(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本実施形態に係る漏水検知システム10を例示する。漏水検知システム10は、漏水検知器12、漏水検知帯14
n(n=1、2、3・・・k+1)、遮断器16
k(k=1、2、3・・・)、電源18、ブザー20、ランプ22、及びコントローラ24を備える。
【0014】
漏水検知器12、ブザー20、ランプ22、及びコントローラ24は内部バス26によって接続される。これらの機器はBA(Building Automation)に対応可能とするために、通信プロトコルであるBACnet(Building Automation and Control Network)に準拠するものであってよい。
【0015】
コントローラ24は、例えばPLC(プログラマブルロジックコントローラ)であってよく、ブザー20、ランプ22、漏水検知器12をはじめ、内部バス26に接続された種々の機器を制御可能となっている。
【0016】
コントローラ24は、メモリ28、ユーザインターフェース30(UI)、CPU32及び外部インターフェース34を備える。
【0017】
メモリ28はROM、RAM、ハードディスクドライブ(HDD)等の不揮発性及び揮発性メモリを含んで構成される。メモリ28には、後述する漏水発生箇所が記憶される。CPU32は、メモリ28に記憶された漏水発生箇所を中央監視装置に送信する他、ブザー20に対して警告音の出力指令を出力し、またランプ22に点灯指令を出力する。ユーザインターフェース30は、ユーザの情報を入力する際に用いられ、また情報を表示する際にも用いられる。外部インターフェース34は外部機器との接続やデータ通信に用いられる。
【0018】
ブザー20はコントローラ24の出力指令を受けて警告音を出力する。後述するように、漏水検知器12が漏水の発生を検知した際には、漏水検知器12からコントローラ24に警告信号(漏水発生信号)が送信され、これを受けてコントローラ24からブザー20に出力指令が送られる。
【0019】
同様にして、ランプ22はいわゆる警告ランプであり、コントローラ24の点灯指令を受けて点灯する。後述するように、漏水検知器12が漏水の発生を検知した際には、漏水検知器12からコントローラ24に警告信号が送信され、これを受けてコントローラ24からランプ22に点灯指令が送られる。
【0020】
漏水検知帯14は、少なくとも2つの導電線が非導通の状態で延設されることで構成される。
図1では便宜上、導電線を2本のみ並行して延設させているが、この形態に限らない。例えば3本以上の導電線を撚り合わせた撚線状としてもよい。これら複数の導電線は、例えば吸水性の絶縁被覆で覆われている。これら導電線はいずれも、一端が漏水検知器12に接続され、他端は開放される。漏水検知帯14周辺で漏水が発生すると、その液体が絶縁被覆に吸水され、吸水された液体を介して導電線同士が導通する。
【0021】
なお、本実施形態では、漏水検知帯14は遮断器16
kによって複数の領域14
n(n=1、2、3、・・・k+1)に分割されている。このような構成を備えることで、後述するように、漏水箇所をこの分割領域単位で特定することができる。ここで、
図1では説明の便宜上、漏水検知器12から漏水検知帯14の長手方向に沿って遠いほど若い番号が振られている。
【0022】
遮断器16は、漏水検知帯14の長手方向に間隔を置いて、当該漏水検知帯14に介在する。例えば、遮断器16
kは、漏水検知帯14
k+1と14
kとの間に介在する。遮断器16の配置間隔は、例えば空調システムの冷媒管に漏水検知帯14を設置するときには、冷媒管が敷設される天井のパネルを開いたときに、作業者が目視できる範囲を、隣り合う遮断器16の配置間隔としてもよい。
【0023】
遮断器16は、例えばバイメタル36を含んで構成される。バイメタル36は、漏水検知帯14の並行する複数の導電線のうち、少なくとも一つに接続されていればよい。コスト抑制の観点から、漏水検知帯14の複数の導電線のうち、一つのみにバイメタル36を接続させることが好適である。
【0024】
なお、
図1に例示する遮断器16はいわゆるボックス型であり、既存の漏水検知帯14への設置が容易になっている。すなわち、漏水検知帯14の導電線の束を任意の箇所で切断し、一つの導電線(切断前は一本の導電線であった一組)にバイメタル36を接続する。他の導電線には渡り線等の接続配線部材を接続させる。
【0025】
また、遮断器16は、漏水検知帯14の長手方向に沿った、漏水検知器12との離間距離が長いほど、その定格電流が低くなるように設定されている。すなわち
図1の例では、各遮断器16
kの定格電流Ir
kは、Ir
1 < Ir
2 <Ir
3となる。このように構成することで、後述する漏水箇所特定処理において、漏水検知帯14に供給する電流値を上げていくと、漏水検知器12から遠い(漏水検知帯14の長手方向に沿って遠い)遮断器16から順に遮断することになる。
【0026】
漏水検知器12は、内部バス26に接続され、コントローラ24との通信が可能となっている。漏水検知器12は、メモリ38、ユーザインターフェース40(UI)、CPU42、外部インターフェース44、及び電流センサ46を備える。
【0027】
メモリ38はROM、RAM、ハードディスクドライブ(HDD)等の不揮発性及び揮発性メモリを含んで構成される。メモリ38には、漏水検知帯14が開放回路を形成しているときの電流センサ46の値、つまり平常値(例えば0A)と、短絡回路を形成したときの電流センサ46の値、つまり漏水発生判定を行う閾値I
th(例えば数μA)が記憶されている。また、メモリ38には、後述する漏水箇所特定処理を実行するためのプログラム等が記憶されている。
【0028】
CPU42は上述する漏水箇所特定処理を実行する他、電流センサ46の測定値とメモリ38に記憶された閾値とを比較して、漏水の発生有無を判定する。ユーザインターフェース40は、ユーザが情報を入力する際に用いられ、また情報を表示する際にも用いられる。外部インターフェース44は外部機器との接続やデータ通信に用いられる。
【0029】
<漏水検知>
図2を用いて、漏水検知器12による、漏水検知(漏水発生の有無検知)処理を説明する。漏水検知器12は、電源18から漏水検知帯14の少なくとも一つの導電線に対して常時電流を供給する(モニタリング電流I
0)。漏水が発生していないときには、導電線同士は絶縁被覆され互いに非導通なので、供給電流が直流電流の場合、電流センサ46の測定値は理論上0Aとなる。
【0030】
図2のように漏水検知帯14の任意の箇所にて漏水48が発生すると、導電線を覆う絶縁被覆がこの液体を吸水してその結果導電線同士が短絡する。これにより、
図2の破線で示すような短絡回路Lが形成される。短絡回路の形成により、電流センサ46の測定値は閾値I
th以上となる。漏水検知器12は、電流センサ46の測定値が平常値(0A)から閾値I
th以上に切り替わったことを検知すると、漏水が発生したと判定(検知)する。当該判定に基づいて、漏水検知器12は警報信号を出力する。当該警報信号はコントローラ24に送信される。コントローラ24では、警報信号を受けて、ブザー20に出力指令を送信し、ランプ22に点灯指令を送信する。
【0031】
<漏水発生箇所の特定>
漏水発生判定に続き、漏水検知器12は、漏水箇所を特定する。
図3には、漏水箇所特定処理のフローチャートが例示されている。短絡、すなわち漏水の発生が検知されると、漏水検知器12は、
図4に示すように、モニタリング電流I
0から、漏水検知帯14に供給する電流を段階的に増加させる。具体的には、漏水検知器12は、モニタリング電流I
0から、遮断器16
1の定格電流Ir
1を超過し、かつ遮断器16
2の定格電流Ir
2以下となる電流I
1(Ir
1 < I
1 ≦Ir
2)に、供給電流を嵩上げする(S10)。
【0032】
このとき、仮に、短絡回路Lに遮断器16
1が含まれているならば、電流I
1の供給に伴って遮断器16
1が遮断動作し、短絡回路Lは開放状態になる(短絡解消する)。これに伴い、電流センサ46の測定値は閾値I
th未満となる。漏水検知器12は、電流センサ46の測定値を参照し、その値が閾値I
th未満であるか否かを判定する(S12)。
【0033】
なお、遮断器16のバイメタル36にジュール熱が蓄積して遮断動作に至るまでの期間を考慮して、電流をI
0からI
1に切り替えるステップS10からステップS12の判定タイミングまで、所定の待ち時間を設定してもよい。
【0034】
図2に示す例では、短絡回路Lに遮断器16
1は含まれていないので、電流をI
0からI
1に切り上げても、短絡回路Lは開放されない。これを受けて漏水検知器12は、電流値I
kが漏水検知器12に最も近い、つまり、定格電流が最も高い遮断器16
kmaxが遮断動作する最大電流値I
kmax(Ir
kmax < I
kmax)に設定されているか否かを判定する(S14)。まだ最大電流値I
kmaxに設定されていない場合、漏水検知器12はステップS10に戻り、電流値のサフィックスkをインクリメントする。すなわち漏水検知器12は、
図4に示すように、電流I
1から、遮断器16
2の定格電流を超過し、かつ遮断器16
3の定格電流以下となる電流I
2に、供給電流を嵩上げする。
【0035】
電流I
2が供給されることで、短絡回路Lに含まれる遮断器16
2が遮断動作する。これに伴い短絡回路Lが開放され(短絡解消され)、電流センサ46の測定値は電流I
th未満となる。このとき、漏水検知器12は、供給電流のサフィックスkについて、k=1であるか否かを判定する(S16)。
【0036】
図2の例では、k≠1(k=2)であることから、漏水検知器12は、遮断動作した遮断器16
2とそれより一つ下流側の遮断器16
1の間の領域、つまり、漏水検知帯14
2を漏水発生箇所と判定する(S18)。
【0037】
ここで、
図2に示す例では、2つの遮断器16に挟まれた領域に漏水箇所があり、遮断動作した遮断器16とそれよりも漏水検知器12から見て一つ下流側の遮断器16との間の領域を漏水発生箇所と判定していたが、漏水発生箇所が2つの遮断器16に挟まれない場合は、以下のように判定する。
【0038】
電流値I
1のときにステップS12にて電流センサ46の測定値が閾値I
thを下回った場合、ステップS16からステップS20に進む。漏水検知器12は、最下流の遮断器16
1よりも下流側の漏水検知帯14の末端領域14
1を漏水発生箇所と判定する(S20)。
【0039】
一方、ステップS10、S12、S14が繰り返され、漏水検知器12に最も近い、すなわち、定格電流Ir
kが最も高い遮断器16
3が遮断動作する最大電流値I
3(k=kmax=3、Ir
3 < I
3)となるように供給電流I
kが設定される。これによっても短絡回路Lが開放されない場合、言い換えると、いずれの遮断器16
1,16
2,16
3においても遮断動作が生じない場合は、漏水検知器12は、遮断器16
3と漏水検知器12の間の領域、つまり漏水検知帯14
4を漏水発生箇所と判定する(S22)。
【0040】
ステップS18、S20、及びS22にて漏水発生箇所が判定されると、漏水検知器12は、漏水発生箇所をメモリ38(記憶部)に記録するとともにコントローラ24に通報する(S24)。漏水規模が比較的小さい場合、短絡回路Lの形成に伴う発熱で液体が蒸発し、漏水箇所の確認が困難となる場合があるが、このように、漏水発生箇所の判定後、直ちにその箇所を記録することで、容易に確認作業が行える。
【0041】
さらに漏水検知器12は、漏水検知帯14に供給する電流値を平常値I
0に戻す(S26)。これにより、大電流の供給による漏水検知帯14の負荷が低減される。
【0042】
<別の実施形態>
上述の実施形態では、漏水検知器12が漏水箇所特定処理を実行していたが、この形態に限らない。例えば上述したように、漏水検知器12は漏水発生の有無検知を行い、その結果、漏水が発生した旨の警報信号がコントローラ24(制御部)に送られる。コントローラ24では、警報信号を受けて、漏水検知器12に対して漏水箇所特定処理を実行するように漏水検知器12を操作してもよい。
【0043】
具体的には、
図3の漏水箇所特定処理のフローチャートにおいて、コントローラ24から漏水検知器12に対して、モニタリング電流I
0から電流I
1に供給電流を嵩上げする指令を送る(S10)。コントローラ24は電流センサ46の測定値を参照し、その値が閾値I
th未満であるか否かを判定する(S12)。
【0044】
電流センサ46の測定値が電流I
th未満であるとき、コントローラ24は、供給電流のサフィックスkについて、k=1であるか否かを判定し(S16)、漏水検知帯14の末端領域14
1を漏水発生箇所と判定する(S20)。
【0045】
ステップS12にて電流センサ46の測定値が電流I
th以上であるとき、コントローラ24は、電流値I
kが最大電流値I
kmaxに設定されているか否かを判定し(S14)、まだ最大電流値I
kmaxに設定されていない場合、ステップS10に戻り、電流値のサフィックスkをインクリメントする。
【0046】
電流値のサフィックスkがインクリメントされ、電流値I
kが段階的に増加された後、コントローラ24は電流センサ46の測定値を参照する(S12)。参照した測定値が閾値I
th未満である場合、コントローラ24は、短絡解消した遮断器16
kと下流側に隣接する遮断器16
k-1の間の領域、つまり、漏水検知帯14
kを漏水発生箇所と判定する(S18)。
【0047】
また、最大電流I
3を供給しても遮断動作が生じないときには、コントローラ24は、遮断器16
3と漏水検知器12の間の領域、つまり漏水検知帯14
4を漏水発生箇所と判定する(S22)。
【0048】
ステップS18、S20、及びS22にて漏水発生箇所が判定されると、コントローラ24は、漏水発生箇所をメモリ28に記録するとともに中央監視装置に通報する(S24)。さらにコントローラ24は、漏水検知帯14に供給する電流値を平常値I
0に戻す(S26)。
【0049】
このように、本実施形態では、漏水検知器12のメモリ38には漏水箇所特定処理のプログラムを記憶させずに、コントローラ24が遠隔操作で漏水検知器12に対して漏水箇所特定処理を実行させる。これにより、既存の、つまり漏水検知の機能のみしか持たない漏水検知器12に対しても、本実施形態に係る漏水箇所特定処理が実行可能となる。
【0050】
具体的には、既存の漏水検知帯14を適宜分割して遮断器16を介在させるとともに、既存の漏水検知器12のCPU42が受け入れ可能なプロトコルで、コントローラ24から漏水箇所特定処理の指令を適宜出力することで、本実施形態に係る漏水検知システム10を構築できる。