特許第6482868号(P6482868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6482868-ビールテイスト飲料及びその製造方法 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482868
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/00 20190101AFI20190304BHJP
   A23L 2/00 20060101ALN20190304BHJP
   A23L 2/52 20060101ALN20190304BHJP
   C12C 5/02 20060101ALN20190304BHJP
【FI】
   C12G3/00
   !A23L2/00 B
   !A23L2/52
   !C12C5/02
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-267040(P2014-267040)
(22)【出願日】2014年12月29日
(65)【公開番号】特開2016-123357(P2016-123357A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】常田 啓太
(72)【発明者】
【氏名】蛸井 潔
(72)【発明者】
【氏名】石原 武雄
【審査官】 竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−168383(JP,A)
【文献】 特開2014−166169(JP,A)
【文献】 特開2014−166168(JP,A)
【文献】 特開2014−166167(JP,A)
【文献】 特開2014−128251(JP,A)
【文献】 特開2010−063431(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/079778(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
C12G 1/00−3/12
C12C 1/00−13/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS/FSTA/AGRICOLA/CABA(STN)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性食物繊維を含有し、リナロール及びα−テルピネオールのうちの少なくとも一種を含有するとともに、
前記水溶性食物繊維は、難消化性デキストリン及びポリデキストロースのうちの少なくとも一種であり、
前記リナロールの含有量をXppbとし、前記α−テルピネオールの含有量をYppbとした場合に、(X+2Y)≧200を満たすことを特徴とするビールテイスト飲料。
【請求項2】
前記α−テルピネオールを含有することを特徴とする請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
前記水溶性食物繊維の含有量が0.5〜4.0w/v%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
前記水溶性食物繊維を除いたエキス分が1.5g/100cm3以下であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
プリン体の含有量が2.0mg/100mL以下であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項6】
アルコール度数が1〜8%であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項7】
ビールテイスト飲料の製造方法であって、
その製造工程中のいずれかの段階で、水溶性食物繊維を含有させるとともに、最終製品中のリナロールの含有量をXppbとし、最終製品中のα−テルピネオールの含有量をYppbとした場合に、(X+2Y)≧200を満たすように、前記リナロール及び前記α−テルピネオールのうちの少なくとも一種を含有させ、
前記水溶性食物繊維は、難消化性デキストリン及びポリデキストロースのうちの少なくとも一種であることを特徴とするビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項8】
前記最終製品中にα−テルピネオールを含有させることを特徴とする請求項7に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の嗜好性や価値観が多様化したこと、購入コストが低く抑えられることから、ビールテイスト飲料の消費量が多くなっている。ビールテイスト飲料及びその製造方法に関する背景技術として特許文献1〜3がある。
【0003】
特許文献1には、酒類を製造するにあたり、酵母難資化性水溶性食物繊維を副原料に使用することを特徴とする酒類の製造方法が開示されている。
特許文献2には、発酵飲料を製造するにあたり、水溶性食物繊維を含有する副原料を、発酵工程の後で添加することを特徴とする発酵飲料の製造方法が開示されている。
特許文献3には、ビール風味アルコール飲料の製造に際して、水溶性食物繊維及び非発酵性糖質を含有する副原料を添加することを特徴とする香味・ボディ感バランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献1〜3はいずれもいわゆる水溶性食物繊維を含有させることによってコク(特許文献3においてはボディ感と記載)を増強させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−249号公報
【特許文献2】特開2007−6872号公報
【特許文献3】特開2009−142233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に記載のとおり、ビールテイスト飲料に水溶性食物繊維を含有させることにより、当該ビールテイスト飲料のコクを増強させることができる。しかしながら、水溶性食物繊維の添加量の増加に伴って、ビールテイスト飲料のコクの増強と引き換えに、キレが徐々に悪くなることが分かった。なお、本明細書において、キレとは、後味のスッキリさや爽快さを意味する。
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、コクがあり、キレが改善されたビールテイスト飲料及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決した本発明は、以下の構成を有する。
(1)水溶性食物繊維を含有し、リナロール及びα−テルピネオールのうちの少なくとも一種を含有するとともに、前記水溶性食物繊維は、難消化性デキストリン及びポリデキストロースのうちの少なくとも一種であり、前記リナロールの含有量をXppbとし、前記α−テルピネオールの含有量をYppbとした場合に、(X+2Y)≧200を満たすことを特徴とするビールテイスト飲料。
(2)前記α−テルピネオールを含有することを特徴とする(1)に記載のビールテイスト飲料。
)前記水溶性食物繊維の含有量が0.5〜4.0w/v%であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のビールテイスト飲料。
)前記水溶性食物繊維を除いたエキス分が1.5g/100cm3以下であることを特徴とする(1)から()のいずれか1つに記載のビールテイスト飲料。
)プリン体の含有量が2.0mg/100mL以下であることを特徴とする(1)から()のいずれか1つに記載のビールテイスト飲料。
)アルコール度数が1〜8%であることを特徴とする(1)から()のいずれか1つに記載のビールテイスト飲料。
)ビールテイスト飲料の製造方法であって、その製造工程中のいずれかの段階で、水溶性食物繊維を含有させるとともに、最終製品中のリナロールの含有量をXppbとし、最終製品中のα−テルピネオールの含有量をYppbとした場合に、(X+2Y)≧200を満たすように、前記リナロール及び前記α−テルピネオールのうちの少なくとも一種を含有させ、前記水溶性食物繊維は、難消化性デキストリン及びポリデキストロースのうちの少なくとも一種であることを特徴とするビールテイスト飲料の製造方法。
(8)前記最終製品中にα−テルピネオールを含有させることを特徴とする(7)に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コクがあり、キレが改善されたビールテイスト飲料及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るビールテイスト飲料及びその製造方法を実施するための形態(実施形態)について詳細に説明する。
【0012】
〔ビールテイスト飲料〕
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、水溶性食物繊維を含有するとともに、リナロール及びα−テルピネオールのうちの少なくとも一種を含有する。そして、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、リナロールの含有量をXppbとし、α−テルピネオールの含有量をYppbとした場合に、(X+2Y)≧200を満たす。また、本実施形態に係るビールテイスト飲料の水溶性食物繊維は、難消化性デキストリン及びポリデキストロースのうちの少なくとも一種である。
【0013】
なお、ビールテイスト飲料とは、ビール様(風)飲料とも称され、ビールのような味わいを奏する、つまり、ビールを飲用したような感覚を飲用者に与える飲料をいう。ビールテイスト飲料には、アルコール度数が1容量/容量%(「v/v%」や、一般的には単に「%」とも表される。)未満であるもの(ビールテイストノンアルコール飲料やノンアルコールビールテイスト飲料などとも呼ばれている。)と、アルコール度数が1%以上のもの(ビールテイストアルコール飲料などと呼ばれている。)と、がある。
【0014】
(アルコール)
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数が1%未満の場合には、アルコールをまったく含まないアルコール度数0.00%のもの(ビールテイスト完全無アルコール飲料などと呼ばれている。)も含まれる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料がアルコールを含む場合は、アルコール度数を1〜8%とするのが好ましく、例えば、3〜7%などとするとより好ましい。なお、アルコール度数はこの範囲に限定されるものではなく、8%超とすることもできる。なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。
【0015】
本実施形態においては、麦を発酵させて得られたアルコールに加えて、必要に応じ、さらにアルコールを添加することができる。添加するアルコールは、飲用アルコールであればよく、種類、製法、原料などは限定されない。例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカなどの各種スピリッツ、原料用アルコールなどを1種又は2種以上を組み合わせて添加することができる。なお、麦を発酵させて得られたアルコールの濃度が高い場合は、所望のアルコール度数となるように希釈することもできることはいうまでもない。
【0016】
(エキス分)
本実施形態において、水溶性食物繊維を除いたエキス分(以下、適宜、単に「エキス分」という)は、1.5g/100cm3以下が好ましい。なお、エキス分とは、糖分(炭水化物)、タンパク質、アミノ酸、苦味質、不揮発性有機酸、ミネラル、ポリフェノール、色素成分などからなる不揮発性固形分(水溶性食物繊維を除く)をいう。エキス分が1.5g/100cm3を超える場合、麦使用率が高いことを意味する。つまり、味わいが深く、濃く、広がりが出て香味の濃いビールテイスト飲料であるので、水溶性食物繊維が含有されていてもコクやキレに大きな影響は生じない。従って、エキス分が1.5g/100cm3を超える場合、後記するようにリナロールやα−テルピネオールの含有量を規定することによってキレを改善する意義が薄れる。そのため、前記したようにエキス分は1.5g/100cm3以下が好ましいとした。
なお、エキス分は1.0g/100cm3以下がさらに好ましく、0.72g/100cm3以下が特に好ましく、0g/100cm3を超え0.4g/100cm3以下とするのが非常に好ましい。
【0017】
エキス分を所定値以下とする手法については、特に限定されるものではないが、例えば、麦使用量を一般的なビールや発泡酒を製造する場合の1/5〜1/10に制限して麦汁(発酵前液)を製造し、かかる麦汁をアルコール発酵させるか、又は一般的なビールや発泡酒を製造する麦使用量にて麦汁を製造し、かかる麦汁をアルコール発酵させた後、これを前記したエキス分となるように希釈してもよい。
【0018】
(エキス分:測定方法)
ビールテイスト飲料に含まれるエキス分(水溶性食物繊維を含むエキス分)は、国税庁所定分析法と異なる測定法で合理的かつ正確であると認められる方法(改訂BCOJビール分析法8.4.3アルコライザー法)に準拠して比重(日本酒度)及びアルコール度を測定し、算出した値、すなわち、温度15℃において原容量100立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数(g/100cm3)で定めることができる。
なお、水溶性食物繊維を除いたエキス分については、前記の方法によりエキス分(水溶性食物繊維を含むエキス分)を算出した後、後記の方法により算出した水溶性食物繊維の含有量を差し引いて算出することができる。
【0019】
エキス分は、由来について特に限定されないものの、例えば、麦由来のものであってもよい。
ここで、麦由来のエキス分は、麦に由来してもたらされるものであればよく、原料(麦由来原料)の形態は問わない。麦由来原料の形態としては、麦、麦芽及びこれらのエキスなどが挙げられ、これらは単独で又は複数併用して用いることができる。
麦、麦芽及びこれらのエキスはそれぞれ、大麦、小麦、ライ麦、燕麦などを適宜に加工することにより得ることができる。これらの麦は、ビールテイスト飲料の味と香りに大きな影響を与えるとともに、アルコール発酵させる場合は、酵母が資化可能な窒素源及び炭素源ともなる。
【0020】
なお、麦由来原料として用いられる麦とは、大麦、小麦、ライ麦、燕麦などを発芽させないものをいい、脱穀しても良いし、穀粒をそのままの状態又は適宜の大きさに粉砕等した状態で用いることができる。
麦由来原料として用いられる麦芽とは、大麦、小麦、ライ麦、燕麦などを所定の条件で発芽させたものをいい、発芽させた状態又はこれを適宜の大きさに粉砕等した状態で用いることができる。
麦由来原料として用いられる麦又は麦芽由来のエキスとは、麦又は麦芽を水及び/又は有機溶剤などを用いて所定の成分を抽出等し、これを濃縮させたものをいう。
前記したそれぞれの麦は、消費者のニーズに応じ、焙燥して使用することができる。麦の焙燥は麦の焙燥条件を適宜に調節することによって任意に行うことができる。
なお、エキス分として、麦由来以外のものとしては、例えば、米、コーンスターチ、コーングリッツ、液糖などを用いることができる。
【0021】
(プリン体)
本実施形態において、プリン体は、2.0mg/100mL以下が好ましい。なお、プリン塩基、プリンヌクレオシド、プリンヌクレオチドなどプリン骨格を持つ物質を総称してプリン体と呼ぶ。プリン体が2.0mg/100mLを超える場合、麦使用率が高いことを意味する。つまり、味わいが深く、濃く、広がりが出て香味の濃いビールテイスト飲料であるので、水溶性食物繊維が含有されていてもコクやキレに大きな影響は生じない。従って、プリン体が2.0mg/100mLを超える場合、後記するようにリナロールやα−テルピネオールの含有量を規定することによってキレを改善する意義が薄れる。そのため、前記したようにプリン体は、2.0mg/100mL以下が好ましいとした。
【0022】
プリン体を所定値以下とする手法については、特に限定されるものではないが、エキス分を低減させることにより実現することができる。したがって、プリン体を所定値以下とする手法については、エキス分を低減させる場合と同様、例えば、麦使用量を一般的なビールを製造する場合の1/5〜1/10に制限して麦汁(発酵前液)を製造し、かかる麦汁をアルコール発酵させるか、又は一般的なビールを製造する麦使用量にて麦汁を製造し、かかる麦汁をアルコール発酵させた後、これを前記したエキス分となるように希釈してもよい。
【0023】
(プリン体:測定方法)
ビールテイスト飲料に含まれるプリン体は、「Biomedical Chromatography,2009;23」(p.858−864)の記載に従い、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて測定し算出することができる。
例えば、以下の装置及び条件で測定し算出すればよい。
装置:HP1100(アジレントテクノロジー社)
カラム:ShodexAsahipakGS−320HQ(7mmI.D.×300mm)
移動相:150mMりん酸ナトリウム緩衝液(pH2.5)
流量:0.6mL/min
カラム温度:35℃
検出:UV 260nm
【0024】
(水溶性食物繊維)
水溶性食物繊維とは、人間の消化酵素では消化されない食品中の多糖類を主体とした高分子成分の総体のうち水溶性のものをいう(綾野、ジャパンフードサイエンス、12、27〜37頁(1988))。水溶性食物繊維には整腸作用や血糖値上昇抑制作用といった有用な作用が認められている。本実施形態においては、水溶性食物繊維を含有させることにより、ビールテイスト飲料にコクを付与している。
【0025】
そして、本実施形態においては、水溶性食物繊維として、難消化性デキストリン及びポリデキストロースのうちの少なくとも一種を用いる。
ここで、後記の実施例に示すように、水溶性食物繊維の中でも、大豆食物繊維は、ビールテイスト飲料にコクを付与できないだけでなく、後記するリナロールやα−テルピネオールを添加してもキレを向上させることもできない。つまり、本実施形態においては、単に水溶性食物繊維を含有すればよいというものではなく、水溶性食物繊維の中でも、後記するリナロールやα−テルピネオールと良好な組み合わせとなる難消化性デキストリンやポリデキストロースを選択する必要がある。
【0026】
難消化性デキストリンは、澱粉の加水分解・熱分解により生成され、各種アミラーゼ、特にヒトの消化酵素によっても分解されない成分を有するものである。
ポリデキストロースは、トウモロコシから作られた水溶性食物繊維であり、ブドウ糖、ソルビトールを混ぜ合わせ、クエン酸を加えることにより生成することができる。
なお、商業上入手可能な難消化性デキストリンとしては、例えば、松谷化学工業株式会社製のファイバーソル、パインファイバーなどがあり、ポリデキストロースとしては、例えば、ダニスコジャパン株式会社製のライテスIIなどがある。
【0027】
水溶性食物繊維の含有量は、ビールテイスト飲料にコクを付与できる程度の濃度であればよく、0w/v%を超え4.0w/v%以下とするのが好ましく、0.5〜4.0w/v%とするのがより好ましい。
【0028】
(水溶性食物繊維:測定方法)
ビールテイスト飲料に含まれる難消化性デキストリンやポリデキストロースは、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて測定することができる。
【0029】
詳細には、難消化性デキストリンは、日本食品分析センター「栄養表示のための成分分析のポイント(2007年10月20日発行)」第76〜78頁に記載された方法に基づいて測定することができる。
また、ポリデキストロースは、独立行政法人 農林水産消費安全技術センター「調査研究報告 第13号 1301食品中のポリデキストロースの定量法の検討」に記載された方法に基づいて測定することができる。
【0030】
(リナロール、α−テルピネオール)
リナロールとは、スズラン、ラベンダーの様な芳香を放つ化合物であり、モノテルペンアルコールの一種である。そして、α−テルピネオールとは、ライラックの様な芳香を放つ化合物であり、モノテルペンアルコールの一種である。
リナロール及びα−テルピネオールいずれもが、ビールテイスト飲料のキレを改善する効果、つまりキレを良くする効果を発揮する。ただし、α−テルピネオールの方がリナロールよりも少ない含有量(約1/2の含有量)で効果を発揮する。
【0031】
詳細には、ビールテイスト飲料中のリナロールの含有量をXppbとし、α−テルピネオールの含有量をYppbとした場合に、(X+2Y)≧200を満たすことにより、ビールテイスト飲料のキレを良くするという効果を得ることができる。なお、X=0又はY=0であっても、上記式を満たす限り、キレを良くするという効果を得ることができる。
一方、(X+2Y)が200未満の場合、リナロール及びα−テルピネオールに基づいたビールテイスト飲料のキレを改善する効果を期待できない。
【0032】
そして、ビールテイスト飲料中のリナロールの含有量をXppbとし、α−テルピネオールの含有量をYppbとした場合に、X≧200及びY≧100のうちの少なくとも一つを満たすことにより、ビールテイスト飲料のキレを良くするという効果を確実に得ることができる。つまり、X≧200を満たすことにより、リナロールに基づくビールテイスト飲料のキレを改善する効果を確実に得ることができ、Y≧100を満たすことにより、α−テルピネオールに基づくビールテイスト飲料のキレを改善する効果を確実に得ることができる。
【0033】
リナロールの含有量(X)の上限値については、特に限定されるものではないが、3000ppbを超えるとグリーンな香り(青臭い香り、ホップ臭)が強くなってしまう。よって、リナロールの含有量は3000ppb以下が好ましい。
また、α−テルピネオールの含有量(Y)の上限値についても、特に限定されるものではないが、5000ppbを超えると前記の効果が飽和してしまう。よって、α−テルピネオールの含有量は5000ppb以下が好ましい。
なお、ここで1ppbとは、詳細には1.0×10−9w/vである。
【0034】
(リナロール、α−テルピネオール:由来)
リナロール及びα−テルピネオールの由来は問わない。つまり、麦由来原料やホップなどの原料に由来して含有したものであると、任意添加材料として添加されたものであるとを問わず、最終製品における含有量が前記の範囲であればよい。
ただし、従来の方法によってビールテイスト飲料を製造した場合、リナロール及びα−テルピネオールの含有量を前記の範囲とするのは困難であるため、例えば、任意添加材料としてコリアンダーシードやオレンジピールを用いるのが好ましい。コリアンダーシードにはリナロールが、オレンジピールにはα−テルピネオールが豊富に含有されているとともに、いずれの香味もビールテイスト飲料に悪影響を及ぼさないからである。
なお、コリアンダーシードとは、コリアンダーの種子(植物学上では果実)である。また、オレンジピールとは、オレンジの果皮又はこの果皮を乾燥させたものである。
【0035】
(リナロール、α−テルピネオール:測定方法)
ビールテイスト飲料に含まれるリナロール及びα−テルピネオールは、固相マイクロ抽出(SPEM)法に基づき、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC−MS)を用いて測定することができる。
詳細には、例えば、独立行政法人 酒類総合研究所 第34回本格焼酎鑑評会で示されている方法に準じて測定すればよい。
飲料10mLを20mLガラスバイアルに採取し密栓する。密栓したバイアルを60℃10分間攪拌した後、SPEMファイバー(Polydimethylsiloxane/Divinylbenzene 65 μm:スペルコ社)をヘッドスペース部に露出させ10分間揮発性成分をファイバーに吸着させた後、オートインジャクターによりGC−MS(GC6890/5973MSD:アジレントテクノロジー社)に導入し分析を行えばよい。
【0036】
(発泡性)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性とするのが好ましいが、非発泡性とすることもできる。ここで、本実施形態における発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm2)以上であることをいい、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm2)未満であることをいう。
【0037】
(その他の構成)
本実施形態に係るビールテイスト飲料においては、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、苦味料、塩類など(これらを単に任意添加材料ということがある。)を添加することもできる。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素などを用いることができる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムK、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、リチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。また、苦味料としては、例えば、イソ−α酸、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップなどを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。
前記した麦、水溶性食物繊維及び必要に応じて添加されるアルコールや任意添加材料などは、一般に市販されているものを使用することができる。
【0038】
また、本実施形態においては、麦以外の原料として、例えば、エンドウ豆、トウモロコシ、コメ、ダイズなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、これらの原料もビールテイスト飲料の味と香りに影響を与え、アルコール発酵させる場合には、酵母が資化可能な窒素源及び炭素源となる。
【0039】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0040】
以上に説明した構成とすれば、水溶性食物繊維によりコクが付与され、リナロール、α−テルピネオールによりキレが改善されたビールテイスト飲料を提供することができる。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、特に、発泡酒やリキュール(発泡性(1))に分類され、ビールのような味及び香りを呈するビールテイスト飲料に適用することができる。
【0041】
〔ビールテイスト飲料の製造方法〕
次に、本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、前記したビールテイスト飲料を製造する製造方法であって、その製造工程中のいずれかの段階で、水溶性食物繊維を含有させ、最終製品中のリナロールの含有量をXppbとし、最終製品中のα−テルピネオールの含有量をYppbとした場合に、(X+2Y)≧200を満たすように、リナロール及びα−テルピネオールのうちの少なくとも一種を含有させる。
【0042】
図1に本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法の主な工程の一例を示す。
図1に示す本製造方法は、発酵前工程S1と、発酵工程S2と、発酵後工程S3と、を含んでいる。
なお、水溶性食物繊維、リナロール、α−テルピネオール、及び任意添加材料などの添加は、アルコール発酵前、アルコール発酵中及びアルコール発酵後のいずれの段階でも、すなわち前記した各工程のどの工程でも行うことができる。
【0043】
(発酵前工程S1)
発酵前工程S1は、麦由来原料を含む発酵前液を調製する工程である。発酵前工程S1において調製される発酵前液は、酵母が資化可能な窒素源及び炭素源となる麦由来原料を含む溶液であれば特に限られない。窒素源及び炭素源は、酵母が資化可能なものであれば特に限られない。酵母が資化可能な窒素源とは、例えば、麦由来原料に含まれるアミノ酸及びペプチドのうちの少なくとも一つである。酵母が資化可能な炭素源とは、例えば、麦由来原料に含まれる糖類である。このような麦由来原料については既に詳述しているのでその説明を省略する。
【0044】
発酵前液が、麦や、麦以外の原料を含む場合は、当該発酵前液中でこれらに含まれるタンパク質及び/又は多糖類を酵素で分解する工程(いわゆる糖化工程)を実施するのが好ましい。かかる酵素としては、プロテアーゼ及び/又はアミラーゼなどを挙げることができる。これらの酵素は、麦などに含まれるものを利用してもよいし、これらの酵素に代えて又は加えて、予め精製された酵素を外的に添加してもよい。
【0045】
発酵前液は、この後に続く発酵工程S2において酵母による発酵を行う前にろ過するのが好ましく、煮沸するのがより好ましい。水溶性食物繊維や酸味物質などの添加は、前記したようにいずれの段階でも可能であるが、ろ過や煮沸前にこれらを添加するのが好ましい。発酵前液をろ過することにより、夾雑物を排除でき、より高品質なビールテイスト飲料を提供することができる。また、発酵前液を煮沸することにより、これを殺菌して無菌状態とすることができるので、発酵工程S2でのアルコール発酵を好適に行わせることができる。
【0046】
(発酵工程S2)
発酵工程S2は、発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う工程である。本実施形態においては、例えば、まず、予め温度が所定の範囲内(例えば、0〜40℃の範囲)に調整された無菌状態の発酵前液に酵母を添加して発酵液を調製する。
【0047】
発酵開始時の発酵液における酵母数は適宜調節することができ、例えば、1×102〜3×109cells/mLの範囲内とすることができ、1×106〜3×109cells/mLの範囲内とすることが好ましい。
【0048】
次いで、この発酵液を所定の温度で所定の時間維持することにより発酵を行う。発酵の温度は適宜調節することができ、例えば、0〜40℃の範囲内、より好ましくは6〜15℃の範囲内とする。
【0049】
発酵工程S2においては、さらに熟成を行うこととしてもよい。熟成は、上述のような発酵後の発酵液をさらに所定の温度で所定の時間だけ維持することにより行う。この熟成により、発酵液中の不溶物を沈殿させて濁りを取り除き、また、香味を向上させることができる。
【0050】
こうして発酵工程S2においては、酵母により生成されたエタノール及び香味成分を含有する発酵後液を得ることができる。発酵後液に含まれるエタノールの濃度(アルコール度数)は、例えば、1〜20%とすることができ、好ましくは1〜10%とすることができ、より好ましくは3〜10%とすることができる。エタノールの濃度を1%未満とする場合は、発酵工程S2での発酵時間を短くしたり、発酵温度を低くしたりするなど、発酵条件を適宜調節することにより行うことができる。また、アルコール度数が1〜20%の発酵後液を適宜希釈することにより、エタノールの濃度を1%未満とすることもできる。
【0051】
(発酵後工程S3)
発酵後工程S3は、発酵後液に所定の処理を施して最終的にビールテイスト飲料を得る工程である。発酵後工程S3としては、例えば、発酵工程S2により得られた発酵後液のろ過(いわゆる一次ろ過に相当)が挙げられる。この一次ろ過により、発酵後液から不溶性の固形分や酵母を除去することができる。また、発酵後工程S3においては、さらに発酵後液の精密ろ過(いわゆる二次ろ過)を行ってもよい。二次ろ過により、発酵後液から雑菌や、残存する酵母を除去することができる。なお、精密ろ過に代えて、発酵後液を加熱することにより殺菌することとしてもよい。発酵後工程S3における一次ろ過、二次ろ過、加熱は、ビールテイスト飲料を製造する際に使用される一般的な設備で行うことができる。
【0052】
さらに、発酵後液のアルコール度数を高くしたい場合は、この発酵後工程S3で前記したアルコール、すなわちスピリッツなどを添加するのが好ましい。
また、発酵後工程S3には、ビンや缶、ペットボトルなどの容器に充填する工程も含まれる。
製造したビールテイスト飲料が非発泡性であったり、発泡性が十分でなかったりした場合であって、これに十分な発泡性を付与したい場合は、炭酸ガス含有水を添加したり、カーボネーションを行うことにより所望のガス圧とすることができる。
【0053】
以上に説明した製造方法により、本実施形態に係るビールテイスト飲料を好適に製造することができる。このようにして製造されたビールテイスト飲料は、コクがあり、キレが改善されている。そのため、酒税法上、発泡酒やリキュール(発泡性(1))に分類される場合であっても、従来品よりもコクとキレに優れたビールテイスト飲料を消費者に提供することができる。また、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、そのようなビールテイスト飲料を確実に製造することができる。
【実施例】
【0054】
次に、本発明の所望の効果を奏する実施例と、そうでない比較例と、また参考例とにより、本発明の内容について具体的に説明する。
【0055】
〔参考例1〕
参考例1として、エキス分・プリン体などを所定量含有する飲料に対して、水溶性食物繊維は含有させるが、リナロールやα−テルピネオールを添加する操作を行わないサンプルを製造し、そのコクとキレについて検討した。
本参考例では、市販の発泡酒(水溶性食物繊維を除いたエキス分:3.2g/100cm、プリン体:3.4mg/100mL、糖質:3.2g/100cm、アルコール度数5.5%)を約3倍に希釈して、水溶性食物繊維を除いたエキス分が1.0g/100cm、プリン体が1.1mg/100mL、糖質が1.0g/100cmとなるように調整した。
【0056】
そして、表1に示す含有量となるように水溶性食物繊維を添加してNo.1−1〜1−5に係るサンプルを製造した。なお、これらのサンプルはいずれもイオン交換水で調製した。また、水溶性食物繊維として、難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製パインファイバー)を用いた。
なお、イオン交換水は、エキス分が0.0g/100cm、プリン体が0.0mg/100mL、糖質が0.0g/100cm、アルコール度数が0%である。
【0057】
製造した各サンプルについて、よく訓練された専門のパネル6名が下記評価基準に則ってコクとキレについて1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。表1に、No.1−1〜1−5に係るサンプルの水溶性食物繊維を除いたエキス分(g/100cm3)、プリン体の含有量(mg/100mL)、水溶性食物繊維の含有量(w/v%)、コク及びキレを併せて記載した。
【0058】
(コク)
5点:極めてコクが強かった。
4点:コクが強かった。
3点:コクがあった。
2点:コクが若干あった。
1点:コクを感じなかった。
【0059】
(キレ)
5点:極めてキレに優れていた。
4点:キレが優れていた。
3点:キレがあった。
2点:キレが若干あった。
1点:キレがなかった。
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示すように、水溶性食物繊維の含有量が増加するにしたがい、コクは増強するものの、キレが低下してしまうことが確認できた。特に、水溶性食物繊維の含有量が2.0w/v%以上となるNo.1−4、1−5は、キレの改善という課題が明確になることが確認できた。
【0062】
〔参考例2〕
参考例2として、イオン交換水に対して、水溶性食物繊維は含有させるが、リナロールやα−テルピネオールを添加する操作を行わないサンプルを製造し、そのコクとキレについて検討した。
【0063】
本参考例では、表2に示す含有量となるようにイオン交換水に水溶性食物繊維を添加してNo.2−1〜2−5に係るサンプルを製造した。なお、これらのサンプルはいずれもイオン交換水で調製した。また、水溶性食物繊維として、難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製パインファイバー)を用いた。
【0064】
このようにして製造した各サンプルについて、よく訓練された専門のパネル6名が参考例1で説明した評価基準に則ってコク及びキレについて1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
【0065】
【表2】
【0066】
表2に示すように、参考例1と同様、水溶性食物繊維の含有量が増加するにしたがい、コクは増強するものの、キレが低下してしまうことが確認できた。特に、水溶性食物繊維の含有量が2.0w/v%以上となるNo.2−4、2−5は、キレの改善という課題が明確になることが確認できた。
なお、評価項目として挙げなかったが、水溶性食物繊維の含有量が0.5w/v%であるNo.2−2において、難消化性デキストリンの特有の香りが感じられた。そして、水溶性食物繊維の含有量が増加するにしたがい(No.2−2→2−3→2−4→2−5)、当該特有の香りが強く感じられた。
【0067】
〔実施例1〕
次に、実施例1では、参考例1、2においてキレの改善という課題が明確になった「水溶性食物繊維の含有量が2.0w/v%」という条件において、リナロールの含有量が「香り」、「キレ」及び「総合評価」に与える影響を検討した。
【0068】
実施例1では、最終製品中における水溶性食物繊維の含有量が2.0w/v%となり、リナロールの含有量が表3の値となるようにサンプルの濃度を調整した。詳細には、イオン交換水に、水溶性食物繊維として難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製パインファイバー)と、リナロール(東京化成工業株式会社製)を添加して表3に示すサンプルを製造した。
【0069】
このようにして製造した各サンプルについて、よく訓練された専門のパネル6名が参考例1で説明した評価基準に則って、キレについて1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。なお、実施例1では、評価項目としてさらに「香り」及び「総合評価」について評価した。「香り」及び「総合評価」は、下記評価基準に則って1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
【0070】
(香り)
5点:難消化性デキストリンの特有の香りが完全にマスキングされていた。
4点:難消化性デキストリンの特有の香りがほとんどマスキングされていた。
3点:難消化性デキストリンの特有の香りがある程度マスキングされていた。
2点:難消化性デキストリンの特有の香りが若干マスキングされていた。
1点:難消化性デキストリンの特有の香りがマスキングされていなかった。
【0071】
(総合評価)
5点:飲料としての味のバランスが極めて優れていた。
4点:飲料としての味のバランスが優れていた。
3点:飲料としての味のバランスが良かった。
2点:飲料としての味のバランスが悪くはなかった。
1点:飲料としての味のバランスが悪かった。
【0072】
【表3】
【0073】
表3に示すように、No.3−3〜3−6に係るサンプルは、リナロールの含有量が200ppb以上であったことから、キレが改善されていることが確認された。また、これらは総合評価及び香りについても良い結果となった。
香りについては、リナロールの含有量が100ppbであるNo.3−2に係るサンプルも良い結果となった。つまり、キレを改善させるために必要となるリナロールの含有量と、香りを向上させるために必要となるリナロールの含有量とが異なることが確認された。
なお、実施例1において、表3の評価項目から「ボディ感(コク)」を割愛しているが、実施例1のサンプルは全て水溶性食物繊維(難消化性デキストリン)の含有量が2.0w/v%であったことから、コクについて良い結果(2点以上)となった。
【0074】
〔実施例2〕
次に、実施例2では、実施例1においてキレが改善されていることが確認できた「リナロールの含有量が1000ppb」という条件において、水溶性食物繊維の含有量が「香り」、「キレ」及び「総合評価」に与える影響を検討した。
【0075】
実施例2では、最終製品中における水溶性食物繊維の含有量が表4の値となり、リナロールの含有量が1000ppbとなるようにサンプルの濃度を調整した。詳細には、イオン交換水に、水溶性食物繊維として難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製パインファイバー)と、リナロール(東京化成工業株式会社製)を添加して表4に示すサンプルを製造した。
【0076】
このようにして製造した各サンプルについて、よく訓練された専門のパネル6名が参考例1及び実施例1で説明した評価基準に則って、「後味(キレ)」、「香り」及び「総合評価」について1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
【0077】
【表4】
【0078】
表4に示すように、No.4−2〜4−5に係るサンプルは、難消化性デキストリンの含有量が0.5〜4.0w/v%であったことから、良い総合評価となることが確認された。また、これらは、キレ及び香りについても良い結果となった。
なお、実施例2において、表4の評価項目から「ボディ感(コク)」を割愛しているが、サンプルNo.4−2〜4−5の水溶性食物繊維(難消化性デキストリン)の含有量が0.5w/v%以上であったことから、コクについて良い結果(2点以上)となった。
【0079】
〔実施例3〕
次に、実施例3では、実施例1、2において好ましい結果が得られることが確認できた「リナロールの含有量が1000ppb」、「水溶性食物繊維の含有量が2w/v%」という条件において、水溶性食物繊維の種類が「香り」、「キレ」及び「総合評価」に与える影響を検討した。
【0080】
実施例3では、最終製品中における水溶性食物繊維の含有量が2w/v%となり、リナロールの含有量が1000ppbとなるようにサンプルの濃度を調整した。詳細には、イオン交換水に、水溶性食物繊維として難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製パインファイバー)、ポリデキストロース(ハイケム株式会社製ポリデキストロースMK)又は大豆食物繊維(不二製油株式会社製ソヤファイブS−LN)と、リナロール(東京化成工業株式会社製)を添加して表5に示すサンプルを製造した。
【0081】
このようにして製造した各サンプルについて、よく訓練された専門のパネル6名が参考例1及び実施例1で説明した評価基準に則って、「後味(キレ)」、「香り」及び「総合評価」について1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
【0082】
【表5】
【0083】
表5に示すように、No.5−1〜5−2に係るサンプルは、難消化性デキストリン又はポリデキストロースを用いていたため、全ての評価項目において良い結果が得られることが確認された。一方、No.5−3に係るサンプルは、大豆食物繊維を用いていたため、全ての評価項目において良い結果が得られなかった。
つまり、水溶性食物繊維の中でも、一部のもの(難消化性デキストリン、ポリデキストロース)を好適に用いることができることが確認された。
なお、実施例3において、表5の評価項目から「ボディ感(コク)」を割愛しているが、実施例3のサンプルは全て水溶性食物繊維の含有量が2.0w/v%であったことから、コクについて良い結果(2点以上)となることは確認された。
【0084】
〔実施例4〕
次に、実施例4では、参考例1、2においてキレの改善という課題が明確になった「水溶性食物繊維の含有量が2.0w/v%」という条件において、α−テルピネオールの含有量が「香り」、「キレ」及び「総合評価」に与える影響を検討した。
【0085】
実施例4では、最終製品中における水溶性食物繊維の含有量が2.0w/v%となり、α−テルピネオールの含有量が表6の値となるようにサンプルの濃度を調整した。詳細には、イオン交換水に、水溶性食物繊維として難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製パインファイバー)と、α−テルピネオール(東京化成工業株式会社製)を添加して表6に示すサンプルを製造した。
【0086】
このようにして製造した各サンプルについて、よく訓練された専門のパネル6名が参考例1及び実施例1で説明した評価基準に則って、「後味(キレ)」、「香り」及び「総合評価」について1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
【0087】
【表6】
【0088】
表6に示すように、No.6−3〜6−6に係るサンプルは、α−テルピネオールの含有量が100ppb以上であったことから、キレが改善されていることが確認された。また、これらは総合評価及び香りについても良い結果となった。
香りについては、α−テルピネオールの含有量が100ppbであるNo.6−3に係るサンプルは良い結果が得られず、200ppb以上で良い結果となった。つまり、キレを改善させるために必要となるα−テルピネオールの含有量と、香りを向上させるために必要となるα−テルピネオールの含有量とが異なることが確認された。
なお、実施例4において、表6の評価項目から「ボディ感(コク)」を割愛しているが、実施例4のサンプルは全て水溶性食物繊維(難消化性デキストリン)の含有量が2.0w/v%であったことから、コクについて良い結果(2点以上)となることは確認された。
【0089】
〔実施例5〕
次に、実施例5では、参考例1、2においてキレの改善という課題が明確になった「水溶性食物繊維の含有量が2.0w/v%」という条件において、エキス分・プリン体などを所定量含有する飲料に対して、リナロールとα−テルピネオールの含有量が「香り」、「キレ」及び「総合評価」に与える影響を検討した。
【0090】
実施例5では、市販の発泡酒(水溶性食物繊維を除いたエキス分:3.2g/100cm、プリン体:3.4mg/100mL、糖質:3.2g/100cm、アルコール度数5.5%)を約3倍に希釈して、水溶性食物繊維を除いたエキス分が1.0g/100cm、プリン体が1.1mg/100mL、糖質が1.0g/100cmとなるように調整した。
【0091】
そして、実施例5では、最終製品中における水溶性食物繊維の含有量が2.0w/v%となり、リナロール及びα−テルピネオールの含有量が表7の値となるようにサンプルの濃度を調整した。詳細には、前記の希釈後の発泡酒に、水溶性食物繊維として難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製パインファイバー)と、リナロール(東京化成工業株式会社製)やα−テルピネオール(東京化成工業株式会社製)を添加して表7に示すサンプルを製造した。
【0092】
このようにして製造した各サンプルについて、よく訓練された専門のパネル6名が参考例1及び実施例1で説明した評価基準に則って、「後味(キレ)」、「香り」及び「総合評価」について1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
【0093】
【表7】
【0094】
表7に示すように、No.7−2〜7−5に係るサンプルは、リナロールの含有量をXppbとし、α−テルピネオールの含有量をYppbとした場合に、(X+2Y)≧200を満たすことから、キレが改善されていることが確認された。また、これらは総合評価及び香りについても良い結果となった。
なお、実施例5において、表7の評価項目から「ボディ感(コク)」を割愛しているが、実施例5のサンプルは全て水溶性食物繊維(難消化性デキストリン)の含有量が2.0w/v%であったことから、コクについて良い結果(2点以上)となることは確認された。
【符号の説明】
【0095】
S1 発酵前工程
S2 発酵工程
S3 発酵後工程
図1