(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482552
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】界面活性剤および多価アルコールを有さず直ちに湿潤可能な経口フィルム剤形
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4196 20060101AFI20190304BHJP
A61K 31/422 20060101ALI20190304BHJP
A61K 31/5517 20060101ALI20190304BHJP
A61K 31/5513 20060101ALI20190304BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20190304BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20190304BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20190304BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20190304BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20190304BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20190304BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20190304BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20190304BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
A61K31/4196
A61K31/422
A61K31/5517
A61K31/5513
A61K9/70
A61K47/32
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/14
A61K47/10
A61P25/06
A61P25/20
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-530631(P2016-530631)
(86)(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公表番号】特表2016-527262(P2016-527262A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】IB2014002047
(87)【国際公開番号】WO2015015303
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2017年7月28日
(31)【優先権主張番号】61/860,345
(32)【優先日】2013年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516030948
【氏名又は名称】インテルジェンクス・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】IntelGenx Corp.
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】オルスト・ジ・ゼルブ
(72)【発明者】
【氏名】アンジェラ・アングスティ
(72)【発明者】
【氏名】ナディーヌ・ペマン
【審査官】
参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−140485(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0281757(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0035385(US,A1)
【文献】
特開平11−116469(JP,A)
【文献】
特開2012−031164(JP,A)
【文献】
RJPBCS,2011年,Vol.2, Issue2,pp.106-120
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4196
A61K 9/70
A61K 31/422
A61K 31/5513
A61K 31/5517
A61K 47/02
A61K 47/10
A61K 47/14
A61K 47/26
A61K 47/32
A61K 47/38
A61P 25/06
A61P 25/20
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直ちに湿潤可能な経口フィルムであって:
ビニルピロリドンのコポリマーではない、少なくとも1つの水溶性ポリマー;
少なくとも1つのビニルピロリドンのコポリマーを有さないフィルムと比較してフィルムの剛性を高めるために効果的な量の少なくとも1つのビニルピロリドンのコポリマー;
水性溶媒へのフィルムの分解率を高めるために効果的な量であって、フィルム中でのビニルピロリドンのコポリマーの二酸化チタンに対する重量比が3:1〜5:1である量の二酸化チタン;および
リザトリプタン、ゾルミトリプタン、アルプラゾラム、ジアゼパムおよびロラゼパムから成る群から選択される少なくとも1つの活性薬剤;
を含み、
前記経口フィルムに含まれる界面活性剤および多価アルコールは、それぞれ1000ppm(w/w)未満である、
経口フィルム。
【請求項2】
可塑剤をさらに含む、請求項1の経口フィルム。
【請求項3】
合成甘味料をさらに含む、請求項1の経口フィルム。
【請求項4】
天然甘味料をさらに含む、請求項1の経口フィルム。
【請求項5】
風味材料をさらに含む、請求項1の経口フィルム。
【請求項6】
抗酸化剤をさらに含む、請求項1の経口フィルム。
【請求項7】
ビニルピロリドンのコポリマーではない少なくとも1つの水溶性ポリマーが、ヒドロキシプロピルセルロースを含む、請求項1の経口フィルム。
【請求項8】
ビニルピロリドンのコポリマーではない少なくとも1つの水溶性ポリマーが、ヒドロキシプロピルセルロースとポリビニルピロリドンとの組み合わせを含む、請求項1の経口フィルム。
【請求項9】
活性薬剤がリザトリプタンベンゾエートである、請求項1の経口フィルム。
【請求項10】
ビニルピロリドンのコポリマーではない少なくとも1つの水溶性ポリマーがヒドロキシプロピルセルロースとポリビニルピロリドンとの組み合わせから成り、およびさらに可塑剤を含む、請求項1の経口フィルム。
【請求項11】
少なくとも1つの可塑剤と、合成甘味料、天然甘味料、風味材料、抗酸化剤、着色料および乳白剤から成る群から選択される少なくとも1つの添加剤とをさらに含む、請求項1の経口フィルム。
【請求項12】
ヒドロキシプロピルセルロースと、ポリビニルピロリドンと、トリアセチンと、ビニルピロリドン−ビニルアセテートコポリマーと、二酸化チタンと、リザトリプタンベンゾエートとから成り、ビニルピロリドン−ビニルアセテートコポリマーの、二酸化チタンに対する割合が3:1〜5:1である、請求項1の経口フィルム。
【請求項13】
スクラロースおよびグリチルリチン酸モノアンモニウムを含む合成甘味料をさらに含む、請求項12の経口フィルム。
【請求項14】
ブチルヒドロキシトルエンを含む抗酸化剤をさらに含む、請求項13の経口フィルム。
【請求項15】
ビニルピロリドンのコポリマーの量が0.1%〜25質量%である、請求項1の経口フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2013年7月31日に出願された米国仮特許出願第61/860345号の利益を主張する。この文献を引用により本明細書に組み入れる。
【0002】
本開示は、活性薬剤の経口投与用の急速に分解(または崩壊)するフィルムに、および特に、直ちに湿潤する性質と、認識され得る粒状の残留物を有さないことに起因する優れた口あたりとを示すタイプのフィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
フィルムタイプの経口の剤形はしばしば錠剤(またはタブレット)を飲み込むことが困難な患者に好まれる。ただし、フィルムが祖粒状の残留物を残すことなく非常に迅速に溶解または分解されることが重要である。そのため、良好な口あたりを示しながらも直ちに湿潤可能で、急速に分解することができるフィルムタイプの経口の剤形を開発することが求められている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、活性薬剤の経口投与用の迅速に分解するフィルムに、および特に、認識され得る粒状の残留物を有さないことに起因する優れた口あたりを示し、直ちに湿潤するタイプのフィルムに関する。
【0005】
経口投与において、直ちに湿潤可能であることと、迅速な分解とを実現する経口フィルム剤形(film oral dosage form)が、界面活性剤および多価アルコールを用いずに実現されることが分かった。具体的には、ビニルピロリドンのコポリマーではない少なくとも1つの水溶性ポリマーが、良好な口あたりを示し、かつ界面活性剤と多価アルコールとを含まず、直ちに湿潤可能で急速に分解するフィルム剤形を提供するように、1つ以上の活性薬剤、ビニルピロリドンのコポリマー、および二酸化チタンと結び付くことができることが判明した。
【0006】
強度、剛性および分解性(または崩壊性)の望ましい組み合わせを、ビニルピロリドンのコポリマーと二酸化チタンとを重量比で3:1〜5:1で添加することによって実現することができる。
【0007】
食品用可塑剤または薬学的観点から安全である可塑剤の添加によって、所望の特性が高められている特定の態様もまた開示される。
【0008】
さまざまな態様の、これらの、および他の特徴、利点および目的が、以下の明細書と、特許請求の範囲とに関してよりよく理解されるだろう。
【0009】
(開示の詳細な説明)
「直ちに湿潤可能である」という表現およびそのバリエーションは通常、フィルム剤形の、患者への経口投与において急速に水分を吸収して速やかに軟化する機能(これにより患者が、持続する不快な(adverse)感覚を口内で感じることを防ぐ)をいい、および、本開示のいくつかの要旨に関して、フィルムの表面に付いた水分(すなわち水)が、5、10または15秒以内でフィルムの厚み(例えば典型的には約5μm〜200μm)に浸透する態様をいう。
【0010】
用語「急速な分解」およびそのバリエーションは通常、許容期間の時間(例えば、60秒以内、45秒以内、30秒以内、20秒以内または15秒以内である投与時間、すなわち、患者の口腔に置かれる時間)内に、サブミクロン粒子になるか、または完全に溶解するフィルム剤形の機能をいう。
【0011】
用語「良好な口あたり」は通常、質感(またはテクスチャ)および堅さならびに本開示の文脈において最も注目すべき粒状性(すなわち、フィルムが粗い粒子を含むことが知覚され得る範囲)に関する知覚される性質の種類をいい、およびフィルムを経口で投与される患者の一般的な主観的知覚をいう。
【0012】
本開示のフィルムにおいて使用することができるビニルピロリドンのコポリマーではない水溶性ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、ヒドロキシエチルセルロースと、ヒドロキシプロピルセルロースとを含む水溶性セルロース誘導体;ポリビニルピロリドン(PVP);置換ビニルピロリドンのポリマー;ポリビニルピロリドンの誘導体;ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース;ポリビニルアルコール;キサンタン、トラガカント、グアー、アカシアおよびアラビアゴムを含む天然ゴム;および水溶性ポリアクリル酸が含まれる。これらの水溶性ポリマーの組み合わせを使用することができ、他の水溶性ポリマーを使用することもできる。置換ビニルピロリドンの例は、N−ビニル−3−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチル−2−ピロリドンなどを含む。
【0013】
用語「活性薬剤」は、薬学的観点から活性な薬剤、機能性食品学的観点から活性な薬剤、および口臭消臭剤を含む、患者に経口で投与される任意の薬剤をいう。薬学的観点から活性な薬剤の例は、ACE阻害剤、抗狭心症薬、不整脈治療剤、抗喘息薬、抗コレステロール薬(anti−cholesterolemic)、鎮痛剤、麻酔薬、抗けいれん剤、抗鬱薬、抗糖尿病剤、抗下痢調製物、解毒剤、抗ヒスタミン剤、抗高血圧薬、抗炎症性薬、抗高脂血(anti−lipid)剤、抗躁剤、制嘔吐剤、抗卒中薬剤、抗甲状腺調製物、抗がん薬(または抗腫瘍薬)、抗ウイルス性薬剤、にきび用薬、アルカロイド、アミノ酸調製物、鎮咳薬、抗尿酸血症(anti−uricemic)薬、抗ウイルス性薬、同化作用調製物、全身性および非全身性抗感染薬剤、抗新生物薬、抗パーキンソン病薬剤、抗リウマチ性薬剤、食欲促進剤、生物反応修飾物質、血液修飾剤(blood modifier)、骨代謝調節剤、心臓血管薬剤、中枢神経系刺激剤、コリンエステラーゼ阻害剤、避妊薬、充血除去剤、栄養補助食品、ドーパミン受容体作用薬、子宮内膜症の制御(management)薬剤、酵素、クエン酸シルデナフィル、タダラフィル、およびバルデナフィルなどの勃起障害治療薬、妊娠促進薬、胃腸の薬剤、ホメオパシー治療薬、ホルモン剤、高カルシウム血症および低カルシウム血症制御薬剤、免疫刺激剤、免疫抑制剤、リザトリプタン、エレトリプタンおよびゾルミトリプタンなどの抗片頭痛調製物、乗り物酔い止め治療薬(treatment)、筋弛緩薬、肥満制御薬剤、骨粗しょう症調製物、子宮収縮剤、副交感神経遮断薬、副交感神経興奮薬、プロスタグランジン、精神治療薬剤、呼吸性薬剤、ロラゼパムまたはジアゼパムなどの鎮静剤、ブロモクリプチン(bromocryptine)またはニコチンなどの禁煙補助薬、交感神経遮断薬剤、振戦用調製物、尿路薬剤、血管拡張剤、便秘薬、制酸剤、イオン交換樹脂、解熱剤、食欲抑制剤、去痰薬、アルプラゾラムのような抗不安性薬剤、抗潰瘍薬剤、抗炎症性薬物、冠動脈拡張剤、脳拡張剤(cerebral dilator)、末梢血管拡張剤、向精神剤、刺激剤、抗高血圧薬、血管収縮剤、抗生剤、精神安定剤、抗精神病薬、抗がん薬、抗凝血剤、抗血栓薬、催眠剤、鎮吐剤、制嘔吐剤、鎮痙剤、神経筋薬、血糖上昇および血糖降下薬剤、甲状腺および抗甲状腺調製物、利尿薬、抗けいれん剤(anti−spadmodic)、子宮弛緩薬(terine relaxant)、抗肥満薬、赤血球生成薬、抗ぜんそく剤(anti−astmatics)、鎮咳薬、粘液溶解薬、DNAおよび遺伝子修飾薬、およびこれらの組み合わせを含む。機能性食品性の活性薬剤の例には、さまざまな栄養補助食品、ビタミン、ミネラル、ハーブおよび栄養素が含まれる。口臭消臭薬剤には、例えば、スペアミント油、桂皮油、ハッカ油(またはペパーミント油)、丁子油、メントールなどが含まれる。
【0014】
本明細書で開示する経口フィルム剤形は、界面活性剤および多価アルコールを含まないか、または実質的に含まない。界面活性剤および多価アルコールを「実質的に含まない」という表現は、経口フィルム剤形が意図的に添加された界面活性剤または多価アルコールを含まないことと、含まれたとしても、任意の、避けられないか、または付随的である界面活性剤または多価アルコールが、湿潤性に関する測定可能な特性(例えば接触角度ゴニオメーター測定結果)、溶解(または溶出)率に関する測定可能な特性または崩壊率(または崩壊速度)に関する測定可能な特性に10%以上の影響を与えず、かつ測定可能な安定性の特性に悪影響を及ぼさない量で、他の成分中に不純物として存在するのみであることとを意味する。界面活性剤および多価アルコールを「含まない」という表現は、付随的であるか、または避けられない界面活性剤および多価アルコールの不純物が、水の接触角測定および溶解率に1%未満の影響を与える、無視できる量でのみ含まれることを意味する。いくつかの態様において、界面活性剤および多価アルコールの存在はそれぞれ、1000ppm(w/w)未満、500ppm(w/w)未満、100ppm(w/w)未満、40ppm(w/w)未満または10ppm(w/w)未満に限定される。
【0015】
用語「界面活性剤」および「多価アルコール」は、それらの通常の意味を有するよう意図されている。具体的には、用語「界面活性剤」は、液体の表面張力、2つの液体の間の界面張力または液体と固体との間の界面張力を下げる両親媒性(amphophilic)化合物を意味するよう意図されている。用語「多価アルコール」は、カルボニル基を有する糖質(または炭水化物)が水素化された形である(カルボニル基が第1級または第2級ヒドロキシル基に還元されている)糖アルコールを意味する。多価アルコールはそれらの化学式に基づいて区別することもできる。糖が一般式H(HCHO)
nHCOを有するのに対して、多価アルコールは一般式H(HCHO)
n+1Hを有する。本開示のフィルムにおいて避けられるかまたは除外される多価アルコールまたは糖アルコールの一般的な例には、グリコール、グリセロール、エリスリトール、スレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリトール(maltotritol)およびマルトテトライトール(maltotetraitol)が含まれる。
【0016】
ビニルピロリドンのコポリマーは通常、任意のビニルピロリドンのコポリマーであってよい。本明細書に記載されるフィルム中で使用できる市販のビニルピロリドンービニルアセテートコポリマー(コポビドン)には、Kollidon(登録商標)VA64コポビドン、Kollidon(登録商標)25コポビドン、Kollidone(登録商標)SRコポビドンおよびPlasdone(登録商標)S−630コポビドンが含まれる。コポビドンの添加は、例えば曲げ係数、引っ張り強度および硬度を高めることによってフィルムの剛性を高める。使用することができるビニルピロリドンコポリマーの他の例には、ポリ(1ービニルピロリドン−コ−2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリ(1ービニルピロリドン−コ−スチレン)、ポリ(1ービニルピロリドン)−グラフト−(1−トリアコンテン)、ポリ(ビニルピロリドン−コ−メチルメタクリレート)、ポリ(ビニルピロリドン−コ−N,N’−ジメチルアクリルアミド)およびポリ(ビニルピロリドン−コ−マレアート)が含まれる。フィルムの剛性または弾性係数(ヤング率(またはヤング係数))を、ビニルピロリドンのコポリマーを含まないがその他の点では同じものであるフィルムと比較して高めるのに効果的な量で、ビニルピロリドンのコポリマーを添加することができる。曲げ剛性は、フィルムに測定モーメントを加えて、生じたフィルムの曲がりで加えたモーメントを割った値を求めることで決めることができる。ビニルピロリドンのコポリマーの適切な量はフィルムの重量(または質量)の0.1%〜25%であって、例えば0.2%〜20%、0.5%〜20%、1%〜15%、2%〜15%または5%〜15%である。
【0017】
ビニルピロリドンのコポリマーの添加は、フィルムにおけるビニルピロリドンのコポリマーの二酸化チタンに対する重量(または質量)比が3:1〜5:1であるような量で二酸化チタンを添加することによって、湿潤性、崩壊率または口あたりに悪影響を及ぼすことなく、剛性を有利に高め得る。チタンの適切な量は、例えば、約0.02%〜約8%であり、例えば0.04%〜約7%、0.1%〜約7%、0.2%〜5%、0.4%〜5%または1%〜5%である。
【0018】
開示されたビニルピロリドンコポリマーと二酸化チタンの範囲の中では、急速な分解および良好な口あたりを実現すると同時に、改善された剛性またはより高い弾性係数の有利なバランスまたは組み合わせを実現することが可能である。
【0019】
フィルムの重量の約0.05%〜5%、0.1%〜3%または0.5〜2%の量で、二酸化チタンを加えることができる。本開示のフィルムにおいて、二酸化チタンは崩壊剤としての役割だけでなく、口あたりを改善する質感調節剤、および乳白化剤(opacify agent)または着色剤としての役割も果たす。この量は、フィルムの水性溶媒に溶解する割合を増加させるのに効果的である。添加されたコポビドンの量は、二酸化チタンの重量の3〜5倍の重量であってよい。二酸化チタンは、二酸化チタンを含まないことを除いて同一である組成物に対して高められた分解率を提供する。高められた分解率は5%以上、10%以上、20%以上、50%以上または75%以上であり得る。
【0020】
いくつかの態様において、本開示のフィルムは可塑剤を含み得る。用語「可塑剤」はフィルム形成ポリマー(例えば水溶性ポリマーまたはフィルム中の水溶性ポリマー)のガラス転移点(またはガラス転移温度)を下げる構成成分をいう。可塑剤はフィルムの可撓性を高め、弾性を強め、および脆性を低減する。本開示の経口フィルム剤形で使用され得る可塑剤の例には、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリオクチル、クエン酸トリヘキシル、セバシン酸ジブチルなどが含まれる。可塑剤は、経口フィルム剤形の全質量の25%以下である、0.5%〜25%、1%〜20%、2%〜15%または5%〜10%などの量で添加され得る。
【0021】
本明細書で開示される経口フィルム剤形中に含ませ得る薬の量は、通常、フィルムの全重量の0.01%〜50%であって、フィルムの全重量の1%〜40%、2%〜30%または5%〜20%などである。
【0022】
通常、必要または要求に応じて、界面活性剤および多価アルコール以外の従来の経口フィルム剤形の添加剤を、通常用いられる量で加えることができる。このような添加剤の例には、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムおよびグリチルリチン酸モノアンモニウムのような人工甘味料、スクロースおよびフルクトースのような天然甘味料;メントール、さまざまな果実フレーバー(例えばチェリー、グレープ、オレンジなど)またはさまざまなミントフレーバー(例えばスペアミント、ペパーミントなど)などの風味材料(またはフラボラント);着色料;乳白剤(opacifier)(例えば二酸化チタン);および抗酸化剤(例えばブチルヒドロキシトルエン)が含まれる。他の添加剤もフィルム特性またはフィルム安定性に悪影響を及ぼさない量で含まれ得る。具体的には、任意のこのような添加剤は、望ましくないフィルムの軟化およびのちの寸法安定性の損失、有効成分の分解(またはデグラデーション)を生じさせてはならず、フィルムの変色または認識され得る分離およびフィルムの構成成分の凝集のような望ましくない審美性を生じさせてはならない。
【0023】
ある態様において、本開示のフィルムを形成する方法には、水、水と低級アルコール(例えばエタノール)などの水混和性溶媒との組み合わせ、または単独であるかまたは混合物のような有機溶媒を使用して、通常、任意のオーダーで、さまざまな成分を混合することが含まれる。例えば、可塑剤および添加剤(例えば、甘味剤、着色料、風味材料および乳白剤)は十分な量の溶媒に溶解または分散され得、これは、均質な溶液または懸濁液を形成するために攪拌され、水溶性ポリマーを添加される。水溶性ポリマーの添加のあいだ、均質な溶液または均質な懸濁液が得られるまで、熱、真空および攪拌が必要に応じて適用され得る。その後有効成分が添加され、溶液または懸濁液は、担体材料の上にキャストまたはコートされ、そしてフィルムを形成するように乾燥される。適切な担体材料の例には、非シリコン系(non−siliconized)ポリエチレンテレフタレートフィルム、非シリコン系クラフト紙、ポリエチレン含浸クラフト紙および非シリコン系ポリエチレンフィルムが含まれる。液体フィルム組成物は、通常、ナイフオーバーロール、押出ダイ、リバースロールまたはマイヤーロール(Meyer roll)コーティング装置を含む、任意の従来のコーティング装置を用いて、担体材料の上にコートすることができる。
【0024】
生じた固体フィルムは乾燥時に、通常、5〜200μmの厚さである、10〜200μm、20〜150μmまたは20〜100μmなどの厚さを有し得る。目標とされた投与量の活性薬剤の投与をしやすくするために、このフィルムを適切なサイズを有する個片に切ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(例1)
リザトリプタン経口フィルム剤形は上記プロセスを用いて調製され、組成物は以下の表1に記載されている。
【表1】
【0026】
生じるリザトリプタンフィルムは25℃において、65%の相対湿度で少なくとも18ヶ月間安定であり、および、40℃において、75%の相対湿度で少なくとも6ヶ月間安定であった。被験者に少量の水で口を湿らせてもらい、そしてフィルムを舌に置いて口を閉じる前に、その水を飲みこんでもらう主観テストは、フィルムが良好な(すなわち不快でない)口あたりを有すること、および通常、15分未満、10分未満、5分未満、2分未満、またはさらに言えば1分未満以内の短時間で完全に溶解することを示した。被験者には、フィルムを噛んではならず、または飲み込んではならないが、口内の唾液に溶解させてもよいことを伝えた。分解の時間は、フィルムを完全になくならせる時間として記録される。
【0027】
(例2)
パロノセトロン(化学療法による吐き気および嘔吐を防ぐため、または治療するために使用される5−HT
3拮抗薬)経口フィルム剤形は上記プロセスを用いて調整され、組成物は以下の表2に記載されている。
【表2】
【0028】
(例3)
アルプラゾラム経口フィルム剤形は上記プロセスを用いて調整され、組成物は以下の表3に記載されている。
【表3】
【0029】
上記の記述は単なる好適な態様であると考えられる。これらの態様の変更が当業者または説明した態様を製造または使用する者によってなされるだろう。そのため、上記態様は単なる例であり、均等論を含む特許法の原則によって解釈される以下の請求項によって定義される本開示の範囲を限定することを意図していないことが理解される。