【課題を解決するための手段】
【0011】
上記技術的課題は、請求項1及び7に記載の特徴を有する上記方法及び装置によって解決される。本発明のその他の好適な構成は、従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明の基本思想は、既定の照射パラメータによってセキュリティ要素を照射すること、特に異なる複数の反射角度を成して当該セキュリティ要素によって反射された光の、或る特定の偏光によって偏光された成分の強度を測定することである。このとき、当該セキュリティ要素中の効果顔料の存在と、場合によっては或る特定の種類の効果顔料とが、当該強度に応じて推定され得る。
【0013】
セキュリティ文書のセキュリティ要素を確認するための方法が提唱される。当該セキュリティ要素は、当該セキュリティ文書中に又は当該セキュリティ文書上に配置又は含有され得る。
【0014】
上記セキュリティ要素は、光学的に可変な特性を有する少なくとも1つの物質を含み得る。当該物質は、特に粒子状の物質、特に粉末状の物質でもよい。粒子状の物質が、特にプレート状の粒子を含んでもよい。当該物質は、色素として存在してもよい。
【0015】
例えば、上記セキュリティ要素は、光学的に可変な特性を有する物質を形成している、複数のいわゆる電界減衰要素を含み得る。電界減衰要素が、例えば、大きく選択された比誘電率又は誘電率を有する誘電体材料から形成され得る。当該適切に大きく選択された比誘電率の結果として、及び、当該電界減衰要素間の中間領域の範囲内の、当該比誘電率によって引き起こされた電界の減衰に起因して、外部から印加された電界が、当該電界減衰要素によって増大され得る。その結果、蛍光色素を発光させるために必要な電界の強さが、上記中間領域内で得られることが有益に可能になる。この場合、当該電界減衰要素は、特に当該電界減衰要素に起因する中間領域と中間領域との間の大きさに関して、増幅効果を得るために適切に寸法決めされ得る。当該電界減衰要素が、導電性材料から形成されていることによって、非常に有益な電界の圧縮が、当該電界減衰要素に起因する当該中間領域内で達成可能である。その結果、当該複数の電界減衰要素は、それらの周囲によってそれぞれ絶縁された複数のいわゆる「フロート」電極を形成している。
【0016】
電界減衰要素は、約500μmまでの側面寸法、特に2μm〜100μmの寸法を有し得る。
【0017】
上記電界の、適切で且つ使用された蛍光色素に適合可能な作用及び集光のために、上記電界減衰要素は、好ましくは印刷技術的に、すなわち、例えばグラビア印刷技術又はシルクスクリーン印刷技術のような、例えば従来の印刷方法を使用して、セキュリティ文書の支持体上に印刷されている。
【0018】
上記電界減衰要素又はその一部は、約50より大きい比誘電率を有する色素として、特に導電性の色素として、上記蛍光色素に加えて、上記セキュリティ要素を形成しているマーキング層中に埋め込まれてもよい。
【0019】
しかしながら、上記の提唱されている方法は、電界減衰要素として形成されていないか又はこのような電界減衰要素を含有していない光学的に可変な物質を有するセキュリティ要素を確認するためにも適している。また、当該セキュリティ要素が、蛍光物質、例えば蛍光色素を含有することは、必ずしも必要でない。
【0020】
上記の光学的に可変な特性を有する物質は、いわゆる効果顔料とも記され得るか又はこのような効果顔料を含有し得る。当該光学的に可変な特性を有する物質は、異なる複数の照射角度及び/又は監察角度の下で、視覚的に知覚可能な様々な色彩の印象及び/又は明るさの印象を残し得る。様々な複数の色彩の印象の場合、この特性は、色相と記され得る。特に、1つの色相を有するか又は生じる複数の物質が、これによって製造されたセキュリティ要素において複写不可能な色彩の印象及び明るさの印象を発生させる。当該色彩の印象及び明るさの印象は、補助器具なしの肉眼によって良好に知覚可能である。
【0021】
上記光学的に可変な物質は、異なる少なくとも2つの照射角度又は観察角度を成す少なくとも2つ、最大で4つの光学的に明瞭に識別可能な離散した光を有し得る、好ましくは異なる2つの照射角度又は観察角度を成す2つの光学的に明瞭に識別可能な離散した光を有し得る、異なる3つの照射角度又は観察角度を成す光学的に明瞭に識別可能な離散した光を有し得る。特に、離散した複数の色調だけがそれぞれ存在し、中間色調が存在しない。すなわち、一方の色から他方の色へのより明瞭な変化が、光学的に可変な物質を含有するセキュリティ要素を傾けたときに識別可能である。この特性は、当該セキュリティ要素を真正として識別することを観察者に容易にさせ、同時に当該特徴の複写可能性を困難にする。何故なら、色調の効果が、通常のカラーコピー機では複写又は再生され得ないからである。
【0022】
上記物質の光学作用を完全に発揮できるようにするためには、本発明にしたがって使用される光学的に可変な特性を有する物質が、当該物質を含有するセキュリティ要素中で指向性を持つこと、すなわち当該物質が、セキュリティ文書の、当該セキュリティ要素を有する表面に対してほぼ平行に配向され得ることが有益である。
【0023】
特にプレート状の効果顔料が、光学的に可変な物質として使用され得る。例えば、Merck株式会社のIriodin(登録商標)、Colorstream(登録商標)、Xirllic(登録商標)、Lustrepak(登録商標)、Colorcrypt(登録商標)、Colorcode(登録商標)及びSecuralic(登録商標)の商品名の下で提供される、商店で購入可能な干渉顔料、Mearl社のMearlin(登録商標)、Eckhard社の金属顔料、並びに、例えばBASF社のVariochrom(登録商標)、Flex Products株式会社のChromafflair(登録商標)、Wacker社のHelicone(登録商標)又はSpectratec社のホログラフィック顔料のような角度依存性の(光学的に可変な)効果顔料、並びに、同様に商業的に購入可能なその他の顔料が、光学的に可変な物質として使用され得る。しかしながら、この列挙は、例示にすぎず、限定したものと見なしてはならない。
【0024】
特に、どんな色調が、どんな入射角度で、白色光の入射時に上記光学的に可変な物質によって反射されるかが知られ得る。
【0025】
セキュリティーフィーチャーによって不正製造及び/又は偽造から保護されている、物理的な存在であるあらゆる文書が、セキュリティ文書と記される。セキュリティーフィーチャーは、偽造及び/又は複製を少なくとも簡単な複写に対して困難にする特徴である。セキュリティーフィーチャーを有するか又は形成する物理的な存在が、セキュリティ要素と記され得るか又はセキュリティ要素を有し得る。1つのセキュリティ文書が、複数のセキュリティーフィーチャー及び/又は複数のセキュリティ要素を有し得る。ここで確定された定義の意味では、1つのセキュリティ文書が、1つのセキュリティ要素を常に意味するか又はこのようなセキュリティ要素を有する。機密である機密文書も含むセキュリティ要素に対する例は、例えば、パスポート、身分証明書、運転免許証、IDカード、入場券、健康保険証、銀行券、郵便切手、キャッシュカード、クレジットカード、スマートカード、切符、タグを網羅する。
【0026】
上記に提唱されている方法は、以下に記載されている方法ステップを有する。
【0027】
第1ステップでは、上記セキュリティ要素又はこのセキュリティ要素が配置されているセキュリティ文書の領域が、既定の少なくとも1つの照射パラメータによって照射される。当該照射は、例えば光源によって実行され得る。
【0028】
この場合、照射パラメータが、例えば或る照射角度を有する。この場合、この照射角度は、光の入射角度又は入射ビーム角度を意味する。この入射角度は、当該光の入射面内の、入射光と上記セキュリティ要素又は上記セキュリティ文書の表面の法線ベクトルとの間の角度として規定され得る。この場合、当該入射光の光ビームが、上記のセキュリティ要素又はセキュリティ文書の表面に対して垂直に指向されている当該入射面内に延在している。
【0029】
さらに、照射パラメータは、上記入射光の波長であり得る。さらに、照射パラメータは、上記入射光の偏光状態であり得る。偏光状態は、例えば偏光方位及び/又は偏光に関する楕円率に応じて表現され得る。照射パラメータは、特に当該入射光の強度でもよい。
【0030】
当然に、上記入射光の別の照射パラメータも、既定の照射パラメータとして選択されることが考えられる。
【0031】
上記少なくとも1つの照射パラメータは、特に、ユーザによって設定可能な照射パラメータでもよい。
【0032】
第2方法ステップでは、上記セキュリティ要素によって反射された光が、第1偏光を有する第1成分に分岐される。以下では、当該反射された光の第1偏光を有する第1成分は、第1成分とも略記される。特に、或る既定の反射角度を成して上記セキュリティ要素又は上記セキュリティ文書によって反射される光が分岐され得る。したがって、或る特定の偏光を有する1つの成分又は1つの要素が、当該セキュリティ要素によって反射された光から分岐される。当該第1成分の偏光角度が、例えば反射面又は出射面に対して測定される。この場合、当該反射面又は出射面は、当該セキュリティ要素又はセキュリティ文書の上記の表面に対して垂直に指向されていて、当該反射光の光ビームが、当該反射面又は出射面内に延在している。例えば、当該第1成分が、90°の偏光角度を有する。しかしながら、当然に、当該偏光角度は、90°とは異なる値を有してもよい。以下で、当該角度をさらに説明する。
【0033】
この場合、上記分岐は、偏光を分岐するための手段、特にいわゆる偏光フィルタによって実行され得る。
【0034】
第3方法ステップでは、或る反射角度を成して反射される反射光の第1成分の強度が測定される。この場合、当該反射角度は、上記の光の反射面内の角度として、当該反射光と上記セキュリティ要素又は上記セキュリティ文書の表面の法線ベクトルとの間の角度として規定される。この場合、当該反射光の光ビームが、このセキュリティ要素又このセキュリティ文書の上記の表面に対して垂直に指向されている当該反射面内に延在している。当該反射面は、出射面とも記され得る。この場合、当該強度の測定は、少なくとも1つの反射角度に対して、特に互いに異なる複数の反射角度に対して実行される。
【0035】
第4の方法ステップでは、光学的に可変な特性を有する物質の存在が、上記第1成分の強度に応じて確認される。この場合、当該第1成分の強度は、強度を測定するための手段、例えば光センサによって測定され得る。さらに、光学的に可変な特性を有する物質の種類又はタイプを、当該第1成分の強度に応じて確認することが可能になり得る。以下では、当該物質の種類又はタイプは、種類とも略記される。上記セキュリティ要素は、確認されたその種類に応じても確認され得る。1つの種類が、既定の物質又は規定の物質の組成から成る1つのセキュリティ要素を特徴付ける。当該確認は、このために定量的に検出又は測定され得る反射角度に応じて実行されてもよい。
【0036】
上記の提唱されている方法は、上記光学的に可変な物質によって奏される2つの効果を有益に利用する。第一の効果では、上記入射光の偏光状態が、光学的に可変な特性を有する物質によって変化する。当該変化は、上記セキュリティ要素によって反射された光の偏光特性が、上記入射光の偏光特性と区別されることを意味する。この効果は、当該入射光の複数の偏光成分のうちの主として1つの偏光成分が物質に固有のブリュースター角を成して反射されるという既知の効果に似ている。
【0037】
第二の効果は、上記の光学的に可変な特性を有する物質に起因した複数の反射光ビームの干渉によって奏されている。この場合、当該干渉は、物質の幾何学的寸法、特に層厚又は物質の構成要素、特に顔料によって決まる。当該干渉は、上記セキュリティ要素又はセキュリティ文書の(理想的に平坦な)表面に対する当該物質の構成要素の配向によっても決まる。したがって、当該干渉は、当該セキュリティ要素の表面の不均一性によって決まる。入射光の少なくとも一部が、光学的に可変な特性を有する物質を透過し得るので、当該干渉は、この物質の下に存在する層、例えば紙層によっても決まる。紙の表面に関連する不均一性が、例えば干渉層の厚さよりも非常に大きくなり得る、例えば個々の顔料粒子又は粒子集合体に相当する。
【0038】
したがって、上記セキュリティ文書と上記セキュリティ要素との物質の組成、並びに、当該セキュリティ文書中又は上の光学的に可変な特性を有する物質の要素、特に顔料の分布及び配向が、上記入射光の散乱を発生させる。
【0039】
上記の2つの効果は、協働して、光学的に可変な特性を有する物質による偏光した光の散乱を引き起こす。この場合、当該偏光した光の散乱は、光学的に可変な特性を有する物質の存在と、以下でさらに詳しく説明するように、場合によっては当該物質の種類とを確認することを可能にする特性を有する。上記の2つの効果に加えて、例えば、同様に上記セキュリティ要素とこのセキュリティ要素の下に存在する層との表面の不均一性によって発生する散乱効果を当該偏光した光の散乱に寄与させることも可能である。
【0040】
特に、上記の効果の結果として、上記セキュリティ要素によって反射された、特定の偏光特性を有する光が、特定の反射角度の下で規定の強度を有する。
【0041】
上記の偏光特性の変化は、特に光学的に可変な特性を有する物質の種類によって決まり得る。当該偏光特性の変化は、少なくとも1つの照射パラメータによっても決まり得る。
【0042】
例えば、上記強度が、既定の強度に一致するか又は規定の強度間隔内に存在する場合に、光学的に可変な特性を有する物質の存在が、上記第1成分の強度に応じて確認され得る。例えば、当該第1成分の強度が、既定の強度よりも大きいか又は規定の強度よりも小さいか又は規定の強度間隔内の既定の強度の近辺に存在する場合に、当該存在が確認され得る。
【0043】
この場合、上記既定の強度は、例えば予備テスト中に検出され得る。光学的に可変な特性を有する物質の1つの種類又は複数の種類が、予備テスト中に及び/又はシミュレーションによって確認され得る。この場合、様々な確認パラメータが設定され得る。例えば、様々な照射パラメータが設定され得る。この代わりに又はこれに加えて、様々な反射角度が設定され得る。さらに、この代わりに又はこれに加えて、上記第1成分の強度が、この第1成分の様々な偏光状態に対して測定され得る。或る偏光状態が、例えば1つの偏光角度によって表現され得る。さらに、この代わりに又はこれに加えて、当然に、当該第1成分の強度の高さに影響する設定可能なパラメータがさらに設定され得る。
【0044】
このとき、上記の物質の種類と、上記の設定された確認パラメータと、上記の設定された確認パラメータに応じて検出された第1成分の強度とが、例えば記憶装置内に例えばデータバンク式に記憶され得る。
【0045】
このとき、本発明にしたがって測定された上記第1成分の強度が、記憶された複数の強度と比較され得る。光学的に可変な特性を有する物質の複数の種類のうちの少なくとも1つの存在が、当該比較に応じて確認され得る。当該存在の確認に加えて、その種類も識別され得る。例えば、特定の確認パラメータによる確認時に、本発明にしたがって測定された当該第1成分の強度が、同じ確認パラメータの下で検出された記憶された1つの強度と違わないか又は規定の程度しか違わない場合に、当該種類は、当該記憶された1つの強度に割り当てられた種類として識別され得る。例えば、本発明にしたがって識別された種類が、認証された文書に対して予測される種類に一致するときは、当該種類の確認は有効であり得る。したがって、本発明にしたがって識別された種類が、認証された文書に対して予測される種類に一致しないときは、当該種類の確認は有効であり得ない。
【0046】
上記の提唱されている方法は、光学的に可変な特性を有する物質の少なくとも1つの存在の確実な認証を有益に可能にする。特に、蛍光顔料の発光と色の潜像の分析との双方が、上記セキュリティ要素の確認に対して不要である。
【0047】
上記方法は、特に以下のステップを有する:
1つの方法ステップでは、或る指向反射角度を成して反射される反射光の第1成分の強度が測定される。この場合、当該指向反射角度は、絶対値に関して入射角度に一致するが、規定された共通の角度に対して相違する符号を有する。
【0048】
別のステップでは、少なくとも1つの別の反射角度を成して反射される反射光の第1成分の強度が測定される。この場合、当該少なくとも1つの別の反射角度は、上記指向反射角度とは異なる。したがって、当該少なくとも1つの別の反射角度は、当該指向反射角度とは異なるように選択される。特に、当該少なくとも1つの別の反射角度は、絶対値に関して当該指向反射角度よりも小さくてもよく又は大きくてもよい。この場合、当該少なくとも1つの別の反射角度は、上記の反射角度でもよい。
【0049】
上記第1成分の強度は、上記のように、当該強度を測定するための手段、例えば光学センサによって測定され得る。当該第1成分が、異なる角度の下で、偏光を分岐するために上記手段によって分岐され、当該第1成分の強度が、強度を検出するために当該手段によって測定されることが可能である。
【0050】
この代わりに、上記第1成分が、上記指向反射角度を成す反射時に偏光を分岐するために1つの第1手段によって分岐され、この第1成分の強度が、強度を検出するために1つの第1手段によって測定されることが可能である。この場合、当該第1成分は、上記少なくとも1つの別の角度の反射時に偏光を分岐するために1つの別の手段によって分岐され、この第1成分の強度が、強度を検出するために1つの別の手段によって測定される。
【0051】
1つの別のステップでは、少なくとも2つの特定の強度が比較される。上記少なくとも1つの別の反射角度を成す反射時の第1成分の強度が、上記指向反射角度を成す反射時の第1成分の強度よりも大きい場合に、光学的に可変な特性を有する物質の存在が確認される。
【0052】
当然に、全てにおいて上記指向反射角度とは異なる複数の別の反射角度を成す反射時の第1成分の強度が測定され得る。
【0053】
上記指向反射角度を成す反射時の第1成分の強度が、上記の少なくとも1つの別の反射角度/複数の別の反射角度を成す反射時の第1成分の強度よりも大きい場合に、光学的に可変な特性を有する物質の存在が確認され得ない。
【0054】
上記指向反射角度とは異なる1つの反射角度又は複数の当該反射角度を成す反射時の第1成分の強度が、当該指向反射角度を成す反射時の第1成分の強度よりも大きい場合に、光学的に可変な特性を有する物質の存在が確認され得る。
【0055】
上記の提唱されている方法は、少なくとも2つの強度の簡単に実行可能な比較によって、光学的に可変な特性を有する物質の少なくとも1つの存在の確実な確認を有益に可能にする。この場合、ほとんどの物質又は物質の組成の場合の反射光の強度が、上記指向反射角度を成す反射時に上記第1成分の最大強度を有するという効果が利用される。すなわち、例えば偽造の確認時に光学的に可変な特性を有する物質として使用される物質が、当該指向反射角度の反射時に当該第1成分の最大強度を有することが、例えば予備テスト中に確認され得る。
【0056】
別の実施の形態では、少なくとも1つの反射角度、特に少なくとも1つの別の反射角度が、特性散乱角度として選択される。この場合、当該特性散乱角度は、少なくとも1つの照射パラメータと光学的に可変な特性を有する確認すべき物質の種類とによって決まる。
【0057】
その結果、光学的に可変な特性を有する物質、特に或る既定の種類の物質の存在の確実な確認が、有益に可能になる。同様に、その結果、上記セキュリティ要素のさらに確実な確認が、有益に可能になる。
【0058】
この実施の形態では、上記第1成分の強度の最大値が、物質に固有の特性散乱角度を成して発生するように、光学的に可変な特性を有する当該固有の物質が、上記の偏光した光の散乱を発生させるという効果が利用される。
【0059】
したがって、光学的に可変な特性を有する或る特定の種類の物質が、上記セキュリティ要素中に存在するか否かが確認されなければならない場合、上記少なくとも1つの別の反射角度が、上記物質に固有の特性散乱角度に応じて選択され得る。当該固有の物質が、当該セキュリティ要素中に実際に含まれている場合、当該特性散乱角度を成す反射時の第1成分の検出された強度が、上記指向反射角度を成す反射時に検出された強度よりも大きいことが、より大きい確信を持って保証されている。しかしながら、当該特性散乱角度の下で検出された第1成分の強度が、より小さい場合、当該固有の物質が、当該セキュリティ要素中に存在する可能性が、この時点で既に排除され得る。
【0060】
好適な実施の形態では、上記特性散乱角度を成す反射時の第1成分の強度が、最大である場合に及び/又は規定の強度に一致する場合に、光学的に可変な特性を有する或る特定の物質が識別される。
【0061】
第1の別形態では、複数の反射角度を成す反射時の第1成分の強度が、例えば既定の角度範囲の複数の反射角度に対して測定され得る。すなわち、複数の反射角度に対する強度変化が測定され得る。当該第1成分の強度が最大である反射角度が、この強度変化から測定され得る。このとき、光学的に可変な特性を有する物質の種類が、最大強度のこの反射角度に応じて識別され得る。
【0062】
例えば、特定の確認パラメータによる確認時に、本発明にしたがって測定された上記反射角度が、同じ確認パラメータの下で検出された上記の記憶された特性散乱角度と違わないか又は規定の程度しか違わない場合に、上記種類は、当該記憶された1つ特性散乱角度に割り当てられた種類として識別され得る。当該識別は、例えば、適切に構成された評価装置によって実行され得る。
【0063】
このため、上記のように、物質に固有のそれぞれの特性散乱角度が、光学的に可変な特性を有する様々な種類の物質に対して、場合によっては様々な確認パラメータに対して、例えばデータバンク内に記憶され得る。これらの情報は、例えば予備テストによって検索され得る。
【0064】
この代わりに又はこれに加えて、上記特性散乱角度を成して反射された光の第1成分の強度が、既定の複数の強度値と比較され得る。例えば、この代わりに又はこれに加えて、上記のデータバンクが、様々な種類の物質と、場合によっては様々な確認パラメータとに対して、当該特性散乱角度の下で測定される第1成分の複数の強度も有し得る。その結果、光学的に可変な特性を有する或る固有の物質の時間的に速い識別が、有益に可能になる。
【0065】
このため、上記第1成分の強度が、上記入射光の強度に規格化され得る。その結果、当該入射光の強度が異なるか又は変動するときでも、当該強度の確実な測定が、有益に可能になる。
【0066】
したがって、セキュリティ文書のセキュリティ要素を確認するための方法では、このセキュリティ要素が、少なくとも1つの既定の照射パラメータによって照射され、セキュリティ要素によって反射された光が、第1偏光を有する第1成分に分岐され得る。このとき、当該第1成分の強度が、少なくとも上記の特性散乱角度を成す反射時に測定され得る。当該第1成分の強度が、既定の強度に一致する場合に、光学的に可変な特性を有する固有の物質の存在が確認され、場合によっては当該物質の或る特定の種類が確認される。その結果、光学的に可変な特性を有する固有の物質の存在の強度に基づく確実な確認と、当該物質の識別とが、有益に可能になる。
【0067】
別の実施の形態では、上記セキュリティ要素によって反射された光が、上記第1成分と、上記第1成分に対して直交する偏光を有する別の成分とに分割される。この場合、さらに当該別の成分の強度に応じて、光学的に可変な特性を有する物質の存在が確認され、及び/又は、光学的に可変な特性を有する物質の或る特定の種類が識別される。
【0068】
このため、上記別の成分の強度も測定され得る。特に、当該測定は、上記指向反射角度を成して反射された光と、この指向反射角度とは異なる反射角度を成して反射された光とに対して実行される。
【0069】
この場合、光学的に可変な特性を有する物質の存在が、上記第1成分の強度と上記別の成分の強度との違いに応じて確認され得る。当該違いは、例えば差又は比として評価され得る。例えば、当該比が、既定の閾値よりも大きい場合に、光学的に可変な特性を有する物質の存在が確認され得る。
【0070】
すなわち、特に、異なる複数の偏光状態に対する強度の分布が、最大値と最小値とを有するように、上記反射光が、有益に偏光されるという効果が有益に利用される。この場合、90°の偏光角度が、最大値と最小値との間に存在する。
【0071】
この代わりに又はこれに加えて、光学的に可変な特性を有する或る特定の種類の物質が、さらに上記別の成分の強度に応じて識別され得る。
【0072】
例えば、上記別の成分の強度は、光学的に可変な特性を有する或る特定の種類の物質に対して固有であり得る。
【0073】
また、上記別の成分の強度に対する上記第1成分の強度の違い、特に比が、或る特定の種類の物質に対して固有であり得る。
【0074】
したがって、光学的に可変な特性を有する或る特定の種類の物質が、より確実に有益に確認され得る。上記別の成分に固有の強度が、上記のように、対応するデータバンク内にも記憶され得る。
【0075】
したがって、セキュリティ文書のセキュリティ要素を確認するための方法では、当該セキュリティ要素が、少なくとも1つの既定の照射パラメータによって照射され得る。このとき、当該セキュリティ要素によって反射された光が、第1偏光を有する第1成分と、この第1成分に対して直交する偏光を有する別の成分とに分岐され得る。このとき、当該第1成分の強度と、当該別の成分の強度とが測定され得る。当該測定は、特に、上記の特性散乱角度を成して反射される光に対して実行され得る。
【0076】
例えば、上記第1成分の強度と上記別の成分の強度とが、既定の程度だけ異なる場合に、光学的に可変な特性を有する物質の存在が確認され得る。例えば、当該別の成分の強度に対する当該第1成分の強度の比が、既定の閾値よりも大きい場合に、当該存在が確認され得る。
【0077】
この代わりに又はこれに加えて、光学的に可変な特性を有する或る特定の種類の物質が、上記第1成分と上記別の成分との強度に応じて識別され得る。例えば、当該第1成分の強度と当該別の成分の強度との双方が、或る特定の種類の物質に対して固有であり得る。また、当該別の成分の強度に対する当該第1成分の強度の違い、特に比が、当該特定の種類の物質に対して固有であり得る。当該強度の違いは、特に、予め設定されている確認パラメータに対して、特に上記の特性散乱角度に対して成立し得る。
【0078】
したがって、或る特定の種類の物質が、既定の確認パラメータによって確認されるときに、上記第1成分と上記別の成分とが、どんな強度及び/又はどんな強度比を有するかが、例えば予備テスト及び/又はシミュレーション中に確認され得る。このとき、先で既に説明したように、確認が、この結果に応じて実行され得る。
【0079】
別の実施の形態では、上記第1成分の偏光方向と反射面との間の角度が、特性偏光角度として選択される。この場合、当該特性偏光角度は、少なくとも1つの照射パラメータと、光学的に可変な特性を有する確認すべき物質の種類とによって決まる。特に、当該第1成分の強度が、残りの偏光方向を有する成分の強度に比べて最大であるように、当該第1成分の偏光方向と当該反射面との間の角度が選択される。したがって、当該第1成分が、異なる複数の偏光方向に対して最大の強度を有するように、当該第1成分が分岐される。この場合、対応する偏光角度は、光学的に可変な特性を有する物質の種類に対して固有であり、少なくとも1つの照射パラメータによって決まる。
【0080】
したがって、予備テスト及び/又はシミュレーション中に、異なる複数の照射パラメータと、光学的に可変な特性を有する物質の異なる複数の種類とのそれぞれに対して、当該第1成分が最大強度を有する角度が、当該第1成分の偏光方向と当該反射面との間で確認され得る。この角度は、特性偏光角度として、例えば上記のデータバンク内に記憶され得る。当該第1成分の偏光方向と当該反射面との間の角度は、先に既に説明した複数の確認パラメータのうちの1つの確認パラメータでもよい。
【0081】
上記確認に対する以下の方法の場合、上記偏光方向と上記反射面とが、上記特性偏光角度を成すように、上記反射光が分岐されるように、例えば、偏光を分岐するための手段が配置され得る。
【0082】
上記特性偏光角度も、物質に固有であるので、光学的に可変な特性を有する或る特定の種類の物質の識別の信頼性が、有益に向上する。
【0083】
別の実施の形態では、上記セキュリティ要素が、直線偏光によって照射される。これにより、楕円偏光に比べて安価な測定装置が、有益に得られる。
【0084】
上記セキュリティ要素は、上記のように、光学的に可変な特性を有する物質と、蛍光物質、特に蛍光顔料との双方を含有し得る。特に、当該光学的に可変な特性を有する物質は、電界減衰要素を含有又は形成し得る。この場合、上記の提唱されている方法を実行する前に、当該蛍光顔料を発光させるための交番電界が、当該セキュリティ要素に印加され得る。その後に、放射された蛍光又は放射された蛍光ビームが検出され得る。放射された蛍光ビームが検出された場合に、及び/又は、当該蛍光ビームの特性が、既定の特性に一致する場合に初めて、本発明の方法が実行され得る。したがって、当該蛍光物質が、問題なく確認された場合に初めて、本発明の方法が実行され得る。すなわち、(或る特定の種類の)蛍光物質の存在が検出された場合に初めて本発明による確認が実行される。当該蛍光物質の確認が成功しなかった場合、当該方法は中断され得る。この場合、当該確認のための本発明の方法は実行されない。
【0085】
この代わりに、上記の確認のための本発明にしたがって提唱されている方法が、最初に実行されてもよい。この場合、上記光学的に可変な特性を有する物質が、問題なく確認された後に初めて、上記蛍光物質が、さらに確認される。このため、上記蛍光顔料を発光させるための交番電界が、上記セキュリティ要素に印加され得る。これにより、放射された蛍光又は放射された蛍光ビームが検出され得る。例えば、放射された蛍光ビームが検出された場合に、及び/又は、当該蛍光ビームの特性が、既定の特性に一致する場合に、当該蛍光物質が確認され得る。当該光学的に可変な特性を有する物質の確認が失敗した場合、当該蛍光物質も確認されない。
【0086】
セキュリティ文書のセキュリティ要素を確認するための装置も提唱される。この場合、当該セキュリティ要素は、光学的に可変な特性を有する少なくとも1つの物質を含み得る。
【0087】
上記装置は、上記セキュリティ要素を照射するための少なくとも1つの光源を有する。この場合、当該光源は調整可能である。特に、当該光源の照射パラメータが調整可能である。すなわち、当該光源によって生成された光の、例えば、波長、強度、入射角度及び/又は偏光状態が調整され得る。
【0088】
当然に、上記装置が、上記光源のほかにその他の光学要素、例えば、光学フィルタ、変調器及びビームを誘導するための手段を有することが提唱可能である。この場合、上記光源によって生成された光の照射パラメータが、これらの光学要素によって調整可能である。すなわち、例えば、上記入射光の偏光状態が、偏光フィルタによって調整され得る。
【0089】
さらに、上記装置は、上記セキュリティ要素によって反射された光の偏光を分岐するための少なくとも1つの手段を有する。第1偏光を有する当該反射光の第1成分が、当該偏光を分岐するための手段によって分岐可能である。
【0090】
このため、上記第1成分の偏光方位が、上記の特性偏光角度に一致するように、上記偏光を分岐するための手段は構成及び/又は配置され得る。
【0091】
さらに、上記装置は、上記第1成分の強度を検出するための少なくとも1つの第1手段を有する。
【0092】
さらに、上記装置は、少なくとも1つの評価装置、例えば、マイクロプロセッサとして構成された評価装置を有する。当該評価装置は、上記強度を検出するための手段に信号技術的に接続され得る。
【0093】
或る反射角度を成して反射される反射光の第1成分の強度が、上記の強度を検出するための第1手段によって、少なくとも1つの反射角度に対して測定可能である。光学的に可変な特性を有する物質の存在が、上記評価装置によって、当該第1成分の強度に応じて確認可能である。
【0094】
この場合、上記装置は、上記の複数の方法のうちの1つの方法の実行を有益に可能にする。
【0095】
特に、或る指向反射角度を成して反射される反射光の第1成分の強度が、上記の強度を検出するための第1手段によって測定可能である。少なくとも1つの別の反射角度を成して反射される反射光の第1成分の強度が、強度を検出するための当該第1手段又は別の手段によって測定可能である。この場合、この別の反射角度は、当該指向反射角度とは異なる。
【0096】
このとき、上記少なくとも1つの別の反射角度を成す反射時の第1成分の強度が、上記指向反射角度を成す反射時の第1成分の強度よりも大きい場合に、光学的に可変な特性を有する物質の存在が、上記評価装置によって確認可能である。
【0097】
この場合、上記第1成分が、専ら上記指向反射角度を成して分岐され、この第1成分の強度が検出されるように、上記の偏光を分岐するための手段と強度を検出するための第1手段との双方が構成及び/又は配置されてもよい。
【0098】
上記指向反射角度とは異なる少なくとも1つの別の反射角度を成す反射時の第1成分の強度も、上記の強度を検出するための第1手段によって測定可能である。このため、上記少なくとも1つの別の反射角度を成して反射される光だけが、分岐されて検出されるように、上記の強度を検出するための第1手段と、場合によっては偏光を分岐するための手段との配置、特に位置及び/又は方向が変更可能でもよい。このため、上記装置は、上記の強度を検出するための第1手段及び/又は偏光を分岐するための手段の配置、特に位置及び/又は方向を調整するための適切な調整装置を有し得る。
【0099】
この代わりに、上記少なくとも1つの別の反射角度を成す反射時の第1成分の強度が、強度を検出するための別の手段によって測定され得る。この場合、上記装置は、偏光を分岐するための別の手段も有し得る。この場合、当該第1成分が、当該少なくとも1つの別の反射角度を成して反射される光だけから分岐され、この第1成分の強度が測定されるように、当該強度を検出するための別の手段及び/又は当該偏光を分岐するための別の手段が構成及び/又は配置され得る。
【0100】
上記少なくとも1つの別の反射角度を成す反射時の第1成分の強度が、上記指向反射角度を成す反射時の第1成分の強度よりも大きい場合に、光学的に可変な特性を有する物質の存在が、上記評価装置によって確認され得る。
【0101】
この場合、上記の強度を検出するための第1手段及び/又は強度を検出するための別の手段は、空間的に固定されて設置され得る。このことは、強度を検出するための対応する手段の位置及び/又は方向が固定されていることを意味する。
【0102】
この場合、上記の提唱されている方法は、上記の複数の方法のうちの1つの方法の実行を有益に可能にする。
【0103】
別の実施の形態では、上記の強度を検出するための第1手段の少なくとも1つの入射角度が調整可能である。このことは、上記セキュリティ要素に対する当該検出するための第1手段の相対位置及び/又は相対方向が変更され得ることを意味する。したがって、例えば、当該強度を検出するための第1手段の位置及び/若しくは方向並びに/又は当該セキュリティ要素の位置及び/若しくは方向が変更され得る。特に、希望した反射角度が設定されるように、当該入射角度が選択され得る。
【0104】
この代わりに又はこれに加えて、上記装置は、上記第1成分の強度を検出するための少なくとも1つの別の手段を有する。この場合、当該強度を検出するための少なくとも1つの別の手段の入射角度が調整可能である。このことは、上記セキュリティ要素に対する当該強度を検出するための別の手段の相対位置及び/又は相対方向が変更され得ることを意味する。
【0105】
当然に、上記の偏光を分岐するための手段及び/又は偏光を分岐するための別の手段の位置及び/又は方向も変更され得る。したがって、偏光を分岐するためのこれらの手段の入射角度も調整可能である。
【0106】
その結果、複数の入射角度と反射角度とに対する第1成分の強度の検出が、有益に可能になる。したがって、光学的に可変な特性を有する異なる種類の物質も、様々な装置によって識別され得る。この場合、これらの様々な種類は、様々な特性散乱角度を有する。
【0107】
別の実施の形態では、上記第1偏光に対して直交する偏光を有する別の成分が、上記の偏光を分岐するための少なくとも1つの手段によって、上記セキュリティ要素によって反射された光からさらに分岐可能である。この場合、上記装置は、当該別の成分の強度を検出するための手段を有し得る。
【0108】
さらに、上記第1手段及び/又は上記の偏光を分岐するための少なくとも1つの別の手段が、偏光ビームスプリッタとして又は偏光フィルタとして、特に偏光フィルムとして構成され得る。
【0109】
本発明を複数の実施の形態に基づいて詳しく説明する。