(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482798
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】移送気密保持容器装置
(51)【国際特許分類】
B65D 51/14 20060101AFI20190304BHJP
E05C 3/04 20060101ALI20190304BHJP
G21F 5/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
B65D51/14
E05C3/04 Z
G21F5/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-187773(P2014-187773)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-60501(P2016-60501A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年4月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000252207
【氏名又は名称】六菱ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】原 正 樹
(72)【発明者】
【氏名】新 拓 郎
【審査官】
西山 智宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−193323(JP,A)
【文献】
特開2000−335608(JP,A)
【文献】
特開2006−028944(JP,A)
【文献】
特開2005−335482(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/053844(WO,A1)
【文献】
特開2007−145063(JP,A)
【文献】
米国特許第04580694(US,A)
【文献】
実開昭49−126617(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D39/00−55/16
G21F5/00
E05C3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉作業空間の壁面に取り付けられた設備フランジと、前記設備フランジの開口部を開閉する設備ドアと、保護物が収容されるコンテナと、前記設備フランジに取り付け取り外し可能な前記コンテナ用のコンテナフランジと、前記コンテナフランジの開口部を開閉し前記設備ドアとともに、ヒンジを介して回動する二重ドアを形成するコンテナドアと、前記二重ドアによる前記コンテナの開閉を制御する二重ドア開閉制御手段と
を備え、
前記二重ドア開閉制御手段は、前記設備フランジと前記二重ドアとを互いに拘束可能な拘束部と、前記拘束部の拘束解除操作可能な前記二重ドア側に設けられた操作部とを有し、
前記操作部は、操作板と、旋回軸と、前記旋回軸に設けられ、前記旋回軸の回りに前記操作板を旋回させるハンドルとを有し、
前記操作部の前記旋回軸は、前記二重ドアのうち前記ヒンジに対向する位置に設けられ、
前記拘束部は、前記設備フランジ側に設けられたローラピンと、旋回方向に対して傾斜して前記操作板側に形成され前記ローラピンが案内される案内溝とを有し、
前記コンテナドアが前記コンテナフランジに押し付けられる度合を前記操作板の旋回に伴い変え、
前記案内溝は前記ローラピンが停止可能な窪部を途中に有し、前記ローラピンが前記窪部で停止する状態で前記コンテナドアと前記コンテナフランジの間に前記コンテナ内と前記密閉作業空間内とを通気可能な隙間が形成される
ことを特徴とする移送気密保持容器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移送気密保持容器装置に係り、特に、二重ドアを有しコンテナに放射性物質や薬剤等の保護物を保護して収容あるいは取り出しを可能にする移送気密保持容器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製薬、医療あるいは原子力利用等の工業分野において、医薬製造原料や放射性物質等の対象物を加工あるいは処理する場合に、対象物を外気に晒すことなく所定の環境下で処理することが必要とされる。このような処理を行うための装置として移送気密保持容器装置が知られている。移送気密保持容器装置に関する技術としては、例えば以下の特許文献1〜3が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3445813号公報(特開平6−193323号公報)
【特許文献2】特許第3819799号公報(特開2003−294150号公報)
【特許文献3】特開昭57−160098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の移送気密保持容器装置においては、例えば特許文献1に開示されており、また
図7及び
図8に示すように解決すべき問題を有している。
【0005】
図7において、符合101は二重ドアを示し、二重ドア101は設備フランジ103に取り付けられたヒンジ104の回りを旋回しコンテナ102を開閉する。二重ドア101によるコンテナ102の開閉を制御する二重ドア開閉制御手段105は、設備フランジ103と二重ドア101とを互いに拘束可能にする拘束部106と、拘束部106を拘束解除可能に操作する操作部107とを有する。操作部107は、操作板108と、旋回軸109と、旋回軸109の回りに操作板108を旋回させるハンドル110とを有する。拘束部106は、操作板108の側部から突出した突出ピンと、二重ドア101側に設けられた拘束部106の突出ピンが案内される図示しない案内溝とを有する。そして、従来の移送気密保持容器装置においては、
図7に示すように操作部107は設備フランジ103側に設けられている。
【0006】
操作部107は設備フランジ103側に設けられているために、
図7(a)に示すように二重ドア101がコンテナ102を閉じた状態と
図7(b)に示すように二重ドア101がコンテナ102を開いた状態との間を移行して二重ドア101を開閉する場合に、片手でハンドル110を操作し二重ドア101が危険的に急に開かないように他の手で二重ドア101の取手112を支持する必要があり、片手のみで二重ドア101を開閉動作を完了させることができないという問題があった。
【0007】
また、
図8に示すように、設備フランジ103が取り付けられる密閉作業空間120の壁面が天井121である場合には、特にその問題が大きかった。ここで
図8において、符合113は、設備フランジ103に取り付け取り外し可能なコンテナ102用のコンテナフランジを示し、符合122は密閉作業空間120内で作業するための操作グローブを示す。二重ドア101はコンテナドア114と設備ドア115とから構成されている。コンテナ102内は密閉作業空間120内に対して正圧の場合がある。片手でハンドル110を操作して操作板108を旋回させ拘束部106を解除した場合に、他方の手で取手112を支持した場合であっても、二重ドア101は、コンテナ102内の正圧の影響を受けるとともに自重による重力によって、矢印123で表示するように急に下方へ垂れ下がる傾向にあり危険性を有するという問題がある。
【0008】
そこで、本願発明は上記従来技術の有する問題を解消し、二重ドアによるコンテナの開閉を安全にかつ片手操作で行うことが可能な移送気密保持容器装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本願発明に係る移送気密保持容器装置は、密閉作業空間の壁面に取り付けられた設備フランジと、前記設備フランジの開口部を開閉する設備ドアと、保護物が収容されるコンテナと、前記設備フランジに取り付け取り外し可能な前記コンテナ用のコンテナフランジと、前記コンテナフランジの開口部を開閉し前記設備ドアとともに二重ドアを形成するコンテナドアと、前記二重ドアによる前記コンテナの開閉を制御する二重ドア開閉制御手段とを備え、前記二重ドア開閉制御手段は、前記設備フランジと前記二重ドアとを互いに拘束可能な拘束部と、前記拘束部の拘束解除操作可能な前記二重ドア側に設けられた操作部とを有することを特徴とする。
【0010】
また、前記操作部は、操作板と、旋回軸と、前記旋回軸の回りに前記操作板を旋回させる前記二重ドアに取り付けられたハンドルとを有し、前記拘束部は、前記設備フランジ側に設けられたローラピンと、旋回方向に対して傾斜して前記操作板側に形成され前記ローラピンが案内される案内溝とを有し、前記コンテナドアが前記コンテナフランジに押し付けられる度合を前記操作板の旋回に伴い変えることを特徴とする。
【0011】
また、前記案内溝は前記ローラピンが停止可能な窪部を途中に有し、前記ローラピンが前記窪部で停止する状態で前記コンテナドアと前記コンテナフランジの間に前記コンテナ内と前記密閉作業空間内とを通気可能な隙間が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願発明の構成によれば、拘束部の拘束解除操作可能な操作部は二重ドア側に設けられているので、操作部によって設備フランジと二重ドアと間の拘束関係を解除するとともその一連の動作として二重ドアを開けることができ、二重ドアによるコンテナの開閉を安全にかつ片手操作で行うことが可能になる。
【0013】
また、案内溝はローラピンが停止可能な窪部を途中に有するので、コンテナ内と密閉作業空間内とを徐徐に通気可能にすることができ、二重ドアを安全に開けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本願発明の一実施の形態に係る移送気密保持容器装置を示す断面図。
【
図2】移送気密保持容器装置におけるコンテナ等の動きを説明する図であり、(a)コンテナをコンテナドアで一体的に密閉したものが設備フランジに取り付けられる前を示し、(b)は設備フランジに取り付けられた状態を示し、(c)は二重ドアが開けられた状態を示す。
【
図3】二重ドアによるコンテナの開閉を制御する二重ドア開閉制御手段を示す上面図(a)とその一部を示す側面図(b)。
【
図4】片手でハンドルを操作して設備フランジと拘束関係にあった二重ドアを拘束解除するとともに開けたことを示す図。
【
図5】(a)は案内溝におけるローラピンの閉位置、一時停止位置、開位置を示す断面図であり、(b)は閉位置を示す側断面図。
【
図6】設備フランジと二重ドアとの間の拘束関係の変化を示し、(a)は閉位置、(b)は一時停止位置、(c)開位置にそれぞれ対応する。
【
図7】従来の移送気密保持容器装置を示し、(a)は二重ドアを閉められた状態を示し、(b)は二重ドアが開けられた状態を示す。
【
図8】従来の移送気密保持容器装置において、天井をなす壁面に設備フランジが取り付けられた場合に、二重ドアの開閉に危険を伴うことを示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を参照して、本願発明に係る移送気密保持容器装置の実施の形態について説明する。
図1において、移送気密保持容器装置1は、密閉作業空間2の壁面3に取り付けられた設備フランジ4と、設備フランジ4の開口部を開閉する設備ドア5と、保護物が収容されるコンテナ6と、設備フランジ4に取り付け取り外し可能なコンテナ6用のコンテナフランジ7と、コンテナフランジ7の開口部を開閉し設備ドア5とともに二重ドア9を形成するコンテナドア8と、二重ドア9によるコンテナ6の開閉を制御する二重ドア開閉制御手段10とを備えている。
【0016】
設備ドア5は設備フランジ4に対し取り付け取り外し可能に気密的に開閉可能であり、コンテナドア8はコンテナフランジ7に対し取り付け取り外し可能に気密的に開閉可能である。設備ドア5とコンテナドア8とから構成される二重ドア9は一体として、設備フランジ4及びコンテナフランジ7に対し気密的に取り付け取り外し可能である。また、コンテナ6はコンテナドア8によって気密的に閉じた状態でコンテナ6とコンテナドア8とが一体となって設備フランジ4に対し取り付け取り外し可能である。
【0017】
図1に示す移送気密保持容器装置1は、コンテナ6とコンテナドア8とが一体となって設備フランジ4に対し取り付けらている状態にあり、通常、コンテナ6内には正圧にして医薬製造原料や放射性物質等の保護物が収容される。移送気密保持容器装置1に設けられた操作グローブ12を介して作業者は二重ドア開閉制御手段10によって二重ドア9を開閉する。例えば、保護物がすでに収容されているコンテナ6が移送されてきた場合には、二重ドア9を開けてコンテナ6内の保護物を取り出し、密閉作業空間2内で所定の処理を行い新たな保護物をコンテナ6内に収容し、二重ドア9を閉める。そして、コンテナ6とコンテナドア8とが密閉的になった状態で一体として設備フランジ4から取り外し、次の処理を行うために密閉作業空間2の他の設備フランジ4に密閉的に取り付け、同様にしてそこで、二重ドア9が開けられて次の処理が行われる。
【0018】
次に、
図2を参照して移送気密保持容器装置1における簡略化して示したコンテナ6等の動きについて説明する。
図2(a)は、密閉作業空間2内でコンテナ6内に保護物を収容してコンテナドア8で一体的に密閉したものを、新たな処理を行うために、密閉作業空間2にある設備フランジ4に取り付けることを示す。
図2(b)は、コンテナ6及びコンテナドア8をセットして回転して嵌め合わせたことを示す。コンテナドア8と設備ドア5とが一体化し一体的に開閉可能な二重ドア9が構成される。
図2(c)は、収容されていた保護物に対し密閉作業空間2内で新たな処理を行うために二重ドア9が開けられた状態を示す。
【0019】
次に、二重ドア開閉制御手段10について説明する。
二重ドア開閉制御手段10は、
図3に示すように、設備フランジ4と二重ドア9とを互いに拘束可能にする拘束部15と、拘束部15を拘束あるいは解除の操作可能な操作部16とを有する。操作部16は二重ドア9側に設けられている。
【0020】
操作部16は、操作板17と、旋回軸18と、旋回軸18の回りに操作板17を旋回させるハンドル19とを有する。ハンドル19は二重ドア9に取り付けられている。
【0021】
拘束部15は、設備フランジ4側に設けられたローラピン20と、操作板17の旋回方向に対して傾斜して操作板17側に形成されローラピン20が案内される案内溝21とを有する。拘束部15では、設備フランジ4側に設けられたローラピン20が二重ドア9側に設けられた案内溝21に拘束されながら案内されることによって、設備フランジ4と二重ドア9との間の拘束関係が成立する。
【0022】
設備フランジ4とコンテナフランジ7とには、両者を互いに密閉するためのガスケット23a、23bが配設されている。
【0023】
案内溝21が操作板17の旋回方向に対して傾斜して形成されているので、操作板17の旋回に伴い、ローラピン20が案内溝21の底壁面を押し付ける力が変化しコンテナドア8がコンテナフランジ7に押し付けられる度合が変わる。この結果、操作板17の旋回に伴い、ガスケット23a、23bの密閉性を徐徐に解除することができる。
【0024】
また、案内溝21はローラピン20が停止可能な窪み形状を有する窪部21aを案内溝21の下側経路の途中に有する。ハンドル19を操作し開状態から閉状態へ向かって操作板17を旋回させると、開状態に達する前の途中においてローラピン20は窪部21aで安定的に停止可能であり、この状態において、コンテナドア8とコンテナフランジ7の間にコンテナ6内と密閉作業空間2内とを通気可能な隙間25が形成される(
図6(b))。
【0025】
図5(a)において、符合Aは、二重ドア9が設備フランジ4を閉じた状態にあるときのローラピン20の位置である閉位置を示し、符合Bは、コンテナドア8とコンテナフランジ7の間に隙間25が形成された状態にあるときのローラピン20の位置である一時停止位置を示す。符合Cは、二重ドア9が設備フランジ4を開いた状態にあるときのローラピン20の位置である開位置を示し、開位置Cにおいてはハンドル19が下方へ下げられローラピン20は案内溝21から抜け、二重ドア9を開けることができる。
【0026】
図6は、設備フランジ4と二重ドア9との間の拘束関係の変化を示す。
図6(a)は
図5(a)におけるローラピン20の閉位置Aに対応し、
図6(b)はローラピン20の一時停止位置Bに対応し、
図6(c)はローラピン20の開位置Cに対応する。
図6(a)に示すように、ローラピン20の閉位置Aでは、ガスケット23a、23bによって設備フランジ4とコンテナフランジ7とは密閉関係にある。
図6(b)に示すように、ローラピン20の一時停止位置Bでは、ガスケット23aとガスケット23bの間には隙間25が形成されている。
図6(c)に示すように、ローラピン20の閉位置Cでは、
図6(b)に示すローラピン20の一時停止位置Bをある時間経ることにより正圧状態にあったコンテナ6内の圧力は密閉作業空間2内の圧力と同じになり、ハンドル19の操作によって二重ドア9が安全に開けられている。
【0027】
図4は、片手でハンドル19を操作して設備フランジ4と二重ドア9との間の拘束関係を解除した後にさらに同じ片手で二重ドア9をヒンジ22の回りに開けたことを示す。
【0028】
本実施の形態の構成によれば、操作部16は二重ドア9側に設けられているので、ハンドル19を片手で保持し操作板17の旋回させ、ローラピン20の閉位置A、一時停止位置B、開位置Cへ移行させることができるとともに、一連の動作として同じ片手でハンドル19を保持したまま二重ドア9を設備フランジ4に対し開けることができる。また同様に、片手でハンドル19を保持したまま二重ドア9を設備フランジ4に対し閉め、ローラピン20の開位置Cから閉位置Aへ移行させて二重ドア9と設備フランジ4とを拘束関係におくことができる。この結果、二重ドア9を開閉することの作業において、作業性と安全性とを確保することができる。
【0029】
また、案内溝21はローラピン20が停止可能な窪部21aを有するので、ローラピン20の一時停止位置Bを形成してコンテナ6内と密閉作業空間2内とを徐徐に通気させることができ、二重ドア9を無理な力を加えることなく開けることができる。
【符号の説明】
【0030】
2 密閉作業空間
4 設備フランジ
5 設備ドア
6 コンテナ
7 コンテナフランジ
8 コンテナドア
9 二重ドア
10 二重ドア開閉制御手段
15 拘束部
16 操作部
17 操作板
18 旋回軸
19 ハンドル
20 ローラピン
21 案内溝
21a 窪部
A ローラピンの閉位置
B ローラピンの一時停止位置
C ローラピンの開位置