【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
[実施例1]
以下のようにして、No.1〜3のサンプルを作製した。No.1、2のサンプルは、発泡ガラスにアルカリ処理を行ったものである。なお、No.2のサンプルは、No.1のサンプルの再現性を確認するために、No.1のサンプルと同条件で作製したものである。No.3のサンプルは、発泡ガラスにアルカリ処理を行っていないものである。また、No.4として、他社製品のアルカリ処理のみを行った発泡ガラスを準備し、フッ化物イオン吸着測定を行った。なお、No.1〜3のサンプルに用いた発泡ガラスは同種のものであり、No.4のサンプルに用いた発泡ガラスは、No.1〜3のサンプルに用いた発泡ガラスとは異なるものである。
【0062】
〈アルカリ処理〉
アルカリ処理は、以下のようにして行った。
【0063】
(1)25mLテフロン(登録商標)分解容器に発泡ガラス5gを量り取った。
(2)16mLの4%NaOH水溶液を直接テフロン分解容器に加えた。
(3)テフロン分解容器の内蓋をはめ、内蓋と容器の隙間を埋めるようにテフロンテープをしっかりと一周巻いた。その後、外蓋をしっかりと閉めた。
(4)あらかじめ130℃に保った電気炉にテフロン分解容器を入れ、6.5h、テフロン容器回転装置で60rpmの速度で回転撹拌させた。
(5)テフロン分解容器を取り出し、氷水に入れて約15分間冷却した。
(6)内容物をガラスカラムに入れ、テフロンコックを開けて溶液のみを取り除いた。
(7)テフロンコックを閉じイオン交換水を50mL加え、カラムを静かに振った。その後、溶液を流し出した。この操作を2回繰り返し、2回目の溶液のpHを測定した。
(8)0.01mol/LのHCl水溶液を30mL加え、カラムを静かに振った。10分後、再びカラムを静かに振り、溶液を出し、最初は捨て、2回目のpHを測定した。pHが7以下になるまでこの操作を繰り返した。
(9)テフロンコックを開けたまま、イオン交換水を回しかけ、酸を洗い流した。
(10)洗浄後の粒子をシャーレに移し、110℃の恒温槽で15h乾燥させた。
【0064】
〈サンプルの作製〉
サンプルの作製は、以下のようにして行った。
(1)準備した発泡ガラス(アルカリ処理あり品およびアルカリ処理なし品)をビーカーに1.5g量り取った。
(2)3moldm
−3に調製したCaCl
2水溶液10mlを発泡ガラスに加え、CaCl
2水溶液に発泡ガラス全体を浸漬し、超音波で振動を与えながら5分間含浸させた。
(3)空気恒温槽中、110℃で9h乾燥させた。
(4)乾燥させた試料を磁性ボートに乗せ、管状炉に入れ、空気気流中、550℃で12h焼成した。
(5)室温まで冷却した後に試料を取り出し、水を飽和吸着させた。
このようにして得られたサンプルについて、フッ化物イオン吸着測定を行った。
【0065】
〈フッ化物イオン吸着測定〉
フッ化物イオン吸着測定は、Thermo Scientific社製 フッ素複合電極を用い、以下のようにして行った。
【0066】
(1)フッ素濃度測定ソフトを立ち上げ、初期設定を行った。
(2)フッ素複合電極をイオン交換水で洗浄し、キムワイプで水分を除いた後、電極の先端を10ppmのNaF水溶液の中に浸け測定した。測定後、電極を洗浄し、50ppm、100ppm、500ppm、1000ppmの順に測定した。測定終了後検量線データを保存した。
(3)試料を約1g量り取った。
(4)蓋付き容器に25mlホールピペットで1000ppmのNaF水溶液を75ml量り取った。
(5)(3)で量り取った試料を(4)の蓋付き容器に入れ反応を開始した。反応は30℃で振とう機で行った。
(6)反応開始から0.5h、1.0h、2.0h、3.0h、4.0h、8.0h、24h、48h後に振とう機から取り出し、フッ素複合電極で測定した。
(7)測定終了後、データを保存しプログラムを終了させた。
【0067】
フッ化物イオンの吸着量を算出するための25℃における検量線において、測定の濃度範囲で直線性の高い回帰曲線が得られたため、この近似式より濃度を算出した。
各サンプルの48時間後の吸着量を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示すように、本発明の要件を満たす実施例であるNo.1〜3は、比較例であるNo.4に比べ、フッ化物イオン吸着量が高く、フッ素除去の性能に優れていることがわかる。
【0070】
〈XRD分析〉
以下の4つのサンプルについて、XRD分析を行った。アルカリ処理および各サンプルの作製は、No.1〜3の作製と同様に行った。
XRD分析は、株式会社リガク製 SmartLabを用い、2θ範囲20〜70°、スキャン速度 12°/min(高速検出器D−tex使用)、Kβフィルター法の条件で測定することにより行った。
【0071】
(No.5)
No.2のサンプルに用いた発泡ガラス(アルカリ処理あり)を用いたものであり、CaCl
2処理を行っていないもの(アルカリ処理あり、および、CaCl
2処理なし品)。
(No.6)
No.2のサンプルに用いた発泡ガラス(アルカリ処理あり)を用いたものであり、乾燥後、焼成前のもの(アルカリ処理あり、CaCl
2処理あり、および、焼成なし品)。
(No.7)
No.2のサンプルに用いた発泡ガラス(アルカリ処理あり)を用いたものであり、焼成後のもの(アルカリ処理あり、CaCl
2処理あり、および、焼成あり品)。
(No.8)
No.1のサンプルに用いた発泡ガラス(アルカリ処理あり)を用いたものであり、フッ化物イオン吸着後のもの(アルカリ処理あり、CaCl
2処理あり、および、焼成あり品であって、フッ化物イオン吸着後)。
【0072】
No.5のサンプルのXRDパターンを
図3に示す。No.6のサンプルのXRDパターンを
図4に示す。No.7のサンプルのXRDパターンを
図5に示す。No.8のサンプルのXRDパターンを
図6に示す。
なお、
図3〜6において、符号1は、SiO
2(石英)を示すグラフ、符号2は、Ca
5Si
6O
16(OH)
2を示すグラフ、符号3は、CaCl
2を示すグラフ、符号4は、CaOClCa(OH)
2を示すグラフ、符号5は、NaClを示すグラフ、符号6は、Ca(ClO)
23H
2Oを示すグラフ、符号7は、CaF
2(蛍石)を示すグラフ、符号8は、CaCO
3を示すグラフである。
【0073】
(XRD分析結果)
アルカリ処理済みの発泡ガラスについて以下のことが確認できた。
【0074】
図3に示すように、アルカリ処理あり、および、CaCl
2処理なし品であるNo.5は、XRDパターンの結晶性ピークより、CaCl
2、CaOClCa(OH)
2、Ca(ClO)
2nH
2O、Ca(ClO)
2のいずれも表面に付着していないことが確認できた。
図4に示すように、アルカリ処理あり、CaCl
2処理あり、および、焼成なし品であるNo.6は、XRDパターンの結晶性ピークより、CaCl
2が表面に付着されており、一部は酸化されたCaOClCa(OH)
2となっているこが確認できた。CaCl
2、CaOClCa(OH)
2は、どちらもフッ素イオン吸着のCaサイトとなっていると推測される。
【0075】
図5に示すように、アルカリ処理あり、CaCl
2処理あり、および、焼成あり品であって、フッ化物イオン吸着前であるNo.7は、XRDパターンの結晶性ピークより、NaClとCa(ClO)
23H
2Oが確認できた。Ca(ClO)
23H
2Oは、フッ素イオン吸着のCaサイトとなっていると推測される。なお、No.7は、CaCl
2水溶液に発泡ガラスを浸漬させたため、微量のCaCl
2が発泡ガラスに付着していると推測される。
図6に示すように、アルカリ処理あり、CaCl
2処理あり、および、焼成あり品であって、フッ化物イオン吸着後であるNo.8は、XRDパターンの結晶性ピークより、CaF
2(蛍石)が観測でき、フッ化物イオンはCa
2+と反応することで高い吸着量を示したことが裏付けられた。
【0076】
なお、本実験では、アルカリ処理を行った発泡ガラスを用いたが、アルカリ処理を行っていない発泡ガラスを用いても、同等の結果になると推測される。
【0077】
[蛍光X線による組成分析]
以下の5つのサンプルについて、蛍光X線による組成分析を行った。アルカリ処理およびNo.10〜13のサンプルの作製は、No.1〜3の作製と同様に行った。
蛍光X線分析は、株式会社リガク製 ZSX PrimusIIを使用した。専用のセルに試料をセットし、測定径を「1mm」、測定時間を「長い」、雰囲気を「真空」に設定し、EZスキャンモードでホウ素B以上の元素の定性・定量分析を行った。
【0078】
(No.9)
No.3のサンプルに用いた発泡ガラス(アルカリ処理なし)を用いたものであり、CaCl
2処理を行っていないもの(アルカリ処理なし、および、CaCl
2処理なし品)。
(No.10)
No.2のサンプルに用いた発泡ガラス(アルカリ処理あり)を用いたものであり、乾燥後、焼成前のもの(アルカリ処理あり、CaCl
2処理あり、および、焼成なし品)。
(No.11)
No.2のサンプルに用いた発泡ガラス(アルカリ処理あり)を用いたものであり、焼成後のもの(アルカリ処理あり、CaCl
2処理あり、および、焼成あり品)。
(No.12)
No.3のサンプルに用いた発泡ガラス(アルカリ処理なし)を用いたものであり、乾燥後、焼成前のもの(アルカリ処理なし、CaCl
2処理あり、および、焼成なし品)。
(No.13)
No.3のサンプルに用いた発泡ガラスについて、アルカリ処理、CaCl
2処理を行い、乾燥後、焼成を行ったサンプルについてフッ化物イオン吸着後のもの(アルカリ処理あり、CaCl
2処理あり、および、焼成あり品であって、フッ化物イオン吸着後)。
この結果を表2に示す。なお、表中、「−」は、元素を含有しないものである。
【0079】
【表2】
【0080】
表2に示すように、本発明の要件を満たす実施例であるNo.10〜12は、比較例であるNo.9に対し、いずれもO(酸素)とSi(ケイ素)の質量%が激減している。すなわち、アルカリ処理なし、および、CaCl
2処理なしの発泡ガラスに対し、CaCl
2処理後の発泡ガラスでは、アルカリ処理あり、かつ焼成なし品(No.10)、アルカリ処理あり、かつ焼成あり品(No.11)、アルカリ処理なし、かつ焼成なし品(No.12)ともに、OとSiの質量%が激減している。これは上記XRD分析で確認された、CaCl
2、CaOClCa(OH)
2、Ca(ClO)
23H
2Oが、発泡ガラス表面を覆っているためと推測できる。
【0081】
また、No.12のような、アルカリ処理なし、かつ焼成なし品でも、No.10のような、アルカリ処理あり、かつ焼成なし品と同等のCa(カルシウム)が検出されており、表面にCaCl
2およびCaOClCa(OH)
2が付着していると推察できる。
また、本発明の要件を満たす実施例のサンプルについてフッ化物イオン吸着後であるNo.13は、No.10〜12に対し、OとSiの質量%が減少しておらず、Caの質量%が減少している。これは、表面を覆っていたCa化合物の一部が溶解したと考えられる。しかし、フッ素Fが検出されており、XRDの結果を支持する蛍石の生成を裏付ける結果となった。
【0082】
以上の結果から、本発明の陰イオン吸着剤は、フッ化物イオンの除去性能に優れていることがわかった。また、発泡ガラスにアルカリ処理を行わなくても、フッ化物イオンの除去性能に優れる陰イオン吸着剤を製造できることがわかった。また、発泡ガラスをCaCl
2水溶液に浸漬させ、乾燥させた後、焼成を行わなくても、フッ化物イオンの除去性能に優れる陰イオン吸着剤を製造できることがわかった。
【0083】
[実施例2]
以下のようにして、No.14のサンプルを作製した。なお、No.14のサンプルは、発泡ガラスにアルカリ処理を行ったものである。アルカリ処理は、[実施例1]と同様の方法で行った。また、用いた発泡ガラス(アルカリ処理前のもの)は、No.1〜3のサンプルに用いた発泡ガラスと同種のものである。
【0084】
〈サンプルの作製〉
(1)25mlテフロン分解容器に発泡ガラスを約1.5g量り取った。
(2)1mol/Lのリン酸水溶液(リン酸三ナトリウム水溶液)20mlをテフロン分解容器に加えた。
(3)テフロン分解容器の内蓋をはめ、内蓋と容器の隙間を埋めるようにテフロンテープをしっかり巻いた。その後、外蓋をしっかり閉めた。
(4)あらかじめ120℃に保った電気炉にテフロン分解容器を入れ、6.5h、テフロン容器回転装置で回転撹拌させた。
(5)テフロン分解容器を取り出し、氷水に入れ冷却した。
(6)試料が流れ出ないようにテフロンコック上部に石英ガラスウールを詰めたガラスカラムに内容物を入れ、テフロンコックを開け、溶液のみ取り除いた。
(7)テフロンコックを閉じ、イオン交換水を流し入れコックを開けて溶液のみ取り除いた。これを何回かに分け、万能試験紙で中性になるまで洗浄した(目安は約2L)。
(8)洗浄後の試料をシャーレに移し、110℃の恒温槽で15h乾燥させた。
【0085】
次に、リン酸処理による生成物の結晶性を高めるため、以下の焼成を行った。
(9)(8)で得られた試料1.5gを磁製ボートに量り取った。
(10)磁性ボートを管状炉に入れ、空気気流中(トラップにて1泡/secに設定)550℃で12h焼成した。
(11)12h後、試料を取り出し、水を飽和吸着させた。
【0086】
〈フッ化物イオン吸着測定〉
フッ化物イオン吸着測定は、[実施例1]と同様の方法で行った。
その結果、No.14のフッ化物イオン吸着量は、7.2mg/gであった。
【0087】
〈XRD分析〉
No.14のサンプル(乾燥後、焼成後のもの)について、XRD分析を行った。
XRD分析は、[実施例1]と同様の方法で行った。
【0088】
No.14のサンプルのXRDパターンを
図7に示す。
なお、
図7において、符号9は、Ca
5(PO
4)
3(OH)(ヒドロキシアパタイト)を示すグラフである。
【0089】
(XRD分析結果)
図7に示すように、リン酸処理を行い、かつ焼成を行ったNo.14は、XRDパターンの結晶性ピークより、Ca
5(PO
4)
3(OH)(ヒドロキシアパタイト)が表面に付着していることがわかる。
【0090】
[蛍光X線による組成分析]
No.14のサンプルについて、蛍光X線による組成分析を行った。
蛍光X線分析は、[実施例1]と同様の方法で行った。
この結果を表3に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
表3に示すように、本発明の要件を満たす実施例であるNo.14は、Caが多く検出され、Pも検出されていることがわかる。
【0093】
本発明の陰イオン吸着剤は、フッ化物イオン吸着剤(フッ素除去剤)や、リン酸イオン吸着剤(リン酸除去剤)などに用いることができる。特に、フッ化物イオン吸着剤(フッ素除去剤)として好適に用いることができる。
【0094】
本発明の陰イオン吸着剤は、基材となる無機系材料としてガラスを利用することができる。そのため、陰イオン吸着剤は、持ち運びなどの扱いが容易である。また、本発明の陰イオン吸着剤は、ガラス廃材を利用することで産業廃棄物の削減を図ることができる。
本発明の陰イオン吸着剤の製造方法は、アルカリ処理工程や、焼成工程を省略することができるため、経済性の向上を図ることができる。