(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482867
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】化粧板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20190304BHJP
B32B 21/08 20060101ALI20190304BHJP
B27M 3/00 20060101ALI20190304BHJP
E04F 15/04 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B21/08
B27M3/00 N
E04F15/04 E
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-266462(P2014-266462)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-124184(P2016-124184A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(73)【特許権者】
【識別番号】515003374
【氏名又は名称】ダイセン産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081569
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 勝一
(74)【代理人】
【識別番号】100156018
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 充史
(72)【発明者】
【氏名】岸本 敦雄
(72)【発明者】
【氏名】高山 健司
(72)【発明者】
【氏名】立石 文一
【審査官】
赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−144307(JP,A)
【文献】
特開昭60−048352(JP,A)
【文献】
特開平07−088802(JP,A)
【文献】
特開昭54−090344(JP,A)
【文献】
特開昭54−162738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
B27M 1/00− 3/38
E04F 15/00− 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を切削して得られた木質単板を積層して構成される基板の表面をサンディングし、
前記サンディングによりケバを生じた前記基板の表面に樹脂コーティングを施して樹脂コーティング層を形成し、
前記樹脂コーティング層が硬化した後にその表面をサンディングして、前記表面におけるケバによる凸部を除去して平滑面を得、
前記樹脂コーティング層の前記平滑面にシートを貼着することを特徴とする
化粧板の製造方法。
【請求項2】
木材を切削して得られた木質単板を積層して構成され、表面にサンディングにより生じたケバを有する基板と、
前記基板の表面に形成された樹脂コーティング層と、
前記樹脂コーティング層の表面にサンディングにより形成され、前記表面における上下の高さのピークの差が60μm以下の平滑面と、
前記平滑面上に貼り付けられたシートとを備えたことを特徴とする
化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床板、枠材、階段の側板、階段の踏板、幅木、玄関の上がり框等の内装材に用いられる化粧板及びその製造方法に関し、特に、表面にシートが貼られた化粧板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建材に用いられるシートが貼着された従来の化粧板として、
図6に記載のものがある。この化粧板29は、合板やLVL(Laminated Veneer Lumber)等の天然木を切削した単板30aを積層した基板30と、その木質の基板30の表面に貼られたMDF31と、そのMDF31の表面に貼られたシート32とによって構成される。シート32には例えばオレフィンシートが用いられる。
【0003】
ここで、単板30aを積層した基板30は、強度が良好な割に安価で製造が可能であるが、基板30の表面には通常凹凸があるため、この凹凸を無くすため、サンディング等で研磨する。しかしながら、この研磨により基板30の表面にケバ立ちが生じる。そして、その基板30の表面に直接シートを貼着するとケバ立ちの凹凸がシート表面に現れてしまい、意匠上好ましくない。そのため、平面が平滑なMDF31を基板30の表面に貼着し、そのMDF31の表面にシート32を貼りつけることで、そのシート32の表面に凹凸が出ないようにしている。
【0004】
特許文献1には、LVLや合板等の単板を積層した基板に塗装を施す化粧板の製造方法において、基板の表面を研磨した後に、研磨により生じた微小木切片を除去し、その基板の表面に水系着色剤を塗布し、その水系着色剤を乾燥させ、更にその水系着色剤の表面に透明の樹脂塗料を塗布する化粧板の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−221567公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、
図6に示した従来の化粧板においては、MDF(Medium Density Fiberboad)は木材の繊維を原料としてその繊維を樹脂によって凝固させるプロセスによって製造される繊維板であることから、単板よりも製造コストがかかり、化粧板がコスト高になる要因となっていた。
【0007】
また、特許文献1の方法は、基板に直接塗料を塗る化粧板の製造方法であって、シートを貼着する化粧板には適用できない。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、MDFなどの繊維板を用いることなく、意匠性を維持しつつ製造コストが安価であるシートを貼着した化粧板とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の第一の発明は、
木材を切削して得られた
木質単板を積層して構成される基板の表面をサンディングし、
前記サンディングによりケバを生じた前記基板の表面に樹脂コーティングを施して樹脂コーティング層を形成し、
前記樹脂コーティング層が硬化した後にその表面をサンディングし
て、前記表面におけるケバによる凸部を除去して平滑面を得、
前記樹脂コーティング層の
前記平滑面にシートを貼着することを特徴とする
化粧板の製造方法である。
【0010】
本願の第二の発明は、
木材を切削して得られた木質単板を積層して構成され、
表面にサンディングにより生じたケバを有する基板と、
前記基板の表面に形成された樹脂コーティング層と、
前記樹脂コーティング層の表面に
サンディングにより形成され、前記表面における上下の高さのピークの差が60μm以下の平滑面と、
前記平滑面上に貼り付けられたシートとを備えたことを特徴とする化粧板である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂コーティング層を設けたことにより、その樹脂コーティング層をサンディングして平滑面を形成することが可能となる。このため、単板よりも製造コストの高いMDFを省略することができるため、意匠性を損なうことなく、化粧板を比較的安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態の化粧板の部分拡大図である。
【
図2】本実施の形態の化粧板の基板の製造における、スカーフジョイント部分の加工の工程を説明する部分拡大断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態における化粧板の製造方法の工程を説明する図面である。
【
図4】本発明の化粧板の製造方法の一実施の形態における化粧板表面の状態の変化を示す図面である。
【
図5】本発明の化粧板の実施の形態において、突板を設けた例を示す図面である。
【
図6】従来のシートを貼着した化粧板の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の化粧板とその製造方法を以下の実施の形態により説明する。
図1は、本発明の化粧板の一実施の形態を示す部分拡大図である。この化粧板10は、木材を切削して得た単板1aを積層したものを基板1とし、その基板1上に樹脂コーティング層3を設け、その樹脂コーティング層3の表面にシート4を貼着したものである。
【0014】
基板1は木材を切削することで得られる単板1aを複数枚重ね、接着剤を用いて圧熱接着することで得られる木質材である。この基板1は、単板1aの繊維方向を同一方向にしてLVLとして構成されたものでもよいし、繊維方向が交互に直交するように単板を積層させた合板であってもよい。また、繊維方向を同一方向の単板が大半を占め、少数が繊維方向と直交する単板が少数を占める基板1を構成してもよい。基板1における単板1aの厚み及び枚数は任意に選択することが可能である。
【0015】
図2(A)は、基板1の単板1aのスカーフジョイント5の部分拡大断面図である。基板1において、単板1aを横方向に継ぐ場合には、
図2(A)のように、スカーフジョイント5を構成する。すなわち、隣り合う単板1aを斜めに切削して突き合わせて、互いに接着剤を用いて接着する。このスカーフジョイント5が基板1の表面に存在すると、表面に平滑でない部分Gが発生する。
図2(B)のとおり、この平滑でない部分Gに、パテ(接着剤)7を埋め込むように侵入させる。そして接着剤7が硬化した後、基板1の表面1bを線Lの高さまでサンディングによる研磨(後述の
図3(B)の第一のサンディング工程)を行うことで、
図2(C)の部分拡大断面図のとおり平滑でない部分Gを平滑化することができる。ここで、単板1aの積層、スカーフジョイント部分の接着及び平滑でない部分Gに用いる接着剤は、圧熱接着の際に熱劣化しにくい観点から、熱硬化性の樹脂系接着剤が好ましく、特にユリアメラミン系樹脂接着剤が好ましい。
【0016】
図3は本発明の化粧板の製造方法の一実施の形態の工程を説明する図である。
図3(A)に示す基板1は、上述の単板1aを積層して、接着剤を用いて圧熱接着して構成されたものである。
【0017】
図3(B)は、基板1の表面をサンディングする、第一のサンディング工程を説明する図である。この第一のサンディング工程は、サンディング装置11の回転ローラー11aに掛け回されたサンドペーパー11bを基板1に当接させた状態で回転させることによって、基板1の表面がサンディングによって研磨される。この第一のサンディング工程において、例えば0.2mm程度を基板1の表面を研磨によって削るようにする。
【0018】
図3(C)は、基板1表面が樹脂コーティングされる、樹脂コーティング工程を説明する図である。この工程においては、ロールコーター装置13の第一ロール14と第二ロール15の対向する部分の上部に樹脂コーティング剤16を流入させ、その樹脂コーティング剤16が第一ロール14および第二ロール15の回転により下方へ移動し、基板1の表面に樹脂コーティング剤16が塗着される。この樹脂コーティング剤16は、木質の基板1に均一に塗着させることができ、後述のサンディングが可能であって、後述のシート4を好適に貼着可能であればどのような樹脂剤を用いてもよいが、好ましくは、イソシアネート系接着剤を樹脂コーティング剤として用いる。また、本実施の形態においては樹脂コーティング剤16を塗着させる装置にロールコーター装置13を用いたが、スプレーによって塗着してもよい。
【0019】
図3(C)の工程により塗着された樹脂コーティング層3が養生により硬化したら、
図3(D)の第二のサンディング工程を行う。この第二のサンディング工程においては、サンディング装置17の回転ローラー17aに掛け回されたサンドペーパー17bを樹脂コーティング層3の表面に当接させた状態で回転させることによって、樹脂コーティング層3の表面がサンディングによって研磨される。ここで、この樹脂コーティング層3の研磨に用いるサンドペーパーは、
図3(B)に示した第一のサンディング工程に使用したものよりも研磨する面がきめ細かいものを用いる。この研磨によって樹脂コーティング層の表面の粗さは、表面粗さ測定器で計測した場合に上下のピーク差(最大高さ粗さ)が60μm以下の平滑面となるようにする。
【0020】
図3(E)は樹脂コーティング層3の表面にシート4を貼着するラミネート工程である。この工程においては、シート4の裏面4aに接着剤を塗布したのち、ローラー19で樹脂コーティング層3の表面にシート4を押圧することで、樹脂コーティング層3にシート4を貼着する。ここで、加熱が必要な接着剤を用いる場合には、シート4を加熱しながら押圧しながら貼着を行う。シート4は、例えば、オレフィンシートが好ましいが、オレフィンシートの表裏面を紙で挟んだシート(紙シート)を用いてもよい。このシート4と樹脂コーティング層3の貼着に用いる接着剤は、好適に接着させることのできる接着剤であれば種類を問わないが、例えばイソシアネート系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤又はPURが好ましく、特にイソシアネート系接着剤が好ましい。
【0021】
図4は、化粧板の製造工程における表面の状態の変化を示す図である。
図4(A)は単板1aを積層して圧熱接着した後の表面を示す。基板1の表面は、
図3(B)のサンディング工程により生じたケバ20が存在する「ケバ立ち」の状態である。
【0022】
次に
図4(B)は
図3(C)に示した樹脂コーティング工程により樹脂コーティング層3が形成された状態を示す。図示のように、樹脂コーティング層3の表面にはケバ20を内包することによって生じる凹凸が存在する。
【0023】
次に
図4(C)は
図3(D)に示した第二のサンディング工程により樹脂コーティング層3の表面を研磨した後の状態を示す。第二のサンディング工程においては、樹脂コーティング層3の表面の凸部が除去されるため、ケバ20による凹凸は無くなる。
【0024】
次に
図4(D)はラミネート工程により、樹脂コーティング層3にシート4が接着層21を介して貼着された状態を示す。
図4(C)に示したように、第二のサンディング工程により、樹脂コーティング層3の表面は凹凸の少ない平滑面となるため、シート4を貼りつけてもシート4の表面にも凹凸がない状態となる。
【0025】
このように本発明の化粧板の製造方法の実施の形態においては、単板1aを積層した基板1に第一のサンディング工程によりサンディングし、その後に樹脂コーティング工程によって樹脂コーティング層3を形成し、その樹脂コーティング層3の表面をサンディングすることで、樹脂コーティング層3の表面を平滑にすることが可能になる。そのため、その平滑にした樹脂コーティング層3の表面にシート4を直接貼着してもシート4の表面に凹凸が現れて意匠性が悪くなることがない。
【0026】
これにより、樹脂コーティング層3の表面に直接シート4を貼着することができるため、MDFを省略することができ、安価にシートを貼着した化粧板を製造することが可能となる。また、シート4としては、種々の色、模様または質感のものを用意しておくことにより、外観の異なるバラエティに富んだ化粧板を容易に提供することが可能となる。
【0027】
なお、スカーフジョイント5に接着剤7を埋めて、第一のサイディング工程によりサイディングした部分は、基板1の表面において、茶色系の色の着いた模様となって現れることがある。そのとき、シート4が白色などの薄い色のシートである場合には、その模様が透過してシート4の上から見えてしまうことがある。そのようなスカーフジョイント部分の模様が透過することを防止するために、第一のサンディング工程の後に、基板1表面おいてスカーフジョイント5の部分に茶色の塗料を塗布してもよい。
【0028】
また、化粧板10の側端部にシート4を貼着する際には、
図5に示すように、化粧板10の端部に突板22を取付けて、その突板22にシート4を貼着するようにしてもよい。また、化粧板の用途によっては、基板1の表面のみならず、裏面にも樹脂コーティング層3にシート4を貼着してもよい。また本発明における化粧板には、
図3(B)に示した第一のサンディング工程によって生じたケバではなく、基板1が元々有していたケバによる凹凸を無くすため樹脂コーティングを施し、その樹脂コーティング層3をサンディングによって平滑化し、その樹脂コーティング層3にシート4を貼着した場合も含む。
【0029】
以上本発明を実施の形態により説明したが、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、構成部材やその組み合わせについて、種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 基板
1a 単板
3 樹脂コーティング層
4 シート
4a シートの裏面
5 スカーフジョイント
7 接着剤
10 化粧板
11 サンディング装置
13 ロールコーター装置
14 第一ロール
15 第二ロール
16 樹脂コーティング剤
17 サンディング装置
19 ローラー
20 ケバ
21 接着層