【実施例】
【0088】
本発明の様々な代表的な実施形態および態様を例示するために以下の実施例が提示されており、具体的に示されない限り、本発明の範囲を決して限定する意図はない。
【0089】
バンコマイシン塩酸塩は、Haorui Pharma−Chem Inc.、Irvine、California、米国から購入した。4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMTMM)は、Ubichem Plc、Hampshire、英国から購入した。1−[[(6R,7R)−7−アミノ−2−カルボキシ−8−オキソ−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−3−イル]メチル]ピリジニウムクロリド一塩酸塩(7−PYCA)は、Zhejiang Hengdian Apeloa Imp.&Exp.Co.,Ltd.、Zhejiang、中国およびAurisco Pharmaceuticals Limited、Shanghai、中国から購入したか、またはこれは、例えば米国特許第4,258,041号における手順により、もしくは他の公開されている手順により調製することができる。以下の実施例において使用される、他の試薬、出発原料および溶媒はすべて、商業的な供給業者(Sigma−Aldrich Chemical Company、St.Louis、MOなど)から購入し、特に示さない限り、さらに精製することなく使用した。
【0090】
以下の略語を使用した。DMF=N,N−ジメチルホルムアミド、DMSO=ジメチルスルホキシド;h=時間、およびmin=分。
(実施例1)
26−[[[3−[[(Z)−[1−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)−2−[[(6R,7R)−2−カルボキシ−8−オキソ−3−(ピリジニオメチル)−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−7−イル]アミノ]−2−オキソエチリデン]アミノ]オキシ]プロピル]アミノ]カルボニル]−26−デカルボキシバンコマイシン試料の純度を決定するためのHPLC法
【0091】
試験試料は、クロマトグラフィーデータソフトウェア(Empower Software、Waters Corporation、Milford、MA01757)により制御された、光ダイオードアレイ検出器を備えたHPLCシステム(Agilent1100または1200 HPLC System;Agilent Technologies Inc.、Santa Clara、CA95051)を使用して、26−[[[3−[[(Z)−[1−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)−2−[[(6R,7R)−2−カルボキシ−8−オキソ−3−(ピリジニオメチル)−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]−オクタ−2−エン−7−イル]アミノ]−2−オキソエチリデン]アミノ]オキシ]プロピル]アミノ]カルボニル]−26−デカルボキシバンコマイシンおよびその分解生成物についてアッセイした。溶媒はすべて、HPLCグレードであり、Honeywell Burdick&Jackson(Muskegon、MI49442)から購入した。リン酸(85%w/w)およびリン酸二水素ナトリウムはHPLCグレードであり、Fluka(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO63103)から購入した。試薬はすべてさらに精製することなく使用した。
【0092】
分析前に、試験試料を0.2μmポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターによりろ過し、最初の1mLを廃棄した。HPLC分析条件を表Aにまとめる。
【表A】
【0093】
特定の試料の構成成分の保持時間は、表Bに示されている。
【表B】
【0094】
試験試料の純度は、積分されたピークすべての割合として、化合物に関して積分されたピーク面積(曲線下面積またはAUC)に基づいて決定した。試験試料中の化合物の濃度(アッセイ値)は、参照標準品と比較することにより決定した。
(実施例2)
残留溶媒を決定するためのGC法
【0095】
26−[[[3−[[(Z)−[1−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)−2−[[(6R,7R)−2−カルボキシ−8−オキソ−3−(ピリジニオメチル)−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]−オクタ−2−エン−7−イル]アミノ]−2−オキソエチリデン]アミノ]オキシ]プロピル]アミノ]カルボニル]−26−デカルボキシバンコマイシンの試験試料中の残留溶媒は、ヘッドスペースオートサンプラー(Agilent7694 Headspace Sampler)を装備したガスクロマトグラフィーシステム(Agilent GC6890、Agilent Technologies、Santa Clara CA9505)を使用して決定した。DB−624GCカラム(30m(長さ)×0.53mm(ID)×3μm)を使用した(Agilent、部品番号125−1334)。
【0096】
内部標準溶液は、1Lメスフラスコに1−ブタノール(4mL)を加えることにより調製した。DMSO(800mL)を加えて、この混合物を完全に混合し、次に追加のDMSOを加えて、全容積を1Lにした。
【0097】
各試験試料(50mg)を20mLのヘッドスペースバイアルに移送し、内部標準溶液(1mL)を加え、試料が溶解するまで得られた混合物を激しく掻き混ぜた。
【0098】
既知の純度の市販の溶媒から、内部標準溶液中、濃度2mg/mLを有する参照標準品を調製した。参照標準用溶媒はすべて、通常、三連で調製した1つの参照標準溶液と一緒にした。参照標準品の各反復に関して、溶液1mLを20mLのヘッドスペースバイアルに加えて、クリンプシールした。
【0099】
GC分析条件を表Cにまとめる。
【表C】
【0100】
内部標準の1−ブタノールに対する、典型的な溶媒のGC保持時間を表Dに示す。1−ブタノールは、通常、約19.0minに溶出する。
【表D】
【0101】
試験試料中の残留溶媒の量は、試料のピーク面積と参照標準品のそれとを比較することにより決定した。
(実施例3)
3−ブロモプロピルカルバミン酸tert−ブチルの調製
【0102】
10℃またはわずかにそれより低い温度に維持した水酸化ナトリウム(105g、2.625mol)水(1.15L)溶液に、二炭酸ジ−tert−ブチル(229g、1.05mol)のヘプタン(1.03L)溶液を加えた。二炭酸ジ−tert−ブチルの溶液を含有していたフラスコをヘプタン(125mL)ですすぎ、すすいだ液を上記の反応混合物に加えた。得られた混合物を10℃またはそれよりわずかに低い温度まで冷却し、内部温度が約20℃未満を維持する速度で、3−ブロモプロピルアミン臭化水素酸塩(251g、1.15mol)の水(250mL)溶液を滴下添加した。3−ブロモプロピルアミン臭化水素酸塩の溶液を含有していたフラスコを水(20mL)ですすぎ、すすいだ液を上記の反応混合物に加えた。添加の終了後、この反応混合物をゆっくり室温(約22℃)まで温め、室温で約2h、撹拌を継続した。撹拌を停止し、この混合物を30min放置した。下部の水層を有機層から分離し、廃棄した。有機層に飽和塩化ナトリウム水溶液(250mL)を加え、得られた混合物を5min撹拌した。この混合物を30min放置し、下部の水層を分離して廃棄した。有機層を容積約350mLまで濃縮し、この濃縮溶液を5℃に冷却して、5℃で4h撹拌した。得られた沈殿物を吸引ろ過により集めると、表題化合物が白色結晶性固体として得られた(211g、84%収率)。このろ液を濃縮し、この濃縮溶液を5℃まで冷却して、5℃で4h撹拌した。得られたさらなる沈殿物を吸引ろ過により集めると、さらなる量の表題化合物(17g、6.8%収率)が得られた。
1H NMR (400 MHz, DMSO−d
6) δ
1H NMR (400 MHz, DMSO−d
6) δ 3.50 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 3.03 (q, J = 6.8 Hz, 2H), 1.91 (m, J = 6.8 Hz, 2H), 1.38 (s, 9H).
(実施例4)
エチル(2Z)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−(3−N−tert−ブトキシカルボニルアミノプロポキシイミノ)アセテートの調製
【0103】
エチル2−アミノ−α−(ヒドロキシイミノ)−4−チアゾールアセテート(139.9g、650mmol)、3−ブロモプロピルカルバミン酸tert−ブチル(209.0g、877.5mmol)および粉末にした炭酸カリウム(157.2g、1137.5mmol)の混合物に、DMF(550mL)および水(24.4mL)を加えた。得られた混合物を30℃で約11h撹拌した。この反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(2.3L)および水(1.7L)を加えて、得られた混合物を5min撹拌した。この混合物を60min放置し、下層(水層)を分離して廃棄した。炭酸水素ナトリウム水溶液(10wt.%、600mL)を加え、得られた混合物を5min撹拌した。この混合物を60min放置し、下層(水層)を分離して廃棄した。塩化ナトリウム水溶液(10wt.%、600mL)を加え、得られた混合物を5min撹拌した。この混合物を60min放置し、下層(水層)を分離して廃棄した。有機層を容積約600mLまで濃縮した。0℃で1h、穏やかに撹拌しながら、上記の濃縮物にヘキサン(250mL)を滴下添加すると、沈殿物が形成した。この沈殿物を吸引ろ過により集めると、表題化合物(232g、96%収率)がオフホワイトの結晶性固体として得られた。
1H NMR (400 MHz, DMSO−d
6) δ 7.25 (s, 2H), 6.89 (s, 1H), 6.82 (brs, 1H), 4.26 (q, J = 8 Hz, 2H), 4.08 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.97 (q, J = 6.4 Hz, 2H), 1.72 (m, J = 6.4 Hz, 2H), 1.37 (s, 9H), 1.26 (t, J = 8 Hz, 3H).
【0104】
所望の場合、生成物を再結晶することができる。いくつかの回分からの粗製物質(1.0kg、91.2%純度)を60℃で酢酸エチル(2L)に溶解し、ヘプタン(1L)をゆっくりと加えた。得られた溶液を、撹拌しながら1h、60℃に加熱し、この間に沈殿物が形成した。次に、この混合物をゆっくり冷却して室温にした。乾燥窒素下、沈殿物を吸引ろ過により集め、ヘプタンおよびEtOAc(1L、3:1)の混合物で洗浄し、真空下で一晩乾燥すると、表題化合物(770g、98.3%純度)が得られた。
(実施例5)
(2Z)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−(3−N−tert−ブトキシカルボニルアミノプロポキシイミノ)酢酸の調製
【0105】
エチル(2Z)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−(3−N−tert−ブトキシカルボニルアミノプロポキシイミノ)アセテート(232.0g、622.9mmol)の無水エタノール(1.63L)溶液に、水酸化ナトリウム(29.9g、747.4mmol)の水(748mL)溶液を滴下添加した。得られた混合物を35℃で約8h加熱した。次に、この混合物を約−5℃まで冷却し、この混合物のpHが約6.0になるまで、トリフルオロ酢酸(約10mL)を滴下添加した。次に、この混合物を真空下で濃縮して、揮発性構成成分の大部分を除去し、無水エタノール(500mL)を加えた。得られた混合物を再度濃縮して、共沸により水を除去した。無水エタノール(500mL)を加えることにより、再度この手順を繰り返し、次いで濃縮すると表題化合物が得られ、これをさらになんら単離または精製することなく、次工程で使用した。
(実施例6)
(2Z)−2−(2−アミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−(3−N−tert−ブトキシカルボニルアミノプロポキシイミノ)酢酸トリエチルアミン塩の調製
【0106】
メタノール(200mL)中の(2Z)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−(3−N−tert−ブトキシカルボニルアミノプロポキシイミノ)酢酸(約213g、627mmol)の混合物に、酢酸エチル(2.0L)を加えると、スラリーが形成した。N−クロロスクシンイミド(108.0g、815mmol)を加え、得られた混合物を室温で3h撹拌した。水(2.5L)、塩化ナトリウム(514g)およびトリフルオロ酢酸(93mL、1254mmol)を加え、得られた混合物を15min撹拌した。この混合物を1h放置し、次に、下部の水層を分離して廃棄した。真空下で、有機層を容積約500mLまで濃縮した。アセトニトリル(1.0L)を加え、この混合物を真空下で濃縮した。再度アセトニトリル(1.0L)を加えてこの混合物を真空下で濃縮することにより、上記を繰り返し、容積約600mLにした。次に、この混合物を珪藻土(セライト)によりろ過した。トリエチルアミン(350mL、2508mmol)を加えてこの混合物をこの0℃まで冷却し、この時点で沈殿物が形成した。この沈殿物を吸引ろ過により集め、アセトニトリル(165mL)ですすぎ、真空下、室温で乾燥すると、表題化合物(224g、79%収率)が、薄茶色の結晶性固体として得られた。
1H NMR (400 MHz, MeOH−d
4) δ 4.15 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.18 (m, 8H), 1.86 (m, 2H), 1.43 (s, 9H), 1.30 (t, J = 7.9Hz, 9H).
(実施例7)
1−[[(6R,7R)−7−[[(2Z)−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)[(3−N−tert−ブトキシカルボニルアミノプロポキシ)イミノ]アセチル]アミノ]−2−カルボキシ−8−オキソ−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−3−イル(3−l)]メチル]ピリジニウム塩酸塩の調製
【0107】
20℃のジメチルアセトアミド(300mL)中の(2Z)−2−(2−アミノ−5−クロロチアゾール−4−イル)−2−(3−N−tert−ブトキシカルボニルアミノプロポキシイミノ)酢酸トリエチルアミン塩(44.88g、93.5mmol)の混合物に、ジチオビス(ベンゾチアゾール)(32.7g、98.2mmol)を加えた。トリフェニルホスフィン(25.8g、98.2mmol)を加え(わずかに、発熱)、得られた混合物を室温で30min撹拌し、この間に、反応混合物は赤茶色の濁りのない溶液になった。この反応混合物を0℃に冷却し、ジイソプロピルエチルアミン(14.8mL、85mmol)を添加した。得られた混合物を約5min撹拌し、次に、1−[[(6R,7R)−7−アミノ−2−カルボキシ−8−オキソ−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−3−イル]メチル]ピリジニウムクロリド一塩酸塩(7−PYCA)(34.00g、85.0mmol)を加えた。得られた混合物を0℃で16h撹拌し、次に、この反応混合物の内部温度を約0℃〜約5℃の間に維持しながら、塩酸の1,4−ジオキサン(4.0M、44.6mL、178.5mmol)溶液をゆっくりと加えた。得られた混合物を約20min撹拌し、次にろ紙によりろ過した。次に、室温で、このろ液を酢酸エチル(2.5L)に30minかけてゆっくりと添加すると、沈殿物が形成した。得られたスラリーを室温で約1h撹拌し、次に沈殿物を乾燥窒素雰囲気下、ろ過により集めた。湿潤ケーキを酢酸エチル(1×300mL)およびメチルtert−ブチルエーテル(1×300mL)で洗浄し、次に、乾燥窒素の気流下、約25min乾燥した。この物質を次に、真空オーブン中、室温で4h乾燥すると、表題化合物(56.6g、約85%純度)が得られた。
(実施例8)
1−[[(6R,7R)−7−[[(2Z)−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)[(3−アミノプロポキシ)イミノ]アセチル]アミノ]−2−カルボキシ−8−オキソ−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−3−イル]メチル]ピリジニウム二塩酸塩の調製
【0108】
−10℃のメタノール(187.5mL、4751.9mmol)に、内部温度を15℃またはそれ未満に維持するのに十分な速度で、塩化アセチル(138.8mL、1952.1mmol)を滴下添加した。添加後、この反応混合物を室温まで温め、1h撹拌した。次に、この反応混合物を、−10℃に冷却したメタノール(187.5mL)中の1−[[(6R,7R)−7−[[(2Z)−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)[(3−N−tert−ブトキシカルボニルアミノプロポキシ)イミノ]アセチル]アミノ]−2−カルボキシ−8−オキソ−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−3−イル]メチル]ピリジニウム塩酸塩(50.0g、65.1mmol)の混合物に滴下添加した。反応混合物の内部温度を0℃またはそれ未満に維持するのに十分な速度で、上記の添加を行った。得られた混合物を0℃で約6h撹拌し、次に、これをアセトン(1.50L)に滴下添加した。得られた混合物を室温で1h撹拌し、次に沈殿物を乾燥窒素雰囲気下、ろ過により集めた。この湿潤ケーキをイソプロピルアルコールと酢酸イソプロピル(1×600mL)との混合物1:1v/vにより、次に、メチルtert−ブチルエーテル(1×600mL)で洗浄した。この物質を次に、真空オーブン中(窒素ブリードにより)室温で約4h乾燥すると、表題化合物(33.34g、約93.1%純度)が得られた。表題化合物の2番目の収穫物を、同様の方法でろ液からも単離した(2.6g、約90.6%純度)。
(実施例9)
26−[[[3−[[(Z)−[1−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)−2−[[(6R,7R)−2−カルボキシ−8−オキソ−3−(ピリジニオメチル)−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−7−イル]アミノ]−2−オキソエチリデン]アミノ]オキシ]プロピル]アミノ]カルボニル]−26−デカルボキシバンコマイシン三塩酸塩の調製
【0109】
DMSO(280.0mL)とDMF(218.4mL)との混合物中の、バンコマイシン塩酸塩(56.56g、38.07mmol)の0℃の撹拌溶液に、DMSO(30.80mL)およびDMF(30.80mL)中の4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(12.04g、43.51mmol)のスラリーを加えた。得られた混合物を0℃で約20分間撹拌し、次に、DMSO(30.80mL)およびDMF(92.40mL)中の1−[[(6R,7R)−7−[[(2Z)−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)[(3−アミノプロポキシ)イミノ]アセチル]アミノ]−2−カルボキシ−8−オキソ−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−3−イル]メチル]ピリジニウム二塩酸塩(28.00g、31.4mmol)の混合物を加えた。得られた混合物を−10℃に冷却し、10分間撹拌した。反応温度を−5℃未満に維持する速度で、この混合物に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(27.58mL、158.34mmol)を加えた。DIPEAを完全に添加した後、この反応混合物を−10℃で約1時間撹拌した(この時点で、HPLC分析により、反応は実質的に完了したことが示された)。反応温度を0℃未満に維持する速度で、この反応混合物に、1N水性塩酸(186.76mL)を加えた。塩酸をすべて添加した後、この反応混合物を10℃まで温め、アセトニトリル(560.0mL)および水(92.40mL)の混合物を加えた。次に、約1時間かけて、この反応混合物にアセトン(1.40L)を加え、得られたスラリーを約30分間撹拌した。次に、このスラリーを窒素下でろ過し、固体(湿潤ケーキ)を集めた。この湿潤ケーキをアセトン(621.60mL)で洗浄し、乾燥するまで窒素でパージした。アセトン(621.60mL)をこの湿潤ケーキに加え、得られた混合物を撹拌してスラリーを形成させ、次に窒素下でろ過して固体を集め、この固体を約20分間窒素でパージした。次に、この固体を真空下、室温で約18h乾燥すると、表題化合物が三塩酸塩(81.9g、39.12mmol、92.2%収率)として得られた。
(実施例10)
26−[[[3−[[(Z)−[1−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)−2−[[(6R,7R)−2−カルボキシ−8−オキソ−3−(ピリジニオメチル)−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−7−イル]アミノ]−2−オキソエチリデン]アミノ]オキシ]プロピル]アミノ]カルボニル]−26−デカルボキシバンコマイシンの精製
【0110】
150mLの実験室用ガラスカラムにポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)コポリマー(PLRP−S、100Å、50μM)を詰め、98:2v/v酢酸緩衝液(100mM)/アセトニトリル溶液により、約40分間、流速15mL/minで平衡にした。次に、98:2v/v酢酸緩衝液/アセトニトリル溶液(120mL)中の、26−[[[3−[[(Z)−[1−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)−2−[[(6R,7R)−2−カルボキシ−8−オキソ−3−(ピリジニオメチル)−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−7−イル]アミノ]−2−オキソエチリデン]アミノ]オキシ]プロピル]アミノ]カルボニル]−26−デカルボキシバンコマイシン三塩酸塩(9.0g、4.30mmol)の溶液を、上記の平衡にしたカラムに担持した。このカラムを98:2v/v酢酸緩衝液/アセトニトリル溶液により、約10分間、流速15mL/min、次に93:7v/v酢酸緩衝液/アセトニトリル溶液により、約62分間、流速15mL/min(この時点で、不純物の溶出が止まった)で溶出した。次に、このカラムを、(i)92:8v/v酢酸緩衝液/アセトニトリル溶液により、約80分間、(ii)91:9v/v酢酸緩衝液/アセトニトリル溶液により約15分間、(iii)89:11v/v酢酸緩衝液/アセトニトリル溶液により、約20分間、および(iv)87:13v/v酢酸緩衝液/アセトニトリル溶液により、20〜30分間(すべて、流速は15mL/min)、連続的に溶出した。溶出中、溶離液は、254nMのUV検出器を使用してモニタリングし、表題化合物を含有するフラクションを集めた。表題化合物を含有するフラクションを合わせると、表題化合物の溶液が、約1,500mLの酢酸緩衝液/アセトニトリル溶液中の三酢酸塩として得られた。
(実施例11)
塩交換による26−[[[3−[[(Z)−[1−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)−2−[[(6R,7R)−2−カルボキシ−8−オキソ−3−(ピリジニオメチル)−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−7−イル]アミノ]−2−オキソエチリデン]アミノ]オキシ]プロピル]アミノ]カルボニル]−26−デカルボキシバンコマイシン二塩酸塩の形成。
【0111】
150mLの実験室用ガラスカラムにポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)コポリマー(PLRP−S、100Å、50μM)を詰め、98:2v/v酢酸緩衝液(100mM)/アセトニトリル溶液により、約2.25h、流速15mL/minで平衡にした。酢酸緩衝液/アセトニトリル溶液(約1500mL)中の三酢酸塩としての表題化合物の溶液を水(4.6L)により希釈し、得られた溶液を4.65hかけて、流速15〜30mL/minでカラム上に担持した。カラムを98:2v/v20mM水性塩酸/アセトニトリル溶液(600mL)により、流速10〜15mL/min(約48min)で溶出した。次に、カラムを80:20v/v10mM水性塩酸/アセトニトリル溶液により、流速15mL/min、25minで溶出した。溶出中、溶離液は、254nMのUV検出器を使用してモニタリングし、表題化合物を含有する溶離液を集めた。表題化合物を含有する溶液のpHは2.2(13℃で)であった。この溶液のpHを、5wt.%炭酸水素ナトリウム水溶液を添加することにより4.27(14℃で)に調節した。得られた、表題化合物の二塩酸塩を主に含有する溶液は、全容積212mLを有した。HPLCにより、この溶液は、26.0mg/mLの表題化合物(遊離塩基当量として)を含有していると求められた。この溶液を冷水(212mL)により希釈すると、全容積424mLを有しており、かつ13mg/mLの表題化合物(遊離塩基当量として)を含有する溶液が得られた。
(実施例12)
安定試料の調製
A. 一塩酸塩(xが約1である式I)
【0112】
5wt.%炭酸水素ナトリウム水溶液を添加することにより、26−[[[3−[[(Z)−[1−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)−2−[[(6R,7R)−2−カルボキシ−8−オキソ−3−(ピリジニオメチル)−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−7−イル]アミノ]−2−オキソエチリデン]アミノ]オキシ]プロピル]アミノ]−カルボニル]−26−デカルボキシバンコマイシン二塩酸塩(dihydrocholoride)(124mL、13.0mg/mL遊離塩基)の塩交換溶液のpHをpH6.5に調節した。
【0113】
この溶液の試料(それぞれ2mL)を、通気穴付きゴム栓を備えた21個のバイアルに入れた。このバイアルを真空下(40〜60mTorr)、−40℃で約5日間、凍結乾燥すると、一塩酸塩(遊離塩基当量として26mg)(xが約1である式I)を含有する21個のバイアルが、凍結乾燥粉末として得られた。
【0114】
代表的なバイアルの分析により、この試料は水分含量が1.7%(カールフィッシャー)、残留溶媒(アセトニトリル)が0.6%(GC分析)、および純度が90.4%(HPLC分析)を有することが示された。
B.一塩酸塩(xが約1である式I)、スクロースおよびグリシン
【0115】
26−[[[3−[[(Z)−[1−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)−2−[[(6R,7R)−2−カルボキシ−8−オキソ−3−(ピリジニオメチル)−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−7−イル]アミノ]−2−オキソエチリデン]アミノ]オキシ]プロピル]アミノ]カルボニル]−26−デカルボキシバンコマイシン一塩酸塩(75mL、13.0mg/mL、975mg)の溶液に、スクロース(975mg)およびグリシン(1.46g)を加えた。これらの物質が溶解するまでこの混合物を掻き混ぜた。得られた溶液のpHは、6.7であった。
【0116】
この溶液の試料(それぞれ2mL)を、通気穴付きゴム栓を備えた21個のバイアルに入れた。このバイアルを真空下(40〜60mTorr)、−40℃で約5日間、凍結乾燥すると、一塩酸塩(遊離塩基当量として26mg)、スクロース(26mg)およびグリシン(39mg)を含有する21個のバイアルが凍結乾燥粉末として得られた。
【0117】
代表的なバイアルの分析により、この試料は水分含量が0.5%(カールフィッシャー)、残留溶媒(アセトニトリル)が0.6%(GC分析)、および純度が90.4%(HPLC分析)を有することが示された。
C. 二塩酸塩(xが約2である式I)
【0118】
pH4.4を有する26−[[[3−[[(Z)−[1−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)−2−[[(6R,7R)−2−カルボキシ−8−オキソ−3−(ピリジニオメチル)−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−7−イル]アミノ]−2−オキソエチリデン]アミノ]オキシ]プロピル]アミノ]−カルボニル]−26−デカルボキシバンコマイシン二塩酸塩(124mL、13.0mg/mL)の塩交換溶液の試料(それぞれ2mL)を、通気穴付きゴム栓を備えた21個のバイアルに入れた。このバイアルを真空下(40〜60mTorr)、−40℃で約6日間、凍結乾燥すると、二塩酸塩(遊離塩基当量として26mg)を含有する21個のバイアルが凍結乾燥粉末として得られた。
【0119】
代表的なバイアルの分析により、この試料は水分含量が1.1%(カールフィッシャー)、残留溶媒(アセトニトリル)が0.3%(GC分析)、および純度が90.1%(HPLC分析)を有することが示された。
D. 二塩酸塩(xが約2である式I)、スクロースおよびグリシン
【0120】
pH4.27の26−[[[3−[[(Z)−[1−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)−2−[[(6R,7R)−2−カルボキシ−8−オキソ−3−(ピリジニオメチル)−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−7−イル]アミノ]−2−オキソエチリデン]アミノ]オキシ]プロピル]アミノ]カルボニル]−26−デカルボキシバンコマイシン二塩酸塩(150mL、13.0mg/mL、1.95g)の塩交換溶液にスクロース(1.95g)を加えスクロースが溶解するまで、この混合物を撹拌した。この溶液(104mL)にグリシン(2.03g)を加えた。グリシンが溶解するまでこの混合物を掻き混ぜた。
【0121】
この溶液の試料(それぞれ2mL)を、通気穴付きゴム栓を備えた21個のバイアルに入れた。このバイアルを真空下(40〜60mTorr)、−40℃で約6日間、凍結乾燥すると、二塩酸塩(遊離塩基当量として26mg)、スクロース(26mg)およびグリシン(39mg)を含有する21個のバイアルが凍結乾燥粉末として得られた。
【0122】
代表的なバイアルの分析により、この試料は水分含量が0.5%(カールフィッシャー)、残留溶媒(アセトニトリル)が0.8%(GC分析)、および純度が90.6%(HPLC分析)を有することが示された。
E. 三塩酸塩(xが約3である式I)
【0123】
1N水性塩酸を添加することにより、26−[[[3−[[(Z)−[1−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)−2−[[(6R,7R)−2−カルボキシ−8−オキソ−3−(ピリジニオメチル)−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−7−イル]アミノ]−2−オキソエチリデン]アミノ]オキシ]プロピル]アミノ]−カルボニル]−26−デカルボキシバンコマイシン二塩酸塩の塩交換溶液のpHをpH2.0に調節した。
【0124】
この溶液の試料(それぞれ2mL)を、通気穴付きゴム栓を備えた21個のバイアルに入れた。このバイアルを真空下(40〜60mTorr)、−40℃で約6日間、凍結乾燥すると、三塩酸塩(遊離塩基当量として26mg)を含有する21個のバイアルが凍結乾燥粉末として得られた。
【0125】
代表的なバイアルの分析により、この試料は水分含量が<0.8%(カールフィッシャー)、残留溶媒(アセトニトリル)が0.3%(GC分析)、および純度が84.5%(HPLC分析)を有することが示された。
F. 三塩酸塩(xが約3である式I)、スクロースおよびグリシン
【0126】
1N水性塩酸を滴下添加することにより、26−[[[3−[[(Z)−[1−(2−アミノ−5−クロロ−4−チアゾリル)−2−[[(6R,7R)−2−カルボキシ−8−オキソ−3−(ピリジニオメチル)−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン−7−イル]アミノ]−2−オキソエチリデン]アミノ]オキシ]プロピル]アミノ]カルボニル]−26−デカルボキシバンコマイシン二塩酸塩(13.0mg/mL)、スクロース(13.0mg/mL)およびグリシン(19.5mg/mL)の溶液のpHをpH2.0に調節した。
【0127】
この溶液の試料(それぞれ2mL)を、通気穴付きゴム栓を備えた21個のバイアルに入れた。このバイアルを真空下(40〜60mTorr)、−40℃で約5日間、凍結乾燥すると、三塩酸塩(遊離塩基当量として26mg)、スクロース(26mg)およびグリシン(39mg)を含有する21個のバイアルが凍結乾燥粉末として得られた。
【0128】
代表的なバイアルの分析により、この試料は水分含量が0.5%(カールフィッシャー)、残留溶媒(アセトニトリル)が0.1%(GC分析)、および純度が91.3%(HPLC分析)を有することが示された。
(実施例13)
安定試料の貯蔵および分析
【0129】
各タイプの安定試料(実施例12A〜F;6×6=36個のバイアル)を6個含有する2つのラックを用意した。1つのラックは、室温で引き出しの中で光から保護して貯蔵し、もう一方のラックは、冷蔵庫中、2〜8℃で貯蔵した。純度を決定するため、各タイプの安定試料の代表的なバイアルを、1、3、6および12か月間の貯蔵後、HPLCにより分析した。結果を表1〜6に示す。
【表1】
【0130】
表1中のデータにより、塩を2〜8℃で12か月間貯蔵した場合、三塩酸塩(xが約3である式I)の純度は、一塩酸塩または二塩酸塩のいずれよりもかなり低下したことが示される。三塩酸塩は、一塩酸塩および二塩酸塩の場合にそれぞれ3.0%および2.9%であるのと比較して、8.6%、純度が低下した。これらの結果を
図1に示す。
【表2】
【0131】
表2中のデータにより、塩を室温で12か月間貯蔵した場合、三塩酸塩(xが約3である式I)の純度は、一塩酸塩または二塩酸塩のいずれよりもかなり低下したことが示される。三塩酸塩は、一塩酸塩および二塩酸塩の場合にそれぞれ23.4%および20.5%であるのと比較して、34.2%、純度が低下した。これらの結果を
図2に示す。
【表3】
【0132】
表3中のデータにより、塩をスクロースおよびグリシンと共に製剤化して、2〜8℃で12か月間貯蔵した場合、一塩酸塩、二塩酸、および三塩酸塩(xが、それぞれ約1、2および3である式I)の純度は、類似した%の低下があることが示される。一塩酸塩、二塩酸塩および三塩酸塩は、それぞれ1.9%、2.9%および1.2%純度が低下した。
【表4】
【0133】
表4中のデータにより、塩をスクロースおよびグリシンと共に製剤化して、室温で12か月間貯蔵した場合、三塩酸塩(xが約3である式I)の純度は、一塩酸塩または二塩酸塩のいずれよりもかなり低下したことが示される。三塩酸塩は、一塩酸塩および二塩酸塩の場合にそれぞれ8.9%および6.8%であるのと比較して、26.3%、純度が低下した。これらの結果を
図3に示す。
【表5】
【0134】
表5中のデータにより、塩をスクロースおよびグリシンと共に製剤化して、室温で12か月間貯蔵した場合、一塩酸塩(xが約1である式I)の純度は、ほとんど低下しなかったことが示される。一塩酸塩は、スクロースおよびグリシンと共に製剤化した一塩酸塩の場合に8.9%であるのと比較して、純度が23.4%低下した。これらの結果を
図4に示す。
【表6】
【0135】
表6中のデータにより、塩をスクロースおよびグリシンと共に製剤化して、室温で12か月間貯蔵した場合、二塩酸塩(xが約2である式I)の純度は、ほとんど低下しなかったことが示される。二塩酸塩は、スクロースおよびグリシンと共に製剤化した二塩酸塩の場合に6.8%であるのと比較して、純度が20.5%低下した。これらの結果を
図5に示す。
【0136】
まとめると、xが約1および約2である式Iの化合物、すなわち一塩酸塩および二塩酸塩は、塩を室温または2〜8℃のどちらかで12か月間貯蔵すると、三塩酸塩よりもかなり安定である。さらに、一塩酸塩および二塩酸塩は、こうした塩をスクロースおよびグリシンと共に製剤化した場合、室温で12か月間貯蔵すると、より安定である。