(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482826
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】熱源システム及びその制御装置並びに制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/46 20180101AFI20190304BHJP
F24F 11/62 20180101ALI20190304BHJP
F24F 11/85 20180101ALI20190304BHJP
【FI】
F24F11/46
F24F11/62
F24F11/85
【請求項の数】26
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-230033(P2014-230033)
(22)【出願日】2014年11月12日
(65)【公開番号】特開2016-95053(P2016-95053A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 智
(72)【発明者】
【氏名】大内 敏昭
(72)【発明者】
【氏名】松尾 実
(72)【発明者】
【氏名】立石 浩毅
【審査官】
佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−058660(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/050195(WO,A1)
【文献】
特開昭64−090939(JP,A)
【文献】
特開2010−243092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/46
F24F 11/62
F24F 11/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、
各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御手段と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更手段と、
各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分手段と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更手段と
を備え、
前記台数制御手段は、要求負荷と増段閾値とに応じて増段の要否を判定し、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力劣化機が出力可能な能力に応じて前記増段閾値を変更する増段閾値変更手段を備える熱源システムの制御装置。
【請求項2】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、
各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御手段と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更手段と、
各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分手段と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更手段と
を備え、
前記台数制御手段は、要求負荷と減段閾値とに応じて減段の要否を判定し、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力劣化機が出力可能な能力に応じて前記減段閾値を変更する減段閾値変更手段を備える熱源システムの制御装置。
【請求項3】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、
各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分手段と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更手段と、
要求負荷と増段閾値とに応じて増段の要否を判定する台数制御手段と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力劣化機が出力可能な能力に応じて前記増段閾値を変更する増段閾値変更手段と
を具備する熱源システムの制御装置。
【請求項4】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、
各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分手段と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更手段と、
要求負荷と減段閾値とに応じて減段の要否を判定する台数制御手段と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力劣化機が出力可能な能力に応じて前記減段閾値を変更する減段閾値変更手段と
を具備する熱源システムの制御装置。
【請求項5】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、
各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御手段と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更手段と
を具備し、
前記劣化機検出手段は、定常状態において、前記熱源機の熱媒出口温度と熱媒出口設定温度との差が予め設定されている閾値以上であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、前記能力劣化条件を満たすと判定する熱源システムの制御装置。
【請求項6】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、
各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分手段と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更手段と
を具備し、
前記劣化機検出手段は、定常状態において、前記熱源機の熱媒出口温度と熱媒出口設定温度との差が予め設定されている閾値以上であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、前記能力劣化条件を満たすと判定する熱源システムの制御装置。
【請求項7】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、
各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御手段と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更手段と
を具備し、
前記劣化機検出手段は、定常状態において、前記熱源機が備える所定の構成要素に係るパラメータが定格値であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、前記能力劣化条件を満たすと判定する熱源システムの制御装置。
【請求項8】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、
各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分手段と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更手段と
を具備し、
前記劣化機検出手段は、定常状態において、前記熱源機が備える所定の構成要素に係るパラメータが定格値であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、前記能力劣化条件を満たすと判定する熱源システムの制御装置。
【請求項9】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、
各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御手段と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更手段と
を具備し、
前記劣化機検出手段は、能力発揮が制限されている状態にある熱源機を前記能力劣化機の判定対象から除外する熱源システムの制御装置。
【請求項10】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、
各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分手段と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更手段と
を具備し、
前記劣化機検出手段は、能力発揮が制限されている状態にある熱源機を前記能力劣化機の判定対象から除外する熱源システムの制御装置。
【請求項11】
前記熱媒送出温度が前記設定温度から乖離することにより予め設定された強制増段の条件を満たすか否かを判定する強制増段判定手段と、
前記強制増段の条件を満たすと判定された場合に、強制増段を行う強制増段手段と
を具備する請求項1から請求項10のいずれかに記載の熱源システムの制御装置。
【請求項12】
前記強制増段判定手段は、定常状態において、熱媒送出温度と設定温度との差分または熱媒送出温度と設定温度との差分の比例積分値が、予め設定されている強制増段閾値以上である状態が所定期間継続した場合に、前記強制増段の条件を満たすと判定する請求項11に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項13】
前記強制増段手段は、運転を停止している前記熱源機のうち、起動から能力発揮までの時間が短い熱源機を優先させて起動させる請求項11または請求項12に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項14】
前記強制増段手段は、運転を停止している前記熱源機のうち、要求負荷の不足分よりも大きな出力可能上限値を有する熱源機を優先的に起動させる請求項11または請求項12に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれかに記載の熱源システムの制御装置を備える熱源システム。
【請求項16】
前記能力劣化機が検出されたことを報知する報知手段を備える請求項15に記載の熱源システム。
【請求項17】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、
各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御過程と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更過程と、
各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分過程と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更過程と
を有し、
前記台数制御過程は、要求負荷と増段閾値とに応じて増段の要否を判定し、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力劣化機が出力可能な能力に応じて前記増段閾値を変更する増段閾値変更過程を有する熱源システムの制御方法。
【請求項18】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、
各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御過程と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更過程と、
各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分過程と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更過程と
を有し、
前記台数制御過程は、要求負荷と減段閾値とに応じて減段の要否を判定し、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力劣化機が出力可能な能力に応じて前記減段閾値を変更する減段閾値変更過程を有する熱源システムの制御方法。
【請求項19】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、
各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分過程と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更過程と、
要求負荷と増段閾値とに応じて増段の要否を判定する台数制御過程と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力劣化機が出力可能な能力に応じて前記増段閾値を変更する増段閾値変更過程と
を具備する熱源システムの制御方法。
【請求項20】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、
各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分過程と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更過程と、
要求負荷と減段閾値とに応じて減段の要否を判定する台数制御過程と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力劣化機が出力可能な能力に応じて前記減段閾値を変更する減段閾値変更過程と
を有する熱源システムの制御方法。
【請求項21】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、
各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御過程と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更過程と
を有し、
前記劣化機検出過程は、定常状態において、前記熱源機の熱媒出口温度と熱媒出口設定温度との差が予め設定されている閾値以上であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、前記能力劣化条件を満たすと判定する熱源システムの制御方法。
【請求項22】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、
各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分過程と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更過程と
を具備し、
前記劣化機検出過程は、定常状態において、前記熱源機の熱媒出口温度と熱媒出口設定温度との差が予め設定されている閾値以上であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、前記能力劣化条件を満たすと判定する熱源システムの制御方法。
【請求項23】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、
各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御過程と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更過程と
を有し、
前記劣化機検出過程は、定常状態において、前記熱源機が備える所定の構成要素に係るパラメータが定格値であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、前記能力劣化条件を満たすと判定する熱源システムの制御方法。
【請求項24】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、
各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分過程と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更過程と
を具備し、
前記劣化機検出過程は、定常状態において、前記熱源機が備える所定の構成要素に係るパラメータが定格値であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、前記能力劣化条件を満たすと判定する熱源システムの制御方法。
【請求項25】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、
各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御過程と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更過程と
を具備し、
前記劣化機検出過程は、能力発揮が制限されている状態にある熱源機を前記能力劣化機の判定対象から除外する熱源システムの制御方法。
【請求項26】
複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、
各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分過程と、
運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、
前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更過程と
を有し、
前記劣化機検出過程は、能力発揮が制限されている状態にある熱源機を前記能力劣化機の判定対象から除外する熱源システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源システム及びその制御装置並びに制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、並列に接続される複数の熱源機を備える熱源システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような熱源システムでは、一般的に、熱源機側から空調機やファンコイル等の外部負荷に送出される熱媒の温度(以下「熱媒送出温度」という。)が、外部負荷側の要求に応じて設定された設定温度(例えば、7℃)となるように、各熱源機の運転が行われる。
【0003】
このような熱源システムにおいて、運転中の熱源機に経年劣化等の理由により定格能力を発揮できない熱源機(以下「能力劣化機」という。)が含まれている場合、送水温度が設定値から大きく乖離してしまうおそれがある。
この問題に対し、例えば、特許文献1には、送水温度に対して閾値を設定し、閾値を超過した場合に、停止している熱源機を強制増段させることで、送水温度の上昇を防ぐことが開示されている。
また、特許文献1には、熱源機を強制増段させる強制増段温度設定値が通常の減段温度設定値よりも低い可能性があることを考慮して、強制増段後に強制増段温度設定値から所定温度を減算した値に減段温度設定値を再設定することで、熱源機の増減段の繰り返しを防ぐことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−18672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されている制御方法では、強制増段後の即減段を防止することができるものの、以下のような強制増段の繰り返し発生に対処することができないという問題があった。
例えば、送水温度上昇に伴って強制増段が発生し、その後に負荷が低下して減段処理が発生した場合に、能力劣化機以外の熱源機が減段処理されてしまうと、運転中の熱源機には能力劣化機が含まれた状態が維持される。この状態で、再度負荷が上昇すると、能力劣化機の影響によって送水温度が再度上昇し、強制増段が再度発生することとなる。そして、このような事態が繰り返し発生することにより、熱源機の増減段が頻繁に繰り返されることとなる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、熱源システムに能力劣化機が含まれることに起因する増減段の頻繁な繰り返しを回避することのできる熱源システム及びその制御装置並びに制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御手段と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更手段と
、各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分手段と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更手段とを備え、前記台数制御手段は、要求負荷と増段閾値とに応じて増段の要否を判定し、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力劣化機が出力可能な能力に応じて前記増段閾値を変更する増段閾値変更手段を備える熱源システムの制御装置である。
【0008】
上記熱源システムの制御装置によれば、能力劣化機が検出された場合に、その能力劣化機の運転優先順序が最下位に変更される。これにより、台数制御手段による減段処理が発生した場合には、能力劣化機を優先的に停止させることができ、更に、増段処理においては、能力劣化機以外の熱源機を能力劣化機よりも優先させて起動させることができる。これにより、能力劣化機が運転される機会を可能な限り減らすことができる。この結果、運転中の熱源機の中に能力劣化機が含まれることに起因する増減段の頻繁な繰り返しを回避することが可能となる。
更に、上記熱源システムの制御装置によれば、能力劣化機に対して能力以上の負荷が割り当てられることを防止することができる。この結果、能力劣化機の熱媒出口温度が熱媒出口設定温度から乖離することを防止することができ、ひいては、熱媒送出温度が設定温度から乖離することを防止することが可能となる。
ここで、「出力可能上限値」とは、熱源機が出力可能な最大能力として設定されている値であり、例えば、定格能力が挙げられる。また、「出力可能上限値」は、出力可能な最大能力であってもよく、または、定格能力あるいは出力可能な最大能力に基づいて決定される値であってもよい。
更に、上記熱源システムの制御装置によれば、台数制御に参照される増段閾値についても能力劣化機の出力可能な能力に応じて変更されるので、現在の熱源システムの能力に応じて適切なタイミングで増段処理を行うことが可能となる。
【0009】
本発明の第2態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御手段と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更手段と、各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分手段と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更手段とを備え、前記台数制御手段は、要求負荷と減段閾値とに応じて減段の要否を判定し、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力劣化機が出力可能な能力に応じて前記減段閾値を変更する減段閾値変更手段を備える熱源システムの制御装置である。
【0010】
上記熱源システムの制御装置によれば、能力劣化機が検出された場合に、その能力劣化機の運転優先順序が最下位に変更される。これにより、台数制御手段による減段処理が発生した場合には、能力劣化機を優先的に停止させることができ、更に、増段処理においては、能力劣化機以外の熱源機を能力劣化機よりも優先させて起動させることができる。これにより、能力劣化機が運転される機会を可能な限り減らすことができる。この結果、運転中の熱源機の中に能力劣化機が含まれることに起因する増減段の頻繁な繰り返しを回避することが可能となる。
更に、上記熱源システムの制御装置によれば、能力劣化機に対して能力以上の負荷が割り当てられることを防止することができる。この結果、能力劣化機の熱媒出口温度が熱媒出口設定温度から乖離することを防止することができ、ひいては、熱媒送出温度が設定温度から乖離することを防止することが可能となる。
ここで、「出力可能上限値」とは、熱源機が出力可能な最大能力として設定されている値であり、例えば、定格能力が挙げられる。また、「出力可能上限値」は、出力可能な最大能力であってもよく、または、定格能力あるいは出力可能な最大能力に基づいて決定される値であってもよい。
更に、上記熱源システムの制御装置によれば、台数制御に参照される減段閾値についても能力劣化機の出力可能な能力に応じて変更されるので、現在の熱源システムの能力に応じて適切なタイミングで減段処理を行うことが可能となる。
【0015】
本発明の第
3態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分手段と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更手段と、
要求負荷と増段閾値とに応じて増段の要否を判定する台数制御手段と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力劣化機が出力可能な能力に応じて前記増段閾値を変更する増段閾値変更手段とを具備する熱源システムの制御装置である。
【0016】
上記熱源システムの制御装置によれば、能力劣化機が検出された場合には、能力情報における当該能力劣化機の出力可能上限値が低下させられる。これにより、能力劣化機に対して能力以上の負荷が割り当てられることを回避することができる。これにより、能力劣化機の熱媒出口温度が熱媒出口設定温度から乖離することを未然に防ぐことができ、ひいては、熱媒送出温度が設定温度から乖離することを防止することができる。この結果、熱源機の増減段が頻繁に繰り返されるのを未然に防ぐことが可能となる。
更に、上記熱源システムの制御装置によれば、台数制御に参照される増段閾値についても能力劣化機の出力可能な能力に応じて変更されるので、現在の熱源システムの能力に応じて適切なタイミングで増段処理を行うことが可能となる。
【0019】
本発明の第4態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分手段と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更手段と、要求負荷と減段閾値とに応じて減段の要否を判定する台数制御手段と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力劣化機が出力可能な能力に応じて前記減段閾値を変更する減段閾値変更手段とを具備する熱源システムの制御装置である。
【0020】
上記熱源システムの制御装置によれば、能力劣化機が検出された場合には、能力情報における当該能力劣化機の出力可能上限値が低下させられる。これにより、能力劣化機に対して能力以上の負荷が割り当てられることを回避することができる。これにより、能力劣化機の熱媒出口温度が熱媒出口設定温度から乖離することを未然に防ぐことができ、ひいては、熱媒送出温度が設定温度から乖離することを防止することができる。この結果、熱源機の増減段が頻繁に繰り返されるのを未然に防ぐことが可能となる。
更に、上記熱源システムの制御装置によれば、台数制御に参照される減段閾値についても能力劣化機の出力可能な能力に応じて変更されるので、現在の熱源システムの能力に応じて適切なタイミングで減段処理を行うことが可能となる。
【0021】
本発明の第5態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御手段と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更手段とを具備し、前記劣化機検出手段は、定常状態において、前記熱源機の熱媒出口温度と熱媒出口設定温度との差が予め設定されている閾値以上であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、前記能力劣化条件を満たすと判定する熱源システムの制御装置である。
本発明の第6態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分手段と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更手段とを具備し、前記劣化機検出手段は、定常状態において、前記熱源機の熱媒出口温度と熱媒出口設定温度との差が予め設定されている閾値以上であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、前記能力劣化条件を満たすと判定する熱源システムの制御装置である。
【0022】
本発明の第7態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御手段と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更手段とを具備し、前記劣化機検出手段は、定常状態において、前記熱源機が備える所定の構成要素に係るパラメータが定格値であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、前記能力劣化条件を満たすと判定する熱源システムの制御装置である。
本発明の第8態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分手段と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更手段とを具備し、前記劣化機検出手段は、定常状態において、前記熱源機が備える所定の構成要素に係るパラメータが定格値であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、前記能力劣化条件を満たすと判定する熱源システムの制御装置である。
【0023】
本発明の第9態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御手段と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更手段とを具備し、前記劣化機検出手段は、能力発揮が制限されている状態にある熱源機を前記能力劣化機の判定対象から除外する熱源システムの制御装置である。
本発明の第10態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御装置であって、各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分手段と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出手段と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更手段とを具備し、前記劣化機検出手段は、能力発揮が制限されている状態にある熱源機を前記能力劣化機の判定対象から除外する熱源システムの制御装置である。
【0024】
例えば、デマンド制御中の熱源機のように、能力発揮が制限されている状態にある熱源機は、出力可能上限値以下で運転することがあり、上記の能力劣化条件を満たしてしまう可能性がある。上記熱源システムの制御装置によれば、能力発揮が制限されている状態にある熱源機については、能力劣化機の判定対象から除外するので、能力発揮が制限されている状態にある熱源機を能力劣化機として誤検知することを防止することが可能となる。
【0025】
上記熱源システムの制御装置は、前記熱媒送出温度が前記設定温度から乖離することにより予め設定された強制増段の条件を満たすか否かを判定する強制増段判定手段と、前記強制増段の条件を満たすと判定された場合に、強制増段を行う強制増段手段とを更に備えていてもよい。
【0026】
上記熱源システムの制御装置によれば、熱媒送出温度が設定温度から乖離することにより予め設定された強制増段の条件を満たす場合には、熱源機が強制的に増段される。これにより、熱媒送出温度を設定温度に速やかに近づけることが可能となる。
【0027】
上記熱源システムの制御装置において、前記強制増段判定手段は、定常状態において、熱媒送出温度と設定温度との差分または熱媒送出温度と設定温度との差分の比例積分値が、予め設定されている強制増段閾値以上である状態が所定期間継続した場合に、前記強制増段の条件を満たすと判定することとしてもよい。
【0028】
上記熱源システムの制御装置において、前記強制増段手段は、運転を停止している前記熱源機のうち、起動から能力発揮までの時間が短い熱源機を優先させて起動させることとしてもよい。
【0029】
上記熱源システムの制御装置によれば、強制増段の場合には、起動から能力発揮までの時間が短い熱源機を優先されて起動させるので、熱媒送出温度を設定温度に近づけるまでの時間を短縮することが可能となる。
【0030】
上記熱源システムの制御装置において、前記強制増段手段は、運転を停止している前記熱源機のうち、要求負荷の不足分よりも大きな出力可能上限値を有する熱源機を優先的に起動させることとしてもよい。
【0031】
上記熱源システムの制御装置によれば、可能な限り起動させる熱源機の台数を少なくすることができる。
【0032】
本発明の第
11態様は、上述の熱源システムの制御装置を備える熱源システムである。
【0033】
上記熱源システムは、前記能力劣化機が検出されたことを報知する報知手段を備えていてもよい。
【0034】
上記熱源システムによれば、能力劣化機が検出されたことをユーザに報知することが可能となる。
【0035】
本発明の第
12態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御過程と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更過程と
、各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分過程と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更過程とを有し、前記台数制御過程は、要求負荷と増段閾値とに応じて増段の要否を判定し、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力劣化機が出力可能な能力に応じて前記増段閾値を変更する増段閾値変更過程を有する熱源システムの制御方法である。
【0036】
本発明の第
13態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、各前記熱源機と
運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御過程と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更過程と、各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分過程と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更過程とを有し、前記台数制御過程は、要求負荷と減段閾値とに応じて減段の要否を判定し、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力劣化機が出力可能な能力に応じて前記減段閾値を変更する減段閾値変更過程を有する熱源システムの制御方法である。
本発明の第14態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分過程と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更過程と、要求負荷と増段閾値とに応じて増段の要否を判定する台数制御過程と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力劣化機が出力可能な能力に応じて前記増段閾値を変更する増段閾値変更過程とを具備する熱源システムの制御方法である。
本発明の第15態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分過程と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更過程と、要求負荷と減段閾値とに応じて減段の要否を判定する台数制御過程と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力劣化機が出力可能な能力に応じて前記減段閾値を変更する減段閾値変更過程とを有する熱源システムの制御方法である。
本発明の第16態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御過程と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更過程とを有し、前記劣化機検出過程は、定常状態において、前記熱源機の熱媒出口温度と熱媒出口設定温度との差が予め設定されている閾値以上であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、前記能力劣化条件を満たすと判定する熱源システムの制御方法である。
本発明の第17態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分過程と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更過程とを具備し、前記劣化機検出過程は、定常状態において、前記熱源機の熱媒出口温度と熱媒出口設定温度との差が予め設定されている閾値以上であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、前記能力劣化条件を満たすと判定する熱源システムの制御方法である。
本発明の第18態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御過程と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更過程とを有し、前記劣化機検出過程は、定常状態において、前記熱源機が備える所定の構成要素に係るパラメータが定格値であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、前記能力劣化条件を満たすと判定する熱源システムの制御方法である。
本発明の第19態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分過程と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更過程とを具備し、 前記劣化機検出過程は、定常状態において、前記熱源機が備える所定の構成要素に係るパラメータが定格値であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、前記能力劣化条件を満たすと判定する熱源システムの制御方法である。
本発明の第20態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、各前記熱源機と運転優先順位とが対応付けられている運転優先順位情報に従って、前記熱源機の台数制御を行う台数制御過程と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記運転優先順位情報における前記能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する優先順位変更過程とを具備し、前記劣化機検出過程は、能力発揮が制限されている状態にある熱源機を前記能力劣化機の判定対象から除外する熱源システムの制御方法である。
本発明の第21態様は、複数の熱源機を備える熱源システムに適用され、外部負荷へ供給する熱媒の温度である熱媒送出温度が設定温度となるように、前記熱源機を制御する熱源システムの制御方法であって、各前記熱源機と出力可能上限値とが対応付けられている能力情報を用いて、各前記熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷配分を行う負荷配分過程と、運転中の前記熱源機のうち、予め設定された能力劣化条件を満たす熱源機を能力劣化機として検出する劣化機検出過程と、前記能力劣化機が検出された場合に、前記能力情報における前記能力劣化機の出力可能上限値を低下させる能力変更過程とを有し、前記劣化機検出過程は、能力発揮が制限されている状態にある熱源機を前記能力劣化機の判定対象から除外する熱源システムの制御方法である。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、熱源システムに能力劣化機が含まれることに起因する増減段の頻繁な繰り返しを回避することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る熱源システムの構成を概略的に示した図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る熱源システムの制御系の構成を概略的に示した図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る上位制御装置が備える機能の一部を示した機能ブロック図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る熱源システムの制御方法の手順を示したフローチャートである。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る上位制御装置が備える機能の一部を示した機能ブロックである。
【
図6】増段閾値変更部及び減段閾値変更部によって変更された後の増段閾値及び減段閾値について説明するための図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る熱源システムの制御方法の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る熱源システム及びその制御装置並びに制御方法について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱源システムの構成を概略的に示した図である。熱源システム1は、例えば、空調機や給湯機、工場設備等の外部負荷2に対して供給する熱媒(冷水)を加熱または冷却する複数の熱源機10(10a、10b、10c)(以下、各熱源機を区別しないときは単に符号「10」を付し、各熱源機を区別して示すときは符号「10a」、「10b」等を付す。他の構成についても同様。)を備えている。これら熱源機10a、10b、10cは、外部負荷2に対して並列に接続されている。また、
図1では、3台の熱源機10a、10b、10cが設置されている場合について例示しているが、熱源機10の設置台数については任意に決定できる。
熱源機10は、同機種及び同容量であってもよいし、異なる機種や異なる容量のものが混在していてもよい。熱源機の一例としては、ターボ冷凍機、吸収冷凍機などが挙げられる。
【0040】
熱媒流れからみた各熱源機10a、10b、10cの上流側には、それぞれ、熱媒を圧送するポンプ3(3a、3b、3c)が設置されている。これらポンプ3a、3b、3cによって、リターンヘッダ4からの熱媒が各熱源機10a、10b、10cへと送られる。各ポンプ3a、3b、3cは、インバータモータ(図示略)によって駆動されるようになっており、これにより、回転数を可変とすることで可変流量制御される。
【0041】
サプライヘッダ5には、各熱源機10a、10b、10cにおいて冷却または加熱された熱媒が集められるようになっている。サプライヘッダ5に集められた熱媒は、外部負荷2に供給される。外部負荷2にて空調等に供されて昇温または冷却された熱媒は、リターンヘッダ4に送られる。熱媒は、リターンヘッダ4において分岐され、各熱源機10a、10b、10cに再び送られることとなる。
【0042】
サプライヘッダ5とリターンヘッダ4との間にはバイパス配管6が設けられている。バイパス配管6には、バイパス流量を調整するためのバイパス弁7が設けられている。
各熱源機10a、10b、10cの熱媒出口側には、熱媒出口温度を計測する温度センサ13a、13b、13cがそれぞれ設けられている。また、サプライヘッダ5の熱媒流れの下流側には外部負荷2に送出される熱媒の温度である熱媒送出温度を計測するための温度センサ15が設けられている。
【0043】
図2は、
図1に示した熱源システム1の制御系の構成を概略的に示した図である。
図2に示すように、各熱源機10a、10b、10cの制御装置である熱源機制御装置8a、8b、8cは、上位制御装置20と通信媒体17を介して接続されており、双方向の通信が可能な構成とされている。
上位制御装置20は、熱源システム全体を制御する制御装置であり、熱媒送出温度が外部負荷2の要求によって決定される設定温度となるように熱源システム1を制御する。具体的には、熱源機10a、10b、10cの出口温度制御、外部負荷2の要求負荷に基づく熱源機の運転台数制御、運転中の熱源機に負荷を割り当てる負荷配分制御、各ポンプ3a、3b、3cの流量制御、サプライヘッダ5とリターンヘッダ4との間の差圧に基づくバイパス弁7の弁開度制御等を行う。また、このような制御を実現するために、上位制御装置20には、温度センサ13a〜13cにより計測された各熱源機10a、10b、10cの熱媒出口温度及び熱媒送出温度が入力されるような構成とされている。これらの情報は、熱源機制御装置8a〜8cを介して上位制御装置20に入力されてもよいし、上位制御装置20に直接的に入力されてもよい。
【0044】
上位制御装置20及び熱源機制御装置8a、8b、8cは、例えば、コンピュータであり、CPU(中央演算処理装置)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、補助記憶装置、外部の機器と通信を行うことにより情報の授受を行う通信装置などを備えている。補助記憶装置は、コンピュータ読取可能な記録媒体であり、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。この補助記憶装置には、各種プログラムが格納されており、CPUが補助記憶装置から主記憶装置にプログラムを読み出し、実行することにより種々の処理を実現させる。
【0045】
図3は、上位制御装置20が備える機能の一部を示した機能ブロック図である。
図3に示すように、上位制御装置20は、記憶部21、台数制御部22、負荷配分部23、劣化機検出部24、優先順位変更部25、強制増段判定部26、及び強制増段部27を備えている。
【0046】
記憶部21には、各熱源機10a、10b、10cについての運転優先順位が設定された運転優先順位テーブル(運転優先順位情報)、各熱源機10a、10b、10cについての出力可能上限値が設定された能力テーブル(能力情報)、増段処理を行う際の基準となる増段閾値、及び減段処理を行う際の基準となる減段閾値等が格納されている。ここで、運転優先順位テーブル等は、書き換え可能とされている。
【0047】
台数制御部22は、熱源機10の台数制御を行う。例えば、台数制御部22は、記憶部21に格納されている増段閾値と要求負荷とを比較し、要求負荷が増段閾値を超える場合に停止中の熱源機を起動させる増段処理を行う。また、台数制御部22は、記憶部21に格納されている減段閾値と要求負荷とを比較し、要求負荷が減段閾値を下回る場合に運転中の熱源機を停止させる減段処理を行う。また、増段処理及び減段処理に際しては、記憶部21に格納されている運転優先順位テーブルに従って、起動させる熱源機10および停止させる熱源機を決定する。
【0048】
負荷配分部23は、記憶部21に格納されている能力テーブルを参照し、各熱源機の出力可能上限値を超えないように負荷を配分する。例えば、熱源機10a〜10cが同機種、同容量の場合には当配分することで負荷を割り当てる。また、異なる容量や異なる機種の熱源機が混在している場合には、負荷配分部23は、例えば、成績係数(COP)が所定値以上となるような最適負荷率範囲の情報を各熱源機に対応して予め設定しておき、各熱源機の負荷率がそれぞれの最適負荷率範囲となるように負荷を配分する。このように、成績係数を考慮した負荷配分を行うことで、省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0049】
劣化機検出部24は、運転中の熱源機10のうち、所定の能力劣化条件を満たす熱源機10を能力劣化機として検出する。劣化機検出部24は、例えば、運転中の熱源機10の熱媒出口温度と熱媒出口設定温度との差が予め設定されている閾値以上であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、能力劣化条件を満たすと判定し、当該熱源機10を能力低下機として検出する。
【0050】
ここで、熱媒冷却時においては、熱媒出口温度が熱媒出口設定温度より低い場合は特に問題視する必要がなく、熱媒加熱時においては、熱媒出口温度が熱媒出口設定温度より高い場合は特に問題視する必要がない。したがって、熱媒冷却時においては熱媒出口温度が熱媒出口設定温度よりも閾値以上高いか否か、冷媒加熱時においては熱媒出口温度が熱媒出口設定温度よりも所定値以上低いか否かを判定することとしてもよい。
上記能力劣化条件を式で表すと以下の通りである。
【0051】
〔能力劣化条件〕
熱媒出口温度−熱媒出口設定温度≧閾値 (熱媒冷却時)
熱媒出口設定温度−熱媒出口温度≧閾値 (熱媒加熱時)
かつ、
現在の能力<出力可能上限値
【0052】
劣化機検出部24は、上記条件を満たす熱源機が存在する場合には、その熱源機を能力劣化機として検出する。
なお、デマンド制御中の熱源機のように、能力発揮が制限されている状態にある熱源機は、出力可能上限値以下で運転することがあり、上記の能力劣化条件を満たしてしまう可能性がある。したがって、能力発揮が制限されている状態にある熱源機については、能力劣化機の判定対象から除外する。これにより、能力発揮が制限されている状態にある熱源機(例えば、デマンド制御中の熱源機)を能力劣化機として誤検知することを防止することができる。
【0053】
また、能力劣化条件については上記例に限られない。例えば、熱源機10が備える所定の構成要素に係る各種パラメータ(例えば、ターボ冷凍機であれば、蒸発器圧力、圧縮機ベーン開度、圧縮機回転数等)が定格値であり、かつ、現在の能力が出力可能上限値未満である場合に、能力劣化条件を満たすと判定することとしてもよい。
【0054】
優先順位変更部25は、劣化機検出部24によって能力劣化機が検出された場合に、記憶部21に格納されている運転優先順位テーブルにおける当該能力劣化機の運転優先順位を最下位に変更する。
【0055】
強制増段判定部26は、熱媒送出温度が設定温度から乖離することにより、予め設定された強制増段条件を満たすか否かを判定する。具体的には、強制増段判定部26は、定常状態において、熱媒送出温度と設定温度との差が強制増段閾値以上である状態が所定期間継続した場合に、強制増段条件を満たすと判定する。
ここで、熱媒冷却時においては、熱媒送出温度が設定温度より低い場合は特に増段を行う必要がなく、熱媒加熱時においては、熱媒送出温度が設定温度より高い場合は特に増段を行う必要がない。したがって、熱媒冷却時においては熱媒送出温度が設定温度よりも強制増段閾値以上高いか否か、冷媒加熱時においては熱媒送出温度が設定温度よりも強制増段閾値以上低いか否かを判定すればよい。
上記強制増段条件を式で表すと以下の通りである。
【0056】
〔強制増段条件〕
熱媒送出温度−設定温度≧強制増段閾値(熱媒冷却時)の状態が所定期間継続
設定温度−熱媒送出温度≧強制増段閾値(熱媒加熱時)の状態が所定期間継続
【0057】
なお、強制増段条件については、上記例に限られない。例えば、熱媒送出温度と設定温度との差に代えて、熱媒送出温度と設定温度との比例積分値を用いることとしてもよい。
【0058】
強制増段部27は、強制増段判定部26によって強制増段条件を満たすと判定された場合に、強制増段を行う。ここで、強制増段の場合には、記憶部21に格納されている運転優先順位テーブルに従って起動させる熱源機を選択するのではなく、他の基準に基づいて起動させる熱源機を選択してもよい。例えば、強制増段の場合には、既に熱媒送出温度が設定温度から乖離しているため、早急に熱源機を起動させて、熱媒送水温度を設定温度に近づける必要がある。したがって、この観点から、例えば、起動から能力発揮までの時間が短い機種(例えば、ターボ冷凍機)を優先的に立ちあげることとしてもよい。
【0059】
また、起動の速さという観点ではなく、要求負荷の不足分をできるだけ少ない数の熱源機で賄うという観点から、要求負荷の不足分よりも大きな出力可能上限値を有する熱源機を優先的に起動させることとしてもよい。
【0060】
次に、
図3に示した本実施形態に係る上位制御装置20により実行される熱源システムの制御方法について
図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係る熱源システムの制御方法の手順を示したフローチャートである。上位制御装置20は、
図4に示した処理を一定の時間間隔で繰り返し行う。なお、以下の処理は、例えば、台数制御部22による台数制御や負荷配分部23による負荷配分制御と並行して行われてもよい。
【0061】
まず、定常状態であるか否かを判定する(ステップSA1)。これは、過渡的な状態にある場合には、熱媒送出温度等の状態が安定していないため、誤検知を行う可能性があるからである。定常状態であるか否かは、例えば、前回の熱源機起動または停止から一定時間が経過しているか否か、または、熱媒送出温度が設定温度付近に到達してから所定期間が経過したか否か等の判定基準を用いて判定する。
【0062】
この結果、定常状態でないと判定した場合には(ステップSA1において「NO」)、当該処理を終了する。一方、定常状態であると判定した場合には(ステップSA1において「YES」)、強制増段条件を満たすか否かを判定する(強制増段判定部:ステップSA2)。この結果、強制増段条件を満たさないと判定した場合には(ステップSA2において「NO」)、ステップSA4に移行する。一方、強制増段条件を満たすと判定した場合には(ステップSA2において「YES」)、強制増段を行う(強制増段部:ステップSA3)。続いて、能力劣化機を検出する(劣化機検出部:ステップSA4)。この結果、能力劣化機がある場合には(ステップSA4において「YES」)、記憶部21に格納されている運転優先順位テーブルにおける能力劣化機の優先順位を最下位に変更し(優先順位変更部:ステップSA5)、当該処理を終了する。一方、能力劣化機がない場合には(ステップSA4において「NO」)、運転優先順位テーブルの変更を行わずに、当該処理を終了する。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る熱源システム及びその制御装置並びに制御方法によれば、外部負荷2への熱媒送出温度と設定温度との差が強制増段閾値以上である場合に、熱源機を強制増段させるとともに、能力劣化機がある場合には、その能力劣化機の運転優先順序を最下位に変更する。これにより、台数制御部22による減段処理が発生した場合には、能力劣化機を優先的に停止させることができ、更に、増段処理においては、能力劣化機以外の熱源機を能力劣化機よりも優先させて起動させることができる。これにより、能力劣化機が運転される機会を可能な限り減らすことができる。この結果、運転中の熱源機の中に能力劣化機が含まれることに起因する増減段の頻繁な繰り返しを回避することが可能となる。
【0064】
なお、
図4に例示されるフローでは、強制増段の有無にかかわらず、能力劣化機の検出を毎回行うこととしたが、強制増段が行われた場合に限って、能力劣化機の検出を行うこととしてもよい。このようにすることで、能力劣化機の検出処理を行う頻度を低下させることができ、処理負担の軽減を図ることができる。
【0065】
また、本実施形態において、能力劣化機が検出された場合に、他の熱源機と能力劣化機とを入れ替えることとしてもよい。これにより、能力劣化機が検出された場合には、当該能力劣化機の運転を早期に停止させることができ、健全な熱源機による安定した運転を実現することが可能となる。
【0066】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る熱源システム及びその制御装置並びに制御方法について説明する。以下、上述した第1実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
図5に、本実施形態に係る熱源システムの上位制御装置30の機能ブロック図を示す。
図5に示すように、上位制御装置30は、記憶部21、台数制御部22、負荷配分部23、劣化機検出部24、能力変更部28、増段閾値変更部29、及び減段閾値変更部31を備えている。
【0067】
記憶部21、台数制御部22、負荷配分部23、劣化機検出部24については、上述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
能力変更部28は、劣化機検出部24によって能力劣化機が検出された場合に、記憶部21に格納されている能力テーブルにおける能力劣化機の出力可能上限値を低下させる。例えば、予め決定されている所定量、出力可能上限値を低下させることとしてもよいし、能力劣化機が出力可能な最大の能力がわかる場合には、能力テーブルの出力可能上限値を現在の出力可能な最大能力に変更してもよい。
【0068】
増段閾値変更部29は、能力劣化機が検出された場合に、能力劣化機の出力可能な最大能力に応じて記憶部21に格納されている増段閾値を変更する。例えば、能力劣化機の出力可能な最大能力Q
i´と現在の増段閾値Q
uiとを比較し、小さい方を能力劣化機の増段閾値として選択する。これにより、能力劣化機が混在した状態で熱源機がn台運転しているときの設備負荷に対する熱源システムの増段閾値XUは以下の(1)式で表される。なお、能力劣化機以外の熱源機、換言すると、定格能力を発揮可能な熱源機の増段閾値については、現在の増段閾値Q
uiが維持される。
【0070】
減段閾値変更部31は、能力劣化機が検出された場合に、能力劣化機の出力可能な最大能力に応じて記憶部21に格納されている減段閾値を変更する。例えば、能力劣化機の出力可能な最大能力Q
i´を用いて能力劣化機の減段閾値Q
di´を決定する。具体的には、以下の(2)式に示すように、能力劣化機の出力可能な最大能力Q
i´から不感体αを減算した値を能力劣化機の減段閾値Q
di´とする。
【0072】
次に、上記能力劣化機の減段閾値Q
di´と、現在の熱源機の減段閾値Q
diとを比較し、小さい方を能力劣化機の減段閾値とする。これにより、能力劣化機が混在した状態で熱源機がn台運転しているときの設備負荷に対する熱源システムの減段閾値XDは以下の(3)式で表される。なお、能力劣化機以外の熱源機、換言すると、定格能力を発揮可能な熱源機の減段閾値については、現在の減段閾値Q
diが維持される。
これにより、例えば、
図6に示すように、能力劣化機の増段閾値Q
ui´及び減段閾値Q
di´は、最大能力に応じて低下する方向にシフトされることとなる。
【0074】
また、減段閾値変更部31は、能力劣化機の出力可能な最大能力を考慮したn−1台運転時の熱源システムの増段閾値XU(n−1)と、能力劣化機の出力可能な最大能力を考慮したn台運転時の熱源システムの減段閾値XD(n)とを比較し、減段閾値XD(n)が増段閾値XU(n−1)以上である場合には、減段閾値XD(n)を増段閾値XU(n−1)以下となるように、減段閾値XD(n)を更に調整するとよい。これにより、能力劣化機に対して最大能力以上の負荷をかけることなく減段させることが可能となる。
【0075】
次に、本実施形態に係る上位制御装置30により実行される熱源システムの制御方法について
図7を参照して説明する。
図7は、上位制御装置30によって実行される熱源システムの制御方法の手順を示したフローチャートである。上位制御装置30は、
図7に示した処理を一定の時間間隔で繰り返し行う。
【0076】
まず、定常状態であるか否かを判定する(ステップSB1)。この結果、定常状態でないと判定した場合には(ステップSB1において「NO」)、当該処理を終了する。一方、定常状態であると判定した場合には(ステップSB1において「YES」)、能力劣化機を検出する(劣化機検出部:ステップSB2)。この結果、能力劣化機がない場合には(ステップSB2において「NO」)、ステップSB5に移行する。一方、能力劣化機がある場合には(ステップSB2において「YES」)、記憶部21に格納されている能力テーブルにおける能力劣化機の出力可能上限値を変更する(能力変更部:ステップSB3)。続いて、記憶部21に格納されている増段閾値及び減段閾値を必要に応じて変更する(増段閾値変更部・減段閾値変更部:ステップSB4)。
【0077】
次に、現在の要求負荷と現在の熱源システムの増段閾値XU(n)とを比較し、現在の要求負荷が現在の熱源システムの増段閾値XU(n)以下であるか否か、換言すると、現在の要求負荷を現在運転中の熱源機によって満足できるか否かを判定する(台数制御部:ステップSB5)。この結果、現在の要求負荷が現在の熱源システムの増段閾値XU(n)よりも大きい場合には(ステップSB5において「NO」)、熱源機を増段させる(台数制御部:ステップSB6)。
【0078】
一方、現在の要求負荷が現在の熱源システムの増段閾値XU(n)以下である場合には(ステップSB5において「YES」)、現在の要求負荷と現在の熱源システムの減段閾値XD(n)とを比較し、現在の要求負荷が現在の熱源システムの減段閾値XD(n)未満であるか否か、換言すると、運転中の熱源機のうち、優先順位の最も低い熱源機を減段させた場合でも、現在の要求負荷を満足できるか否かを判定する(台数制御部:ステップSB7)。この結果、現在の要求負荷が現在の熱源システムの減段閾値XD(n)未満である場合には(ステップSB7において「YES」)、熱源機を減段させる(台数制御部:ステップSB8)。
【0079】
一方、現在の要求負荷が現在の熱源システムの減段閾値XD(n)以上である場合には(ステップSB7において「NO」)、現在運転中の熱源機の負荷配分を変更する(負荷配分部:ステップSB9)。具体的には、能力劣化機の負荷配分比率を下げ、能力に余力のある熱源機の負荷配分比率を上げることにより、要求負荷を満足する。負荷比率の変更は、熱媒出口設定温度を上昇または低下させる、または、熱媒流量を増加または低下させることにより行われる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態に係る熱源システム及びその制御装置並びに制御方法によれば、能力劣化機がある場合には、その能力劣化機の出力可能上限値が現在の出力可能な能力に応じて変更される。これにより、能力劣化機に対して能力以上の負荷が割り当てられることを回避することができる。これにより、能力劣化機の熱媒出口温度が熱媒出口設定温度から乖離することを未然に防ぐことができ、熱媒送出温度が設定温度から乖離することを防止することができる。この結果、熱源機の増減段が頻繁に繰り返されるのを未然に防ぐことができる。
更に、台数制御に参照される増段閾値及び減段閾値についても能力劣化機の出力可能な最大能力に応じて適宜変更されるので、現在の熱源システムの能力に応じて適切なタイミングで増段処理及び減段処理を行うことが可能となるとともに、能力劣化機の負荷が最大能力を超えてしまうことを回避することができる。
【0081】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。
【0082】
例えば、上述した第1実施形態と第2実施形態とを部分的に組み合わせることとしてもよい。例えば、第1実施形態では、能力劣化機を検出した後も能力劣化機の運転が継続して行われ、減段処理が生じた際に、初めて能力劣化機の運転が停止されることとなる。そこで、能力劣化機が検出されてから当該能力劣化機の運転停止までの期間においては、第2実施形態のように、記憶部21に格納されている能力テーブルにおける当該能力劣化機の出力可能上限値を変更するとともに、増段閾値及び減段閾値を適宜変更し、能力劣化機の能力低下を考慮した負荷配分及び増段・減段処理を行うこととしてもよい。
【0083】
また、例えば、各実施形態に係る熱源システムは、能力劣化機が検出された場合に、能力劣化機が検出されたことを報知する報知部を備えていてもよい。報知部の具体例としては、聴覚的に検知を伝える警報機、視覚的に検知を伝えるディスプレイ等が一例として挙げられる。
【符号の説明】
【0084】
1 熱源システム
2 外部負荷
3 ポンプ
4 リターンヘッダ
5 サプライヘッダ
10(10a〜10c) 熱源機
13a〜13c、15 温度センサ
20、30 上位制御装置
8a〜8c 熱源機制御装置
21 記憶部
22 台数制御部
23 負荷配分部
24 劣化機検出部
25 優先順位変更部
26 強制増段判定部
27 強制増段部
28 能力変更部
29 増段閾値変更部
31 減段閾値変更部