(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482797
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】乗用型草刈機
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20190304BHJP
B60K 5/02 20060101ALI20190304BHJP
A01D 34/64 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
B60K11/04 B
B60K5/02 A
A01D34/64 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-185400(P2014-185400)
(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公開番号】特開2016-55815(P2016-55815A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2016年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】梅本 英哉
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀樹
【審査官】
畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−012998(JP,A)
【文献】
特開2013−199184(JP,A)
【文献】
特開2008−247153(JP,A)
【文献】
実開昭60−050024(JP,U)
【文献】
実開平03−129735(JP,U)
【文献】
特開2013−226970(JP,A)
【文献】
特開2013−079040(JP,A)
【文献】
特開平10−287139(JP,A)
【文献】
実開昭57−108420(JP,U)
【文献】
実開平03−109922(JP,U)
【文献】
特開平01−226455(JP,A)
【文献】
特開2007−116919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
A01D 34/64
B60K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪と回転駆動される走行車輪としての後輪とによって対地支持された車体前後方向に延びた車体フレームと、
クランク軸が車体前後方向に沿うように前記車体フレームの後部に搭載されたエンジンと、
ファンユニットと、
冷却面が前記ファンユニットの送風面に向かい合うように前記ファンユニットに隣接して配置されたラジエータと、
車体前後方向に延びる入力軸によってクランク軸からの動力を受けて、走行用動力と作業用動力を出力するトランスミッションと、
を備え、
前記ファンユニットと前記ラジエータが、ファン回転軸が車体横断方向に沿うように前記エンジンの側方のうちどちらか一方に配置された乗用型草刈機。
【請求項2】
前記エンジンは車体横断方向で車体中央に配置されており、前記ラジエータは、車体横断方向で車体の一方側端部に配置されており、前記ファンユニットは前記エンジンと前記ラジエータとの間に配置されている請求項1に記載の乗用型草刈機。
【請求項3】
前記ファンユニットのファン回転軸は、方向転換プーリを用いて平面視で90度に方向変換しているベルト伝動機構を通じて、前記エンジンから回転動力を受ける請求項1または2に記載の乗用型草刈機。
【請求項4】
前記ベルト伝動機構はウオータポンプにも回転動力を与える請求項3に記載の乗用型草刈機。
【請求項5】
前記ファンユニットのファン回転軸は、電動モータによって回転動力をうける請求項1または2に記載の乗用型草刈機。
【請求項6】
前記電動モータは、前記ラジエータの冷却水温度に基づいて駆動制御される請求項5に記載の乗用型草刈機。
【請求項7】
前記エンジンの前方に運転座席が配置され、前記エンジンと前記運転座席との間にロプス装置が配置され、前記ロプス装置は、前記車体フレームに支持され上方に延びる左右一対の筒状の支柱を備え、前記支柱には、当該支柱の内部空間に通ずる前記エンジンの上端より高い位置に第1開口及び前記ラジエータの冷却面の高さに第2開口が設けられ、
車体側方から前記ラジエータの冷却面に車体横断方向に取り込まれる空気供給通路に加えて、前記第1開口を通じて入り込んだ新鮮空気を下方に送り込んで前記第2開口から前記ラジエータに向けて放出する補助空気供給通路が形成される請求項1から6のいずれか一項に記載の乗用型草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンとファンユニットとラジエータとを備えた
乗用型草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジン出力軸心が車体前後方向に沿うようにエンジンが車体後部に搭載され、エンジンの前側にラジエータが配置され、ラジエータの背面にエンジン動力で回転駆動される冷却ファンが取り付けられた乗用型草刈機が開示されている。エンジンと冷却ファンとラジエータとが一列に配置されているので、その車体前後方向の長さが大きくなる。エンジンの前方にトランスミッションが配置され、後車軸はエンジンの前方に位置する。後車軸からエンジンが後方に離れ過ぎると、車両の重量バランスが悪化する。また、エンジン重心を下げるためエンジンを低い位置に配置すると、エンジンあるいはエンジンを支持する部材と地面との距離も短くなる。これは、車両の乗り越え可能高さを低減させる。
【0003】
また、特許文献1による乗用型草刈機では、エンジンを後車軸に近づけるために、ラジエータと冷却ファンとが平面視でトランスミッションと部分的に重なり合うように、トランスミッションの上に配置されている。この場合は、冷却ファンを含むラジエータの重心が高くなり、走行安定性が悪くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−12998号公報(
図2、
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記実情に鑑み、エンジンを車体後部に配置しながらも、車両の乗り越え可能高さの確保や走行安定性の向上が図られた
乗用型草刈機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による
乗用型草刈機は、 前輪と
回転駆動される走行車輪としての後輪とによって対地支持された車体前後方向に延びた車体フレームと、クランク軸が車体前後方向に沿うように前記車体フレームの後部に搭載されたエンジンと
、ファンユニットと、冷却面が前記ファンユニットの送風面に向かい合うように前記ファンユニット
に隣接して配置されたラジエータと、車体前後方向
に延びる入力軸によってクランク軸からの動力を受けて、走行用動力と作業用動力を出力するトランスミッションと、
を備え、前記ファンユニットと前記ラジエータが、ファン回転軸が車体横断方向に沿うように前記エンジンの側方のうちどちらか一方に配置されている。つまり、本発明による
乗用型草刈機では、エンジンクランク軸が車体前後方向に沿うようにエンジンが配置され、ラジエータは、エンジンの側方
のうちどちらか一方で、ラジエータの冷却面が車体前後方向に沿うように横置きされている。言い換えると、ラジエータを通過する冷却風の方向とエンジンクランク軸が交差する位置関係となっている。
【0007】
この構成によれば、ラジエータ及びファンユニットがエンジンに対して車体前後方向ではなく、車体横断方向(左右方向)に並んで配置され、エンジンとラジエータとファンユニットとによって占有される空間の車体前後方向の長さが従来に比べて短くなる。これによりエンジン重心が車体中心側に移動することによる車体安定性、後輪と車体後端との長さが短くなることによる傾斜地性能の向上が得られる。
【0008】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記エンジンは車体横断方向で車体中央に配置されており、前記ラジエータは、車体横断方向で車体の一方側端部に配置されており、前記ファンユニットは前記エンジンと前記ラジエータとの間に配置されている。この構成では、大きな重量を有するエンジンは車体横断方向で車体中央に配置されるので、車体の安定性が確保される。また、大量の新鮮空気が必要なラジエータの冷却面が最も外側に位置することで、冷却効果が向上する。さらに、ラジエータのみでなく、エンジンを冷却する機能も有するファンユニットがエンジンに隣接することで、エンジン冷却も効果的に行われる。
【0009】
ファンユニットのファン回転軸に設けられたファンを回転させるための動力源として、2つの構成が提案される。その1つは、前記ファンユニットのファン回転軸が、方向転換プーリを用いて平面視で90度に方向変換しているベルト伝動機構を通じて、前記エンジンから回転動力を受けることである。方向転換プーリを新たに設け、ベルト長さを長くするだけで、ファンユニットのファン回転軸はエンジン動力を利用することにできる。その際、前記ベルト伝動機構がウオータポンプにも回転動力を与えるように構成されていると、部材の兼用が促進され、コスト的にも有利である。
【0010】
ファンユニットのファンを回転させるための動力源に関して提案される他の1つは、前記ファンユニットは、電動モータによって回転動力を受けることである。この構成では、ファンの回転数はエンジン回転数に依存しないので、任意の適正な回転数でファンを駆動することができる。その際、前記電動モータが、前記ラジエータの冷却水温度に基づいて駆動制御されるように構成すると、ファンの最適制御が可能となり、節電効果も大きくなる。さらに、電動モータの正逆回転制御は簡単であることから、ファンの正逆転を通じて、ラジエータの防塵ネットなどに付着した塵や草などの異物を効果的に除去することが容易に実現可能である。
【0011】
車体、特にエンジン周りをコンパクトにすればするほど、機器群の間隔が狭くなり、ラジエータやエンジンに供給される新鮮空気の量が減少する。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記エンジンの前方に運転座席が配置され、前記エンジンと前記運転座席との間にロプス装置が配置され、前記ロプス装置は、前記車体フレームに支持され上方に延びる左右一対の筒状の支柱を備え、前記支柱には、当該支柱の内部空間に通ずる前記エンジンの上端より高い位置に第1開口及び前記ラジエータの冷却面の高さに第2開口が設けられ、
車体側方から前記ラジエータの冷却面に車体横断方向に取り込まれる空気供給通路に加えて、前記第1開口を通じて入り込んだ新鮮空気を下方に送り込んで前記第2開口から前記ラジエータに向けて放出する
補助空気供給通路が形成される。これにより、エンジンルーム内には、車体側方からラジエータ冷却面を通じて入る冷却風以外に、ロプスの支柱内の通路を通じて冷却風が流れ込むことになり、冷却風不足を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の基本的な構成を説明する模式図である。
【
図2】本発明の実施形態の1つであるゼロターンモアーの側面図である。
【
図5】車体フレームに配置されたエンジンとラジエータとトランスミッションとを示す右側面図である。
【
図6】車体フレームに配置されたエンジンとラジエータとファンユニットとトランスミッションとを示す平面図である。
【
図7】ロプス装置に形成された空気供給通路を示す後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による
乗用型草刈機の具体的な実施形態を説明する前に、
図1を用いて本発明を特徴付けている基本的な構成を説明する。
【0014】
車体フレーム2は、前輪11と後輪12とによって対地支持されている。車体フレーム2の後部には、エンジン3が搭載されている。エンジン3は、
図1では太線で示されているクランク軸3aが車体前後方向に沿うように配置されている。またエンジン3は車体横断方向(車体前後方向に直交する車体横方向)で車体フレーム2のほぼ中央に配置されている。
【0015】
エンジン3の車体横断方向で一方側(
図1では右側)に、ラジエータ8が車体フレーム2に立設されている。ラジエータ8は、両側の冷却面8a、8bが車体横断方向を向くように横配置されている。ラジエータ8のエンジン3の方を向いた内側の冷却面8aにファンユニット80が取り付けられている。ファンユニット80の送風用のファン81は、車体横断方向に沿うようにエンジン3に向かって延びているファン回転軸82に固定されている。つまり、ファンユニット80の送風面がラジエータ8の内側の冷却面8aに向き合っており、ファン81による冷却風は車体横断方向に流れ、ラジエータ8の両側の冷却面8a、8bを垂直に通過する。ここでは、ファンユニット80の送風面とは、ファン81のファン回転軌跡面でファン回転軸82に直交する面である。
【0016】
なお、
図1の例では、ファンユニット80は、電動モータ89を駆動源としており、この電動モータ89による回転動力でファン81が回転する。電動モータ89に駆動制御信号を与えるモータ制御部890には、ラジエータ8の冷却液温度を検出する液温検出部891からの検出信号が入力されており、ファン81はラジエータ8の冷却液温度に基づいて駆動制御される。例えば、冷却液温度が第1設定温度より低い時には、ファン81を停止させ、第1設定温度以上の時には、ファン81を標準速度で駆動する。また、電動モータ89は正逆転の切替が簡単であるので、冷却液温度が第1設定温度より高い第2設定温度以下で第1設定温度以上の時には、正逆運転を繰り返して、冷却液温を冷却しながら、ラジエータ8の冷却面8a、8bや防塵網に付着した塵や草を除去する。さらに、冷却液温度が第2設定温度を超える高温になれば、ファン81を標準速度より速い高速で駆動し、冷却液温を急速に低下させる。
【0017】
なお、ファンユニット80は、エンジン3を駆動源とすることができる。例えば、エンジン3にはウオータポンプやダイナモなどを回転させるためのベルト駆動機構が備えられている。このベルト駆動機構のベルトを延長し、90度方向転換プーリを介して、ファン81のファン回転軸82に設けた従動プーリに掛け回す。これにより、エンジン3が回転している限り、ファン81は回転することになる。
【0018】
エンジン3からの回転動力を駆動輪(
図1では後輪12)に伝達するトランスミッション4は、車体前後方向でエンジン3の前方に配置されている。クランク軸3aに連結したエンジン3の出力軸、つまりトランスミッション4の入力軸30は車体前後方向に延びており、トランスミッション4は、従来のものがそのまま(配置や構造を変えることなく)、利用できる。作業車両には、一般的に、装備される作業装置に動力を供給するためのPTO軸が備えられている。このトランスミッション4には、エンジン動力を後輪12に伝達する走行系動力伝達部以外に、エンジン動力を分岐させてPTO軸に伝達するPTO系動力伝達部が構築されている。
図1の例では、PTO軸は図示されていないが、このPTO軸から動力を受ける、作業装置としてのモアーユニット13が、前輪11と後輪12との間で、車体フレーム2から吊り下げられている。
【0019】
次に、図面を用いて、本発明による
乗用型草刈機の具体的な実施形態の1つを説明する。
図2は、
乗用型草刈機の一例である、ゼロターンモアーとも称される草刈機の側面図であり、
図3は平面図である。
図2と
図3とに示されているように、草刈機は、左右一対の前輪11と回転駆動される走行車輪としての左右一対の後輪12とによって対地支持された車体10を備えている。車体10は、
図4に示すように、ベース部材として車体フレーム2を有しており、前輪11と後輪12との間で、モアーユニット13がリンク機構14を介して車体フレーム2から吊り下げられている。車体10の機体前後方向中央領域に運転部5が配置されている。このため、車体10の機体前後方向中央領域には座席支持体52が形成されており、座席支持体52の上面には運転座席53が設けられている。さらに座席支持体52の左右側面にはフェンダ54が形成されている。運転座席53の前方にステップ51が敷設されている。運転座席53の下方及びフェンダ54の下方には燃料タンク15が配置されている。燃料タンク15は、左側のフェンダ54の下側に位置する左タンク部と、運転座席53の下に位置する中央部と、
図3では取り除かれている右側のフェンダの下側に位置する右タンク部とからなり、相互に連通している。
【0020】
運転部5の後部にはロプス(ROPS)装置6が設けられている。ロプス装置6の後方で、車体10の後端領域に位置する、左右一対の後フレーム22の中央にはエンジン3が配置されている。後で詳しく説明するが、エンジン3の右側にラジエータ8が、その両側の冷却面8a、8bがエンジン3の右側面に平行となる姿勢で立設されている。ラジエータ8の内側の冷却面8aにはファンユニット80が取り付けられている。
【0021】
エンジン3のすぐ前にはトランスミッション4が配置されている。トランスミッション4には、左後車軸伝動部4aと右後車軸伝動部4bとが含まれている。左後車軸伝動部4aと右後車軸伝動部4bにはそれぞれ、独立して操作可能な静油圧式変速機構(HST)7が無段変速機構の一例として内装されている。HST7は、エンジン動力を正転(前進)状態及び逆転(後進)状態で、低速から高速まで無段階に変更して、それぞれの後輪12に伝達することができる。これにより、左右の後輪12の両方が同じまたはほぼ同じ速度で前進方向に駆動することで直進前進が作り出され、左右の後輪12が同じまたはほぼ同じ速度で後進方向に駆動することで直進後進が作り出される。さらに、左右の後輪12の速度を互いに異ならせることで、車体10を任意の方向に旋回移動させることができ、例えば、左右の後輪12のいずれか一方を零速に近い低速にさせ、他方の後輪12を高速で前進側あるいは後進側に操作することで小回り旋回させることができる。さらに、左右の後輪12を互いに逆方向に駆動することで、車体10を左右の後輪12のほぼ中央部を旋回中心としてスピンターンさせることもできる。左右一対の前輪11は、キャスタ輪に構成されて縦軸芯周りで向きを自由に変更することができるから、左右の後輪12駆動による走行方向に応じて向きが修正されることになる。
【0022】
左右の静油圧式変速機構(HST)7に対する変速操作は、運転座席53の両側に配置された左右一対の変速レバー51によって行われる。変速レバー51を前後中立位置に保持すると無段変速装置が中立停止状態となり、変速レバー51を中立位置から前方に操作することで前進変速が実現し、後方に操作することで後進変速が実現する。
【0023】
次に、
図4、
図5、
図6、
図7を用いて、車体フレーム2に設けられる、エンジン3とラジエータ8とファンユニット80とトランスミッション4のレイアウトを説明する。なお、これらの図面では、説明に関係しない部材は省略されている。
【0024】
この乗用草刈機の車体フレーム2は、
図4に示すように、機体前後方向に延びた左右一対の前フレーム21と左右一対の後フレーム22とを有する。前フレーム21と左右一対の後フレーム22は一体的に構成されてもよいし、連結部材を介して連結されてもよい。左右一対の前フレーム21同士は、少なくとも1つ以上のクロスビームからなる前クロスビームユニット26によって連結されている。同様に、左右一対の後フレーム22同士も、少なくとも1つ以上のクロスビームからなる後クロスビームユニット27によって連結されている。前フレーム21の後部は、後フレーム22の前部より高い地上高さで延びており、垂直連結支柱23を介して互いに連結されている。垂直連結支柱23の上端にはロプス取付ブラケット24が固定されており、ロプス取付ブラケット24にロプス装置6が固定される。
【0025】
ロプス装置6は、ロプス取付ブラケット24に固定される左右一対の下支柱61aと、揺動連結部61cによって下支柱61aの上端と揺動可能に連結される左右一対の上支柱61bと、上支柱61bの上端を接続する横部材62とからなる。上支柱61bと横部材62とは一体的な形成され、門型フレームを作り出している。納屋に収納する際や、低い木の枝をくぐる際に、草刈機の全高を下げるために、上支柱61bは、水平以下のレベルまで揺動することができる。
【0026】
左右一対の後フレーム22は後クロスビームユニット27によって接続されており、後フレーム22の後部と後クロスビームユニット27とによってエンジンマウント台28を形成している。
図6から明らかなように、エンジンマウント台28に、エンジン3が、そのクランク軸3aが車体10の前後方向中心線にほぼ一致するように搭載されている。クランク軸3aの後方突出部にはフライホイール31が固定され、クランク軸3aの前方突出部はエンジン出力軸として、トランスミッション4の入力軸30とジョイント部材を介して連結されている。さらに、クランク軸3aの前方突出部から動力を取り出すベルト伝動を用いて回転するエンジン冷却ファン32がエンジン3の前壁の上部に配置されている。
【0027】
ラジエータ8は、細長い長方形底面を有しており、その長辺が車体前後方向に沿うように、後フレーム22の上に配置されている。つまり、ラジエータ8の両側の冷却面8a、8bが車体前後方向に沿うように、言い換えると、ラジエータ8の両側の冷却面8a、8bが車体横断方向に対して直交するように、ラジエータ8は立設されている。ラジエータ8の両側の冷却面8a、8bに冷却風が通過するように、ファンユニット80がラジエータ8の内側冷却面8aを覆うようにファンユニット80がラジエータ8のラジエータフレーム8Aに取り付けられている。ここでは、ファンユニット80のハウジングが、ラジエータ8の内側冷却面8aに対するシュラウドとして形成されている。ラジエータ8の外側冷却面8bは、ラジエータフレーム8Aに取り付けられた防塵ネット8Bによって覆われている。
【0028】
エンジン出力軸であるトランスミッション4の入力軸30は、前フレーム21の下端に近い高さレベルを延びている。トランスミッション4は、
図6から明らかなように、左右一対の前フレーム21に渡って配置されている。トランスミッション4は、中央に位置する入力伝動部4cと、入力伝動部4cの左側に設けられている左後車軸伝動部4aと、入力伝動部4cの右側に設けられている右後車軸伝動部4bとからなる。
【0029】
入力伝動部4cの前壁からPTO軸42が突き出しており、モアーユニット13に動力を伝達する。左後車軸伝動部4aと右後車軸伝動部4bとは実質的に同じ構成であるので、ここでは左後車軸伝動部4aだけを説明する。左後車軸伝動部4aには、入力伝動部4cからの動力を受けるHST7が備えられている。HST7の出力は、後車軸120に伝達され、後輪12を可変速で駆動する。後車軸120の地上高さはエンジンマウント台25とほぼ同じである。
図6から明らかなように、左後車軸伝動部4aと右後車軸伝動部4bとは、入力伝動部4cより後方に延びており、平面視でエンジン3の前壁に設けられたエンジン冷却ファン32とトランスミッション4との間に空間が作り出されている。この空間が、地表からエンジン冷却ファン32に新鮮空気をスムーズに流す流通経路となる。
【0030】
エンジン3の上方には、マフラ33とエアクリーナ34とが配置されている。マフラ33とエアクリーナ34とは、いずれも円筒形状であり、その筒軸心が車体前後方向に沿う姿勢で、取り付けられている。エアクリーナ34がラジエータ8に近い側であり、マフラ33がラジエータ8から遠い側に位置している。
【0031】
この実施形態では、
図7に示すように、ラジエータ8が配置されている側のロプス装置6の下支柱61aは筒体で構成されており、その内部空間がラジエータ8に新鮮空気を供給する
補助空気供給通路65として用いられる。このため、揺動連結部61cには下支柱61aの上端口に連通する第1開口63が形成され、ロプス取付ブラケット24には下支柱61aの下端口に連通する第2開口64が形成されている。第1開口63の高さレベルは、運転座席53のシートバックの上端付近であり、第2開口64の高さレベルは、エンジン3の上端より高く、ラジエータ8の外側冷却面8bの上端領域である。これにより、第1開口63から流入した新鮮空気が下支柱61a内の
補助空気供給通路65を通って、第2開口64から流出し、ラジエータ8の吸入面である外側冷却面8bに達する。
【0032】
次に、
図9を用いて、エンジン動力の伝達経路を説明する。
この実施形態では、ファンユニット80のファン81はエンジン動力を駆動源としている。このため、クランク軸3aからウオータポンプ35のポンプ軸35aに動力を伝達するベルト伝動機構88が90度方向転換プーリを用いて後方に延長され、ファン回転軸82を回転駆動する。
【0033】
クランク軸3aはトランスミッション4の車体前後方向に延びた入力軸30に連結されている。入力軸30にはPTOクラッチ44が設けられており、PTOクラッチ44の出力軸として機能する第1軸41が入力軸30を外嵌している。PTO出力軸として機能する第2軸42が第1軸41に平行で第1軸41の下方に設けられており、ギヤセットである作業動力伝達部45によって第1軸41から第2軸42への動力伝達が行われる。また、走行出力軸として機能する第3軸43も第1軸41に平行で第1軸41の下方に設けられており、ギヤセットである走行動力伝達部47によって入力軸30から第3軸43への動力伝達が行われる。このトランスミッション4において、入力軸30、第1軸41、第2軸42、第3軸43が、平面視でほぼ車体前後中心線上を延びている。
【0034】
第3軸43の後端領域には、車体横断方向に延びた車軸伝動軸としての分岐軸480が設けられており、ベベルギヤセットとして構成された分岐部48によって第3軸43から分岐軸480への動力伝達が行われる。分岐軸480の両端はHST7と連結している。HST7は、この実施形態では、可変容量形ポンプ71と固定容量形モータ72とによって構成され、任意に変速された回転動力をモータ軸73から出力する。モータ軸73から出力された動力は後車軸120に伝達され、後輪12を駆動する。
【0035】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、ラジエータ8及びファンユニット80は、前に向かってエンジン3の左側に配置されていたが、エンジン3の右側に配置されてもよい。
(2)上述した実施形態では、モアーユニット13が前輪11と後輪12との間に配置されるミッドマウント式が採用されていたが、モアーユニット13が前輪11の前に配置されるフロントマウント式の採用も可能である。
(3)上述した実施形態では、前輪11がキャスタ輪で構成されたが、ステアリングホイールによって操作される操舵輪で構成してもよい。その際には、差動機構によって分岐される同一の変速装置からの出力を左右の後輪12が差動機構を介して受けることになる
。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、エンジンとラジエータと作業装置とを備えた作業車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 :車体
11 :前輪
12 :後輪
2 :車体フレーム
21 :前フレーム
22 :後フレーム
23 :垂直連結支柱
24 :ロプス取付ブラケット
3 :エンジン
3a :クランク軸
30 :入力軸
32 :エンジン冷却ファン
34 :エアクリーナ
35 :ウオータポンプ
35a :ポンプ軸
4 :トランスミッション
5 :運転部
51 :変速レバー
52 :座席支持体
53 :運転座席
54 :フェンダ
6 :ロプス装置
61a :下支柱
61b :上支柱
61c :揺動連結部
62 :横部材
63 :第1開口
64 :第2開口
65 :
補助空気供給通路
7 :HST(無段変速装置)
8 :ラジエータ
8A :ラジエータフレーム
8B :防塵ネット
8a :冷却面
8a :内側冷却面
8b :外側冷却面
80 :ファンユニット
81 :ファン
82 :ファン回転軸
88 :ベルト伝動機構
89 :電動モータ
890 :モータ制御部
891 :液温検出部