【実施例】
【0040】
以下に実施例に基づいて本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、本文中「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。実施例中、軟化点及び溶融粘度は下記の方法で測定した。
・軟化点:JISK−7234に準じた方法で測定
・溶融粘度:コーンプレート法での150℃における粘度
・残溶剤量の定量は島津製作所社製ガスクロマトグラフGC−2010を用いて行い、カラムとしてはDB−WAX(Agilene Technologies社製)長さ30m、内径0.25mmを用いた。
昇温プログラムとしては、70℃で5分保持し、10℃/minの昇温速度で140℃まで昇温後、20℃/minの昇温速度で220℃まで昇温し、220℃で5分保持するプログラムを用いた。
・分子量のデータ取得には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC 島津製作所社製LC−20AD)を用いた。カラムにはKF−603,KF−602.5,KF−602,KF−601を使用し、カラム温度40℃、移動相をTHFとし、流速 0.5ml/minの条件にて、RI検出器により測定を行った。
【0041】
(合成例1)
温度計、冷却管、ディーンスターク共沸蒸留トラップ、撹拌機を取り付けたフラスコにアニリン559部とトルエン500部を仕込み、室温で35%塩酸167部を1時間で滴下した。滴下終了後加熱して共沸してくる水とトルエンを冷却・分液した後、有機層であるトルエンだけを系内に戻して脱水を行った。次いで4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル251部を60〜70℃に保ちながら1時間かけて添加し、更に同温度で2時間反応を行った。反応終了後、昇温をしながらトルエンを留去して系内を190〜200℃とし、この温度で15時間反応をした。その後冷却しながら30%水酸化ナトリウム水溶液500部を系内が激しく還流しないようにゆっくりと滴下し、80℃以下で留去したトルエンを系内に戻し、70℃〜80℃で静置した。分離した下層の水層を除去し、反応液の水洗を洗浄液が中性になるまで繰り返した。次いで油層から加熱減圧下において過剰のアニリンとトルエンを留去することにより芳香族アミン樹脂335部(A1)を得た。芳香族アミン樹脂(A1)の軟化点は59℃、溶融粘度は0.05Pa・sであった。
【0042】
(合成例2)
温度計、冷却管、ディーンスターク共沸蒸留トラップ、撹拌機を取り付けたフラスコに無水マレイン酸88部とトルエン300部を仕込み、加熱して共沸してくる水とトルエンを冷却・分液した後、有機層であるトルエンだけを系内に戻して脱水を行った。次に、芳香族アミン樹脂(A1)116部をN−メチル−2−ピロリドン116部に溶解した樹脂溶液を、系内を80〜85℃に保ちながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で2時間反応を行い、p−トルエンスルホン酸2 部を加えて、還流条件で共沸してくる縮合水とトルエンを冷却・分液した後、有機層であるトルエンだけを系内に戻して脱水を行いながら10時間反応を行った。反応終了後、トルエンを120部追加し、水洗を繰り返してp−トルエンスルホン酸及び過剰の無水マレイン酸を除去し、加熱して共沸により水を系内から除いた。次いで反応溶液を濃縮して、マレイミド樹脂を70%含有するマレイミド樹脂溶液(V1)を得た。
【0043】
(実施例1)(表面支持体:離形PETフィルム)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚200μm)し、塗布された樹脂膜を120℃で1時間乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体は高さ0.799mm、直径4.9mmのマーブル状であり、引き剥がし、粉砕することでフレーク状の形状のマレイミド成型体(M1)とした。
得られたマレイミド樹脂成型体(M1)の残溶剤は2.98%(29800ppm)であった。
なお、本工程による分子量分布の変化は見られなかった(GPCによる測定)
【0044】
(実施例2)(表面支持体:離形PETフィルム)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚200μm)し、塗布された樹脂膜を140℃で1時間乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体は厚さ1.045mm、直径4.1mmのマーブル状であり、引き剥がし、粉砕することでフレーク状の形状のマレイミド樹脂成型体(M2)とした。
得られたマレイミド樹脂成型体(M2)の残溶剤は1.68%(16800ppm)であった。
なお、本工程による分子量分布の変化は見られなかった(GPCによる測定)
【0045】
(実施例3)(表面支持体:離形PETフィルム)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚200μm)し、塗布された樹脂膜を150℃で1時間乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体は高さ1.165mm、直径3.9mmのマーブル状であり、引き剥がし、粉砕することでフレーク状の形状のマレイミド樹脂成型体(M3)とした。
得られたマレイミド樹脂成型体(M3)の残溶剤は0.843%(8430ppm)であった。
なお、本工程による分子量分布の変化は見られなかった(GPCによる測定)
【0046】
(実施例4)(表面支持体:離形PETフィルム)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚200μm)し、塗布された樹脂膜を160℃で1時間乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体は高さ1.178mm、直径3.8mmのマーブル状であり、引き剥がし、粉砕することでフレーク状の形状のマレイミド樹脂成型体(M4)とした。
得られたマレイミド樹脂成型体(M4)の残溶剤は0.996%(9960ppm)であった。
なお、本工程による分子量分布の変化は見られなかった(GPCによる測定)
【0047】
(実施例5)(表面支持体:離形PETフィルム)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚30μm)し、塗布された樹脂膜を120℃で1時間乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体は高さ0.227mm、直径2.1mmのマーブル状であり、引き剥がし、粉砕することでフレーク状の形状のマレイミド樹脂成型体(M5)とした。
得られたマレイミド樹脂成型体(M5)の残溶剤は0.899%(8990ppm)であった。
なお、本工程による分子量分布の変化は見られなかった(GPCによる測定)
【0048】
(実施例6)(表面支持体:離形PETフィルム)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚50μm)し、塗布された樹脂膜を120℃で1時間乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体は高さ0.240mm、直径2.0mmのマーブル状であり、引き剥がし、粉砕することでフレーク状の形状のマレイミド樹脂成型体(M6)とした。
得られたマレイミド樹脂成型体(M6)の残溶剤は0.768%(7680ppm)であった。
なお、本工程による分子量分布の変化は見られなかった(GPCによる測定)
【0049】
(実施例7)(表面支持体:離形PETフィルム)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚100μm)し、塗布された樹脂膜を120℃で1時間乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体は高さ0.277mm、直径2.6mmのマーブル状であり、引き剥がし、粉砕することでフレーク状の形状のマレイミド樹脂成型体(M7)とした。
得られたマレイミド樹脂成型体(M7)の残溶剤は1.187%(11870ppm)であった。
なお、本工程による分子量分布の変化は見られなかった(GPCによる測定)
【0050】
(実施例8)(表面支持体:離形PETフィルム)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚150μm)し、塗布された樹脂膜を120℃で1時間乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体は高さ0.577mm、直径4.1mmのマーブル状であり、引き剥がし、粉砕することでフレーク状の形状のマレイミド樹脂成型体(M8)とした。
得られたマレイミド樹脂成型体(M8)の残溶剤は2.182%(21820ppm)であった。
なお、本工程による分子量分布の変化は見られなかった(GPCによる測定)
【0051】
(比較例1)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)300mLを、ロータリーエバポレータを用い、加熱減圧下160℃で溶剤を留去し、マレイミド樹脂(B1)を樹脂ブロック状で得た。重合反応終了後のマレイミド樹脂溶液(V1)と大量合成時溶媒留去後のマレイミド樹脂(B1)のGPCを測定したところ高分子量化していることを確認した。その結果を
図1及び
図2に示す。得られたマレイミド樹脂の残溶剤は0.1%(1000ppm)以下であった。
【0052】
(比較例2)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)1.0Lを、ロータリーエバポレータを用い、加熱減圧下180℃で溶剤を留去したところゲル化していることが確認できた。得られたマレイミド樹脂(B2)は流動性がなくなった。
【0053】
<マレイミド樹脂成型体の製造方法における乾燥温度の比較>
(比較例3)
実施例1と同様に、合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて市販のイミドフィルム(東レデュポン製「カプトン(登録商標)100H」)へ流延塗布(WET膜厚200μm)し、塗布された樹脂膜を50℃の熱風にて1時間、加熱・乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体はべた付きがあり、フィルムの形状を維持できず、引き剥がし粉砕することができなかった。
【0054】
(
実施例12)
実施例1と同様に、合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて市販のイミドフィルム(東レデュポン製「カプトン(登録商標)100H」)へ流延塗布(WET膜厚200μm)し、塗布された樹脂膜を250℃の熱風にて1時間、加熱・乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体はマーブルの形状かつ、引きはがしてフレーク化できたものの、高分子量化が進行し、アセトン等の各種溶剤に不溶となった。
【0055】
<臭気の比較>
(実施例9、比較例5)
実施例1で得られたマレイミド樹脂成型体(M1)および比較用に4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(TCI社製 以下C1とする)を用意し、臭気の比較を行った。
なお、酢酸の定量は島津製作所社製ガスクロマトグラフGC−2010Plusを用いて行い、カラムとしてはDB−WAX(Agilene Technologies社製)長さ30m、内径0.25mmを用いた。昇温プログラムとしては、60℃で7分保持し、20℃/minの昇温速度で220℃まで昇温し、220℃で5分保持するプログラムを用いた。
【0056】
その結果、比較例5では酢酸の臭気がすることを確認し、実施例9では臭気は感じられなかった。
また、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、比較例5では酢酸が検出された(
図4を参照。 保持時間11.298分)。また、酸価を測定したところ、酸価10mgKOH/gとなり、酢酸1%相当に該当することを確認した。
【0057】
<形状および溶剤溶解性の比較>
(実施例10、比較例6、7)
実施例4で得られたマレイミド樹脂成型体(M4)および比較用にマレイミド樹脂(C1)、比較例2に記載のマレイミド樹脂(B2)を用いてアセトンへの溶解試験を行った。
樹脂濃度50%にそろえて検討をしたところマレイミド樹脂成型体M1、M5〜M7は完全溶解したことを確認できたが、マレイミド樹脂(C1)とマレイミド樹脂(B2)は完全溶解ができないことを確認した。
【0058】
以上より、実施例10では完全溶解したことからマレイミド樹脂成型体(M1、M5〜M7)は高分子量化反応が進んでいないことがわかる。一方、比較例6と7では完全溶解できなかったことからマレイミド樹脂成型体(C1、B2)は高分子量化反応が進んでいることがわかる。
【0059】
<マレイミド樹脂組成物の調整、硬化物特性の比較>
(実施例11)
実施例1により得られたマレイミド樹脂成型体(M1)を10部、硬化促進剤として2−エチルー4−メチルイミダゾール(2E4MZ 四国化成株式会社製)を0.21部重量部配合し撹拌により均一に混合・混練し、本発明のマレイミド樹脂組成物を得た。このマレイミド樹脂組成物を、アプリケータを用いて市販の離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚200μm)し、塗布された樹脂膜を硬化条件160℃×2h+180℃×6hで溶媒を取り除きながら硬化させることにより硬化物を得た。得られた硬化物の物性を評価した結果を表1に示す。
【0060】
(比較例8)
EPPN−502H(日本化薬製 エポキシ当量169g/eq.軟化点67.5℃EP1)を61部、フェノールノボラック(P−2 明和化成製 H−1、水酸基当量106g/eq.)38重量部、トリフェニルホスフィン(TPP純正化学 試薬)1重量部を配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をタブレット化後、トランスファー成形で樹脂成形体を調製し、硬化条件160℃×2h+180℃×6hで硬化物を得た。得られた硬化物の下記の物性を評価した。結果を表1に示す。
【0061】
(比較例9)
EOCN−1020-55(日本化薬製エポキシ当量194g/eq.軟化点54.8℃ EP2)を65部、フェノールノボラック(P−2 明和化成製 H−1、水酸基当量106g/eq.)34重量部、TPP(純正化学 試薬)1重量部を配合しミキシングロールで混ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をタブレット化後、トランスファー成形で樹脂成形体を調製し、硬化条件160℃×2h+180℃×6hで硬化物を得た。得られた硬化物の下記の物性を評価した。結果を表1に示す。
【0062】
得られた硬化物について下記の測定を実施した。
・DMA
測定項目:30℃、200℃、250℃の貯蔵弾性率、
:ガラス転移温度(tanδ最大時の温度)
測定方法:動的粘弾性測定器TA−instruments製、Q−800
測定温度範囲:30℃〜350℃
温速度:2℃/min
試験片サイズ:5mm×50mmに切り出した物を使用した(厚みは約800μm)。
【0063】
(表1)
【0064】
表1から、本発明のマレイミド樹脂組成物の硬化物は、エポキシ樹脂と同様の硬化条件で成形可能であり、また、得られた硬化物は高耐熱エポキシ樹脂を用いた場合と比較して、高温での弾性率変化が少ないことがわかる。