特許第6482721号(P6482721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482721
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】油性クレンジング化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20190304BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20190304BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20190304BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   A61K8/37
   A61K8/89
   A61K8/31
   A61Q1/14
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-505381(P2018-505381)
(86)(22)【出願日】2017年2月22日
(86)【国際出願番号】JP2017006514
(87)【国際公開番号】WO2017159247
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2018年3月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-50682(P2016-50682)
(32)【優先日】2016年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-50683(P2016-50683)
(32)【優先日】2016年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-135184(P2016-135184)
(32)【優先日】2016年7月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】100137419
【弁理士】
【氏名又は名称】桂田 正徳
(72)【発明者】
【氏名】松尾 真樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 佳奈
【審査官】 井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−101297(JP,A)
【文献】 特開2010−001260(JP,A)
【文献】 特開平07−126604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有することを特徴とする油性クレンジング化粧料(ただし、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩を含有する油性クレンジング化粧料を除く)
成分(A):炭化水素油およびシリコーン油の群から選ばれる油剤
成分(B):トリベヘン酸グリセリル
成分(C):(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル
【請求項2】
前記成分(B)の含有量が1〜6質量%、前記成分(C)の含有量が1〜6質量%であり、成分(B)の含有量と成分(C)の含有量の総和が2〜7質量%である請求項1に記載の油性クレンジング化粧料。
【請求項3】
前記成分(C)に対する前記成分(B)の質量割合((B)/(C))が0.25〜4である請求項1又は2に記載の油性クレンジング化粧料。
【請求項4】
さらに、下記成分(D)を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の油性クレンジング化粧料。
成分(D):トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル
【請求項5】
さらに、下記成分(E)を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の油性クレンジング化粧料。
成分(E):非イオン性界面活性剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性クレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
メイク汚れを除去するクレンジング化粧料としては、水性クレンジング化粧料、油性クレンジング化粧料、乳化クレンジング化粧料などがある。このようなクレンジング化粧料の中でも、油性クレンジング化粧料は、クレンジング効果(所謂、メイク汚れ除去効果)に優れることから汎用されており、これまでにも種々の試みが提案されている。
【0003】
クレンジング効果を高める試みとしては、液状油を50〜97重量%と、特定のノニオン性界面活性剤3〜50重量%とを含有する油性クレンジング用組成物(特許文献1を参照)、イソノナン酸ポリグリセリルと、25℃で液状又はペースト状の油剤とを含有する油性液状クレンジング用組成物(特許文献2を参照)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン−20グリセリル又はトリオレイン酸ポリオキシエチレン−20グリセリル1種以上と、モノイソステアリン酸デカグリセリルとを含有する油性クレンジング化粧料(特許文献3を参照)、20℃で液状の油性成分60〜95質量%と、特定化合物0.01〜2質量%を含む非イオン性界面活性剤3〜20質量%とを含有する油性クレンジング組成物(特許文献4を参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−230895号公報
【特許文献2】特開2009−242253号公報
【特許文献3】特開2013−237646号公報
【特許文献4】特開2014−024788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の油性クレンジング化粧料の多くは、クレンジング成分として多量の油剤が配合されていることから、製剤の分離や離液(油浮き)などが生じ易く、製剤の保存安定性に大きな課題を有している。
【0006】
上記課題を解決するためには、分離や離液(油浮き)の原因となり得る油剤の配合量を減らすことが考えられる。しかしながら、油剤の配合量を減らと油性クレンジング化粧料の長所であるクレンジング効果を十分に発揮させることができないという新たな問題が生じる。そのため、優れた製剤の保存安定性と、優れたクレンジング効果の双方を十分に満足する油性クレンジング化粧料を得ることは困難であった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、クレンジング化粧料の長所であるクレンジング効果を十分に発揮させる油性クレンジング化粧料を提供することにある。また、本発明の目的は、格段に優れた製剤の保存安定性を有する油性クレンジング化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、下記成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有することを特徴とする油性クレンジング化粧料を提供する。
成分(A):炭化水素油およびシリコーン油の群から選ばれる油剤
成分(B):トリベヘン酸グリセリル
成分(C):(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル
【0009】
上記成分(B)の含有量が1〜6質量%、上記成分(C)の含有量が1〜6質量%であり、成分(B)の含有量と成分(C)の含有量の総和が2〜7質量%であることが好ましい。
【0010】
上記成分(C)に対する上記成分(B)の質量割合((B)/(C))が0.25〜4であることが好ましい。
【0011】
さらに、上記油性クレンジング化粧料は、成分(D):トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルを含有することが好ましい。
【0012】
さらに、上記油性クレンジング化粧料は、成分(E):非イオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の油性クレンジング化粧料は、上記構成要件を満たすことにより、製剤の分離や離液(油浮き)がなく、格段に優れた保存安定性を発揮させることができるという効果を奏する。また、本発明の油性クレンジング化粧料は、クレンジング時の延展性(伸び広がり)が良く、格段に優れたクレンジング効果(メイク汚れ除去効果)を発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の油性クレンジング化粧料は、下記成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有する。
成分(A):炭化水素油およびシリコーン油の群から選ばれる油剤
成分(B):トリベヘン酸グリセリル
成分(C):(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル
【0015】
以下、本発明の油性クレンジング化粧料に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0016】
[成分(A):油剤]
上記成分(A)は、炭化水素油およびシリコーン油の群から選ばれる油剤である。本発明では、成分(A)を用いることにより、油性クレンジング化粧料の長所である優れたクレンジング効果を発揮させることができる。本明細書において、上記「炭化水素油」を「成分(A1)」と称する場合がある。また、上記「シリコーン油」を「成分(A2)」と称する場合がある。成分(A)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0017】
上記成分(A1)の具体例としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、水添ポリイソブテン、イソドデカン、揮発性イソパラフィン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン)などが挙げられる。成分(A1)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0018】
上記成分(A2)の具体例としては、例えば、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノール、25℃における粘度が例えば1mPa・s以上10mPa・s未満のジメチルポリシロキサン、25℃における粘度が例えば10mPa・s以上6,000mPa・s未満のジメチルポリシロキサン、25℃における粘度が例えば6,000mPa・s以上20,000,000mPa・s以下であり、かつ数平均重合度が650以上である高重合ジメチルポリシロキサンなど鎖状シリコーン油;メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状シリコーン油;アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体などアミノ変性シリコーン油;カルボキシ変性シリコーン油、脂肪酸エステル変性シリコーン油、アルコール変性シリコーン油、エポキシ変性シリコーン油、フッ素変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油などが挙げられる。成分(A2)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0019】
本発明の油性クレンジング化粧料中の成分(A)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、クレンジング効果を発揮させる観点から、油性クレンジング化粧料100質量%中、8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、本発明の油性クレンジング化粧料中の成分(A)の含有量は、製剤の保存安定性の観点から、油性クレンジング化粧料100質量%中、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分(A)の含有量は、本発明の油性クレンジング化粧料中に配合される全ての成分(A)の含有量の合計量である。
【0020】
[成分(B):トリベヘン酸グリセリル]
上記成分(B)は、トリベヘン酸グリセリルである。本発明では、成分(B)を用いることにより、優れた製剤の保存安定性を発揮する油性クレンジング化粧料を調製することが可能となる。
【0021】
上記成分(B)は、市販品を用いることができる。成分(B)の市販品としては、例えば、商品名「シンクロワックス HR−C」(クローダジャパン社製)、商品名「エステライドG−B」(ナショナル美松社製)などが挙げられる。
【0022】
本発明の油性クレンジング化粧料中の成分(B)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、優れた製剤の保存安定性を発揮させる観点から、油性クレンジング化粧料100質量%中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、本発明の油性クレンジング化粧料中の成分(B)の含有量は、クレンジング時の延展性の観点から、油性クレンジング化粧料100質量%中、7質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
[成分(C):(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル]
上記成分(C)は、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルである。本発明では、成分(C)を用い、上記成分(B)と併用することにより、格段に優れた製剤の保存安定性を発揮する油性クレンジング化粧料を調製することが可能となる。
【0024】
上記成分(C)は、市販品を用いることができる。成分(C)の市販品としては、例えば、商品名「ノムコート HK−G」(日清オイリオグループ社製)などが挙げられる。
【0025】
本発明の油性クレンジング化粧料中の成分(C)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、優れた製剤の保存安定性を発揮させる観点から、油性クレンジング化粧料100質量%中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、本発明の油性クレンジング化粧料中の成分(C)の含有量は、クレンジング時の延展性の観点から、油性クレンジング化粧料100質量%中、7質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
本発明の油性クレンジング化粧料では、一層優れた製剤の保存安定性を発揮させる観点から、上記成分(B)の含有量と上記成分(C)の含有量の総和が1〜8質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜7質量%である。成分(B)の含有量と成分(C)の含有量の総含有量が1質量%未満の場合、製剤の分離や離液(油浮き)が生じ易くなるために好ましくない。一方、成分(B)の含有量と成分(C)の含有量の総含有量が8質量%を超える場合、クレンジング時の延展性に劣るために好ましくない。
【0027】
また、本発明の油性クレンジング化粧料は、格段に優れた製剤の保存安定性を発揮させる観点から、上記成分(B)の含有量と上記成分(C)の含有量とを、成分(C)に対する成分(B)の質量割合((B)/(C))として、0.2〜5の範囲となるように調製することが好ましく、より好ましくは0.25〜4である。成分(C)に対する成分(B)の質量割合((B)/(C))が0.2未満の場合、製剤の分離や離液(油浮き)が生じ易く、製剤の保存安定性に劣るために好ましくない。一方、成分(C)に対する成分(B)の質量割合((B)/(C))が5を超える場合、クレンジング時の延展性に劣るために好ましくない。
【0028】
本発明の油性クレンジング化粧料は、上記した如く、成分(B)であるトリベヘン酸グリセリルと、成分(C)である(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルとを併用して用いることにより、製剤の分離や離液(油浮き)を抑え、格段に優れた保存安定性を発揮させ、クレンジング時の延展性を良好にすることができる。
【0029】
[成分(D):トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル]
本発明の油性クレンジング化粧料は、上記した成分(A)、成分(B)および成分(C)に加えて、成分(D):トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルを配合させることが好ましい。本発明では、成分(D)を用いることにより、より一層優れた製剤の保存安定性を発揮させることができる。また、しっとりとした後肌感を付与することができる。
【0030】
上記成分(D)は、市販品を用いることができる。成分(D)の市販品としては、例えば、商品名「サラコス WO−6」(日清オイリオグループ社製)などが挙げられる。
【0031】
本発明の油性クレンジング化粧料中の成分(D)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、より一層優れた製剤の保存安定性を発揮させる観点から、油性クレンジング化粧料100質量%中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、本発明の油性クレンジング化粧料中の成分(D)の含有量は、延展性および洗い落ちの観点から、油性クレンジング化粧料100質量%中、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
[成分(E):非イオン性界面活性剤]
本発明の油性クレンジング化粧料は、クレンジング後の洗い落ちを高める観点、並びにクレンジング効果をより一層高める観点から、成分(E):非イオン性界面活性剤を配合させることが好ましい。
【0033】
上記成分(E)としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ポリグリセリル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。成分(E)のHLB値は、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されないが、洗い落ちを高める観点から、5〜20であることが好ましく、8〜16であることがより好ましい。成分(E)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0034】
上記成分(E)の中でも、クレンジング後の洗い落ちを高める観点、並びにクレンジング効果をより一層高める観点から、脂肪酸ポリグリセリル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを用いることが好ましい。好適な成分(E)の中でも、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルを用いることがより好ましい。
【0035】
上記ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、直鎖脂肪酸であっても、分岐脂肪酸であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されないが、洗い落ちを高める観点から、分岐脂肪酸であることが好ましい。また、前記分岐脂肪酸は、単鎖型であっても、多鎖型であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されないが、クレンジング時の使用感を高める観点から、単鎖型であることが好ましい。即ち、本発明の油性クレンジング化粧料は、成分(E)として、単鎖型分岐脂肪酸ポリオキシエチレングリセリルを用いることが最も好ましい。
【0036】
好適な成分(E)の具体例としては、例えば、イソステアリン酸PEG−5グリセリル(HLB値:8)、イソステアリン酸PEG−6グリセリル(HLB値:8)、イソステアリン酸PEG−8グリセリル(HLB値:10)、イソステアリン酸PEG−10グリセリル(HLB値:10)、イソステアリン酸PEG−15グリセリル(HLB値:12)、イソステアリン酸PEG−20グリセリル(HLB値:13)、イソステアリン酸PEG−25グリセリル(HLB値:14)、イソステアリン酸PEG−30グリセリル(HLB値:15)、イソステアリン酸PEG−40グリセリル(HLB値:15)、イソステアリン酸PEG−50グリセリル(HLB値:16)、イソステアリン酸PEG−60グリセリル(HLB値:16)などが挙げられる。好適な成分(E)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0037】
本発明の油性クレンジング化粧料中の成分(E)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、クレンジング後の洗い落ちを高める観点、並びにクレンジング効果をより一層高める観点から、油性クレンジング化粧料100質量%中、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましい。また、本発明の油性クレンジング化粧料中の成分(E)の含有量は、クレンジング時の目刺激の観点から、油性クレンジング化粧料100質量%中、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分(E)の含有量は、本発明の油性クレンジング化粧料中に配合される全ての成分(E)の含有量の合計量である。
【0038】
[その他成分]
本発明の油性クレンジング化粧料には、本発明の効果をより一層高める観点から、上記した成分の他に通常化粧料に用いられる成分を配合することができる。他成分としては、例えば、多価アルコール、上記成分(B)および成分(C)以外の脂肪酸エステル油、植物油、増粘性高分子、高級アルコール、脂質、香料、防腐・殺菌剤、保湿剤、清涼剤などが挙げられる。上記他成分は、適宜、その用途、目的に応じて配合することができる。
【0039】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、グルコース、マルトース、マルチトール、スクロース、マンニトール、ソルビトール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールなどが挙げられる。多価アルコールは、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0040】
上記成分(B)および成分(C)以外の脂肪酸エステル油としては、例えば、直鎖脂肪酸と低級アルコールとのエステル油、直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油、直鎖脂肪酸と分岐アルコールとのエステル油、分岐脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油、分岐脂肪酸と分岐アルコールとのエステル油、脂肪酸と多価アルコールとのエステル油などが挙げられる。脂肪酸エステル油は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0041】
上記成分(B)および成分(C)以外の脂肪酸エステル油としては、例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸プロピレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、セバシン酸イソステアリル、イソステアリン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシルなどが挙げられる。
【0042】
上記植物油としては、例えば、オレンジ油、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ホホバ油、ローズ油、ラベンダー油、ティーツリー油などが挙げられる。植物油は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0043】
上記増粘性高分子としては、例えば、天然高分子、半合成高分子、合成高分子、粘土鉱物などが挙げられる。増粘性高分子は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0044】
増粘性高分子としては、例えば、アラビアゴム、トラガントガム、グアガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼインなどの天然高分子;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロースなどの半合成高分子;アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸・ポリオキシエチレンアルキルイタコン酸共重合体、アクリル酸アルキル・メタクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテル共重合体、アクリル酸・アクリル酸ヒドロキシアルキル共重合体、アクリル酸・メタクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルクロスポリマー、アクリル酸・ネオデカン酸ビニルクロスポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルセルロース、ポリアミド樹脂などの合成高分子;フルオロケイ酸(ナトリウム/マグネシウム)、合成ケイ酸(ナトリウム/マグネシウム)などの粘土鉱物などが挙げられる。
【0045】
上記高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールなどが挙げられる。高級アルコールは、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0046】
なお、本発明の油性クレンジング化粧料は、油性の化粧料とする観点から、水を含まないか、又は水を含み且つ油性クレンジング化粧料100質量%中の水の含有量が1質量%以下であることが好ましい。即ち、本発明の油性クレンジング化粧料中の水の含有量は0〜1質量%であることが好ましく、0〜0.5質量%であることがより好ましい。
【0047】
本発明の油性クレンジング化粧料の製造方法は、油性のクレンジング化粧料を調製することができる製造方法であれば特に限定されないが、例えば、上記各構成成分を混合し、公知の方法、例えば、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミルなどを用いて攪拌する方法が挙げられる。また、本発明の油性クレンジング化粧料は、チューブ容器、広口ジャー容器などの容易に取り出すことが可能な容器に充填されることが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は特記しない限り「質量%」を表し、配合成分は全て純分に換算した。また、評価はすべて23℃、湿度60%の恒温恒湿の一定条件下で実施した。
【0049】
実施例および比較例では、下記成分を用いた。
【0050】
[成分(A)]
流動パラフィン:商品名「CARNATION」(Sonneborn社製)
イソドデカン:商品名「マルカゾールR」(丸善石油化学社製)
ジメチルポリシロキサン:商品名「KF−96A−10cs」(信越化学工業社製)
メチルフェニルポリシロキサン:商品名「SF558MD」(東レ・ダウコーニング社製)
デカメチルシクロペンタシロキサン:商品名「KF−995」(信越化学工業社製)
【0051】
[成分(B)]
トリベヘン酸グリセリル:商品名「シンクロワックス HR−C」(クローダジャパン社製)
【0052】
[成分(C)]
(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル:商品名「ノムコート HK−G」(日清オイリオグループ社製)
【0053】
[成分(D)]
トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル:商品名「サラコス WO−6」(日清オイリオグループ社製)
【0054】
[成分(E)]
イソステアリン酸PEG−8グリセリル:商品名「ブラウノン RGL−8MISE」(青木油脂工業社製)
イソステアリン酸PEG−20グリセリル:商品名「EMALEX GWIS−120」(日本エマルジョン社製)
【0055】
[その他成分]
濃グリセリン:商品名「化粧用濃グリセリン」(阪本薬品工業社製)
2−エチルヘキサン酸セチル:商品名「CIO−N」(日本サーファクタント工業社製)
オレンジ油:商品名「ORANGE(DECO)−CS OIL IT」(小川香料社製)
【0056】
(各試料の調製)
表1〜表2に記した組成に従い、実施例1〜8および比較例1〜6の油性クレンジング化粧料を調製し、下記評価試験に供した。結果をそれぞれ表1〜表2に併記する。
【0057】
(試験例1:保存安定性の評価)
実施例および比較例で得られた各試料を、30g容量の透明ガラス容器に夫々充填し、50℃の恒温槽に4週間保管後の系の状態を目視観察して下記評価基準に従い目視評価した。
【0058】
<保存安定性の評価基準>
◎(非常に良好):製造直後と対比して、均一状態を維持している(変化が全く認められない)
○(良好):製造直後と対比して、均一状態を維持しているが、表面にごく僅かな油浮き(離液)が認められる
△(不十分):製造直後と対比して、均一状態を維持しておらず、明らかな油浮き(離液)が認められる
×(不良):明らかな分離が認められる
【0059】
なお、上記保存安定性の評価において、「◎(非常に良好)」、「○(良好)」、「△(不十分)」の結果が得られた試料のみ、下記使用感の評価試験(試験例2)を実施した。また、「×(不良)」の試料については、明らかな分離が認められ、使用感の評価を行うことができないため、下記評価試験は行っていない。
【0060】
(試験例2:使用感の評価)
顔にメイクを施した女性官能評価パネル16名により、上記保存安定性の評価において、「◎(非常に良好)」、「○(良好)」、「△(不十分)」の結果が得られた各試料を用いてメイクアップ除去剤の形態での使用試験を行った。具体的には、乾いた手の平に試料3gを取り、メイク汚れに馴染ませるように顔全体に塗布後、メイク汚れが気になる箇所を中心に指先で小さな円を描くように1分間クレンジングしてもらい、その後40℃の温水で十分に洗い流してタオルドライにより顔の水分を拭き取ってもらった。
【0061】
なお、評価は、クレンジング時の「延展性(伸び広がり)」、タオルドライ後の「クレンジング効果(メイク汚れ除去効果)」について行い、以下の評価基準に従って官能評価した。
【0062】
<延展性(伸び広がり)の評価基準>
◎(非常に良好):16名中13名以上が、延展時の伸び広がりが良く、剤の「ヨレ」を感じないと回答
○(良好):16名中9〜12名が、延展時の伸び広がりが良く、剤の「ヨレ」を感じないと回答
△(不十分):16名中5〜8名が、延展時の伸び広がりが良く、剤の「ヨレ」を感じないと回答
×(不良):16名中4名以下が、延展時の伸び広がりが良く、剤の「ヨレ」を感じないと回答
【0063】
<クレンジング効果(メイク汚れ除去効果)の評価基準>
◎(非常に良好):16名中13名以上が、クレンジング効果(メイク汚れ除去効果)に優れると回答
○(良好):16名中9〜12名が、クレンジング効果(メイク汚れ除去効果)に優れると回答
△(不十分):16名中5〜8名が、クレンジング効果(メイク汚れ除去効果)に優れると回答
×(不良):16名中4名以下が、クレンジング効果(メイク汚れ除去効果)に優れると回答
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表1〜表2の結果から、各実施例の油性クレンジング化粧料は、各比較例のものと対比して、製剤の分離や離液(油浮き)がなく、格段に優れた保存安定性を発揮していることが分かる。また、各実施例の油性クレンジング化粧料は、クレンジング時の延展性(伸び広がり)が良好であり、格段に優れたクレンジング効果(メイク汚れ除去効果)を発揮していることが分かる。
【0067】
これに対し、本発明の必須構成成分である成分(A)を含まない比較例1では、本発明の効果を十分に発揮し得ないものであることが分かる。また、本発明の必須構成成分である成分(B)を含まない比較例2、若しくは、本発明の必須構成成分である成分(C)を含まない比較例3では、明らかな分離が認められ、保存安定性が極端に悪いものであることが分かる。
【0068】
さらに、本発明の必須構成成分である成分(B)を他の類似成分へ置き換えた比較例4〜5においても保存安定性に劣り、延展性やクレンジング効果を十分に発揮し得ないものであることが分かる。因みに、本発明の必須構成成分である成分(C)を他の類似成分へ置き換えた比較例6では、均一に溶解せず剤としてなし得ないことから、各評価試験は行っていない。
【0069】
上記実施例と比較例の結果からも明らかな通り、油性クレンジング化粧料において、保存安定性を担保し、かつ、優れた使用感を十分に発揮させるためには、本発明の必須構成成分である成分(B)と成分(C)とを併用し、尚且つ、成分(A)と組み合わせることが必要不可欠であることが理解できる。