(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面の
図1〜4を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明に係る監視システム1は、監視カメラ2、飛行装置3、追跡処理装置としてのセンタ装置4を備えて構築される。
【0015】
(監視カメラの構成について)
監視カメラ2は、地上から所定の撮影範囲を撮影する。監視カメラ2は、
図1に示すように、カメラ部21、制御部22、通信部23を備えている。
【0016】
カメラ部21は、所定の撮影範囲を撮影する本体をなし、撮像部21a、方向制御部21b、画像データ生成部21cを有している。
【0017】
撮像部21aは、例えばCCD素子やC−MOS素子などの撮像素子や光学部品などを含んで構成される。撮像部21aは、監視領域内の所定の撮影範囲を所定時間おきに撮像し、撮像した画像を画像データ生成部21cに順次出力している。
【0018】
尚、撮像部21aは、監視カメラ2がパンチルトズームカメラとして構成される場合、センタ装置4からの制御信号の撮影指示に基づく制御部22の制御により、ズーム位置が制御される。このズーム位置に基づく焦点距離の情報は画像データ生成部21cに出力される。
【0019】
方向制御部21bは、監視カメラ2がパンチルトズームカメラとして構成される場合に必要なものであり、センタ装置4からの制御信号の撮影指示に基づく制御部22の制御により、水平方向及び垂直方向の角度が制御される。この水平方向の角度情報、及び俯角又は仰角(俯仰角)としての垂直方向の角度情報は、予め設定された監視カメラ2の撮影方向(水平方向の角度情報及び俯仰角)からの変位角度であり、画像データ生成部21cに出力される。
【0020】
画像データ生成部21cは、撮像部21aが撮像した画像に対し、必要に応じて焦点距離や撮影方向を付加した画像データを生成する。また、後述の測位部34にて取得した撮影時における位置情報を必要に応じて付加した画像データを生成する。なお、監視カメラ2がパンチルトズームカメラとして構成される場合には、予め設定された監視カメラ2の撮影方向を上述の変位角度で補正した撮影方向を画像データに付加する。
【0021】
制御部22は、カメラ部21の画像データ生成部21cが生成した画像データを所定のフレーム周期で所定時間おきに通信部23を介してセンタ装置4に送信制御する。また、制御部22は、センタ装置4からの制御信号を通信部23を介して受信したときに、この制御信号の撮影指示に従ってカメラ部21の撮像部21aや方向制御部21bを制御する。
【0022】
通信部23は、有線又は無線により通信を行うための通信インタフェースであり、制御部22の制御により、通信回線を介してセンタ装置4との間で有線又は無線により通信し、データや信号の送受信を行う。具体的には、画像データ生成部21cが生成した画像データを所定のフレーム周期で所定時間おきにセンタ装置4に送信する。また、撮像部21aや方向制御部21bを制御するためのセンタ装置4からの制御信号を受信する。
【0023】
尚、監視カメラ2は、監視領域の所定箇所に固定して複数設置されるものに限定されない。例えば各種車両に搭載した車載用カメラ、撮像部を有する小型移動飛行ロボットやドローンなどのように監視領域を移動できるものであってもよい。また、監視カメラ2が監視領域内を移動できる場合には、少なくとも1つの監視カメラ2が設けられた構成であってもよい。そして、監視カメラ2が監視領域を移動する場合には、撮影時における監視カメラ2の位置情報が移動に伴って変化するため、GPSからなる測位部を監視カメラ2に備え、地球上での監視カメラ2の3次元的位置(現在位置)を示す位置情報(緯度、経度、高さ)を画像データ生成部21cに出力する。また、監視カメラ2が監視領域を移動する場合は、撮影時における監視カメラ2の撮影方向も移動による姿勢変動によって変化するため、後述する姿勢検出部35と同様の構成を備え、画像データ生成部21cは、これにより得られた姿勢情報により撮影方向を補正する。そして、画像データ生成部21cからは、監視カメラ2の撮影時における位置情報及び撮影時における監視カメラ2の撮影方向も付加した画像データがセンタ装置4に送信される。
【0024】
(飛行装置の構成について)
飛行装置3は、センタ装置4からの制御信号の指示によって移動制御が可能な移動型飛行装置、すなわち、移動型飛行船、小型移動飛行ロボットやドローン、人工衛星などである。又は電源供給及び通信可能な状態で本体がケーブルを介して地上の係留装置と繋がれた係留型飛行装置(例えば係留型飛行船など)であってもよい。さらに、これらの組合せによって構成してもよい。
【0025】
尚、飛行装置3が係留型飛行装置の場合には、監視カメラ2で撮影できない死角領域を包含するように、監視領域の規模に合わせた数だけ設けるのが好ましい。
【0026】
飛行装置3は、
図1に示すように、カメラ部31、推進部32、方向舵33、測位部34、姿勢検出部35、制御部36、無線通信部37、警告部38、物資供給部39を備えている。
【0027】
カメラ部31は、飛行装置3の本体に搭載され、主に、上空から監視カメラ2よりも広い撮影範囲で撮影を行っている。カメラ部31は、撮像部31a、方向制御部31b、画像データ生成部31cを有している。
【0028】
撮像部31aは、例えばCCD素子やC−MOS素子などの撮像素子や光学部品などを含んで構成されるものであり、所定の撮影範囲を上空から所定時間おきに撮像し、撮像した画像を画像データ生成部31cに順次出力する。
【0029】
尚、撮像部31aは、カメラ部31がパンチルトズームカメラとして構成される場合、センタ装置4からの制御信号の撮影指示に基づく制御部36の制御により、ズーム位置が制御される。このズーム位置に基づく焦点距離の情報は画像データ生成部31cに出力される。
【0030】
方向制御部31bは、カメラ部31がパンチルトズームカメラとして構成される場合に必要なものであり、センタ装置4からの制御信号の撮影指示に基づく制御部36の制御により、水平方向及び垂直方向の角度が制御される。この水平方向の角度情報、及び俯角又は仰角(俯仰角)としての垂直方向の角度情報は、予め設定された監視カメラ2の撮影方向からの変位角度であり、画像データ生成部31cに出力される。
【0031】
画像データ生成部31cは、撮像部31aが撮像した画像に対し、撮影時における焦点距離や撮影方向を必要に応じて付加した画像データを生成する。なお、カメラ部31がパンチルトズームカメラとして構成される場合には、予め設定されたカメラ部31の撮影方向を上述の変位角度で補正した撮影方向を画像データに付加する。また、撮影方向は、飛行装置3の姿勢によっても変化するので、後述の姿勢検出部35の姿勢情報から撮影方向を補正している。また、後述の測位部34にて取得した撮影時における位置情報を必要に応じて付加した画像データを生成する。
【0032】
推進部32は、エンジンの動力をプロペラに伝達して回転させることにより飛行装置3に推進力を与えるものであり、センタ装置4からの制御信号の飛行指示に従って制御部36により制御される。
【0033】
方向舵33は、飛行装置3の操縦に用いる動翼であり、センタ装置4からの制御信号の飛行指示に従って制御部36により制御される。
【0034】
測位部34は、GPS(Global Positioning System )からなり、地球上での飛行装置3の3次元的位置(現在位置)を示す位置情報(緯度、経度、高さ)を制御部36に出力する。この位置情報は画像データ生成部31cへも出力する。
【0035】
姿勢検出部35は、例えばジャイロコンパスとサーボ加速度計を備え、飛行装置3の方位角、ピッチ角、ロール角を計測して飛行装置3の姿勢を検出し、この検出により得られる姿勢情報を制御部36に出力する。この姿勢情報は画像データ生成部31cへも出力する。
【0036】
制御部36は、カメラ部31の画像データ生成部31cが生成した画像データを所定のフレーム周期で所定時間おきにセンタ装置4に送信するように無線通信部37を制御する。
【0037】
また、制御部36は、飛行制御部36a、カメラ制御部36b、警告制御部36c、物資供給制御部36dを有する。
【0038】
飛行制御部36aは、センタ装置4からの制御信号を無線通信部37を介して受信したときに、この制御信号の飛行指示に従って推進部32や方向舵33を制御する。
【0039】
カメラ制御部36bは、センタ装置4からの制御信号を無線通信部37を介して受信したときに、この制御信号の撮影指示に従ってカメラ部31の撮像部31aや方向制御部31bを制御する。
【0040】
警告制御部36cは、飛行装置3が移動目標とする目標位置において監視対象としての警告対象に警告を発するように警告部38を制御する。
【0041】
物資供給制御部36dは、飛行装置3が目標位置において物資を投下して監視対象としての要救護者、被災者、避難施設などに供給するように物資供給部39を制御する。
【0042】
無線通信部37は、制御部36の制御により、センタ装置4との間で無線通信し、データや信号の送受信を行う。具体的には、画像データ生成部31cが生成した画像データを所定フレーム周期で所定時間おきにセンタ装置4に送信する。また、撮像部31a、方向制御部31b、推進部32、方向舵33を制御するため、センタ装置4からの制御信号(撮影指示、飛行指示)を受信する。
【0043】
警告部38は、飛行装置3が目標位置において警告対象に警告を発するもので、警告制御部36cの制御により、例えば立ち入り禁止区域に侵入している警告対象に向けて警告を促すための音声を出力するスピーカ部と、警告対象(例えば人物が警告対象であれば顔)に向けて照明をあてる照明部とを有する。
【0044】
物資供給部39は、飛行装置3が目標位置において必要な物資を要救護者、被災者、避難施設などに供給する機構であり、物資供給制御部36dの制御により、例えば飲食品や救命器具などの物資を目標位置において投下して供給する。
【0045】
(センタ装置の構成について)
追跡処理装置としてのセンタ装置4は、通信部41、無線通信部42、記憶部43、操作部44、表示部45、制御部46を備えている。
【0046】
通信部41は、有線又は無線により通信を行うための通信インタフェースであり、制御部46の制御により、通信回線を介して複数の監視カメラ2との間で相互に通信を行う。具体的には、複数の監視カメラ2から所定フレーム周期で所定時間おきに送信される画像データを受信する。また、制御対象となる監視カメラ2に対し、撮像部21aや方向制御部21bを制御して撮影指示するための制御信号を送信する。
【0047】
無線通信部42は、制御部46の制御により、飛行装置3との間で相互に無線通信を行う。具体的には、飛行装置3から所定フレーム周期で所定時間おきに送信される画像データを受信する。また、飛行装置3の撮像部31aや方向制御部31bを制御して撮影指示するための制御信号と、飛行装置3の推進部32や方向舵33を制御して飛行指示するための制御信号を必要に応じて送信する。
【0048】
記憶部43は、監視カメラ情報、飛行装置情報、制御種別情報、画像データなどの各種情報を記憶している。各種情報について説明すると、監視カメラ情報は、各監視カメラ2に関する情報であって、各監視カメラ2の位置情報(撮影位置P:緯度、経度、高さ)、撮影方向、撮影範囲、焦点距離などの情報が含まれ、動的に変化するものは監視カメラ2から受信する画像データに含まれる情報に基づいて逐次更新される。
【0049】
なお、移動可能な監視カメラ2においては、位置情報、撮影方向、撮影範囲、焦点距離が変化するため、受信する画像データに含まれる情報に基づいて制御部46により逐次更新される。具体的には、位置情報と撮影方向、焦点距離は受信した情報をそのまま更新し、撮影範囲は画像データに含まれる位置情報、撮影方向、焦点距離に基づいて算出し、更新する。
【0050】
また、監視領域の所定箇所に固定して設置される監視カメラ2の位置情報に関する情報は、予め記憶部43に監視カメラ情報の一部として記憶しておくことができる。このような監視カメラ2のうち、パンチルトズーム可能な監視カメラ2については、撮影方向、撮影範囲、焦点距離が変化するため、受信する画像データに含まれる情報に基づいて、上記と同様にして制御部46により逐次更新される。
【0051】
飛行装置情報は、飛行装置3に関する情報であって、飛行装置3の位置情報(飛行位置又は撮影位置:緯度、経度、高さ)、カメラ部31の撮像部31aの撮影方向、撮影範囲、焦点距離などの情報が含まれ、動的に変化するものは飛行装置3から受信する画像データに含まれる情報に基づいて、監視カメラ情報の更新と同様にして制御部46により逐次更新される。
【0052】
制御種別情報は、
図2に示すように、俯角と距離、又は俯角と距離と方向とを制御種別ごとに紐付けにより対応付けて記憶部43に記憶される情報である。
図2の例では、例えば不審な行動をとる不審者を撮影する「不審者撮影」、例えばイベント会場における混雑状況を撮影する「混雑撮影」、例えば立ち入り禁止区域に侵入した警告対象に警告を発する「警告」、例えば飲食品、救命器具などの必要な物資を供給する「物資供給」を制御種別としている。
【0053】
さらに説明すると、
図2において、制御種別が「不審者撮影」の場合は、俯角:α1、距離:W2、方向:不審者の進行方向と逆方向が紐付けされる。制御種別が「混雑撮影」の場合は、俯角:α2、距離:W3が紐付けされる。制御種別が「警告」の場合は、俯角:α2、距離:W1、方向:警告対象の進行方向と逆方向が紐付けされる。制御種別が「物資供給」の場合は、俯角:α2、距離:W1が紐付けされる。
【0054】
そして、上述した制御種別情報における俯角と距離と方向については、監視員の操作部44の入力操作により予め設定される。
【0055】
ここで、制御種別が「不審者撮影」の俯角の場合は、他の「混雑撮影」、「警告」、「物資供給」における俯角と比較して、不審者の顔や不審車両の自動車登録番号標(ナンバープレート)を捉えやすい小さい角度であるのが好ましいため、α1<α2の関係を満たす俯角に設定される。また、制御種別が「混雑撮影」の俯角の場合は、「不審者撮影」の俯角と比較して、人物の位置関係など混雑の様子を把握するために俯瞰することのできる大きい角度であるのが好ましいため、α1<α2の関係を満たす俯角に設定される。さらに、制御種別が「混雑撮影」の場合は周囲を含む全体状況を把握できる距離が望ましく、「混雑撮影」と比べると制御種別が「警告」や「物資供給」の場合は監視対象に近づいて確実に警告したり物資を供給する必要がある。また、「不審者撮影」は「混雑撮影」に比べて不審者の顔を把握できるようにするため近づく必要があるが、「警告」や「物資供給」ほど近づく必要はない。このため、制御種別が「混雑撮影」の場合の距離W3が最も長く、制御種別が「警告」や「物資供給」の場合の距離W1が最も短くなるように、W1<W2<W3の関係を満たす距離に設定される。
【0056】
なお、
図2では、俯角と距離、又は俯角と距離と方向が制御種別ごとに紐付けされた制御種別情報を例にとって説明したが、俯角のみ、距離のみ、方向のみ、俯角と距離、俯角と方向、距離と方向が制御種別ごとに紐付けされた制御種別情報を記憶部43に記憶させておくこともできる。また、
図2において、制御種別が「不審者撮影」、「警告」、「物資供給」の場合には、監視対象がビル屋上などの高所にある場合を想定し、俯角に限らず仰角で設定してもよい。そして、上述した制御種別情報は、
図2に示すものに限定されず、制御種別に応じて俯角、距離、方向が適宜設定される。
【0057】
画像データは、各監視カメラ2や飛行装置3から所定のフレーム周期で所定時間おきに送信されるデータであり、監視カメラ2ごと飛行装置3ごとに記憶部43に逐次蓄積される。
【0058】
操作部44は、例えばマウス、キーボード、表示部45の表示画面上のソフトキーなどで構成される。操作部44は、後述する対処処理の開始又は終了の指示、監視カメラ2の撮影俯仰角θや飛行装置3の撮像部31aの撮影俯仰角αの設定、高度Hの設定、飛行装置3への警告や物資供給の指示、監視カメラ2の画像に基づく監視対象Nの追跡の指示、監視対象Nの特徴情報(後述)の指定、記憶部43に記憶保存された画像から監視対象Nの指定、各監視カメラ2や飛行装置3への指示(撮影指示、飛行指示)、画像データの削除などを行う際に監視員によって操作される。
【0059】
表示部45は、例えば液晶表示器などで構成される。表示部45は、制御部46の制御により、複数の監視カメラ2や飛行装置3から取得した画像データの表示などを行っている。
【0060】
制御部46は、監視対象Nに対して対処を行うのに適した目標位置に飛行装置3を移動制御する対処処理を実行するための構成として、監視対象検出部46a、取得部46b、目標算出部46c、飛行装置制御部46d、表示制御部46eを備えている。
【0061】
監視対象検出部46aは、監視カメラ2から所定のフレーム周期で所定時間おきに送信されてくる画像データの画像から監視対象N(例えば不審者や混雑)を検出する。この監視対象Nの検出は、従来の画像認識技術を用いればよい。一例を挙げれば、監視対象Nを特定するための複数種類の特徴を抽出し、抽出した特徴を対象特徴(特徴情報)として記憶部43に予め記憶させる。例えば人物が監視対象Nである場合は、顔画像、年齢、性別、髪色、上半身衣服色、下半身衣服色、所持品種別、所持品色、身長、体型などが複数種類の特徴情報などとする。これら複数種類の特徴情報は、識別器や色ヒストグラムを用いた公知の手法によって抽出される。
【0062】
尚、監視対象Nの特徴情報の入力方法としては、監視員が必要に応じて操作部44を操作して、記憶部43に記憶保存された監視カメラ2の画像から監視対象Nに当たる部分を指定すると、この指定された画像から上述した特徴情報を抽出し、抽出した特徴情報を対象特徴として記憶部43に記憶させる。また、監視員の指定操作に依らず、監視対象Nが予め決まっている場合には、その監視対象Nの特徴情報を対象特徴として記憶部43に記憶させておく。
【0063】
そして、監視対象Nを追跡する場合には、例えば、複数の監視カメラ2毎に撮影される画像から、上述した対象特徴の抽出手法と同様にして複数種類の特徴情報を抽出し、抽出した特徴情報と対象特徴との対比により監視対象Nを検出する。これら複数種類の特徴情報は、個々の特徴情報について監視対象Nの検出における信頼性を考慮した重み付け係数が設定されている。そして、上述した複数種類の特徴情報を特徴情報の種別ごとに比較して類似度を算出する。続いて、複数種類の特徴情報ごとに算出した類似度に対し、重み付け係数を掛け合わせ、特徴情報の種類毎の類似度に重み付け係数を掛け合わせて全て足し合わせたものを全体類似度とする。そして、予め記憶部43に記憶された監視対象Nと見なせる監視対象検出閾値(例えば類似度90%)と全体類似度とを比較し、全体類似度が監視対象検出閾値を超えていると判定すると、監視対象Nとして検出する。
【0064】
また、監視対象検出部46aは、上記のようにして検出した監視対象Nを所定フレームおきに取得される画像にわたって追跡する。例えば、現在の画像と1フレーム前の画像とのフレーム間差分をとることで画像中における変化領域を抽出し、監視対象Nの位置に相当する変化領域を特定する。そして、次に新たな画像データを取得した際も同様にフレーム間差分を行って変化領域を抽出し、この抽出した変化領域が、前回の監視対象Nに相当する変化領域として特定した変化領域と、その位置、大きさ、形状などの点において同一の物体とみなせるかを判定し、同一とみなせる場合には、その変化領域を今回の監視対象Nに相当する変化領域として特定する。これらの処理を新たな画像データを取得する度に繰り返すことで、監視カメラ2の画像中において監視対象Nを検出して追跡している。この監視対象Nの追跡にあたっては、監視対象Nの位置や進行方向が記憶部43に逐次更新記憶される。そして、監視対象検出部46aは、上述した手法により監視対象Nとして不審者や混雑を検出すると、この不審者や混雑を飛行装置3の撮像部31aで撮影するため、制御種別(不審者撮影、混雑撮影)を含む制御信号を目標算出部46cに出力する。
【0065】
取得部46bは、監視員により操作部44が操作されて後述する対処処理の指示がなされると、記憶部43から監視対象Nの位置や進行方向D1に関する情報を取得し、取得した情報を目標算出部46cに出力する。
【0066】
なお、取得部46bは、制御種別が「警告」や「物資供給」の場合には、監視員が表示部45に表示される監視カメラ2の画像から警告対象や物資供給する位置を確認し、操作部44の操作入力により警告や物資供給する位置を取得することができる。また、制御種別が「警告」の場合には、取得部46bは、監視員が表示部45に表示される監視カメラ2の前後の画像から警告すべき監視対象Nの進行方向D1を確認し、操作部44の操作入力により進行方向D1を取得することができる。その際、制御種別(警告、物資供給)の入力も合わせて行い、制御種別を含む制御信号を目標算出部46cに出力する。
【0067】
目標算出部46cは、制御種別を含む制御信号の入力があったときに、飛行装置3を移動制御するための目標の方向と位置を算出するもので、方向算出部46caと位置算出部46cbを有している。
【0068】
方向算出部46caは、監視対象Nが不審者又は警告対象(制御種別が不審者撮影又は警告)である場合、取得部46bが取得した監視対象Nの進行方向D1を読み出し、この読み出した監視対象Nの進行方向D1と逆方向D2を算出している。この監視対象Nの進行方向D1と逆方向D2とは、監視カメラ2にて撮影された画像上の監視対象Nの位置に向かう方向である。例えば
図4に示すように、監視対象Nを原点(0,0)とし、北を基準方位としたときの基準方位から角度φをなす方向を監視対象Nの進行方向D1とすると、この監視対象Nの進行方向D1と反対に飛行装置3から監視対象Nの位置に向かう方向が逆方向D2となる。
【0069】
位置算出部46cbは、取得部46bが取得した監視対象Nの位置と、記憶部43に記憶された飛行装置情報を元に、飛行装置3を移動制御するための目標位置を算出している。
【0070】
ここで、目標位置の算出方法について
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3は地上の水平面を仮想水平面Eとし、仮想水平面Eを側面から見たときの監視対象Nと監視カメラ2と飛行装置3との位置関係を示す図である。また、
図4は上空から地上を鉛直方向に見たときの仮想水平面E上における監視対象Nと監視カメラ2と飛行装置3との位置関係を示す図である。
【0071】
図3において、監視対象Nから飛行装置3の撮像部31aまでの仮想水平面E上の撮影距離(直線距離)をW、監視対象Nと飛行装置3の撮像部31aとを結ぶ直線と仮想水平面Eとのなす角度(撮影俯仰角)をα、仮想水平面Eからの飛行装置3の高度をHとすると、仮想水平面E上の撮影距離Wは、W=H/tanα…式(1)で表すことができる。
【0072】
そして、監視対象Nと飛行装置3の撮像部31aとを結ぶ直線と仮想水平面Eとのなす撮影俯仰角αと撮影距離Wは、制御種別に応じて記憶部43から読み出して設定される。例えば制御種別が「不審者撮影」であれば、撮影俯仰角αがα1、距離WがW2に設定される。また、制御種別が「混雑撮影」であれば、撮影俯仰角αがα2、距離WがW3に設定される。さらに、制御種別が「警告者」や「物資供給」であれば、撮影俯仰角αがα2、距離WがW1に設定される。そして、仮想水平面Eからの飛行装置3の高度Hは、撮影俯仰角αと距離Wが設定されると、上述した式(1)から算出して設定される。
【0073】
今、
図4に示すように、監視対象Nの位置を原点(0,0)としたときの基準方位(北)からの角度φの方向を監視対象Nの進行方向D1とすると、飛行装置3の移動位置(目標位置)は
図3における座標(Wsinφ,Wcosφ)、撮影方向は監視対象Nの進行方向D1と逆方向D2のφ+180°として算出することができる。
【0074】
飛行装置制御部46dは、目標算出部46cの位置算出部46cbが算出した目標位置に飛行装置3を移動制御する。また、飛行装置制御部46dは、目標位置において制御種別に応じて設定された撮影俯仰角αにて撮影範囲を撮影するように、飛行装置3又は撮像部31aの方向と飛行装置3の高度Hを制御する。
【0075】
表示制御部46eは、表示部45の表示を制御する。具体的には、通常の監視状態において、監視カメラ2から所定時間おきに送信される画像データに含まれる最新の画像を表示部45に表示している。また、後述する対処処理では、監視カメラ2と飛行装置3の両方から送信される最新の画像を表示部45に表示する。これにより、監視員は、表示部45に表示された画像をモニタすることにより監視領域の最新状況を知ることができる。
【0076】
次に、上記のように構成される監視システム1の動作として、監視対象に対して対処を行うのに適した目標位置に飛行装置3を移動制御する対処処理について説明する。
【0077】
監視システム1は、通常、地上から撮影した複数の監視カメラ2からの画像データに基づいて監視対象検出部46aが監視対象Nを検出して追跡を行っている。ここで、監視対象Nを追跡している際に、監視員が操作部44を操作して対処処理の指示を行うと、制御種別に応じて飛行装置3を目標位置まで移動制御する対処処理が開始される。以下、制御種別ごとの対処処理について説明する。なお、対処処理は、監視員の操作部44の操作によらず、監視対象検出部46aが監視対象Nを検出すると自動的に開始するようにしてもよい。
【0078】
・制御種別が「不審者撮影」の場合
目標算出部46cは、制御種別として「不審者撮影」を含む制御信号が入力されると、記憶部43を参照し、
図2に示す制御種別の「不審者撮影」に対応する俯角:α1、距離:W2、方向:不審者の進行方向と逆方向の情報を読み出し、読み出した情報を元に飛行装置3の目標位置を算出する。飛行装置制御部46dは、目標算出部46cが目標位置を算出すると、この算出した目標位置まで飛行装置3を移動制御する。そして、飛行装置3は、目標位置に到着すると、撮像部31aにて不審者の進行方向D1と逆方向D2から不審者を撮影する。この撮像部31aにて撮影した不審者の画像は、所定フレーム周期で所定時間おきにセンタ装置4に送信され、センタ装置4の表示部45に表示される。
【0079】
・制御種別が「混雑撮影」の場合
目標算出部46cは、制御種別として「混雑撮影」を含む制御信号が入力されると、記憶部43を参照し、制御種別の「混雑撮影」に対応する俯角:α2、距離:W3の情報を読み出し、読み出した情報を元に飛行装置3の目標位置を算出する。飛行装置制御部46dは、目標算出部46cが目標位置を算出すると、この算出した目標位置まで飛行装置3を移動制御する。そして、飛行装置3は、目標位置に到着すると、撮像部31aにて混雑状況を撮影する。この撮像部31aにて撮影した混雑状況の画像は、所定フレーム周期で所定時間おきにセンタ装置4に送信され、センタ装置4の表示部45に表示される。
【0080】
・制御種別が「警告」の場合
目標算出部46cは、制御種別として「警告」を含む制御信号が入力されると、記憶部43を参照し、
図2に示す制御種別の「警告」に対応する俯角:α2、距離:W1、方向:警告対象の進行方向と逆方向の情報を読み出し、読み出した情報を元に飛行装置3の目標位置を算出する。飛行装置制御部46dは、目標算出部46cが目標位置を算出すると、この算出した目標位置まで飛行装置3を移動制御する。そして、飛行装置3は、目標位置に到着すると、監視員によるセンタ装置4の操作部44の操作入力の指示により制御部36の警告制御部36cが警告部38を制御し、警告対象の進行方向D1と逆方向D2から警告対象に向けて照明をあてるとともに、警告対象に対して音声により警告を促す。また、撮像部31aにて警告対象を撮影する。この撮像部31aにて撮影した警告対象の画像は、所定フレーム周期で所定時間おきにセンタ装置4に送信され、センタ装置4の表示部45に表示される。
【0081】
・制御種別が「物資供給」の場合
目標算出部46cは、制御種別として「物資供給」を含む制御信号が入力されると、記憶部43を参照し、
図2に示す制御種別の「物資供給」に対応する俯角:α2、距離:W1の情報を読み出し、読み出した情報を元に飛行装置3の目標位置を算出する。飛行装置制御部46dは、目標算出部46cが目標位置を算出すると、この算出した目標位置まで飛行装置3を移動制御する。そして、飛行装置3は、目標位置に到着すると、監視員によるセンタ装置4の操作部44の操作入力の指示により制御部36の物資供給制御部36dが物資供給部39を制御し、目標位置に物資を投下して供給する。また、撮像部31aにて物資が供給された目標位置を撮影する。この撮像部31aにて撮影した目標位置の画像は、所定フレーム周期で所定時間おきにセンタ装置4に送信され、センタ装置4の表示部45に表示される。
【0082】
なお、上述した実施の形態においては、位置算出部46cが算出する目標位置は、
図3及び
図4上で示した位置そのものとして説明したが、この位置を中心とした誤差範囲を設け、この誤差範囲を目標位置としてよい。
【0083】
以上説明したように、上述した実施の形態による監視システムによれば、以下に示す効果を奏する。
【0084】
センタ装置4の記憶部43には、例えば不審者撮影、混雑撮影、警告、物資供給などの制御種別ごとに監視対象に対する俯仰角、距離、方向の情報を選択的に紐付けて記憶させておく。目標算出部46cは、監視対象検出部46aによる監視対象の検出や、監視員による操作部44の操作により対処処理が開始され、制御種別を含む制御信号が入力されると、記憶部43を参照して制御種別に対応する情報(俯仰角、距離、方向の組合せ)を読み出し、読み出した情報を元に飛行装置3の目標位置を算出する。飛行装置制御部46dは、目標算出部46cが算出した目標位置まで飛行装置3を移動制御する。かかる構成により、制御種別を考慮して、監視対象に対して対処を行うのに適した目標位置まで飛行装置3を移動させることができる。
【0085】
以上、本発明に係る監視システムの最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。