(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482847
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】液晶表示素子及び画像投影システム
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20190304BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20190304BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20190304BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20190304BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 621K
G09G3/20 623B
G09G3/20 670E
G09G3/20 612U
G09G3/20 680C
G02F1/133 505
G02F1/13 505
G09G5/00 510B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-254546(P2014-254546)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-114854(P2016-114854A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大石 正樹
【審査官】
斎藤 厚志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−350318(JP,A)
【文献】
特開平11−337871(JP,A)
【文献】
特開2009−008891(JP,A)
【文献】
特開2008−304794(JP,A)
【文献】
国際公開第01/048731(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/36
G02F 1/13
G02F 1/133
G09G 3/20
G09G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された映像信号に基づき、液晶を透過する光に任意の光パターン及び位相差を与えて画像として出力する液晶表示素子であって、
前記映像信号に基づき、前記液晶表示素子を駆動させるアナログ駆動電圧を発生するアナログ駆動電圧発生回路と、
前記映像信号に基づき、前記液晶表示素子を駆動させるデジタル駆動電圧を発生するデジタル駆動電圧発生回路と、
前記アナログ駆動電圧発生回路が発生した前記アナログ駆動電圧と、前記デジタル駆動電圧発生回路が発生した前記デジタル駆動電圧のうち、何れか一方を選択して前記液晶表示素子へ出力する駆動電圧選択回路と、
前記映像信号を前記アナログ駆動電圧発生回路と前記デジタル駆動電圧発生回路へ分配する映像信号分配回路と、
前記映像信号分配回路により分配された前記映像信号を前記アナログ駆動電圧発生回路へ入力させるための第一の映像信号入力ライン及び第二の映像信号入力ラインと、
前記映像信号分配回路により分配された前記映像信号を前記デジタル駆動電圧発生回路へ入力させるための第三の映像信号入力ライン及び第四の映像信号入力ラインと、
前記第一の映像信号入力ラインと前記第二の映像信号入力ラインのうち何れか一方の経路上に設けられ、前記映像信号をデジタル映像信号からアナログ映像信号へ変換するD/A変換機と、
前記第三の映像信号入力ラインと前記第四の映像信号入力ラインのうち何れか一方の経路上に設けられ、前記映像信号をアナログ映像信号からデジタル映像信号へ変換するA/D変換機と、を有し、
前記アナログ駆動電圧は、前記液晶を透過する光に第一の位相差を与えるように前記液晶表示素子を駆動させるアナログ駆動電圧であり、
前記デジタル駆動電圧は、前記液晶を透過する光に前記第一の位相差とは異なる第二の位相差を与えるように前記液晶表示素子を駆動させるデジタル駆動電圧である、
ことを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】
前記アナログ駆動電圧発生回路と前記デジタル駆動電圧発生回路が正常な動作を行える状態にあるかどうかを判定する動作判定回路を有し、前記駆動電圧選択回路は、前記動作判定回路による前記判定の結果に基づき、前記アナログ駆動電圧発生回路と前記デジタル駆動電圧発生回路のうち正常な動作が行える駆動電圧発生回路が発生した駆動電圧を選択して前記液晶表示素子へ出力することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記映像信号がアナログ映像信号であるかデジタル映像信号であるかを判別する映像信号判別回路を有し、前記映像信号分配回路は、前記映像信号判別回路による前記判別の結果に基づき、前記映像信号を前記第一の映像信号入力ライン、前記第二の映像信号入力ライン、前記第三の映像信号入力ライン、及び前記第四の映像信号入力ラインへ選択的に出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一つに記載の液晶表示素子と、
前記液晶表示素子から出力された前記画像が投影されるスクリーンと、
を有することを特徴とする画像投影システム。
【請求項5】
前記スクリーンは、車両のウィンドシールドであることを特徴とする請求項4に記載の画像投影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子及び画像投影システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の画像投影システムを示す概念図である。
図3に示す従来の画像投影システムでは、光源15から出射された光をビームエキスパンダ16で拡大した後、拡大された光に液晶表示素子(空間光位相変調素子)17により所定の光パターンと位相差を与えて二次元的な投影用画像(以下、プロジェクション画像)を生成し、スクリーン18に投影する。液晶表示素子17にはECBモードを採用したTFT型液晶パネルが使用され、例えば1.7Vから4.5Vのアナログ駆動電圧により動作して、透過する光に0から2πの位相差を連続的又は段階的に与えるように構成されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、従来の画像投影システムを示す概念図である。
図4に示す従来の画像投影システムでは、光源15から出射された光に液晶表示素子17により所定の光パターンと位相差を与えて三次元的な投影用画像(以下、ホログラム画像を)生成し、車両のウィンドシールド(フロントガラス)19に投影する。液晶表示素子17は、例えば0及び5Vのデジタル駆動電圧により動作して、透過する光に0及びπの位相差を選択的に与えるように構成されている。また、画像のコントラストや鮮明度の調整を可能とする場合などには、例えば0から5Vのアナログ駆動電圧により動作して、透過する光に0からπの位相差を連続的又は段階的に与えるように構成される。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3832093号公報
【特許文献2】特開2008−233875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術において、プロジェクション画像を表示することを目的として設計された液晶表示素子には、アナログ駆動電圧を発生するアナログ駆動電圧発生回路とデジタル駆動電圧を発生するデジタル駆動電圧発生回路のうち、その画像の表示に適した駆動電圧発生回路のみ(例えば、アナログ駆動電圧発生回路のみ)が搭載され、ホログラム画像を表示することを目的として設計された液晶表示素子には、上述のアナログ駆動電圧発生回路とデジタル駆動回路のうち、その画像の表示に適した駆動電圧発生回路のみ(例えば、デジタル駆動電圧発生回路のみ)が搭載されていることから、例えば、1つの画像投影システムにおいて、アナログ駆動電圧を用いてプロジェクション画像を表示し、デジタル駆動電圧を用いてホログラム画像を表示したい場合や、アナログ駆動電圧とデジタル駆動電圧を選択的に用いてホログラム画像を表示したい場合には、アナログ駆動発生回路が搭載された液晶表示素子と、デジタル駆動電圧発生回路が搭載された液晶表示素子の2つが必要となり、その分、装置の大型化や複雑化を招くという問題点がある。
【0006】
本発明は、以上の問題点に鑑みたもので、装置の大型化や複雑化を抑えつつ、多様な光学的特性を有する画像を出力することが可能な液晶表示素子及び画像投影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
入力された映像信号に基づき、液晶を透過する光に任意の光パターン及び位相差を与えて画像として出力する液晶表示素子であって、前記映像信号に基づき、前記液晶表示素子を駆動させるアナログ駆動電圧を発生するアナログ駆動電圧発生回路と、前記映像信号に基づき、前記液晶表示素子を駆動させるデジタル駆動電圧を発生するデジタル駆動電圧発生回路と、
前記アナログ駆動電圧発生回路が発生した前記アナログ駆動電圧と、前記デジタル駆動電圧発生回路が発生した前記デジタル駆動電圧のうち、何れか一方を選択して前記液晶表示素子へ出力する駆動電圧選択回路と、前記映像信号を前記アナログ駆動電圧発生回路と前記デジタル駆動電圧発生回路へ分配する映像信号分配回路と、前記映像信号分配回路により分配された前記映像信号を前記アナログ駆動電圧発生回路へ入力させるための第一の映像信号入力ライン及び第二の映像信号入力ラインと、前記映像信号分配回路により分配された前記映像信号を前記デジタル駆動電圧発生回路へ入力させるための第三の映像信号入力ライン及び第四の映像信号入力ラインと、前記第一の映像信号入力ラインと前記第二の映像信号入力ラインのうち何れか一方の経路上に設けられ、前記映像信号をデジタル映像信号からアナログ映像信号へ変換するD/A変換機と、前記第三の映像信号入力ラインと前記第四の映像信号入力ラインのうち何れか一方の経路上に設けられ、前記映像信号をアナログ映像信号からデジタル映像信号へ変換するA/D変換機と、を有し、前記アナログ駆動電圧は、前記液晶を透過する光に第一の位相差を与えるように前記液晶表示素子を駆動させるアナログ駆動電圧であり、前記デジタル駆動電圧は、前記液晶を透過する光に前記第一の位相差とは異なる第二の位相差を与えるように前記液晶表示素子を駆動させるデジタル駆動電圧である、液晶表示素子とする。
【0009】
前記アナログ駆動電圧発生回路と前記デジタル駆動電圧発生回路が正常な動作を行える状態にあるかどうかを判定する動作判定回路を有し、前記駆動電圧選択回路は、前記動作判定回路による前記判定の結果に基づき、前記アナログ駆動電圧発生回路と前記デジタル駆動電圧発生回路のうち正常な動作が行える駆動電圧発生回路が発生した駆動電圧を選択して前記液晶表示素子へ出力する液晶表示素子とすることができる。
【0011】
前記映像信号がアナログ映像信号であるかデジタル映像信号であるかを判別する映像信号判別回路を有し、前記映像信号分配回路は、前記映像信号判別回路による前記判別の結果に基づき、前記映像信号を前記第一の映像信号入力ライン、前記第二の映像信号入力ライン、前記第三の映像信号入力ライン、及び前記第四の映像信号入力ラインへ選択的に出力する液晶表示素子とすることができる。
【0013】
上述の何れか一つの液晶表示素子と、前記液晶表示素子から出力された前記画像が投影されるスクリーンと、を有する画像投影システムとする。
【0014】
前記スクリーンは、車両のウィンドシールドである画像投影システムとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置の大型化や複雑化を抑えつつ、多様な光学的特性を有する画像を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の液晶表示素子における駆動回路を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の液晶表示素子における駆動回路を示すブロック図である。
図1に示す駆動回路は、液晶表示素子5を駆動させるアナログ駆動電圧を発生するアナログ駆動電圧発生回路1と、液晶表示素子5を駆動させるデジタル駆動電圧を発生するデジタル駆動電圧発生回路2と、アナログ駆動電圧発生回路1とデジタル駆動電圧発生回路2の動作状態を判定する動作判定回路3と、アナログ駆動電圧発生回路1から出力されたアナログ駆動電圧とデジタル駆動電圧発生回路2から出力されたデジタル駆動電圧のうち何れか一方を選択して液晶表示素子5へ出力する駆動電圧選択回路4と、外部から入力された映像信号の種類を判別する映像信号判別回路11と、外部から入力された映像信号を映像信号入力ライン14a、14bを介してアナログ駆動電圧発生回路1へ分配すると共に、映像信号入力ライン14c、14dを介してデジタル駆動電圧発生回路2へ分配する映像信号分配回路11と、映像信号分配回路11から映像信号入力ライン14bを介して入力されたデジタル映像信号をアナログ映像信号へ変換するD/A変換機9と、映像信号分配回路11から映像信号入力ライン14cを介して入力されたアナログ映像信号をデジタル映像信号へ変換する
A/D変換機10と、以上の各回路の動作を統括的に制御する図示しない制御回路(CPU)を備えている。
【0018】
入力信号判別回路11は、外部から入力された映像信号がアナログ映像信号とデジタル映像信号の何れであるかを判別し、その結果を判別信号として映像信号分配回路12へ出力する。映像信号分配回路12は、入力信号判別回路11から入力された判別信号に基づき、仮に外部から入力された映像信号がアナログ映像信号である場合には、そのアナログ映像信号を、映像信号入力ライン14aを介してアナログ駆動電圧発生回路1へ、又は、映像信号入力ライン14cを介してA/D変換機10へ出力し、仮に外部から入力された映像信号がデジタル映像信号である場合には、そのデジタル映像信号を、映像信号入力ライン14bを介してD/A変換機9へ、又は、映像信号入力ライン14dを介してデジタル駆動電圧発生回路2へ出力する。
【0019】
尚、ここでは、外部から映像信号分配回路12に繋がる一系統の映像信号入力ラインにアナログ映像信号とデジタル映像信号が混在するものとしているが、外部から映像信号分配回路12に繋がる映像信号入力ラインがアナログ映像信号専用の映像信号入力ラインとデジタル映像信号専用の映像信号入力ラインの二系統に分かれている場合には、外部から入力された映像信号の種類を判別する必要が無いことから、入力信号判別回路11は、省略することができる。
【0020】
映像信号分配回路12が外部から入力された映像信号を映像信号ライン14a〜14dのどの映像信号入力ラインへ分配するかは、外部から入力された映像信号がアナログ映像信号とデジタル映像信号の何れであるか、ならびに、液晶表示素子5をアナログ駆動電圧とデジタル駆動電圧の何れにより駆動させるか、に応じて適宜決定される。例えば、外部から入力された映像信号がアナログ映像信号であって、液晶表示素子5をアナログ駆動電圧により駆動させる場合には、映像信号分配回路12は、外部から入力されたアナログ映像信号を映像信号入力ライン14aのみへ選択的に出力し、外部から入力された映像信号がアナログ映像信号であって、液晶表示素子5をデジタル駆動電圧により駆動させる場合には、映像信号分配回路12は、外部から入力されたアナログ映像信号を映像信号入力ライン14cのみへ選択的に出力する。
【0021】
また、その前後の任意のタイミングにおいて、映像信号分配回路12から映像信号が入力されない映像信号入力ラインと電気的に関連する回路であって、その時点で必ずしも動作することが求められない回路については、消費電力の低減等を目的として、必要に応じてその動作が停止される。このような回路としては、例えばD/A変換機9、A/D変換機10、アナログ駆動電圧発生回路1、デジタル駆動電圧発生回路2が挙げられるが、これらには限定されない。
【0022】
アナログ駆動電圧発生回路1は、映像信号分配回路12から映像信号入力ライン14aを介して入力されたアナログ映像信号、又は、映像信号分配回路12から映像信号入力ライン14bを介して入力されたデジタル映像信号がD/A変換機9によりアナログ変換されたアナログ映像信号に基づいてアナログ駆動電圧を発生し、駆動電圧選択回路4へ出力する。ここで、アナログ駆動電圧発生回路1が発生するアナログ駆動電圧には、液晶表示素子5が有する複数の画素の各々に所定の動作をさせるための電圧が含まれている。
【0023】
デジタル駆動電圧発生回路2は、映像信号分配回路12から映像信号入力ライン14dを介して入力されたデジタル映像信号、又は、映像信号分配回路12から映像信号入力ライン14cを介して入力されたアナログ映像信号がA/D変換機10によりデジタル変換されたデジタル映像信号に基づいてデジタル駆動電圧を発生し、駆動電圧選択回路4へ出力する。ここで、デジタル駆動電圧発生回路2が発生するデジタル駆動電圧には、液晶表示素子5が有する複数の画素の各々に所定の動作をさせるための電圧が含まれている。
【0024】
映像信号分配回路12からアナログ駆動電圧発生回路1とデジタル駆動電圧発生回路2に入力された映像信号がRGB各色に対応する3つの映像信号を含む場合には、アナログ駆動電圧発生回路1とデジタル駆動電圧発生回路2は、それら3つの映像信号に応じた三種類の駆動電圧を発生し、駆動電圧選択回路4へ出力する。
【0025】
駆動電圧選択回路4は、アナログ駆動電圧発生回路1から入力されたアナログ駆動電圧と、デジタル駆動電圧発生回路2から入力されたデジタル駆動電圧のうち、何れか一方を選択して液晶表示素子5へ出力する。駆動電圧選択回路4がアナログ駆動電圧とデジタル駆動電圧のうち何れを選択するかは、液晶表示素子5にどのような光学的特性を有する画像を出力させるかに応じて適宜決定される。例えば、アナログ的な光学的特性を示す画像(アナログ画像)を表示させる場合には、アナログ駆動電圧を選択し、デジタル的な光学的特性を示す画像(デジタル画像)を表示させる場合には、デジタル駆動電圧を選択する。
【0026】
動作判定回路3は、アナログ駆動電圧発生回路1とデジタル駆動電圧発生回路2が正常に動作しているか否かを判定し、その結果を判定信号として駆動電圧選択回路4へ出力する。駆動電圧選択回路4は、動作判定回路3から入力された判定信号に基づき、仮にアナログ駆動電圧発生回路1とデジタル駆動電圧発生回路2の何れか一方が故障等により正常な動作が行えない状態にある場合には、正常な動作が行えない駆動電圧発生回路から入力された駆動電圧を遮断すると同時に、他方の駆動電圧発生回路から入力された駆動電圧を液晶表示素子5へ出力する。
【0027】
ここでは、正常な動作が行えない駆動電圧発生回路から入力された駆動電圧を駆動電圧選択回路4が遮断することとしたが、そのことに代えて又はそのことと併せて、正常な動作が行えない駆動電圧発生回路の動作を停止させて駆動電圧そのものが出力されないようにしても良い。尚、駆動電圧を切り替える際に、他方の駆動電圧発生回路の動作が停止していた場合には、他方の駆動電圧発生回路を予め動作させた上で、他方の駆動電圧発生回路から駆動電圧を出力させる。
【0028】
具体的には、例えばアナログ駆動電圧発生回路1から入力されたアナログ駆動電圧を用いて液晶表示素子5を駆動している際に、アナログ駆動電圧発生回路1に何らかの不具合が生じた場合には、駆動電圧選択回路4は、動作判定回路3から入力された判定信号に基づき、アナログ駆動電圧発生回路1から入力されたアナログ駆動電圧を遮断すると同時に、デジタル駆動電圧発生回路2から入力されたデジタル駆動電圧を液晶表示素子5へ出力する。このようにすれば、アナログ駆動電圧による駆動は行えないものの、少なくとも、正常な画像が表示されない、あるいは画像が全く表示されないといった状況を回避することができる。即ち、デジタル駆動電圧発生回路2をアナログ駆動電圧発生回路1のバックアップ回路として機能させることができる。但し、動作判定回路3を用いたこのような機能は、必須ではなく、省略することが可能である。
【0029】
図2は、本発明の液晶表示素子を示す断面図である。液晶表示素子5は、例えばECB(Electrically Controlled Birefringence)モードを使用したTFT液晶表示素子であり、透過する光に任意の光パターンと例えば0から2πまでの任意の位相差を与えるように構成されている。セル構造としては、例えばガラス基板5aとシリコン基板5bとの間に液晶6が封入された一般的な構造が採用される。液晶6の材料としては、例えばΔn(屈折率異方性)が大きい材料が採用され、Δnが大きい材料を用いることにより、液晶6を薄くすることが可能となり、また、それに伴い液晶6の応答速度を高速にすることが可能となるが、その材料には限定されない。
【0030】
シリコン基板5bの液晶6に接する側の面には、液晶6に駆動電圧を印加するための複数の画素電極6がマトリクス状に配置されている。画素電極6は、ガラス基板5aの液晶6に接する側の面に設けられた図示しない対向電極との間で画素を構成している。画素電極6は、シリコン基板5bの内部に設けられた対応するピクセル回路8と電気的に接続されている。ピクセル回路8としては、例えばTFT等の回路素子が適宜組み合わされることにより構成された、アナログ駆動電圧とデジタル駆動電圧の何れでも動作可能な回路が採用される。尚、図示されていないが、ガラス基板5aとシリコン基板5bの互いに対向する側の面には、画素電極7と電気的対を成す対向電極や液晶6を配向させる配向膜などの構成要素が適宜設けられている。
【0031】
駆動電圧選択回路4から液晶表示素子5へ入力されたアナログ駆動電圧とデジタル駆動電圧は、ピクセル回路8を介して各画素電極7に印加される。液晶6に対する実効電圧は、各画素電極7への印加電圧にて調整が可能であり、例えば実効電圧を0から5Vとすることで、透過する光に0から2πの位相差を与えることができる。
【0032】
ここで、画素電極7にアナログ駆動電圧を印加すれば、液晶6を透過する光に0から2πの位相差を連続的又は段階的に与えることができることから、ホログラム画像を表示する際にコントラストや画像鮮明度を向上させることが可能となり、また、液晶6を透過する光に0からπまでの位相差を連続的又は段階的に与えることで、複雑なプロジェクション画像を表示させることも可能となる。
【0033】
一方、画素電極7にデジタル駆動電圧を印加すれば、液晶6を透過する光に0及び2πの位相差を選択的に与えることで、単純なホログラム画像を表示することが可能となり、また、液晶6を透過する光に0及びπの位相差を選択的に与えることで、単純なプロジェクション画像を表示することが可能となる。
【0034】
このように、本発明の液晶表示素子5は、任意に光位相変調が可能な構成に加え、アナログ駆動電圧発生回路1とデジタル駆動電圧発生回路2の二つを備えているため、多様な光学的特性を有する画像を出力することができる。
【0035】
具体的な実施例としては、ホログラム画像を表示する場合には、液晶表示素子5をアナログ駆動電圧により駆動して、液晶6を透過する光に0から2πの位相差を連続的又は段階的に与えるようにし、一方、プロジェクション画像を表示する場合には、液晶表示素子5をデジタル駆動電圧により駆動して、液晶6を透過する光に0及びπの位相差を選択的に与えるようにすることができる。
【0036】
別の実施例としては、ホログラム画像を表示する場合には、液晶表示素子5をデジタル駆動電圧により駆動して、液晶6を透過する光に0及びπの位相差を選択的に与えるようにし、一方、プロジェクション画像を表示する場合には、液晶表示素子5をアナログ駆動電圧により駆動して、液晶6を透過する光に0からπの位相差を連続的又は段階的に与えるようにすることができる。
【0037】
別の実施例としては、ホログラム画像を表示する場合とプロジェクション画像を表示する場合の両方において、液晶表示素子5をアナログ駆動電圧により駆動して、液晶6を透過する光にそれぞれ0から2πの位相差と0からπの位相差を連続的又は段階的に与えるようにすることができる。
【0038】
別の実施例としては、ホログラム画像を表示する場合とプロジェクション画像を表示する場合の両方において、液晶表示素子5をデジタル駆動電圧により駆動して、液晶6を透過する光にそれぞれ0及び2πの位相差と0及びπの位相差を選択的に与えるようにすることができる。尚、液晶6を透過する光に与える位相差は、上述の値に限らず、その他の値を適宜選択することが可能である。
【0039】
以上説明したような本発明の液晶表示素子5を画像投影システムに適用すれば、従来のように出力する画像の光学的特性が互いに異なる複数の液晶表示素子を必要としないことから、画像投影システムの大型化や複雑化を抑えることができる。本発明の液晶表示素子5を適用した画像投影システムとしては、例えば液晶表示素子5から出力された画像を遮光性のスクリーンや車両のウィンドシールド(フロントガラス)に投影するシステムが挙げられるが、それらには限定されない。
【符号の説明】
【0040】
1 アナログ駆動電圧発生回路
2 デジタル駆動電圧発生回路
3 動作判定回路
4 駆動電圧選択回路
5 液晶表示素子
5a ガラス基板
5b シリコン基板
6 液晶
7 画素電極
8 ピクセル回路
9
D/A変換機
10
A/D変換機
11 映像信号判別回路
12 映像信号分配回路
14a 映像信号入力ライン
14b 映像信号入力ライン
14c 映像信号入力ライン
14d 映像信号入力ライン
15 光源
16 ビームエキスパンダ
17 液晶表示素子(空間光位相変調素子)
18 スクリーン
19 ウィンドシールド(フロントガラス)