(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第一実施形態〕
以下、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
【0016】
図1(A)には、第三の粘着シートとしての保護シート30に貼着された半導体ウエハWが示されている。半導体ウエハWは、第一の面としての回路面W1を有し、回路面W1には、回路W2が形成されている。保護シート30は、半導体ウエハWの回路面W1に貼着されている。保護シート30は、回路面W1および回路W2を保護する。
半導体ウエハWは、例えば、シリコン半導体ウエハであってもよいし、ガリウム・砒素などの化合物半導体ウエハであってもよい。回路面W1に回路W2を形成する方法としては、汎用されている方法が挙げられ、例えば、エッチング法、およびリフトオフ法などが挙げられる。
【0017】
保護シート30は、第三の基材フィルム31と、第三の粘着剤層32とを有する。第三の粘着剤層32は、第三の基材フィルム31に積層されている。
第三の基材フィルム31の材質は、特に限定されない。第三の基材フィルム31の材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリスチレン樹脂などが挙げられる。
【0018】
第三の粘着剤層32に含まれる粘着剤は、特に限定されず広く適用できる。第三の粘着剤層32に含まれる粘着剤としては、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、およびウレタン系等が挙げられる。なお、粘着剤の種類は、用途や貼着される被着体の種類等を考慮して選択される。
【0019】
第三の粘着剤層32にエネルギー線重合性化合物が配合されている場合には、第三の粘着剤層32に第三の基材フィルム31側からエネルギー線を照射し、エネルギー線重合性化合物を硬化させる。エネルギー線重合性化合物を硬化させると、第三の粘着剤層32の凝集力が高まり、第三の粘着剤層32と半導体ウエハWとの間の粘着力を低下または消失させることができる。エネルギー線としては、例えば、紫外線(UV)や電子線(EB)等が挙げられ、紫外線が好ましい。
【0020】
[溝形成工程]
図1(B)には、半導体ウエハWの回路面W1側から所定深さの溝を形成する工程(溝形成工程と称する場合がある。)を説明する図が示されている。
溝形成工程において、保護シート30側からダイシング装置のダイシングブレードなどを用いて半導体ウエハに切込みを入れる。その際、保護シート30を完全に切断し、かつ、半導体ウエハWの回路面W1から、半導体ウエハWの厚さよりも浅い深さの切込みを入れて、溝W5を形成する。溝W5は、半導体ウエハWの回路面W1に形成された複数の回路W2を区画するように形成される。溝W5の深さは、目的とする半導体チップの厚みよりもやや深い程度であれば、特に限定はされない。溝W5の形成時には、半導体ウエハWからの切削屑が発生する。本実施形態では、回路面W1が保護シート30により保護された状態で、溝W5の形成を行っているため、切削屑による回路面W1や回路W2の汚染や破損を防止できる。
【0021】
[研削工程]
図1(C)には、溝W5を形成した後、半導体ウエハWの第二の面としての裏面W6を研削する工程(研削工程と称する場合がある。)を説明する図が示されている。
本実施形態では、研削する前に、保護シート30側に、第一の粘着シート10を貼着する。第一の粘着シート10を貼着した後、グラインダー50を用いて、裏面W6側から半導体ウエハWを研削する。研削により、半導体ウエハWの厚みが薄くなり、最終的に複数の半導体チップCPへ分割される。溝W5の底部が除去されるまで裏面W6側から研削を行い、半導体ウエハWを回路W2ごとに個片化する。その後、必要に応じてさらに裏面研削を行い、所定厚さの半導体チップCPを得ることができる。本実施形態では、第三の面としての裏面W3が露出するまで研削する。
図1(D)には、分割された複数の半導体チップCPが保護シート30および第一の粘着シート10に保持された状態が示されている。
【0022】
第一の粘着シート10は、第一の基材フィルム11と、第一の粘着剤層12とを有する。第一の粘着剤層12は、第一の基材フィルム11に積層されている。
第一の基材フィルム11の材質は、特に限定されない。第一の基材フィルム11の材質としては、例えば、第三の基材フィルム31について例示した材質と同様の材質が挙げられる。
【0023】
第一の粘着剤層12に含まれる粘着剤は、特に限定されず広く適用できる。第一の粘着剤層12に含まれる粘着剤としては、例えば、第三の粘着剤層32について説明した粘着剤と同様の粘着剤が挙げられる。なお、粘着剤の種類は、用途や貼着される被着体の種類等を考慮して選択される。第一の粘着剤層12にも、エネルギー線重合性化合物が配合されていてもよい。
【0024】
第一の粘着シート10は、半導体ウエハWと略同形状にとなるように、予めカットしてあってもよく、また半導体ウエハWよりも大きな第一の粘着シート10を準備し、半導体ウエハWに貼着後、半導体ウエハWと同形状にカットしてもよい。
【0025】
本実施形態では、第一の粘着剤層12には、後の工程で、切断された保護シート30を同伴して剥離できるように、比較的、粘着力の強い粘着剤が含まれていることが好ましい。第一の基材フィルム11は、剥離する際に伸びないように、ポリエチレンテレフタレートのように、比較的、剛性を有することが好ましい。
【0026】
[貼付工程(第二の粘着シート)]
図2(A)には、研削工程の後、第二の粘着シート20を、複数の半導体チップCPに貼付する工程(貼付工程と称する場合がある。)を説明する図が示されている。
第二の粘着シート20は、半導体チップCPの裏面W3に貼着される。第二の粘着シート20は、第二の基材フィルム21と、第二の粘着剤層22とを有する。
第二の基材フィルム21の材質は、特に限定されない。第二の基材フィルム21の材質としては、例えば、第三の基材フィルム31について例示した材質と同様の材質が挙げられる。
【0027】
第二の粘着剤層22は、第二の基材フィルム21に積層されている。第二の粘着剤層22に含まれる粘着剤は、特に限定されず広く適用できる。第二の粘着剤層22に含まれる粘着剤としては、例えば、第三の粘着剤層32について説明した粘着剤と同様の粘着剤が挙げられる。なお、粘着剤の種類は、用途や貼着される被着体の種類等を考慮して選択される。第二の粘着剤層22にも、エネルギー線重合性化合物が配合されていてもよい。
【0028】
第二の粘着シート20は、第一の粘着シート10よりも引張弾性率が小さいことが好ましい。第二の粘着シート20の引張弾性率は、10MPa以上2000MPa以下であることが好ましい。第二の粘着シート20の破断伸度は、50%以上であることも好ましい。
【0029】
本実施形態において、第二の粘着剤層22の半導体ウエハWに対する粘着力は、第三の粘着剤層32の半導体ウエハWに対する粘着力よりも大きいことが好ましい。第二の粘着剤層22の粘着力の方が大きければ、第一の粘着シート10および保護シート30を剥離し易くなる。
【0030】
第二の粘着シート20は、複数の半導体チップCPおよびリングフレームに貼着されていてもよい。この場合、第二の粘着シート20の第二の粘着剤層22の上に、リングフレームを載置し、これを軽く押圧し、固定する。その後、リングフレームの環形状の内側にて露出する第二の粘着剤層22を半導体チップCPの
裏面W3に押し当てて、第二の粘着シート20に複数の半導体チップCPを固定する。
【0031】
[剥離工程(第一の粘着シート)]
図2(B)には、第二の粘着シート20を貼付した後に、第一の粘着シート10および保護シート30を剥離する工程(剥離工程と称する場合がある。)を説明する図が示されている。
本実施形態では、前述の通り、保護シート30には第一の粘着シート10が貼着されている。第一の粘着シート10を剥離する際に、切断された保護シート30を同伴して剥離する。保護シート30を剥離すると、複数の半導体チップCPの回路面W1が露出する。本実施形態では、
図2(B)に示されているように、先ダイシング法によって分割された半導体チップCP間の距離をD1とする。距離D1としては、例えば、15μm以上110μm以下とすることが好ましい。
【0032】
[エキスパンド工程]
図2(C)には、複数の半導体チップCPを保持する第二の粘着シート20を引き延ばす工程(エキスパンド工程と称する場合がある。)を説明する図が示されている。
エキスパンド工程では、複数の半導体チップCP間の間隔をさらに拡げる。エキスパンド工程において第二の粘着シート20を引き延ばす方法は、特に限定されない。第二の粘着シート20を引き延ばす方法としては、例えば、環状または円状のエキスパンダを押し当てて第二の粘着シート20を引き延ばす方法や、把持部材などを用いて第二の粘着シートの外周部を掴んで引き延ばす方法などが挙げられる。
【0033】
本実施形態では、
図2(C)に示されているように、エキスパンド工程後の半導体チップCP間の距離をD2とする。距離D2は、距離D1よりも大きい。距離D2としては、例えば、200μm以上5000μm以下とすることが好ましい。
【0034】
[封止工程]
図3には、封止部材60を用いて複数の半導体チップCPを封止する工程(封止工程と称する場合がある。)を説明する図が示されている。
図3(A)には、エキスパンド工程の後に、第四の粘着シートとしての表面保護シート40を複数の半導体チップCPに貼付する工程を説明する図が示されている。
第二の粘着シート20を引き延ばして複数の半導体チップCP間の間隔を距離D2まで拡げた後、半導体チップCPの回路面W1に表面保護シート40を貼着する。表面保護シート40は、第四の基材フィルム41と、第四の粘着剤層42とを有する。表面保護シート40は、回路面W1を第四の粘着剤層42で覆うように貼着されることが好ましい。
【0035】
表面保護シート40の材質は、特に限定されない。第四の基材フィルム41の材質としては、例えば、第三の基材フィルム31について例示した材質と同様の材質が挙げられる。
第四の粘着剤層42は、第四の基材フィルム41に積層されている。第四の粘着剤層42に含まれる粘着剤は、特に限定されず広く適用できる。第四の粘着剤層42に含まれる粘着剤としては、例えば、第三の粘着剤層32について説明した粘着剤と同様の粘着剤が挙げられる。なお、粘着剤の種類は、用途や貼着される被着体の種類等を考慮して選択される。第四の粘着剤層42にも、エネルギー線重合性化合物が配合されていてもよい。
【0036】
第四の粘着剤層42の半導体ウエハWに対する粘着力は、第二の粘着剤層22の半導体ウエハWに対する粘着力よりも大きいことが好ましい。第四の粘着剤層42の粘着力の方が大きければ、複数の半導体チップCPを表面保護シート40に転写した後に第二の粘着シート20を剥離し易くなる。
【0037】
表面保護シート40は、耐熱性を有することが好ましい。後述する封止部材が熱硬化性樹脂である場合、例えば、硬化温度は、120℃〜180℃程度であり、加熱時間は、30分〜2時間程度である。表面保護シート40は、封止部材を熱硬化させる際に、皺が生じないような耐熱性を有することが好ましい。また、表面保護シート40は、熱硬化プロセス後に、半導体チップCPから剥離可能な材質で構成されていることが好ましい。
【0038】
表面保護シート40は、複数の半導体チップCPおよび第二のリングフレームに貼着されていてもよい。この場合、表面保護シート40の第四の粘着剤層42の上に、第二のリングフレームを載置し、これを軽く押圧し、固定する。その後、第二のリングフレームの環形状の内側にて露出する第四の粘着剤層42を半導体チップCPの回路面W1に押し当てて固定する。
【0039】
表面保護シート40を貼着した後、第二の粘着シート20を剥離すると、複数の半導体チップCPの裏面W3が露出する。第二の粘着シート20を剥離した後も、エキスパンド工程において拡張させた複数の半導体チップCP間の距離D2が維持されていることが好ましい。第二の粘着剤層22にエネルギー線重合性化合物が配合されている場合には、第二の粘着剤層22に第二の基材フィルム21側からエネルギー線を照射し、エネルギー線重合性化合物を硬化させてから第二の粘着シート20を剥離することが好ましい。
【0040】
図3(B)には、表面保護シート40によって保持された複数の半導体チップCPを封止する工程を説明する図が示されている。
回路面W1を残して複数の半導体チップCPを、封止部材60によって覆うことにより封止体3が形成される。複数の半導体チップCPの間にも封止部材60が充填されている。本実施形態では、表面保護シート40により回路面W1および回路W2が覆われているので、封止部材60で回路面W1が覆われることを防止できる。
【0041】
封止工程により、所定距離ずつ離間した複数の半導体チップCPが封止部材に埋め込まれた封止体3が得られる。封止工程においては、複数の半導体チップCPは、距離D2が維持された状態で、封止部材60により覆われることが好ましい。
封止部材60で複数の半導体チップCPを覆う方法は、特に限定されない。例えば、金型内に、第四の表面保護シート40で回路面W1を覆ったまま複数の半導体チップCPを収容し、金型内に流動性の樹脂材料を注入し、樹脂材料を硬化させる方法を採用してもよい。また、シート状の封止樹脂を複数の半導体チップCPの裏面W3を覆うように載置し、封止樹脂を加熱することで、複数の半導体チップCPを封止樹脂に埋め込ませる方法を採用してもよい。封止部材60の材質としては、例えば、エポキシ樹脂などが挙げられる。封止部材60として用いられるエポキシ樹脂には、例えば、フェノール樹脂、エラストマ―、無機充填材、および硬化促進剤などが含まれていてもよい。
【0042】
封止工程の後、表面保護シート40が剥離されると、半導体チップCPの回路面W1および封止体3の表面保護シート40と接触していた面3Sが露出する。
【0043】
[半導体パッケージの製造工程]
図4および
図5には、複数の半導体チップCPを用いて半導体パッケージの製造工程を説明する図が示されている。本実施形態は、このような半導体パッケージの製造工程を含んでいることが好ましい。
【0044】
[再配線層形成工程]
図4(A)には、表面保護シート40を剥離した後の封止体3の断面図が示されている。本実施形態では、表面保護シート40が剥離された後の封止体3に再配線層を形成する再配線層形成工程をさらに含むことが好ましい。再配線層形成工程においては、露出した複数の半導体チップCPの回路W2と接続する再配線を、回路面W1の上および封止体3の面3Sの上に形成する。再配線の形成に当たっては、まず、絶縁層を封止体3に形成する。
【0045】
図4(B)には、半導体チップCPの回路面W1および封止体3の面3Sに第一の絶縁層61を形成する工程を説明する断面図が示されている。絶縁性樹脂を含む第一の絶縁層61を、回路面W1および面3Sの上に、回路W2または回路W2の内部端子電極W4を露出させるように形成する。絶縁性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、およびシリコーン樹脂などが挙げられる。内部端子電極W4の材質は、導電性材料であれば限定されず、例えば、金、銀、銅やアルミニウムなどの金属、並びに合金などが挙げられる。
【0046】
図4(C)には、封止体3に封止された半導体チップCPと電気的に接続する再配線5を形成する工程を説明する断面図が示されている。本実施形態では、第一の絶縁層61の形成に続いて再配線5を形成する。再配線5の材質は、導電性材料であれば限定されず、例えば、金、銀、銅やアルミニウムなどの金属、並びに合金などが挙げられる。再配線5は、公知の方法により形成できる。
【0047】
図5(A)には、再配線5を覆う第二の絶縁層62を形成する工程を説明する断面図が示されている。再配線5は、外部端子電極用の外部電極パッド5Aを有する。第二の絶縁層62には開口などを設けて、外部端子電極用の外部電極パッド5Aを露出させる。本実施形態では、外部電極パッド5Aは、封止体3の半導体チップCPの領域(回路面W1に対応する領域)内および領域外(封止部材60上の面3Sに対応する領域)に露出させている。また、再配線5は、外部電極パッド5Aがアレイ状に配置されるように、封止体3の面3Sに形成されている。本実施形態では、封止体3の半導体チップCPの領域外に外部電極パッド5Aを露出させる構造を有するので、ファンアウト型のWLPを得ることができる。
【0048】
[外部端子電極との接続工程]
図5(B)には、封止体3の外部電極パッド5Aに外部端子電極を接続させる工程を説明する断面図が示されている。第二の絶縁層62から露出する外部電極パッド5Aに、はんだボール等の外部端子電極7を載置し、はんだ接合などにより、外部端子電極7と外部電極パッド5Aとを電気的に接続させる。はんだボールの材質は、特に限定されず、例えば、含鉛はんだや無鉛はんだ等が挙げられる。
【0049】
[第二のダイシング工程]
図5(C)には、外部端子電極7が接続された封止体3を個片化させる工程(第二のダイシング工程と称する場合がある。)を説明する断面図が示されている。この第二のダイシング工程では、封止体3を半導体チップCP単位で個片化する。封止体3を個片化させる方法は、特に限定されない。例えば、前述の半導体ウエハWをダイシングした方法と同様の方法を採用して、封止体3を個片化することができる。封止体3を個片化させる工程は、封止体3をダイシングシート等の粘着シートに貼着させて実施してもよい。
【0050】
封止体3を個片化することで、半導体チップCP単位の半導体パッケージ1が製造される。上述のように半導体チップCPの領域外にファンアウトさせた外部電極パッド5Aに外部端子電極7を接続させた半導体パッケージ1は、ファンアウト型のウエハレベルパッケージ(FO−WLP)として製造される。
【0051】
[実装工程]
本実施形態では、個片化された半導体パッケージ1を、プリント配線基板等に実装する工程を含むことも好ましい。
【0052】
本実施形態によれば、いわゆる先ダイシング法によって半導体ウエハWを複数の半導体チップCPに分割するため、ダイシング時の半導体チップCPの整列状態の乱れを防止できる。さらに、本実施形態によれば、先ダイシング法によって個片化された複数の半導体チップCPを第二の粘着シート20に貼付し、この第二の粘着シート20を引き延ばして、複数の半導体チップCP同士の間隔を拡げることができる。エキスパンド工程においても、複数の半導体チップCPの整列状態の乱れを防止できる。
【0053】
本実施形態に係る方法は、FO−WLPタイプの半導体パッケージ1を製造するプロセスへの適合性に優れる。具体的には、本実施形態によれば、FO−WLPタイプの半導体パッケージ1におけるチップ間隔の均等性および正確性を向上させることができる。
【0054】
〔第二実施形態〕
第二実施形態は、第一実施形態における第一の粘着シート10を剥離する工程から再配線層形成工程までのプロセスに関して、第一実施形態と相違する。第二実施形態は、その他の点において第一実施形態と同様であるため、説明を省略または簡略化する。
【0055】
図6(A)には、本実施形態における第一の粘着シート10を剥離する工程を説明する図が示されている。
本実施形態では、半導体チップCPの裏面W3に第二の粘着シート20を貼付した後、第一の粘着シート10だけを剥離する工程を含む。すなわち、第一実施形態では、第一の粘着シート10を剥離する際に、切断された保護シート30を同伴して剥離したのに対し、本実施形態では、保護シート30を半導体チップCPの回路面W1に残したまま第一の粘着シート10を剥離する。
【0056】
第一の粘着剤層12にエネルギー線重合性化合物が配合されている場合には、第一の粘着剤層12に第一の基材フィルム11側からエネルギー線を照射し、エネルギー線重合性化合物を硬化させる。エネルギー線重合性化合物を硬化させると、第一の粘着剤層の凝集力が高まり、第一の粘着剤層12と、保護シート30との間の粘着力を低下または消失させることができる。このとき、保護シート30の第三の粘着剤層32の粘着力を低下または消失させないようにエネルギー線を照射することが好ましい。エネルギー線としては、例えば、紫外線(UV)や電子線(EB)等が挙げられ、紫外線が好ましい。
【0057】
本実施形態において、第二の粘着剤層22の半導体ウエハWに対する粘着力は、第一の粘着剤層12の第三の基材フィルム31に対する粘着力よりも大きいことが好ましい。さらに、第一の粘着剤層12の第三の基材フィルム31に対する粘着力は、第三の粘着剤層32の半導体ウエハWに対する粘着力よりも小さいことが好ましい。本実施形態では、第一の粘着シート10、第二の粘着シート20、および保護シート30が半導体チップCPに貼着された状態から、第一の粘着シート10だけを先に剥離する。そのため、第一の粘着剤層12の粘着力が低ければ、分割された保護シート30を半導体チップCPに残したまま剥離し易い。
【0058】
図6(B)には、第一の粘着シート10を剥離した後、第二の粘着シート20を引き延ばすエキスパンド工程を説明する図が示されている。
第二の粘着シート20には、回路面W1が保護シート30に覆われた半導体チップCPが複数個、保持されている。本実施形態のエキスパンド工程では、このような状態で第二の粘着シート20を引き延ばして、複数の半導体チップCP間を距離D2まで拡げる。
【0059】
図6(C)には、エキスパンド工程の実施後、複数の半導体チップCPを封止する工程を説明する図が示されている。
第一実施形態では、回路面W1に表面保護シート40を貼着し、第二の粘着シート20を剥離し、封止部材60を用いて半導体チップCPを封止したのに対し、本実施形態では、すでに回路面W1に保護シート30が貼着されているので、表面保護シート40を貼着しなくてもよく、半導体チップCPの裏面W3に第二の粘着シートが貼着されたたまま封止できる。回路面W1を残して複数の半導体チップCPを封止部材60によって覆うことにより封止体3Aが形成される。封止体3Aの面3Sと半導体チップCPの回路面W1とが同一面であることが好ましい。
【0060】
本実施形態では、
図6(C)に示されているように、複数の半導体チップCP同士の間や周囲に封止部材60が充填されている。本実施形態では、保護シート30により回路面W1および回路W2が覆われているので、封止部材60で回路面W1が覆われることを防止できる。封止工程では半導体チップCPの裏面W3に第二の粘着シートが貼着されている。そのため、半導体チップCPの裏面W3は封止部材60によって覆われておらず、封止体3Aの厚さを薄くすることができる。
【0061】
本実施形態の封止工程により、所定距離ずつ離間した複数の半導体チップCPが封止部材60に埋め込まれた封止体3Aが得られる。封止工程においては、複数の半導体チップCPは、距離D2が維持された状態で、封止部材60により覆われることが好ましい。
【0062】
封止工程の後、保護シート30および第二の粘着シート20を剥離する。これらを剥離する順番は、特に限定されない。保護シート30を剥離する際は、例えば、接着テープを用いることが好ましい。保護シート30の第三の基材フィルム31の面に接着テープを貼着し、この接着テープを基点として保護シート30を剥離することができる。接着テープは、粘着テープでも、ヒートシールテープでもよい。第二の粘着シート20が剥離されると、半導体チップCPの裏面W3が露出する。
【0063】
封止体3Aを用いて、第一実施形態と同様の工程を経て、半導体パッケージや半導体装置を製造することができる。
【0064】
本実施形態に係る製造方法によれば、第一実施形態と同様、複数の半導体チップCPの整列状態の乱れを防止できる。本実施形態に係る方法も、FO−WLPタイプの半導体パッケージを製造するプロセスへの適合性に優れ、さらに薄型の半導体パッケージを製造できる。
【0065】
〔第三実施形態〕
第三実施形態は、第一実施形態における第二のエキスパンド工程を実施するまでの工程に関して、第一実施形態と同様である。そのため、同様な点については、説明を省略または簡略化する。以下、第三実施形態のうち、第一実施形態との相違に係る点を説明する。
【0066】
第三実施形態においては、エキスパンド工程を実施し、複数の半導体チップCP同士の間隔を拡げた後、封止工程を行わずに、複数の半導体チップCPをそれぞれピックアップする工程を含む。ピックアップは、従来使用されているピックアップ装置を利用できる。本実施形態では、ピックアップした半導体チップCPは、それぞれプリント配線基板等に実装する工程をさらに含むことも好ましい。実装後の半導体チップCPは、例えば、封止部材等で封止されてパッケージ化される。
【0067】
本実施形態によれば、半導体チップCPの整列状態の乱れを防止しつつ、複数の半導体チップCP同士の間隔を大きく拡げたうえで、半導体チップCPをピックアップすることができる。そのため、ピックアップする際に、ピックアップ装置で掴んだ半導体チップCPが他の半導体チップと接触したり、ピックアップ装置が他の半導体チップと接触したりすることを防止し易くなる。
【0068】
〔実施形態の変形〕
本発明は、上述の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的を達成できる範囲で、上述の実施形態を変形した態様などを含む。
【0069】
例えば、半導体ウエハや半導体チップにおける回路等は、図示した配列や形状等に限定されない。半導体パッケージにおける外部端子電極との接続構造等も、前述の実施形態で説明した態様に限定されない。前述の実施形態では、FO−WLPタイプの半導体パッケージを製造する態様を例に挙げて説明したが、本発明は、ファンイン型のWLP等のその他の半導体パッケージを製造する態様にも適用できる。
【0070】
例えば、前述の実施形態では、半導体ウエハWの回路面W1に保護シート30を貼付し、溝形成工程を実施する態様を例示したが、本発明は、このような態様に限定されない。例えば、回路面W1に保護シート30を貼付せずに、回路面W1を露出させたまま溝形成工程を行い、溝形成後に回路面W1に第一の粘着シート10を貼付して、研削工程を実施する態様も本発明に含まれる。また、溝形成工程前に、回路面W1を覆うパッシベーション膜を形成しておいてもよい。パッシベーション膜は、回路W2の内部端子電極W4を露出させる形状であることが好ましい。パッシベーション膜は、例えば、窒化ケイ素、酸化ケイ素、またはポリイミド等を用いて形成されることが好ましい。
【0071】
例えば、前述の実施形態では、第二の粘着シート20を引き延ばして複数の半導体チップCP同士の間隔を拡げる態様を例に挙げて説明したが、さらに、複数回、エキスパンド工程を実施してもよい。複数のエキスパンド工程を実施する場合、第二の粘着シート20に保持された複数の半導体チップCPを、拡げられた間隔を維持したまま、別のエキスパンドシートに転写し、当該エキスパンドシートを引き延ばして、さらに複数の半導体チップCP同士の間隔を拡げることができる。例えば、第一実施形態において表面保護シート40を貼付した後に、表面保護シート40を引き延ばして複数の半導体チップCP同士の間隔をさらに拡げてもよい。
【0072】
例えば、前述の実施形態では、半導体ウエハの厚さよりも浅い切込み深さの溝を形成する工程を含めた半導体装置の製造方法を例に挙げて説明したが、当該溝が予め形成された半導体ウエハを用いてもよい。