(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482861
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】水中不分離性モルタル組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/04 20060101AFI20190304BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20190304BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20190304BHJP
C04B 24/32 20060101ALI20190304BHJP
C04B 22/04 20060101ALI20190304BHJP
C04B 24/38 20060101ALI20190304BHJP
C04B 24/30 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
C04B28/04
C04B22/06 Z
C04B24/26 E
C04B24/32 A
C04B22/04
C04B24/38 D
C04B24/30 D
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-261893(P2014-261893)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-121039(P2016-121039A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】赤江 信哉
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 昌範
【審査官】
佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−132041(JP,A)
【文献】
特開2013−249214(JP,A)
【文献】
特開2009−184891(JP,A)
【文献】
特開平05−170502(JP,A)
【文献】
特開2010−095389(JP,A)
【文献】
特開2009−161387(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0046270(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張材、減水剤、増粘剤、セメント及び細骨材を含有し、前記セメントが普通ポルトランドセメント及び早強ポルトランドセメントを主要セメント成分とし且つ含有する早強ポルトランドセメントに対する普通ポルトランドセメントの質量比が25/75〜75/25であるセメントであり、セメント100質量部に対して細骨材25〜80質量部及び増粘剤0.3〜0.6質量部を含有し、水粉体比23.5〜27.5%で混練することを特徴とする水中不分離性モルタル組成物。
【請求項2】
セメント100質量部に対して、膨張材0.5〜3.5質量部及び減水剤1〜4質量部を含有するものである請求項1記載の水中不分離性モルタル組成物。
【請求項3】
前記減水剤が、セメント100質量部に対してポリカルボン酸系減水剤0.3〜2質量部及びメラミン系減水剤0.3〜3質量部を併用するものである請求項1又は2記載の水中不分離性モルタル組成物。
【請求項4】
さらに、消泡剤及び発泡剤から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の水中不分離性モルタル組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の水中不分離性モルタル組成物と、水粉体比23.5〜27.5%の水とを混練してなる水中不分離性モルタル。
【請求項6】
膨張材、減水剤、増粘剤を含有する混和材料と水とを混練してなる懸濁物質と、セメント及び細骨材とを混練してなる請求項5の水中不分離性モルタル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中打設に用いられるグラウト材(水中グラウト)に主に使用される水中不分離性モルタル組成物及び水中不分離性モルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
河川や海岸の土木工事等で、モルタル(コンクリートを含む)を水中で打設する際、周囲の水との接触を出来るだけ断ち、材料分離を最小限に止めることが重要である。従来は、通常配合のコンクリートをコンクリートポンプ工法やトレミー工法で打設することが行われてきた。しかしながら、何れの工法も材料分離が大きく、打設現場の水質汚染が課題となっていた。
【0003】
そのため、混和することによりモルタル自身の性能を改良し、モルタルの水中における材料分離抵抗性を向上する、セルロース系やアクリル系の高分子を主成分とした水中不分離性混和剤(増粘剤)又は当該水中不分離性混和剤を含有する水中グラウト用混和材を混和したモルタル(グラウト材)を水中で打設する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、水中施工において締固めを行うと材料分離、強度低下又は周りの水の濁りが増すため、締固めを極力行わずとも充填できる良好な流動性が必要となる。特定のポリカルボン酸系減水剤と特定のメラミン系減水剤を併用することによって高い流動性を有する水中不分離性モルタル組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−138055号公報
【特許文献2】特開2009−161387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、橋脚の耐震工法として鋼板巻き立て工法が行われており、間隙の充填材には無収縮グラウト材(無収縮モルタル)が用いられ、近年、その耐震補強工事が進捗し、水中の橋脚への施工が増えてきている。そのため、鋼板と橋脚との間隙部に河川の水が満たされた場所において、良好な水中不分離性を有する無収縮グラウト材が用いられることが増えてきた。加えて通常の無収縮グラウト材並みの強度発現性(20℃、材齢28日において50N/mm
2以上)を水中打設の場合においても求められることも増えてきた。しかしながら、水中不分離性グラウト材では、通常の無収縮グラウト材並みの強度発現性を求めると、単位セメント量の増量や早期強度発現性を有するセメントの使用などの配合設計の変更が考えられるが、水中不分離性の観点からは好ましくない。
かかる点から、水中打設の場合においても通常の無収縮グラウト材並みの強度発現性を有し、且つ高い流動性も有する水中不分離性グラウト材が得られる水中不分離性モルタル組成物及び水中不分離性モルタルが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、前記課題を解決すべく、セメントの種類、細骨材、増粘剤及び水粉体比等について種々検討した結果、普通ポルトランドセメントと早強ポルトランドセメントを特定割合で配合し、かつ細骨材、増粘剤及び水粉体比を一定の割合とすることによって、水中打設でも優れた強度発現性を有し、かつ高い流動性も有する水中不分離性モルタル組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔6〕を提供するものである。
〔1〕膨張材、減水剤、増粘剤、セメント及び細骨材を含有し、前記セメントが普通ポルトランドセメント及び早強ポルトランドセメントを主要セメント成分とし且つ含有する早強ポルトランドセメントに対する普通ポルトランドセメントの質量比が25/75〜75/25であるセメントであり、セメント100質量部に対して細骨材25〜80質量部及び増粘剤0.3〜0.6質量部を含有し、水粉体比23.5〜27.5%で混練することを特徴とする水中不分離性モルタル組成物。
〔2〕セメント100質量部に対して、膨張材0.5〜3.5質量部及び減水剤1〜4質量部を含有するものである上記〔1〕の水中不分離性モルタル組成物。
〔3〕前記減水剤が、セメント100質量部に対してポリカルボン酸系減水剤0.3〜2質量部及びメラミン系減水剤0.3〜3質量部を併用するものである上記〔1〕又は〔2〕の水中不分離性モルタル組成物。
〔4〕さらに、消泡剤及び発泡剤から選ばれる1種以上を含有する上記〔1〕〜〔3〕のいずれかの水中不分離性モルタル組成物。
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の水中不分離性モルタル組成物と、水粉体比23.5〜27.5%の水とを混練してなる水中不分離性モルタル。
〔6〕膨張材、減水剤、増粘剤を含有する混和材料と水とを混練してなる懸濁物質と、セメント及び細骨材とを混練してなる上記〔5〕の水中不分離性モルタル。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水中打設の場合においても通常の無収縮グラウト材並みの優れた強度発現性を有し且つグラウト材として用いることができる高い流動性も有する水中不分離性モルタルが得られる水中不分離性モルタル組成物が得られる。
また、本発明によれば、水中打設の場合においても通常の無収縮グラウト材並みの優れた強度発現性を有し且つ高い流動性も有する水中不分離性グラウト材が得られる水中不分離性モルタルが得られる。
また、本発明によれば、水中打設の場合においても通常の無収縮グラウト材並みの優れた強度発現性を有し且つ高い流動性も有する水中不分離性グラウト材が得られる。
また、本発明によれば、無収縮性の水中不分離性モルタル組成物、水中不分離性モルタル又は水中不分離性グラウト材が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の水中不分離性モルタル組成物は、膨張材、減水剤、増粘剤、セメント及び細骨材を含有し、前記セメントが普通ポルトランドセメント及び早強ポルトランドセメントを主要セメント成分とし且つ含有する早強ポルトランドセメントに対する普通ポルトランドセメントの質量比が25/75〜75/25であるセメントであり、セメント100質量部に対して細骨材25〜80質量部及び増粘剤0.35〜0.55質量部を含有し、水粉体比23.5〜27.5%で混練することを特徴とする。
【0010】
発明で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、又はシリカ粉末を混合した各種混合セメント、各種の産業廃棄物を主原料として製造されるエコセメントなどが挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。
本発明では、強度発現性や材料分離抵抗性の観点から、普通ポルトランドセメント及び早強ポルトランドセメントを主要セメント成分として併用することが好ましい。このとき、普通ポルトランドセメントと早強ポルトランドセメントの質量比は、早強ポルトランドセメントに対する普通ポルトランドセメントの質量比が25/75〜75/25、即ち、普通ポルトランドセメントの質量:早強ポルトランドセメントの質量比が25:75〜75:25である。当該質量比が25/75未満の場合、良好な水中不分離性が得られない虞がある。また、当該質量比が75/25を超える場合、水中打設における強度が低い虞がある。より好ましくは、当該質量比を30/70〜70/30とし、さらに好ましくは35/65〜65/35とする。
【0011】
本発明では水中不分離性を付与するため増粘剤を使用する。
本発明で使用する増粘剤は、水溶性のセルロース系、アクリル系、グアーガム系などの増粘剤が使用でき、これらの一種又は二種以上の使用が可能である。少量の使用でも水中不分離性が高いことから、本発明で使用する増粘剤としては水溶性セルロースが好ましい。水溶性セルロースとしては、セルロース系高分子化合物、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロースエーテルが好ましい。
上記増粘剤の含有量は、セメント100質量部に対して0.3〜0.6質量部とする。0.3質量部未満では、適正な水中不分離性が得られ難く、水中打設における強度が低い虞がある。0.6質量部を超えるとモルタルの粘性が高くなり過ぎ、充分な流動性が得られず、ポンプ圧送の際ホースが閉塞したり、充填性が損なわれる虞がある。好ましくは、セメント100質量部に対して0.35〜0.55質量部とし、より好ましくは0.4〜0.5質量部とする。
【0012】
本発明で使用する細骨材としては、例えば、川砂、海砂、山砂、砕砂、人工細骨材、スラグ細骨材、再生細骨材等が挙げられ、これらの一種又は二種以上の使用が可能であるが、モルタルが高い流動性を得られることから、公称呼び寸法5mmの篩に留まる粒子が5質量%未満であることが好ましく、公称呼び寸法5mmの篩に留まる粒子が1質量%未満であることがより好ましく、公称呼び寸法2.5mmの篩に留まる粒子が1質量%未満であることが更に好ましい。
【0013】
細骨材の含有量は、セメント100質量部に対して25〜80質量部とする。25質量部未満では、良好な水中不分離性が得られなかったり、大量打設した際に熱ひび割れが発生する虞があり、80質量部を超えると充分な圧縮強度が得られなくなる虞がある。より好ましくは、セメント100質量部に対して25〜75質量部であり、さらに好ましくは30〜50質量部である。
【0014】
本発明では、打設したモルタルの乾燥収縮等の収縮を補償し、ひび割れの発生を抑制する目的で膨張材を使用する。本発明に係わるグラウト材(モルタル)は、主に、水中に打設するものであるが、気中で打設することもあり、その際の乾燥収縮を補償しひび割れの発生を抑制する効果は、膨張材を含有すると大きいものである。
本発明で使用する膨張材としては、水和反応により、エトリンガイトや水酸化カルシウムを生成するものであればよく、カルシウムサルフォアルミネート系(エトリンガイト系)膨張材、カルシウムアルミノフェライト系膨張材、(生)石灰系膨張材、エトリンガイト−石灰複合系膨張材及び石膏系膨張材等が挙げられ、これらの一種又は二種以上が使用可能であり、(生)石灰系膨張材がより好ましい。含有する膨張材として(生)石灰系膨張材を用いると、海水中に打設する場合においても、膨張率が比較的安定する。
【0015】
用いる膨張材の粉末度は、低温時の膨張発現性確保及び適正な膨張率と流動性の点から、ブレーン比表面積(以下、ブレーン値という)で2000〜6000cm
2/gが好ましく、2500〜5000cm
2/gがより好ましい。
【0016】
膨張材の含有量は、適正な膨張性状を得、硬化体の破壊防止の点から、セメント100質量部に対して0.5〜3.5質量部とすることが好ましい。より好ましくは、セメント100質量部に対して0.7〜3.2質量部とし、さらに好ましくは0.8〜3.0質量部とする。
【0017】
本発明では、水中不分離性を確保しながらグラウト材としての流動性を付与するために減水剤を含有する。本発明でいう減水剤とは、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤及びセメント分散剤を含むものである。流動性を高く且つ材料分離が起こり難くし易いことから、本発明で使用する減水剤としては、高性能減水剤又は高性能AE減水剤が好ましい。
減水剤の含有量は、水中不分離性を確保しながらグラウト材として適正な流動性が得られる点、水との練り混ぜる際に、モルタル上面の泡の発生を防止し、凝結時間の遅延防止、強度低下防止の点から、セメント100質量部に対して1〜4質量部が好ましい。より好ましくは、セメント100質量部に対して1.2〜3.8質量部とし、さらに好ましくは1.5〜3.5質量部とする。
【0018】
本発明で使用する減水剤はポリカルボン酸系減水剤及び/又はメラミン系減水剤が好ましい。本発明で使用する減水剤の形態は、液状、粉末状の何れも使用可能であるが、粉末状の混和材(剤)又はプレミックスモルタルとすることができることから、粉末状のものを使用することが好ましい。
また、本発明で使用する減水剤としては、ポリカルボン酸系減水剤とメラミン系減水剤を併用することが初期の流動性が高く又その後の流動性保持性能にも優れることから好ましい。水中不分離性の確保、適正な流動性の確保、凝結の遅延や強度低下防止の点から、ポリカルボン酸系減水剤の含有量は、セメント100質量部に対して0.3〜2質量部とすることが好ましく、メラミン系減水剤は0.3〜3質量部とすることが好ましい。また、セメント100質量部に対して、ポリカルボン酸系減水剤は0.4〜1.8質量部、メラミン系減水剤は0.4〜2.8質量部とすることがより好ましい。
【0019】
本発明では、連行した空気を消泡させ、空気連行が原因の強度低下を防止する目的で消泡剤を使用するのが好ましい。その形態は減水剤と同様に、液状及び粉末状の何れもあるが、粉末状の混和材(剤)又はプレミックスモルタルとすることができることから、粉末状のものを使用することが好ましい。
消泡剤の含有量は、セメント100質量部に対して0.05〜0.3質量部とすることが好ましい。
【0020】
本発明の水中不分離性モルタル組成物をグラウト材として利用する場合、グラウト材と構造物と一体化させるため、未硬化の状態のグラウト材が沈下又は収縮することを抑止するために、本発明では発泡剤を使用するのが好ましい。使用する発泡剤としては、アルミニウム粉末や過酸化物質等が挙げられ、アルミニウム粉末の使用が好ましい。
発泡剤の含有量は、セメント100質量部に対して0.005〜0.015質量部が好ましい。
【0021】
本発明の水中不分離性モルタル組成物は水と混練して用いる。
水の使用量は、水粉体比23.5〜27.5%とする。ここで、水粉体比とは、水中不分離性モルタル組成物中の粉体(固体)の質量(P)に対する混練に用いる水の質量(W)の比率(W/P)である。水粉体比が23.5%未満ではグラウト材としての流動性を得ることが難しく、27.5%を超えると強度発現性を確保することが困難になる虞がある。水粉体比は24.0〜27.0%が好ましく、24.5〜26.5%がより好ましい。
【0022】
水と混練する方法は特に限定されず、例えば水に本発明の水中不分離性モルタル組成物を全量加えて混練する方法、水と膨張材、減水剤及び増粘剤、必要により消泡剤及び/又は発泡剤を含有する混和材料を混練することで懸濁物質(混和材料スラリー)を作製し、その後セメント及び細骨材を加えて混練する方法等がある。
混練に用いる器具や混練装置も特に限定されないが、ミキサを用いることで量を多く混練することが出来るため好ましい。用いることの出来るミキサとしては連続式ミキサでもバッチ式ミキサでも良く、例えば、パン型コンクリートミキサ、パグミル型コンクリートミキサ、重力式コンクリートミキサ、グラウトミキサ、ハンドミキサ、左官ミキサ等が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例に基づいて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
[実施例1]
使用材料を表1に示した。
【0025】
【表1】
【0026】
[配合設計]
セメントとしてNC及びHCを使用し、足し合わせたセメントの質量100質量部に対して、膨張材2質量部、ポリカルボン酸系高性能減水剤0.8質量部、メラミン系高性能減水剤1.2質量部、消泡剤0.1質量部、発泡剤0.007質量部とし、それ以外の使用材料を表2に示す配合割合となるように配合設計した。但し、セメントとして配合No.1−18はLCを、No.1−19はBBを、NC及びHCとともに併用した。また、試料中の水粉体比は全ての粉体の合計量に対する水の割合を示す。
【0027】
【表2】
【0028】
[モルタル作製]
モルタル組成物(水以外のもの)の全質量が4.000kgとなるように、セメント及び細骨材以外の各材料を所定の配合割合で容量8Lのステンレス製円筒容器に秤とり、ハンドミキサで10秒間混練した後に、所定量のセメント及び細骨材を更に投入し、120秒間撹拌し、モルタルを作製した。
作製したモルタルを以下に示す評価試験方法により評価した。各試験の試験結果を表3に示した。
【0029】
[流動性試験]
JIS R 5201「セメントの物理試験方法」11.「フロー試験」(ただし、15回の落下運動は行わず測定を行った。)に準じて、フロー値(引き抜きフロー)を測定した。流動性の指標は、練り上り直後のフロー値が220mm以上とした。また、フロー値は、20℃環境下で実施し、フローコーンを引き抜き後5分経過時のフロー値を測定した。
【0030】
[水中不分離性]
土木学会基準JSCE−D 104−2013「コンクリート用水中不分離性混和剤品質規格(案)」附属書2(規定)「水中不分離性コンクリートの水中不分離度試験方法(案)」に準じて、懸濁物質量を測定した。水中不分離度の指標は、土木学会規準JSCE−D 104−2013「コンクリート用水中不分離性混和剤品質規格(案)」に示されている懸濁物質量50mg/L以下とした。
【0031】
[初期膨張率試験]
土木学会基準JSCE−F 542−2013「充填モルタルのブリーディング率および膨張収縮率試験方法」に従って、材齢1日の初期膨張率を測定した。
【0032】
[圧縮強度試験]
JSCE−G 541−1999「充填モルタルの圧縮強度試験方法」に準じ、材齢28日における圧縮強度を測定した。このときの水中作製供試体の作り方は、JSCE−F 504−2013に準じた。なお、供試体の寸法は、直径50mm、高さ100mmとした。圧縮強度発現性の指標は、JSCE−D 104−2013「コンクリート用水中不分離性混和剤品質規格(案)」に示されている水中気中強度比80%以上とした。また、通常の無収縮モルタルの同等程度となる圧縮強度についての強度発現性の指標としては、材齢28日において50N/mm
2以上とした。
【0033】
【表3】
【0034】
普通ポルトランドセメント及び早強ポルトランドセメントを主要セメント成分とし、早強ポルトランドセメントに対する普通ポルトランドセメントの質量比(NC/HC)が25/75〜75/25としてなるセメント合計100質量部に対して細骨材が25〜80質量部、増粘剤0.3〜0.6質量部、水粉体比23.5〜27.5%、特に、上記セメント合計100質量部に対して細骨材が25〜75質量部、増粘剤0.35〜0.55質量部、水粉体比24.0〜27.0%であれば、良好な水中不分離性、流動性及び強度発現性が得られ、水中打設に用いられるグラウト材としても好適に用いられる性状であった(No.1−1〜1−3,1−6,1−7,1−10,1−11,1−14,1−15)。勿論、当該実施例に当たるモルタルは、気中打設に用いるグラウト材としても好適に用いることができる。また、セメント成分に低熱ポルトランドセメント、高炉セメント等の早強ポルトランドセメント及び普通ポルトランドセメント以外のセメントが一部置換されても、良好な水中不分離性、流動性及び強度発現性が得られた(No.1−18,1−19)。それに対して、比較例に当たるモルタルのうち配合No.1−5、1−8、1−12及び1−17のモルタルでは、水中不分離性が不良であり懸濁物質量が50mg/Lを以上であり、気中水中強度比が80%に達していない。また、配合No.1−13及び1−16のモルタルでは流動性が不良であり、フロー値が220mmに満たない。また、No.1−4及び1−9のモルタルでは、水中打設における強度発現が不良であり、圧縮強度が50N/mm
2に達していない。
また、実施例に当たるモルタルは、全て初期膨張を示しているので、水中打設用または気中打設用の無収縮モルタルとしても好適に用いることができる。
【0035】
[実施例2]
セメント(NC/HCが35/65)100質量部に対して、増粘剤0.45質量部、細骨材30質量部、消泡剤0.1質量部、発泡剤0.007質量部、水粉体比24.5質量%とし、膨張材、ポリカルボン酸系減水剤及びメラミン系減水剤の比率を変化させて、モルタルを作製した。作製したモルタルのセメントの合計100質量部に対する膨張材、ポリカルボン酸系高性能減水剤及びメラミン系高性能減水剤の配合割合を表4に示した。
【0036】
【表4】
【0037】
実施例1と同様に、作製したモルタルを上記評価試験方法により評価した。各試験結果を表5に示した。
【0038】
【表5】
【0039】
セメント100量部に対して、膨張材0.5〜3.5質量部、減水剤1〜4質量部(減水剤として、ポリカルボン酸系高性能減水剤0.3〜2.0質量部及びメラミン系高性能減水剤0.3〜3.0質量部)を含有するモルタル、特に、膨張材0.7〜3.2質量部、減水剤1.2〜3.8質量部(減水剤として、ポリカルボン酸系減水剤0.4〜1.8質量部及びメラミン系減水剤0.4〜2.8質量部)を含有するモルタルは、良好な水中不分離性、流動性及び強度発現性が得られ、水中打設に用いられるグラウト材としても好適に用いられる性状であった(No.2−1〜2−8)。勿論、当該実施例に当たるモルタルは、気中打設に用いるグラウト材としても好適に用いることができる。
また、実施例に当たるモルタルは、全て初期膨張を示しているので、水中打設用または気中打設用の無収縮モルタルとしても好適に用いることができる。