特許第6482877号(P6482877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482877
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】急結剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 22/08 20060101AFI20190304BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20190304BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   C04B22/08 Z
   C04B22/10
   C04B22/14 B
   C04B22/14 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-5523(P2015-5523)
(22)【出願日】2015年1月15日
(65)【公開番号】特開2016-130203(P2016-130203A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】谷田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】室川 貴光
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】寺島 勲
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−111516(JP,A)
【文献】 特開2001−342461(JP,A)
【文献】 特開2001−191322(JP,A)
【文献】 特開2005−281064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石灰硫黄合剤とカルシウムアルミネートを含有してなり、
前記石灰硫黄合剤が、前記石灰硫黄合剤100部につき、T−Ca換算でCaを2〜20部、T−S換算でSを5〜40部、MgO換算でMgを0.1〜4.0部含み、
前記石灰硫黄合剤のpHが10.0以上であり、
前記石灰硫黄合剤の酸化還元電位が−450mV以下である
急結剤。
【請求項2】
さらに、硫酸カルシウム、炭酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムより選ばれた少なくとも1種以上を含有してなる請求項1に記載の急結剤。
【請求項3】
カルシウムアルミネートのモル比が、2.0〜2.5である請求項1又は2に記載の急結剤。
【請求項4】
カルシウムアルミネートのガラス化率が60%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の急結剤。
【請求項5】
急結剤の成分を混合する前に石灰硫黄合剤をカルシウムアルミネートに噴霧することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の急結剤の製造方法。
【請求項6】
石灰硫黄合剤以外の急結剤の成分を混合した後に石灰硫黄合剤を噴霧して添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の急結剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
土木・建築業界で、主に、法面や地下構造物やトンネルなどの吹付けセメントモルタルや吹付けセメントコンクリートなどの吹付け材料に適用する急結剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、急結剤としては、カルシウムアルミネート及び/又はアルカリ金属アルミン酸塩とアルカリ炭酸塩等との混合物や、カルシウムアルミネートと3CaO・SiOとの混合物等が知られている(特許文献1、2、3、4参照)。
これらの急結剤は、セメントの凝結を促進させる働きがあり、いずれもコンクリートと混合し、地山面に吹付けられる。しかしながら、これらの急結剤は、充分に強い凝結力と地山面への付着力を得にくく、特に湧水箇所に吹付を行った場合には、剥落が生じやすくなり、又、リバウンド(跳ね返り)率が多くなるという課題があった。
【0003】
一方、農薬の1種として石灰硫黄合剤が知られる。石灰硫黄合剤は、主に果樹の農薬として知られ、生石灰と硫黄と水を原料とし、オートクレーブで反応させる。固液分離した黄褐色の液体が石灰硫黄合剤となる。
石灰硫黄合剤は、CaとSと水を主成分とし、MgO換算で0.5〜2.0%の範囲でMgを含む。石灰硫黄合剤のpHは10.0以上であることを特長とする。また、酸化還元電位も特異的である。石灰硫黄合剤の酸化還元電位(ORP)は−450mv以下である。
【0004】
石灰硫黄合剤を急結剤に適用した例は見当たらない。尚、重金属溶出低減剤およびこれを含む水硬性組成物や水硬性物質の混練物質の中で多硫化カルシウムを用いた使用が行われているが、急結剤に関する記述などなく、効果の明記もない(特許文献5、6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−51351号公報
【特許文献2】特公昭56−27457号公報
【特許文献3】特開昭61−26538号公報
【特許文献4】特開昭63−210050号公報
【特許文献5】特開2001−170596号公報
【特許文献6】特開2001−191322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、セメントコンクリートの急結効果が高まり、六価クロム残存濃度も低減されるなどの効果を奏する急結剤及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、(1)石灰硫黄合剤とカルシウムアルミネートを含有してなる急結剤、(2)さらに、硫酸カルシウム、炭酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムより選ばれた少なくとも1種以上を含有してなる(1)の急結剤、(3)カルシウムアルミネートのモル比が、2.0〜2.5である(1)又は(2)の急結剤、(4)カルシウムアルミネートのガラス化率が60%以上である(1)〜(3)のいずれかの急結剤、(5)石灰硫黄合剤のpHが10以上である(1)〜(4)のいずれかの急結剤、(6)急結剤の成分を混合する前に石灰硫黄合剤をカルシウムアルミネートに噴霧する(1)〜(5)のいずれかの急結剤の製造方法、(7)石灰硫黄合剤以外の急結剤の成分を混合した後に石灰硫黄合剤を噴霧して添加する(1)〜(5)のいずれかの急結剤の製造方法、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、セメントコンクリートの急結効果が高まり、六価クロム残存濃度も低減されるなどの効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明における部や% は特に規定しない限り質量基準で示す。
また、本発明のセメントコンクリートとは、セメントペースト、セメントモルタル、及びコンクリートを総称するものである。
【0010】
本発明で用いるセメントは、市販されている、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、早強セメント、超早強セメントやエコセメントなどであり、またこれらセメントの2種以上を併用することもできる。
【0011】
本発明の急結剤は石灰硫黄合剤を含有するものである。
石灰硫黄合剤とは、CaとSと水を主成分とし、成分は多硫化カルシウム(CaSx)が主であり、石灰硫黄合剤を100部としたとき、T−Ca換算で2〜20部、T−S換算で5〜40部、MgO換算で0.1〜4.0%の範囲でMgを含む。石灰硫黄合剤のpHは10.0以上であることを特長とする。また、酸化還元電位も特異的である。石灰硫黄合剤の酸化還元電位(ORP)は−450mv以下である。pHがアルカリ性領域であることは、極めて重要である。pHが10.0未満では、本発明の効果、すなわち、急結効果や六価クロムの低減効果が十分に得られない場合がある。石灰硫黄合剤はカルシウムアルミネート自体の水和を遅延するので量を増やすと遅延時間が長くなるため、硬化時間の調整が可能である。
石灰硫黄合剤を100部としたとき、T−Ca換算で2〜20部が好ましく、5〜15部がより好ましく、2部未満であると、優れた急結効果が確認されない場合があり、20部を超えると、溶液安定性が悪く、液状を保持できない場合がある。また、T−S換算で5〜40部が好ましく、10〜30部がより好ましく、5部未満であると、溶液安定性が悪い場合があり、40部を超えると、急結効果が大きく低下する場合がある。MgOは0.1〜4.0部が好ましく、0.5〜2.0部がより好ましい。MgOが0.1〜4.0部の範囲外であると、溶液安定性が下がり、析出する場合がある
【0012】
本発明で用いる石灰硫黄合剤は、セメント100部に対して0.01〜10部が好ましい。本発明は、セメントモルタルやセメントコンクリート調製後に石灰硫黄合剤を配合する急結剤を加えて、吹付け材料を調整するため、石灰硫黄合剤が0.01部未満となると、充分な本発明の効果が得られない場合がある。
本発明で用いる石灰硫黄合剤の形態は、液体、粉体、スラリー、懸濁液など、いづれの形態で用いることが可能である。
【0013】
本発明で用いるカルシウムアルミネートとは、カルシアを含む原料と、アルミナを含む原料とを混合して、キルンでの焼成や、電気炉での溶融等の熱処理をして得られる、CaOとAlとを主たる成分とし、水和活性を有する物質の総称であり、CaO及び/又はAlの一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化合物、アルカリ土類金属ハロゲン化合物、アルカリ金属硫酸塩及びアルカリ土類金属硫酸塩等と置換した化合物、あるいはCaOとAl2O3とを主たる成分とするものに、これらが少量固溶した物質である。カルシウムアルミネートの鉱物形態は、結晶質、非晶質いずれであっても、また、混在してもよい。
本発明で用いるカルシウムアルミネートは、ガラス化率60%以上が好ましく、80%以上が更に好ましい。ガラス化率60%未満であると、吹付け施工などの吹付けた後に急激な凝結、硬化が必要な場合、その効果が確認できない。
本発明で用いるカルシウムアルミネートは、CaO/Alのモル比が2.0〜2.5に調整する。理由として、モル比が2.0未満である場合、急結剤添加後に優れた凝結、強度発現性が得られない。モル比が2.5を超える場合、ガラス化率60%を超えるものはカルシウムアルミネートとしてガラス化率を確保することが困難となる。
カルシウムアルミネートの粉末度は、ブレーン比表面積で4000〜8000cm/gが好ましく、4000cm/g未満であると、優れた初期強度が得られない場合があり、8000cm/gを超えると優れた長期強度が発現しない場合がある。
【0014】
本発明で用いる石灰硫黄合剤とカルシウムアルミネートを含有してなる急結剤の配合割合は、カルシウムアルミネート100部に対して、石灰硫黄合剤が0.01〜10部であることが好ましく、0.01部未満では優れた強度発現性が得られない場合があり、10部を超えると遅延する場合がある。
本発明で用いる石灰硫黄合剤とカルシウムアルミネートを含有してなる急結剤の使用量は、セメント100部に対して4〜20部が好ましい。急結剤が4部未満では本発明の効果が充分得られない場合がある。
【0015】
本発明で用いる急結剤はカルシウムアルミネート以外にも本発明の効果を阻害することがないものであれば、減水剤、AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、遅延剤、発泡剤、凍寒材、高炉スラグ、フライアッシュ、石粉などいづれの材料も配合可能であり、また、これらの1種以上を組み合わせても良い。
【0016】
本発明で用いる急結剤は、石灰硫黄合剤とカルシウムアルミネートを混合して製造するが、カルシウムアルミネートに石灰硫黄合剤を噴霧して製造することが可能であり、カルシウムアルミネートのその他の成分を混合した後に石灰硫黄合剤を噴霧することも可能である。
石灰硫黄合剤とカルシウムアルミネートなどを混合する方法としては、カルシウムアルミネートを調整し、粉砕の際、配合する場合やカルシウムアルミネートなどと他の原材料を混合し、急結剤を調製する際に配合する方法が挙げられる。
また、石灰硫黄合剤をカルシウムアルミネートに噴霧する方法として、特に限定されるものではないが、石灰硫黄合剤を圧縮空気によりミスト化して噴霧したり、カルシウムアルミネートや他の原材料を混合する際に圧縮空気で混合する方式などを採用する際、混合するための圧縮空気の中に石灰硫黄合剤を加えて、噴霧する方法などが挙げられる。
【0017】
本発明で用いる急結剤はカルシウムアルミネート以外にも効果が高いものとして、特に硫酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムが挙げられる。これら成分の粉末度(ブレーン比表面積)が、カルシウムアルミネートと同程度に推移していれば、本発明の効果が増進する。
また、急結剤の凝結を妨げない範囲内で硫酸カルシウムを除く、硫酸塩類、例えば、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸チタン、硫酸マグネシウム、硫酸リチウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属、その他の元素などの化合物の無水物や水和物、アルミン酸ナトリウムも硫酸カルシウムと同様に、アルミン酸、アルミン酸アルカリ金属、アルミン酸アルカリ土類金属、その他の元素などの化合物の無水物や水和物、さらに、炭酸ナトリウムも同様に炭酸塩のアルカリ金属、アルカリ土類金属、その他の元素などの化合物の無水物や水和物が使用可能である。これらの使用形態は、液体、粉体、スラリー、懸濁などいずれも使用可能である。
【0018】
本発明で用いるセメントコンクリートは、セメント、水、骨材、さらに各種混和材などを事前に混合・練混ぜなどにより、ウエットセメントペースト、ウエットモルタル、ウエットコンクリートでも良いし、水を加えないドライセメント、ドライモルタル、ドライコンクリートがある。
本発明で用いる細骨材や粗骨材は、本発明を阻害するものでなければ、いずれも使用可能である。
【0019】
本発明で用いる急結剤は、液体形態の場合、急結剤の急結性能を損なうことがなければ、いずれの物質も配合可能である。その中でも、特にフッ化水素などのフッ素原料、ジエタノールアミンなどのアミン原料、硫酸塩、錯体形成剤、窒素化合物、液体の固形分濃度を高められるものであれば、いずれの物質も配合可能である。特にフッ素原料ではフッ化水素、アミン原料であれば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが使用可能であり、硫酸塩では、硫酸マグネシウム、錯体形成剤として、カルボン酸、ジカルボン酸、オキシカルボン酸、及びこれらの塩などが使用可能である。
【0020】
本発明の急結剤やセメントコンクリートや急結剤は、特に限定されるものではなく、エア搬送、ポンプ搬送などいずれの搬送方式やこれらを組み合わせた搬送方式が可能である。
ポンプ搬送の場合、ギアポンプ、スクイズポンプ、プランジャーポンプ、ピストンポンプ、スネイクポンプなどいずれのポンプによる搬送も可能である。
【実施例】
【0021】
「実験例1」
セメント800g、水480g、細骨材2000gのセメントモルタルを調製してから、表1に示す種類の急結剤100部としたときの表1に示す量(部)のアルミン酸ナトリウム、硫酸カルシウム、炭酸ナトリウムからなる急結剤80gをセメントモルタルに添加した直後からプロクター貫入抵抗値、圧縮強度、六価クロム残存濃度を測定した。
なお、急結剤の調製で石灰硫黄合剤をカルシウムアルミネートに圧縮空気によりミスト化して噴霧したものを粉砕してカルシウムアルミネートとして使用した。
【0022】
<使用材料>
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品、密度3.15g/cm
水:上水道水、密度1.00g/cm
細骨材:新潟県姫川水系川砂、密度2.62g/cm
急結剤A:CaO/Alモル比2.5、ガラス化率60%、密度2.62g/cm、石灰硫黄合剤αをカルシウムアルミネート100部中、0.1部噴霧したもの、ブレーン比表面積8000cm/g
急結剤B:CaO/Alモル比2.3、ガラス化率80%、密度2.60g/cm、石灰硫黄合剤αをカルシウムアルミネート100部中、0.1部噴霧したもの、ブレーン比表面積6500cm/g
急結剤C:CaO/Alモル比2.0、ガラス化率99%、密度2.60g/cm、石灰硫黄合剤αをカルシウムアルミネート100部中、0.1部噴霧したもの、ブレーン比表面積5800cm/g
急結剤D:CaO/Alモル比2.3、ガラス化率80%、密度2.60g/cm、石灰硫黄合剤を噴霧しないもの、ブレーン比表面積6600cm/g
石灰硫黄合剤α:石灰硫黄合剤、市販品、pH10.5、酸化還元電位(ORP)が−500mv、MgO含有量1.0%、T−Ca量10%、T−S量22%
アルミン酸ナトリウム(SA):市販品、無水品、NaO/Alモル比1.0、ブレーン比表面積5200cm/g
硫酸カルシウム(CS):市販品、無水物、ブレーン比表面積5030cm/g
炭酸ナトリウム(NA):市販品、無水物、ブレーン比表面積4000cm/g
【0023】
<測定方法>
プロクター貫入抵抗値測定:JSCE D−102−1999に準じて、始発時間、終結時間をそれぞれ測定
した。なお、プロクター貫入抵抗値は急結剤添加からの分で表記。
圧縮強度測定:JSCE D−102−1999に準じて、圧縮強度を測定した。材齢は10分、24時間、2
8日とした。
六価クロム残存濃度:急結剤の六価クロム低減能力を確認するために、六価クロム標準溶液を希釈して、六価クロム濃度が100mg/lの溶液を調製し、この六価クロム溶液50ccに各セメントモルタル1000gを入れて攪拌し、7日後に固液分離して液相中の残存六価クロム濃度を測定することによって評価した。ただし、六価クロムの残存濃度は、JISK 0102に準じ、ICP発光分光分析法により測定した。
【0024】
【表1】
【0025】
表1の結果より、石灰硫黄合剤を噴霧したカルシウムアルミネートA〜Cは噴霧しないカルシウムアルミネートDに比べて、凝結性状、強度発現性の面で優れ、また、六価クロムの残存濃度も検出されず、優れた性能が確認された。特にカルシウムアルミネート100部に対してアルミン酸ナトリウムが5〜20部、硫酸カルシウムが20〜110部、炭酸ナトリウムが9〜44部で物性は優れる傾向にある。
【0026】
「実験例2」
実験例1と同様に、セメント800g、水480g、細骨材2000gのセメントモルタルを調製してから、表2に示す種類の石灰硫黄合剤をカルシウムアルミネートB100部に対して0.1部噴霧したカルシウムアルミネート100部、アルミン酸ナトリウム13部、硫酸カルシウム65部、炭酸ナトリウム18部からなる急結剤80gをセメントモルタルに添加した直後から、プロクター貫入抵抗値、圧縮強度、六価クロム残存濃度を測定した。
【0027】
<使用材料>
石灰硫黄合剤β:市販品、pH11.0、酸化還元電位−540mv、MgO含有量1.0%、T−Ca量12%、T−S量18%
石灰硫黄合剤γ:市販品、pH10.0、酸化還元電位−450mv、MgO含有量1.0%、T−Ca量7%、T−S量26%
石灰硫黄合剤δ:市販品、pH10.5、酸化還元電位−500mv、MgO含有量0.5%、T−Ca量10%、T−S量22%
石灰硫黄合剤ε:市販品、pH10.5、酸化還元電位−500mv、MgO含有量2.0%、T−Ca量10%、T−S量22%
【0028】
【表2】
【0029】
表2の結果より、石灰硫黄合剤のpH、酸化還元電位、MgO含有量を増減した結果、pHが10.0の場合、六価クロム残存濃度が多少残る結果となり、pHが11.0の場合、凝結、強度に若干の遅延効果が確認された。
【0030】
「実験例3」
実験例1、2と同様にセメント800g、水480g、細骨材2000gのセメントモルタルを調製してから、表3に示す添加方法で石灰硫黄合剤αを0.1部添加して、カルシウムアルミネート100部、アルミン酸ナトリウム20部、硫酸カルシウム110部、炭酸ナトリウム44部からなる急結剤80gをセメンモルタルに添加した直後から、プロクター貫入抵抗値、圧縮強度、六価クロム残存濃度を測定した。
【0031】
<石灰硫黄合剤の添加方法>
添加ア:急結剤調製前にカルシウムアルミネートに石灰硫黄合剤を噴霧して添加
添加イ:急結剤調製後に急結剤に石灰硫黄合剤を噴霧して添加
添加ウ:セメントモルタルに石灰硫黄合剤を混合して添加
【0032】
【表3】
【0033】
表3の結果より、石灰硫黄合剤の添加方法を検討した結果、セメントモルタルに添加した場合は、凝結、度に低下が確認された。六価クロム残存濃度は添加方法に関わらず、良好な低減効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明を適用することにより、急結効果が高まり、六価クロム残存濃度も低減されるものが提供できる。