(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482799
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】燃焼機の圧力算出装置
(51)【国際特許分類】
G06F 17/50 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
G06F17/50 612G
G06F17/50 680Z
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-188402(P2014-188402)
(22)【出願日】2014年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-60596(P2015-60596A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2017年8月14日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0112049
(32)【優先日】2013年9月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507002918
【氏名又は名称】ドゥサン ヘヴィー インダストリーズ アンド コンストラクション カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アン、ソン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハ、ジン ウン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ、ヤン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョル ホン
【審査官】
松田 直也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−092402(JP,A)
【文献】
特開平08−210635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナーと連結されて火炎が噴射される燃焼室の圧力を算出する圧力算出装置であって、
前記バーナーの入口圧力を含むデータを入力する入力部と、
前記バーナーから前記燃焼室までの形状、前記燃焼室の温度分布及び前記火炎の形状に基づいて前記入口圧力に対する前記燃焼室の圧力を算出する制御部と、を備え、
前記バーナーから前記燃焼室までの形状は、前記バーナーの形状、前記バーナーと前記燃焼室との連結部の形状の変化、及び前記燃焼室の形状を含み、
前記バーナーと前記燃焼室との連結部の形状の変化は、前記バーナーの出口端の断面積と前記燃焼室の断面積との比を含む圧力算出装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記データに基づいて算出された固有値(eigenvalue)を持つ変換行列を用いて、前記燃焼室での圧力を算出することを特徴とする請求項1に記載の圧力算出装置。
【請求項3】
前記変換行列が保存される保存部をさらに備える請求項2に記載の圧力算出装置。
【請求項4】
前記データは、
前記バーナーから前記燃焼室までの形状関連データ、前記燃焼室の温度分布関連データ、及び前記火炎の形状関連データを含む請求項2または請求項3に記載の圧力算出装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記バーナーの形状関連データに基づいたバーナー形状変換行列、前記バーナーと前記燃焼室との連結部の形状変化関連データに基づいた形状変化変換行列、前記燃焼室の形状関連データに基づいた燃焼室形状変換行列、前記燃焼室の温度分布関連データに基づいた温度分布変換行列、及び前記火炎の形状関連データに基づいた火炎形状変換行列が合わせられた(summation)全体行列(global matrix)を用いて、前記燃焼室の圧力を算出することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の圧力算出装置。
【請求項6】
前記全体行列は、
バーナー形状変換行列、形状変化変換行列、温度分布変換行列、火炎形状変換行列及び燃焼室形状変換行列の順に合わせられた行列であることを特徴とする請求項5に記載の圧力算出装置。
【請求項7】
前記燃焼室の温度分布関連データは、
前記燃焼室での温度グラジエントを含む請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の圧力算出装置。
【請求項8】
前記温度グラジエントは、数値流体力学(Computational Fluid Dynamics)を通じて算出されることを特徴とする請求項7に記載の圧力算出装置。
【請求項9】
前記火炎の形状関連データは、
前記火炎の長手方向に沿って抽出された複数の火炎面に基づくことを特徴とする請求項2から請求項8のいずれか1項に記載の圧力算出装置。
【請求項10】
複数のバーナーと連結されてそれぞれ火炎が噴射される燃焼室の圧力を算出する圧力算出装置であって、
前記複数のバーナーの入口圧力を含むデータを入力する入力部と、
前記複数のバーナーから前記燃焼室までの形状、前記燃焼室の温度分布及び前記火炎の形状に基づいて前記入口圧力に対する前記燃焼室の圧力を算出する制御部と、を備え、
前記バーナーから前記燃焼室までの形状は、前記バーナーの形状、前記バーナーと前記燃焼室との連結部の形状の変化、及び前記燃焼室の形状を含み、
前記バーナーと前記燃焼室との連結部の形状の変化は、前記バーナーの出口端の断面積と前記燃焼室の断面積との比を含む圧力算出装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記複数のバーナーそれぞれについて、該バーナーから前記燃焼室までの形状関連データ、前記燃焼室の温度分布関連データ、及び該バーナーによって前記燃焼室に噴射される火炎の形状関連データに基づいて算出された固有値を持つ変換行列を用いて、前記燃焼室での圧力を算出することを特徴とする請求項10に記載の圧力算出装置。
【請求項12】
前記制御部は、
1つのバーナーから前記燃焼室を経て他の1つのバーナーまで順に、該データに基づいて算出された固有値を持つ変換行列が合わせられた全体行列を用いて、前記燃焼室の圧力を算出することを特徴とする請求項10または請求項11に記載の圧力算出装置。
【請求項13】
前記複数のバーナーは、互いに対向してそれぞれ前記燃焼室に連結される第1バーナー及び第2バーナーを備え、
前記全体行列は、
前記第1バーナーの形状関連データに基づいた第1バーナー形状変換行列、前記第1バーナーと前記燃焼室との連結部の形状変化関連データに基づいた第1形状変化変換行列、前記第1バーナーから噴射される火炎による前記燃焼室の温度分布関連データに基づいた第1温度分布変換行列、前記第1バーナーから噴射される火炎の形状関連データに基づいた第1火炎形状変換行列、前記燃焼室の形状関連データに基づいた燃焼室形状変換行列、前記第2バーナーから噴射される火炎の形状関連データに基づいた第2火炎形状変換行列、前記第2バーナーから噴射される火炎による前記燃焼室の温度分布関連データに基づいた第2温度分布変換行列、前記第2バーナーと前記燃焼室との連結部の形状変化関連データに基づいた第2形状変化変換行列、及び前記第2バーナーの形状関連データに基づいた第2バーナー形状変換行列の順に合わせた行列であることを特徴とする請求項12に記載の圧力算出装置。
【請求項14】
前記第1及び第2バーナーと前記燃焼室との連結部の形状変化関連データは、前記第1及び第2バーナーの出口端の断面積と前記燃焼室の断面積との比を含み、
前記第1及び第2バーナーから噴射される火炎による前記燃焼室の温度分布関連データは、前記燃焼室での温度グラジエントを含み、
前記第1及び第2バーナーから噴射される火炎の形状関連データは、該火炎の長手方向に沿って抽出された複数の火炎面に基づくことを特徴とする請求項13に記載の圧力算出装置。
【請求項15】
バーナーと連結されて火炎が噴射される燃焼室の圧力を算出する圧力算出方法であって、 入力部が前記バーナーの入口圧力を含むデータを入力する段階と、
制御部が、前記データに基づいて燃焼室の圧力を算出する段階と、を含み、
前記データは、前記バーナーから燃焼室までの形状関連データ、前記燃焼室の温度分布関連データ、及び前記バーナーによって前記燃焼室に噴射される火炎の形状関連データを含み、
前記バーナーから前記燃焼室までの形状関連データは、前記バーナーの形状関連データ、前記バーナーと前記燃焼室との連結部の形状変化関連データ、及び前記燃焼室の形状関連データを含み、
前記バーナーと前記燃焼室との連結部の形状変化関連データは、前記バーナーの出口端の断面積と前記燃焼室の断面積との比を含み、
前記制御部は、前記バーナーから前記燃焼室までの形状、前記燃焼室の温度分布及び前記火炎の形状に基づいて前記入口圧力に対する前記燃焼室の圧力を算出する圧力算出方法。
【請求項16】
前記燃焼室の圧力を算出する段階は、
前記制御部が、前記データに基づいて変換行列の固有値を算出する段階を含む請求項15に記載の圧力算出方法。
【請求項17】
前記変換行列の固有値を算出する段階は、前記データごとに変換行列の固有値を算出し、
前記燃焼室の圧力を算出する段階は、
前記制御部が、前記データごとに算出された複数の変換行列を合わせて全体行列を算出する段階と、
前記制御部が、前記全体行列について固有値問題を解析する段階と、をさらに含む請求項16に記載の圧力算出方法。
【請求項18】
前記全体行列を算出する段階は、
前記複数の変換行列を、その変換行列に基づいたデータによって対角線に並べて合わせ、前記バーナーから前記燃焼室まで順次位置に沿って、その位置に対応するデータに基づいた変換行列の順に並べることを特徴とする請求項17に記載の圧力算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼機の圧力を算出する装置に係り、さらに詳細には、燃焼室から火炎が噴射される時に発生する振動を予測する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラーなどのように燃料を使う発電装置は、燃焼機を備え、燃焼機は、通常、燃料と空気とが混合されるバーナーと、バーナーに連結される燃焼室とを備え、ボイラーに熱を供給する。
【0003】
燃焼室の内部ではバーナーによって火炎が噴射されつつ振動が発生するが、この時に発生する振動を、一般的に燃焼振動という。燃焼室で発生する燃焼振動の音響周波数が燃焼室の内部空間の音響固有周波数と一致すれば、音響共振が発生し、このような共振および熱音響の不安定性は、燃焼室をはじめとするボイラーの構造物を破損させる恐れがあった。したがって、従来の方法は、熱音響解析モデルを通じて燃焼室内での燃焼振動時の音響特性を予測した。
【0004】
従来の熱音響解析モデルの1つとして、燃焼室の形状をSondhauss及びRijkeチューブと仮定し、境界条件などを単純化させて共振及び熱音響不安定性を予測した。
【0005】
しかし、Sondhauss及びRijkeチューブと仮定した従来の熱音響解析モデルは、冷たい領域(cold zone)及び熱い領域(hot zone)での代表温度及びチューブの長さ情報のみを活用して共振状況を予測するため、実際の実験結果と予測結果との間に誤差が大きく発生するという問題点があった。
【0006】
また、従来の熱音響解析モデルは、燃焼室での燃焼振動の周波数を判断するだけであり、燃焼室での熱音響不安定性を予測するためには、別途にRott curveのような実験的な不安定曲線を活用せねばならないという問題点があった。
【0007】
そして、従来の熱音響解析モデルは、複数のバーナーが備えられる燃焼室での燃焼振動を予測する時、1つのバーナーしか分析できないという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一実施形態は、燃焼室の燃焼振動の推定確度を向上させた圧力算出装置を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明の一実施形態は、燃焼室の燃焼振動周波数だけではなく熱音響不安定性も共に予測できる圧力算出装置を提供することを目的とする。
【0010】
また本発明の一実施形態は、複数のバーナーと連結される燃焼室での燃焼振動を一回で予測できる圧力算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態として、バーナーと連結されて火炎が噴射される燃焼室の圧力を算出する圧力算出装置であって、前記バーナーの入口圧力を含むデータを入力する入力部と、前記バーナーから前記燃焼室までの形状、前記燃焼室の温度分布及び前記火炎の形状に基づいて前記燃焼室の圧力を算出する制御部と、を備える圧力算出装置が提供される。
【0012】
そして、前記データは、前記バーナーから前記燃焼室までの形状関連データ、前記燃焼室の温度分布関連データ、及び前記火炎の形状関連データを含む。
【0013】
前記制御部は、前記バーナーから前記燃焼室までの形状関連データ、前記燃焼室の温度分布関連データ、及び前記火炎の形状関連データに基づいて算出された固有値(eigenvalue)を持つ変換行列を用いて、前記燃焼室での圧力を算出する。
【0014】
そして、前記バーナーから前記燃焼室までの形状関連データは、前記バーナーの形状関連データ、前記バーナーと前記燃焼室との連結部の形状変化関連データ、及び前記燃焼室の形状関連データを含む。
【0015】
また、前記制御部は、前記バーナーの形状関連データに基づいたバーナー形状変換行列、前記バーナーと前記燃焼室との連結部の形状変化関連データに基づいた形状変化変換行列、前記燃焼室の形状関連データに基づいた燃焼室形状変換行列、前記燃焼室の温度分布関連データに基づいた温度分布変換行列、及び前記火炎の形状関連データに基づいた火炎形状変換行列が合わせられた(summation)全体行列(global matrix)を用いて、前記燃焼室の圧力を算出する。
【0016】
このとき、前記全体行列は、バーナー形状変換行列、形状変化変換行列、温度分布変換行列、火炎形状変換行列及び燃焼室形状変換行列の順に合わせられた行列である。
【0017】
そして、前記バーナーと前記燃焼室との連結部の形状変化関連データは、前記バーナーの出口端の断面積と前記燃焼室の断面積との比を含む。
【0018】
そして、前記燃焼室の温度分布関連データは、前記燃焼室での温度グラジエントを含む。このとき、前記温度グラジエントは、数値流体力学(Computational Fluid Dynamics)を通じて算出される。
【0019】
そして、前記火炎の形状関連データは、前記火炎の長手方向に沿って抽出された複数の火炎面に基づく。
【0020】
本発明の他の実施形態として、前記変換行列及び前記全体行列のうち少なくとも1つが保存される保存部をさらに備えることもある。
【0021】
本発明のさらに他の実施形態として、複数のバーナーと連結されてそれぞれ火炎が噴射される燃焼室の圧力を算出する圧力算出装置であって、前記複数のバーナーの入口圧力を含むデータを入力する入力部と、前記複数のバーナーから前記燃焼室までの形状、前記燃焼室の温度分布及び前記火炎の形状に基づいて前記燃焼室の圧力を算出する制御部と、を備える圧力算出装置が提供される。
【0022】
前記制御部は、前記複数のバーナーそれぞれについて、該バーナーから前記燃焼室までの形状関連データ、前記燃焼室の温度分布関連データ、及び該バーナーによって前記燃焼室に噴射される火炎の形状関連データに基づいて算出された固有値を持つ変換行列を用いて、前記燃焼室での圧力を算出する。
【0023】
このとき、前記制御部は、1つのバーナーから前記燃焼室を経て他の1つのバーナーまで順に、該データに基づいて算出された固有値を持つ変換行列が合わせられた全体行列を用いて、前記燃焼室の圧力を算出する。
【0024】
前記複数のバーナーは、互いに対向してそれぞれ前記燃焼室に連結される第1バーナー及び第2バーナーを備え、前記全体行列は、前記第1バーナーの形状関連データに基づいた第1バーナー形状変換行列、前記第1バーナーと前記燃焼室との連結部の形状変化関連データに基づいた第1形状変化変換行列、前記第1バーナーから噴射される火炎による前記燃焼室の温度分布関連データに基づいた第1温度分布変換行列、前記第1バーナーから噴射される火炎の形状関連データに基づいた第1火炎形状変換行列、前記燃焼室の形状関連データに基づいた燃焼室形状変換行列、前記第2バーナーから噴射される火炎の形状関連データに基づいた第2火炎形状変換行列、前記第2バーナーから噴射される火炎による前記燃焼室の温度分布関連データに基づいた第2温度分布変換行列、前記第2バーナーと前記燃焼室との連結部の形状変化関連データに基づいた第2形状変化変換行列、及び前記第2バーナーの形状関連データに基づいた第2バーナー形状変換行列の順に合わせた行列である。
【0025】
そして、前記第1及び第2バーナーと前記燃焼室との連結部の形状変化関連データは、前記第1及び第2バーナーの出口端の断面積と前記燃焼室の断面積との比を含み、前記第1及び第2バーナーから噴射される火炎による前記燃焼室の温度分布関連データは、前記燃焼室での温度グラジエントを含み、前記第1及び第2バーナーから噴射される火炎の形状関連データは、該火炎の長手方向に沿って抽出された複数の火炎面に基づく。
【0026】
一方、本発明のさらに他の実施形態として、圧力算出装置に備えられた入力部がデータを入力する段階と、圧力算出装置に備えられた制御部が、前記データに基づいて燃焼室の圧力を算出する段階と、を含む圧力算出方法が提供される。
【0027】
前記データは、バーナーから燃焼室までの形状関連データ、前記燃焼室の温度分布関連データ、及び前記バーナーによって前記燃焼室に噴射される火炎の形状関連データを含む。
【0028】
前記燃焼室の圧力を算出する段階は、前記制御部が、前記データに基づいて変換行列の固有値を算出する段階を含む。
【0029】
そして、前記変換行列の固有値を算出する段階は、前記データごとに変換行列の固有値を算出し、前記燃焼室の圧力を算出する段階は、前記制御部が、前記データごとに算出された複数の変換行列を合わせて全体行列を算出する段階と、前記制御部が、前記全体行列について固有値問題を解析する段階と、をさらに含む。
【0030】
そして、前記全体行列を算出する段階は、前記複数の変換行列を、その変換行列に基づいたデータによって対角線に並べて合わせ、前記バーナーから前記燃焼室まで順次位置に沿って、その位置に対応するデータに基づいた変換行列の順に並べる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一実施形態によれば、バーナー及び燃焼室の形状は、ほぼ実際の形状が反映され、火炎形状も反映されるので、燃焼振動の推定確度が向上するという効果がある。
【0032】
また本発明の一実施形態によれば、バーナー及び燃焼室の形状、温度分布及び火炎形状に基づいて固有値を算出した変換行列を使うので、燃焼振動の推定確度が向上するという効果がある。
【0033】
また、本発明の一実施形態によれば、バーナー及び燃焼室の形状、温度分布及び火炎形状に基づいて固有値を算出した複数の変換行列を用いるので、燃焼室の燃焼振動の共振状況及び熱音響不安定性を共に予測できるという効果がある。
【0034】
また、本発明の一実施形態によれば、複数のバーナーにそれぞれ係る変換行列を合わせることにより、同時に圧力を検出するので、複数のバーナーが連結される燃焼室についても燃焼振動を簡単に予測できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施形態による圧力算出装置のブロック図である。
【
図2】
図1に示した実施形態が適用されるバーナー及び燃焼室を示す概念図である。
【
図3】本発明の他の実施形態による圧力算出装置のブロック図である。
【
図4】本発明のさらに他の実施形態による圧力算出装置のブロック図である。
【
図5】
図4に示した実施形態が適用される複数のバーナー及び燃焼室を示す概念図である。
【
図6】本発明の一実施形態による圧力算出方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付した図面を参照して当業者が本発明を容易に実施できるように、望ましい実施形態を詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明の一実施形態による圧力算出装置のブロック図であり、
図2は、
図1に示した実施形態が適用されるバーナー及び燃焼室を示した概念図である。
図1及び
図2を参照して本発明の一実施形態による圧力算出装置を詳細に説明する。
【0038】
本発明の一実施形態による圧力算出装置100は、
図2に示したボイラーの燃焼室10での燃焼振動を予測する。具体的に、圧力算出装置100は、燃焼室10から火炎が噴射される時の圧力を検出して共振及び熱音響不安定性を予測する。このような圧力算出装置100は、入力部110及び制御部120を備える。
【0039】
入力部110は、1つ以上のデータを入力する手段である。データは、燃焼室10と連結されたバーナー20の入口圧力(P
0)及び入口流速(U
0)を含む。また、入力部110は、後述する変換行列の固有値を算出するためのデータをさらに入力する。このようなデータは、バーナー20から燃焼室10までの形状関連データ、燃焼室10での温度関連データ及び火炎30の形状関連データを含む。
【0040】
変換行列の固有値を算出するための基礎を形成するデータについて、
図2を参照してさらに具体的に説明する。まず、バーナー20から燃焼室10までの形状関連データは、バーナー20から燃焼室10までを複数の空間格子に分けて抽出した形状を含む。この時、複数の空間格子は、数値流体力学(CFD、Computational Fluid Dynamics)によって定められ、その間隔は同一でないこともある。このようなバーナー20から燃焼室10までの形状関連データは、バーナー20の形状関連データ、バーナー20と燃焼室10との連結部の形状変化関連データ、及び燃焼室10の形状関連データを含む。
【0041】
バーナー20の形状関連データは、
図2に表示された番号1から番号3までの領域でのバーナー20の長さ及び幅を示す値を含む。バーナー20と燃焼室10との連結部の形状変化関連データは、
図2に表示された番号3での断面積変化に関するデータであり、バーナー20の断面積と燃焼室10の断面積との比を示す値を含む。燃焼室10の形状関連データは、
図2に表示された番号3または番号4から燃焼室10の終端まで、すなわち、番号9までの領域での燃焼室10の長さ及び幅を示す値を含む。
【0042】
燃焼室10での温度関連データは、火炎反応領域(
図2に表示された番号3から番号4まで)での温度グラジエント値を含む。このような温度グラジエント値は、燃焼室10に対してCFD解析を通じて導出された値である。
【0043】
火炎30の形状関連データは、火炎の長手方向(すなわち、火炎が噴射される方向)に沿って抽出された複数の火炎面形状を含む。火炎面は、該位置で火炎30を薄い面であると仮定して導出した火炎の形状である。火炎面の数は、火炎30の長さ及び燃焼室10の長さによって異なって定められる。火炎30の長さは、バーナー20に供給される燃料の量及び流速などの因子によって定められる。
【0044】
このような入力部110は、キーボード、キーパッド、マウス、ドームスイッチ、タッチパッドなどの公知の入力手段を使える。
【0045】
制御部120は、バーナー20から燃焼室10までの形状、燃焼室10での温度分布及び火炎30の形状に基づいて燃焼室10での圧力を検出する。具体的に、制御部120は、前述した各データに基づいて固有値が算出された複数の変換行列(transfer matrix)を用いて、固有値問題(eigenvalue problem)を通じて燃焼室10での燃焼振動時の圧力を検出する。
【0046】
具体的に、複数の変換行列は、バーナー20の形状関連データに基づいたバーナー形状変換行列(T
Burner Duct、以下、T
B)、バーナー20と燃焼室10との連結部の形状変化関連データに基づいた形状変化変換行列(T
Area Change、以下、T
A)、燃焼室10の形状関連データに基づいた燃焼室形状変換行列(T
Furnance Duct、以下、T
F)、燃焼室10の温度分布関連データに基づいた温度分布変換行列(T
Flame Reaction Zone、以下、T
FR)、及び火炎30の形状関連データに基づいた火炎形状変換行列(T
Flame Model、以下、T
FM)を含む。
【0047】
制御部120は、前述した複数の変換行列を対角要素とする全体行列(global matrix)に対して、固有値問題を解析する。全体行列(T
0)は、下記の数式1のように、バーナー形状変換行列(T
B)、形状変化変換行列(T
A)、温度分布変換行列(T
FR)、火炎形状変換行列(T
FM)及び燃焼室形状変換行列(T
F)の順に対角線に並べて合わせた(summation)行列である。
【数1】
制御部120は、下記の数式2のように、バーナー20の入口端の圧力(P
0)及び入口流速(U
0)のような変数データを入力値として、全体行列(T
0)に対して固有値問題を解析し、燃焼室10での圧力(P
1)を検出する。
【数2】
前述した構成の側面は、制御部120によって1つの全体行列を使って、固有値問題を解析して燃焼室10での圧力(P
1)を検出できるため、これより燃焼室10の燃焼振動周波数の振幅の状況及び不安定性を同時に予測できるという効果がある。
【0048】
また前述した構成の側面は、バーナー及び燃焼室の形状において、長さだけではなく幅に基づいた変換行列、燃焼室での温度分布においても、温度グラジエント値に基づいた変換行列、火炎形状に基づいた変換行列をいずれも合わせた全体行列を用いて燃焼振動を予測するため、推定確度が向上するという効果がある。
【0049】
図3は、本発明の他の実施形態による圧力算出装置のブロック図である。本発明の他の実施形態による圧力算出装置100'は、前述した入力部110及び制御部120と共に、保存部130及びディスプレイ部140をさらに備える。
【0050】
保存部130には、前述した変換行列及び全体行列が保存される。また保存部130には、前述した変数データ及び固有値データも保存される。このような保存部130には、内蔵または外付けのタイプがあるが、公知の記録媒体を使える。例えば、保存部130は、フラッシュメモリタイプ、ハードディスクタイプ、マルチメディア・カードマイクロタイプ、SDやXDメモリのようなカードタイプのメモリ、RAM、SRAM、ROM、磁気メモリ、磁気ディスク、光ディスクのような記録媒体を含む。しかし、これらに限定されるものではなく、保存部130は、データを保存できれば、いかなる保存手段であってもよい。
【0051】
ディスプレイ部140は、前述した入力部110に入力された変数データ及び固有値データと、前述した制御部120で処理される各種情報及び処理結果をと視覚的に示す手段である。このようなディスプレイ部140は、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(TFT−LCD)、有機発光ダイオード(OLED)のような公知のディスプレイ手段を使える。但し、これらに限定されるものではなく、入力された各種データ及び処理情報を表示できれば、いかなる手段であってもよい。
【0052】
図4は、本発明のさらに他の実施形態による圧力算出装置のブロック図であり、
図5は、
図4に示した実施形態が適用される複数のバーナー及び燃焼室を示す概念図である。
図4ないし
図5を参照して、本発明のさらに他の実施形態による圧力算出装置100"を詳細に説明する。
【0053】
本発明のさらに他の実施形態による圧力算出装置100"は、
図5に示したボイラーの燃焼室10'での燃焼振動を予測する。燃焼室10'は、互いに対向する2つのバーナー20a、20bとそれぞれ連結され、火炎がそれから噴射され、圧力算出装置100"は、燃焼室10'から火炎が噴射される時の圧力を検出して共振及び熱音響不安定性を予測する。このような圧力算出装置100"は、入力部110"及び制御部120"を備える。
【0054】
入力部110"は、前述したように1つ以上のデータを入力する手段である。データは、燃焼室10'と連結された第1バーナー20a及び第2バーナー20bそれぞれでの入口圧力及び入口流速を含む。
【0055】
また、入力部110"は、後述する変換行列の固有値を算出するためのデータをさらに入力する。このようなデータは、第1バーナー20aから燃焼室10'までの形状関連データ、第2バーナー20bから燃焼室10'までの形状関連データ、燃焼室10'での温度関連データ、及び火炎30a、30bの形状関連データなどを含む。このようなデータは、第1バーナー20a及び第2バーナー20bに対してそれぞれ入力され、具体的には、
図2を参照して前述した通りであるので、重なる説明は省略する。
【0056】
制御部120"は、各バーナー20a、20bから燃焼室10'までの形状、燃焼室10'での温度分布及び火炎30a、30bの形状に基づいて燃焼室10'での圧力を検出する。具体的に、制御部120"は、前述した各データに根拠して算出された固有値を持つ複数の変換行列を用いて、固有値問題を通じて燃焼室10'での燃焼振動時の圧力を検出する。
【0057】
具体的に、複数の変換行列は、前述したように、バーナー20a、20bの形状関連データに基づいたバーナー形状変換行列(T
B)、バーナー20a、20bと燃焼室10'との連結部の形状変化関連データに基づいた形状変化変換行列(T
A)、燃焼室10'の形状関連データに基づいた燃焼室形状変換行列(T
F)、燃焼室10'の温度分布関連データに基づいた温度分布変換行列(T
FR)、及び火炎30a、30bの形状関連データに基づいた火炎形状変換行列(T
FM)を含む。
【0058】
本実施形態による制御部120"も、前述した制御部120のように複数の変換行列を対角要素とした全体行列に対して、固有値問題を解析する。但し、本実施形態の制御部120"で使われる全体行列(T
op)は、下記の数式3に示したように、第1バーナー20aに関する複数の変換行列の群T1と、第2バーナー20bに関する複数の変換行列の群T2とを、燃焼室形状変換行列(T
F)を共通変換行列として合わせた行列である。
【数3】
数式3では、第1バーナー20aに関する複数の変換行列の群をT1にまとめて表示し、第2バーナー20bに関する複数の変換行列の群をT2にまとめて表示した。
【0059】
第1バーナー20aに関する複数の変換行列の群T1は、前述した実施形態による制御部120で使われる全体行列(To)と同順に対角線に配列される。そして、第2バーナー20bに関する複数の変換行列の群T2は、前述した全体行列(To)と逆順に対角線に配列される。
【0060】
すなわち、本実施形態において全体行列(T
op)は、
図5に示された第1バーナー20aから燃焼室10'を経て第2バーナー20bまでの各データに基づいた変換行列が、順にいずれも合わせられた行列である。以下では、第1バーナー20aによって噴射される火炎を第1火炎30a、第2バーナー20bによって噴射される火炎を第2火炎30bと定義する。
【0061】
具体的に、本実施形態において、全体行列(T
op)は、第1バーナー20aの形状関連データ、第1バーナー20aと燃焼室10'との連結部の形状変化関連データ、燃焼室10'の第1火炎30aの反応領域での温度分布関連データ、第1火炎30aの形状関連データ、燃焼室10'の形状関連データ、第2火炎30bの形状関連データ、燃焼室10'の第2火炎30bの反応領域での温度分布関連データ、第2バーナー20bと燃焼室10'との連結部の形状変化関連データ、及び第2バーナー20bの形状関連データのそれぞれに基づく変換行列を、順に対角線に配列して合わせた行列である。
【0062】
この時、各データは、
図1及び
図2を参照して前述した実施形態でのデータと同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0063】
このような制御部120"は、前述した数式2と同様に、各バーナー20a、20bの入口端の圧力及び入口流速のようなデータを入力値として、全体行列(T
op)に対して固有値問題を解析し、燃焼室10"での圧力を検出する。
【0064】
前述した構成の側面は、
図5に示されたように、バーナーが複数備えられた燃焼室に対しても、1つの全体行列に対して固有値問題を解析し、簡単に燃焼振動を予測できるという効果がある。
【0065】
本発明のさらに他の実施形態として、前述した圧力算出装置100"は、保存部及びディスプレイ部をさらに備える。
【0066】
保存部には、数式3による全体行列(T
op)及び個別変換行列はもとより、前述したデータ及び固有値問題の解析結果がさらに保存されている。保存部の具体的な構成及び機能は、
図3を参照して前述した保存部130と同一であるので、重なる説明は省略する。
【0067】
ディスプレイ部は、前述した入力部110に入力されたデータと、前述した制御部120"で処理される各種情報及び処理結果とを視覚的に示す手段である。ディスプレイ部の具体的な機能及び構成は、
図3を参照して述べたディスプレイ部140と同一であるので、重なる説明は省略する。
【0068】
図6は、本発明の一実施形態による燃焼振動予測方法のフローチャートである。
図1ないし
図6を参照して、前述した実施形態による圧力算出装置を用いて燃焼振動を予測する方法を詳細に説明する。
【0069】
本発明の一実施形態による燃焼振動予測方法は、入力部110、110"がデータを入力する段階(S100)、及び制御部120、120"が前記データに基づいて燃焼室10、10'の圧力を検出する段階(S210、S220、S230)を含む。
【0070】
入力部がデータを入力する段階(S100)は、前述したような各種データを入力部110、110"が入力される段階である。詳細は、
図1ないし
図5を参照して前述したので、重なる説明は省略する。
【0071】
制御部が前記データに基づいて燃焼室の圧力を検出する段階は、変換行列の固有値を算出する段階(S210)、全体行列を算出する段階(S220)、及び固有値問題を解析する段階(S230)を含む。
【0072】
変換行列の固有値を算出する段階(S210)は、
図1ないし
図5を参照して前述したように、制御部120、120"が、バーナーから燃焼室まで、または燃焼室を経て他のバーナーまでの順に、各データに基づいて変換行列の固有値を算出する。詳細は、
図1ないし
図5を参照して前述したので、重なる説明は省略する。
【0073】
全体行列を算出する段階(S220)は、制御部120、120"が、各データに基づいた変換行列を対角要素として全体行列を算出する段階であり、詳細は、
図1ないし
図5を参照して説明した通りであるので、重なる説明は省略する。
【0074】
そして、固有値問題を解析する段階(S230)は、制御部120、120"が、公知の固有値問題解析方法を通じて全体行列を用い、燃焼室の圧力を検出する。これもまた、詳細は、
図1ないし
図5を参照して前述した通りであるので、重なる説明は省略する。
【0075】
以上で述べたように、当業者ならば、本発明を、その技術的思想や必須特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施できるということを理解できるであろう。したがって、前述した実施形態は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないということを理解せねばならない。本発明の範囲は、詳細な説明よりは特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲そして等価概念から導出されるすべての変更または変形された形態は、本発明の範囲に含まれると解釈されねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、圧力算出装置関連の技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0077】
100 圧力算出装置
110 入力部
120 制御部