(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記空調監視制御装置は、前記室内機および前記室外機の前記運転情報を取得し、該運転情報に基づき前記室内機1台ごとの消費電力を算出する請求項1に記載の空調システム。
【背景技術】
【0002】
1台の室外機に対して複数台の室内機が接続されるマルチ型空調システムが知られている。例えば、1台の室外機に対して数十台の室内機を接続することのできる大型のマルチ型空調システムも存在する。従来、このようなマルチ型空調システムにおける制御とは、室内機や室外機の運転/停止情報を監視するのみであったが、節電意識の高まりから「電力の見える化」が行われるなど、各室内機ごとの消費電力などのより詳しい情報を監視および収集したいというニーズが高まった。
例えば、特許文献1では、各室内機1台ごとの消費電力情報を取得するため、すべての室内機から運転情報を収集していることが開示されている。
また、特許文献2では、空調機の各系統ごとに通信アダプタが設置され、配下の室外機および室内機の運転情報が取得され、各通信アダプタを介して集中管理装置にて各室内機ごとの使用量から各室内機の料金按分データを算出することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示された発明では、全ての室内機からそれぞれ運転情報を収集する必要がある。この運転情報が、空調システムにおける室内機および室外機のエアコン制御情報と同じネットワークを通じて通信されることから、本来通信されるべきエアコン制御情報が滞ってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、装置や運転に関する多数の情報を収集可能な空調システム及び空調システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の空調システム及び空調システムの制御方法は以下の手段を採用する。
室外機と室内機とを備える空気調和機の運転制御を行うとともに運転情報を取得する空調監視制御装置と、前記室外機とそれに対応する複数の前記室内機を接続する第1ネットワークと、前記空調監視制御装置とそれに対応する複数の前記室外機を接続する第2ネットワークと、前記空調監視制御装置に対し必要とする前記運転情報を要求し収集するサーバと、前記サーバとそれに対応する複数の前記空調監視制御装置を接続する第3ネットワークと、を備え、前記第1ネットワークと前記第2ネットワークはそれぞれ独立
し、互いに干渉することなく各々の情報の通信が可能な通信ネットワークであり、前記第1ネットワークは、前記室内機及び前記室外機のエアコン制御情報の通信を行い、前記第2ネットワークは、前記室外機が前記エアコン制御情報の通信を通して保持する全ての運転情報の通信を行い、前記第3ネットワークは、前記空調監視制御装置が保持する全ての運転情報のうち前記サーバが必要とする
消費電力の算出に必要な前記運転情報の通信を行
い、
前記室外機が保持する前記運転情報は、前記室外機と配下の各前記室内機との間で前記第1ネットワークを通してやり取りを行う前記エアコン制御情報を収集する際に同時に収集されていることを特徴とする、空調システムを採用する。
【0007】
本発明によれば、エアコン制御情報の通信を行う第1ネットワークと運転情報の通信を行う第2ネットワークが互いに独立しているため、干渉し合うことなく各々の情報の通信トラフィックが混雑しない。そのため、各々の影響を受けないことから特に第1ネットワークでの待ち時間が発生せず、第2ネットワークでの情報の通信を行いながら並行して第1ネットワークでの通信が行える。さらに、第2ネットワークにおいて大量の情報の通信を行うことができる。
また、一台の空調機に対してそれぞれ空調監視制御装置を設けた接続方法と比較して、空調監視制御装置の台数を減らすことができるため初期導入コストを抑えることができ、かつ、一台の空調機に対してそれぞれ空調監視制御装置を設けた接続方法よりも簡易に実現可能である。
また、空調監視制御装置と室外機との接続において、室外機側の通信は従来より配設されたポートを使用してもよく、この場合各ネットワークの独立化を簡便に行うことができ、また、室外機を新しく設計しなおす必要がない。
【0008】
上記発明において、前記空調監視制御装置は、前記室内機および前記室外機の前記運転情報を取得し、該運転情報に基づき前記室内機1台ごとの消費電力を算出することとしてもよい。
【0009】
本発明によれば、第2ネットワークにおける運転情報の通信が第1ネットワークに影響を与えないことから大量の情報の通信を行うことができるため、室外機および室内機の運転情報を得て、この情報をもとに室内機1台ずつの消費電力量を算出することができる。これにより、室内機毎に電力メーターを設置せずに消費電力量を算出することができる。
【0010】
室外機と室内機とを備える空気調和機の運転制御を行うとともに運転情報を取得する空調監視制御装置と、前記室外機とそれに対応する複数の前記室内機を接続する第1ネットワークと、前記空調監視制御装置とそれに対応する複数の前記室外機を接続する第2ネットワークと、前記空調監視制御装置に対し必要とする前記運転情報を要求し収集するサーバと、前記サーバとそれに対応する複数の前記空調監視制御装置を接続する第3ネットワークと、を備える空調システムの制御方法であって、前記第1ネットワークと前記第2ネットワークはそれぞれ独立
し、互いに干渉することなく各々の情報の通信が可能な通信ネットワークであり、前記第1ネットワークは、前記室内機及び前記室外機のエアコン制御情報の通信を行い、前記第2ネットワークは、前記室外機が前記エアコン制御情報の通信を通して保持する全ての運転情報の通信を行い、前記第3ネットワークは、前記空調監視制御装置が保持する全ての運転情報のうち前記サーバが必要とする
消費電力の算出に必要な前記運転情報の通信を行
い、前記室外機が保持する前記運転情報は、前記室外機と配下の各前記室内機との間で前記第1ネットワークを通してやり取りを行う前記エアコン制御情報を収集する際に同時に収集されていることを特徴とする、空調システムの制御方法を採用する。
【0011】
本発明によれば、エアコン制御情報の通信を行う第1ネットワークと運転情報の通信を行う第2ネットワークが互いに独立しているため、干渉し合うことなく各々の情報の通信トラフィックが混雑しない。そのため、各々の影響を受けないことから特に第1ネットワークでの待ち時間が発生せず、第2ネットワークでの情報の通信を行いながら並行して第1ネットワークでの通信が行える。さらに、第2ネットワークにおいて大量の情報の通信を行うことができる。
また、一台の空調機に対してそれぞれ空調監視制御装置を設けた接続方法と比較して、空調監視制御装置の台数を減らすことができるため初期導入コストを抑えることができ、かつ、一台の空調機に対してそれぞれ空調監視制御装置を設けた接続方法よりも簡易に実現可能である。
また、空調監視制御装置と室外機との接続において、室外機側の通信は従来より配設されたポートを使用してもよく、この場合各ネットワークの独立化を簡便に行うことができ、また、室外機を新しく設計しなおす必要がない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エアコン制御情報の通信を行う第1ネットワークと運転情報の通信を行う第2ネットワークが互いに独立しているので、エアコン制御情報に影響を与えることなく大量の運転情報などの情報の通信を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る空調システム及び空調システムの制御方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る空調システム及び空調システムの制御方法の概略構成が示されている。
図1に示されるように、空調システム1は、サーバ2と、複数の空調機(空気調和機)4A,4B,4Cの運転制御を行うとともに運転情報を取得する複数の空調監視制御装置3とを主な構成として備えている。なお、本実施形態においては、空調監視制御装置3が1台であることとして説明するが、空調監視制御装置3の台数は特に限定されない。
【0015】
サーバ2と空調監視制御装置3とは、管理通信ネットワーク(第3ネットワーク)30を介して接続されている。管理通信ネットワーク30は、標準規格化された通信プロトコル(例えば、TCP/IP)を使用したネットワークであり、例えばインターネットである。
また、空調監視制御装置3は、配下に空調機4A,4B,4Cを備えており、空調監視制御装置3と各空調機4A,4B,4Cに備えられた各室外機5A,5B,5Cとは監視制御ライン(第2ネットワーク)20を介して接続されている。監視制御ライン20は、各空調機4A,4B,4Cの監視制御用に規格化された通信プロトコルを使用したネットワークである。
【0016】
また、各空調機4A,4B,4Cは、それぞれ、室外機5A,5B,5C及び室内機7A1,7B1,7C1,・・・を備えている。
本実施形態においては、空調監視制御装置3は、空調機4A,4B,4Cを3台備えており、各空調機4A,4B,4Cは、それぞれ室外機5A,5B,5Cを1台、及び室内機7A1,7B1,7C1,・・・を4台備えているものとする。また、以下の説明において、各々を区別する場合は、末尾にA〜Cのいずれかを付し、各々を区別しない場合は、A〜Cを省略する。また、室内機7については、区別する場合はA〜Cの末尾にさらに1〜4のいずれかを付す。
例えば、空調監視制御装置3の配下の空調機4の1つである空調機4Aは、室外機5A及び室内機7A1,7A2,7A3,7A4を備えている。なお、各空調監視制御装置3が接続する空調機4の台数、及び、各空調機4が備える室外機5及び室内機7の台数はこれに限定されず、特に上限を設けない。ただし本願では、空調監視制御装置3の上限値を20、空調機4の上限値を16、室外機5の上限値を32、室内機7の上限値を128と想定している。
また、空調機4の内部では、室外機5と各室内機7とはエアコン制御ライン(第1ネットワーク)10を介して接続されている。
【0017】
次に、
図1の空調システム1における運転情報の通信について述べる。
はじめに、サーバ2から空調監視制御装置3に対し、管理通信ネットワーク30を通してサーバ2が必要な運転情報の問い合わせを行う。サーバ2が必要な運転情報には様々な情報があるが、例えば各室内機7の消費電力の算出に必要な運転情報が挙げられる。本願ではこれを消費電力量情報とする。また、消費電力量情報、すなわち室内機7の消費電力の算出に必要な運転情報としては、具体的には、室外機5の入力電流、入力電圧および冷却ファンのON/OFF(運転/停止)情報や、室内機7のアンサーバック周波数(ここで「周波数」とはインバータ駆動によるコンプレッサの周波数をいう。)などが挙げられる。
本実施形態においては、サーバ2は消費電力量情報の問い合わせを行うものとする。
【0018】
サーバ2から問い合わせを受けた空調監視制御装置3は、各室外機5に対し、監視制御ライン20を通して運転情報の要求を行う。ここで、空調監視制御装置3が要求する運転情報とは、室外機5が保持する全ての運転情報である。
【0019】
次に、空調監視制御装置3からの要求に対し、各室外機5は、保持する全ての運転情報を監視制御ライン20を通して空調監視制御装置3へ渡す。室外機5が保持する運転情報は、室外機5と配下の各室内機7との間でエアコン制御ライン10を通してやり取りを行うエアコン制御情報を収集する際に同時に収集されている。よって、空調監視制御装置3からの要求を受けてから収集するものではなく、常に最新の運転情報が各室外機5に保持されている。
各室外機5から空調監視制御装置3へは、各室外機5一台ごとに順番に運転情報が渡される。
【0020】
各室外機5から全ての運転情報を受け取った空調監視制御装置3は、サーバ2から問い合わせを受けた消費電力量情報のみを選択し、サーバ2へ渡す。この時、必要であればデータの算出も空調監視制御装置3にて実施する。
【0021】
図2には、参考例としての空調システム1の概略構成が示されている。
上記した
図1の場合では、監視制御ライン20を通して1台の空調監視制御装置3に対し、複数台の室外機5が接続されていたが、
図2の参考例としての空調システム1では空調監視制御装置3は室外機5及び室内機7と同じエアコン制御ライン10に接続するとしたものである。そのため、1台の空調監視制御装置3に対し1台の室外機5が接続され、空調機4の数に応じて空調監視制御装置3が必要となる。その他の点については
図1と同様であるので、説明は省略する。
【0022】
図2のような構成の場合、室外機5と室内機7との間でエアコン制御情報を通信するエアコン制御ライン10上に空調監視制御装置3も接続されていることから、空調監視制御装置3が必要とする運転情報も同じエアコン制御ライン10にて通信が行われることとなる。
ここで、エアコン制御情報と運転情報とは電位が同じであることから、例えば運転情報の通信が行われている間はその通信がエアコン制御ライン10を占有してしまい他の通信を行うことができない。すなわち、本来のエアコン制御情報の通信に遅れが出ることとなる。
さらに、室内機7の台数が増えることや、室内機7の消費電力量情報を収集するだけでなくその他のサービスに用いられる他の大量の情報も通信することとなると、
図2のような接続方法ではさらに通信が混雑し、エアコン制御情報の通信に大きな支障が発生することとなる。
【0023】
この点において、
図1に示した本発明の空調システム1ではエアコン制御ライン10とは独立して監視制御ライン20が接続されており、エアコン制御情報はエアコン制御ライン10にて、運転情報は監視制御ライン20にて通信されることから、運転情報がエアコン制御ライン10を占有することはない。また各々のネットワークが独立していることから監視制御ライン20にて大量の情報を通信することができ、エアコン制御ライン10に影響を及ぼすことがない。
【0024】
次に、
図1の空調システム1における、各室内機7の消費電力の算出方法について述べる。
各室内機7の消費電力の算出に先立ち、空調監視制御装置3は室外機5から空調機4に関する全ての運転情報を収集する。
図3に示すような全ての運転情報のうち、各室内機7の消費電力の算出に必要な消費電力量情報を選択する。このうち、空調機4の種類により収集されない情報もあるが、その場合は所定の値を使用するものとする。また、各室内機7の消費電力の算出に使用されない情報も収集の対象となる場合がある。
まず、空調機4の1系統分の総消費電力を算出する。空調機4のいずれか1系統、すなわち1台の室外機5及びそれに接続されている複数台の室内機7を備える空調機4一系統の総消費電力P
allは、電源仕様の違いにより、以下の式(1)または式(2)で表される。
<日本国内三相または輸出三相の場合>
【数1】
<日本国内単相または輸出単相の場合>
【数2】
【0025】
式(1)および式(2)において、I
1及びI
2は室外機5の入力電流、Vは室外機5の入力電圧である。また、P
out_fan1及びP
out_fan2は室外機5の機種容量とファン回転数が0でない時、P
ch1及びP
ch2はクランクケースヒータがONの時、及び、P
fanc1及びP
fanc2は冷却ファンがONの時、それぞれ一定の消費電力値を設定する。また、P
indoor_allは系統内の全ての室内機7の消費電力であり、各室内機7の形式、ファン風量、機種容量を元に、消費電力値を算出する。消費電力値を求める室内機7は運転中の室内機7のみとする。
図1の室外機5のうち室外機5Aに接続された各室内機7A1乃至7A4において消費される電力をP
indoorA1乃至P
indoorA4とすると、室外機5A一台に接続されている室内機7A1乃至7A4にて消費される電力の合計P
indoor_allは以下の式(3)で表される。
P
indoor_all=P
indoorA1+P
indoorA2+P
indoorA3+P
indoorA4
・・・(3)
【0026】
次に、1台の空調監視制御装置3の消費電力P
gwが以下の式(4)で表される。
P
gw=ΣP
all・・・(4)
式(4)において、ΣP
allは各空調機4の総消費電力の合計である。
【0027】
本実施形態では、空調監視制御装置3は1台としたが、管理通信ネットワーク30上には複数の空調監視制御装置3が設置されていてもよい。例えばその場合、全ての空調監視制御装置3の消費電力P
gw_allは以下の式(5)で表される。
P
gw_all=ΣP
gw・・・(5)
式(5)において、ΣP
gwは各空調監視制御装置3の消費電力の合計である。
【0028】
また、空調機4の1系統の総消費電力P
allは、室外機5の消費電力がほとんどを占めており、各室内機7が消費する割合は小さい。したがって、室外機5の消費電力を含めた空調機4全体の消費電力量を各々の室内機7で按分する必要がある。本願では、各室内機7のアンサーバック周波数(アンサーHz)を使用して按分する。これにより、室内機7一台ごとの正確な消費電力が算出できる。例えば、室内機7A1の消費電力P
A1は以下の式(6)で表される。
P
A1=P
all×(An
A1/ΣAn)・・・(6)
式(6)において、An
A1は室内機7A1のアンサーバック周波数、ΣAnは空調機4Aの系統の各アンサーバック周波数の合計である。
以上の式により、室内機7においてのみ消費される電力ではなく、空調機4の1系統において消費される電力から導かれる、室内機7一台あたりの消費電力を求めることができる。
【0029】
以上の運転情報は、各室内機7ごと、各室外機5ごと、各空調監視制御装置3ごとに収集される情報であることから大量の情報となるが、監視制御ライン20がエアコン制御ライン10とは独立した別のネットワークであるため容易に収集が可能である。
【0030】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る空調システム及び空調システムの制御方法によれば、エアコン制御情報の通信を行うエアコン制御ライン10と運転情報の通信を行う監視制御ライン20が互いに独立しているため、干渉し合うことなく各々の情報の通信トラフィックが混雑しない。そのため、各々の影響を受けないことから特にエアコン制御ライン10での待ち時間が発生せず、監視制御ライン20での情報の通信を行いながら並行してエアコン制御ライン10での通信が行える。さらに、監視制御ライン20において大量の情報の通信を行うことができる。
【0031】
また、参考例にて示した接続方法と比較して、空調監視制御装置3の台数を減らすことができるため初期導入コストを抑えることができる方法であり、かつ、参考例にて示した接続方法よりも簡易に実現可能である。
また、空調監視制御装置3と室外機5との接続において、室外機5側の通信は従来より配設されたポートを使用してもよいため、各ネットワークの独立化を簡便に行うことができ、また、室外機5を新しく設計しなおす必要がない。
【0032】
また、収集した情報を用いて各室内機7の消費電力を取得する場合において、エアコン制御ライン10に影響を与えないことから大量の情報の通信を行うことができるため、室外機5及び室内機7の運転情報を得て、この情報をもとに室内機7一台ずつの消費電力量を算出することができる。これにより、電力メーターを設置せずに室内機7一台ずつの消費電力量を算出することができる。