特許第6482549号(P6482549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6482549複数の架線における摩耗監視のための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482549
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】複数の架線における摩耗監視のための装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 5/08 20060101AFI20190304BHJP
   B60M 1/28 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   B60L5/08 Z
   B60M1/28 R
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-528187(P2016-528187)
(86)(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公表番号】特表2016-540474(P2016-540474A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】DE2014000571
(87)【国際公開番号】WO2015067235
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2017年11月6日
(31)【優先権主張番号】102013018819.9
(32)【優先日】2013年11月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】301051264
【氏名又は名称】ホッティンゲル・バルドヴィン・メステクニーク・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】フィール・ヴォルフガング
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01707427(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0000744(US,A1)
【文献】 特開2008−185458(JP,A)
【文献】 特表2002−504997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 5/08
B60M 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
力測定システムを用いた、複数の架線(3)における摩耗監視のための装置であって、前記力測定システムが、
−動作状態において、監視される前記架線(3)に対して直角に整向された2つのすり板(1a,1b)と、
−動作状態において、前記架線(3)に対して平行に整向されており、かつ、上方へ押圧される、第1及び第2の端部を備えた2つの結合横材(2a,2b)であって、その結果、前記2つのすり板(1a,1b)があらかじめ設定された力で前記架線(3)に対して押圧される、前記結合横材(2a,2b)と、
を備え、
−それぞれ1つの棒状の、第1及び第2の端部を備え、ひずみセンサが配置されたロードセル(4a〜4d)が、前記両結合横材(2a,2b)の前記各端部に配置されており、 −複数の前記ロードセル(4a,4b)の第1の端部が前記すり板(1b)に結合されており、
−複数の前記ロードセル(4c,4d)の第1の端部が前記すり板(1a)に結合されており、
−1つの前記ロードセル(4a)の第2の端部が前記結合横材(2a)の第1の端部に結合されており、
−1つの前記ロードセル(4b)の第2の端部が前記結合横材(2b)の第1の端部に結合されており、
−1つの前記ロードセル(4c)の第2の端部が前記結合横材(2b)の第2の端部に結合されており、
−1つの前記ロードセル(4d)の第2の端部が前記結合横材(2a)の第2の端部に結合されており、
−前記ロードセル(4a,4d)の長手軸線が前記結合横材(2a)の長手軸線の方向に延在しており、前記ロードセル(4b,4c)の長手軸線が前記結合横材(2b)の長手軸線の方向に延在している
こと、及び前記各すり板(1a,1b)と前記棒状の各ロードセル(4a〜4d)の間に、それぞれ1つのプレート状のバネ要素(5a1〜5d1)が配置されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記結合横材(2a,2b)の前記各端部と前記棒状のロードセル(4a〜4d)の前記各端部の間に、それぞれ1つのプレート状のバネ要素(5a2〜5d2)が配置されていることを特徴とする請求項1記載の、複数の架線における摩耗監視のための装置。
【請求項3】
前記各すり板(1a,1b)と前記棒状のロードセル(4a〜4d)の前記各端部の間にそれぞれ1つのプレート状のバネ要素(5a1〜5d2)が配置されており、前記各結合横材(2a,2b)と前記棒状のロードセル(4a〜4d)の前記各端部の間にそれぞれ1つのプレート状のバネ要素(5a2〜5d2)が配置されていることを特徴とする請求項1記載の、複数の架線における摩耗監視のための装置。
【請求項4】
前記棒状のロードセル(4a〜4d)が複数のFBGセンサを備えていることを特徴とする請求項1記載の、複数の架線における摩耗監視のための装置。
【請求項5】
鋼又はアルミニウムで製造され、片側で前記結合横材(2a,2b)に固定された強固な保護スリーブ(6a〜6d)が、前記棒状の各ロードセル(4a〜4d)と前記各結合横材(2a,2b)との間の接続の範囲の周囲に配置されていることを特徴とする請求項1記載の、複数の架線における摩耗監視のための装置。
【請求項6】
前記強固な保護スリーブ(6a〜6d)の直径が、前記棒状の各ロードセル(4a〜4d)に過剰な負荷が生じないように選択されていることを特徴とする請求項5に記載の、複数の架線における摩耗監視のための装置。
【請求項7】
ステンレス鋼で製造され、両側において密封式のシールを備えたベローズ(7a〜7d)が、前記棒状の各ロードセル(4a〜4d)と前記各結合横材(2a,2b)との間の接続の範囲の周囲に配置されていることを特徴とする請求項1記載の、複数の架線における摩耗監視のための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すり板対を有する集電装置を備えた、電気的に動作する鉄道車両のための複数の架線における摩耗監視のための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集電装置のすり板対を架線に対して押圧する力は、架線の摩耗にも、またすり板の摩耗にも影響を与えるものである。押圧力の測定、特に押圧力の短時間の変化の測定により、架線又はすり板における損傷を推定することが可能である。
【0003】
押圧力を測定するため、及び摩耗を監視するための様々な装置が従来技術から知られている。特許文献1には、これらの関係が説明されている。したがって、電気的なひずみゲージを有する力センサの使用により問題が生じることが指摘される。なぜなら、センサ類が1.5〜25kVの高電圧電位にさらされ、例えばバッテリによって給電されるためである。2つのオートバイ用のバッテリを用いる際には、約24時間の動作寿命が得られ得るべきである。架線からのエネルギー発生は、この電気的な力測定技術にとって非常に手間のかかるものであるとともに影響をうけやすいものである。したがって、特許文献1には、以下ではFBGセンサという、ファイバ・ブラッグ・グレーティングのタイプの複数のセンサを用いることが提案されている。なぜなら、これらのセンサは、電気的な高電圧場の影響を受けないためである。ただし、高い精度でのFBGセンサの構成はむずかしい。一方では、FBGセンサを有する細い光ファイバを、少なくとも部分的に測定すべき力で負荷される部材へ容易に貼付することが可能である。特に金属フィルムから成る従来のDMS(ひずみゲージ)に対して用いられる変形体は、限定的にのみFBGセンサを備えることができる。なぜなら、大きな弾性により、及び貼付時に遵守すべき光ファイバの大きな曲げ半径のゆえにFBGセンサの貼付に本質的により多くの空間が必要となるためである。換言すれば、FBGセンサのための変形体における貼付箇所は、電気的な、すなわち金属製のひずみゲージのための変形体に比べて本質的に広範囲に形成されることができ、これにより、変形体の体積全体が拡大される。
【0004】
設定された使用分野においては、用いられるセンサ類により、集電装置における空気抵抗が5%より多く上昇してはならないという要件が存在する。従来技術から公知となった測定システムは、比較的不正確であるか、又は体積の大きい、すなわち走行方向において過大な空気抵抗を有している。走行方向におけるできる限りわずかな空気抵抗についての要件は、エネルギーの節約のために高められない。集電装置は、大きな走行速度においても振動しやすくならないように構成及び調整されている。機械的な振動は、集電装置又は架線さえも損傷させる、コントロール不能で次第に高まる共振効果を引き起こし得る。センサ類の再据え付けは流れ特性、すなわち集電装置の空気抵抗についての変化も引き起こすため、最大で5%のその限界値があらかじめ規定される。
【0005】
この力測定システムについての別の原理的な要件は、できる限りわずかな製造コストと、高い機械的な頑強性である。例えば、架線に着氷すると、変形体又はこれに貼付されたセンサは、損傷してはならない。この要件を満たすために、力測定又は計量の従来技術から、機械的なストッパの形態の過負荷保護部を設けることが知られている。しかしながら、このような過負荷保護部は、体積が大きく、したがって、存在する集電装置の構造要素が空力的に組み込まれていない場合には更に空気抵抗が増大してしまう。しかし、このような空力的な組込は常に特殊な構造を必要とするものであり、したがって高価である。
【0006】
したがって、高い測定精度と、わずかな製造コストと同時に高い機械的な頑強性と、わずかな空力的な抵抗とについて要件を満たすことがむずかしい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許発明第10249896号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この点で、本発明の課題は、架線の摩耗又は損傷を検出することができるように、走行中に集電装置と架線の間の押圧力を特定するための力測定システムを得ることにある。力測定システムは、架線への着氷時に生じるような過負荷に対して大きな機械的な頑強性を備える必要がある。構造寸法と、特に走行方向における空力抵抗とは、わずかであるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、請求項1による、力測定装置を用いた、複数の架線における摩耗監視のための装置によって解決される。
【0010】
この装置は、鉄道の走行方向において特にわずかな空気抵抗を備えているとともに、衝突的な過負荷に対して比較的損傷しにくいという利点を有している。特に、架線着氷の場合には、用いられる変形体が非常に頑強であることが分かった。得られた測定精度は、既に存在する部材上へ単にひずみセンサを貼付し、そのため実際に作用する力の比較的不正確にのみ検出可能な構造に比べて明らかに高いものである。
【0011】
請求項によれば、各すり板と棒状の各ロードセルの間に、それぞれ1つのプレート状のバネ要素が配置されている。装置のこの発展形態は、ロードセルが過負荷によって損傷することなく、当該装置が比較的大きな衝突的な負荷を受容することが可能であるという利点を有している。
【0012】
請求項によれば、結合横材の各端部と棒状のロードセルの各端部の間に、それぞれ1つのプレート状のバネ要素が配置されている。これは、請求項2の装置の代替的なものである。
【0013】
請求項によれば、各すり板と棒状のロードセルの各端部の間にも、また各結合横材と棒状のロードセルの各端部の間にも、それぞれ1つのプレート状のバネ要素が配置されている。装置のこの発展形態は、この装置が比較的大きな衝突的な負荷に対しても損傷しづらいという利点を有している。
【0014】
請求項に係る実施形態は、最良の実施形態ということができる。
【0015】
請求項によれば、棒状のロードセルが、電磁場に対して損傷しづらい複数のファイバ・ブラッグ・グレーティングセンサ(FBGセンサ)を備えている。移動する電磁場が測定電子機器における電圧を誘起することがあるため、この電圧が測定精度に影響を与えることがあり得る。これは、FBGセンサを用いることで防止される。なぜなら、光学的な信号は電磁場の影響を受けないためである。この変形体が上述の関係に基づき、金属フィルム−ひずみゲージを有する変形体よりもやや体積が大きくとも、変形体の棒形状により、構造に関連して走行方向において最適な測定システムが得られる。
【0016】
請求項によれば、鋼又はアルミニウムで製造され、片側で結合横材に固定された強固な保護スリーブが、棒状の各ロードセルと各結合横材の間の接続の範囲の周囲に配置されている。保護スリーブにおける固定されていない側は、汚れを防止するために合成樹脂から成るシールを含むことができる。この保護スリーブは、機械的な保護のほかに電磁場に対する部分的な保護も提供するものである。
【0017】
請求項によれば、強固な保護スリーブの直径が、棒状の各ロードセルに過剰な負荷が生じないように選択されている。これにより、過負荷に対する変形体の機械的な保護が更に改善される。
【0018】
請求項によれば、ステンレス鋼で製造され、両側において密封式のシールを備えたベローズが、棒状の各ロードセルと各結合横材の間の接続の範囲の周囲に配置されている。装置のこの発展形態は、腐食及び汚れに対する良好な保護を達成しようとする場合に好ましい。
【0019】
力測定装置を用いた、複数の架線における摩耗監視のための装置の構造、機能及び他の利点を、概略的な図面に関連した実施例に基づいて以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】複数の架線における摩耗監視のための装置の第1の実施形態の概略的な斜視図である。
図2】複数の架線における摩耗監視のための装置の第2の実施形態の概略的な斜視図である。
図3a図2による実施形態における、保護スリーブを備えた部分の拡大図である。
図3b図2による実施形態における、ベローズを備えた部分の拡大図である。
図4】従来技術による二重集電装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図4に示されているように、従来技術による二重集電装置が、2つのすり板(1a,1b)と、これらすり板に結合された結合横材(2a,2b)とを備えており、動作状態では、すり板(1a,1b)が架線(3)に対して直角に配向されているとともに、結合横材(2a,2b)がこの架線に対して平行に配向されている。結合横材(2a,2b)によって連結された不図示の複数の押圧リンク機構を用いて、すり板(1a,1b)が架線(3)へ押圧される。上方へ向けられた4つの力の矢印の先端は、不図示の押圧リンク機構の連結点を示している。
【0022】
図1に示されているように、両結合横材(2a,2b)の各端部での架線における摩耗監視のための装置の第1の実施形態では、架線(3)に対して平行に、すなわち走行方向に延びるそれぞれ1つの棒状のロードセル(4a〜4d)が配置されている。これにより、走行中に、ロードセルの本質的により大きな側面ではなく棒状のロードセル(4a〜4d)の比較的小さな断面のみが空力抵抗を生じさせる。棒状のロードセル(4a〜4d)は、プレート状のバネ要素(5a1〜5d1)を介して両すり板(1a,1b)に結合されているとともに、プレート状のバネ要素(5a2〜5d2)を介して両方の結合横材(2a,2b)に結合されている。これらプレート状のバネ要素(5a2〜5d2)も、その比較的小さな端面のみが走行方向において示し、したがってわずかな流れ抵抗のみが生成されるように整向されている。
【0023】
プレート状のバネ要素(5a1〜5d1)及び(5a2〜5d2)は、特に側方の衝撃荷重を受容するとともに、したがってこの衝撃荷重を直接棒状のロードセル(4a〜4d)へ伝達されることを防止するものである。これらプレート状のバネ要素(5a2〜5d2)は、例えば架線着氷又はかなり大きな架線の損傷により生じるこのような衝撃荷重は、これらバネ要素の存在なしに棒状のロードセル(4a〜4d)を過度に負荷し、これにより損傷することがある。
【0024】
この力測定システムにより、適合する評価電子機器との信号技術的な接続後、電気的な測定信号又は光学的な測定信号が処理され、すり板(1a,1b)から架線(3)へ適用される力が測定され、このとき、測定は、車両の静止状態においても、また走行中においても可能である。
【0025】
図2及び図3aに示すように、棒状の各ロードセル(4a〜4d)と板状の各バネ要素(5a1〜5d1,5a2〜5d2)と各結合横材(2a,2b)との間の接続の範囲の周囲には、鋼又はアルミニウムで製造され、片側で結合横材(2a,2b)に固定された強固な保護スリーブ(6a〜6d)が配置されている。有利には、この強固な保護スリーブ(6a〜6d)の直径は、許容できないほど大きなたわみが引き起こされ、したがってロードセル(4a〜4d)の損傷が引き起こされ得る負荷が生じた場合にその内面が過負荷ストッパとして作用するように選択されている。強固な保護スリーブ(6a〜6d)の内部空間を汚れから保護するために、保護スリーブの固定されていない側は、不図示の軟弾性のシールを備えている。この軟弾性のシールは、例えばシリコンゴムであり得る。
【0026】
図3bに示すように、棒状の各ロードセル(4a〜4d)と板状の各バネ要素(5a1〜5d1,5a2〜5d2)と各結合横材(2a,2b)との間の接続の範囲の周囲には、ステンレス鋼で製造され、両側において密封式のシールを備えたベローズ(7a〜7d)が配置されている。この実施形態は、好ましくはロードセルの特に良好なカプセル化が必要な場合に使用可能である。
【0027】
図面は、いくつかの好ましい実施形態のみを示している。添付の特許請求の範囲に対応して行われる全ての同等のバリエーション及び変更が、特許請求の範囲によってカバーされている。
図1
図2
図3a
図3b
図4