特許第6482648号(P6482648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6482648異形断面中空繊維およびこれを用いた繊維集合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482648
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】異形断面中空繊維およびこれを用いた繊維集合体
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/00 20060101AFI20190304BHJP
   D01D 5/253 20060101ALI20190304BHJP
   D01F 8/14 20060101ALI20190304BHJP
   D01F 8/06 20060101ALI20190304BHJP
   D04H 1/4391 20120101ALI20190304BHJP
   D04H 1/46 20120101ALI20190304BHJP
【FI】
   D01F6/00 A
   D01D5/253
   D01F8/14 B
   D01F8/14 C
   D01F8/06
   D04H1/4391
   D04H1/46
【請求項の数】17
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-506770(P2017-506770)
(86)(22)【出願日】2015年8月6日
(65)【公表番号】特表2017-523321(P2017-523321A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】KR2015008263
(87)【国際公開番号】WO2016021968
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2017年4月6日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0100788
(32)【優先日】2014年8月6日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0116331
(32)【優先日】2014年9月2日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0148469
(32)【優先日】2014年10月29日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0047576
(32)【優先日】2015年4月3日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0101874
(32)【優先日】2015年7月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515234233
【氏名又は名称】ヒュービス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100066061
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】クォン,オー−ヒュク
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユン−ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ−ユーン
(72)【発明者】
【氏名】オー,スン−ジン
(72)【発明者】
【氏名】ホー,ヨ−スン
【審査官】 岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−156015(JP,A)
【文献】 特開平08−246225(JP,A)
【文献】 特開昭61−132620(JP,A)
【文献】 米国特許第04407889(US,A)
【文献】 特開平09−316729(JP,A)
【文献】 特開2000−229369(JP,A)
【文献】 特開2000−256919(JP,A)
【文献】 特開2003−247126(JP,A)
【文献】 特開昭64−052819(JP,A)
【文献】 特開2009−078065(JP,A)
【文献】 特開2009−023523(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0012072(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0246492(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00−9/04
D04H 1/00−18/04
D01D 1/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異形断面中空繊維において、
前記繊維は中空部、形態保持部、体積制御部からなり、
前記体積制御部は繊維の中心の反対方向に突出した形態であり、末端部はラウンド形状からなり、
前記繊維は、固有粘度が異なる2種の高分子からなる複合繊維であり、
前記複合繊維は、オメガ(Ω)形自発クリンプが形成されている異形断面中空繊維。
【請求項2】
下記の条件を満たす、請求項1に記載の異形断面中空繊維。
(3)(CTmax−R)/(CTmin−R)≧0.80
(4)(Ctmax−r)/(Ctmin−r)≧0.30
ここで、
T1:中心点(M)からピーク310までの距離が最も大きい値
T2:中心点(M)からピーク310までの距離が最も小さい値
t1:中心点(M)からバレー330までの距離が最も大きい値
t2:中心点(M)からバレー330までの距離が最も小さい値
CTmax:中心点(M)からピーク310までの距離が最も大きい体積制御部と、中心点(M)からピーク310までの距離がT1の次に大きい体積制御部との両方に接する
CTmin:中心点(M)からピーク310までの距離が最も小さい体積制御部と、中心点(M)からピーク310までの距離がT2の次に小さい体積制御部との両方に接する
Ctmax:中心点(M)からバレー330までの距離が最も大きい体積制御部と、中心点(M)からバレー330までの距離がt1の次に大きい体積制御部との両方に接する
Ctmin:中心点(M)からバレー330までの距離が最も小さい体積制御部と、中心点(M)からバレー330までの距離がt2の次に小さい体積制御部との両方に接する
CTmax−R:CTmaxの中心点(CTmaxM)と中心点(M)との間の差異値
CTmin−R:CTminの中心点(CTminM)と中心点(M)との間の差異値
Ctmax−r:Ctmaxの中心点(CtmaxM)と中心点(M)との間の差異値
Ctmin−r:Ctminの中心点(CtminM)と中心点(M)との間の差異値
【請求項3】
前記体積制御部を形成するために形状が放射状に展開された紡糸口金を介して製造される、請求項1に記載の異形断面中空繊維。
【請求項4】
前記放射状に展開される角度は、中心点(M)を基準に、角(θ)10°〜17°からなる、請求項に記載の異形断面中空繊維。
【請求項5】
前記体積制御部は、4〜12個形成された、請求項1に記載の異形断面中空繊維。
【請求項6】
前記中空部の中空率が15〜30%に形成された、請求項1に記載の異形断面中空繊維。
【請求項7】
第1項から第項のいずれか一項による繊維を含む繊維集合体。
【請求項8】
前記繊維集合体が熱接着工程で製造される場合、
繊維集合体は、異形断面中空繊維60〜90重量%と結束材40〜10重量%を含み、前記異形断面中空繊維の長さは51〜64mmであり、繊維の太さは4〜8デニールである、請求項に記載の繊維集合体。
【請求項9】
前記繊維集合体がメルトブローイング工程で製造される場合、
繊維集合体は、異形断面中空繊維20〜60重量%と細繊のPP繊維が80〜40重量%を含み、前記異形断面中空繊維の長さは32〜51mmであり、繊維の太さは4〜8デニールである、請求項に記載の繊維集合体。
【請求項10】
前記異形断面中空繊維は、集合体の中で隣接する繊維間が離間されうるようにして集合体のバルキー性と吸音性を付与するとともに、音エネルギーの回折現象を低減させる異形断面繊維を含む、請求項に記載の繊維集合体。
【請求項11】
第1項から第項のいずれか一項による異形断面中空繊維を含む衛生材用不織布。
【請求項12】
前記不織布内異形断面中空繊維40重量%以上含む、請求項11に記載の衛生材用不織布。
【請求項13】
前記繊維は、サイド・バイ・サイド中空構造である、請求項に記載の異形断面中空繊維。
【請求項14】
前記繊維は、粘度が異なる異成分のポリエチレンテレフタレート(polyethylene b terephthalate、PET)、PCT(Poly 1、4−Cyclohexylenedimethylene Terephthalate)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ナイロンからなる、請求項に記載の異形断面中空繊維。
【請求項15】
前記繊維は、粘度が異なる異成分のポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)で構成され、繊維内ポリカルボン酸、ポリオールおよびポリオキシカルボン酸からなる群から1つ以上選択された多官能基を10〜10,000ppm含む、請求項14に記載の異形断面中空繊維。
【請求項16】
前記クリンプは下記の条件(5)を満たす、請求項に記載の異形断面中空繊維。
(5)2.5mm≦R’≦4.5mm
ここで、R’:クリンプ円弧状の曲率半径
【請求項17】
第1項から第項のいずれか一項による異形断面中空繊維を含む保温用不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異形断面中空繊維およびこれを用いた繊維集合体に関し、さらに詳細には、体積制御要素が形成された異形断面中空繊維およびこれを用いた繊維集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、保温性などの機能性が要求される繊維集合体に使用される合繊繊維は、ほとんど中空断面構造を有しており、代表的な次のような方法によって製造されている。
【0003】
単独ポリマーを使用した中空断面構造の繊維を利用するものである。中空構造によりデッドエアーの増加で断熱性が増加し、冷却および配向結晶化工程で断面内配向性の差を中空構造で極大化することができるため、自発クリンプが発現され、これによりボリューム感のある製品を製造することができる。この方式は、冷却効果を極大化するために生産性が落ち、クリンプ発現に限界があるという短所がある。
【0004】
さらに他の方法は、2種のポリマー収縮差を利用した中空断面構造の繊維を利用するものである。単独ポリマーに比べて、一般的に中空率は小さいが、2種のポリマー収縮差によってクリンプ発現性に優れ、ボリューム感および弾力性が持続されるという利点がある。この方式はまた、収縮差によるクリンプ発現のために粘度の低い製品を使用するため、中空率の向上に制約があるだけでなく、複合紡糸でのみ可能であるという短所がある。
【0005】
このような技術の中で、大韓民国特許発明第1387465号では、異形断面の多分割紡糸ノズルに中空糸内側に少なくとも3つ以上の中空が形成され、繊維外側が内側の中空が分割された数と同じ数に分割され、外側スリットが形成されて異形断面が形成されるように設計され、前記異形断面の多分割紡糸ノズルにより得られた異形断面の多分割中空糸は、高い中空率にも外力によって中空断面が容易につぶれたり変形されたりしないので、軽量化とボリューム感は保持されるとともに、中空糸固有の物性だけでなく、異形断面形状と異形断面に表面凹凸を付加して吸汗速乾性を極大限にすることにより、異形断面の多分割中空糸の軽量性、保温性および吸汗速乾性を利用できる繊維が開示された。
【0006】
本発明者らの多数の試験結果、前記技術は、多分割中空糸を形成することはできるものの、図9に示すように外側スリット22の突出した形態が、繊維集合体で他の繊維間を離間させる役割をするよりは、繊維間の外側スリットの干渉によって集合体内で繊維の移動を阻害させ、均整度に不均一性を引き起こしたりして、むしろ繊維間の密着性を誘発して集合体内の繊維間の空間形成を阻害させて中空部が形成されたバルキー性や保温性を阻害する要素として作用することがわかった。
【0007】
また、繊維集合体の保温性、バルキー性などを向上させるために、大韓民国公開特許第2011−0069474号では、原料を基準にポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ウレタン、レーヨン類およびアセテートからなるグループから選択される短繊維(Staple Fiber)からなる直径4〜15μmの極細繊維60〜98重量%、直径15〜40μmの中空繊維、異形断面繊維、シース/コア(Sheath/core)型繊維、コンジュゲート(Conjugate)素材繊維またはこれらの混合繊維1〜30重量%、および低融点繊維1〜12重量%を含み、低融点繊維は、加熱によって溶けた極細繊維および中空繊維、異形断面繊維、シース/コア型繊維、コンジュゲート素材繊維またはこれらの混合繊維を結合させ、梳綿技法によって製造されることを特徴とする高保温性不織布が開示された。
【0008】
前記技術は、一部中空繊維を使用して軽量性および保温性を追求して低融点繊維の融着により形態安定性を図ろうとする通常の要素技術はあるが、極細繊維の含量があまりに高く、繊維間の空間によるバルキー性などを確保することができないという短所がある。
【0009】
そこで中空部の形態保持性を確保して、デッドエアーを確保しながら、繊維集合体で繊維間の空間も保持することができ、さらに自発クリンプも形成することができ、弾力性やクッション性、吸音性などの複合機能性繊維および繊維集合体が懇切に望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】大韓民国特許第1387465号公報
【特許文献2】大韓民国公開特許第2011−0069474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記のような問題を解決するために、本発明の目的は、中空部の形状性が安定的に確保されるとともに、繊維集合体で体積を制御するための要素が確保されて繊維間の空間確保により様々な機能を発現することができる繊維を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、体積制御要素を多様に制御して形成された繊維を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、自発クリンプ発現により様々な機能を発現することができる繊維を提供することにある。
【0014】
本発明のさらなる目的は、バルキー性、保温性が確保されると、弾力性および/または吸音性および/または水分の排出特性に優れた繊維集合体を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、音エネルギーを消費させることができる繊維集合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記のような目的を達成するために、本発明は、異形断面中空繊維において、前記繊維は中空部、形態保持部、体積制御部からなり、前記体積制御部は、繊維の中心の反対方向に突出した形態でありえ、末端部はラウンド形状からなる異形断面中空繊維を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記体積制御部末端部の最上部をピークと、体積制御部の間をバレーと定義するとき、下記の条件を満たす異形断面中空繊維を提供する。
【0018】
(1)−3≦Z≦4
【0019】
ここで、
Z:R−r
N:体積制御部の個数
【0020】
また、本発明は、下記の条件を満たす異形断面中空繊維を提供する。
【0021】
(3)(CTmax−R)/(CTmin−R)≧0.80
(4)(Ctmax−r)/(Ctmin−r)≧0.30
ここで、
T1:中心点(M)からピーク310までの距離が最も大きい値
T2:中心点(M)からピーク310までの距離が最も小さい値
t1:中心点(M)からバレー330までの距離が最も大きい値
t2:中心点(M)からバレー330までの距離が最も小さい値
CTmax:中心点(M)からピーク310までの距離が最も大きい体積制御部と、中心点(M)からピーク310までの距離がT1の次に大きい体積制御部との両方に接する
CTmin:中心点(M)からピーク310までの距離が最も小さい体積制御部と、中心点(M)からピーク310までの距離がT2の次に小さい体積制御部との両方に接する
Ctmax:中心点(M)からバレー330までの距離が最も大きい体積制御部と、中心点(M)からバレー330までの距離がt1の次に大きい体積制御部との両方に接する
Ctmin:中心点(M)からバレー330までの距離が最も小さい体積制御部と、中心点(M)からバレー330までの距離がt2の次に小さい体積制御部との両方に接する
CTmax−R:CTmaxの中心点(CTmaxM)と中心点(M)との間の差異値
CTmin−R:CTminの中心点(CTminM)と中心点(M)との間の差異値
Ctmax−r:Ctmaxの中心点(CtmaxM)と中心点(M)との間の差異値
Ctmin−r:Ctminの中心点(CtminM)と中心点(M)との間の差異値
また、本発明は、前記体積制御部を形成するために形状が放射状に展開された紡糸口金を介して製造される異形断面中空繊維を提供する。
【0022】
また、本発明は、前記放射状に展開される角度が中心点(M)を基準に、角(θ)10°〜17°からなる異形断面中空繊維を提供する。
【0023】
また、本発明は、前記体積制御部が、4〜12個形成された異形断面中空繊維を提供する。
【0024】
また、本発明は、前記中空部が繊維断面面積において15〜30%に形成された異形断面中空繊維を提供する。
【0025】
また、本発明は、極限粘度0.64のポリエステルを使用して体積制御部が4個または6個、または12個である中空繊維を製造するが、放射温度285℃で紡糸速度を1,000m/minで放射後、延伸比3.8で延伸した後、クリンパーにより捲縮を付与して短繊維繊度6Deであり、繊維長64mmの異形断面中空繊維を提供する。
【0026】
また、本発明は、前記繊維を含む繊維集合体を提供する。
【0027】
また、本発明は、前記繊維集合体が熱接着工程で製造される場合、繊維集合体は、異形断面中空繊維60〜90重量%と結束材40〜10重量%を含み、前記異形断面中空繊維の長さは51〜64mmであり、繊維の太さ4〜8デニールである繊維集合体を提供する。
【0028】
また、本発明は、前記繊維集合体がメルトブローイング工程で製造される場合、繊維集合体は、異形断面中空繊維20〜60重量%と細繊のPP繊維が80〜40重量%を含み、前記異形断面中空繊維の長さは32〜51mmであり、繊維の太さは4〜8デニールである繊維集合体を提供する。
【0029】
また、本発明は、前記異形断面中空繊維が集合体内で、隣接する繊維間が離間されるようにして集合体のバルキー性と吸音性を付与するとともに、音エネルギーの回折現象を低減させる異形断面繊維を含む繊維集合体を提供する。
【0030】
また、本発明は、異形断面中空繊維を含む衛生材用不織布を提供する。
【0031】
また、本発明は、前記不織布内異形断面中空繊維が40重量%以上を含む衛生材用不織布を提供する。
【0032】
また、本発明は、前記繊維が複合繊維として固有粘度が異なる2種の高分子からなり、前記複合紡糸された繊維がオメガ(Ω)形自発クリンプが形成された異形断面中空繊維を提供する。
【0033】
また、本発明は、前記繊維がサイド・バイ・サイド中空構造である異形断面中空繊維を提供する。
【0034】
また、本発明は、前記繊維が、粘度が異なる異成分のポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、PCT(Poly 1、4−Cyclohexylenedimethylene Terephthalate)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ナイロンなどからなる異形断面中空繊維を提供する。
【0035】
また、本発明は、前記繊維が、粘度が異なる異成分のポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)で構成され、繊維内ポリカルボン酸、ポリオールおよびポリオキシカルボン酸からなる群から一つ以上選択された多官能基を10〜10,000ppmである異形断面中空繊維を提供する。
【0036】
また、本発明は、前記クリンプが下記の条件(5)を満たす異形断面中空繊維を提供する。
【0037】
(5)2.5mm≦R’≦4.5mm
ここで、R’:クリンプ円弧状の曲率半径
【0038】
また、本発明は、前記異形断面中空繊維を含む保温用不織布を提供する。
【発明の効果】
【0039】
本発明の一実施例による異形断面中空繊維は、中空率が比較的高く、形態が安定した繊維を提供することができる。
【0040】
また、本発明は、体積制御部の干渉効果により繊維集合体でバルキー性が確保される利点があり、これによりデッドエアーをより多く確保することができ、高い保温性および断熱性を示すことができる利点がある。
【0041】
また、本発明は、中空部に加え、自発クリンプ構造によってバルキー性および弾力性とともに軽量性および保温性に加えて、水分排出特性、内部吸音、防音因子により優れた吸音性などを有する複合機能性を発現する特徴がある。
【0042】
また、本発明による異形断面中空繊維を含む繊維集合体は、体積制御部の干渉効果により繊維集合体においてバルキー性が確保される利点があり、これによりデッドエアーをより多く確保することができ、高い断熱性を示すことができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の好ましい一実施形態による繊維の断面概念図である。
図2】本発明の好ましい一実施形態による繊維の断面概念図である。
図3】本発明の好ましい一実施形態による繊維の断面概念図である。
図4】本発明の好ましい一実施形態による繊維の断面概念図である。
図5】本発明の好ましい一実施形態による繊維の断面概念図である。
図6】本発明の好ましい一実施形態による繊維の断面概念図である。
図7】本発明の好ましい一実施例による体積制御部に対応する紡糸口金の概念図である。
図8】本発明の好ましい一実施形態による繊維集合体の断面概念図である。
図9】本発明の好ましい一実施形態によるクリンプ発現概念図である。
図10】従来技術による紡糸口金の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明に添付された図面を参照して、本発明を詳細に説明することにする。まず、図面中で、同じ構成要素または部品は、可能な限り同一の参照符号を示していることに留意しなければならない。本発明を説明するにあたり、関連する公知の機能あるいは構成に対する具体的な説明は、本発明の要旨を曖昧にしないようにするために省略する。
【0045】
本明細書で使用される程度の用語、「約」、「実質的に」等は、言及された意味に固有の製造および物質の許容誤差が提示されるとき、その数値からまたはその数値に近い意味で使用され、本発明の理解を助けるために正確なまたは絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0046】
本明細書で繊維集合体とは、長繊維、短繊維の両方を含むものであって、非限定的な例として、織物、編物、生地、不織布、ウェブ、スライバー、トウなど1以上の繊維が集合していることを意味する。
【0047】
本発明の好ましい一実施形態による異形断面中空繊維は、繊維状に形成可能なすべての素材からなりうる。好ましくは、ポリエチレン、テレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)が使用されうるが、これに限定されず、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ナイロンなどが使用されうる。
【0048】
前記溶融紡糸されたPETポリマーの溶融粘度は0.60〜0.64が好ましく、冷却効果を極大化させることができる、In−out形態の紡糸筒が適している。繊維の太さは4〜15Deに多様に適用することができ、繊維長は22〜64mmでありうる。
【0049】
図1は、本発明の好ましい一実施形態による異形断面中空繊維の概念図であって、前記繊維10は、中空部100、形状保持部200、体積制御部300から形成されうる。
【0050】
前記中空部100の中空率は、繊維の総面積で約15〜30%であることが望ましい。前記の範囲を超える場合、繊維形成性に問題になることがあり、前記の範囲未満である場合、中空保持性と本発明の様々な機能性を発現するのに限界を有しうる。前記の形態保持部200は、中空部100から体積制御部300の間の繊維状を意味する。
【0051】
前記体積制御部300は、繊維の中心反対方向に突出した形態であってもよく、末端部はラウンド形状からなってもよい。このとき体積制御部300末端部の最上部をピーク310と、各体積制御部300の間をバレー330と定義することができる。このときピークの曲率半径をR、バレーの曲率半径をrと定義することができ、それぞれの体積制御部ごとに互いに異なるか、または同じRとrの値が決定されうる(図2)。
【0052】
また、中空部100の中心点(M)からピーク310までの距離が最も大きい値をT1、中心点(M)からピーク310までの距離が最も小さい値をT2とし、中心点(M)からバレー330までの距離が最も大きい値をt1、中心点(M)からバレー330までの距離が最も小さい値をt2と定義することができる。一方、中心点(M)からピーク310までの距離が最も大きい体積制御部と、中心点(M)からピーク310までの距離がT1の次に大きい体積制御部との両方に接する円をCTmaxとし、中心点(M)からピーク310までの距離が最も小さい体積制御部と、中心点(M)からピーク310までの距離がT2の次に小さい体積制御部との両方に接する円をCTminとし、中心点(M)からバレー330までの距離が最も大きい体積制御部と、中心点(M)からバレー330までの距離がt1の次に大きい体積制御部との両方に接する円をCtmaxとし、中心点(M)からバレー330までの距離が最も小さい体積制御部と、中心点(M)からバレー330までの距離がt2の次に小さい体積制御部との両方に接する円をCtminと規定することができる。
【0053】
一方、CTmaxの中心点(CTmaxM)と中心点(M)との間の差異値をCTmax−Rとし、CTminの中心点(CTminM)と中心点(M)との間の差異値をCTmin−Rとし、Ctmaxの中心点(CtmaxM)と中心点(M)との間の差異値をCtmax−rとし、Ctminの中心点(CtminM)と中心点(M)との間の差異値をCtmin−rと規定したとき、本発明による繊維は、下記の条件を満足することができる(図3〜6)。
【0054】
ピークの曲率半径(R)とバレーの曲率半径(r)の偏差をZと規定したとき、前記Zは下記の条件(1)、(2)により成り立つことができる。
【0055】
(1)−3≦Z≦4
【0056】
ここで、
Z:R−r
N:体積制御部の個数
【0057】
繊維断面の形態分析を通じた、本発明者らの多数の試験結果、前記の範囲外で一繊維の体積制御部が、隣接する他の繊維の体積制御部の間のバレーに挿入されて、まるでギアが噛み合っているような構造的特性を示し、挿入された後の遊動等により離脱できず、繊維集合体の均整度に悪い影響を与えるものと分析された。前記範囲内で繊維間の体積制御部が互いに干渉してバルキー性が保持され、体積制御部が隣接する繊維のバレーに挿入されても遊動等により容易に離脱されえ、繊維集合体で均整度を向上させる要素となり得る。
【0058】
また、本発明の好ましい一実施形態による繊維は、CTmax−R、CTmin−R、Ctmax−r、Ctmin−rが、次の条件を満たすことができる。
【0059】
(3)(CTmax−R)/(CTmin−R)≧0.80
(4)(Ctmax−r)/(Ctmin−r)≧0.30
ここで、
T1:中心点(M)からピーク310までの距離が最も大きい値
T2:中心点(M)からピーク310までの距離が最も小さい値
t1:中心点(M)からバレー330までの距離が最も大きい値
t2:中心点(M)からバレー330までの距離が最も小さい値
CTmax:中心点(M)からピーク310までの距離が最も大きい体積制御部と、中心点(M)からピーク310までの距離がT1の次に大きい体積制御部との両方に接する
CTmin:中心点(M)からピーク310までの距離が最も小さい体積制御部と、中心点(M)からピーク310までの距離がT2の次に小さい体積制御部との両方に接する
Ctmax:中心点(M)からバレー330までの距離が最も大きい体積制御部と、中心点(M)からバレー330までの距離がt1の次に大きい体積制御部との両方に接する
Ctmin:中心点(M)からバレー330までの距離が最も小さい体積制御部と、中心点(M)からバレー330までの距離がt2の次に小さい体積制御部との両方に接する
CTmax−R:CTmaxの中心点(CTmaxM)と中心点(M)との間の差異値
CTmin−R:CTminの中心点(CTminM)と中心点(M)との間の差異値
Ctmax−r:Ctmaxの中心点(CtmaxM)と中心点(M)との間の差異値
Ctmin−r:Ctminの中心点(CtminM)と中心点(M)との間の差異値
前記の条件(3)、(4)は、本発明の一実施例による繊維の形成性に関するものでありうる。理想的には、前記の値は1でなければならないが、高分子のレオロジー的特性によって1になるのは難しい。条件(3)は、体積制御部の形成に関するものでありうるが、前記の範囲外では体積制御部の偏差が大きくなってr値の偏差も大きくなりえ、工程上、カーディング性や繊維集合体においてバルキー性に影響を与えうる。条件(4)は、繊維形態性と解釈されうるが、中空部100と形態保持部200の形成性に影響を与えうる。前記範囲外では、中空形成性と繊維の形態保持が不安定でありうる。
【0060】
一方、前記のような繊維断面を形成するために、前記体積制御部300の紡糸口金は、図7に示すように放射状の形になってもよい。このとき中心点(M)を基準に、角(θ)10°〜17°で形成することができる。本発明者らの多数の試験結果、前記の範囲内で中空性も保持されるとともに、異形断面の体積制御要素として、前記部材300が機能を発現するための、前記の条件を満足することができる繊維の断面形状が具現された。
【0061】
本発明で使用される異形断面中空繊維の断面形状は、繊維表面に体積制御部が4〜12個に形成することができる。
【0062】
また、本発明の一実施例による繊維は、非限定的な例として、熱可塑性樹脂であるポリエステルからなりえ、冷却および固化工程で結晶化速度差による自発クリンプ発現により単繊維の状態や不織布の形態でバルキー性および弾力性を向上させるのに寄与することができる。
【0063】
本発明による繊維は、本発明による繊維のみで、または繊維間の結束構造を形成するための結束材を含む繊維集合体をニードルパンチング工程、熱接着工程またはメルトブローリング工程により不織布の形態に成形して製造することができる。
【0064】
本発明による異形断面中空繊維を適用した繊維集合体は、繊維間の結束のために一般的に使用される結束材として短繊維の形態では、熱接着工程では、シース−コア形態の低融点PET短繊維を使用することができ、メルトブローイング工程では、細繊のPP繊維を使用することができる。
【0065】
熱接着工程で製造される素材は、異形断面中空繊維60〜90重量%と結束材40〜10重量%を含む組成で構成され、ここで異形断面中空繊維の長さは、51〜64mmを有するものが使用されえ、繊維の太さ(繊度)は、4〜8デニールでありうる。熱接着工程で異形断面中空繊維の長さが51mm未満になると、繊維間の隙間が広くなってマトリックス構造を形成するのが難しく、繊維集合体としての形成および生産が困難になる。また、過度の空隙率により吸音および遮音性能が低下する結果をもたらしうる。
【0066】
異形断面中空繊維と結束材の組成重量比は6:4〜9:1が好ましい。ここで異形断面中空繊維の含量が60重量%未満の場合には、繊維の表面積が縮小されて諸般の物性を具現することができず、特に熱接着工程に使用される低融点PETの含量が相対的に高くなるため、空隙が大きいバルキー性を保持できず、繊維集合体が硬くなる。一方、異形断面中空繊維の含量が90重量%を超えると、相対的にバインダー繊維、すなわち結束材の含量が10%未満になって、繊維間の十分な結束力を保持できなくなり、これにより、集合体を任意の形状に成形することが困難になる。
【0067】
メルトブローイング工程で製造される素材は、異形断面中空繊維20〜60重量%と細繊のPP繊維が80〜40重量%を含む組成で構成され、ここで異形断面中空繊維の長さは、32〜51mmを有するものが使用されえ、繊維の太さ(繊度)は、4〜8デニールであるものが使用されうる。51mmを超える場合には、開繊後、空気によってブローイング工程で繊維間のもつれの発生により不均一なウェブを形成することになる。したがって吸音材および充填材に適用される後工程により、32〜64mm繊維長の範囲で、適切な繊維長の選択が必要である。
【0068】
前記熱接着工程またはメルトブローイング工程により製造された不織布は、前記異形断面繊維の体積制御部300が隣接した繊維と接して作られる繊維間の空間によりデッドエアー層400を確保することができる。前記デッドエアー層400は、繊維のピーク310と隣接した繊維のピーク310が接して繊維間の空間が形成されるほど、さらに広いデッドエアー層400を確保することができる。
【0069】
前記デッドエアー層による保温性は、繊維の間の空隙に大量の空気を保持することを利用するものである。前記デッドエアー層によって確保されたデッドエアーは動かない空気であって繊維によって支持されて流動性が少なく、熱を伝えず熱を遮断する機能を有するため、保温性を有することができる。
【0070】
前記体積制御部300は、一定範囲に制限されることで、繊維間の体積制御部300が、隣接する繊維のバレー330に挿入が容易でないようにし、挿入されても容易に離脱されえ、デッドエアー層400の確保に有利でありうる。
【0071】
本発明の一実施例による異形断面中空繊維を含む保温用不織布の保温性は比較例による円形断面繊維または円形断面中空繊維を含む保温用不織布に比べて、より多くのデッドエアー層400を確保することにより保温性を向上させる。
【0072】
円形の構造は、異形構造に比べて密集度に優れ、隣接する繊維間の配置がさらに近づいてデッドエアー層400を広く確保することが難しい。
【0073】
また、中空繊維の構造は、繊維ごとに中空層100を有することによりデッドエアー層400をさらに確保することになる。中空層100に空気が存在することにより、空気の熱伝導率が低いことを利用して保温性を保持することができる。
【0074】
本発明の一実施例による異形断面中空繊維を含む不織布は、異形断面構造および体積制御要素によって、相対的に密集度が低下してより多くのデッドエアー層400を確保するとともに、中空層によるデッドエアー層400の保有により保温性をさらに向上させることができる。
【0075】
保温性の測定方法は、KS K 0560(2011恒温法)を利用することができる。
【0076】
前記KS K 0560の方法の一つである恒温法は、適切な性能を有する保温性試験機を使用して試験片に初荷重を加えた後、恒温発熱体に付着する。低い温度の外気に流出する熱量が一定になり発熱体の表面温度が一定値を示してから2時間後に試験片を透過して放散される熱損失を求める。この数値と試験片がない状態での、同じ温度差および同じ時間に放散される熱損失を求め、この二つの値の差により保温力を測定する。
【0077】
保温率は、前記KS K 0560に基づいて、次の式で計算することができる。
【0078】
保温率(%)=(1−α2/α1)×100であり、ここでα1は発熱体に試験片がないときの放熱量(cal/cm/秒またはw/時間)であり、α2は発熱体に試験片を付着したときの放熱量である。
【0079】
一方、本発明は、吸音素材としても、その機能が発現されるが、吸音とは、物体が音を吸収することをいう。吸音材として繊維素材が多く使用されているが、繊維材料に入射した音のエネルギーは、その一部が表面で反射され、一部は透過し、残りは材料内に吸収される。材料内部の吸音は、多孔性材料である場合には、その内部での摩擦や粘性抵抗または小繊維の振動、薄い板や布である場合には、膜の振動、入り口が狭い壺のような場合には、共鳴によって音がエネルギーを失うため起こる。
【0080】
吸音は、材料の片側に音を投射し、その側でのみ観察すると、反射されてこない音は、材料に吸収されたものと透過したものであるが、一見、その材料に吸収されたように見えるので、これを吸音といい、入射した音のエネルギーに対して反射されていない音のエネルギーの割合を吸音率という。吸音率は、音の周波数、入射角、材料の厚さ、設置方式、およびその裏面の状況等により異なる。様々な吸音率を有する吸音材を使って、室内の音響効果を改善したり、騒音レベルを低下させるのに使用する。
【0081】
また、音はエネルギーとして回折現象によって音が伝達される特性がある。
【0082】
このような特性のため、吸音素材が設けられた空間であっても音が外部に伝播されうる。そこで、本発明による繊維は、吸音性はもちろん、回折現象による音伝達現象まで抑制することができる機能をさらに提供しようとするものである。
【0083】
本発明による繊維において体積制御部は、上述のように、繊維集合体で物理的干渉によってバルキー性を確保して、その間に空間をさらに確保することにより、繊維の振動、相対的な厚さの確保などにより吸音性を向上させることができる。
【0084】
また、前記体積制御部は、円形断面に比べて比表面積拡大により回折現象により伝播される音のエネルギーが、本発明による体積制御部によって移動する間、エネルギーが消耗されて音のエネルギーが低減される特性を示しうる。これにより、本発明による繊維および繊維集合体は、防音ないし遮音の効果までさらに達成することができる。
【0085】
*一方、本発明の一実施例による繊維集合体は、前記体積制御要素により集合体内に微細な空隙が発生して毛細管現象による水分転移特性が発現しうる。水分排出という概念で集合体が保有する絶対水分量を集合体から除去することも重要であるが、前記集合体内で、他の構成要素により迅速に移動させることによっても、水分排出の機能を発現することができる。例えば、本発明による繊維集合体がおむつや生理用ナプキンの表面シートの用途に使用される場合、人体内で発生した水分要素を毛細管現象により速やかに吸収し、その裏面に形成されている吸収層に迅速に移動させることができる。この場合、発生した水分要素が迅速に移動して、吸収率が向上するとともに、皮膚面と接する表面から再び吸収層に水分が速やかに移動して快適さを発現することができる。
【0086】
一方、本発明による異形断面中空繊維は、複合紡糸されて製造されうる。この場合、異形断面中空複合繊維は、繊維状に形成されうるすべての素材からなりうる。好ましくは、粘度が異なるポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)が使用されうるが、これに限定されず、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ナイロン、PCT(Poly 1、4−Cyclohexylenedimethylene Terephthalate)などを複合紡糸して使用することができる。
【0087】
前記固有粘度が異なる2種の高分子は、比較的高い固有粘度を有する高分子を第1高分子400、相対的に低い固有粘度を有する高分子を第2高分子410と定義することができる。
【0088】
本発明の好ましい一実施形態による異形断面中空複合繊維は、繊維状に形成することができる固有粘度範囲をすべて含む。好ましくは、前記第1高分子400は、0.60〜0.80の固有粘度を有し、前記第2高分子410は、0.50〜0.64の固有粘度を有する高分子を用いることができる。
【0089】
また、本発明の一実施例による繊維は、非限定的な例として、固有粘度が異なる2種のポリエステルからなってもよく、固有粘度差による自発クリンプ発現により短繊維の状態や不織布の形態でバルキー性および弾力性を向上させるのに寄与することができる。このとき、自発クリンプの形態は、オメガ形(つまり、ギリシャ文字(Ω)と形が類似する)でありえ、上部はラウンド形状からなりうる。
【0090】
オメガ形のクリンプは、サイド・バイ・サイド型の複合繊維で発現される自発クリンプ形状であり、オメガ形の繊維クリンプは不規則なクリンプまたは人為的に付与したジグザグ形状の繊維クリンプに比べてバルキー性および圧縮後の回復力に優れた特性を示す。
【0091】
さらに好ましくは、0.64の固有粘度と0.55の固有粘度を有するPETポリマーを複合紡糸することが望ましい。前記第1、第2高分子がともに0.50以下の固有粘度を有する場合、断面が円形に近づいて異形断面を具現するのに望ましくないだけでなく、中空形成も難しい。
【0092】
一方、前記異形断面中空複合繊維は、粘度が異なる異成分のポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、PCT(Poly 1、4−Cyclohexylenedimethylene Terephthalate)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ナイロンなどからなる異形断面中空複合繊維でありえ、また、前記異形断面中空複合繊維は、粘度が異なる異成分のポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)で構成されて繊維内ポリカルボン酸、ポリオールおよびポリオキシカルボン酸からなる群から一つ以上選択された多官能基を10〜10,000ppmであることを特徴とする異形断面中空複合繊維でありうる。
【0093】
本発明の好ましい一実施形態による複合繊維は、前記実施例の一つである中空繊維に加えて、さらに自発クリンプが発現されうるが、前記クリンプはオメガ形でありえ、上部はラウンド形状でありうる。クリンプの曲率半径をR’と定義することができ、紡糸される繊維の繊度により差がありうるが、基本的に下記の条件(5)を満たすことができる(図9)。
【0094】
(5)2.5mm≦R’≦4.5mm
ここで、R’:クリンプ円弧状の曲率半径
【0095】
以下、実施例として説明する。
【0096】
実施例1〜3
極限粘度0.64のポリエステルを使用して体積制御部材が4個、6個、12個である繊維を製造した。紡糸温度285℃で紡糸速度を1,000m/minで紡糸後、延伸比3.8で延伸した後、クリンパー(crimper)により捲縮を付与して短繊維繊度6Deであり、繊維長64mmである繊維を製造した。
【0097】
比較例1〜3
実施例1と同じであるが、円形断面繊維、円形中空断面繊維、ポリエステル極限粘度0.64と0.50を複合紡糸した円形中空断面繊維を製造した。
【0098】
実施例4〜6
極限粘度0.64のポリエステルを使用して体積制御部材が4個、6個、12個である繊維を製造した。紡糸温度285℃で紡糸速度を1,000m/minで紡糸後、延伸比3.8で延伸した後、クリンパー(crimper)により捲縮を付与して短繊維繊度5.2Deであり、125/24De/fil.である繊維を製造した後、この繊維を用いて、それぞれ経編物に製造した。
【0099】
実施例7
極限粘度0.64のポリエステルを使用して体積制御部材が6個である繊維を製造した。紡糸温度285℃で紡糸速度を1,000m/minで紡糸後、延伸比3.8に延伸後、クリンパー(crimper)により捲縮を付与して単繊維繊度6Deであり、繊維長64mmである繊維を製造した。この繊維を開繊した後、ウェブ状態に製造した。
【0100】
実施例8
極限粘度0.64のポリエステルを使用して体積制御部材が6個である繊維を製造した。紡糸温度285℃で紡糸速度を1,000m/minで紡糸後、延伸比3.8に延伸後、クリンパー(crimper)により捲縮を付与して単繊維繊度6Deであり、繊維長64mmである繊維を製造した。この繊維を用いるが、ポリエステル系低融点糸を25重量%となるように混合してニードルパンチングで不織布を製造した。この不織布は、840*840(mm*mm)であり、重量は約330gになるようにした。
【0101】
実施例9
極限粘度0.64のポリエステルを使用して体積制御部材が6個である繊維を製造した。紡糸温度285℃で紡糸速度を1,000m/minで紡糸後、延伸比3.8に延伸後、クリンパー(crimper)により捲縮を付与して単繊維繊度6Deであり、繊維長64mmである繊維を製造した。この繊維を用いるが、ポリエステル系低融点糸を25重量%となるように混合してニードルパンチングで不織布を製造した。この不織布は、840*840(mm*mm)であり、重量は約380gになるようにした。
【0102】
実施例10
極限粘度0.64のポリエステルを使用して体積制御部材が6個である繊維を製造した。紡糸温度285℃で紡糸速度を1,000m/minで紡糸後、延伸比3.8に延伸後、クリンパー(crimper)により捲縮を付与して単繊維繊度6Deであり、繊維長64mmである繊維を製造した。この繊維を用いるが、ポリエステル系低融点糸を25重量%となるように混合してニードルパンチングで不織布を製造した。この不織布は、840*840(mm*mm)であり、重量は約440gになるようにした。
【0103】
実施例11
極限粘度0.64のポリエステルを使用して体積制御部材が6個である繊維を製造した。放射温度285℃で紡糸速度を1,000m/minで紡糸後、延伸比3.8に延伸後、クリンパー(crimper)により捲縮を付与して単繊維繊度6Deであり、繊維長64mmである繊維を製造した。この繊維を用いるが、ポリプロピレンメルトブローン糸を55重量%となるように混合して不織布を製造した。この不織布は、840*840(mm*mm)であり、重量は約240gであり、約20mmの厚さになるようにした。
【0104】
実施例12および13
極限粘度0.64のポリエステルを使用して体積制御部材が6個である繊維を製造した。紡糸温度285℃で紡糸速度を1,000m/minで紡糸後、延伸比3.8に延伸後、クリンパー(crimper)により捲縮を付与してそれぞれ単繊維繊度4De、6Deであり、繊維長51mmである繊維を製造した。
【0105】
実施例14および15
実施例12の繊維を用いるが、ポリエステル系低融点糸を25重量%となるように混合してニードルパンチングで不織布を製造した。この不織布は、840*840(mm*mm)であり、重量はそれぞれ約400gと700gになるようにした。
【0106】
実施例16および17
実施例13の繊維を用いるが、ポリエステル系低融点糸を25重量%となるように混合してニードルパンチングで不織布を製造した。この不織布は、840*840(mm*mm)であり、重量はそれぞれ約400gおよび700gとなるようにした。
【0107】
比較例4〜6
【0108】
比較例7〜9
実施例7と同じであるが、円形断面繊維、円形中空繊維、ポリエステル極限粘度0.64と0.50を複合紡糸した円形中空断面繊維を製造した。このとき短繊維繊度6Deであり、繊維長が約64mmである繊維を製造した後、それぞれの繊維を用いて開繊した後、ウェブ状態に製造した。
【0109】
比較例10および11
【0110】
比較例12および13
【0111】
比較例14および15
【0112】
比較例16
極限粘度0.64のポリエステルを使用して中空断面繊維を紡糸温度285℃で紡糸速度1,000m/minで紡糸後、延伸比3.8で延伸した後、クリンパー(crimper)により捲縮を付与して単繊維繊度6Deであり、繊維長64mmである繊維を製造した。この繊維を用いるが、ポリプロピレンメルトブローン糸を55重量%となるように混合して不織布を製造した。この不織布は、840*840(mm*mm)であり、重量は約240gであり、約20mmの厚さになるようにした。
【0113】
比較例17および18
実施例12および13と同じ条件で円形断面繊維4De、中空複合短繊維6Deを製造した。
【0114】
比較例19および20
比較例18および19の繊維を用いるが、ポリエステル系低融点糸を25重量%となるように混合してニードルパンチングで不織布を製造した。この不織布は、840*840(mm*mm)であり、重量はそれぞれ約400gおよび700gになるようにした。
【0115】
下記の実施例および比較例において物性測定は次のように実施した。
【0116】
*複合繊維のバルキー性
イ.試験方法
−準備された試料を20□2g定量する。
−試料を開繊機構を利用して、1分間開繊する。
−開繊された試料を測定用Beakerに入れて均一に充填されるように、末端まで2回(4cm)Downさせる。
−押さえ板を容器の上部に位置させた後、電子秤を0”に設定する。
−最初10Cmの位置から4cmの位置まで1cm単位で下げて、秤の重量を記録する。
−再び10Cmの位置まで上げながら重量を記録する。
【0117】
(目盛り移動速度2秒/cm)
ロ.バルキー性
−初期バルキー:繊維のバルキー特性、10cm圧縮時の値
−圧縮バルキー:繊維の反発特性(圧縮10〜5cm値+4cm値)/2
−回復バルキー:繊維の弾性回復特性(回復10〜5cm値+4cm値)/2
【0118】
*中空率
繊維の中空率は、繊維の全面積対比の中空が占める面積の比で計算し、体積制御部がある中空繊維の場合、ピニオンが接した内円の面積対比の中空が占める面積比で測定した。
【0119】
*音の特性
イ.残響室法による吸音率の測定
ISO 354(KS F 2805:残響室内の吸音率の測定方法)に準ずる装備を用いて測定した。試験片の大きさは、1.0m×1.2mとし、残響時間は、初期音圧対比20dB減衰されたときとし、音源は3分の1Octave band音源を使用した。周波数範囲は0.4〜10kHzの範囲で吸音率を測定した。
【0120】
*繊維の水分吸収率評価試験
イ.適用範囲
高級パッティング類に適用されるFeather Touch Fiberの洗濯後、脱水効果を知るために、水分吸収率の試験評価をする。
【0121】
ロ.方法の概要
繊維を開繊して蒸留水に含浸させる前と脱水後の重量を比較して吸収率を評価。
【0122】
ハ.機構および装置
−開繊機構
−サンプル袋2つ(100%ナイロン編物:経糸(92本/inch)、緯糸(60本/inch)、12cm×12cm)
−ステープラー、細髪ピン、鉄棒
−Water bath
【0123】
ニ.実験方法
−準備された繊維30gを開繊機構により1分間エアーで開繊する。
−開繊された繊維を10gずつ2回定量する。
−2つのサンプル袋にそれぞれ入れてステープラーで縫合した後、重量(Ms)を測定する。
−細髪ピンを利用して、鉄棒に2つのサンプルの袋をぶら下げる。
−20□2℃の蒸留水が入ったwater bathに1時間含浸させる。
−30分間脱水させる。
−含浸した後、脱水されたサンプル袋の重量(Mf)を測定する。
【0124】
ホ.測定
−吸収前後の試料
縫合されたサンプル袋を含浸前の重量(Ms)を測定する。
1時間含浸、30分間脱水した後の重量(Mf)を測定する。
−計算方法
水分吸収率(%)=(Mf−Ms)/Ms×100
【0125】
【表1】
【0126】
前記表1に示すように、本発明による繊維は、体積制御部の干渉効果によりバルキー性に優れたものと試験され、繊維集合体内で、本発明による繊維は、図8に示すように体積制御部が、隣接する繊維の体積制御部と干渉しながら空間を確保してバルキー性が向上されたことが分かった。
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【0131】
【表6】
【0132】
【表7】
【0133】
【表8】
【0134】
前記表2〜8は、本発明による繊維からなる繊維集合体の一実施例と比較例の吸音率を対比したものであって、概ね本発明による繊維集合体が優れた吸音性を示すものとして、結果が導き出された。
【0135】
また、下記表9に示すように、本発明による繊維は、体積制御部の干渉効果により水分排出特性(水分吸収率が低い)が優れているものと試験され、繊維集合体内で、本発明による繊維は、図8に示すように体積制御部が隣接する繊維の体積制御部と干渉しながら空間を確保して、水分の排出性が向上されたことが分かった。
【0136】
【表9】
【0137】
実施例18
固有粘度0.64と固有粘度0.50のポリエステルを体積制御部が6個である紡糸口金を介して繊維を製造した。紡糸温度285℃で紡糸速度を1,000m/minで紡糸後、延伸比3.8で延伸した後、クリンパー(crimper)により捲縮を付与して短繊維繊度6Deであり、繊維長64mmである繊維を製造した。
【0138】
実施例19
固有粘度0.64と固有粘度0.55のポリエステルを体積制御部が6個である紡糸口金を介して繊維を実施例18と同じ条件で製造した。
【0139】
実施例20
多官能基を900ppm含有した固有粘度0.64と固有粘度0.60のポリエステルを体積制御部が6個である紡糸口金を介して繊維を実施例18と同じ条件で製造した。
【0140】
比較例21
固有粘度0.64のポリエステルを体積制御部が6個である紡糸口金を介して繊維を製造した。紡糸温度285℃で紡糸速度を1,000m/minで紡糸後、延伸比3.8に延伸後、クリンパー(crimper)により捲縮を付与して単繊維繊度7Deであり、繊維長64mmである繊維を製造した。
【0141】
比較例22〜25
実施例18と同じ条件で繊維を製造するが、紡糸口金を円形中空断面を適用して
−固有粘度0.64と固有粘度0.46のポリエステル
−固有粘度0.64と固有粘度0.50のポリエステル
−固有粘度0.64と固有粘度0.55のポリエステル
−多官能基を900ppm含有した固有粘度0.64と固有粘度0.60のポリエステルなどの円形中空断面繊維を製造した。
【0142】
比較例26
比較例16と同じであるが、円形断面繊維で不織布を製造した。
【0143】
【表10】
【0144】
実施例18〜20で製造された異形断面中空複合繊維の平均初期バルキー性が約781.6であり、比較例22〜25で製造された円形断面中空複合繊維の平均初期バルキー性が約366.8であることを確認することができる。
【0145】
また、図2に示すように、本発明による繊維は、オメガ(Ω)形のクリンプが形成されることが分かった。オメガ形のクリンプを有する実施例18〜20の平均初期バルキー性は約781.6であり、ジグザグ形のクリンプを有する比較例1は、初期バルキー性が310を有することを確認することができる。すなわち、高いバルキー性を有するためには、オメガ形のクリンプを有することが望ましいと判断することができる。
【0146】
一方、本発明の一実施例による繊維の保温性を評価すると、下記の表11のように異形中空繊維の体積制御部の干渉効果により確保されたデッドエアー層によって保温性に優れたものと試験された。
【0147】
【表11】
【0148】
100gsmは1平方メートルあたり100gであり、gsm数値が増加するほど、グラム数が増加して重量が増加し、厚さが厚くなる。単位面積当たりの不織布の厚さが厚くなって繊維間のデッドエアー層の合計もより広くなるため、保温性が極大化されるものである。
【0149】
以上で説明した本発明は、前述した実施例および添付された図面によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で、様々な置換、変形および変更が可能であることは、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10