特許第6482807号(P6482807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6482807反転型移植片固定装置及び低反転距離を用いる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482807
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】反転型移植片固定装置及び低反転距離を用いる方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/08 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
   A61F2/08
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-195297(P2014-195297)
(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-66442(P2015-66442A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2017年9月25日
(31)【優先権主張番号】14/041,830
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507083478
【氏名又は名称】デピュイ・ミテック・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・ビー・スペンシナー
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−158649(JP,A)
【文献】 特開平11−206793(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/049453(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0085526(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00− 2/08
A61B 17/00−17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植片保持装置であって、
第1の端部及び第2の端部、その間の中間点、並びに上側表面及び下側表面を有する、細長い本体と、
前記上側表面から前記下側表面まで前記本体を貫通する一対の細長いスロットであって、前記スロットはその間に中子を画定している、一対の細長いスロットと、
前記中子の上に配置され、前記第1の端部により近接している第1の位置から前記中間点により近接している第2の位置まで、前記中子に沿って摺動可能である、移植片保持ループと、
前記中子に接続されている後端糸であって、前記移植片保持ループが前記第1の位置にあるとき、前記移植片保持ループを通過して前記第1の端部に向かって前記本体から延在しており、よって、前記後端糸に印加される引っ張り力が、前記移植片保持ループを前記第1の位置から離れて前記第2の位置に向かって付勢する傾向があるようになっている、後端糸と、を含む、移植片保持装置。
【請求項2】
前記中子を貫通する第1の開口部を更に含み、前記後端糸が、前記第1の開口部を貫通することによって前記中子に接続されている、請求項1に記載の移植片保持装置。
【請求項3】
前記第1の開口部が、前記中子を横方向に貫通する、請求項2に記載の移植片保持装置。
【請求項4】
前記第1の開口部が、前記中子を貫通するスロットを構成するように前記中子に沿って縦方向に伸びていて、それによって、前記本体を再配向するために前記後端糸に印加される引っ張り力が、前記後端糸を前記中間点に向かって付勢し、かつ前記移植片保持ループを前記第2の位置に向かって付勢することを更に強化する傾向がある、請求項2に記載の移植片保持装置。
【請求項5】
前記第2の端部において前記本体に接続された前端糸を更に含む、請求項1に記載の移植片保持装置。
【請求項6】
前記中子が、前記第1の端部から離れる方向で下方に傾斜する、請求項1に記載の移植片保持装置。
【請求項7】
無菌である、請求項1に記載の移植片保持装置。
【請求項8】
前記第2の位置が、前記細長い本体の前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記細長い本体の長さの中央25%の範囲内に位置する、請求項1に記載の移植片保持装置。
【請求項9】
前記細長いスロットが、前記中子を通過し前記本体に取り付けられた保持糸を介して前記第1の端部において閉じられる、請求項1に記載の移植片保持装置。
【請求項10】
前記保持糸は、前記移植片保持ループが前記第1の位置にあるときに、前記本体の前記第1の端部を超えて延在し、それによって、前記移植片保持装置の反転距離を最小化する、請求項9に記載の移植片保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、移植片の固定に関し、より詳しくは、反転型固定装置を利用した移植片組織の固定に関する。
【背景技術】
【0002】
反転型固定装置(例えば、参照により本明細書に援用される米国特許第5,306,301号及び米国特許第5,645,588号に開示されているもの)は、前十字型靭帯(ACL)再建等において組織を固定するために単純な手順を利用することを可能にする。このような装置は、中央縫合糸ループが垂下している細長い棒材を備える。大腿骨内に、膝蓋面位置から又は膝蓋面付近から大腿骨部分まで上がって上位位置にて大腿骨の側面から抜け出すトンネルを作製する。細長い棒材に取り付けられたループ上に、移植片がループ掛けされる。棒材をトンネルに一方向に貫通させて上まで通すことができる。トンネルの上位端を出た後に、トンネルの中へ戻らないように棒材を約90度反転させて大腿骨に載置し、そこからループ及び移植片を懸吊させてトンネルの中に垂下させる。移植片に引っ張り力がかかると、棒材は骨表面に接触して所定の位置で保持される。
【0003】
ただし、反転を開始するには、棒材をトンネルの外側に完全に出す必要がある。次いで、その棒材を骨に当接させて置くと、縫合糸ループはトンネルの外に引っ張り出された量だけ(棒材の長さの約50%)トンネルの中に戻る。これにより、トンネルの中での移植片と骨との接触が減る。また、ループの長さが長いほどトンネル内での移植片の動きが増える可能性があり、結果として移植片が骨に癒着する治癒プロセスを遅延する可能性がある。
【0004】
参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第20130204366号には、移植片保持ループが棒材に沿って軸方向に移動することができ、それによって、移植片が反転手順中にトンネルから引き出される距離を減少させる棒材が提供されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による移植片保持装置は、第1の端部及び第2の端部、その間の中間点、並びに上側表面及び下側表面を有する、細長い本体を備える。上側表面から下側表面まで本体を貫通して形成される一対の細長いスロットは、その間に中子を画定する。移植片保持ループは、中子の上に配置され、第1の端部により近接している第1の位置から中間点により近接している第2の位置まで、中子に沿って摺動可能である。後端糸は、スロットに隣接する本体に接続し、前記本体から延在する。移植片保持ループが第1の位置にあるとき、移植片保持ループを通過して第1の端部に向かって本体から延在する後端糸であって、よって、後端糸に印加される引っ張り力が、第1の位置から離れて第2の位置に向かって移植片保持ループを付勢する傾向があるようになっている。
【0006】
好ましくは、後端糸は、中子に取り付けられ、より好ましくは、中子を貫通している第1の開口部を通過させることによって中子に取り付けられる。第1の開口部は、それを貫通するスロットを構成するように中子に沿って縦方向に伸びていて、それによって、本体を再配向するために後端糸に印加される引っ張り力が、後端糸を中間点に向かって付勢し、かつ移植片保持ループを第2の位置に向かって付勢することを更に強化する傾向がある。
【0007】
好ましくは、前端糸は、第2の端部において本体に接続する。
【0008】
好ましくは、中子は、第1の端部から離れる方向で下方に傾斜する。
【0009】
好ましくは、移植片保持装置は、無菌状態で提供される。
【0010】
好ましくは、第2の位置は、本体の中間点近傍に位置し、より好ましくは、第1の端部と第2の端部との間の細長い本体の長さの中央25%の範囲内に位置する。
【0011】
本発明の1つの態様では、細長いスロットは、中子を通過し本体に取り付けられた保持糸を介して第1の端部において閉じられる。好ましくは、保持糸は、移植片保持ループが第1の位置にあるときに、本体の第1の端部を超えて延在し、それによって、移植片保持装置の反転距離を最小化する。
【0012】
本発明による方法は、移植片靭帯を骨トンネルに固定するために提供される。前記方法は、a)細長い固定バックルの中子の上に摺動可能に配置されたループ上に移植片靱帯を配置することによって移植片構造物を形成する工程であって、前記ループが、前記バックルの第1の端部により近い第1の位置から前記バックルの中間点により近い第2の位置まで前記中子に沿って摺動可能である、工程と、b)前記バックルの第2の端部が先頭にある状態で、前記移植片構造物を骨トンネルを通して引っ張り上げる工程と、c)前記バックルを前記トンネルを通して引っ張った後、前記本体に接続している後端糸に引っ張り力を印加し、前記ループを通って前記第2の位置から離れる方向に通過させる工程であって、前記引っ張り力が前記ループを前記第2の位置に向かって付勢し、また、前記ループが前記バックル上の前記第2の位置から前記トンネルの中に垂下している状態で、前記トンネルに隣接する骨上において前記トンネルに対して横方向になるように前記バックルを再配向する、工程と、を含む。
【0013】
好ましくは、後端糸は、例えば、中子を貫通する後端糸開口部を通して受容されること等によって、中子において本体に接続される。好ましくは、後端糸は、工程c)の後に除去される。好ましくは、工程b)は、バックルの第2の端部において前端糸開口部を通して受容される前端糸を介して実施される。好ましくは、バックルの上側表面の上のループの少なくとも一部は、ループがその第1の位置にあるときに、バックルの第1の端部を超えて延在する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による固定装置バックルの斜視図である。
図2図1の線2−2に沿った断面図である。
図3図1の固定装置を使用した膝におけるACL修復の断面の側面図である。
図4A図1の固定装置を使用したACL修復手順の断面の側面図である。
図4B図1の固定装置を使用したACL修復手順の断面の側面図である。
図4C図1の固定装置を使用したACL修復手順の断面の側面図である。
図4D図1の固定装置を使用したACL修復手順の断面の側面図である。
図5】本発明によるバックルの別の実施形態の上側表面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び2は、本発明による移植片固定装置を示す。移植片固定装置は、細長い棒材であるバックル12を備え、移植片を受容するループ14がこのバックルから垂下している。バックル12は、第1の端部16、第2の端部18、並びに上側表面20及び下側表面22を備える。本明細書中では、先に定義したバックル12の表面に関して、「上側」及び「下側」、並びに「上方」等の関連する用語が使用されている。下側表面22は、バックル12が使用されているときに骨(図1には図示せず)に面する表面である。
【0016】
一対の縦方向スロット32は、上側表面20から下側表面22までバックル12を貫通し、バックルの第1の端部16に隣接する第1の端部34からバックル12の中間点38にある第2の端部36まで延在している。スロット32の間には保持中子(retention tang)40が画定されている。保持中子の上側表面42は、スロット32の第1の端部34から第2の端部36まで下方へ傾斜しており、移植時にループ14を中間点38に向かって動かす。ループ14は、スロット32を通って受容され、保持中子の上側表面42に沿って摺動する。
【0017】
第1の穴24は、第1の端部16に隣接して横方向に中子40を貫通し、第2の穴26は、第2の端部18においてバックル12を貫通して、上側表面20から下側表面22まで通過する。第1の穴24は、後端糸28を受容し、第2の穴26は、移植中にバックル12を導くために前端糸30を受容する。図2から最もよく分かる通り、ループ14が第1の端部34に向かう場合、ループは第1の穴24と重なる。後端糸28が、反転部分の移植中に上方にピンと張る場合、第1の端部34から離れる方向にループ14を押す傾向がある。また、第1の端部34の内側寄りに穴24を配置することにより、スロット32の第1の端部34をバックル12の第1の端部16により近接させることができ、それによって、反転距離を縮めることができる。
【0018】
後端糸28及び前端糸30は、ORTHOCORD #2縫合糸(供給元:Ethicon,Inc.(Somerville,NJ))から形成されていることが好ましい。固定装置10が配置されている間、前端糸30は後端糸28よりも大きい応力を経験し得ることは、配置手順に記載されているとおり明らになるであろう。第1の穴24よりも第2の穴26の方がわずかに大きく示されている(ただし、両方の穴は同じサイズにすることもできる)。前端糸30は強度が高い(例えば、後端糸28に比べて直径が大きい)縫合糸であり得る。こうした差異を付けて、前端糸30と後端糸28とを差別化することができる。また、例えば、色又は視覚パターンの差異を介する等の何か他の様式で差別化することもできる。
【0019】
保持中子40の垂直寸法は、第1の端部34から第2の端部36まで一定であることが強度及び剛性を増強するうえで好ましい。したがって、保持中子40は、中間点38にてバックルの下側表面22よりもわずかに下に垂下している。中子40は、上側表面20の下方へ13.6度だけ傾斜して図示されているが、0度〜約45度の範囲であることができる。中子はまた、中間点38の方へ次第に急勾配になるといったように傾斜度が可変であってもよく、これにより、移植後にループが中間点38に停留しやすくなる。
【0020】
ACL修復用には、好ましくはバックル12は長さ約12mm、幅4mm、厚さ1.5〜2.5mmであり、中子40が垂下する中間点38が最も厚い部分である。中子40の厚さは、約1.5mmである。バックル12は、6Al−4Vチタン合金等の生体適合材料で形成されていることが好ましい。ループ14は、好ましくは、例えばDYNEEMAなどの超高分子量ポリエチレン及びポリエステルで紐編みされている。ループ14の材料は、好ましくは約2mm径、好適には#2−0から最大約4mmの範囲であり、ループ14の長さは約8mm〜60mmであることが好ましい。ループ14は、結び目のない連続的なループを形成するようにバックル12上に紐編みされる。そのような構造物を得るための方法の1つは、本明細書に参照によって援用される米国特許第6,352,603号(Bryant)に例示されている。
【0021】
ここで図3を参照すると、移植片構造物44は、固定装置10のループ14上にループ掛けされた組織移植片46を含み、患者の下肢48の所定の位置に示されている。脚の大腿骨52内のトンネル50は、移植片46を収容するように寸法を定められた大径下位部分、つまりソケット54と、バックル12を長さ方向の配向で受けるように寸法を定められた小径上位部分、つまり通過チャネル56とを備える。バックル12は、横向きの配向で大腿骨52に位置決めされ、ループ14は通過チャネル56を通って、移植片46が載置されているソケット54の中に垂下している。移植片46の反対側の端部は、脛骨60内の脛骨トンネル58の中に配置され、DePuy Mitek Inc.(Raynham,MA)から入手可能なINTRAFIX(登録商標)アンカー等のアンカー62で定位置に保持される。
【0022】
ここで図4A〜4Dを参照すると、バックル12をトンネル50を通して、特に通過チャネル56を通して上昇させるプロセスについて記載する。手順の開始時に、移植片組織46をループ14を通される。バックル12の縦方向軸60をトンネル50の縦方向軸62と同軸方向に配向させ、スロット32の第1の端部34からループ14を垂下させる(図4A)。前端糸30における引っ張り力により、第1の端部16が通過チャネル56から抜け出すまで、通過チャネル56から上方にバックル12の第2の端部18を引っ張る(図4B)。好ましくは、ループ14及び通過チャネル56は、ソケット54の端部55に移植片組織46が当接するまで移植片構造物44を引っ張り上げる場合、バックル12の第1の端部16が通過チャネル56の端部からちょうど離れることにより、バックル12が回転できるよう正しく位置づけられたという触覚フィードバックが外科医に与えられるような寸法である。図4A〜4Dに示す移植片46は、正確な縮尺ではなく、ソケット54の構造をよりよく示すために細線として示されている。実際には、移植片46は、ソケット54の幅全体を満たすようにより太い。移植片46とソケット54を形成する骨との間の接触により、移植片を骨内に成長させ、骨と融合させて、永続的な修復を形成することができる。
【0023】
回転は約90度であり、後端糸28に引っ張り力を印加することによって生じ得る(図4C)。最終的な配向は、トンネル50が大腿骨52を貫通する角度によって決まる。バックル12が回転したときに、移植片組織46によって対向する引っ張り力が生じると、ループ14を保持中子40に沿って摺動させ、バックル12の中間点38から通過チャネル56の中に垂下した状態にする傾向がある。これは、外科医が後端糸28を介して感じ取れる明確なスナップモーションと共に発生し、移動が正しく行われたという触覚フィードバックを与える。続いて、後端糸28及び前端糸30を取り除き、移植片組織46からの引っ張り力によって、バックル12の下側表面22を引っ張り、大腿骨52にしっかりと当接させる(図4D)。通過チャネル56、及びバックル12の中間点38から垂下するループ14に対してバックル12を横向きに配向すると、バックルが通過チャネル56の中へ戻るのを防ぎ、移植片組織46がしっかりと固定される。
【0024】
中子の上側表面42を傾斜させると、ループ14を中間点38へ向かって付勢する助けになる。また、大腿骨52上でトンネル50に対して角度を付けることによっても、バックル12を横切るようにループ14を引っ張り、スロットの第2の端部36及びバックル12に位置決めする傾向がある。端部36を中間点38に位置づけると、ループ14が中間点38に位置した状態を維持する助けになる。ループ14の最終的な位置決めという観点では、「中間点」という用語は、広く解釈できる。バックル12の厳密に中央に位置決めすると、中央部の両側に等量のバックルが与えられ、バックルの端部が通過チャネル56の中へ戻るようにバックル12が骨に沿って滑動する可能性が最小限に抑えられる。実際には、ループ14を他の位置に位置決めしてもよいが、しっかり据えることで、バックル12が通過チャネル56の中へ戻るのを防ぐことができる。ループ14は、好ましくはバックル12の長さの中央50%、より好ましくは中央25%以内の任意の場所に位置決めされる。
【0025】
反転距離は、移植片46とソケット54の端部との間の間隙を表す。理想的には、この間隙はゼロで、移植片46がソケット54の端部までずっと延在する。
【0026】
図5は、本発明によるバックル100の更なる実施形態を示す。図5では、それぞれ後端糸107及び前端糸109のための穴108及び110を備える、第1の端部104及び第2の端部106を有する本体102が含まれる。これは、また、移植片支持ループ115を支持するための中子114を形成するスロット112を有する。スロット112は、前述の実施形態のように第1の端部104において本体102によって取り囲まれているのではなく、中間点116から第1の端部104まで延在する。ループを中子114上に保持するために、中子114における開口部120及び本体102における隣接する開口部122を通る保持糸118が設けられる。
【0027】
保持糸118は、ループを保持するのに十分な引っ張り強度を有する縫合糸、ワイヤ、又は他の材料であってよい。保持糸は、可撓性、伸縮性、又は剛性であってよい。図5に示す通り、保持糸は、反転距離を更に最小化するために中子114と隣接する本体102との間で外向きに撓んでいる124が、撓み無しに真っ直ぐであるように作製してもよい。たわみ124は、ワイヤに成形される等、静止状態で存在してもよく、又は線118が、伸びてたわみ124を形成する弾性材料で形成されている場合、保持糸118に対するループ115の力下で動的に形成されてもよい。例えば、線118は、PDS(ポリジオキサノン)又はProlene等の平均よりも低い弾性率を有する縫合糸で形成してよく、複数の長さのこのような縫合糸を使用して十分な強度を有する線118を形成してもよい。移植可能な等級のゴム又は例えばシリコーン管等のシリコーン材料は、弾性材料の他の可能性であり得る。たわみ124は、特にループがそれを押圧するとき、たわみ124を形成するために十分なたるみを有する縫合糸等の可撓性である線118によって形成してよい。
【0028】
開口部122における線118の固定は、特に、前記線が縫合糸で形成される場合、結び目126が開口部122を通過できないように、線118の端部に結び目126を提供することによって行うことができる。固定の他の方法としては、溶接、接着、干渉スクリュー等が挙げられる。
【0029】
十分なたわみ124を用いて、バックル110は、ゼロ又は更には負の値の反転距離を有することができるので、移植片を移植片ソケット54の端部55に位置決めすることができる(図5には図示しない)。十分なたわみ124及び負の反転距離を用いて、移植片は、バックル100が反転したとき、移植片ソケット54の端部に到達する。反転が完了し、バックル100が骨に接触して位置決めされた後、ループ115は、ループ115における引っ張り力により移植片を引っ張ってそれに対する接触力でソケット54の端部55と接触させ、それによって、完了した修復の骨との移植片接触面積を最大化するように、反転中のその位置に対して上方に引っ張られる。先行技術の装置では、移植片と骨との間の内方成長を達成するのに十分な程度に移植片を骨表面と接触させないので、この骨表面55は浪費される。
【0030】
ループ115は、好ましくは、連続閉ループである。編組み等を介したこのような構造の形成は、中子114の周囲に形成しなければならない場合、より困難になる。図5の設計では、ループ115は、単独で形成してよく(より容易である)、次いで、バックル100上に線118を配置する前に中子114上を滑動させてよい。これにより、製造が簡略化される。
【0031】
バックルに対する改良及び変形態様は、第2の側部が第1の側部をミラーリングするように両側に延在するスロットと、両端から中央へ向かって下方に傾斜する保持中子とを有し得る。これにより、外科医は、バックルをトンネル50に通していずれか一方の端部から引っ張り上げることができる。また、保持中子の上側表面に丸みをつけてもよく、そうすることによって、ループ14を上に載せて擦傷を軽減できるようにループ14に対して良好な表面が提供される。
【0032】
スロット32に沿って摺動するときに、上側表面42に沿って、又はループ14に係合し得るバックル12の他の領域に沿って、例えば、針毛突起(barb)(図示せず)を備えることによって、ループ14が中間点38から離れる方向へ移動するのを防ぐ対策をとることもできる。中子は、中間点においてループ14を捕捉及び保持するために目立つくぼみを有してよい。
【0033】
バックルは、特にACL修復に適しているが、他の修復(例えば、上腕二頭筋腱の再接合)に有用であり得る。
【0034】
本発明について、その好ましい実施形態に関連して説明してきた。明らかに、先の詳細な説明を読み理解すると、修正及び変更が他者にも思いつくであろう。そのような修正及び変更が添付の特許請求の範囲及びその等価物の範疇に入る限り、本発明はそのような修正及び変更の全てを含むと解釈されるものとする。
【0035】
〔実施の態様〕
(1) 移植片保持装置であって、
第1の端部及び第2の端部、その間の中間点、並びに上側表面及び下側表面を有する、細長い本体と、
前記上側表面から前記下側表面まで前記本体を貫通する一対の細長いスロットであって、前記スロットはその間に中子を画定している、一対の細長いスロットと、
前記中子の上に配置され、前記第1の端部により近接している第1の位置から前記中間点により近接している第2の位置まで、前記中子に沿って摺動可能である、移植片保持ループと、
前記スロットに隣接する前記本体に接続し、前記移植片保持ループが前記第1の位置にあるとき、前記移植片保持ループを通過して前記第1の端部に向かって前記本体から延在する後端糸であって、よって、前記後端糸に印加される引っ張り力が、前記移植片保持ループを前記第1の位置から離れて前記第2の位置に向かって付勢する傾向があるようになっている、後端糸と、を含む、移植片保持装置。
(2) 前記後端糸が、前記中子に取り付けられている、実施態様1に記載の移植片保持装置。
(3) 前記中子を貫通する第1の開口部を更に含み、前記後端糸が、前記第1の開口部を貫通することによって前記中子に接続されている、実施態様2に記載の移植片保持装置。
(4) 前記第1の開口部が、前記中子を横方向に貫通する、実施態様3に記載の移植片保持装置。
(5) 前記第1の開口部が、前記中子を貫通するスロットを構成するように前記中子に沿って縦方向に伸びていて、それによって、前記本体を再配向するために前記後端糸に印加される引っ張り力が、前記後端糸を前記中間点に向かって付勢し、かつ前記移植片保持ループを前記第2の位置に向かって付勢することを更に強化する傾向がある、実施態様3に記載の移植片保持装置。
【0036】
(6) 前記第2の端部において前記本体に接続された前端糸を更に含む、実施態様1に記載の移植片保持装置。
(7) 前記中子が、前記第1の端部から離れる方向で下方に傾斜する、実施態様1に記載の移植片保持装置。
(8) 無菌である、実施態様1に記載の移植片保持装置。
(9) 前記第2の位置が、前記細長い本体の第1の端部と第2の端部との間の前記細長い本体の長さの中央25%の範囲内に位置する、実施態様1に記載の移植片保持装置。
(10) 前記細長いスロットが、前記中子を通過し前記本体に取り付けられた保持糸を介して前記第1の端部において閉じられる、実施態様1に記載の移植片保持装置。
【0037】
(11) 前記保持糸は、前記移植片保持ループが前記第1の位置にあるときに、前記本体の前記第1の端部を超えて延在し、それによって、前記移植片保持装置の反転距離を最小化する、実施態様8に記載の移植片保持装置。
(12) 移植片靭帯を骨トンネル内に固定するための方法であって、
a)細長い固定バックルの中子の上に摺動可能に配置されたループ上に前記移植片靱帯を配置することによって移植片構造物を形成する工程であって、前記ループが、前記バックルの第1の端部により近い第1の位置から前記バックルの中間点により近い第2の位置まで前記中子に沿って摺動可能である、工程と、
b)前記バックルの第2の端部が先頭にある状態で、前記移植片構造物を前記骨トンネルを通して引っ張り上げる工程と、
c)前記バックルを前記トンネルを通して引っ張った後、前記本体に接続している後端糸に引っ張り力を印加し、前記ループを通って前記第2の位置から離れる方向に通過させる工程であって、前記引っ張り力が前記ループを前記第2の位置に向かって付勢し、また、前記ループが前記バックル上の前記第2の位置から前記トンネルの中に垂下している状態で、前記トンネルに隣接する骨上において前記トンネルに対して横方向になるように前記バックルを再配向する、工程と、を含む、方法。
(13) 前記後端糸が、前記中子において前記本体に接続される、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記後端糸が、前記中子を貫通する後端糸開口部を通して受容されることによって前記中子に接続される、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記後端糸が、工程c)の後に除去される、実施態様12に記載の方法。
【0038】
(16) 前記工程b)が、前記バックルの前記第2の端部において前端糸開口部を通して受容される前端糸を介して実施される、実施態様12に記載の方法。
(17) 前記バックルの上側表面の上の前記ループの少なくとも一部は、前記ループがその第1の位置にあるときに、前記バックルの前記第1の端部を超えて延在する、実施態様12に記載の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5