部11bに形成されている。
【0012】
この場合、図2図3の如く、前記機枠3の上記支持部材3aの下部の取付片3b・3b間にU状の取付アーム12の先端部を支持軸13により枢着し、機枠3の上部にピン14によりナット体15を枢着してナット体15をピン14を中心として上下揺動自在に設け、ナット体15に螺杆16を螺着し、螺杆16にハンドル17を螺着してハンドル17の正逆回動により螺杆16を上下移動自在に設け、取付アーム12の中程部に螺杆16の下端部をピン18により枢着し、取付アーム12にすき部材11をボルト19により取付け、しかして、ハンドル17の正逆回動により取付アーム12は支持軸13を中心として上下揺動してすき部材11を上下調節自在に設けて構成している。
【0013】
20は前処理部材であって、この場合、図2図3図4の如く、取付軸20a、取付円盤20b及び取付円盤20bに放射状に複数個の排出部材20cをボルト20dにより取り付けてなり、駆動機構21により回転駆動され、この場合、機枠3に入力軸21a及び出力軸21bを軸受21c・21cにより回転自在に横設し、入力軸21a及び出力軸21bとの間に歯車機構21dを介装し、走行機体1たるトラクタの動力取出軸1aと入力軸21aとを自在継手21eにより連結し、出力軸21bと取付軸20aとを直結し、取付軸20aに取付円盤20bを取付け、機枠3にカバー部材20eを取り付け、しかして、動力取出軸1aの回転により前処理部材20を回転して溝切体8・8の進行方向前方位置の圃場面aに散在する藁屑等の圃場散在物Eを側方に排出するように構成している。
【0014】
22は安定部材であって、この場合、図5図6の如く、上記すき部材11により掘り取られた掘取溝Wの左右の両上角縁部を形成する左右の圃場上縁面W・W及び左右の溝内側面W・Wに摺接可能に形成されている。
【0015】
この場合、図5図6の如く、上記安定部材22には、上記掘取溝Wの左右の両上角縁部を形成する左右の圃場上縁面W・Wに摺接可能な上当接板面22a・22a、左右の溝内側面W・Wに摺接可能な側当接板面22b・22b及び左右の側当接板面22b・22b間に接続板面22cが形成され、上当接板面22a・22a及び接続板面22cの前縁部は反り上がり面に形成され、上記取付アーム12の後面に支持片23を突設し、安定部材22に連結片24を形成し、支持片23と連結片24とを連結ピン25により連結し、これにより安定部材22を取付アーム12に若干揺動自在に取り付けている。
【0016】
26は圧潰部材であって、この場合、図3図5図6の如く、円筒ロール状の圧潰ロール部26a及びロール軸部26bからなり、上記安定部材22の連結ピン25に左右一対のL状の板材からなる支持アーム27を枢着し、支持アーム27の基端部に二股状の支持枠部27aを形成し、支持枠部27aに円筒ロール状の圧潰部材26のロール軸部26bを回転自在に枢着し、圧潰部材26を連結ピン25を中心として上下揺動自在に設けて構成している。
【0017】
しかして、図7の如く、掘取溝Wを進行形成するに際し、圧潰部材26の圧潰ロール部26aは圃場面aを転動走行し、既存の掘取溝WKに交差して既存の掘取溝WKに位置すると圧潰部材26は連結ピン25を中心として下降揺動し、すき部材11の掘り取りによる既存の掘取溝WKとの交差部分に生ずる閉塞土DH、あるいは、すき部材11により掘り取られて側方に排出された掘取土Dの既存の掘取溝WK内への落ち込みにより生ずる既存の掘取溝WK内の閉塞土DH、すなわち、上記掘取溝Wの進行形成に起因して既存の掘取溝WK内に生起される閉塞土DHは、図7図8図9の如く、連結ピン25を中心とする圧潰部材26の下降揺動により圧潰部材26により圧潰されることになり、既存の掘取溝WKを通過すると圧潰部材26は連結ピン25を中心として上昇揺動し、圧潰部材26の圧潰ロール部26aは圃場面aに乗り上がって転動走行することになり、この圧潰部材26の下降揺動により圧潰部材26は閉塞土DHを圧潰し、既存の掘取溝WKの流路を塞ぐ障壁としての閉塞土DHの圧潰により流路を確保することができ、掘取溝W・WKの水路機能を維持することができる。
【0018】
28・29は重錘であって、図1図2図3の如く、前記機枠3の左右両側に吊下枠3cを形成し、吊下枠3cに重錘28を着脱自在に搭載し、又、上記支持アーム27に重錘29を着脱自在に吊下し、重錘28の自重によりすき部材11の溝掘抵抗による機枠3の浮上を抑制し、又、上記圧潰部材26及び重錘29の自重により圧潰部材26による閉塞土DHの圧潰を確実に行うことができ、掘取溝W・WKの水路機能を確実に維持するように構成している。
【0019】
この実施の形態例は上記構成であるから、図1図2の如く、連結機構2により機枠3を下降動作Sし、溝切体8・8の下部及びすき部材11の下部を圃場面a内に穿入し、走行機体1により機枠3を走行させることになり、溝切体8・8の進行方向前方位置の圃場面aに散在する藁屑、株等の圃場散在物Eは前処理部材20により側方に排出され、それだけ、溝切体8・8の溝切抵抗及びすき部材11の溝掘抵抗を軽減することができ、溝切体8・8は連れ回り回転しつつ進行して圃場面aに二条の条溝Rを切り、この場合、刃部8a・8aにより溝切抵抗が軽減され、この二条に溝切りされた間の土壌はその後方のすき部材11により掘り取られて側方に排出され、安定部材22はすき部材11により掘り取られた上記掘取溝Wの左右の両上角縁部を形成する圃場上縁面W・W及び溝内側面W・Wに摺接し、安定部材22によりすき部材11の高低を安定なものとすることができ、圃場土の状態によりすき部材11が過大に圃場泥土を掬い取って牽引力が増加することを抑制でき、掘取溝Wの深さを略一定に保つことができ、掘取溝Wの溝掘作業を円滑に行うことができる。
【0020】
この場合、図5図6の如く、上記安定部材22には、上記掘取溝Wの左右の両上角縁部を形成する左右の圃場上縁面W・Wに摺接可能な上当接板面22a・22a、左右の溝内側面W・Wに摺接可能な側当接板面22b・22b及び左右の側当接板面22b・22b間に接続板面22cが形成され、上当接板面22a・22a及び接続板面22cの前縁部は反り上がり面に形成されているから、上当接板面22a・22aによりすき部材11の高低を安定なものとすることができ、かつ、安定部材22の側当接板面22b・22bによりすき部材11及び溝切体8・8の横振れを抑えることができ、溝掘り作業を良好に行うことができる。
【0021】
又、この際、図5図6の如く、上記安定部材22に上記圃場土を圧潰可能な圧潰部材26を上下揺動自在に設け、上記すき部材11の掘り取りによる既存の掘取溝WKとの交差部分に生ずる閉塞土DH、あるいは、すき部材11により掘り取られて側方に排出された掘取土Dの既存の掘取溝WK内への落ち込みにより生ずる既存の掘取溝WK内の閉塞土DHとしての上記掘取溝Wの進行形成に起因して既存の掘取溝WK内に生起される閉塞土DHを圧潰部材26及び重錘29の自重による圧潰構造を備えてなるから、圧潰部材26は上記既存の掘取溝WK内への下降揺動動作及び上記圃場面aへの乗り上がり上昇揺動動作を繰り返し、この圧潰部材26の既存の掘取溝WK内への下降揺動動作により圧潰部材26は既存の掘取溝WKの流路を塞ぐ障壁としての閉塞土DHを圧潰して掘取溝W・WKの流路を確保することができ、水はけ排水性を妨げることがなくなり、掘取溝W・WKの排水機能を確実に保持することができる。
【0022】
尚、上記実施の形態例では、溝切体8・8を二枚一対の溝切体としているが、溝切体8・8をなた刃状の溝切刃としたり、一方の溝切体だけとすることもあると共に溝切体を強制回転させる構造とすることもあり、又、上記実施の形態例では一対の溝切体8・8及びすき部材11を一組配置しているが二組以上とすることもあり、又、安定部材22の構造等は適宜変更して設計されるものである。
【0023】
又、上記実施の形態例においては、上記圧潰部材26及び重錘29の自重により閉塞土DHを圧潰する構造としているが、バネ機構により圧潰する構造を採用することもある。
【0024】
以上の如く、所期の目的を充分達成することができる。
【符号の説明】
【0025】
a 圃場面
W 掘取溝
WK 既存の掘取溝
DH 掘取土
D 閉塞土
1 走行機体
2 連結機構
3 機枠
11 すき部材
26 圧潰部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9