特許第6482788号(P6482788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482788
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】かぎ針及びかぎ針用グリップ体
(51)【国際特許分類】
   D04B 3/02 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
   D04B3/02 Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-165592(P2014-165592)
(22)【出願日】2014年8月15日
(65)【公開番号】特開2016-41856(P2016-41856A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2017年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】504020832
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101605
【弁理士】
【氏名又は名称】盛田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】仲 凡子
(72)【発明者】
【氏名】野村 辰寿
(72)【発明者】
【氏名】橋川 記代子
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 意匠登録第1366058(JP,S)
【文献】 米国特許第01376151(US,A)
【文献】 意匠登録第1431686(JP,S)
【文献】 実開昭57−200587(JP,U)
【文献】 実公昭48−004216(JP,Y1)
【文献】 実開昭50−065654(JP,U)
【文献】 特開平11−107141(JP,A)
【文献】 実公第007199(大正14年)(JP,Y1T)
【文献】 実開昭56−039487(JP,U)
【文献】 特開平10−131003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にかぎ部が設けられ、円形断面を有する直線棒状の針体と、この針体の先端部を突出させるようにして基端側を覆うグリップ体とを備えるかぎ針であって、
上記グリップ体は、円形断面を有する基端部と、この基端部の先端側に設けられるとともに外周の一側に凹部が形成された握持部とを備え、
上記凹部は、上記かぎ部の掛止部を設けた側に形成されるとともに、長手方向中央部が窪む断面弧状に形成されており、
上記針体の軸先端が、上記基端部の軸に対して、上記凹部を設けた側と反対側に変位して設けられているとともに、
上記掛止部の半径方向外方面が、上記基端部の軸に平行で上記凹部の底面位置を通る延長線上から半径方向外方側で、かつ、上記凹部を設けた側の基端部表面の延長線上から半径方向内方側に位置するように構成されており、
上記凹部を設けた側と上記基端部の軸を挟んで反対側に、上記基端部の表面より半径方向外方に向けて膨出する第1の膨出部を設ける一方、
上記凹部の底面における上記基端部の軸と直交する方向の両側縁部に、上記基端部の表面より半径方向外方に膨出する第2の膨出部を設けた、かぎ針。
【請求項2】
上記針体の軸が、上記基端部の軸に対して、上記凹部を設けた側と反対側に0.4°〜0.6°傾斜して設けられている、請求項1に記載のかぎ針。
【請求項3】
上記凹部は、上記基端部の表面より1〜2mmの最大深さで形成されている、請求項1又は請求項2に記載のかぎ針。
【請求項4】
上記握持部は、上記凹部の底面と、上記第1の膨出部と上記第2の膨出部の間に設けられる一対の握持面から構成された断面三角形状に形成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のかぎ針。
【請求項5】
上記断面三角形状の各辺を含む各握持面は、内方に窪む曲面状に形成されている、請求項4に記載のかぎ針。
【請求項6】
上記第1の膨出部及び上記第2の膨出部は、上記基端部の表面から2〜3mmの最大高さで膨出するように形成されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のかぎ針。
【請求項7】
上記針体の上記凹部に対応する部分が偏平状に形成されている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のかぎ針。
【請求項8】
上記針体は、上記グリップ体の先端部から30〜40mmの長さで延出させられている、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のかぎ針。
【請求項9】
上記針体が金属から形成されているとともに、
上記グリップ体が、軟質弾性材料から形成されている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のかぎ針。
【請求項10】
請求項1から請求項9に記載された、かぎ針用グリップ体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、手芸用のかぎ針及びかぎ針用グリップ体に関する。詳しくは、使用時の滑りを防止できるとともに、手指と一体感のある編み作業を行うことができるかぎ針に係るものである。
【0002】
従来、手編み作業において、全体が棒状の金属で形成されるとともに、先端に編み糸を引っ掛けるかぎ部を設けたかぎ針が用いられることが多い。
【0003】
上記金属製のかぎ針は、手指に比べて全体が細く形成されているため滑り易く、手指で安定して握持することが困難であった。また、手指の握持力をかぎ針に効果的に作用させることがきないため、長時間にわたって編み作業を行うと、手指が疲れやすいという問題があった。
【0004】
上記問題を緩和するため、手指で握持する位置に、柔軟な樹脂材料から形成されたグリップ体を設け、握持し易く構成したものが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第130850号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に記載されている発明では、かぎ部を先端に設けた金属製の針体において、手指で握持する部分を含む基端側にグリップ体が設けられている。
【0007】
かぎ針を用いた手編み作業における疲労感を緩和するには、かぎ針に握持力を効果的に作用させて、できるだけ小さな力でかぎ針を握持して作業を行うことができるとともに、かぎ針を手指と一体感をもって操作できることが重要である。
【0008】
上記特許文献に記載されている発明では、手指で握持する部分に針体より太く形成されたグリップ体を設けているため握持し易く、また握持するのに必要な力をある程度軽減することができる。ところが、上記のようなグリップ体を設けたかぎ針では、グリップ体の断面が針体より大きくなるため、小さな力で握持し易い反面、編み作業において編み糸をすくいにくくなり、また、手指との一体感が低下するという問題があった。
【0009】
本願発明の発明者は、上記一体感が低下する原因が、グリップ体を設けることによって、針体先端部に設けられるかぎ部の手指に対する位置が、従来のかぎ針のかぎ部の位置から変位することが原因であることを見出した。
【0010】
すなわち、上記グリップ体を設けることにより、従来の棒状の針体を直接握持して作業を行う場合に比べて、グリップ体の厚み分針体の表面から離間した位置を手指で握持することになる。このため、上記かぎ部からの距離や角度も異なることになり、握持位置によっては、編み糸をかぎ部ですくいにくくなったり、手指とかぎ針との一体感が低下するといった問題が発生しやすかった。
【0011】
本願発明は、上記課題を解決し、握持し易いばかりでなく、手指と一体感をもって編み作業を行うことができるかぎ針を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明に係るかぎ針は、 先端にかぎ部が設けられ、円形断面を有する直線棒状の針体と、この針体の先端部を突出させるようにして基端側を覆うグリップ体とを備えるかぎ針であって、上記グリップ体は、円形断面を有する基端部と、この基端部の先端側に設けられるとともに外周の一側に凹部が形成された握持部とを備え、上記凹部は、上記かぎ部の掛止部を設けた側に形成されるとともに、長手方向中央部が窪む断面弧状に形成されており、上記針体の軸先端が、上記基端部の軸に対して、上記凹部を設けた側と反対側に変位して設けられているとともに、上記掛止部の半径方向外方面が、上記基端部の軸に平行で上記凹部の底面位置を通る延長線上から半径方向外方側で、かつ、上記凹部を設けた側の基端部表面の延長線上から半径方向内方側に位置するように構成されており、上記凹部を設けた側と上記基端部の軸を挟んで反対側に、上記基端部の表面より半径方向外方に向けて膨出する第1の膨出部を設ける一方、上記凹部の底面における上記基端部の軸と直交する方向の両側縁部に、上記基端部の表面より半径方向外方に膨出する第2の膨出部を設けて構成されている。
【0013】
本願発明の発明者は、試行錯誤の結果、上記かぎ部の位置を、親指で握持する位置を基準として所定の位置に設けることにより、上記不都合を回避することができることを見出した。すなわち、手編み作業を行う際に、かぎ針の掛止部の動きに最も関与しているのは親指であり、親指の位置を基準として上記かぎ部の位置を所定の位置に設定することにより、編み糸がすくい易くなるとともに、かぎ針と手指との一体感を得られることを見出した。
【0014】
従来のかぎ針のグリップ体には、親指の位置決めを行う部位が設けられることがなく、使用者の好みに応じた位置に親指を添えて握持できるように構成されていた。このため、グリップ体を設けることによって、親指が針体から離間した状態になるばかりでなく、親指の軸方向位置が定まらない。このため、親指に対するかぎ部の位置が定まらず、編み糸をすくいにくくなったり、かぎ針と手指との一体感が低下する等の問題が生じた。
【0015】
また、本願発明の発明者は、かぎ針と手指の一体感を得るために、親指で握持する部分(グリップ体の表面)から基端部の軸方向(グリップ体の軸方向)の延長線上に、上記かぎ部の掛止部を設定するのが好ましいことを見出した。
【0016】
本願発明では、基端部と、この基端部の先端側に設けられるとともに外周の一側に凹部が形成された握持部とを備えるグリップ体を設ける。上記基端部の断面形態は特に限定されることはないが、円形断面が変化しない棒状に形成するのが好ましい。なお、本願発明では、上記基端部を、上記握持部の寸法及び形態の基準として用いている。上記凹部は、上記かぎ部の掛止部を設けた側に形成されるとともに、長手方向中央部が窪む断面弧状に形成されている。このため、上記凹部に親指を添えて握持部を握持することにより、親指の軸方向位置及び周方向位置を定めることが可能となる。また、上記凹部は、グリップ体の周面を切り欠くように形成されているため、親指の握持位置が針体側に変位させられる。このため、親指の握持位置から上記基端部の軸方向の延長線上に、上記かぎ針の掛止部を設けることができる。
【0017】
さらに、上記針体の軸先端を、上記基端部の軸に対して、上記凹部を設けた側と反対側に変位して設けることにより、編み糸をすくい易くなることを見出した。すなわち、編み作業においては、先端に設けたかぎ部を、編み込んだ編成体の所定の隙間に挿入し、編み糸をすくう動作が繰り返される。上記編成体は、通常親指より下側に位置するため、上記かぎ部を上記凹部を設けた側と反対側、すなわち、親指で握持する側から反対側へ変位させることにより、上記動作において編み糸をすくい易くなるのである。特に本願発明では、上記凹部を設けることにより親指の握持位置を上記針体に近接させることができるため、上記針体の先端、すなわち、かぎ部の掛止部を親指の延長線上に設定し、かつ、上記基端部の軸に対して、上記凹部を設けた側と反対側に変位して設けることが可能となった。
【0018】
上記針体の先端の変位量は特に限定されることはないが、たとえば、針体のグリップ体からの突出量が35mmの場合、上記基端部の軸と直交する方向へ0.4〜1mm変位させるのが好ましい。また、上記基端部の軸に対して、上記凹部を設けた側と反対側に変位させる手法は特に限定されることはない。たとえば、直線状の針体を、上記基端部の軸に対して、上記凹部を設けた側と反対側に0.4°〜0.6°傾斜して設けることができる。なお、上記変位量は、グリップ体の太さや、針体の突出量に応じて変更できる。
【0019】
上記針体の上記傾斜角度が0.4°より小さい場合、針体の先端部の変位量が小さくなって、上記効果を期待できない。一方、0.6°より大きくなると、グリップ体を設けることができなくなる。なお、上記の角度範囲内で、親指の握持位置から上記軸方向の延長線上に、上記掛止部が位置するように設定するのが好ましい。また、上記針体のグリップ体から延出する部分のみを所定角度で曲折して傾斜させることもできる。
【0020】
上記針体を、上記凹部を設けた側と反対側に向けて傾斜させることにより、針体のかぎ部の位置が、従来のかぎ針に比べて上記握持位置から反対側へ変位させられる。この構成によって、かぎ部を編成体の編み目に挿入しやすくなるとともに、編み糸をすくい易くなる。このため、これまでにない感触でかぎ針を握持して編み作業を行うことができるとともに、長時間使用しても疲れにくいかぎ針を構成できる。
【0021】
また、上記凹部を設ける部位において、上記グリップ体の厚みが小さくなる。このため、親指を確実に位置決めできる深さの凹部を設けられなかったり、凹部の底部におけるグリップ体の厚みが小さくなってグリップ体の強度が低下したり、握持感が低下するという問題が生じる。本願発明では、上記針体を傾斜して設けることにより、凹部を設ける部位においてグリップ体の厚みを増加させることができる。このため、所要の深さの凹部を設けることができるという効果もある。
【0022】
さらに、上記凹部の深さを確保するために、上記針体における上記凹部に対応する部分を偏平状に形成するのが好ましい。この構成を採用することにより、より深さの大きな凹部を設けることが可能となる。また、凹部の底面の上記軸方向延長線上に、上記かぎ部を設定することも容易になる。
【0023】
上記凹部は、上記基端部の表面より1〜2mmの深さで形成するのが好ましい。これにより、親指を所定位置に位置決めすることができるとともに、握持部との間の軸方向の滑りを防止できる。また、小さな握持力でかぎ針を安定して握持することが可能となる。上記凹部の深さが1mm以下であると、親指を確実に掛止することできない。一方、2mm以上の深さの凹部を設けることは困難であり、また、他の部位におけるグリップ体の厚みが大きくなって使用感が低下する。
【0024】
さらに、上記凹部を設けた側と上記軸を挟んで反対側に、上記基端部の表面より半径方向外方に向けて膨出する第1の膨出部を設けるのが好ましい。また、上記凹部の底面における上記軸と直交する方向の両側縁部に、上記基端部の表面より半径方向外方に膨出する第2の膨出部を設けるのが好ましい。上記各膨出部は、上記凹部の底面に対応する部分において最大高さで膨出するとともに、上記軸に沿う断面を弧状に形成するのが好ましい。
【0025】
上記各膨出部を設けることにより、これら膨出部間に、人差指及び中指を位置させる握持面を形成することができる。これにより、親指によって作用する押圧力を、人差指と中指とで確実にバックアップすることができる。また、所要の握持力を低減させることができるとともに、操作性が向上する。
【0026】
上記各膨出部の形態は特に限定されることはないが、上記膨出部を、上記基端部の表面から、2〜3mmの最大高さで形成するのが好ましい。これにより、十分な握持力を作用ささせることができる握持面を設けることができる。
【0027】
上記基端部を、円形断面を有する棒状に形成するとともに、上記掛止部の半径方向外方面が、上記基端部の軸に平行で上記凹部の底面位置を通る延長線上から半径方向外方側で、かつ、上記凹部を設けた側の基端部表面の延長線上から半径方向内方側に位置するように構成するのが好ましい。上記構成によって、編み糸を掛止する掛止部が、親指の握持位置(表面位置)から基端部の軸方向のほぼ延長線上に設定される。このため、編み糸をすくい易くなるとともに、かぎ針と手指との一体感を得ることができる。
【0028】
通常、上記握持部は、親指と人差指と中指の間で握持される。握持部をより安定して握持するために、上記凹部を設けた部位の上記基端部の軸に直交する断面を、上記凹部の底面と、上記第1の膨出部と上記第2の膨出部間に形成される一対の握持面とで構成される三角形状とするのが好ましい。この構成を採用することにより、各指を安定して位置決めして握持することができる。特に、軸周りの手指の角度位置を確実に設定できるため、かぎ針の操作性が向上する。また、操作に必要な握持力を低減させることもできる。さらに、初心者でも、かぎ針の握持位置を容易に見出すことができるため、初心者用のかぎ針としても好適なものとなる。
【0029】
また、各指先と握持部とのフィット感を高めるため、上記凹部の底面、及び一対の上記握持面を、内方に窪む曲面状に形成するのが好ましい。上記曲面の窪み量は特に限定されることはない。たとえば、0.02mmから0.12mmの窪みを形成することにより効果を期待できる。
【0030】
上記針体の上記グリップ体から延出する部分の長さは特に限定されることはないが、上記グリップの先端部から30〜40mmの長さで延出させるのが好ましい。延出量が30mmより小さいと、掛止部が親指に近接しすぎて掛止部の移動範囲が小さくなり、操作性が低下する。一方、40mmより大きくなると、掛止部の移動範囲が大きくなりすぎて、編み糸をすくいにくくなる。上記延出長さを確保した上で、上記掛止部を上述した位置に設定するのが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
手指の滑りを防止できるとともに、手指を所定位置に位置決めして編み作業を行うことができ、手指と一体感をもって操作できるかぎ針を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本願発明に係るかぎ針の全体斜視図である。
図2図1に示すかぎ針の正面図である。
図3図1に示すかぎ針の平面図である。
図4図2におけるIV−IV線に沿う断面図である。
図5図2におけるV−V線に沿う断面図である。
図6図2におけるVI−VI線に沿う断面図である。
図7図2におけるVII−VII線に沿う断面図である。
図8図2におけるVIII−VIII線に沿う断面図である。
図9図2の要部拡大図である。
図10図3の要部拡大図である。
図11図2に示すかぎ針の左側面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本願発明に係る実施形態を図に基づいて説明する。
【0034】
図1に示すように、本実施形態に係るかぎ針1は、金属から形成された針体2と、上記針体2の基端側2aを覆うように一体成形された樹脂製のグリップ体3とを備えて構成されている。上記針体2の先端部には、編み糸をすくうようにして掛止できるかぎ部4が形成されている。
【0035】
上記針体2は、種々の金属で形成することができる。たとえば、ステンレス鋼等の鉄系材料やアルミ合金等で形成することができる。また、上記グリップ体3を形成する手法及び材料も特に限定されることはない。たとえば、上記針体2をインサートした射出成形によって形成することができる。また、上記グリップ体3を別途形成するとともに、上記針体2を上記グリップ体3に設けた軸孔に嵌入して一体化することもできる。上記グリップ体3は、種々の材料を用いて形成することができる。たとえば、シリコンエラストマー等の種々のエラストマー樹脂からなる弾性材料で形成するのが好ましい。
【0036】
上記グリップ体3は、針体2の基端側に設けられた基端部5と、先端側に設けられた握持部6とを備えて構成されている。上記基端部5は、図8に示すように、長手方向の軸9に直交する断面がほぼ円形に形成されており、軸9の方向に断面が変化しない形態に形成されている。以下に説明するように、上記グリップ体3の断面は、図4に示す断面から図8に示す断面に滑らかに変化させられている。
【0037】
図2に示すように、上記握持部6には、外周の一側を弧状に切り欠くようにして凹部7が形成されている。上記凹部7は、上記かぎ部4の掛止部8を設けた側に長手方向中央部が窪む断面弧状に形成されている。また、図9に示すように、上記凹部7の軸方向両端部は、ほぼ上記基端部5の半径方向高さに設定されているとともに、軸方向中央部が半径方向内方に窪むように形成されており、上記軸9に沿う断面の縁部が弧状に形成されている。本実施形態では、上記凹部7は、軸方向長さが、L2=約30mmに設定されているとともに、中央部がグリップ体の先端からL3=約18mmとなる軸方向位置に設定されている。また、上記凹部7の上記中央部における深さH1は、上記基端部5の表面5aからH1=約1.5mmに設定されている。
【0038】
上記凹部7は、親指によって握持される。上記凹部7を設けることにより、親指が軸方向に滑るのを阻止できるとともに、上記親指の軸方向位置を位置決めすることが可能となる。上述したように、本実施形態では、上記凹部7の軸方向中央が上記グリップ体3の先端からL3=約18mmの位置に設定されているため、親指もこの位置を握持するように位置決めされる。上記針体2の上記グリップ体先端からの突出長さはL1=約35mmであり、これにより、上記親指と上記針体2の先端部の間の距離が設定される。
【0039】
図2に示すように、上記針体2は、上記凹部7の深さを確保するために、上記凹部7に対応する部分が偏平状に形成されている。これにより、上記凹部7の深さを確保することが容易になる。
【0040】
図9及び図11に示すように、上記握持部6において、上記凹部7を設けた側と上記軸9を挟んで反対側に、上記基端部の表面より半径方向外方に向けて膨出する第1の膨出部10が形成されている。上記第1の膨出部10は、上記基端部5の表面より半径方向外方に膨出するとともに、上記軸9に沿う断面の縁部が弧状に形成されている。また、図5及び図11に示すように、上記凹部7の底面7aにおける上記軸9と直交する方向の両側縁部に、上記基端部5の表面より半径方向外方に膨出する第2の膨出部11,11が設けられている。上記第2の膨出部は、上記凹部7の底面を軸9と直交する方向に広げる形態で形成されている。上記膨出部10,11,11を設けた部位は、上記各膨出部をつなぐようにして形成された三角形状の断面形態となるように構成されている。
【0041】
上記膨出部10,11,11を設けることにより、握持部6の断面を大きく設定して、親指によって作用する押圧力を、人差指と中指とで確実にバックアップすることができる。このため、握持し易くなくとともに所要の握持力を低減させることができる。また、かぎ針の操作性も向上する。
【0042】
図9に示すように、本実施形態における上記第1の膨出部10は、上記基端部5の表面からH2=約2mmの最大高さで形成されている。また、上記第2の膨出部も、図11に示すように、上記基端部5の表面からH3=約2mmの最大高さで形成されている。そして、これら膨出部間の部分を平面状に形成して、人差指及び中指で握持する握持面10a,10bを設けている。この構成によって、人差指及び中指で握持する面積を確保し、十分な握持力を作用させることができるように構成している。
【0043】
さらに、図5に示すように、上記握持部6における断面三角形状を構成する上記凹部の底面7a、上記膨出部の握持面10a.10bを、中央部が内側に若干窪む曲面状に形成するのが好ましい。上記各握持面7a,10a,10bの中央部を窪ませることにより、これら部位の表面に当接する各指が滑りにくくなるとともに、各指を所定位置に確実に位置決めすることが可能となる。上記窪みの深さは特に限定されることはない。たとえば、上記凹部7の底面7aの窪み量を、0.13〜0.15mmに設定するとともに、上記膨出部10の握持面10a,10bの窪み量を0.02〜0.03mmに設定するのが好ましい。
【0044】
さらに、図9及び図11に示すように、本実施形態では、上記掛止部8の半径方向外方面8aが、上記凹部7の底面7aから半径方向外方側で、かつ、上記基端部5の表面より半径方向内方側に位置するように構成している。すなわち、上記掛止部8の位置を、親指側に変位させて設けている。この構成を採用することにより、編み糸を掛止する掛止部8が、親指の握持位置(底面7a)から軸9に平行な延長線上に設定される。このため、編み糸をすくい易くなるとともに、かぎ針と手指との一体感を得ることができ、さらに長時間の作業しても疲れにくいかぎ針1を構成できる。
【0045】
また、図9に示すように、上記針体2は、上記基端部5の軸9に対して上記凹部7を設けた側と反対側に、針体の軸2cをθ=0.5°傾斜して設けている。上記角度θは、上記グリップ体3の寸法や形状、上記掛止部8の半径方向位置等に応じて変更することができる。上記グリップ体3の厚みや凹部7の深さを確保するために、θ=0.4〜0.6°の範囲に設定するのが好ましい。
【0046】
上記針体2を、上記凹部7を設けた側と反対側に向けて傾斜させることにより、針体2のかぎ部4の位置が、従来のかぎ針に比べて上記握持位置から反対側へ変位させられる。この構成によって、かぎ部4を編成体の編み目に挿入しやすくなるとともに、編み糸をすくい易くなる。このため、これまでにない感触でかぎ針を握持して編み作業を行うことができとともに、長時間使用しても疲れにくいかぎ針を構成できる。
【0047】
また、上記凹部7を設ける部位において、上記グリップ体の厚みが小さくなる。このため、親指を確実に位置決めできる深さの凹部7を設けられなかったり、凹部7の底部におけるグリップ体3の厚みが小さくなってグリップ体の強度が低下したり、握持感が低下するという問題が生じる。本願発明では、上記針体2を傾斜して設けることにより、凹部7を設ける部位においてグリップ体の厚みを増加させることができる。このため、所要の深さの凹部を設けることができるという効果もある。
【0048】
上記各構成を採用することにより、手指の滑りを防止できるとともに、各指をグリップ部の所定位置に位置決めすることが可能となる。これにより、編み糸がすくい易くなるとともに、手指と一体感をもって操作できるかぎ針を提供することができる。
【0049】
本願発明の範囲は、上述の実施形態に限定されることはない。今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものでないと考えられるべきである。本願発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
握持しやすいばかりでなく、疲れにくく、また、手指と一体感をもって編み作業を行うことができるかぎ針を提供できる。
【符号の説明】
【0051】
1 かぎ針
2 針体
2a 針体の基端側
2c 針体の軸
3 グリップ体
4 かぎ部
5 基端部
6 握持部
7 凹部
8 掛止部
8a 掛止部の半径方向外方面
9 基端部(グリップ体)の軸
10 第1の膨出部
10a 握持面
10b 握持面
11 第2の膨出部
L1 針体の突出長さ
L2 凹部の軸方向長さ
L3 グリップ体の先端部から凹部の中央部までの軸方向長さ
H1 凹部の基端部表面からの深さ
H2 第1の膨出部の基端部表面からの高さ
H3 第2の膨出部の基端部表面からの高さ
図1
図2
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図5
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図10
図11