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特許6482881タフテッドカーペットデザイン方法及びタフテッドカーペットデザイン装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482881
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】タフテッドカーペットデザイン方法及びタフテッドカーペットデザイン装置
(51)【国際特許分類】
   A47G 27/02 20060101AFI20190304BHJP
   D05C 15/26 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   A47G27/02 108
   D05C15/26
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-7455(P2015-7455)
(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公開番号】特開2016-131665(P2016-131665A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小出 貴由
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正芳
【審査官】 大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−526970(JP,A)
【文献】 特開2006−219810(JP,A)
【文献】 特開2000−155804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 27/02
D05C 15/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素の各々がタフテッドカーペットのパイルに1対1で対応するように解像度が調整されたカラーの第1画像を2値化することにより、前記第1画像に描かれた図柄を2値化された画素の分布で表現した第1の2値化画像を取得する減色工程と、
前記第1の2値化画像を任意の色に彩色してデザイン画像を生成する彩色工程と、
前記第1の2値化画像における各画素の画素値に基づいて、前記タフテッドカーペットに描かれる図柄が前記デザイン画像に描かれた図柄に近づくように、各画素に対応するパイルの条件として、パイルの色、高さ及び形状を設定し、該設定された前記第1の2値化画像の各画素に対応するパイル条件に従って予測画像を生成する工程を含むパイル条件設定工程と、を備え
前記パイル条件設定工程において、前記デザイン画像を前記予測画像と比較して、前記設定されたパイル条件を前記タフテッドカーペットの製造に使用するか否かを判断するタフテッドカーペットデザイン方法。
【請求項2】
複数の画素の各々がタフテッドカーペットのパイルに1対1で対応するように解像度が調整されたカラーの第1画像を2値化することにより、前記第1画像に描かれた図柄を2値化された画素の分布で表現した第1の2値化画像を取得する減色工程と、
前記第1の2値化画像における各画素の画素値に基づいて、各画素に対応するパイルの条件として、パイルの色、高さ及び形状を設定するパイル条件設定工程と、を備えたタフテッドカーペットデザイン方法であって、
前記減色工程は、
複数の画素の各々がタフテッドカーペットのパイルに1対1で対応するように解像度が調整され、前記第1画像における図柄と異なる図柄の第2画像を2値化することにより第2の2値化画像を取得する工程、
を含み、
前記タフテッドカーペットデザイン方法は、さらに、
前記第1の2値化画像の上に、前記第2の2値化画像を重ねて位置合わせを行う重畳工程と、
前記第1の2値化画像における第1画素の画素値と、前記第1画素の位置に対応する第2の2値化画像における画素の画素値とを加算して加算画像を生成する加算工程、
を備え、
前記パイル条件設定工程は、前記加算画像における各画素の画素値に基づいて、各画素に対応するパイルの条件を設定するタフテッドカーペットデザイン方法。
【請求項3】
複数の画素の各々がタフテッドカーペットのパイルに1対1で対応するように解像度が調整されたカラーの第1画像を2値化することにより、前記第1画像に描かれた図柄を2値化された画素の分布で表現した第1の2値化画像を取得する減色工程と、
前記第1の2値化画像における各画素の画素値に基づいて、各画素に対応するパイルの条件として、パイルの色、高さ及び形状を設定するパイル条件設定工程と、を備えたタフテッドカーペットデザイン方法であって、
前記減色工程は、複数の画素の各々がタフテッドカーペットのパイルに1対1で対応するように解像度が調整された第2画像を2値化することにより第2の2値化画像を取得する工程、
を含み、
前記第1画像及び前記第2画像は、1のオリジナル画像の濃淡を変更することで生成され、
前記第1画像における図柄の濃淡と前記第2画像における図柄の濃淡とが異なり、
前記タフテッドカーペットデザイン方法は、さらに、
前記第1の2値化画像の上に、前記第2の2値化画像を重ねて位置合わせを行う重畳工程と、
前記第1の2値化画像における第1画素の画素値と、前記第1画素の位置に対応する第2の2値化画像における画素の画素値とを加算して加算画像を生成する加算工程、
を備え、
前記パイル条件設定工程は、前記加算画像における各画素の画素値に基づいて、各画素に対応するパイルの条件を設定するタフテッドカーペットデザイン方法。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のタフテッドカーペットデザイン方法であって、
前記重畳工程において、彩色された前記第1の2値化画像と、彩色された前記第2の2値化画像とを重ね合わせることでデザイン画像を生成し、
前記パイル条件設定工程において、
前記加算画像の各画素に対応するパイル条件に従って、各画素の明るさと色が設定された予測画像を生成し、
前記デザイン画像を前記予測画像と比較して、前記設定されたパイル条件をタフテッドカーペットの製造に使用するか否かを判断するタフテッドカーペットデザイン方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のタフテッドカーペットデザイン方法を実行するためのタフテッドカーペットデザイン装置であって、
複数の画素の各々がタフテッドカーペットのパイルに1対1で対応するように解像度が調整されたカラーの第1画像を2値化することにより、前記第1画像に描かれた図柄を2値化された画素の分布で表現した第1の2値化画像を取得する減色部と、
前記第1の2値化画像における各画素の画素値に基づいて、各画素に対応するパイルの条件として、パイルの色、高さ及び形状を設定するパイル条件設定部と、を備え
前記第1の2値化画像を任意の色に彩色してデザイン画像を生成すると共に、前記設定された前記第1の2値化画像の各画素に対応するパイル条件に従って予測画像を生成するタフテッドカーペットデザイン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データを用いてカーペットの各パイルの条件を設定するカーペットデザイン方法及びカーペットデザイン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械により製造されるカーペットとして、タフテッドカーペット、ウィルトンカーペット、アキスミンスターカーペットなどが知られている。これらのカーペットは、カーペットの表面にパイルを形成することにより、柔らかな肌ざわりを実現している。
【0003】
タフテッドカーペットは、基布にパイル糸を差し込んでいくことにより製造される刺繍カーペットの一種である。基布に差し込まれたパイルは、様々な方法で固定される。例えば、パイルは、基布の裏面に樹脂やゴムなどのパッキング層を塗布する方法、パイル糸同士を熱融着する方法、あるいは、ラテックスなどの接着剤が基布の裏面に塗布する方法などにより固定される。タフテッドカーペットは、ウィルトンカーペットなどに比べて大量生産が可能であるため、カーペットの主流となっている。
【0004】
タフテッドカーペットに図柄を描く方法として、製造時にパイルの高さを変更する方法、無地のタフテッドカーペットに図柄を染色・印刷する方法、複数の異なる色のパイル糸を選択的にタフトして図柄を描出する方法、などがある。
【0005】
この内、製造時にパイルの高さを変更する方法を用いると、予め作成した図柄に合わせて、タフティングの際にパイルの高さを変更することにより、立体感のある図柄をタフテッドカーペット上に表現することができる。この方法は、図柄を染色・印刷する方法や、複数の異なる色のパイル糸を選択的にタフトして図柄を描出する方法と併用することが可能である。タフテッドカーペットに図柄を立体的に描くことにより、カーペットに高級感を持たせることができる。しかし、パイルの高さを変更する方法は、ストライプ柄などの単調な図柄を表現することに向いているが、グラデーションなどの変化を伴う複雑な図柄の表現には向いていない。
【0006】
図柄を染色・印刷する方法は、パイル生機に、ジェットプリント、インクジェットプリント、フラットスクリーン、ロータリースクリーンなどの方法で印捺により図柄をパターニングするものである。近年では、主にコンピュータを用いて図柄が描かれた画像データを生成し、生成した画像データをパイル生機にインクジェットなどのプリント機を用いて染色・印刷する方法が用いられている。この方法を用いる場合、印刷のムラが発生することを避けるため、タフテッドカーペットのパイルの高さが一様であることが望ましい。プリントを用いた方法では、グラデーションなどの変化を伴う複雑な図柄も容易にタフテッドカーペット上に描くことができる。しかし、プリントを用いた方法だけでは、タフテッドカーペット上に立体感のある模様を作成することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−17744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、画像データにおける各画素の階調に応じてパイルの条件を設定する方法が開示されている。特許文献1に係る方法は、図柄が描かれた画像データを取り込み、取り込んだ画像データをグレースケールに変換する。グレースケールに変換された画像データの各画素の階調に応じて、各画素に対応するパイルの高さが0.01mm刻みで設定される。
【0009】
特許文献1に係る方法を用いて製造されたカーペットの図柄は、隣接する2つのパイルの高さのわずかな差によって表現される。2つのパイルの高さの差がわずかであるため、利用者が、カーペット上に描かれた図柄が画像データに描かれた図柄であると認識できないおそれがある。また、歩行者がカーペットの上を歩くことに伴ってパイルの高さが変化し、カーペットの図柄が時間の経過に伴って変化するおそれがある。このように、図柄の変化が時間の経過とともに大きくなると、場合によっては、図柄の判別ができなくなるおそれもある。
【0010】
本発明の目的は、画像に描かれた図柄をタフテッドカーペット上に表現することができるタフテッドカーペットデザイン方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、タフテッドカーペットデザイン方法であって、複数の画素の各々がタフテッドカーペットのパイルに1対1で対応するように解像度が調整されたカラーの第1画像を2値化することにより、前記第1画像に描かれた図柄を2値化された画素の分布で表現した第1の2値化画像を取得する減色工程と、前記第1の2値化画像を任意の色に彩色してデザイン画像を生成する彩色工程と、前記第1の2値化画像における各画素の画素値に基づいて、前記タフテッドカーペットに描かれる図柄が前記デザイン画像に描かれた図柄に近づくように、各画素に対応するパイルの条件として、パイルの色、高さ及び形状を設定し、該設定された前記第1の2値化画像の各画素に対応するパイル条件に従って予測画像を生成する工程を含むパイル条件設定工程と、を備え、前記パイル条件設定工程において、前記デザイン画像を前記予測画像と比較して、前記設定されたパイル条件を前記タフテッドカーペットの製造に使用するか否かを判断する
【0012】
請求項2に係る発明は、複数の画素の各々がタフテッドカーペットのパイルに1対1で対応するように解像度が調整されたカラーの第1画像を2値化することにより、前記第1画像に描かれた図柄を2値化された画素の分布で表現した第1の2値化画像を取得する減色工程と、前記第1の2値化画像における各画素の画素値に基づいて、各画素に対応するパイルの条件として、パイルの色、高さ及び形状を設定するパイル条件設定工程と、を備えたタフテッドカーペットデザイン方法であって、前記減色工程は、複数の画素の各々がタフテッドカーペットのパイルに1対1で対応するように解像度が調整され、前記第1画像における図柄と異なる図柄の第2画像を2値化することにより第2の2値化画像を取得する工程、を含み、前記タフテッドカーペットデザイン方法は、さらに、前記第1の2値化画像の上に、前記第2の2値化画像を重ねて位置合わせを行う重畳工程と、前記第1の2値化画像における第1画素の画素値と、前記第1画素の位置に対応する第2の2値化画像における画素の画素値とを加算して加算画像を生成する加算工程、を備え、前記パイル条件設定工程は、前記加算画像における各画素の画素値に基づいて、各画素に対応するパイルの条件を設定する。
【0013】
請求項3に係る発明は、複数の画素の各々がタフテッドカーペットのパイルに1対1で対応するように解像度が調整されたカラーの第1画像を2値化することにより、前記第1画像に描かれた図柄を2値化された画素の分布で表現した第1の2値化画像を取得する減色工程と、前記第1の2値化画像における各画素の画素値に基づいて、各画素に対応するパイルの条件として、パイルの色、高さ及び形状を設定するパイル条件設定工程と、を備えたタフテッドカーペットデザイン方法であって、前記減色工程は、複数の画素の各々がタフテッドカーペットのパイルに1対1で対応するように解像度が調整された第2画像を2値化することにより第2の2値化画像を取得する工程、を含み、前記第1画像及び前記第2画像は、1のオリジナル画像の濃淡を変更することで生成され、前記第1画像における図柄の濃淡と前記第2画像における図柄の濃淡とが異なり、前記タフテッドカーペットデザイン方法は、さらに、前記第1の2値化画像の上に、前記第2の2値化画像を重ねて位置合わせを行う重畳工程と、前記第1の2値化画像における第1画素の画素値と、前記第1画素の位置に対応する第2の2値化画像における画素の画素値とを加算して加算画像を生成する加算工程、を備え、前記パイル条件設定工程は、前記加算画像における各画素の画素値に基づいて、各画素に対応するパイルの条件を設定する。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項2又は請求項3に記載のタフテッドカーペットデザイン方法であって、前記重畳工程において、彩色された前記第1の2値化画像と、彩色された前記第2の2値化画像とを重ね合わせることでデザイン画像を生成し、前記パイル条件設定工程において、前記加算画像の各画素に対応するパイル条件に従って、各画素の明るさと色が設定された予測画像を生成し、前記デザイン画像を前記予測画像と比較して、前記設定されたパイル条件をタフテッドカーペットの製造に使用するか否かを判断する。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れかに記載のタフテッドカーペットデザイン方法を実行するためのタフテッドカーペットデザイン装置であって、複数の画素の各々がタフテッドカーペットのパイルに1対1で対応するように解像度が調整されたカラーの第1画像を2値化することにより、前記第1画像に描かれた図柄を2値化された画素の分布で表現した第1の2値化画像を取得する減色部と、前記第1の2値化画像における各画素の画素値に基づいて、各画素に対応するパイルの条件として、パイルの色、高さ及び形状を設定するパイル条件設定部と、を備え、前記第1の2値化画像を任意の色に彩色してデザイン画像を生成すると共に、前記設定された前記第1の2値化画像の各画素に対応するパイル条件に従って予測画像を生成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のタフテッドカーペットデザイン方法は、カラーの第1画像を2値化して第1の2値化画像を取得する。第1の2値化画像は、第1画像に描かれた図柄を2値化された画素の分布で表現した画像である。本発明のタフテッドカーペットデザイン方法は、第1の2値化画像における各画素の画素値に基づいて、各画素に対応するパイルの条件として、パイルの色、高さ及び形状を設定する。これにより、第1画像に描かれた図柄を、特定の条件を有するパイルの分布で表現することができる。従って、画像データに描かれた図柄をタフテッドカーペット上に表現することができる。
【0017】
また、本発明のタフテッドカーペットデザイン方法は、第1画像から生成された第1の2値化画像と、第1画像における図柄と異なる図柄の第2画像から生成された第2の2値化画像とを重畳することにより加算画像を生成し、加算画像の画素値に応じて、加算画像の各画素に対応するパイルの条件を設定する。これにより、複数の模様を重ね合わせた複雑な図柄であっても、設定された条件を有するパイルの分布で表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態によるカーペットデザイン装置の構成を示す機能ブロック図である。
図2図1に示すデザイン装置の動作を示すフローチャートである。
図3図1に示すオリジナル画像の一例を示す図である。
図4図1に示すオリジナル画像の他の例を示す図である。
図5図2に示すレイヤ画像作成処理のフローチャートである。
図6図3に示すオリジナル画像から生成されたレイヤ画像を示す図である。
図7図4に示すオリジナル画像から生成されたレイヤ画像を示す図である。
図8図6及び図7に示すレイヤ画像から生成されたデザイン画像を示す図である。
図9図6に示すレイヤ画像の一部領域における画素値の分布を示す図である。
図10図7に示すレイヤ画像の一部領域における画素値の分布を示す図である。
図11図6及び図7に示すレイヤ画像から生成された加算画像の一部領域における画素値の分布を示す図である。
図12図1に示すオリジナル画像から生成されたほかのレイヤ画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
{1.カーペットデザイン装置1の構成}
図1は、本発明の実施の形態に係るカーペットデザイン装置(以下、「デザイン装置」と呼ぶ。)1の機能ブロック図である。デザイン装置1は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)である。後述するデザインプログラム16がPCにインストールされることにより、PCは、デザイン装置1として動作する。
【0021】
本実施の形態では、デザイン装置1を用いて、タフテッドカーペットのデザインを決定する場合を例に説明する。特に説明のない限り、「タフテッドカーペット」を、単に「カーペット」と記載する。
【0022】
デザイン装置1は、CPU(Central Processing Unit)11と、RAM(Random Access Memory)12と、操作部13と、モニタ14と、HDD(Hard Disk Drive)15とを備える。HDDは、記憶手段の一例であり、これに代えて、SSD(Solid State Drive)を用いてもよい。
【0023】
CPU11は、HDD15に記憶された各種プログラムをRAM12にロードして、ロードされたプログラムを実行する。CPU11は、ロードされたプログラムを実行することにより、デザイン装置1を制御する。RAM12は、デザイン装置1のメインメモリである。
【0024】
操作部13は、例えば、キーボード及びマウスであり、デザイン装置1に対するユーザの操作を受け付ける。モニタ14は、例えば、液晶表示装置、CRTであり、CPU11によるプログラムの実行結果を表示する。
【0025】
HDD15は、デザインプログラム16と、デザイン画像31と、オリジナル画像32A,32Bと、レイヤ画像33A,33Bと、加算画像34と、パイル条件データ40とを記憶する。
【0026】
デザインプログラム16は、オリジナル画像32A及び32Bから、デザイン画像31及びパイル条件データ40を生成する。デザイン画像31は、カーペットに描かれる図柄の原本となる画像である。パイル条件データ40は、カーペットのパイルの条件(パイルの高さ、色など)がパイルごとに設定されたデータである。
【0027】
レイヤ画像33A,33B及び加算画像34は、デザイン画像31及びパイル条件データ40が生成される過程で、オリジナル画像32A及び32Bから作成される。HDD15に記憶される各種画像の詳細については、後述する。
【0028】
{2.デザイン装置1の動作}
以下、デザイン装置1を用いたデザイン画像31及びパイル条件データ40の生成について説明する。デザイン画像31は、オリジナル画像32Aに描かれた図柄とオリジナル画像32Bに描かれた図柄との重ね合わせにより表現された図柄である。
【0029】
図2は、デザイン装置1の動作を示すフローチャートである。デザイン装置1は、図2に示す処理を実行して、オリジナル画像32A及び32Bからデザイン画像31及びパイル条件データ40を生成する。
【0030】
デザイナーは、デザイン装置1を用いたカーペットのデザインを開始する前に、カーペットの仕様を決定する。具体的には、デザイナーは、カーペットの製造に用いるタフティング機を選定し、選定したタフティング機に基づいて、カーペットのゲージ数及びステッチ数を含むカーペットの仕様を決定する。ゲージ数は、カーペットの横方向の長さ(1インチ)あたりのパイルの数である。横方向は、タフティング機においてパイルを形成するニードルが配列される方向に一致する。ステッチ数は、カーペットの縦方向の長さ(1インチ)あたりのパイルの数である。カーペットの仕様を決定することにより、カーペットの単位面積当たりのパイル数が決定される。
【0031】
デザイン装置1は、デザイナーの操作に応じて、デザイン画像31の生成に用いられるオリジナル画像32A及び32Bを取得する(ステップS1)。オリジナル画像32A及び32Bは、カーペットの図柄として用いるための画像処理が行われていない画像である。オリジナル画像32A及び32Bの解像度は、この時点で特に限定されない。具体的には、オリジナル画像32Aの各画素は、カーペットのパイルと1対1に対応していなくてもよい。オリジナル画像32Bについても同様である。デザイン装置1は、例えば、図示しないネットワークを介してオリジナル画像32A及び32Bを取得する。デザイン装置1は、USBメモリ等の記憶装置に記憶された画像データをオリジナル画像32A及び32Bとして取得してもよい。あるいは、オリジナル画像32A及び32Bは、デザイナーがデザイン装置1上で作成した画像であってもよい。
【0032】
図3及び図4は、オリジナル画像32A及び32Bの一例を示す図である。図3に示すように、オリジナル画像32Aは、波紋の模様がグラデーションで描かれた画像である。図4に示すように、オリジナル画像32Bは、猫のイラストが描かれた画像である。縦方向のサイズ、横方向のサイズ、及び解像度は、オリジナル画像32A及び32Bにおいて同じである。本実施の形態において、オリジナル画像32A及び32Bの縦方向は、カーペットの縦方向に対応し、オリジナル画像32A及び32Bの横方向は、カーペットの横方向に対応する。また、図3及び図4において、オリジナル画像32A及び32Bをグレースケールで示しているが、オリジナル画像32A及び32Bは、RGB形式(8ビット)のカラー画像である。
【0033】
デザイン装置1は、デザイナーの操作を受けて、オリジナル画像32Aからレイヤ画像33Aを生成し、オリジナル画像32Bからレイヤ画像33Bを生成する(ステップS2)。オリジナル画像32A及び32Bの解像度が調整されることにより、画素とパイルとが1対1に対応するレイヤ画像33A及び33Bが生成される。ステップS2は、デザイン画像31の生成に用いられるレイヤ画像の数に応じて繰り返される。例えば、デザイン画像31の生成に3つのレイヤ画像を使用する場合、ステップS2は、3回実行される。レイヤ画像33A及び33Bは、画素値に応じた色が設定された2値化画像であり、かつ、1画素が1つのパイルに対応するようにオリジナル画像32A及び32Bの解像度を調整した画像である。ステップS2の詳細については、後述する。
【0034】
デザイン装置1は、ステップS2で生成されたレイヤ画像33Aの上にレイヤ画像33Bを重ねる重畳工程(ステップS3)を実行する。重畳工程(ステップS3)により、デザイン画像31が生成される。3つ以上のレイヤ画像が使用される場合、3つ以上のレイヤ画像の重ね合わせが行われる。デザイン画像31は、カーペット上に表現すべき図柄を有している。デザイナーは、モニタ14に表示されたデザイン画像31を確認して、生成されたデザイン画像31をカーペットの図柄として採用するか否かを判断する。後述するように、カーペットに描かれる図柄がデザイン画像31で描かれた図柄に近づくように、各パイルの条件が設定される。
【0035】
生成されたデザイン画像31が採用されない場合、デザイン装置1は、デザイナーの操作を受けて、ステップS2及びS3を繰り返す。具体的には、デザイン装置1は、デザイナーの操作を受けて、レイヤ画像33Aを作り直したり、レイヤ画像33Bを作り直したりしてもよい。あるいは、デザイン装置1は、レイヤ画像33A及び33Bの他に、新たなレイヤ画像を追加したり、レイヤ画像を削除したりしてもよい。
【0036】
生成されたデザイン画像31が採用される場合、デザイン装置1は、レイヤ画像33A及び33Bの画素値を加算する加算工程(ステップS4)を実行する。ステップS4の結果、加算画像34が生成される。加算画像34は、レイヤ画像33A及び33Bの画素値を加算することにより得られるため、レイヤ画像33A及び33Bの各画素に設定された色についての情報は失われる。従って、加算画像34は、デザイン画像31で描かれた図柄と同一の図柄を有さない。
【0037】
例えば、レイヤ画像33Aにおいて、波紋の模様が青色のグラデーションで描かれており、レイヤ画像33Bにおいて、猫が黄色で描かれている場合を想定する。この場合、デザイン画像31の画素は、レイヤ画像33Aにおける青の画素(例えば、画素値「1」)と、レイヤ画像33Bにおける黄色の画素(例えば、画素値「1」)とが重ね合わせることにより生成されるため、紫色となる。一方、加算画像34の画素において、画素値は、レイヤ画像33Aにおける青の画素の画素値「1」と、レイヤ画像33Bにおける黄色の画素の画素値「1」とが加算されることにより「2」となる。加算画像34の画素は、彩色されていないため、デザイン画像31の画素のように紫色にはならない。
【0038】
次に、デザイン装置1は、デザイナーの指示に応じて、パイル条件設定工程(ステップS5)を実行する。パイル条件設定工程(ステップS5)は、加算画像34における各画素の画素値に応じて、各画素に対応するパイルの条件を設定する処理である。これにより、製造されるカーペットのパイルごとにパイル条件(パイルの色(パイルを形成する糸の種別)、パイルの高さ、パイルの形状)が決定される。デザイン装置1は、加算画像34の各画素にパイル条件を割り当てたパイル条件データ40を生成する。
【0039】
デザイン装置1は、ステップS5において、加算画像34の各画素の色が、各パイルの色に設定された予測画像(図示省略)を生成する。デザイナーは、デザイン画像31を予測画像と比較して、ステップS5で生成されたパイル条件データ40をカーペットの製造に使用するか否かを判断する。
【0040】
ステップS5で生成されたパイル条件データ40が採用される場合、デザイン装置1は、デザイナーの指示に応じて、図2に示す処理を終了する。タフティング機は、デザイン装置1により生成されたパイル条件データ40を用いて、カーペットを製造する。一方、ステップS5で生成されたパイル条件データが採用されない場合、デザイン装置1は、ステップS5を再び実行して、パイル条件の設定をやり直す。あるいは、デザイン装置1は、ステップS2〜S4を再び実行した上で、パイル条件の設定をやり直してもよい。
【0041】
{3.ステップS2〜S5の詳細}
以下、ステップS2〜S5について詳しく説明する。
【0042】
{3.1.レイヤ画像の生成(ステップS2)}
デザイン装置1は、ステップS2に示す処理を実行して、オリジナル画像32A及び32Bからレイヤ画像33A及び33Bを生成する。以下、特に説明のない限り、オリジナル画像32Aからレイヤ画像33Aを生成する場合を例にして説明する。
【0043】
図5は、レイヤ画像作成処理(ステップS2)のフローチャートである。デザイン装置1は、解像度調整工程(ステップS21)を実行して、予め決定されたゲージ数及びステッチ数に基づいて、オリジナル画像32Aの解像度を調整する。解像度が調整されたオリジナル画像32Aの各画素は、カーペットのパイルと1対1で対応する。つまり、デザイン装置1は、オリジナル画像32Aの横方向の画素数(ゲージ数に対応)をカーペットの縦方向のパイル数に合わせ、かつ、オリジナル画像32Aの縦方向の画素数(ステッチ数に対応)をカーペットの横方向のパイル数に合わせる。
【0044】
次に、デザイン装置1は、デザイナーの指示に応じて、濃淡変更工程(ステップS22)を実行する。濃淡変更工程(ステップS22)は、解像度が調整されたオリジナル画像32Aの濃淡を変更する処理である。濃淡の変更は、例えば、解像度が調整されたオリジナル画像32Aの明るさ又はコントラストの変更により行われる。あるいは、オリジナル画像32Aの各画素のHLS色空間における明度を調整してもよい。これにより、オリジナル画像32Aに表された波紋の模様の強弱が変更される。本実施の形態では、デザイン装置1は、オリジナル画像32Aに描かれた波紋の模様をぼかすように、オリジナル画像32Aの濃淡を変更する。
【0045】
デザイン装置1は、濃淡が変更されたオリジナル画像32A(8ビットのRGB形式)を2値化する減色工程を実行する(ステップS23)。これにより、オリジナル画像32Aに描かれたカラーの図柄を、1ビットの画素の2次元分布により表現した2値化画像が生成される。
【0046】
減色処理のアルゴリズムは、特に限定されない。例えば、オリジナル画像32Aの各画素の画素値を予め設定されたしきい値と比較し、その比較結果に基づいて各画素の画素値を0又は1に設定する処理(単純2値化処理)を用いてもよい。あるいは、デザイン装置1は、ディザリングや誤差拡散法などの既知の手法を用いて、オリジナル画像32Aを2値化してもよい。
【0047】
次に、デザイン装置1は、2値化されたオリジナル画像32Aを彩色する彩色工程を実行する(ステップS24)。例えば、デザイナーは、2値化されたオリジナル画像32Aにおいて、画素値0を有する画素の色を白に指定し、画素値1を有する画素の色を青色に指定する。この結果、青色の波紋が広がるような図柄が描かれたレイヤ画像33Aが生成される。
【0048】
図6は、図3に示すオリジナル画像32Aから生成されたレイヤ画像33Aを示す図である。レイヤ画像33Aは、オリジナル画像32Aに表された波紋の模様を、画素値0を有する画素と画素値1を有する画素との2次元の分布により表現する。図6において、格子状の線は、モアレであり、レイヤ画像33Aに格子状の線が描かれているわけではない。同様に、図7図8図12に示す画像において、モアレが発生しているが、これらの画像に格子状の線が描かれているわけではない。
【0049】
同様に、デザイン装置1は、ステップS2を実行して、オリジナル画像32Bからレイヤ画像33Bを生成する。図7は、レイヤ画像33Bを示す図である。2値化されたオリジナル画像32Bにおいて、画素値0を有する画素の色が白に指定され、画素値1を有する画素の色を黄色に指定されることにより、レイヤ画像33Bが生成される。
【0050】
{3.2.重畳工程(ステップS3)}
デザイン装置1は、デザイン画像31を生成するために、重畳工程(ステップS3)を実行する。具体的には、デザイン装置1は、ステップS2で生成されたレイヤ画像33A及び33Bを重ね合わせることにより、デザイン画像31を生成する。
【0051】
図8は、レイヤ画像33A及び33Bを重ね合わせたデザイン画像31を示す図である。図8に示すように、デザイン装置1は、レイヤ画像33Aの上に、猫が描かれたレイヤ画像33Bを配置する。レイヤ画像33Aのサイズは、レイヤ画像33Bのサイズに一致するため、デザイン装置1は、レイヤ画像33A及び33Bの各頂点を合わせることにより、レイヤ画像33A及び33Bの位置合わせを行う。レイヤ画像33Bのサイズがレイヤ画像33Aのサイズよりも小さい場合、デザイナーは、レイヤ画像33Bをレイヤ画像33A上の所望の位置に配置すればよい。あるいは、デザイナーは、デザイン装置1を操作して、レイヤ画像33A又は33Bを拡大、縮小してもよい。
【0052】
そして、デザイン装置1は、レイヤ画像33Bの透明度を調整する。例えば、レイヤ画像33Bの透明度は、50%に設定される。これにより、波紋の模様の上に猫が描かれた複雑な図柄を有するデザイン画像31が生成される。
【0053】
{3.3.加算工程(ステップS4)}
デザイン装置1は、加算工程(ステップS4)を実行して、加算画像34を生成する。加算画像34の生成には、重畳工程(ステップS3)の際に位置合わせされたレイヤ画像33A及び33Bが用いられる。
【0054】
具体的には、デザイン装置1は、レイヤ画像33A及び33Bの重ね合わせにより同じ位置に存在するレイヤ画像33Aの画素値とレイヤ画像33Bとの画素値とを加算する。これにより生成される加算画像34は、レイヤ画像33A及び33Bの各々の画素値の分布の特徴を有する。
【0055】
図9は、図6に示すレイヤ画像33Aにおける画素値の分布の一例を示す図である。図10は、図7に示すレイヤ画像33Bにおける画素値の分布の一例を示す図である。図11は、図8に示すレイヤ画像33Aの画素値と図9に示すレイヤ画像33Bの画素値との加算結果(加算画像34)を示す図である。
【0056】
図9に示すレイヤ画像33Aと、図10に示すレイヤ画像33Bとは、デザイン画像31の生成時における位置合わせにおいて互いに重なり合う領域の画素値を示している。レイヤ画像33Aにおける画素331Aと、レイヤ画像33Bにおける画素331Bとは、重ね合わせにより同じ位置に存在する。このため、画素331Aの画素値「0」と、画素331Bの画素値「1」とが加算される。画素341の位置は、画素331A及び331Bの位置に対応するため、加算画像34の画素341の画素値は、「1」となる。
【0057】
同様に、レイヤ画像33Aにおける画素332Aと、レイヤ画像33Bにおける画素332Bとは、重ね合わせにより同じ位置に存在する。このため、画素332Aの画素値「1」と、画素332Bの画素値「1」とが加算される。この結果、画素332A及び332Bの位置に対応する加算画像34の画素342において、画素値は、「2」となる。
【0058】
このように、重ね合わせにより同じ位置に存在する2つの画素の画素値が合計されることにより、加算画像34の各画素の画素値が算出される。レイヤ画像33A及び33Bの各画素は、「0」又は「1」の値を有するため、加算画像34の画素値は、図11に示すように、「0」、「1」及び「2」のいずれかの値を有する。
【0059】
{3.4.パイル条件設定工程(ステップS5)}
次に、デザイン装置1は、デザイナーの操作に応じて、パイル条件設定工程(ステップS5)を実行する。加算画像34の各画素に対応するパイルの条件が、加算画像34における各画素の画素値に基づいて設定される。
【0060】
上述のように、加算画像34は、レイヤ画像33Aの画素値と、レイヤ画像33Bの画素値とを加算することにより生成される。このため、加算画像34の各画素は、製造されるカーペットのパイルに1対1で対応する。
【0061】
デザイン装置1は、デザイナーの操作に応じて、加算画像34の各画素に対応するパイルの条件を、各画素の画素値に応じて設定する。つまり、デザイン装置1は、画素値「0」、「1」、及び「2」のそれぞれに対して、異なるパイル条件を割り当てることにより、加算画像34の画素ごとにパイルの条件を設定する。
【0062】
デザイン装置1は、パイルの色、高さ、及び形状をパイル条件として設定することができる。パイルの形状は、ループパイル、カットパイルのいずれかである。設定可能なパイル条件は、選定されたタフティング機の性能に依存する。
【0063】
選定されたタフティング機が1つのパイルごとに糸の種類を変更することができる場合、画素値に応じて異なる色を割り当てることができる。選定されたタフティング機が1つのパイルごとに形状を変更することができる場合、画素値に応じてパイルの形状を変更することができる。
【0064】
選定されたタフティング機が1つのパイルごとに形状及び糸の種類を変更することができる場合、デザイン装置1は、例えば、画素値「0」、「1」及び「2」に対して以下のようなパイル条件を割り当てる。
画素値「0」:白及びローループ
画素値「1」:青及びハイループ
画素値「2」:黄色及びハイループ
【0065】
ここで、ハイループとは、カーペットのパイルの高さが2段階、例えば、2mmと5mmである場合において、パイルの高さが高いほうの5mmのループパイルを意味する。ローループは、パイルの高さが低いほうの2mmのループパイルを意味する。なお、パイルの高さは、変更可能であり、上記の数値に限定されない。
【0066】
デザイン装置1は、各画素に設定されたパイル条件に基づいて、加算画像34からカーペットの仕上がりを示す予測画像(図示省略)を生成する。予測画像は、例えば、各画素の明るさを示す値が256階調で表現された画像である。デザイン装置1は、加算画像34の各画素の色を、設定されたパイルの色に設定し、各画素の明るさをパイルの高さに応じて設定すればよい。
【0067】
具体的には、画素値「0」に割り当てられたパイル条件は、白及びローループであるため、画素値「0」を有する画素では、色が白に設定され、明るさを示す値が1から256のうち32に設定される。画素値「1」に割り当てられたパイル条件は、青及びハイループであるため、画素値「1」を有する画素では、色が青に設定され、明るさを示す値が128に設定される。画素値「2」に割り当てられたパイル条件は、黄色及びハイループであるため、画素値「2」を有する画素では、色が黄色に設定され、明るさを示す値が128に設定される。このようにして、予測画像が加算画像34から生成される。
【0068】
予測画像は、加算画像34の各画素の画素値を加算画像34の各画素に対応するパイル条件に応じて設定した画像である。従って、加算画像34に描かれる図柄は、デザイン画像31に描かれる図柄よりも、カーペットの実物の図柄に近い印象をデザイナーに与える。このため、デザイナーは、予測画像をデザイン画像31と比較することにより、ステップS5で設定したパイル条件が適切か否かを容易に判断することができる。画素値に対するパイル条件の割り当てが適切でない場合、デザイナーは、加算画像34の画素値に対するパイル条件の割り当てをやり直せばよい。あるいは、レイヤ画像33A又は33Bを作り直してもよい。
【0069】
デザイナーは、予測画像とデザイン画像31との比較の結果、設定したパイル条件を使用すると決定した場合、パイル条件データ40の作成をデザイン装置1に指示する。デザイン装置1は、加算画像34の各画素の画素値と、各画素値に割り当てたパイル条件とに基づいて、カーペットを製造する機器が利用可能なフォーマットで記述されたパイル設定データを生成する。
【0070】
なお、パイル条件の割り当てに関して、選定されたタフティング機がライン式である場合、縦方向(ステッチ方向)に一列に並ぶパイルの糸の種別を変更することができない。つまり、ライン式のタフティング機は、縦方向に一列に並ぶパイルの色を変更することができない。この場合、デザイン装置1は、パイルの高さを画素値に応じて変更し、パイルの色は、画素値に関係なく同じとすればよい。例えば、画素値0には、ローループが割り当てられ、画素値1には、ミドルループが割り当てられ、画素値2には、ハイループが割り当てられる。ここで、ミドルループとは、ハイループとミドルループの中間の高さのループパイルを意味する。例えば、ミドルループは、パイルの高さが3.5mmである。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態に係るデザイン装置1は、オリジナル画像32Aに描かれた図柄を2値化された画素の2次元分布に変換したレイヤ画像33Aを生成し、オリジナル画像32Bから同様にしてレイヤ画像33Bを生成する。デザイン装置1は、レイヤ画像33A及び33Bを重ね合わせてデザイン画像31を生成する。また、デザイン装置1は、重ね合わせたレイヤ画像33A及び33Bの画素値を加算することにより加算画像34を生成し、加算画像34の各画素に1対1で対応するパイルの条件を、画素値に応じて設定する。これにより、パイル条件データ40が設定される。パイル条件データ40に基づいて製造されたカーペットにおいて、猫及び波紋を有する図柄は、画素値0、1、2を有する画素に割り当てられた条件を有するパイルの2次元分布によって表現される。従って、オリジナル画像32A及び32Bに表われた図柄をカーペットに表現することができる。このように、グラデーションなどの変化を伴う複雑な図柄が描かれた画像を2値化して、この画像の各画素に対応するパイルの糸の色を画素値に基づいて設定することにより、デザイナーの力量に頼ることなく、複雑な図柄をカーペット上に再現することができる。また、パイルの色だけでなく、パイルの高さを画素値に基づいて設定することにより、複雑な図柄を立体的に表現することができるため、カーペットに高級感を容易に持たせることができる。
【0072】
{変形例}
上記実施の形態では、1つのオリジナル画像から1つのレイヤ画像を生成する例を説明した。しかし、デザイン装置1は、1つのオリジナル画像から2つ以上のレイヤ画像を生成してもよい。1つのオリジナル画像から生成されるレイヤ画像の数が1つである場合、この1つのオリジナル画像に描かれた図柄を表現できる色は、最大で2色である。しかし、複数のレイヤ画像が1つのオリジナル画像32Aから生成される場合、この1つのオリジナル画像に描かれた図柄を3色以上で表現することが可能となる。複数のレイヤ画像を1つのオリジナル画像から生成する場合、レイヤ画像作成処理(ステップS2)は、作成されるレイヤ画像の数に応じて繰り返される。
【0073】
オリジナル画像32Aから、レイヤ画像33Aとは別のレイヤ画像を生成し、これら2つのレイヤ画像を用いて、波紋の模様が描かれたカーペットを製造する場合を考える。図12は、オリジナル画像32Aから生成されたレイヤ画像50を示す図である。図12に示すように、レイヤ画像50に描かれる波紋は、レイヤ画像33Aに描かれる波紋に比べて濃淡が強調されている。
【0074】
デザイン装置1は、オリジナル画像32Aからレイヤ画像50を生成する際に、レイヤ画像33Aを生成するときと同じように解像度調整工程(ステップS21。図4参照)を実行する。上記実施の形態では、デザイン装置1は、図6に示すレイヤ画像33Aの生成の際、濃淡変更工程(ステップS22)において、波紋の模様をぼかすようにオリジナル画像32Aの濃淡を変更した。しかし、本変形例では、デザイン装置1は、図12に示すレイヤ画像50の生成の際、濃淡変更工程(ステップS22)において、オリジナル画像32Aの波紋の模様を強調するように、濃淡を変更する。
【0075】
そして、デザイン装置1は、レイヤ画像33Aを生成するときと同様に、波紋の模様が強調されたオリジナル画像32Aを2値化し(ステップS23)、2値化されたオリジナル画像32Aを彩色する(ステップS24)。これにより、レイヤ画像50が生成される。2値化されたオリジナル画像32Aは、レイヤ画像33Aと異なる色を有するように彩色される。
【0076】
波紋の模様をぼかした上で生成されたレイヤ画像33Aと、波紋の模様が強調された上で生成されたレイヤ画像50とでは、画素値「0」及び「1」の分布が一致しない。従って、レイヤ画像33A及び50の画素値を加算して加算画像を生成し、加算画像34の各画素に対応するパイル条件を加算画像34の画素値に応じて割り当てることにより、波紋の模様を3色で表現することができる。
【0077】
なお、上記実施の形態では、2つのレイヤ画像33A及び33Bを用いる例を説明したが、これに限られない。使用するレイヤ画像の数は、3つ以上であってもよい。3つのレイヤ画像を用いて加算画像34を生成する場合、加算画像における画素値の最小値は0であり、最大値は4となる。この場合、デザイナーは、画素値に応じて、4種類のパイル条件を設定することができる。
【0078】
上記実施の形態では、レイヤ画像33A及び33Bからデザイン画像31を生成する場合を例に説明したが、これに限られない。デザイン画像31の生成に用いられるレイヤ画像の数は、1つでもよい。
【0079】
上記実施の形態では、タフテッドカーペットのデザインを決定する場合を例に説明したが、これに限られない。デザイン装置1は、上述の手順を用いて、機械織りにより製造されるカーペット(ウィルトンカーペット、アキスミンスターカーペット)のパイル条件データを生成することが可能である。
【0080】
上記実施の形態では、デザイン装置1が、オリジナル画像32Aの濃淡を調整する(ステップS22)例を説明したが、これに限られない。デザイン装置1は、オリジナル画像の濃淡を調整することなく、オリジナル画像をそのまま2値化してもよい。また、デザイン装置1は、ステップS22において、濃淡の調整の他に、2値化処理以外の各種の画像処理を実行してもよい。例えば、デザイン装置1は、オリジナル画像32Bからレイヤ画像33Bを生成する際に、オリジナル画像32Bで描かれた猫の輪郭をぼかしてもよいし、トリミング処理により猫の顔の部分のみを残して他の部分を消去してもよい。以上に示した変形例を使用することにより、カーペットに複雑な意匠表現を施すことができ、高いデザイン性のカーペットを容易に製造することが可能となる。
【0081】
上記実施の形態では、デザイン装置1は、解像度調整工程(ステップS21)の後に、オリジナル画像32Aの濃淡を変更する例を説明したが、これに限られない。デザイン装置1は、オリジナル画像に対して2値化処理を実行する前に、オリジナル画像の各画素がカーペットのパイルに1対1に対応するように、オリジナル画像の解像度を調整していればよい。
【0082】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 デザイン装置
11 CPU
12 RAM
16 デザインプログラム
31 デザイン画像
32A,32B オリジナル画像
33A,33B レイヤ画像
34 加算画像
40 パイル条件データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12