【実施例】
【0024】
図1において、10は本発明の実施例1に係るCT検査用座位補助椅子で、このCT検査用座位補助椅子10は、CT装置11の円環状のガントリ12の内側空間(内径70cm)を挿通自在な座椅子13と、CT撮影時に患者が抱える抱きかかえクッション14と、これを抱きかかえて座位前屈位の姿勢をとる患者を座椅子13に固定する2本のベルト15,16とを備えたものである。
【0025】
以下、これらの構成体を具体的に説明する。
CT装置11は、主に、X線を照射する管球、および、透過X線を受光する検出器が周転可能に収納された前記円環状のガントリ(架台)12と、患者が横たわる寝台であるクレードル17と、これらの制御部であるコンソール(図示せず)とを備えている。
【0026】
図1および
図2に示すように、座椅子13は、前後方向に長い矩形状の厚肉な座板18の表面のうち、後端部を除く部分の全域に発泡合成樹脂製のクッションシート19が接着された着座部20と、座板18の後端部の上面に垂直に立設し、かつ上下方向に長い矩形状の厚肉な背もたれ板21を基板とした背もたれ部22と、着座部20の後端部の表面に基端が固着され、かつ背もたれ板21の下半分のうち、その幅方向の両端部と長さ方向の中間部とを各背後からビス止めにより支持する縦長な略直角三角形状の3枚のリブ23とを有している。これらの部材は、組み立て後、互いに接着されている。
これらの着座部20、背もたれ部22、各リブ23および各ビスBは、X線透過素材である透明な塩化ビニル樹脂からなる。
【0027】
着座部20のサイズは、幅がクレードル17の幅と略同じ40cm、長さは65cmである。また、クッションシート19のサイズは、幅40cm、長さ50cmである。さらに、背もたれ部22のサイズは、幅40cm、高さ45cmである。したがって、座椅子13は、内径70cmのガントリ12の内側空間を自在に挿通可能に構成されている。
また、クッションシート19の表面全域には、平面視して矩形状の大判な第1の雌型面ファスナ(面ファスナの他方)24が接着されている。また、背もたれ板21の上半分の裏面全域には、背面視して矩形状の大判な第2の雌型面ファスナ(別の面ファスナの他方)25が接着されている。よって、各リブ23を含む背もたれ部22の下半分は、その透明性が確保されている。その結果、CT撮影に際して、前方向や左右方向だけでなく、座椅子13の背後からも、座位前屈位の姿勢をとる患者の撮影ターゲット部位の位置を確認し、その結果に基づき、患者の座位前屈位を最適な姿勢に直すことができる。
【0028】
抱きかかえクッション14は、合成皮革(X線透過素材)からなる円筒袋14aにポリエステル繊維(X線透過素材)製の合繊綿(図示せず)が充填された円柱状のものである。
抱きかかえクッション14のサイズは、直径32cm、高さ30cmである。抱きかかえクッション14の下面には、2本の第1の雄型面ファスナ26が縫着されている。
抱きかかえクッション14の底面には、X線透過素材からなる2本の短尺な第1の雄型面ファスナ(面ファスナの一方)26が固着されている。
各ベルト15,16は、幅5cm、長さ約160cmのポリプロピレン(X線透過素材)製のものである。1本目のベルト15の両端部の裏面、および、2本目のベルト16の両端部の表面には、第2の雄型面ファスナ(別の面ファスナの一方)27がそれぞれ縫着されている。
【0029】
1本目のベルト15は、抱きかかえクッション14を抱いた患者を前後方向から締結ものである。この1本目のベルト15は、
図2に示すように、その長さ方向の中間部が、抱きかかえクッション14の胴部の高さ方向の中間部に縫着されている。このように抱きかかえクッション14とベルト15とを一体化することで、抱きかかえクッション14を抱いた患者を1本目のベルト15により前後方向から締結し易くなる。なお、ベルト15は、抱きかかえクッション14と別体でもよい。
【0030】
また、2本目のベルト16は、抱きかかえクッション14を抱いた患者を上下方向から締結するものである。この2本目のベルト16は、
図3に示すように、その長さ方向の中間部に、ベルト16より幅広なクッションパッド28が縫着されている。
クッションパッド28は、ビニールレザー製の薄肉で横長な矩形袋28aにスポンジシートを収納したものである。なお、クッションパッド28は省略してもよい。
【0031】
次に、
図1〜
図4を参照して、本発明の実施例1に係るCT検査用座位補助椅子10を使用し、骨粗鬆症性椎体骨折の最終診断を行うCT検査について説明する。
図1に示すように、まず、CT装置11のクレードル17の上に、背もたれ部22側をガントリ12に向けて座椅子13を載置し、座椅子13の着座部20に患者を着座させる。その後、患者が両足で抱きかかえクッション14の下部を挟むような姿勢で、第1の雄、雌型面ファスナ24,26を介して、着座部20の前半分の上に円柱状の抱きかかえクッション14を掛止する。
【0032】
次いで、患者に抱きかかえクッション14を抱きかかえさせ、座位前屈位の姿勢をとらせる。ここでは、患者の体格に合わせて、タオルTにより高さを調整している。もちろん省略してもよい。その後、2本のベルト15,16を使用し、抱きかかえクッション14を抱いた患者を、座位前屈位の姿勢のままで座椅子13に固定する。
すなわち、1本目のベルト15を使用し、抱きかかえクッション14を抱いた患者を前後方向(水平方向)から締結する。次に、2本目のベルト16を使用し、このクッション14を抱いた患者を上下方向(垂直方向)から締結する。
【0033】
このとき、1本目のベルト15の第2の雄型面ファスナ27を、背もたれ部22の裏面の第2の雌型面ファスナ25に掛止する。また、2本目のベルト16の第2の雄型面ファスナ27を、着座部20の第1の雌型面ファスナ24に掛止する。この抱きかかえクッション14を抱いた患者を2本目のベルト16によって上下方向から締結する際には、幅広なクッションパッド28によって、患者の両肩や背中に対する締め付け力が緩和される(
図1および
図3)。
ここで、実際のCT撮影の前に、短時間の座位前屈位では患者が疼痛や神経症状の明らかな増悪がないことを確認する。この増悪がないことを確認後、クレードル17を徐々に移動させながら、管球および検出器をガントリ12の内部空間で周転させることにより、座位前屈位での患者の胸腰椎等のCT撮影を行う(
図1および
図4)。
【0034】
このように、CT撮影時、座椅子13に着座して座位前屈位の姿勢をとる患者が抱きかかえクッション14に抱きつくことにより、荷重位となる患者の体圧が分散し、リラックス効果も得られる。その結果、座位前屈位でのCT撮影時の身体への負担を軽減することができる。
また、抱きかかえクッション14として、直径32cm、高さ30cmの円柱体を採用したため、患者は座位前屈位の姿勢が取り易く、かつこの姿勢での胸腰椎等のCT撮影にも支障がない。
さらに、抱きかかえクッション14の底面に、第1の雄型面ファスナ26を縫着し、かつ座椅子13の着座部20の上面の前部全域に第1の雌型面ファスナ24を接着したため、患者の体格や撮影条件等に合わせ、抱きかかえクッション14を着座部20の前部の上面の任意位置に掛止することができる。
【0035】
さらにまた、ここでは、各ベルト15,16の両端部に、第2の雄型面ファスナ27をそれぞれ縫着し、クッションシート19の表面全域に、第1の雌型面ファスナ24を接着し、かつ背もたれ部22の上部の裏面全域に、第2の雌型面ファスナ25を接着している。そのため、縦横に十字配置される2本のベルト15,16を使用し、座位前屈位の姿勢で抱きかかえクッション14を抱きかかえた、それぞれ体格が異なる患者の堅固な座椅子13への固定、および、その固定解除を容易に行うことができる。このように交差配置した2本のベルト15,16を使用し、患者を座椅子13に座位前屈位の姿勢で堅固に固定しても、この患者は抱きかかえクッション14を抱いているため、身体的な負担は小さい。