特許第6482714号(P6482714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6482714
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】CT検査用座位補助椅子
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/04 20060101AFI20190304BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   A61B6/04 333
   A61B6/03 323Q
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-189640(P2018-189640)
(22)【出願日】2018年10月5日
【審査請求日】2018年12月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518355364
【氏名又は名称】▲片▼江 祐二
(74)【代理人】
【識別番号】100085224
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 重隆
(72)【発明者】
【氏名】▲片▼江 祐二
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−121925(JP,A)
【文献】 特公昭46−754(JP,B1)
【文献】 特開2002−336070(JP,A)
【文献】 米国特許第5611601(US,A)
【文献】 米国特許第6484337(US,B1)
【文献】 登録実用新案第3143744(JP,U)
【文献】 中国実用新案第204218408(CN,U)
【文献】 糸井 陽 他,”骨粗鬆症性椎体骨折偽関節における坐位前屈位CTの有用性”,別冊整形外科,2013年 4月,第63号,129−133頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14、5/055
A61G 15/00−15/18
A47C 1/00−31/12
医中誌Web
メディカルオンライン
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CT装置の円環状のガントリの内側空間を挿通自在なX線透過素材製の座椅子と、
X線透過素材製の抱きかかえクッションと、
該抱きかかえクッションを抱きかかえて座位前屈位の姿勢をとる患者を、前記座椅子に固定するX線透過素材製の束縛部材とを備えたことを特徴とするCT検査用座位補助椅子。
【請求項2】
前記抱きかかえクッションは、直径20〜40cm、高さ20〜40cmの円柱体であることを特徴とする請求項1に記載のCT検査用座位補助椅子。
【請求項3】
前記抱きかかえクッションの底面には、X線透過素材からなる面ファスナの一方が固着され、
前記座椅子の着座部の上面のうち、少なくとの前部全域には、前記面ファスナの他方が固着されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のCT検査用座位補助椅子。
【請求項4】
前記座椅子の背もたれ部は、X線透過素材製の透明素材からなり、
前記束縛部材はベルトで、
該ベルトの両端部には、X線透過素材からなる別の面ファスナの一方がそれぞれ固着され、
前記座椅子の背もたれ部の上部の裏面全域には、前記別の面ファスナの他方が固着されたことを特徴とする請求項1〜請求項3のうち、何れか1項に記載のCT検査用座位補助椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、骨粗鬆症性椎体骨折における座位前屈位でのCT(コンピュータ断層撮影:Computed Tomography)撮影時に使用されるCT検査用座位補助椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症性骨折の一種として椎体骨折が知られている。これは、骨粗鬆症性骨折の中で最も頻度が高く、近年は高齢化社会を反映し、その数が増加している。骨粗鬆症性椎体骨折は適切な治療が行われず、圧潰が進行して偽関節となることがある。偽関節になれば、疼痛の持続や遅発性神経障害を生じるおそれがあり、患者に苦痛を強いるため、早期の診断、適切な治療が重要となる。
現在、骨粗鬆症性椎体骨折の診断にはMRI(磁気共鳴画像:Magnetic Resonance Imaging)が有用でCTでは感度が落ちるとされているが、国内のMRIはCTに比べて保有数が少ないため、撮影までの待機日数が長くなり、さらに撮影時間は長く、料金も高額である。また、ペースメーカーや脳動脈クリッピングがあると、MRI検査が行えないという制限がある。よって、CT検査により急性期の骨粗鬆症性椎体骨折が診断できれば、より多くの患者の早期診断・早期治療ができると考える。
このような椎体骨折は、通常、立位や座位など荷重位で症状が悪化する。荷重位の画像評価は単純X線像のみであるが、画像が不鮮明で、椎体骨折の状態や神経圧迫の程度の描出が困難なことが多い。そのため、CTによる矢状断像の評価が可能となれば、本病態の評価法の一つとなりうる。しかしながら、一般的にCTによるX線撮影は仰臥位で行われ、座位での撮影には適さない。
【0003】
近年、この骨粗鬆症性椎体骨折偽関節の診断で、座位前屈位でのCT撮影に関する論文が発表されている(例えば、非特許文献1)。これは、骨粗鬆症性椎体骨折偽関節を生じる症例の多くは比較的体格が小さく痩せており、普段から前傾姿勢で前屈位が容易にとれる患者が多いことに着目したものである。すなわち、非特許文献1では、CT装置(コンピュータ断層撮影装置)は、原理的に身体全体が撮影部である円環状のガントリを通過できなくても、患部がガントリの中にあれば撮影を行うことができ、座位前屈位の姿勢でのCT撮影も可能であることを利用している。もちろん、小柄な患者であれば、座位前屈位の姿勢のままでガントリを通過することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】糸井陽、他3名、「骨粗鬆症性椎体骨折偽関節における坐位前屈位CTの有用性」、別冊整形外科、南江堂、2013年4月、第63杆、P129−133
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように骨粗鬆症性椎体骨折偽関節の診断で、座位前屈位の姿勢でのCT撮影は可能であるものの、患者に撮影終了までの時間(例えば、5〜10分間)、荷重位の座位前屈位を強いることとなり、この姿勢の保持は、患者にとって大きな負担となっていた。
【0006】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、座位前屈位でのCT撮影時において、利用者が抱きつくことで体圧を分散し、リラックス効果も得られる抱きかかえクッションに着目した。すなわち、CT撮影に際して、これを抱きかかえた患者を、ベルトなどの束縛部材を使用して座椅子に固定するようにすれば、上述した座位前屈位の姿勢保持による患者の負担が軽減されることを知見し、この発明を完成させた。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、荷重位となる座位前屈位でのCT撮影時において、患者の姿勢保持の負担を軽減可能なCT検査用座位補助椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、CT装置の円環状のガントリの内側空間を挿通自在なX線透過素材製の座椅子と、X線透過素材製の抱きかかえクッションと、該抱きかかえクッションを抱きかかえて座位前屈位の姿勢をとる患者を、前記座椅子に固定するX線透過素材製の束縛部材とを備えたことを特徴とするCT検査用座位補助椅子である。
【0009】
CT装置は、主に、X線を照射する管球および透過X線を受光する検出器が、周転可能に収納された円環状のガントリ(架台)と、患者が横たわるクレードル(寝台)と、これらを制御するコンソール(制御部)との3つの機器から構成されている。例えば、このCT装置として、VCT Light Speed(GEヘルスケア社、東京)等を採用することができる。
ここでいう“CT検査”とは、例えば、骨粗鬆症性椎体骨折、骨粗鬆症性椎体骨折偽関節の診断時等で採用される、CT装置を用いた座位前屈位での検査である。
なお、このCT検査用座位補助椅子は、MRI撮影にも適用可能である。
【0010】
ここでいう“X線透過素材”としては、CT撮像処理に影響を及ぼさないものであれば限定されない。例えば、各種の合成樹脂(塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル等)、各種の低密度の木(ヒノキ、マツ等)などでもよい。なお、この種類については、請求項3および請求項4におけるX線透過素材についても同様である。
座椅子の形状は任意である。また、折り畳み式のものでも、そうでない一体式(固定式)のものでもよい。
座椅子のサイズは、ガントリの内側空間を挿通自在であれば任意である。
【0011】
抱きかかえクッションのサイズおよび形状は任意である。
また、抱きかかえクッションの構造も任意である。例えば、天然皮革、合成皮革、人工皮革、布帛、合成樹脂シート等からなる袋体に、天然綿、合繊綿またはスポンジ等の伸縮性充填材を充填したものを採用することができる。
抱きかかえクッションは、着座部に対して、固定状態でも着脱自在でもよい。
束縛部材としては、抱きかかえクッションを抱きかかえて座位前屈位の姿勢をとる患者を、座椅子に固定することができる部材であれば、その種類やサイズ等は限定されない。例えば、ベルト、ロープ、布製のシート等でもよい。
束縛部材の使用本数は、1本でも複数本でもよい
【0012】
請求項2に記載の本発明は、前記抱きかかえクッションが、直径20〜40cm、高さ20〜40cmの円柱体であることを特徴とする請求項1に記載のCT検査用座位補助椅子である。
【0013】
抱きかかえクッションの直径が20cm未満では、クッションが細すぎて、CT撮影時における患者の座位前屈位の姿勢安定性およびリラックス効果が低下する。また、40cmを超えれば、クッションが太すぎて患者が抱きにくい。
また、抱きかかえクッションの高さが20cm未満では、クッションが低すぎて(短すぎて)、CT撮影時における患者の姿勢保持の負担軽減効果が低下する。また、40cmを超えれば、クッションが高すぎて、患者の頭がCTの円環状のガントリを通過できない。特に、抱きかかえクッションの好ましいサイズは、直径32cm、高さ30cmである。なお、抱きかかえクッションの高さ調整として、例えば、タオルやクッションなどの高さ調整部材を使用してもよい。
【0014】
請求項3に記載の本発明は、前記抱きかかえクッションの底面には、X線透過素材からなる面ファスナの一方が固着され、前記座椅子の着座部の上面のうち、少なくとの前部全域には、前記面ファスナの他方が固着されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のCT検査用座位補助椅子である。
【0015】
面ファスナの一方または他方のうち、何れが雄型のものでも、雌型のものでもよい。その他、両者が雄雌兼用のものでもよい。なお、雌型面ファスナとしては、専用のものに限定されず、例えば不織布のように、雄型面ファスナが掛止可能な素材製のものであれば限定されない。なお、これらに関しては、請求項4の別の面ファスナについても同様である。
また、一方の面ファスナが固着されるのは、抱きかかえクッションの底面の全域でも一部でもよい。さらに、一方の面ファスナの使用数は1つでも、複数でもよい。
さらにまた、他方の面ファスナが固着されるのは、座椅子の着座部の上面のうち、前部全域のみでも、着座部の上面全域でもよい。
【0016】
請求項4に記載の本発明は、前記座椅子の背もたれ部はX線透過素材製の透明素材からなり、前記束縛部材はベルトで、該ベルトの両端部には、X線透過素材からなる別の面ファスナの一方がそれぞれ固着され、前記座椅子の背もたれ部の上部の裏面全域には、前記別の面ファスナの他方が固着されたことを特徴とする請求項1〜請求項3のうち、何れか1項に記載のCT検査用座位補助椅子である。
【0017】
透明素材としては、例えば各種の透明な合成樹脂等を採用することができる。
ベルトのサイズ(幅および長さ等)は、抱きかかえクッションを抱きかかえて座位前屈位の姿勢をとる患者を、座椅子に固定可能であれば任意である。また、ベルトは抱きかかえクッションと一体形成しても、または、別体で設けてもよい。
ベルトの使用本数は、1本でも複数本でもよい。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の本発明によれば、荷重位となる座位前屈位でのCT撮影を行うに際して、まず、クレードル(寝台)に座椅子を載置し、この座椅子に患者が着座後、抱きかかえクッションを患者に抱かせて、座位前屈位の姿勢をとらせる。次いで、この状態のままで、患者を座椅子に固定する。その後、この状態を保持してCT撮影を行う。
このとき、座椅子に着座して座位前屈位の姿勢をとる患者が、抱きかかえクッションに抱きつくことで、荷重位となる患者の体圧が分散し、かつリラックス効果も得られる。その結果、座位前屈位でのCT撮影時の身体への負担を軽減することができる。
【0019】
特に、請求項2に記載の本発明によれば、抱きかかえクッションとして、直径20〜40cm、高さ20〜40cmの円柱体を採用している。このサイズのものであれば、患者は座位前屈位の姿勢が取り易く、かつこの姿勢での胸腰椎等のCT撮影にも支障が生じにくい。
【0020】
また、請求項3に記載の本発明によれば、抱きかかえクッションを、このクッション底面に固着した面ファスナの一方と、座椅子の着座部の上面のうち、少なくとも前部全域に固着した大判な面ファスナの他方とを用いて掛止している。そのため、患者の体格や撮影条件等に合わせ、抱きかかえクッションを着座部の前部の上面の任意位置に掛止することができる。
【0021】
さらに、請求項4に記載の本発明によれば、ベルトの両端部に別の面ファスナの一方をそれぞれ固着し、座椅子の背もたれ部の上部の裏面全域に、別の面ファスナの他方を固着している。そのため、この別のベルトを使用し、抱きかかえクッションを抱く患者の座位前屈位姿勢での座椅子への固定と、その固定解除とを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1に係るCT検査用座位補助椅子のCT撮影直前の状態を示す斜視図である。
図2】本発明の実施例1に係るCT検査用座位補助椅子の斜視図である。
図3】本発明の実施例1に係るCT検査用座位補助椅子に使用されるクッションパッド付きのベルトの平面図である。
図4】本発明の実施例1に係るCT検査用座位補助椅子のCT撮影中の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。ここでは、骨粗鬆症性椎体骨折の診断に用いられるCT検査用座位補助椅子を例にとる。
【実施例】
【0024】
図1において、10は本発明の実施例1に係るCT検査用座位補助椅子で、このCT検査用座位補助椅子10は、CT装置11の円環状のガントリ12の内側空間(内径70cm)を挿通自在な座椅子13と、CT撮影時に患者が抱える抱きかかえクッション14と、これを抱きかかえて座位前屈位の姿勢をとる患者を座椅子13に固定する2本のベルト15,16とを備えたものである。
【0025】
以下、これらの構成体を具体的に説明する。
CT装置11は、主に、X線を照射する管球、および、透過X線を受光する検出器が周転可能に収納された前記円環状のガントリ(架台)12と、患者が横たわる寝台であるクレードル17と、これらの制御部であるコンソール(図示せず)とを備えている。
【0026】
図1および図2に示すように、座椅子13は、前後方向に長い矩形状の厚肉な座板18の表面のうち、後端部を除く部分の全域に発泡合成樹脂製のクッションシート19が接着された着座部20と、座板18の後端部の上面に垂直に立設し、かつ上下方向に長い矩形状の厚肉な背もたれ板21を基板とした背もたれ部22と、着座部20の後端部の表面に基端が固着され、かつ背もたれ板21の下半分のうち、その幅方向の両端部と長さ方向の中間部とを各背後からビス止めにより支持する縦長な略直角三角形状の3枚のリブ23とを有している。これらの部材は、組み立て後、互いに接着されている。
これらの着座部20、背もたれ部22、各リブ23および各ビスBは、X線透過素材である透明な塩化ビニル樹脂からなる。
【0027】
着座部20のサイズは、幅がクレードル17の幅と略同じ40cm、長さは65cmである。また、クッションシート19のサイズは、幅40cm、長さ50cmである。さらに、背もたれ部22のサイズは、幅40cm、高さ45cmである。したがって、座椅子13は、内径70cmのガントリ12の内側空間を自在に挿通可能に構成されている。
また、クッションシート19の表面全域には、平面視して矩形状の大判な第1の雌型面ファスナ(面ファスナの他方)24が接着されている。また、背もたれ板21の上半分の裏面全域には、背面視して矩形状の大判な第2の雌型面ファスナ(別の面ファスナの他方)25が接着されている。よって、各リブ23を含む背もたれ部22の下半分は、その透明性が確保されている。その結果、CT撮影に際して、前方向や左右方向だけでなく、座椅子13の背後からも、座位前屈位の姿勢をとる患者の撮影ターゲット部位の位置を確認し、その結果に基づき、患者の座位前屈位を最適な姿勢に直すことができる。
【0028】
抱きかかえクッション14は、合成皮革(X線透過素材)からなる円筒袋14aにポリエステル繊維(X線透過素材)製の合繊綿(図示せず)が充填された円柱状のものである。
抱きかかえクッション14のサイズは、直径32cm、高さ30cmである。抱きかかえクッション14の下面には、2本の第1の雄型面ファスナ26が縫着されている。
抱きかかえクッション14の底面には、X線透過素材からなる2本の短尺な第1の雄型面ファスナ(面ファスナの一方)26が固着されている。
各ベルト15,16は、幅5cm、長さ約160cmのポリプロピレン(X線透過素材)製のものである。1本目のベルト15の両端部の裏面、および、2本目のベルト16の両端部の表面には、第2の雄型面ファスナ(別の面ファスナの一方)27がそれぞれ縫着されている。
【0029】
1本目のベルト15は、抱きかかえクッション14を抱いた患者を前後方向から締結ものである。この1本目のベルト15は、図2に示すように、その長さ方向の中間部が、抱きかかえクッション14の胴部の高さ方向の中間部に縫着されている。このように抱きかかえクッション14とベルト15とを一体化することで、抱きかかえクッション14を抱いた患者を1本目のベルト15により前後方向から締結し易くなる。なお、ベルト15は、抱きかかえクッション14と別体でもよい。
【0030】
また、2本目のベルト16は、抱きかかえクッション14を抱いた患者を上下方向から締結するものである。この2本目のベルト16は、図3に示すように、その長さ方向の中間部に、ベルト16より幅広なクッションパッド28が縫着されている。
クッションパッド28は、ビニールレザー製の薄肉で横長な矩形袋28aにスポンジシートを収納したものである。なお、クッションパッド28は省略してもよい。
【0031】
次に、図1図4を参照して、本発明の実施例1に係るCT検査用座位補助椅子10を使用し、骨粗鬆症性椎体骨折の最終診断を行うCT検査について説明する。
図1に示すように、まず、CT装置11のクレードル17の上に、背もたれ部22側をガントリ12に向けて座椅子13を載置し、座椅子13の着座部20に患者を着座させる。その後、患者が両足で抱きかかえクッション14の下部を挟むような姿勢で、第1の雄、雌型面ファスナ24,26を介して、着座部20の前半分の上に円柱状の抱きかかえクッション14を掛止する。
【0032】
次いで、患者に抱きかかえクッション14を抱きかかえさせ、座位前屈位の姿勢をとらせる。ここでは、患者の体格に合わせて、タオルTにより高さを調整している。もちろん省略してもよい。その後、2本のベルト15,16を使用し、抱きかかえクッション14を抱いた患者を、座位前屈位の姿勢のままで座椅子13に固定する。
すなわち、1本目のベルト15を使用し、抱きかかえクッション14を抱いた患者を前後方向(水平方向)から締結する。次に、2本目のベルト16を使用し、このクッション14を抱いた患者を上下方向(垂直方向)から締結する。
【0033】
このとき、1本目のベルト15の第2の雄型面ファスナ27を、背もたれ部22の裏面の第2の雌型面ファスナ25に掛止する。また、2本目のベルト16の第2の雄型面ファスナ27を、着座部20の第1の雌型面ファスナ24に掛止する。この抱きかかえクッション14を抱いた患者を2本目のベルト16によって上下方向から締結する際には、幅広なクッションパッド28によって、患者の両肩や背中に対する締め付け力が緩和される(図1および図3)。
ここで、実際のCT撮影の前に、短時間の座位前屈位では患者が疼痛や神経症状の明らかな増悪がないことを確認する。この増悪がないことを確認後、クレードル17を徐々に移動させながら、管球および検出器をガントリ12の内部空間で周転させることにより、座位前屈位での患者の胸腰椎等のCT撮影を行う(図1および図4)。
【0034】
このように、CT撮影時、座椅子13に着座して座位前屈位の姿勢をとる患者が抱きかかえクッション14に抱きつくことにより、荷重位となる患者の体圧が分散し、リラックス効果も得られる。その結果、座位前屈位でのCT撮影時の身体への負担を軽減することができる。
また、抱きかかえクッション14として、直径32cm、高さ30cmの円柱体を採用したため、患者は座位前屈位の姿勢が取り易く、かつこの姿勢での胸腰椎等のCT撮影にも支障がない。
さらに、抱きかかえクッション14の底面に、第1の雄型面ファスナ26を縫着し、かつ座椅子13の着座部20の上面の前部全域に第1の雌型面ファスナ24を接着したため、患者の体格や撮影条件等に合わせ、抱きかかえクッション14を着座部20の前部の上面の任意位置に掛止することができる。
【0035】
さらにまた、ここでは、各ベルト15,16の両端部に、第2の雄型面ファスナ27をそれぞれ縫着し、クッションシート19の表面全域に、第1の雌型面ファスナ24を接着し、かつ背もたれ部22の上部の裏面全域に、第2の雌型面ファスナ25を接着している。そのため、縦横に十字配置される2本のベルト15,16を使用し、座位前屈位の姿勢で抱きかかえクッション14を抱きかかえた、それぞれ体格が異なる患者の堅固な座椅子13への固定、および、その固定解除を容易に行うことができる。このように交差配置した2本のベルト15,16を使用し、患者を座椅子13に座位前屈位の姿勢で堅固に固定しても、この患者は抱きかかえクッション14を抱いているため、身体的な負担は小さい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、座位前屈位でのCT撮影の補助技術として有用である。
【符号の説明】
【0037】
10 CT検査用座位補助椅子
11 CT装置
12 ガントリ
13 座椅子
14 抱きかかえクッション
15,16 ベルト
24 第1の雌型面ファスナ(面ファスナの他方)
25 第2の雌型面ファスナ(別の面ファスナの他方)
26 第1の雄型面ファスナ(面ファスナの一方)
27 第2の雄型面ファスナ(別の面ファスナの一方)
【要約】
【課題】荷重位となる座位前屈位でのCT撮影時において、患者の姿勢保持の負担を軽減可能なCT検査用座位補助椅子を提供する。
【解決手段】CT撮影に際して、クレードル17に座椅子13を載置し、座椅子13に着座後、抱きかかえクッション14を抱かせて、座位前屈位の姿勢をとらせる。次いでベルト15,16を使用し、抱きかかえクッション14を抱いた患者を座位前屈位の姿勢で座椅子13に固定してCT撮影を行う。このとき、座位前屈位の姿勢をとる患者が抱きかかえクッション14に抱きつくことで、荷重位となる患者の体圧が分散し、リラックス効果も得られるため、座位前屈位でのCT撮影時の身体への負担を軽減できる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4