(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような従来の球面滑り軸受では、組み立て時において各構成要素のはめ合いを高精度に調整できたとしても、その後の使用環境として、例えば、過酷な温度変化を伴う環境下での使用が難しい場合があった。
【0005】
本発明は、広い可動範囲を持ち、様々な使用環境に適用できる球面軸受及び回転駆動装置並びに可変ノズル装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の球面軸受は、外周面が球状面で形成された部分を有する軸体と、前記軸体の球状面を個々独立して受ける複数の分割軸受体と、前記軸体の球状面に沿って配置される前記複数の分割軸受体を前記軸体側に付勢する付勢手段と、前記付勢手段によって前記軸体側に付勢される前記複数の分割軸受体を保持する保持部材と、を備え、前記保持
部材は、前記軸体が挿入配置される空間を画成する挿入開口部を有し、前記挿入開口部の開口周縁には、前記軸体との間で前記分割軸受体が挿入可能な挿入部が外周方向に複数設けられ、複数の前記挿入部の間のそれぞれには、前記挿入部から挿入された前記分割軸受体を前記軸体の球状面の外周方向に滑らせて前記分割軸受体を保持する保持部が設けられたことを特徴とする。
かかる本発明の様態によれば、複数の分割軸受体のそれぞれが付勢手段によって軸体側に付勢されているので、広い可動範囲を実現できて、様々な使用環境にも適用することが可能となる。
また、かかる本発明の様態によれば、保持部に設けた複数の貫通孔を通じて効率よく複数の分割軸受体を軸体の外周面に当接配置することが可能となる。
【0009】
あるいは、
本発明は、外周面が球状面で形成された部分を有する軸体と、前記軸体の球状面を個々独立して受ける複数の分割軸受体と、前記軸体の球状面に沿って配置される前記複数の分割軸受体を前記軸体側に付勢する付勢手段と、前記付勢手段によって前記軸体側に付勢される前記複数の分割軸受体を保持する保持部材と、を備え、前記保持
部材は、前記軸体が挿入配置される空間を画成する挿入開口部と、前記挿入開口部側とは反対側の外周部から前記挿入開口部に向けて貫通して設けられ、前記分割軸受体のそれぞれが挿入される複数の貫通孔とを有することを特徴とする
球面軸受についても広く対象とする。
かかる本発明の様態によれば、複数の分割軸受体のそれぞれが付勢手段によって軸体側に付勢されているので、広い可動範囲を実現できて、様々な使用環境にも適用することが可能となる。
また、かかる本発明の様態によれば、保持手段に設けた複数の貫通孔を通じて効率よく複数の分割軸受体を軸体の外周面に当接配置することが可能となる。
【0010】
上記本発明では、前記保持部材は、前記軸体を取り囲み、前記付勢手段を介在させて複数の前記分割軸受体を保持する環状の保持面を有することを特徴とする。
かかる本発明の様態によれば、複数の分割軸受体を安定的に保持することが可能となる。
【0011】
また、上記本発明では、前記付勢手段は、複数の前記分割軸受体毎に対応して個々独立して設けられた複数の弾性変形部を有することを特徴とする。
かかる本発明の様態によれば、各分割軸受体のそれぞれに弾性変形部を設けることで、個々独立した各分割軸受体の動作を実現できる。
【0012】
さらに、上記本発明では、前記付勢手段は、複数の前記分割軸受体のそれぞれに一体的に設けられた弾性変形部を有することを特徴とする。
かかる本発明の様態によれば、各分割軸受体のそれぞれに共通の弾性変形部を設けることにより、各分割軸受体の付勢構造が簡略化される。
【0013】
上記本発明では、複数の前記分割軸受体のそれぞれは、同一形状で設けられ、前記付勢手段は、複数の前記分割軸受体のそれぞれを前記軸体に向けて均等な付勢力で付勢するようにしたことを特徴とする。
かかる本発明の様態によれば、軸体を均等な付勢力で保持できることから、安定した軸受構造を実現できる。
【0014】
なお、本発明は、上述した球面軸受を備えた回転駆動装置にも広く適用できる。
かかる本発明の態様によれば、広い可動範囲を持ち、様々な使用環境に適用できる軸受構造を持った回転駆動装置を実現できる。
【0015】
また、本発明は、上述した構成に限定されず、例えば、外周面の一部が球状面で形成された球状部を有するノズル部材と、前記ノズル部材のノズル孔に連通する圧力空間を画成する圧力容器と、を備え、前記圧力容器のうち前記ノズル部材が装着されるノズル装着部には、前記ノズル部材の前記球状部を受ける球面軸受が
設けられ、前記ノズル部材のうち前記球状部から前記圧力空間内に延設される基端部は、前記球面軸受の外周部に対してシール部材を介在させて摺接し、前記ノズル部材の前記基端部と前記
球面軸受けの外周部とは、前記ノズル部材の回動中心と同心円上で摺接するようにした可変ノズル装置についても広く対象とする。
【0016】
かかる本発明の態様によれば、ノズル部材と球面軸受との摺接部分にシール部材を介在させることにより、ノズル部材を可動させても、圧力容器内の圧力変動を効果的に抑えることができる。
【0017】
なお、このような本発明の可変ノズル装置では、前記球面軸受は、前記球状部の前記球状面を個々独立して受ける複数の分割軸受体と、前記
ノズル部材の球状面に沿って配置される前記複数の分割軸受体を前記
ノズル部材側に付勢する付勢手段と、前記付勢手段によって前記
ノズル部材側に付勢される前記複数の分割軸受体を保持する保持部材と、を有し、前記保持部材は、前記圧力容器に結合されていることを特徴とする。
かかる本発明の態様によれば、圧力容器内の圧力変動を効果的に抑えながら、ノズル部材の可動範囲を広く設定できる他、様々な使用環境にも適用できる。
さらに、本発明では、上述した構成に限定されず、例えば、球状面で形成された部分を有する軸体と、前記軸体の球状面を個々に受ける複数の軸受体と、
前記複数の軸受体を軸体側に付勢する付勢手段と、貫通孔の両側に開口を有するリング形状を有し、前記複数の軸受体を保持する保持部材と、を備えた球面軸受であって、前記保持部材は、その内周面に前記複数の軸受体を周方向に互いに間を空けて保持する複数の保持部と、それぞれの前記保持部に対応して両側の開口内に突出して設けられ、各軸受体の軸方向の移動を制限する複数の庇部と、を有することを特徴とする球面軸受についても広く対象とする。
かかる本発明の態様によれば、各軸受体の軸方向の移動を制限することができる。
また、上記本発明では、前記保持部材の周方向で前記複数の庇部の間に形成される複数の切欠部を備え、前記複数の切欠部の各々に対応して前記軸体と保持部材との間に空間を有することを特徴とする。
かかる本発明の態様によれば、前記空間は組み立て時において複数の軸受体をそれぞれ挿入する部分となるが、組み立て後は、熱放出を行うための通気部となる。これにより、様々な使用環境に対する適応力を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、広い可動範囲を持ち、様々な使用環境に適用できる球面軸受及び回転駆動装置並びに可変ノズル装置を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0021】
本発明の球面軸受は、軸体と、この軸体を個々独立して受ける複数の分割軸受体と、これら複数の分割軸受体を軸体側に付勢する付勢手段と、軸体を付勢した複数の分割軸受体を保持する保持部材とを備えた、広い可動範囲を持ち、様々な使用環境に適用できる加圧球面軸受に関するものである。
【0022】
すなわち、本発明は、保持手段が保持した複数の分割軸受体によって軸体を取り囲みつつ複数の分割軸受体を軸体側に付勢(加圧)した独立縣架の加圧球面軸受の構成とし、複数の分割軸受体の間で軸体の球面滑り動作に加え、軸体の揺動を実質的に許容し、軸体に対する各分割軸受体の高い追従性を実現した点に特徴がある。
【0023】
このように、上述した本発明の特徴的構成は、球面滑り動作可能な軸体の可動範囲が実質的に大きくなり、更に、軸体の付勢(加圧)状態によって、軸体に対する高い追従性を持った加圧球面軸受となり、様々な使用環境、例えば、過酷な温度変化を伴った環境下での熱膨張に適用できる他、軸体に加わる物理的な衝撃吸収、又は保持手段に加わる物理的な衝撃吸収にも極めて有効である。
【0024】
また、本発明は、主に、異なる金属材料で形成された軸体(内輪)及び複数の分割軸受体(外輪)、すなわち、金属製の球状軸受体とするのがよい。軸受としての高い形状安定性、高耐久性を実現できる。
【0025】
さらに、本発明では、外輪を構成する複数の分割軸受体は、それぞれが同一形状で、内輪を構成する軸体の外周に等間隔で3分割または4分割するのがよい。軸受体を細かく分割すれば、軸体の揺動範囲を広く設定できる他、安定駆動を併せて実現できる。
【0026】
また、軸体を取り囲む各分割軸受体と、これら各分割軸受体を保持する保持手段との間には、付勢手段を介在させることで、各分割軸受体を軸体側に加圧状態、すなわち、独立縣架した構成となる。これにより、具体的には詳述するが、軸体を各分割軸受体で受けた状態のまま、その軸受部分の可動範囲を広く設定できる。
【0027】
このような付勢手段は、予め保持手段に装着されていてもよいし、各分割軸受体のそれぞれに対応して設けられていてもよい。例えば、付勢手段を保持手段に装着しておく場合には、その付勢手段は、各分割軸受体のそれぞれに共通の付勢手段であってもよいし、別々の付勢手段を設けてもよい。いずれの場合でも、付勢手段から各分割軸受体に対する付勢力をそれぞれ同等に設定とすれば、軸体に対して均等に加圧した安定的な独立縣架の加圧球面軸受を構成することが可能となる。
【0028】
さらに、上述した各分割軸受体を保持する保持手段は、例えば、軸体を加圧保持する各分割軸受体を取り囲んで一体的に設けられた環状の枠体(ハウジング)で構成するのがよい。これにより、各分割軸受体を安定的且つ確実に保持することが可能となるため、信頼性の向上に有効である。なお、本発明は、このような保持手段に対して物理的な衝撃が加わっても、各分割軸受体が軸体側に付勢された状態であることから、軸体に対する衝撃吸収の構成を実現できる他、熱膨張による寸法変化にも適用可能である。
【0029】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0030】
<第1実施形態>
図1には、本発明の第1実施形態に係る球面軸受の全体的な概略構成図を示し、
図1(a)が斜視図であり、
図1(b)が正面図である。
図2には、
図1の球面軸受の分解斜視図を示す。
図3には、
図2の要部拡大図を示す。
図4には、
図1の球面軸受の平面図及び断面図を示す。
【0031】
図1乃至
図4に示すように、本実施形態の球面軸受100は、外周面が球状面110aで形成された軸体110と、この軸体110を受ける軸受ユニット120と、この軸受ユニット120を保持する保持部材130とを備え、例えば、取付対象物となるベース基板140に連結される。
【0032】
ここで、軸体110は、その軸方向に貫通する貫通孔111が設けられた金属製の円筒状部材からなり、その外周面が球状面110aで形成されている。また、この軸体110に設けられた貫通孔111には、詳細は後述するが、棒状部材が嵌合することで、球面滑り動作する軸体110を備えた軸部材となる。なお、この軸体110を形成する材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、本実施形態ではアルミニウムで形成した。
【0033】
このような軸体110を受ける軸受ユニット120は、軸体110の外周方向に沿って軸体110を取り囲むように配置された4つの分割軸受体121で構成される。また、これら各分割軸受体121は、例えば、本実施形態では金属製の円弧状部材から形成され、軸体110の外周面(球状面110a)を受ける側の面が軸体110の球状面110aに沿った球状の軸受面121aで設けられている。さらに、これら各分割軸受体121のうち軸受面121aとは反対側の外周面に弾性変形部122が一体的に接合されている。すなわち、本実施形態の軸受ユニット120は、弾性変形部122がそれぞれ設けられた4つの分割軸受体121によって構成される。なお、上記軸体110を形成する金属材料と、分割軸受体121を形成する金属材料とは異なるものを用いるのがよく、例えば、本実施形態では、各分割軸受体121を真鍮で形成した。また、本実施形態では、弾性変形部122が各々設けられた分割軸受体121の形状を同一形状とし、各弾性変形部122による付勢力も同等とした。
【0034】
さらに、上記の軸受ユニット120を保持する保持部材130には、各軸受ユニット120が挿入保持される保持孔131が軸方向に貫通して設けられている。例えば、本実施形態の保持部材130は、保持孔131が設けられた円筒部132と、この円筒部132の一端部側の外周部において径方向外側に突出して設けられた鍔状のフランジ部133とを有する。なお、このフランジ部133は、
図1及び
図2に示すように、ベース基板140に対して、ビスAで連結される。
【0035】
また、このような保持部材130の保持孔131には、各軸受ユニット120のそれぞれを保持する4つの保持部134が内周面に沿って等間隔に設けられ、これら各保持部134の間には各軸受ユニット120が挿入可能となる4つの切欠部135が設けられている。さらに、各保持部134は、保持孔13
1の開口内に突出して設けられ、各軸受ユニット120の軸方向の移動を制限する一対の庇部136を有する。
【0036】
このような保持部材130の保持孔131のうち一方側の開口部は、軸体110が同軸上に挿入される挿入開口部137を形成する。そして、この挿入開口部137内に対して軸体110が配置されている状態では、挿入開口部137の開口周縁において、各分割軸受体121が挿入可能となる挿入部138が4つの切欠部135と軸体110との間にそれぞれ形成される。このような各挿入部138は、組み立て時において分割軸受体121をそれぞれ挿入する部分となるが、組み立て後は、熱放出を行うための通気部となる。これにより、様々な使用環境に対する適応力を高めることができる。
【0037】
また、保持部材130の保持孔のうち他方側の開口部には、軸体110が配置される状態において上記切欠部135の開口を塞ぐための4つの取付片139が、
図2及び
図3(b)に示すように、ビスBで連結される。これら各取付片139の端部には、各分割軸受体121の移動を制限する突起部139aが設けられている。すなわち、各取付片139で各切欠部138を塞いだときに、保持部134に保持された各分割軸受体121の角部に突起部139aが当接し、これによって保持部134に位置する各分割軸受体121の移動が実質的に制限される。なお、ここで、各分割軸受体121間の幅(ピッチ幅)は、軸体110の軸方向の幅よりも小さく設定されており、これによって上述した各分割軸受体121の挿入配置が容易となる。
【0038】
上記球面軸受100は、取付対象物となるベース基板140に連結される。ベース基板140は軸方向に貫通する開口孔141と、保持部材130のフランジ部133が嵌る溝142と、保持部材130の4つの切欠片139を連結させるビスBが貫通するビス保持孔143が設けられている。ベース基板140は、
図2に示すように保持部材130のフランジ部133と4つのビスAで連結される。
【0039】
ここで、
図5を参照して、球状軸受体の動作を説明する。
図5には、
図1の球面軸受の軸体が軸を備えた概略図を示す。
【0040】
図5に示すように、本実施形態の球面軸受100においては、軸体110に棒状部材150が篏合しており、球面軸受110内で球面滑り動作をする軸体110が軸部材となる。このような本実施形態の球面軸受100は、ベース基板140に固定された状態において、軸体110の中心軸に対して回転が可能である。また、
図5(a)及び
図5(b)に示すような球面滑り動作も滑らかに行うことができる。また、このような軸体110を受ける軸受ユニット120は、軸体110に対して各分割軸受体121を付勢手段によって付勢しているため、各分割軸受体121の軸体110(つまり軸体)へ追従性する。これにより、軸体110に対して球面滑りに要する動作とは異なる衝撃が加わっても、軸体110に対して各分割軸受体121が追従するため、軸体110の軸受状態は保持される。したがって、軸体110の軸としての可動範囲に加えて、付勢状態による軸体110の揺動範囲を付加することができる。
【0041】
なお、
図6を参照して、本実施形態における球面軸受100の組立手順について詳細に説明する。
図6は、本実施形態に係る球面軸受の組立手順を示す斜視図である。
【0042】
まず、
図6(a)に示すように、保持部材130の挿入開口部137に対して同軸上に軸体110を挿入する。次に、
図6(b)に示すように、軸受ユニット120を構成する分割軸受体121及び弾性変形部122の1つを保持部材130の挿入部138に対して挿入する。このとき、分割軸受体121の軸受面121aを保持部材130内の軸体110の外周面に沿って滑らせて挿入する。続いて、
図6(c)に示すように、軸体110の外周面と分割軸受体121の内周面を沿わせながら、1つの軸受ユニット120を保持する保持部134へとスライドさせる。なお、このときの軸受ユニット120の状態を示す断面図を
図4(a)に示す。次いで、残り3つの分割軸受体121及び弾性変形部122についても同様にして各保持部134にスライド挿入配置する。そして、
図3(b)及び
図4(b)に示すように、軸受ユニット120の間に対応して取付片139をビスBで固定して球面軸受100を組み立てた後、ベース基板140にビスAで固定する。これにより、全ての部品の組立が完了し、このとき球面軸受100の中心軸が定まる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の球面軸受100では、保持手段130が保持した4つの分割軸受体121によって軸体110を取り込みつつ、等間隔で環状に配置された4つの分割軸受体121を軸体110側に付勢(加圧)しているので、安定的な独立懸架の加圧球面軸受の構造を実現できる。
【0044】
より詳細には、本実施形態では、個々独立して均等配置された各分割軸受体121によって軸体110が均等な付勢力を受けているため、各分割軸受体121内で軸体110が球面滑り動作が可能な状態のまま、例えば、軸体110に対して外部から衝撃が加わっても付勢範囲内でその衝撃を吸収できることから、保持手段130あるいはベース基板140に対して衝撃の伝播を有効に低減することができる。なお、保持手段130やベース基板140に対する衝撃についても、上記の付勢範囲内で、軸体110に直接伝播することを防止することができる。すなわち、本実施形態の球面軸受100は、球面滑り動作に加えて揺動可能な構造となるため、広い可動範囲を実現できて、様々な使用環境に適用できる他、安定した球面滑り動作を実現できる。
【0045】
さらに、本実施形態では、4つの分割軸受体121が軸体110の外周に沿って均等な間隔で4方向から軸体110を球面滑り可能且つ揺動可能に保持した構造となっていることから、非常にシンプルで且つ比較的低コストな軸受構造を実現できる。
【0046】
さらに、本実施形態では、4つの分割軸受体121の外周面に弾性変形部122が一体的に接合されているので、軸体110の球面滑り動作に加えて、軸体110の揺動を実質的に許容し、軸体110に対する各分割軸受体121の高い追従性を実現できるため、例えば、使用環境に起因して生じる熱膨張などの寸法変化、あるいは外部からの衝撃が頻繁に加わるような使用環境にも対応することができる。
【0047】
特に、本実施形態は、球面滑り動作可能な軸体110の可動範囲が大きくなり、さらに、軸体110の付勢(加圧)状態によって、軸体110に対する高い追従性をもった加圧球面軸受となるため、軸体110に加わる物理的な衝撃吸収、または保持手段130に加わる物理的な衝撃に対して、高耐久性を実現することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、軸体110が一つの部品として構成されているが、軸と一体型となって、過酷環境下においても容易に組立が可能であり、さらに軸への安定した追従性も実現される。
【0049】
<第2実施形態>
図7には、本発明の第2実施形態に係る球面軸受の全体的な概略図を示し、
図7の(a)が斜視図であり、
図7(b)は立体分解図である。なお、本実施形態において、一部の軸受構成については、上述した第1実施形態と同様のため、重複する説明及び図示は省略する。
【0050】
具体的には、本実施形態の球面軸受200では、第1実施形態の保持部材130における円筒部132を貫通して軸受ユニット120が挿入される4つの挿入貫通孔132aと、これら各挿入貫通孔132を塞ぐための保持片132bとを設け、更に、円筒部132の外側を覆う保持カバー231をビスCで取付固定する構造とした以外は、上述した第1実施形態と同様である。
【0051】
なお、軸受ユニット120は、保持部材130内の保持孔137に対して軸体110を挿入配置後に、各挿入貫通孔132aに挿入され、その後、保持片132b、保持カバー231、保持片139のそれぞれによって、軸体110に対する移動が実質的に制限される。
【0052】
また、本実施形態では、軸受ユニットに対応して設けられる挿入貫通孔132aの挿入口が、上述した第1実施形態における保持部材130の挿入部138の代わりに設けられており、より詳細には、
図7(b)に示すように、円筒部132の外周を厚さ方向に貫通し、円筒部132の軸に垂直な方向の貫通孔として挿入貫通孔132を設ける。この挿入貫通孔132aは全て庇部136に対応して形成され、さらに保持部材230は、上記挿入貫通孔132aを塞ぐために挿入貫通孔132aと実質的に同一形状の保持片132bを有する。
【0053】
また、保持部材230の保持片132bを固定するための保持カバー231は、
図7(b)に示すように、保持部材230のフランジ部133とビスCで連結される。例えば、本実施形態の保持カバー231は、保持片132bの動きを固定するために、保持片132bの外周面を全て覆うような円筒カバー部231aを有する。
【0054】
ここで、
図8を参照して、本実施形態における球面軸受200の組立手順について説明する。
図8は
図7の組立手順図を示す。
図8(a)に示すように、保持部材230の挿入開口部137から同軸上に軸体110を挿入する。次に、
図8(b)に示すように、保持部材230の円筒部132に設けられた挿入貫通孔132aに対して軸受ユニット120、保持片132bの順に挿入する。最後に、
図8(c)に示すように、保持カバー231を保持部材230の円筒部132の軸方向に挿入する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態においても第1実施形態で述べた効果と同様な効果があり、さらに軸受ユニット120を保持部材230の円筒部132の外周からの挿入保持が可能となる。これにより、軸体110にする軸受ユニット120の設置を比較的容易に行うことが可能となる。
【0056】
<第3実施形態>
図9には、本発明の第3実施形態に係る球面軸受の全体的な概略図を示し、
図9(a)が斜視図であり、
図9(b)が分解斜視図である。なお、本実施形態において一部の軸受構造については、上述した第1実施形態及び第2実施形態と同様のため、重複する説明及び図示は省略する。
【0057】
具体的には、上述した第1実施形態及び第2実施形態の軸受ユニット120は各分割軸受体121の外周面に一体的に弾性変形部122が接合されているのに対し、本実施形態の球面軸受300は、
図9(b)に示すように分割軸受体121と弾性変形部122とが別体として存在する。
【0058】
さらに、上述した第2実施形態では、軸受ユニット120を保持部材230へと取付後、保持片132bを挿入しているのに対して、本実施形態は、
図9(b)に示すように、保持片132bが存在せず、別体となった弾性変形部331が保持片の役割も担っている。
【0059】
例えば、本実施形態の弾性変形部331は、保持部材330の軸方向と垂直に存在する挿入貫通孔132aに挿入した時、軸体110に対して分割軸受体121が全て付勢するように、保持部材330の円筒部132の外周と等しい径の外周面を有する。
【0060】
ここで、
図10を参照して本実施形態の球面軸受300の組立手順を説明する。
図10は
図9の組立手順図である。
図10(a)は、第1実施形態と同様に、保持部材330の挿入開口部137に同軸上に軸体110を挿入し、保持部材330の挿入貫通孔132aから分割軸受体121を挿入し、保持部までスライドして挿入する。この時、
図10(d)に示すように、分割軸受体121の内周面は軸体110の外周面に必ずしも触れていなくてもよい。次に、
図10(b)は第2実施形態と同様に、保持部材330の軸と垂直方向に設けられた挿入貫通孔132aから弾性変形部331を挿入する。最後に
図10(c)に示すように、第2実施形態と同様に、保持カバー231を取り付ける。この時、
図10(e)に示すように、弾性変形部331が分割軸受体121を軸体110へと付勢するため、分割軸受体121の内周面と軸体110の外周面とが実質的に当接し、個々独立した独立縣架の構造が形成される。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の保持部材330によれば、第1実施形態及び第2実施形態で述べた効果と同様の効果がある。また、弾性変形部331と分割軸受体121が同じ挿入口からの挿入が困難な場合でも、それぞれを保持部材へと取り付けることが可能となる。これにより、弾性変形部331の大きさや形に関係なく、弾性変形部331を設置することが可能となる。
【0062】
<第4実施形態>
図11には、本発明の第4実施形態に係る球面軸受の全体的な概略図を示し、
図11(a)が斜視図であり、
図11(b)が分解斜視図である。なお、本実施形態において、一部の軸受構造については、上述した第1実施形態から第3実施形態と同様のため、重複する説明及び図示は省略する。
【0063】
具体的には、上述した第1実施形態から第3実施形態の弾性変形部は個々独立して存在しているのに対して、本実施形態の球面軸受400は、
図11(b)に示すように、各分割軸受体121に共通の弾性変形部422が保持部材430の円筒部内周面に接合されている。なお、各分割軸受体121の取付手順は、上述した第1実施形態と同様である。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の球面軸受400は、各分割軸受体121のそれぞれに共通の弾性変形部422を設けることにより、各分割軸受体121の付勢構造を簡略化することができる。
【0065】
<第5実施形態>
図12には、本発明の第5実施形態に係る球面軸受の全体的な概略図を示す。なお、本実施形態において、一部の軸受構造については、上述した第1実施形態から第4実施形態と同様のため、重複する説明及び図示は省略する。
【0066】
具体的には、第1実施形態から第4実施形態の軸体は、独立して存在していたが、本実施形態の球面軸受500は、軸体510が軸と一体型になっている以外は、取付手順や軸の自由度も第1実施形態から第4実施形態と同様である。
【0067】
以上説明したように、本実施形態では第1実施形態から第4実施形態までの効果と同様の効果があり、さらに軸と軸体が一体型であるため、部品点数が減り、ガタが少なくなり、機械的精度が向上する。
【0068】
<他の実施形態>
以上、本発明を第1〜第6実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上述した第1〜第5実施形態に限定されるものではない。
【0069】
上述した第1〜第5実施形態では、すべてにおいて軸体に対する高い追従性を持った加圧球面軸受となり、また軸体に加わる物理的な衝撃吸収、又は保持手段に加わる物理的な衝撃吸収にも有効である。
【0070】
上述した第1〜第5実施形態では、保持部材を円柱状の部材として説明をしたが、本発明はこれに特に限定されず、例えば角柱状のような部材としてもよい。
【0071】
また、上述した第1〜第5実施形態での弾性変形部の形状は、ゴムシートのような部材であったが、シート状の部材に限らず、弾性変形が可能な部品を一部品またはそれらを組み合わせて使用してもよい。
【0072】
なお、上述した第1〜第5実施形態では、分割軸受体と弾性変形部の挿入方法は、例えば、4つの分割軸受体と弾性変形部で構成されている場合、2つの分割軸受体が第1実施形態で挿入した方法で、残りの2つが第2実施形態で挿入した方法で挿入するなど、その挿入方法を組み合わせて使用してもよい。
【0073】
本発明は、分割軸受体の材質は、例えば分割軸受体が4部品ある場合、2部品を鉄、2部品をカーボンとし、交互に配置をしてもよい。これによりカーボンが潤滑材として役割をなし、より滑らかに軸体が動くことが可能になる。
【0074】
また、本発明では、上述した各分割軸受体の軸受面に溝部を設け、軸体に対する摩擦力を低減するようにしてもよい。なお、このような溝部は、軸体の軸受面に対してライン状に1つ設けてもよいし、十字状に交差させて2つ設けてもよい。これにより、摩擦力低減の他、ごみ避け、潤滑剤(グリス等)の溜り部としても活用できる。また、このような溝部は、各分割軸受体の裏面、すなわち、付勢手段側の面に設けてもよい。これにより、熱膨張時において自由な変形を促すことができる。
【0075】
なお、本発明の球面軸受は、例えば、事務機や産業機械などの軸受構造に適用することで、様々な使用環境においても、安定した軸受となることから、駆動安定性に貢献する。また、本発明の球面軸受は、広い可動範囲を実現できることから、流体などを噴射する可動ノズル(偏向型ノズルを含む)、または、各種モータ軸受など、様々な分野の軸受に適用することができる。
【0076】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は、下記の実施形態についても対象とする。例えば、本発明は、
図13に示すような圧力容器710に挿入されるノズル部材720を球面滑り軸受で受けた可変ノズル装置700にも適用可能である。なお、
図13は、本発明の一実施形態にかかる可変ノズル装置の概略断面図である。
【0077】
具体的には、
図13に示すように、ノズル部材720は、内径が先端に向かって漸大するスカート部721と、このスカート部721に連通する小径部722と、この小径部722から延設されて巻き込むように湾曲した基端部となる環状リング部723とを備える。
【0078】
また、このようなノズル部材720の小径部722には、外周面の一部が球状面724aで形成された球状部724が外周方向に亘って設けられている。また、ノズル部材720のノズル孔(貫通孔)725のうち基端部側は、圧力容器710内の圧力空間711に連通している。すなわち、ノズル部材720は、ノズル部材720の基端部(環状リング部723)側のうち球状部724が実質的に圧力空間711内に配置されるように、圧力容器710内に挿入配置されている。
【0079】
さらに、圧力容器710のうちノズル部材720の球状部724が装着されるノズル装着部712には、ノズル部材720の球状部724を受ける球面軸受730が設けられている。詳細には、この球面軸受730は、例えば、ノズル部材720の球状部724を受ける軸受体731と、この軸受体731を保持する保持部材732とから構成される。このような球面軸受730は、圧力容器710(圧力空間711)内に突出して設けられている。
【0080】
また、ノズル部材720の環状リング部723の内周部には、球面軸受730が挿入配置される。この状態では、ノズル部材720の環状リング部723の内周部は、球面軸受730の外周部に摺接する。さらに、ここでは、球面軸受730の外周部には、溝部732aが外周方向に連続して設けられ、この溝部732aには、環状のシール部材(例えば、Oリング)740が配置されている。
【0081】
すなわち、上述したノズル部材720における環状リング部723の内周部は、シール部材740を介在して球面軸受730の外周部に係合している。このようなノズル部材720の環状リング部723とシール部材740とは、ノズル部材720の回動中心と同心円上に摺接する。このため、ノズル部材720が可動(変位)しても、常に、シール部材740がノズル部材720と球面軸受730との間に介在するため、圧力容器710内の圧力変動を効果的に抑えることが可能となる。
【0082】
上述した可変ノズル装置700における球面軸受740は、上述した第1乃至第6実施形態のような球面軸受の構造を採用してもよい。これにより、圧力容器710内の圧力変動を効果的に抑えながら、ノズル部材720の可動範囲を広く設定できる他、様々な使用環境にも適用できる。