(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記爪部移動機構が、前記上型と前記下型が前記爪部移動開始距離以下に近づいたときにさらに、前記保持面に保持される成形対象物の下端よりも上側に前記爪部を移動させるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂成形装置。
前記爪部移動機構がさらに、前記上型と前記下型を型開する際に該上型と該下型が第2爪部移動開始距離よりも離れたときに、前記保持面に保持される成形対象物の下側に前記爪部を移動させるものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂成形装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1) 第1の態様の樹脂成形装置
第1の態様の樹脂成形装置では、成形対象物は、保持面に設けられた成形対象物吸着機構により保持面に吸着され、上型に保持される。そして、成形対象物の下方(従って成形対象物の内側)に爪部が配置されている。このため、何らかの原因によって成形対象物吸着機構による成形対象物の保持面への吸着が作用しなくなったとしても、成形対象物が落下することはない。
【0017】
一方、上型と下型が爪部移動開始距離以下に近づいたときには、爪部移動機構により、爪部が成形対象物よりも外側に移動するため、それまで下方に爪部が配置されていた成形対象物表面の部分にも、樹脂封止を行うことができる。これにより、作製する樹脂成形品を大きくすることができる。ここで「爪部移動開始距離」とは、仮に成形対象物吸着機構が機能しなくなって成形対象物が上型から落下したとしても(成形対象物の下方に爪部が配置されていなくても)問題が生じない上型と下型の距離で定義される。
【0018】
なお、爪部は、成形対象物吸着機構によって成形対象物を保持面に吸着させることができなくなったときに成形対象物の落下を防止するためのものであるため、成形対象物の下方に爪部が配置されたときに、成形対象物の表面と爪部に多少の間隙が存在してもよい。
【0019】
本発明において、成形対象物は、例えば、基板であり、より具体的には、例えば、サブストレート、樹脂基板、配線基板、ウェハー、ガラス、金属板などがあげられる。ただし、本発明における成形対象物は、これらに限定されず、任意である。また、本発明において、成形対象物は、その一方の面にチップ等の部材が実装されていてもよいし、実装されていなくてもよい。
【0020】
第1の態様の樹脂成形装置において、前記爪部移動機構は、前記上型と前記下型が前記爪部移動開始距離以下に近づいたときにさらに、前記保持面に保持される成形対象物の下端よりも上側に前記爪部を移動させるものであることが望ましい。
【0021】
その理由を説明する。樹脂成形装置では一般に、成形後の樹脂成形品をキャビティから容易に離型するために、キャビティに樹脂材料を供給する前に、キャビティの内面に離型フィルムを張設する。離型フィルムは、後に樹脂成形品を取り出すために、また、上下型のクランプ面を確実に密着させるために、上下型のクランプ面(密着面)よりも大きい範囲を覆わなければならない。特許文献1の樹脂成形装置では、下型のクランプ面に、チャック爪で成形対象物を保持したままの状態で型締めをした際に該チャック爪を収容するための逃げ部が設けられており、この逃げ部の上にも離型フィルムが張設されることとなる。そうすると、型締めの際にチャック爪が離型フィルムを逃げ部に押し込み、それによって離型フィルムに皺が生じ、その皺が樹脂成形品に転写されてしまうおそれがある。それに対して、第1の態様の樹脂成形装置において上型と下型が爪部移動開始距離以下に近づいたときに爪部を成形対象物の下端よりも上側に移動させる爪部移動機構を用いた構成によれば、下型に逃げ部を設ける必要がなく、それにより爪部が離型フィルムを逃げ部に押し込むこともない。そのため、離型フィルムに皺が生じることを防ぎ、樹脂成形品に皺が転写されることを防ぐことができる。
【0022】
第1の態様の樹脂成形装置において、前記爪部移動機構はさらに、前記上型と前記下型を型開きする際に該上型と該下型が第2爪部移動開始距離よりも離れたときに、前記保持面に保持される成形対象物の下側に前記爪部を移動させるものであることが望ましい。これにより、型開きの際にも、成形対象物吸着機構によって成形対象物を保持面に吸着させることができなくなった場合に、爪部で成形対象物を保持するため、成形対象物が落下することがない。なお、前記爪部移動開始距離と前記第2爪部移動開始距離は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0023】
第1の態様の樹脂成形装置は、
さらに、押圧部と、前記保持面に保持される成形対象物の下方に前記爪部を付勢する付勢機構とを備え、
前記爪部が、略水平の回動軸と、該回動軸よりも前記保持面の外側寄りの下部に設けられた、前記上型と前記下型が前記爪部移動開始距離以下に近づいたときに前記押圧部によって押圧される被押圧部を有する
ことが望ましい。
【0024】
このような被押圧部、押圧部及び付勢機構を備える第1の態様の樹脂成形装置によれば、型締め時に上型と下型が爪部移動開始距離以下に近づくまでは、付勢機構が爪部を付勢することにより該爪部が成形対象物の下方に配置される。一方、上型と下型が爪部移動開始距離以下に近づいたときには、押圧部が被押圧部を押圧することにより、爪部は成形対象物の下方から成形対象物の外側に移動するように、回動軸を中心に回動するため、前述の効果を奏する。
【0025】
ここで爪部を回動させれば、爪部を成形対象物の外側において成形対象物の下端よりも上方まで移動させることができる。
【0026】
前記被押圧部、押圧部及び付勢機構を備える第1の態様の樹脂成形装置は、前記爪部がさらに、前記回動軸よりも前記保持面の外側寄りであって前記被押圧部とは異なる位置に第2被押圧部を備えることが望ましい。このような第2被押圧部は、成形対象物を保持面に保持させるとき、及び成形対象物を保持面から取り外すときに、爪部を成形対象物の外側に移動させるために用いることができる。その際、前記押圧部とは異なる第2押圧部で第2被押圧部を押圧するが、第2押圧部は第1の態様の樹脂成形装置の外に設ければよい。第2被押圧部が被押圧部とは異なる位置に設けられているため、第2押圧部と押圧部が干渉することはない。
【0027】
前記第2被押圧部を備える第1の態様の樹脂成形装置はさらに、
成形対象物を載置する成形対象物載置台と、
前記成形対象物載置台を昇降させる第1昇降機構と、
前記第1昇降機構を載置し、該第1昇降機構を昇降させる第2昇降機構と、
前記第2昇降機構の上端であって、前記成形対象物載置台を挟んで両側方に、前記第2被押圧部の横方向の位置に対応して設けられた第2押圧部と、
前記成形対象物載置台に載置された成形対象物が前記上型と前記下型の間であって前記保持面の直下となる位置と、前記上型と前記下型の間から外れた位置の間で、前記第2昇降機構を横方向に移動させる横移動機構と
を有する成形対象物搬送機構をさらに備えることが望ましい。
【0028】
この成形対象物搬送機構を用いて、以下のように樹脂成形を行う前の成形対象物を上型の保持面に搬入することができる。まず、成形対象物を成形対象物載置台に載置したうえで、横移動機構により第2昇降機構(並びに、それに直接又は間接的に載置された第1昇降機構、成形対象物載置台及び成形対象物)が上型と下型の間に移動する。その際、第2押圧部が爪部の第2被押圧部の横方向の位置に対応するようにする。そこから第2昇降機構を上昇させることにより、第2押圧部が第2被押圧部を押圧する。すると、爪部が保持面の外側に移動する。次に、成形対象物が保持面に当接するまで第1昇降機構が上昇する。その際、爪部は保持面の外側にあるため妨げになることがない。成形対象物吸着機構によって成形対象物を保持面に吸着させた後、第1昇降機構及び第2昇降機構が下降する。これにより、第2押圧部が第2被押圧部から離れ、爪部が保持面及び該保持面に保持された成形対象物の下部に移動する。その後、横移動機構により、第2昇降機構(並びに、第1昇降機構及び成形対象物載置台)が上型と下型の間から外れた位置に移動し、圧縮成形を行うことができるようになる。
【0029】
また、この成形対象物搬送機構を用いて、樹脂成形を行った後の成形対象物を上型の保持面から搬出することも可能である。その場合には、まず、横移動機構により第2昇降機構(並びに、第1昇降機構及び成形対象物載置台)が上型と下型の間に移動した後、第2昇降機構を上昇させることにより、第2押圧部が第2被押圧部を押圧することで爪部が保持面の外側に移動する、次に、第1昇降機構が上昇し、そこで成形対象物吸着機構による吸着を解除することにより、成形対象物を成形対象物載置台に載置する。その後、第1昇降機構及び第2昇降機構が下降したうえで、横移動機構により第2昇降機構(並びに、第1昇降機構、成形対象物載置台及び成形対象物)が上型と下型の間から外れた位置に移動することにより、成形対象物が搬出される。
【0030】
前記被押圧部、押圧部及び付勢機構を備える第1の態様の樹脂成形装置はさらに、
前記上型から下方に延び、前記上型と前記下型が前記爪部移動開始距離に近づいたときに下端が該下型の上面に当接し、前記押圧部が取り付けられている下型押さえ部と、
前記上型と前記下型押さえ部の間に設けられた弾性部材と、
を備えることが望ましい。
【0031】
このような下型押さえ部及び弾性部材を備える第1の態様の樹脂成形装置によれば、型締め時に上型と下型が爪部移動開始距離以下に近づいたときに、下型押さえ部に取り付けられた押圧部が被押圧部を押圧し、それにより爪部が成形対象物の下方から該成形対象物の下端よりも上方且つ成形対象物の外側に移動する。これにより、上型と下型の相対的な移動機構(型締め機構)の動力のみで爪部が移動するため、別途、爪部を移動させるための動力を要しない。それと共に、下型押さえ部の下端が下型の上面に当接するため、特に離型フィルムを用いる場合に、キャビティの外側に延びる離型フィルムを下型押さえ部により保持することができる。この場合、前記爪部移動開始距離は、下型押さえ部の下端が下型の上面に当接したときの上型と下型の距離で定義することができる。
【0032】
(2) 第2の態様の樹脂成形装置
第2の態様の樹脂成形装置では、真空ポンプによる気体の吸引によって成形対象物を該保持面に吸着させる第1成形対象物吸着機構と、真空ポンプによる気体の吸引以外によって成形対象物を該保持面に吸着させる第2成形対象物吸着機構を用いることにより、何らかの原因で真空ポンプが停止しても、第2成形対象物吸着機構によって成形対象物の吸着を維持することができる。一方、第2成形対象物吸着機構の動作が停止しても、第1成形対象物吸着機構によって成形対象物の吸着を維持することができる。このように、2系統の成形対象物吸着機構を併用することにより、成形対象物が上型から落下する可能性を低減することができる。
【0033】
また、第2の態様の樹脂成形装置では爪部を用いる必要がないため、作製する樹脂成形品を大きくすることができる。
【0034】
さらには、爪部を用いる必要がないことにより、離型フィルムを使用する場合に、離型フィルムに皺が生じることを防ぎ、樹脂成形品に皺が転写されることを防ぐことができる。
【0035】
第2成形対象物吸着機構として、真空エジェクタ、ベルヌーイチャック、静電チャック等を用いることができる。これらのうち真空エジェクタは、貯留された圧縮空気により動作することから、通常は、暫くの間は電力を必要としないため、停電や操作者による非常停止操作によって電力が断たれたときにも成形対象物の吸着を暫時維持することができるため望ましい。
【0036】
(3) 第1〜第4の態様の樹脂成形品製造方法
第1の態様の樹脂成形品製造方法は、第1の態様の樹脂成形装置を用いて圧縮成形法により樹脂成形品を製造するものである。第2の態様の樹脂成形品製造方法は、第2の態様の樹脂成形装置を用いて圧縮成形法により樹脂成形品を製造するものである。第3の態様の樹脂成形品製造方法は、第1の態様の樹脂成形装置を用いて移送成形法により樹脂成形品を製造するものである。第4の態様の樹脂成形品製造方法は、第2の態様の樹脂成形装置を用いて移送成形法により樹脂成形品を製造するものである。いずれの樹脂成形品製造方法においても、樹脂成形装置を上述のように動作させる点は従来の樹脂成形品製造方法と相違し、それ以外の点は従来の樹脂成形品製造方法と同様である。
【0037】
(4) 第1及び第2の態様の樹脂成形装置、並びに第1〜第4の態様の樹脂成形品製造方法の具体的な実施形態
以下、
図1〜
図15を用いて、第1及び第2の態様の樹脂成形装置、並びにそれら樹脂成形装置を用いた樹脂成形品製造方法のより具体的な実施形態を説明する。
【0038】
(4-1) 第1の態様の樹脂成形装置、及び第1の態様の樹脂成形品製造方法の一実施形態(第1実施形態)
(4-1-1) 第1実施形態の樹脂成形装置の構成
図1に、第1の態様の樹脂成形装置の一実施形態(第1実施形態)である樹脂成形装置10を示す。
図1(a)では樹脂成形装置10の全体を示し、(b)では成形型及びその周囲を拡大して示す。第1実施形態の樹脂成形装置10は、圧縮成形を行う装置であって、基盤111と、基盤111上に立設された2本のタイバー112と、上下に移動可能なようにタイバー112に保持された下可動プラテン121及び上可動プラテン122と、タイバー112の上端に固定された固定プラテン123と、基盤111上に設けられた、下可動プラテン121を上下動させるトグルリンク113とを備える。また、樹脂成形装置10は、下可動プラテン121の上面に第1下型152Aを、上可動プラテン122の下面に第1上型151Aを、上可動プラテン122の上面に第2下型152Bを、固定プラテン123の下面に第2上型151Bを、それぞれ備える。第1上型151Aと第1下型152Aにより第1成形型15Aが構成され、第2上型151Bと第2下型152Bにより第2成形型15Bが構成される。樹脂成形装置10はさらに、各プラテンと上型又は下型の間に、プラテン寄りに断熱材141を、上型又は下型寄りにヒータ142を、それぞれ備える。断熱材141は、本実施形態では柱状の断熱部材を複数本、2次元状に配置したものを用いるが、板状の断熱材等、他の断熱材を用いてもよい。
【0039】
次に、
図1(b)を参照しつつ、第1成形型15A及び第2成形型15Bの構成を説明する。第1成形型15Aと第2成形型15Bは同じ構成を有する。そのため、以下では第1成形型15Aの各構成要素を説明する。当該説明中の末尾が「A」である符号を「B」に変更したものが、第2成形型15Bの構成要素である。
【0040】
第1成形型15Aは、第1上型151Aと第1下型152Aから成る。
【0041】
第1上型151Aは、下面が成形対象物を保持する第1保持面1511Aとなっており、該第1保持面1511Aに気体吸引孔1512Aが設けられている。気体吸引孔1512Aは、第1上型151A及びヒータ142内に設けられた気体吸引管1513A、並びに該気体吸引管1513Aに接続され可撓性を有する接続管(図示せず)を介して、真空ポンプ191に接続されている。これら気体吸引孔1512A、気体吸引管1513A、接続管及び真空ポンプ191により、成形対象物吸着機構19が構成されている。なお、真空ポンプ191の代わりに真空エジェクタを用いてもよい。あるいは、ここで示した成形対象物吸着機構19の代わりに、ベルヌーイチャックや静電チャック等を成形対象物吸着機構として用いてもよい。
【0042】
第1下型152Aは、平面形状(上面視)で長方形の枠から成る周壁部材1521Aと、周壁部材1521Aの枠内に装入された直方体の底面部材1522Aと、周壁部材1521Aの下面に設けられた弾性部材1523Aを有する。これら周壁部材1521A及び底面部材1522Aで囲まれた空間が、樹脂材料が供給されるキャビティCとなる。なお、周壁部材1521Aの平面形状は、製造する樹脂成形品の形状に応じて長方形以外の円形等の形状を取ることができ、底面部材1522Aの形状は周壁部材1521Aの平面形状に応じて適宜変更可能である。
【0043】
第1上型151Aの第1保持面1511Aを挟んだ該第1保持面1511Aの両側方に、爪部16が設けられている。
図2(a)に爪部16の斜視図を示し、(b)に側面図を示す。爪部16は、爪部本体161と、回動軸162と、第1被押圧部(前記被押圧部に相当)163と、第2被押圧部164と、付勢機構165を備える。爪部本体161は、第1保持面1511Aの外側から内側に向かって延びており、付勢機構165で付勢されている状態において、第1保持面1511A及び該第1保持面1511Aに保持される成形対象物の下側に配置されている(
図1(b))。回動軸162は略水平であって、爪部16全体が該回動軸162を中心に回動可能である。第1被押圧部163及び第2被押圧部164はいずれも、回動軸162よりも第1保持面1511Aの外側寄りであって、爪部16全体では下部に設けられている。回動軸162が延びる方向では、第2被押圧部164が爪部16の中央側に配置され、第1被押圧部163が第2被押圧部164の両側方に(すなわち2箇所)配置されている。また、第2被押圧部164は第1被押圧部163よりも下側に配置されている。付勢機構165は、回動軸162を中心として、爪部本体161が第1保持面1511Aの外側から下側に向かって回動するように、爪部16全体を付勢している。この付勢機構165による付勢によって爪部本体161が第1保持面1511Aの下側の位置にあるときに、後述の押圧部173が第1被押圧部163に当接することにより、それ以上は爪部16全体が回動することなく爪部本体161が当該位置に保持される。従って、押圧部173、第1被押圧部163及び付勢機構165が爪部移動機構として機能する。
【0044】
第1保持面1511Aの側方であって爪部16よりも外側に、下型押さえ部17が設けられている(
図1(b))。下型押さえ部17は、下型押さえ部本体171と、下型押さえ部弾性部材172と、押圧部173を有する。下型押さえ部本体171は、第1上型151Aとの間に下型押さえ部弾性部材172を挟んで設けられた、下方に延びる棒材である。押圧部173は、下型押さえ部本体171から爪部16に向かって延びる棒材であり、型締めをしていないときに第1被押圧部163と接触する高さに設けられている。押圧部173は、1つの爪部16に第1被押圧部163が2箇所設けられているのに対応して、1つの下型押さえ部17に2個設けられている。
【0045】
さらに、樹脂成形装置10は成形対象物搬送機構80を有する。成形対象物搬送機構80は、
図3に示すように、成形対象物を載置する成形対象物載置台81と、成形対象物載置台81を昇降させる第1昇降機構82と、第1昇降機構82を載置し、該第1昇降機構82を昇降させる第2昇降機構83と、第2昇降機構83の上端であって成形対象物載置台81を挟んでその両側方に設けられた第2押圧部84と、第2昇降機構83を横方向(略水平方向。
図1(a)及び
図3の紙面に垂直な方向。)に移動させる横移動機構85を有する。横移動機構85は、成形対象物載置台81に載置された成形対象物が第1上型151Aと第1下型152Aの間であって第1保持面1511Aの直下となる位置と、第1上型151Aと第1下型152Aの間から外れた位置の間で、第2昇降機構83を横方向に移動させる。第2押圧部84の横方向の位置は、成形対象物載置台81と第1保持面1511Aの横方向の位置を合わせたときに、爪部16の第2被押圧部164の横方向の位置に合致する。なお、ここでは第1成形型15Aを例に説明したが、第2成形型15Bに対しても同様の成形対象物搬送機構80を設ける。
【0046】
(4-1-2) 第1実施形態の樹脂成形装置の動作及び樹脂成形品製造方法
図4及び
図5を用いて、第1実施形態の樹脂成形装置10の動作及び樹脂成形品製造方法を説明する。
図4に第1実施形態の樹脂成形装置10の全体の動作を示し、
図5に樹脂成形装置10のうちの爪部16及びその周辺の構成要素の動作を拡大して示す。実際には第1成形型15Aと第2成形型15Bは同時に、同じ動作を行うが、以下では特記するところを除いて第1成形型15Aの動作のみを説明する。
【0047】
動作開始前には、前述の通り、爪部16の爪部本体161は、第1保持面1511Aの下面の下側に位置している(
図5(a))。
【0048】
まず、成形対象物搬送機構80の成形対象物載置台81に成形対象物Sを載置したうえで、横移動機構85により、第2昇降機構83、並びに、それに直接又は間接的に載置された第1昇降機構82、成形対象物載置台81及び成形対象物Sを第1成形型15Aの第1上型151Aと第1下型152Aの間に移動させる。それと共に、第1昇降機構82の上端に設けられた第2押圧部84の横方向の位置を第2被押圧部164の横方向の位置に合わせる。次に、第2昇降機構83によって第1昇降機構82を上昇させ、第2押圧部84で第2被押圧部164を押圧する(
図4(a))。これにより、爪部16が回動し、爪部本体161が第1上型151Aの第1保持面1511Aの外側に移動する(
図5(b))。この状態で第1昇降機構82によって成形対象物載置台81を上昇させ、成形対象物載置台81上の成形対象物Sを第1保持面1511Aに当接させる(
図4(b))。その際、爪部本体161が第1保持面1511Aの外側にあるため、爪部本体161が成形対象物載置台81の上昇を妨げることはない。
【0049】
そして、真空ポンプ191を作動させて、気体吸引管1513Aを介して気体吸引孔1512Aから空気を吸引することにより、成形対象物載置台81上の成形対象物Sを第1保持面1511Aに吸着させる。その後、第1昇降機構82により成形対象物載置台81を下降させると共に、第2昇降機構83により第1昇降機構82を下降させ、さらに横移動機構85によって第2昇降機構83、第1昇降機構82及び成形対象物載置台81を、第1上型151Aと第1下型152Aの間から横方向に外れた位置に移動させる(
図4(c))。ここで、第1昇降機構82を下降させた際に、第2押圧部84による第2被押圧部164の押圧が解除されるため、押圧する際とは逆方向に爪部16が回動し、爪部本体161が第1保持面1511Aの下方(内側)に移動する(
図5(c))。
【0050】
次に、図示せぬ離型フィルム張設機構により、第1下型152AのキャビティCの内面に離型フィルムFを張設する。離型フィルムFの張設は、具体的には、キャビティCの上側及びその周囲の周壁部材1521Aの上面を覆った状態で、周壁部材1521Aと底面部材1522Aの間から真空ポンプ191で空気を吸引することにより行う。このとき、離型フィルムFは、キャビティCの内面のみならず周壁部材1521Aの上面にも存在する。続いて、図示せぬ樹脂材料供給機構により、樹脂材料PをキャビティC内に供給する(
図4(d))。その後、ヒータ142で加熱することによって樹脂材料Pを溶融させる。
【0051】
キャビティC内の樹脂材料Pが溶融したところで、トグルリンク113により下可動プラテン121を上昇させる。これにより、下可動プラテン121上の第1下型152Aが第1上型151Aに当接して該第1上型151A及び上可動プラテン122を押し上げ、さらに、上可動プラテン122上の第2下型152Bが第2上型151Bに当接する。第2上型151Bが固定プラテン123に固定されていることから、第1上型151Aと第1下型152A、及び第2上型151Bと第2下型152Bが型締めされる。
【0052】
再び第1成形型15Aに着目すると、第1成形型15Aが型締めされる際に第1上型151Aに第1下型152Aが近づいてゆく。この段階では、爪部本体161が第1保持面1511Aの下側に存在し、万一、真空ポンプ191が停止すること等で第1保持面1511Aへの成形対象物Sの吸着が停止しても、成形対象物Sが爪部本体161で受け止められるため、成形対象物Sの落下を防ぐことができる。さらに第1上型151Aに第1下型152Aが第1距離(前記爪部移動開始距離)まで近づくと、下型押さえ部本体171が第1下型152Aの周壁部材1521Aの上面に当接する。すなわち、前記爪部移動開始距離は、下型押さえ部本体171が周壁部材1521Aに当接する第1上型151Aと第1下型152Aの距離で定義することができる。さらに第1上型151Aに第1下型152Aが近づくと、下型押さえ部弾性部材172が圧縮されてゆくと共に、押圧部173が爪部16の第1被押圧部163を押し上げる。これにより、爪部16が回動し、爪部本体161が第1上型151Aの第1保持面1511Aの外側に移動する(
図5(d))。第1距離及び後述の第2距離は、仮にここで成形対象物吸着機構が機能しなくなって成形対象物が上型から落下したとしても問題が生じないような距離に設定されている。そのため、この後、型締めを行い、さらに型開きをして第1上型151Aと第1下型152Aが第2距離に離れるまでは、爪部本体161による保護はないものの、成形対象物が落下しても問題は生じない。
【0053】
この後、さらに第1上型151Aに第1下型152Aが近づいてゆき、第1上型151Aと第1下型152Aが型締めされる(
図4(e))。そして、キャビティC内の樹脂材料が硬化する温度を、該樹脂材料が硬化するまで維持する。その際、爪部本体161が第1保持面1511Aの外側に存在することから、爪部本体161が障害となることなく、成形対象物S内の広い範囲に亘って樹脂成形を行うことができる。また、この段階では、爪部本体161が第1保持面1511Aに保持された成形対象物Sの下端よりも上側に配置されている(
図5(d))。そのため、爪部本体161が周壁部材1521Aの上面に当接することがなく、周壁部材1521Aの上面に爪部本体161を逃がすための凹部(逃げ部)を設ける必要がない。そのため、爪部本体161が離型フィルムFを押して該離型フィルムFに皺を生じさせることはない。
【0054】
キャビティC内の樹脂材料が硬化した後、トグルリンク113によって下可動プラテン121を下降させることにより、第1成形型15A及び第2成形型15Bを型開きする(
図4(f))。第1成形型15Aに着目すると、第1上型151Aと第1下型152Aが第2距離(本実施形態では第1距離と同じ)まで離れたときに、下型押さえ部本体171が周壁部材1521Aの上面から離れると共に、押圧部173による第1被押圧部163の押圧が解除されるため、押圧する際とは逆方向に爪部16が回動し、爪部本体161が第1保持面1511Aの下方(内側)に移動する。ここで、成形対象物Sの下側に形成されている樹脂成形品PSの厚みよっては、爪部本体161が樹脂成形品PSの下面には届かずに樹脂成形品PSの側面に接触する場合もあるが、第1保持面1511Aへの成形対象物Sの吸着が停止した際に爪部本体161により成形対象物Sの落下を防止することに差し支えはない。
【0055】
型開き後、成形対象物搬送機構80により、樹脂成形品PSが形成された成形対象物Sを第1保持面1511Aから搬出する。具体的には、まず、横移動機構85により第2昇降機構83、第1昇降機構82及び成形対象物載置台81を第1上型151Aと第1下型152Aの間に搬送し、第2押圧部84の横方向の位置を第2被押圧部164の横方向の位置に合わせる。次いで、第2昇降機構83により第1昇降機構82及び第2押圧部84を上昇させることにより爪部本体161を第1保持面1511Aの外側に移動させ(
図5(b)と同様)、さらに第1昇降機構82により成形対象物載置台81を上昇させることにより、樹脂成形品PSの下面に成形対象物載置台81を接触させる。その後、成形対象物吸着機構19による成形対象物Sの吸着を停止させ、第1昇降機構82により成形対象物載置台81を下降させると共に第2昇降機構83により第1昇降機構82を下降させる。そして、横移動機構85により第2昇降機構83、第1昇降機構82、成形対象物載置台81及び成形対象物Sを第1上型151Aと第1下型152Aの間から外側に移動させることにより、成形対象物Sを搬出することができる。
【0056】
なお、上記成形対象物搬送機構80の代わりに、
図6に示す成形対象物搬送機構80Aを用いることができる。成形対象物搬送機構80Aは、成形対象物載置台81Aと、成形対象物載置台81Aの下方に設けられ、該成形対象物載置台81Aを昇降させる昇降機構83Aと、成形対象物載置台81Aの周囲に配置され少なくとも一部分が弾性部材から成るピンである第2押圧部84Aと、昇降機構83Aを横方向に移動させる横移動機構85Aを有する。本変形例で用いる昇降機構83Aは、成形対象物載置台81Aを押し上げる力の強弱を2段階で切り替えることができる。成形対象物載置台81Aを押し上げる力のうち、弱い方の力は第2押圧部84Aを第2被押圧部164に押し当てたときに弾性部材が撓まない程度の力とし、強い方の力は第2押圧部84Aを第2被押圧部164に押し当てたときに弾性部材が撓む力とする。成形対象物載置台81Aと第2押圧部84Aの位置関係は固定されており(この点で、成形対象物載置台81と第2押圧部84の上下方向の位置関係が第2昇降機構83により変化可能である成形対象物搬送機構80と相違する)、成形対象物載置台81Aの上面は第2押圧部84Aの上端と下端の間にある。
【0057】
成形対象物搬送機構80Aの動作を説明する。成形対象物載置台81Aに成形対象物を載置した後、昇降機構83Aにより、強弱2段階のうち弱い方の力で成形対象物載置台81Aを押し上げ、第2押圧部84Aを第2被押圧部164に当接させる。これにより、第2押圧部84Aは弾性部材が撓むことなく第2被押圧部164を押圧し、爪部16を回動させ、爪部本体161を第1上型151Aの第1保持面1511Aの外側に移動させる(
図5(b)参照)。この時点では、成形対象物載置台81Aの上面が第2押圧部84Aの上端よりも下側にあるため、成形対象物載置台81A上の成形対象物は第1保持面1511Aに達していない。
【0058】
その後、昇降機構83Aにより、強弱2段階のうち強い方の力で成形対象物載置台81Aを押し上げる。すると、第2押圧部84Aの弾性部材が撓み、弾性部材が撓む前よりも高い位置まで成形対象物載置台81Aの上面が移動する。これにより、成形対象物載置台81A上の成形対象物を第1保持面1511Aに当接させる。その際、爪部本体161が第1保持面1511Aの外側にあるため、爪部本体161が成形対象物載置台81Aの上昇を妨げることはない。続いて、気体吸引孔1512Aから空気を吸引することにより成形対象物を第1保持面1511Aに吸着させる。その後、昇降機構83Aにより成形対象物載置台81Aを下降させることにより、押圧する際とは逆方向に爪部16が回動し、爪部本体161が第1保持面1511Aの下方(内側)に移動する(
図5(c)参照)。
【0059】
(4-2) 第2の態様の樹脂成形装置、及び第2の態様の樹脂成形品製造方法の一実施形態
(4-2-1) 第2実施形態の樹脂成形装置の構成
図7に、第2の態様の樹脂成形装置の一実施形態(第2実施形態)である樹脂成形装置20を示す。
図7(a)では樹脂成形装置20の全体を示し、(b)では成形型及びその周囲を拡大して示す。第2実施形態の樹脂成形装置20は、第1実施形態の樹脂成形装置10と同様の基盤111、タイバー112、下可動プラテン121、上可動プラテン122、トグルリンク113、断熱材141及びヒータ142を有する。下可動プラテン121の上面に第1下型252Aを、上可動プラテン122の下面に第1上型251Aを、上可動プラテン122の上面に第2下型252Bを、固定プラテン123の下面に第2上型251Bを、それぞれ備える。第1上型251Aと第1下型252Aにより第1成形型25Aが構成され、第2上型251Bと第2下型252Bにより第2成形型25Bが構成される。第1成形型25A及び第2成形型25Bは同じ構成を有するため、以下では第1成形型25Aの各構成要素を説明する。当該説明中の末尾が「A」である符号を「B」に変更したものが、第2成形型25Bの構成要素である。
【0060】
第1上型251Aは、下面が成形対象物を保持する第1保持面2511Aとなっており、該第1保持面2511Aに第1気体吸引孔2512A1及び第2気体吸引孔2512A2が設けられている。第1気体吸引孔2512A1は、第1上型251A及びヒータ142内に設けられた第1気体吸引管2513A1並びに可撓性を有する接続管(図示せず)を介して、真空ポンプ291に接続されている。第2気体吸引孔2512A2は、第1上型251A及びヒータ142内に設けられた第2気体吸引管2513A2並びに可撓性を有する接続管(図示せず)を介して、真空エジェクタ292に接続されている。真空エジェクタ292は、圧縮空気タンクから供給される圧縮空気により動作し、当該圧縮空気タンクにはコンプレッサ(図示せず)から圧縮空気が供給される。停電等でコンプレッサを動作させることができなくなったときには、暫くの間は圧縮空気タンクの圧縮空気により真空エジェクタ292を動作させることができる。第1気体吸引孔2512A1、第1気体吸引管2513A1、接続管及び真空ポンプ291は第1成形対象物吸着機構を構成し、第2気体吸引孔2512A2、第2気体吸引管2513A2、接続管及び真空エジェクタ292は第2成形対象物吸着機構を構成する。
【0061】
第1下型252Aは、第1実施形態の第1下型152Aと同様の周壁部材1521A、底面部材1522A及び弾性部材1523Aを有する。
【0062】
樹脂成形装置20は、下型押さえ部本体271と、下型押さえ部弾性部材272を有する下型押さえ部27を備える。但し、下型押さえ部27は、第1実施形態の下型押さえ部17における押圧部173に相当する構成は有していない。
【0063】
さらに、樹脂成形装置20は成形対象物搬送機構80Bを有する。成形対象物搬送機構80Bは、
図8に示すように、成形対象物を載置する成形対象物載置台81Bと、成形対象物載置台81Bを昇降させる昇降機構83Bと、成形対象物載置台81B及び昇降機構83Aを横方向に移動させる横移動機構85Bを有する。第1実施形態の樹脂成形装置10における成形対象物搬送機構80が有する第2押圧部や第2昇降機構に相当する構成は、成形対象物搬送機構80Bは有していない。
【0064】
なお、樹脂成形装置20には、爪部は設けられていない。また、ここでは真空エジェクタ292を有する第2成形対象物吸着機構を用いたが、その代わりに、ベルヌーイチャックや静電チャック等を用いることもできる。
【0065】
(4-2-2) 第2実施形態の樹脂成形装置の動作及び樹脂成形品製造方法
図9を用いて、第2実施形態の樹脂成形装置20の動作及び樹脂成形品製造方法を説明する。まず、成形対象物搬送機構80Bの成形対象物載置台81Bに成形対象物Sを載置したうえで、横移動機構85Bにより、昇降機構83B及び成形対象物載置台81Bを第1成形型25Aの第1上型251Aと第1下型252Aの間に移動させる。次に、昇降機構83Bにより成形対象物載置台81Bを上昇させ、成形対象物載置台81B上の成形対象物Sを第1保持面2511Aに当接させる(
図9(a))。そして、真空ポンプ291を作動させて、第1気体吸引管2513A1を介して第1気体吸引孔2512A1から空気を吸引すると共に、真空エジェクタ292を起動させて、第2気体吸引管2513A2を介して第2気体吸引孔2512A2から空気を吸引することにより、成形対象物載置台81B上の成形対象物Sを第1保持面2511Aに吸着させる。その後、昇降機構83Bにより成形対象物載置台81Bを降下させ、横移動機構85Bにより昇降機構83B及び成形対象物載置台81Bを第1上型251Aと第1下型252Aの間から横方向に外れた位置に移動させる。
【0066】
次に、図示せぬ離型フィルム張設機構により、第1下型252AのキャビティCの内面に離型フィルムFを張設する。離型フィルムFの張設は、第1実施形態の樹脂成形装置10と同様の方法により行うことができる。続いて、図示せぬ樹脂材料供給機構により、樹脂材料PをキャビティC内に供給する(
図9(b))。
【0067】
その後、ヒータ142で加熱することによって樹脂材料Pを溶融させる。キャビティC内の樹脂材料Pが溶融したところで、トグルリンク113により下可動プラテン121を上昇させる。これにより、第1実施形態の樹脂成形装置10と同様に、第1成形型25A及び第2成形型25Bをそれぞれ型締めする(
図9(c)に、第1成形型25Aの型締めの状態を示す)。型締め後、キャビティC内の樹脂材料が硬化する温度を、該樹脂材料が硬化するまで維持する。その後、トグルリンク113によって下可動プラテン121を下降させることにより、第1成形型25A及び第2成形型25Bを型開きする(
図9(d))。
【0068】
型開き後、成形対象物搬送機構80Aにより、樹脂成形品PSが形成された成形対象物Sを第1保持面2511Aから搬出する。具体的には、まず、横移動機構85により、昇降機構83A及び成形対象物載置台81Bを第1成形型25Aの第1上型251Bと第1下型252Aの間に移動させる。次に、昇降機構83Bにより成形対象物載置台81Bを上昇させ、成形対象物載置台81B上の成形対象物Sを第1保持面2511Aに当接させる(
図9(a)と同様)。その後、真空ポンプ291及び真空エジェクタ292を用いた成形対象物Sの吸着をいずれも停止させる。そして、昇降機構83Bにより成形対象物載置台81Bを下降させ、横移動機構85により昇降機構83B及び成形対象物載置台81Bを第1上型151Aと第1下型152Aの間から外側に移動させることにより、成形対象物Sを搬出することができる。
【0069】
ここまでの動作において、真空ポンプ291を用いた第1成形対象物吸着機構と、真空エジェクタ292を用いた第2成形対象物吸着機構を用いることにより、たとえ停電により真空ポンプ291及びコンプレッサが停止したとしても、第2成形対象物吸着機構の圧縮空気タンクから真空エジェクタ292への圧縮空気の供給が暫く維持され、それにより成形対象物Sの吸着を暫く維持することができる。また、コンプレッサが長時間故障したままになる等の事情で真空エジェクタ292が停止したとしても、第1成形対象物吸着機構により成形対象物Sの吸着を維持することができる。以上の理由で、第2実施形態の樹脂成形装置20により、成形対象物が上型から落下する可能性を低減することができる。
【0070】
また、第2実施形態の樹脂成形装置20では爪部を用いないため、製造する樹脂成形品を爪部に妨げられることなく大きくすることができると共に、離型フィルムに皺が生じることを防ぐことができる。
【0071】
(4-3) 第1の態様の樹脂成形装置の他の実施形態(第3実施形態)、及び第3の態様の樹脂成形品製造方法の一実施形態
(4-3-1) 第3実施形態の樹脂成形装置の構成
図10に、第3実施形態の樹脂成形装置30の構成を示す。
図10(a)では樹脂成形装置30の全体を示し、(b)では成形型及びその周囲を拡大して示す。この樹脂成形装置30は、移送成形を行う装置であって、基盤311と、基盤311上に立設された2本のタイバー312と、上下に移動可能なようにタイバー312に保持された可動プラテン321、タイバー312の上端に固定された固定プラテン323と、基盤311上に設けられた、可動プラテン321を上下動させるトグルリンク313とを備える。ここまでに述べた各構成要素は、可動プラテン321が1個のみ設けられている点を除いて、第1実施形態の樹脂成形装置10と同様である。
【0072】
樹脂成形装置30はさらに、成形型35を備える。成形型35は、可動プラテンの上面に設けられた下型352と、固定プラテン323の下面に設けられた上型351を有する。下型352には、
図10(b)及び
図11(a)に示されているように、周壁部材3521及び底面部材3522で囲まれたキャビティCが2個形成されており、2つの周壁部材3521及び底面部材3522の組の間にポット381が配置されている。ポット381内には下側からプランジャ382が挿通されている。周壁部材3521の上面には、ポット381とキャビティCを接続するランナ383が設けられている。ポット381及びランナ383の上面は通常開放されており、後述のポットランナブロック39によって型締めをした際にのみ閉鎖される。周壁部材3521の上面には、離型フィルムFを吸引するための吸引口(
図11(a)中に丸印で示す)が複数個設けられている。
【0073】
上型351は、下型352の2組の周壁部材3521及びキャビティCの上側にそれぞれ設けられた保持面3511と、2つの保持面3511のそれぞれについて両側方に設けられた爪部16及び該爪部16よりも外側に設けられた下型押さえ部17を備える。これら爪部16及び下型押さえ部17の各構成要素はいずれも、第1実施形態のものと同様であるため、第1実施形態で付した符号をそのまま付したうえで、詳細な説明を省略する。保持面3511には気体吸引孔3512が設けられている。気体吸引孔3512は、気体吸引管3513及び可撓性を有する接続管(図示せず)を介して、真空ポンプ391に接続されている。また、ポット381及びランナ383の直上にはポットランナブロック39が設けられている(
図11(b))。ポットランナブロック39は、
図11(b)の上下方向に下型押さえ部17を挟んで(従って下型押さえ部17と位置が干渉することなく)1対設けられており、それに対応してポット381及びランナ383も
図11(a)の上下方向に1対並んで1対設けられている。
【0074】
樹脂成形装置30はさらに、第1実施形態の樹脂成形装置10と同様の成形対象物搬送機構80を有する。
【0075】
(4-3-2) 第3実施形態の樹脂成形装置の動作及び樹脂成形品製造方法
図12を用いて、第3実施形態の樹脂成形装置30の動作及び樹脂成形品製造方法を説明する。なお、
図12では、下型352の2組の周壁部材3521及び底面部材3522、並びに上型351の2組の保持面3511、爪部16及び下型押さえ部17等のうちの1組のみを示すが、それら2組の各構成要素は同様に動作する。
【0076】
まず、成形対象物搬送機構80を用いて、第1実施形態の樹脂成形装置10と同様の動作により、成形対象物搬送機構80を上型351と下型352の間の位置に移動させたうえで、第2昇降機構83によって第1昇降機構82を上昇させ、第2押圧部84で第2被押圧部164を押圧し、さらに第1昇降機構82によって成形対象物載置台81を上昇させ、成形対象物Sを保持面3511に接触させる(
図12(a))。その際、第1実施形態の場合と同様に、成形対象物搬送機構80の第2押圧部84で爪部16の第2被押圧部164を押圧することによって爪部16が回動し、爪部本体161が保持面3511の外側に移動する(
図5(b)参照)ため、該爪部本体161が成形対象物載置台81の上昇を妨げることはない。このように成形対象物Sが保持面3511に接触した状態で真空ポンプ391を作動させることにより、成形対象物Sを保持面3511に吸引させる。その後、成形対象物載置台81を降下させると、爪部16が回動し、爪部本体161が保持面3511及び成形対象物Sの下側に移動する。これにより、真空ポンプ391が停止しても、爪部本体161によって成形対象物Sを受けることができるため、成形対象物Sが落下することを防ぐことができる。その後、成形対象物搬送機構80を上型351と下型352の間の位置から除去する。
【0077】
次に、ポット381内に固体の樹脂材料Pを投入すると共に、キャビティCの内面に離型フィルムFを張設する(
図12(b))。離型フィルムFを張設する際には、周壁部材3521の上面に設けた吸引口から気体を吸引する。
【0078】
続いて、トグルリンク313で可動プラテン321を上昇させることにより、型締めを行う。その際、上型351と下型352が爪部移動開始距離以下まで近づくと下型押さえ部本体171が下型352の周壁部材3521の上面に当接し、さらに上型351と下型352が近づくと下型押さえ部弾性部材172が圧縮されてゆくと共に押圧部173が爪部16の第1被押圧部163を押し上げる。これにより、爪部16が回動し、爪部本体161が上型351の保持面3511の外側に移動する(
図5(d)参照)。これにより、爪部本体161が障害となることなく、成形対象物S内の広い範囲に亘って樹脂成形を行うことができる。また、爪部本体161が周壁部材3521の上面に当接することがなく、周壁部材3521の上面に爪部本体161を逃がすための凹部(逃げ部)を設ける必要がない。そのため、爪部本体161が離型フィルムFを押して該離型フィルムFに皺を生じさせることはない。
【0079】
型締めの後、ポット381内の樹脂材料Pを図示せぬヒータで加熱することにより溶融させ、樹脂材料Pをプランジャ382によりポット381から押し出す(
図12(c))。ポット381から押し出された樹脂材料Pは、ランナ383を通過してキャビティC内に供給される。キャビティC内の樹脂材料Pが硬化した後、トグルリンク313で可動プラテン321を降下させることにより型開きする(
図12(d))。そして、第1実施形態の場合と同様の方法により、上型351の保持面3511から成形対象物Sを取り外すことにより、1個の樹脂成形品PSの製造が完了する。
【0080】
(4-4) 第2の態様の樹脂成形装置の他の実施形態(第4実施形態)、及び第4の態様の樹脂成形品製造方法の一実施形態
(4-4-1) 第4実施形態の樹脂成形装置の構成
図13に、第4実施形態の樹脂成形装置40の構成を示す。
図13(a)では樹脂成形装置40の全体を示し、(b)では成形型及びその周囲を拡大して示す。第4実施形態の樹脂成形装置40は、第3実施形態の樹脂成形装置30と同様の基盤311、タイバー312、トグルリンク313、可動プラテン321及び固定プラテン323を有する。可動プラテン321の上面には下型352が、固定プラテン323の下面には上型451が、それぞれ設けられており、これら上型451及び下型352により成形型45が構成されている。下型352は第3実施形態の樹脂成形装置30のものと同様の構成を有するため、第3実施形態と同じ符号を付したうえで、説明を省略する。
【0081】
上型451の下面は成形対象物を保持する保持面4511となっており、該保持面4511に第1気体吸引孔45121及び第2気体吸引孔45122が設けられている。第1気体吸引孔45121は、第1気体吸引管45131及び可撓性を有する接続管(図示せず)を介して、真空ポンプ491に接続されている。第2気体吸引孔45122は、第2気体吸引管45132及び可撓性を有する接続管(図示せず)を介して、真空エジェクタ492に接続されている。真空エジェクタ492は、第2実施形態の場合と同様に、コンプレッサから圧縮空気タンクに供給された圧縮空気を用いて動作させる。
【0082】
上型451には、第3実施形態の樹脂成形装置30と同様の下型押さえ部17及びポットランナブロック(図示せず)が設けられている。但し、第3実施形態の樹脂成形装置30の下型押さえ部17が有する押圧部173は、本実施形態では設けられていない。また、第3実施形態の樹脂成形装置30が有する爪部は、本実施形態では設けられていない。
【0083】
樹脂成形装置40はさらに、第2実施形態の樹脂成形装置20と同様の成形対象物搬送機構80Aを備える。
【0084】
(4-4-2) 第4実施形態の樹脂成形装置の動作及び樹脂成形品製造方法
図14を用いて、第4実施形態の樹脂成形装置40の動作及び樹脂成形品製造方法を説明する。まず、第2実施形態の樹脂成形装置20と同様の方法により、成形対象物搬送機構80Aを用いて成形対象物Sを保持面4511に吸着させる(
図14(a))。ここで、保持面4511への吸着は、真空ポンプ491を作動させて、第1気体吸引管45131を介して第1気体吸引孔45121から空気を吸引すると共に、真空エジェクタ492を起動させて、第2気体吸引管45132を介して第2気体吸引孔45122から空気を吸引することにより行う。これにより、たとえ停電により真空ポンプ491及びコンプレッサが停止したとしても、圧縮空気タンクから真空エジェクタ492への圧縮空気の供給が暫く維持され、それにより成形対象物Sの吸着を暫く維持することができる。また、コンプレッサが長時間故障したままになる等の事情で真空エジェクタ492が停止したとしても、真空ポンプ491を用いた成形対象物Sの吸着を維持することができる。
【0085】
次に、ポット381内に固体の樹脂材料Pを投入すると共に、キャビティCの内面に離型フィルムFを張設する(
図14(b))。続いて、トグルリンク313で可動プラテン321を上昇させることにより、型締めを行う。本実施形態では爪部を使用しないため、爪部が障害となることなく、成形対象物S内の広い範囲に亘って樹脂成形を行うことができる。また、爪部が周壁部材3521の上面に当接することがなく、周壁部材3521の上面に爪部を逃がすための凹部(逃げ部)を設ける必要がないため、爪部が離型フィルムFに皺を生じさせることはない。
【0086】
型締めの後、ポット381内の樹脂材料Pを図示せぬヒータで加熱することにより溶融させ、樹脂材料Pをプランジャ382によってポット381から押し出し、ランナ383を介してキャビティC内に供給する(
図14(c))。キャビティC内の樹脂材料Pが硬化した後、トグルリンク313で可動プラテン321を降下させることにより型開きする(
図14(d))。そして、第2実施形態の場合と同様の方法により、上型451の保持面4511から成形対象物Sを取り外すことにより、1個の樹脂成形品PSの製造が完了する。
【0087】
(4-5) モジュールを組み合わせた樹脂成形ユニット
図15に、上記第1又は第2実施形態の樹脂成形装置(圧縮成形を行う樹脂成形装置)のいずれかを用いた樹脂成形ユニット50を示す。なお、
図15及び以下の説明では、第1実施形態の樹脂成形装置10を用いた例で説明するが、第1実施形態の樹脂成形装置10を第2実施形態の樹脂成形装置20に置き換えることが可能である。
【0088】
樹脂成形ユニット50は、材料受入モジュール51、成形モジュール52、及び払出モジュール53を有する。材料受入モジュール51は、樹脂材料P及び成形対象物Sを外部から受け入れて成形モジュール52に送出するための装置であって、樹脂材料供給装置510と成形対象物受入部511を有する。1台の成形モジュール52は前述の樹脂成形装置10を1組備える。
図15には成形モジュール52が3台示されているが、樹脂成形ユニット50には成形モジュール52を任意の台数設けることができる。また、樹脂成形ユニット50を組み上げて使用を開始した後であっても、成形モジュール52を増減することができる。払出モジュール53は、成形モジュール52で製造された樹脂成形品を成形モジュール52から搬入して保持しておくものであって、樹脂成形品保持部531を有する。
【0089】
樹脂成形ユニット50には、材料受入モジュール51、1又は複数台の成形モジュール52、及び払出モジュール53を貫くように、成形対象物S、樹脂材料移送トレイ58、及び樹脂成形品を搬送する主搬送装置56が設けられている。また、各モジュール内には、主搬送装置56と当該モジュール内の装置との間で成形対象物S、樹脂材料移送トレイ58、及び樹脂成形品を搬送する副搬送装置57が設けられている。その他、樹脂成形ユニット50は、上記各モジュールを動作させるための電源及び制御部(いずれも図示せず)を有する。
【0090】
樹脂成形ユニット50の動作を説明する。成形対象物Sは、操作者によって材料受入モジュール51の成形対象物受入部511に保持される。主搬送装置56及び副搬送装置57は、成形対象物Sを成形対象物受入部511から、成形モジュール52のうちの1台にある樹脂成形装置10に搬送し、成形対象物Sを当該樹脂成形装置10内の成形対象物搬送機構80の成形対象物載置台81に載置する。その後、樹脂成形装置10では前述の方法により、成形対象物Sを第1保持面1511A、第2保持面1511Bに取り付ける。その後、樹脂成形装置10では、第1下型152A及び第2下型152BのキャビティCに離型フィルムFを張設する。
【0091】
続いて、主搬送装置56及び副搬送装置57は、樹脂材料移送トレイ58を樹脂材料供給装置510に搬入する。樹脂材料供給装置510では、樹脂材料移送トレイ58に樹脂材料Pを供給する。
【0092】
主搬送装置56及び副搬送装置57は、樹脂材料Pが供給された樹脂材料移送トレイ58を、成形対象物Sが第1保持面1511A、第2保持面1511Bに取り付けられた成形モジュール52の樹脂成形装置10に搬送する。そして、当該樹脂成形装置10の第1下型152A及び第2下型152BのキャビティCに樹脂材料Pを供給する。そして、当該樹脂成形装置10において圧縮成形を行う。当該樹脂成形装置10で圧縮成形を行っている間に、他の成形モジュール52にある樹脂成形装置10に対してこれまでと同様の操作を行うことにより、複数の成形モジュール52間で時間をずらしながら並行して圧縮成形を行うことができる。
【0093】
圧縮成形により得られた樹脂成形品は成形対象物搬送機構80によって前述の方法により第1保持面1511A、第2保持面1511Bから取り外された後、主搬送装置56及び副搬送装置57によって樹脂成形装置10から搬出され、払出モジュール53の樹脂成形品保持部531に搬入されて保持される。ユーザは適宜、樹脂成形品を樹脂成形品保持部531から取り出す。
【0094】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。