特許第6482528号(P6482528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6482528インスタントミルクティー粉末における粉末組成物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482528
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】インスタントミルクティー粉末における粉末組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   A23L 9/20 20160101AFI20190304BHJP
   A23F 3/30 20060101ALN20190304BHJP
   A23F 5/36 20060101ALN20190304BHJP
   A23L 23/10 20160101ALN20190304BHJP
【FI】
   A23L9/20
   !A23F3/30
   !A23F5/36
   !A23L23/10
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-509453(P2016-509453)
(86)(22)【出願日】2014年4月23日
(65)【公表番号】特表2016-516431(P2016-516431A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】EP2014058261
(87)【国際公開番号】WO2014173966
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2017年2月23日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2013/074893
(32)【優先日】2013年4月27日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】13172217.5
(32)【優先日】2013年6月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590003065
【氏名又は名称】ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジアン・ヒ
【審査官】 西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公告第00822614(GB,A)
【文献】 特表2011−500015(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/050439(WO,A1)
【文献】 特公昭41−013779(JP,B1)
【文献】 特開昭62−253338(JP,A)
【文献】 特開昭62−201541(JP,A)
【文献】 特表2007−530062(JP,A)
【文献】 特表2005−508645(JP,A)
【文献】 特公昭48−004542(JP,B1)
【文献】 特開昭61−212240(JP,A)
【文献】 特開平04−030747(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/005297(WO,A1)
【文献】 特開平06−030698(JP,A)
【文献】 特開平01−030538(JP,A)
【文献】 特公昭40−017306(JP,B1)
【文献】 四訂食品成分表,1994年,pp.196-203
【文献】 乳の科学,1998年,初版第3刷,pp.118-119
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
29-33%のスクロース
・3-20%のラクトース;
・2-15%の、可溶性加工カゼイン塩以外の乳タンパク質;
・35-50%の脂肪;及び
・3-7%の乳化剤;
を含む粉末組成物であって、
0%-10%の、40未満のDEを有するマルトデキストリン及び/又は40未満のDEを有するグルコースシロップを含み、
前記ラクトースが、脱脂粉乳の形態の前記乳タンパク質と共にもたらされるものであり、前記脱脂粉乳が、10-25%の量で存在する、
インスタントミルクティー、インスタントミルクコーヒー又はクリーミースープ用の粉末組成物。
【請求項2】
0%-1%未満の可溶性加工カゼイン塩を含む、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項3】
記脱脂粉乳が、16-22%の量で存在する、請求項1または2に記載の粉末組成物。
【請求項4】
前記脂肪が、植物油である、請求項1乃至のいずれか一項に記載の粉末組成物。
【請求項5】
前記植物油が、硬化パーム核油または硬化ココナッツ油である、請求項に記載の粉末組成物。
【請求項6】
・30-33%のスクロース;
・16-22%の脱脂粉乳;
・42-45%の硬化植物油;及び
・4-6%の乳化剤;
を含む請求項1乃至5のいずれか一項に記載の粉末組成物。
【請求項7】
(i)(全固形分の質量にして)29-33%のスクロース、3-20%のラクトース、2-15%の可溶性加工カゼイン塩以外の乳タンパク質、35-50%の脂肪、及び3-7%の乳化剤の水中分散物であって、(全固形分の質量にして)0%-10%の、40未満のDEを有するマルトデキストリン及び/又は40未満のDEを有するグルコースシロップを含む水中分散物を製造する工程であって、前記ラクトースが、脱脂粉乳の形態の前記乳タンパク質と共にもたらされるものであり、前記脱脂粉乳が、10-25%の量で存在する、工程;及び
(ii)前記分散物を噴霧乾燥させて粉末組成物を製造する工程;
を含む、請求項1乃至のいずれか一項に規定される粉末組成物の製造方法。
【請求項8】
噴霧乾燥の後に、0.2-1.5%の凝固防止剤を粉末組成物に添加し、その後前記粉末組成物を流動床乾燥機でさらに乾燥させる、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスタントミルクティー粉末における使用のための粉末組成物に関する。特にこれは、マルトデキストリンなどの担体もしくは増量剤を必要としない粉末組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
茶木(Camellia sinensis)に基づく飲料には、何百年もの間、世界中で人気がある。伝統的には、こうした飲料は、熱水中で茶葉を浸出させることによって製造される。しかしながら、茶葉は浸出が非常に遅く、必ずしも便宜上優れていない。したがって、消費者の中には、即席に作ることのできる茶飲料にも興味を持つ層がある。熱水を加えて即席飲料を製造することのできる茶粉末が開発されてきた。茶粉末はむろん茶固形分を含むが、最終飲料の他の成分、例えば、乳タンパク質、脂肪、及び砂糖もさらに含んで良い。こうした粉末は、通常は噴霧乾燥により製造され、したがって、典型的には、この飲料の知覚特性にほとんど寄与しないがこの粉末の調製及び/又は貯蔵に作用する別の成分、例えば、脂肪及び/又は増量剤の担体として作用するマルトデキストリン又は低デキストロース当量のコーンシロップを含む。
【0003】
マルトデキストリン/コーンシロップ成分は、費用と熱量を追加することから、これらを前記粉末から排除し、これらを必要な機能性成分、例えば、砂糖、乳タンパク質、及び/又は脂肪で置き換えて、消費者が飲料に砂糖またはミルク/クリームを加える必要をなくすか、または少なくとも飲料にその望ましい甘味を持たせるために必要とされる砂糖の量を低減することが望ましい。しかしながら、砂糖が吸湿性であることから、これは容易ではない。この吸湿性のために、噴霧乾燥の際に塊ができ、べたつく粉末となる。WO 12/050439は、噴霧乾燥機にスクロースを乾燥粉末として注入しつつ、同時に残りの成分を含む分散物を噴霧乾燥するという特定の噴霧乾燥処理を採用することでこの問題に対処している。この処理により、スクロース結晶が埋め込まれた無定形基質を有する粉末が得られる。この粉末は、フォーマー、クリーマー、またはトッピングベースとしてよく、即席飲料、例えば、コーヒー、紅茶、またはココアの調製のために使用することができる。しかしながら、これは、従来の噴霧乾燥よりも工場における実践がより複雑で高価なストリーム分割(split-stream)処理を要する。これはまた、使用前に砂糖は水に溶解されず、然るに不純物をろ過して除去できないことから、高価な高給砂糖の使用を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO 12/050439
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の噴霧乾燥処理によって製造することができるが、担体または増量剤を含まない粉末組成物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(本発明の概要)
発明者は、砂糖含量が増加し、乳タンパク質及び脂肪の含量も増加させた処方であって、マルトデキストリン/コーンシロップなどの担体を必要としないが、それにも関わらず従来の噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥することができる処方をここに特定した。したがって、第一の態様として、本発明は、
・25-35%の、ラクトース以外の二糖類もしくは三糖類;
・3-20%のラクトース;
・2-15%の、可溶性加工カゼイン塩塩以外の乳タンパク質;
・35-50%の脂肪;及び
・3-7%の乳化剤;
を含む粉末組成物を提供する。
【0007】
典型的な乳成分を含まないクリーマーは、可溶性加工カゼイン塩、例えば、カゼイン酸ナトリウムを、タンパク質源として使用している。発明者は、可溶性加工カゼイン塩以外の乳タンパク質源、例えば、脱脂粉乳、全脂粉乳、または乳清タンパク質を使用することによって、増加した量の砂糖を含むが、それにも関わらず噴霧乾燥して粉末組成物を製造することのできる処方の可能性が開けることをここに見出した。
【0008】
前記粉末組成物は、インスタントミルクティー粉末のベースを形成するために特に適切である。担体/増量剤に代えて粉末組成物中に砂糖及び乳粉末または乳清粉末を使用することにより、インスタントミルクティー粉末を製造するために粉末組成物に添加する必要のある砂糖及び乳粉末がより少なくて済む。しかるに、インスタントミルクティー粉末の体積及び費用が低減される一方で、依然として最終製品に必要とされる機能性は全て提供される。
【0009】
このように、第二の態様においては、本発明は、
・15-90%の、本発明の第一の態様の粉末組成物;
・1-15%の茶固形分;
・前記粉末組成物中に存在するものに加えて0-70%の単糖類もしくは二糖類;及び
・0-4%の凝固防止剤及び/又は親水コロイド及び/又は香味料及び/または高甘味度甘味料;
を含むインスタントミルクティー粉末を提供する。
【0010】
第三の態様においては、本発明は、本発明の第一の態様による粉末組成物の製造方法を提供し、この方法は、
・(全固形分の重量にして)25-35%のラクトース以外の二糖類もしくは三糖類、3-20%のラクトース、2-15%の可溶性加工カゼイン塩以外の乳タンパク質、35-50%の脂肪、及び3-7%の乳化剤の水中分散物を製造する工程;及び
・前記分散物を噴霧乾燥させて粉末組成物を製造する工程;
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
別に特記のない限り、全てのパーセンテージは、乾燥組成物の質量%として表される。
【0012】
グルコースシロップ(時にはコーンシロップと呼称される)は、本質的に、モノ-、ジ-、及びより高度の糖類からなるデンプン加水分解物(starch hydosylates)である。グルコースシロップは、あらゆるデンプン源、例えば、(必ずしも以下である必要はないが)コーンから製造可能である。グルコースシロップが複合多成分砂糖混合物であることから、これらはそのデキストロース当量(DE)によって等級付けされる。DEは、砂糖の数平均分子量<M>nに関し、以下の等式から算出することができる(Journal of Food Engineering, 33 (1997)221-226)。
<M>n = 18016 / DE
【0013】
DEが約20以下であるデンプン加水分解物は、マルトデキストリンとして一般に既知である。その低いDEのために、これらは単糖類及び二糖類を少量含むのみである。
【0014】
本発明が、担体/充填剤を必要とせずに従来の噴霧乾燥方法によって噴霧乾燥することのできる処方の可能性を特定したことから、前記粉末組成物は、最高で10%のマルトデキストリン及びグルコースシロップ、特に、低DEグルコースシロップは、最終飲料の知覚特性に寄与しない高次の糖(higher saccharides)を相当量含むことから、50未満、または40未満のDEを有するグルコースシロップを含むことが好ましい。より好ましくは、前記粉末組成物は、5%未満、さらにより好ましくは2%未満のマルトデキストリンまたはグルコースシロップを含む。最も好ましくは、前記粉末組成物は、マルトデキストリンもコーンシロップも全く含まない。
【0015】
前記粉末組成物は、(合計で)25-35%の、ラクトース以外の一種以上の二糖類、例えば、スクロースまたはマルトース、及び/又は一種以上の三糖類、例えば、マルトトリオースを含む。好ましくは、この組成物は、少なくとも27%、より好ましくは少なくとも29%の、ラクトース以外の二/三糖類を含む。最も好ましくは、前記二糖類はスクロースである。好ましい実施態様では、前記粉末組成物は29-34%、好ましくは30-33%のスクロースを含む。
【0016】
前記粉末組成物は、3-20%のラクトースを含むが、これは、好ましくは脱脂粉乳(およそ50%がラクトース)、全脂粉乳(およそ35%がラクトース)、または乳清粉末(そのラクトース含量は、乳性タンパク質が濃縮されたか単離されたかによって異なる)の形態のタンパク質と共に提供される。
【0017】
前記粉末組成物は、好ましくは、単糖類(例えば、グルコースまたはフルクトース)を10%未満しか含まないが、これは、これら単糖類が二糖類よりも吸湿性であるためである。その吸湿性のために、これらを含む分散物を噴霧乾燥することが困難になる。より好ましくは、前記組成物は、5%未満の単糖類を含み、最も好ましくは、本質的に単糖類を全く含まない。二/三糖類は、適切なDEを有するグルコースシロップの形態で提供可能であるが、しかし、グルコースシロップはさらに単糖類も含み、最終飲料の知覚特性にほとんど寄与しないより高次の糖(すなわち、四以上の単位糖を有するもの)を更に含んでもよいことから、好ましくない。
【0018】
前記粉末組成物は、可溶性加工カゼイン塩の形態で提供されない乳タンパク質を2-15%含む。可溶性加工カゼイン塩には、カゼイン酸ナトリウムまたはカゼイン酸カリウムが含まれる。好ましくは、前記粉末組成物は、少なくとも4%、より好ましくは少なくとも5%の、可溶性加工カゼイン塩ではない乳タンパク質を含み、これは好ましくは最高で12%、より好ましくは最高で10%である。好ましくは、前記組成物は、1%未満の可溶性加工カゼイン塩を含み、より好ましくは、これは本質的に、可溶性加工カゼイン塩を全く含まない。好ましくは、乳タンパク質は、脱脂粉乳、全脂粉乳、乳清粉末、乳性タンパク質濃縮物、または乳清タンパク質単離物の形態で提供される。このことは、如何なる理論によっても束縛されることを望まないが、脱脂粉乳、全脂粉乳、及び乳清タンパク質が、可溶性加工カゼイン塩のように分散物の粘度を増大させないためであると考えられる。より低粘度の分散物であるほど、噴霧乾燥により適している。最も好ましくは、乳タンパク質は、脱脂粉乳として、好ましくは5-50%、より好ましくは10-25%、最も好ましくは16-22%の量で提供される。噴霧乾燥を可能にすると共に、脱脂粉乳は、粉末組成物がミルクティーの調製に使用されると、優れた風味をさらに提供する。したがって、これは、最終飲料製品の所望の特性に、さらなる寄与をもたらす。乳清タンパク質粉末は、脱脂粉乳の望ましい風味を提供しないために脱脂粉乳ほど好ましくない。
【0019】
全脂粉乳は、乳タンパク質源として使用されるためには、脱脂粉乳よりも一般的に高価であることから、これも脱脂粉乳ほど好ましくない。
【0020】
前記粉末組成物は、35-50%、好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも42%で、好ましくは最高で47%、より好ましくは最高で45%の脂肪を含む。本発明の内容によれば、「脂肪」なる語は、脂と油との両方を含むが、乳化剤、例えば、脂肪酸のモノ/ジグリセリドを含むことは意図しない。脂肪は、好ましくは、植物油、より好ましくは、硬化植物油、最も好ましくは、硬化パーム核油または硬化ココナッツ油である。しかしながら、別の硬化もしくは非硬化植物油もまた使用してよい。全脂粉乳は、およそ27%の乳脂肪を含む。したがって、乳タンパク質源として全脂粉乳が使用される場合には、前記粉末組成物の脂肪成分は、幾分かの乳脂肪を含み、他方でその残部は、例えば、硬化パーム核油または硬化ココナッツ油であってよい。
【0021】
前記粉末組成物は、乳化剤を、3-7%、好ましくは4-6%の量で含む。適切な乳化剤には、脂肪酸のモノ-及びジ-グリセリド並びにモノ-及びジ-グリセリドのジアセチル酒石酸エステルが含まれる。
【0022】
前記粉末組成物は、少量(典型的には4%未満)の別の成分、例えば、安定化剤(例えば、リン酸カリウム及び三リン酸ナトリウム)、香味料(例えば、乳風味成分及び茶風味成分)、凝固防止剤(例えば、リン酸三カルシウム及びシリカ)、親水コロイド(例えば、ゴム及びデンプンベースの多糖類)、及び高甘味度甘味料(例えば、ステビア、スクラロース、ネオテーム、アスパルテーム、アセスルファム-Kなど)を任意に含んでよい。
【0023】
特に好ましい実施態様では、前記粉末組成物は、
・25-35%、好ましくは、30-33%のスクロース;
・10-25%、好ましくは、16-22%の脱脂粉乳;
・35-50%、好ましくは、42-45%の硬化植物油;及び
・3-7%、好ましくは4-6%の乳化剤;
を含む。
【0024】
本発明の粉末組成物は、インスタントミルクティー粉末のベースの形成に特に適切である。インスタントミルクティー粉末は、15-90%、好ましくは30-70%、更に好ましくは40-60%の前記粉末組成物を含み、1-15%、好ましくは2-12%、より好ましくは3-10%の茶固形分、並びに、0-70%、好ましくは20-60%、より好ましくは30-50%の単糖類または二糖類、好ましくはスクロースを、前記組成物自体に存在するものに加えて含む。インスタントミルクティー粉末は、甘味を増強するために、且つ/または砂糖の量を低減できるように、別の成分を少量で、例えば、0-4%の凝固防止剤及び/または親水コロイド及び/又は香味料及び/または着色料及び/または高甘味度甘味料(例えば、ステビア、スクラロース、ネオテーム、アスパルテーム、アセスルファム-Kなど)を更に含んでよい。好ましい実施態様では、インスタントミルクティー粉末は、0.02-0.3%のキサンタンを含む。本発明者は、この量でキサンタンを含むことにより、飲料の口当たりが改善されることを見出した。
【0025】
茶固形分は、好ましくは、茶葉の水抽出物の噴霧乾燥または凍結乾燥によって製造された粉末の形態で提供される。茶固形分は、好ましくは紅茶固形分である。本発明の目的のための「茶」は、Camellia sinensis var. sinensis及び/またはCamellia sinensis var. assamica由来の原料を意味する。特に好ましいのは、これがvar. sinensisよりも高濃度で茶活性成分を含むことから、var. assamica由来の原料である。「紅茶」とは、実質的に、発酵茶を意味する。「発酵」とは、所定の内在性酵素と基質とが合わさった際に茶が経ることになる、酸化的且つ加水分解的な過程を意味する。この過程の間に、葉中の無色のカテキンが、黄色及び橙色から濃褐色のポリフェノール性物質の複合混合物に変換される。
【0026】
本発明の粉末組成物はまた、別の製品、例えば、インスタントミルクコーヒー及びクリームスープ中にも使用することができる。
【0027】
前記粉末組成物は、(全固形分の重量にして)25-35%のラクトース以外の二/三糖類;3-20%のラクトース、2-15%の可溶性加工カゼイン塩の形態で提供されない乳タンパク質、35-50%の脂肪、及び3-7%の乳化剤の水中分散物を製造する工程、及びその後に前記分散物を噴霧乾燥させて粉末組成物を製造する工程により調製することができる。好ましくは、前記分散物は、40-60質量%の前記粉末組成物及び60-40質量%の水を含む。好ましくは、噴霧乾燥の後に、0.2-1.5%の凝固防止剤、より好ましくシリカが添加され、その後この混合物を流動床乾燥機でさらに乾燥させて残りの水分が全て除去される。
【実施例】
【0028】
本発明は、ここに、以下の実施例を参照してさらに詳説される。
【0029】
(実施例1:噴霧乾燥)
粉末組成物が、表1の処方に従って調製された。脱脂粉乳由来の、各処方中に存在するラクトース及び乳タンパク質のおおよその量もまた示される。各成分を、同体積の水中に分散/溶解させ、その後この分散物を乳化させて、18-20MPaで均質化させた。各分酸物の粘度を、噴霧乾燥に適したものとするためには、(従来の、乳成分を含まないクリーマーを分散させるために典型的に使用された量と比べて)比較的に多量の水を要した。
【0030】
【表1】
【0031】
処方1A、1B、及び1Cを、500型圧力噴霧乾燥タワー(1時間におよそ500kgの水を蒸発させる、小型の工場規模の噴霧乾燥機)にて、150-200℃の入口空気温度及び85℃より高い出口空気温度を採用して噴霧乾燥させた。処方1C及び1Dは、1000型圧力噴霧乾燥タワー(1時間におよそ1000kgの水を蒸発させる、より大型の噴霧乾燥機)にて、これも150-200℃の入口空気温度及び85℃より高い出口空気温度を採用して噴霧乾燥させた。噴霧乾燥ののち、0.35-1.0%の量の凝固防止剤(シリカ)を前記噴霧乾燥粉末と混合し、その後この混合物を、流動床乾燥機でさらに乾燥させて残りの水分全てを除去した。
【0032】
処方1Aでは、噴霧乾燥の間にタワーの内壁に貼りついた粉末が、長時間に亘って熱気に暴露された結果として褐色となった。したがって、この処方は、噴霧乾燥に適当ではない。
【0033】
処方1Bは、1Aよりもスクロース含量が少なかった。スクロースは、そのほとんどが脱脂粉乳で置き換えられており、より少量が植物油及び乳化剤によっても置き換えられていた。分散物は良好に噴霧乾燥され、壁面に貼りついた粉末はほとんどなく、褐色変も格段に少なかった。
【0034】
処方1Cも1Aよりもスクロース含量が少なかったが、1Bよりは幾分多かった。スクロースは、そのほとんどが植物油で置き換えられており、より少量が脱脂粉乳及び乳化剤によって置き換えられていた。分散物は、500型噴霧乾燥タワーにて良好に噴霧乾燥され、壁面に貼りついた粉末はほとんどなく、褐色変もほとんどなかった。1000型タワーでは、タワーの内壁に蓄積し、暗黄色に変化し、やがて塊となって壁面から落ちる粉末があった。これは、タワーがより大型であるために水滴が内部にあるうちにより長い時間が経過し、このため壁面に貼りつく危険性が増大したものと考えられる。処方1Cは、より小型のタワーでは良好に噴霧乾燥されたが、より大型の場合には結果が良好でなく、このことは、この処方が砂糖含量の上限に近いことを示している。
【0035】
処方1Dは、1Cよりも少ないスクロースを含み、より多くの脱脂粉乳を含んでいた。この分散物は大型タワーにて良好に噴霧乾燥され、壁面に貼りついた粉末は1Cよりも少量であり、目に見える褐色変はなかった。噴霧乾燥された粉末には、多少のもろい塊が含まれており、前記粉末を熱水に溶解させるとこれらは分散した。流動床乾燥に1.0%のシリカを添加することにより、これらの塊の形成が著しく低減されることが判明した。
【0036】
実施例1Dの噴霧乾燥された粉末8gを、2gの茶粉末と混合し、150mLの熱水に溶解させた。この粉末は、良好に溶解され、優れた外観のインスタントティー飲料をもたらした。
【0037】
これらの実施例により、従来の乳成分を含まないクリーマーと比べて砂糖含量を増大させ、さらに乳タンパク質及び脂肪の含量を増大させた噴霧乾燥処方が、マルトデキストリン/コーンシロップなどの担体を必要とすることなく、工場スケールの噴霧乾燥装置を使用して得られることが示される。したがって、これらの処方は、従来の製造ライン上での、工業規模での製造に適当である。
【0038】
(実施例2:インスタントミルクティー組成物)
表2には、同様の量のタンパク質及び砂糖を含む二種類のインスタントミルクティー処方が示される。実施例2Aは、実施例1Dの粉末組成物に基づくインスタントティー処方である。実施例2Bは、約25のDEを有するグルコースシロップを60%、32%の水添植物油、1.2%のカゼイン酸ナトリウム、3%の脱脂粉乳、2%の乳化剤(脂肪酸のモノ-及びジ-グリセリド)及び1.9%の安定化剤(リン酸カリウム)からなる、従来の乳成分を含まないクリーマーに基づくインスタントティー処方である。
【0039】
【表2】
【0040】
これらを、各処方を約150mLの熱水と混合することにより飲料とした。これら飲料を試験したところ、同様の知覚特性を有することが判明した。
【0041】
実施例2Aと2Bとの比較により、実質的に担体を排除することで、飲料の製造に必要とされるインスタントミルクティー組成物の量が実質的に低減され(質量と体積との両方の意味で)、一方では感覚特性が維持されることが示される。費用及び熱量含量もまた、低減された。
【0042】
(実施例3:乳タンパク質源の比較)
脱脂粉乳、乳清タンパク質濃縮物粉末、及びカゼイン酸ナトリウム粉末の水性溶液を、表3に示されるように、三種の異なるタンパク質濃度で調製した。各成分を、72℃の熱水に、2分間撹拌して溶解させた。これらの溶液を56℃にまで放冷し、その後これらの粘度を、2#のローターを用い、100rpmの回転速度で、Brookfield RV型粘土計を使用して測定した。
【0043】
【表3】
【0044】
表3からは、カゼイン酸ナトリウム溶液の粘度がタンパク質濃度の増大とともに急増する一方で、脱脂粉乳及び乳清タンパク質の場合は徐々に増大するのみであることが明らかである。乳清タンパク質の濃い溶液の粘度が、同様のタンパク質濃度の脱脂粉乳のものと同様であることから、実施例1Aないし1Dと同様の分散物であるが、脱脂粉乳に代えて乳清粉末を含むものもまた、噴霧乾燥に適当であることが期待される。全脂粉乳が、脱脂粉乳と同様のタンパク質組成を有し、脂肪の有無という意味でのみ相違することから、全脂粉乳を含む分散物もまた、噴霧乾燥に適当であることが期待される。しかしながら、タンパク質濃度とともにカゼイン酸ナトリウム溶液の粘度が大幅に増大することから、これらの溶液は噴霧乾燥にはあまり適当ではないと考えられる。