(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する劣化検出装置および劣化検出方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
<1.充放電システムの構成>
図1は、第1の実施形態に係る劣化検出装置を含む充放電システムの構成例を示すブロック図である。充放電システム1は、例えば、図示しないハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、および、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)等の車両に搭載される。充放電システム1は、車両の動力源たるモータに対して電力を供給する電源の充放電等を行うシステムである。
【0012】
詳しくは、充放電システム1は、組電池10と、電池監視システム20と、車両制御装置30と、モータ40と、電圧変換器50と、フェールセーフ用リレー60とを備える。また、電池監視システム20は、モニタIC(Integrated Circuit)21等を有する複数のサテライト基板22と、劣化検出装置23とを備える。
【0013】
組電池10は、図示しない車体と絶縁された電源(バッテリ)であり、複数のブロック11により構成される。1つのブロック11は、直列に接続された複数、例えば2個の電池スタック12を備える。また、1つの電池スタック12は、例えば直列に接続された複数の電池セル13を備える。
【0014】
なお、ブロック11、電池スタック12および電池セル13の個数は、上記あるいは図示のものに限定されない。また、上記した組電池10としては、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0015】
複数の電池セル13はそれぞれ、サテライト基板22に設けられたモニタIC21に電気的に接続される。そして、各電池セル13の電圧は、モニタIC21によって検出される。なお、モニタIC21は、第1モニタIC21aおよび第2モニタIC21bの複数あり、第1、第2モニタIC21a,21bがそれぞれ、1つの電池スタック12分の電池セル13の電圧を検出する。
【0016】
劣化検出装置23は、電池監視システム20が有する絶縁抵抗(後述)の劣化、および、電源たる組電池10の電圧を測定するためのキャパシタ(後述)等の劣化を検出するが、これについては後に説明する。なお、ここで絶縁抵抗の劣化とは、例えば絶縁抵抗の抵抗値が低下して組電池10の漏電が生じていることを意味し、キャパシタ等の劣化とは、例えばキャパシタの静電容量が、経年劣化によって初期の値と比べて許容範囲を超えた値になることを意味する。
【0017】
また、劣化検出装置23は、複数の電池セル13のそれぞれの個別電圧を監視するとともに、各電池スタック12の電圧を監視する機能も有する。すなわち、劣化検出装置23は、組電池10の充電状態を監視する。
【0018】
具体的には、劣化検出装置23は、モニタIC21に対して電圧検出要求を送信して複数の電池セル13のそれぞれの個別電圧を検出させ、通信ラインL1を介して検出結果を受信することで、電池セル13の電圧を監視する。また、劣化検出装置23は、導線L2を介して後述するキャパシタに電池スタック12の電圧(以下、「スタック電圧」と記載する場合がある)を充電することによりスタック電圧を直接測定して、組電池10の充電状態を監視する。
【0019】
なお、劣化検出装置23は、モニタIC21が正常に動作しているか否かを判定する機能も有していることが好ましい。具体的には、例えば、劣化検出装置23は、モニタIC21から受信した各電池セル13の個別電圧を加算して得たスタック電圧と、直接検出したスタック電圧とを比較し、両者の差が許容値より大きい場合にモニタIC21が異常であると判定する。そして、劣化検出装置23は、モニタIC21が異常であると判定された場合、例えばフェールセーフ用リレー60を切り離して、電池セル13に対する充放電が行われないようにしてもよい。
【0020】
車両制御装置30は、組電池10の充電状態に応じて組電池10に対する充放電を行って車両制御する。具体的には、車両制御装置30は、電圧変換器50を用いて組電池10に充電された電圧を直流から交流の電圧に変換し、変換した電圧をモータ40へ供給してモータ40を駆動させる。これにより、組電池10は放電されることとなる。
【0021】
また、車両制御装置30は、モータ40の回生制動によって発電した電圧を電圧変換器50で交流から直流の電圧に変換し、組電池10へ供給する。これにより、組電池10は充電されることとなる。このように、車両制御装置30は、劣化検出装置23から取得した組電池10の充電状態に基づいて組電池10の電圧を監視し、監視結果に応じた制御を実行する。
【0022】
<2.劣化検出装置の構成>
次に、劣化検出装置23の構成について説明する。
図2は、劣化検出装置23の構成例を示すブロック図である。なお、
図2では、サテライト基板22や通信ラインL1などを省略している。また、
図2では、理解の便宜のため、複数のブロック11のうちの1つを示すとともに、以下では、ブロック11における2個の電池スタック12のうちの一方を「第1スタック12a」、他方を「第2スタック12b」と記載する場合がある。
【0023】
劣化検出装置23は、例えば電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)であり、
図2に示すように、電圧検出回路部24と、A/D変換部25と、制御部26とを備える。
【0024】
電圧検出回路部24は、各スタック電圧の検出や絶縁抵抗の劣化検出、キャパシタの劣化検出などを行うための回路を備える。ここで、電圧検出回路部24について
図3を参照して詳しく説明する。
【0025】
図3は、電圧検出回路部24の構成例を示す図である。
図3に示すように、電圧検出回路部24は、キャパシタC1と、第1スイッチS1〜第6スイッチS6と、劣化検出用スイッチS7と、第1抵抗R1〜第7抵抗R7と、劣化検出用抵抗R8とを備える。また、組電池10は、正極側に絶縁抵抗Rpを備え、負極側に絶縁抵抗Rnを備える。
【0026】
かかる電圧検出回路部24では、フライングキャパシタ方式が適用され、後述するように、キャパシタC1を各スタック12a,12bの電圧で充電した後、キャパシタC1の電圧を各スタック12a,12bの電圧として検出している。
【0027】
具体的には、電圧検出回路部24は、キャパシタC1を介して充電側回路と放電側回路とに分かれている。充電側回路は、組電池10の各スタック12a,12bとキャパシタC1とが接続され、各スタック12a,12bの電圧をキャパシタC1に充電する経路を含む部分である。また、放電側回路は、キャパシタC1に充電された電圧を放電する経路を含む部分である。
【0028】
そして、各スイッチS1〜S6のオン/オフが制御されることで、キャパシタC1への充電および放電が制御される。なお、上記した各スイッチS1〜S6および後述する劣化検出用スイッチS7としては、例えばソリッドステートリレー(SSR:Solid State Relay)を用いることができるが、これに限定されるものではない。また、第1スイッチS1〜第6スイッチS6は、接続用スイッチの一例である。また、第1抵抗R1〜第7抵抗R7および後述する劣化検出用抵抗R8は、キャパシタC1の電圧を検出するための電圧検出用抵抗である。
【0029】
電圧検出回路部24の充電側回路は、キャパシタC1に対して、第1スタック12aおよび第2スタック12bの各々が並列に接続されている。すなわち、キャパシタC1の両端は、第1スタック12aの正極および負極に接続されるとともに、第2スタック12bの正極および負極とも接続されている。
【0030】
また、第1スタック12aの正極側とキャパシタC1との間には、第1抵抗R1、第1スイッチS1および第5抵抗R5が直列に設けられ、第1スタック12aの負極側とキャパシタC1との間には、第2抵抗R2および第2スイッチS2が直列に設けられている。
【0031】
また、第2スタック12bの正極側とキャパシタC1との間には、第3抵抗R3、第3スイッチS3および第5抵抗R5が直列に設けられ、第2スタック12bの負極側とキャパシタC1との間には、第4抵抗R4および第4スイッチS4が直列に設けられている。
【0032】
電圧検出回路部24の放電側回路には、第1スタック12aおよび第2スタック12bの正極側の経路に第5スイッチS5が設けられ、第5スイッチS5の一端とキャパシタC1との間に第5抵抗R5が設けられている。また、第1、第2スタック12a,12bの負極側の経路には、第6スイッチS6が設けられ、第6スイッチS6の一端がキャパシタC1に接続されている。
【0033】
そして、第5スイッチS5の他端は、A/D変換部25に接続されるとともに、途中で分岐して第6抵抗R6を介して車体GNDに接続されている。また、第6スイッチS6の他端は、第7抵抗R7を介して車体GNDに接続されている。
【0034】
A/D変換部25は、電圧検出回路部24の接続点Aにおける電圧を示すアナログ値をデジタル値へ変換し、変換されたデジタル値を制御部26へ出力する。
【0035】
ここで、第1、第2スタック12a,12bの電圧を検出するために行われる、キャパシタC1の充電および放電について
図4〜
図6を参照して説明する。
図4は、第1スタック12aの電圧でキャパシタC1の充電を行う充電経路を示す図である。また、
図5は、充電されたキャパシタC1の放電を行う放電経路を示す図であり、
図6は、第2スタック12bの電圧でキャパシタC1の充電を行う充電経路を示す図である。
【0036】
劣化検出装置23では、第1、第2スタック12a,12b毎にキャパシタC1が充電される。先ず、第1スタック12aの電圧(以下「第1スタック電圧」と記載する場合がある)でキャパシタC1を充電する例を説明すると、
図4に示すように、第1スイッチS1および第2スイッチS2がオンされ、他のスイッチS3〜S6がオフされる。
【0037】
これにより、第1スタック12aの正極側は、第1抵抗R1、第1スイッチS1、第5抵抗R5、キャパシタC1、第2スイッチS2および第2抵抗R2を介して第1スタック12aの負極側と接続される。すなわち、第1スタック12aとキャパシタC1とを結ぶ第1経路P1が形成され、キャパシタC1に第1スタック電圧が充電される。
【0038】
そして、第1経路P1が形成されてから所定時間が経過した後、キャパシタC1の電圧を放電させる。具体的には、
図5に示すように、第1スイッチS1および第2スイッチS2がオフされるとともに、第5スイッチS5および第6スイッチS6がオンされる。
【0039】
これにより、電圧検出回路部24には、放電経路たる第2経路P2が形成される。第5スイッチS5の他端にはA/D変換部25が接続されているため、第2経路P2が形成されると、キャパシタC1の電圧(すなわち第1スタック電圧)がA/D変換部25に入力される。なお、A/D変換部25は、第5、第6スイッチS5,S6がオンした瞬間に入力されたアナログ値をデジタル値に変換して制御部26へ出力する。これにより、第1スタック電圧が検出されることとなる。
【0040】
次に、第2スタック12bの電圧(以下「第2スタック電圧」と記載する場合がある)でキャパシタC1を充電する例を説明する。
図6に示すように、第3スイッチS3および第4スイッチS4がオンされ、他のスイッチS1,S2,S5,S6がオフされる。
【0041】
これにより、第2スタック12bの正極側は、第3抵抗R3、第3スイッチS3、第5抵抗R5、キャパシタC1、第4スイッチS4および第4抵抗R4を介して第2スタック12bの負極側と接続される。すなわち、第2スタック12bとキャパシタC1とを結ぶ第3経路P3が形成され、キャパシタC1に第2スタック電圧が充電される。
【0042】
そして、第3経路P3が形成されてから所定時間が経過した後、第3、第4スイッチS3,S4がオフされるとともに、第5、第6スイッチS5,S6がオンされて、キャパシタC1の電圧を放電させる(
図5参照)。
【0043】
これにより、電圧検出回路部24には第2経路P2が形成され、キャパシタC1の電圧(すなわち第2スタック電圧)がA/D変換部25に入力される。そして、A/D変換部25は、上記と同様に、入力された電圧のアナログ値をデジタル値に変換して制御部26へ出力する。これにより、第2スタック電圧が検出されることとなる。
【0044】
このように、放電側の経路と充電側の経路とを切り替えてキャパシタC1への充電および放電が行われることで、第1スタック電圧および第2スタック電圧を検出することができる。
【0045】
また、電圧検出回路部24の回路には、
図3に示すように、上記した組電池10の正極側の絶縁抵抗Rpと負極側の絶縁抵抗Rnとが設けられている。なお、これら各絶縁抵抗Rp,Rnは、実装された抵抗と、車体GNDに対する絶縁を仮想的に表した抵抗との合成抵抗を示しているが、ここでは、実装した抵抗、仮想的な抵抗のいずれであるかを問わない。
【0046】
各絶縁抵抗Rp,Rnの抵抗値は、正常時にはほとんど通電することが無い程度に十分に大きい値、例えば数MΩとされる。但し、絶縁抵抗Rp,Rnが劣化した異常時には、例えば組電池10が車体GNDなどと短絡して、あるいは短絡に近い状態となって通電してしまう程度の抵抗値に低下する。
【0047】
ここで、組電池10の絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を検出するために行われる、キャパシタC1の充電および放電について
図7,8を参照して説明する。
図7は、組電池10の正極側の絶縁抵抗Rpの劣化を検出する際の充電経路を示す図である。また、
図8は、組電池10の負極側の絶縁抵抗Rnの劣化を検出する際の充電経路を示す図である。
【0048】
先ず、正極側の絶縁抵抗Rpの劣化を検出する場合は、
図7に示すように、第4スイッチS4および第5スイッチS5がオンされ、他のスイッチS1〜S3,S6がオフされる。これにより、第1スタック12aの正極側は、絶縁抵抗Rp、第6抵抗R6、第5スイッチS5、第5抵抗R5、キャパシタC1、第4スイッチS4、第4抵抗R4および第2スタック12bを介して第1スタック12aの負極側と接続される。
【0049】
すなわち、第1、第2スタック12a,12bとキャパシタC1とを正極側の絶縁抵抗Rpを介して結ぶ第4経路P4が形成される。この際、絶縁抵抗Rpの抵抗値が正常である場合には、第4経路P4はほとんど導通せず、絶縁抵抗Rpが劣化して抵抗値が低下していた場合には、第4経路P4は導通することとなる。
【0050】
そして、第4経路P4が形成されてから所定時間が経過した後、第4スイッチS4がオフされるとともに、第6スイッチS6がオンされてキャパシタC1の電圧を放電させる(
図5参照)。このときに検出されるキャパシタC1の電圧を「電圧VRp」とし、電圧VRpに基づいて絶縁抵抗Rpの劣化を検出するが、これについては後述する。
【0051】
負極側の絶縁抵抗Rnの劣化を検出する場合は、
図8に示すように、第1スイッチS1および第6スイッチS6がオンされ、他のスイッチS2〜S5がオフされる。これにより、第1スタック12aの正極側は、第1抵抗R1、第1スイッチS1、第5抵抗R5、キャパシタC1、第6スイッチS6、第7抵抗R7、絶縁抵抗Rnおよび第2スタック12bを介して第1スタック12aの負極側と接続される。
【0052】
すなわち、第1、第2スタック12a,12bとキャパシタC1とを負極側の絶縁抵抗Rnを介して結ぶ第5経路P5が形成される。この際、絶縁抵抗Rnの抵抗値が正常である場合には、第5経路P5はほとんど導通せず、絶縁抵抗Rnが劣化して抵抗値が低下していた場合には、第5経路P5は導通することとなる。
【0053】
そして、第5経路P5が形成されてから所定時間が経過した後、
図5に示すように、キャパシタC1の電圧を放電させる。このときに検出されるキャパシタC1の電圧を「電圧VRn」とし、電圧VRnに基づいて絶縁抵抗Rnの劣化を検出するが、これについては後述する。
【0054】
なお、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化検出処理では、満充電に要するであろう時間よりも短い所定時間だけ充電を行い、その充電電圧を電圧VRp,VRnとして用いて絶縁抵抗Rp,Rnの劣化検出を行う。
【0055】
ところで、上記したように、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化の検出は、キャパシタC1に充電された電圧VRp,VRnに基づいて行われる。詳しくは、絶縁抵抗Rp,Rnに劣化が生じるとキャパシタC1に充電される電圧が増加することから、充電されたキャパシタC1の電圧が増加してしきい値Va以上となった場合に、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を検出することができる。
【0056】
しかしながら、例えばキャパシタC1や第1〜第7抵抗R1〜R7など、充電経路の素子が劣化していた場合に、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を正確に検出できないおそれがある。
【0057】
すなわち、例えば仮に、キャパシタC1の劣化によって静電容量が減少していた場合、キャパシタC1に充電される電圧は増加する。そのため、キャパシタC1の劣化であるにもかかわらず、増加した電圧に基づいて、絶縁抵抗Rp,Rnに劣化が生じていると誤検出してしまう場合があった。
【0058】
また、例えば仮に、キャパシタC1の劣化によって静電容量が増加していた場合、キャパシタC1に充電される電圧は減少する。そのため、絶縁抵抗Rp,Rnが劣化しているにもかかわらず、減少した電圧に基づいて、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を検出できない場合があった。なお、キャパシタC1以外にも、第1〜第7抵抗R1〜R7など充電経路の時定数に影響を及ぼす素子が劣化した場合も、上記と同様に誤検出や非検出が生じるおそれがあった。
【0059】
そこで、第1の実施形態に係る劣化検出装置23では、キャパシタC1の充電を行う充電経路における素子の劣化を検出することができるようにした。以下、劣化検出装置23の構成についてさらに詳しく説明する。なお、ここで「充電経路の素子」とは、例えばキャパシタC1や第1〜第7抵抗R1〜R7など、充電経路の時定数に影響を及ぼす電子部品を意味するものとする。
【0060】
図3に示すように、劣化検出装置23の電圧検出回路部24は、劣化検出用スイッチS7と、劣化検出用抵抗R8と、キャパシタC2とを備える。劣化検出用スイッチS7は、電源たる組電池10と車体GNDとの間に設けられる。なお、車体GNDは、接地点の一例である。
【0061】
詳しくは、劣化検出用スイッチS7は、隣接する第1、第2スタック12a,12bの間、より詳しくは、第1スタック12aの負極側と第2スタック12bの正極側との間に設けられる。具体的には、劣化検出用スイッチS7の一端が、第1、第2スタック12a,12bの間と第3抵抗R3との間に接続される。
【0062】
なお、上記した劣化検出用スイッチS7の位置は、例示であって限定されるものではない。すなわち、例えば、劣化検出用スイッチS7の一端が第1、第2スタック12a,12bの間と第2抵抗R2との間に接続されていてもよい。
【0063】
さらには、例えば、劣化検出用スイッチS7を2個備えるようにし、劣化検出用スイッチS7の一端が第1スタック12aと第1抵抗R1との間、および、第2スタック12bと第4抵抗R4との間にそれぞれ接続されていてもよい。但し、
図3に示す劣化検出用スイッチS7が1個の構成の場合、劣化検出用スイッチS7が2個の構成に比べて部品点数を少なくすることができ、コスト的に有利である。
【0064】
劣化検出用抵抗R8とキャパシタC2とは、劣化検出用スイッチS7の他端と車体GNDとの間に直列に接続される。劣化検出用抵抗R8の抵抗値は、比較的低い値に設定され、例えば絶縁抵抗Rp,Rnが劣化して漏電しているときと同じような抵抗値に設定されることが好ましい。また、キャパシタC2は、劣化検出用スイッチS7がオン固着した場合に、電流が流れ続けることを防止するための絶縁用キャパシタである。
【0065】
図2に示すように、劣化検出装置23の制御部26は、CPU、RAMおよびROMなどを備えたマイクロコンピュータであり、電圧検出回路部24やA/D変換部25などを含む劣化検出装置23全体を制御する。具体的には、制御部26は、充電経路形成部26aと、放電経路形成部26bと、電圧検出部26cと、充電状態監視部26dと、劣化検出部26eとを備える。
【0066】
充電経路形成部26aは、第1〜第6スイッチS1〜S6を制御し、第1、第3〜第5経路P1,P3〜P5を形成する、すなわち、充電経路を形成する(
図4、
図6〜8参照)。
【0067】
なお、第1〜第6スイッチS1〜S6および劣化検出用スイッチS7のスイッチングパターンは、RAMおよびROMなどの記憶部に予め記憶させておくものとする。そして、充電経路形成部26aおよび放電経路形成部26bは、適宜なタイミングで記憶部からスイッチングパターンを読み出すことによって、充電経路または放電経路を形成する。
【0068】
充電経路形成部26aはさらに、第1〜第6スイッチS1〜S6および劣化検出用スイッチS7を制御して、電源たる第1、第2スタック12a,12bとキャパシタC1と車体GNDとを導通してキャパシタC1の充電を行う充電経路(以下、「強制充電経路」と記載する場合がある)を形成する。
【0069】
具体的には、充電経路形成部26aは、劣化検出用スイッチS7等を制御することで、例えば、正極側の絶縁抵抗Rpまたは負極側の絶縁抵抗Rnが劣化して漏電が生じた場合と同じような状態の充電経路を強制的に形成させるようにする。
【0070】
図9は、正極側の絶縁抵抗Rpが劣化して漏電が生じた場合と同じような状態の強制充電経路を示す図であり、
図10は、負極側の絶縁抵抗Rnが劣化して漏電が生じた場合と同じような状態の強制充電経路を示す図である。
【0071】
図9に示すように、充電経路形成部26aは、第4スイッチS4、第5スイッチS5および劣化検出用スイッチS7をオンし、他のスイッチS1〜S3,S6をオフする。これにより、第2スタック12bの正極側は、劣化検出用スイッチS7、劣化検出用抵抗R8、キャパシタC2、第6抵抗R6、第5スイッチS5、第5抵抗R5、キャパシタC1、第4スイッチS4および第4抵抗R4を介して第2スタック12bの負極側と接続される。すなわち、第2スタック12bとキャパシタC1とを劣化検出用スイッチS7を介して結ぶ第6経路P6(強制充電経路)が形成される。
【0072】
また、
図10に示すように、充電経路形成部26aは、第1スイッチS1、第6スイッチS6および劣化検出用スイッチS7をオンし、他のスイッチS2〜S5をオフする。これにより、第1スタック12aの正極側は、第1抵抗R1、第1スイッチS1、第5抵抗R5、キャパシタC1、第6スイッチS6、第7抵抗R7、キャパシタC2、劣化検出用抵抗R8および劣化検出用スイッチS7を介して第1スタック12aの負極側と接続される。すなわち、第1スタック12aとキャパシタC1とを劣化検出用スイッチS7を介して結ぶ第7経路P7(強制充電経路)が形成される。
【0073】
なお、上記した第6経路P6および第7経路P7は、充電経路の一例である。また、上記した充電経路たる第1、第3〜第5経路P1,P3〜P5の形成も充電経路形成部26aが行うものとする。
【0074】
放電経路形成部26bは、上記した第6経路P6が形成されてから所定時間が経過した後、劣化検出用スイッチS7および第4スイッチS4をオフするとともに、第6スイッチS6をオンして、キャパシタC1の電圧を放電させる(
図5参照)。
【0075】
また、放電経路形成部26bは、上記した第7経路P7が形成されてから所定時間が経過した後、劣化検出用スイッチS7および第1スイッチS1をオフするとともに、第5スイッチS5をオンして、キャパシタC1の電圧を放電させる(
図5参照)。なお、放電経路形成部26bは、上記した第1、第3〜第5経路P1,P3〜P5の形成後に行われる、放電経路の形成も行うものとする。
【0076】
電圧検出部26cは、放電経路形成部26bによって放電経路が形成されると、充電されたキャパシタC1の電圧をA/D変換部25を介して検出する。なお、以下では、第6経路P6によって充電されたキャパシタC1の電圧を「電圧VRpa」、第7経路P7によって充電されたキャパシタC1の電圧を「電圧VRna」と記載する場合がある。また、電圧検出部26cは、上記した第1、第2スタック電圧、電圧VRp,VRn、電圧VRpa,VRnaを検出するものとする。
【0077】
そして、電圧検出部26cは、検出したキャパシタC1の電圧を示す信号を充電状態監視部26dや劣化検出部26eへ出力する。
【0078】
充電状態監視部26dは、第1経路P1や第3経路P3(
図4,6参照)でキャパシタC1を充電した後に検出された第1、第2スタック電圧に基づいて、第1、第2スタック12a,12bの充電状態を監視する。そして、充電状態監視部26dは、第1、第2スタック12a,12bを含む組電池10の充電状態の監視結果を示す情報を車両制御装置30(
図1参照)へ出力する。なお、車両制御装置30は、上述したように、組電池10の充電状態の監視結果に応じて車両制御を行う。
【0079】
劣化検出部26eは、第4経路P4や第5経路P5(
図7,8参照)でキャパシタC1を充電した後に検出されたキャパシタC1の電圧VRp,VRnに基づいて、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を検出する。
【0080】
具体的には、絶縁抵抗Rpや絶縁抵抗Rnが劣化しておらず抵抗値が低下していない場合は、キャパシタC1はほとんど充電されないか、あるいは充電されたとしても十分に小さい電圧が充電される。したがって、劣化検出部26eは、電圧VRpや電圧VRnを、比較的低い値に予め設定されたしきい値Vaと比較する。
【0081】
そして、劣化検出部26eは、キャパシタC1の電圧VRpがしきい値Va以上となった場合、絶縁抵抗Rpの劣化を検出する、言い換えれば、絶縁抵抗Rpに異常が生じていると判定する。他方、劣化検出部26eは、電圧VRpがしきい値Va未満の場合、絶縁抵抗Rpに劣化はない、言い換えれば、絶縁抵抗Rpは正常であると判定する。
【0082】
同様に、劣化検出部26eは、電圧VRnがしきい値Va以上となった場合、絶縁抵抗Rnの劣化を検出する一方、電圧VRnがしきい値Va未満の場合、絶縁抵抗Rnに劣化はないと判定する。なお、上記では、電圧VRn,VRpと比較する値を同じしきい値Vaとしたが、これに限られず、互いに異なる値に設定されたしきい値を用いてもよい。
【0083】
さらに、劣化検出部26eは、第6経路P6や第7経路P7(
図9,10参照)で充電された後に検出されたキャパシタC1の電圧VRpa,VRnaに基づき、キャパシタC1を含む充電経路の素子の劣化を検出する。
【0084】
具体的には、劣化検出部26eは、第6経路P6または第7経路P7で充電されたキャパシタC1の電圧VRpa,VRnaが、予め設定された所定範囲Wa内か否かを判定する。なお、所定範囲Waは、例えば劣化していない正常な状態のキャパシタC1の静電容量や第1〜第7抵抗R1〜R7の抵抗値、劣化検出用抵抗R8の抵抗値に基づいて算出される正常時電圧を含む電圧範囲に設定され、記憶部に予め記憶されているものとする。
【0085】
したがって、劣化検出部26eは、第6経路P6で充電されたキャパシタC1の電圧VRpaが所定範囲Wa内である場合、例えばキャパシタC1などを含む充電経路(ここでは第6経路P6)の素子が劣化していないと判定することができる。また、劣化検出部26eは、キャパシタC1の電圧VRpaが所定範囲Wa外にある場合、充電経路(第6経路P6)の素子の劣化を検出することができる。
【0086】
同様に、劣化検出部26eは、第7経路P7で充電されたキャパシタC1の電圧VRnaが所定範囲Wa内である場合、例えばキャパシタC1などを含む充電経路(ここでは第7経路P7)の素子が劣化していないと判定することができる。また、劣化検出部26eは、キャパシタC1の電圧VRnaが所定範囲Wa外にある場合、充電経路(第7経路P7)の素子の劣化を検出することができる。なお、上記では、電圧VRpa,VRnaと比較する値を同じ所定範囲Waとしたが、これに限定されるものではなく、例えば互いに異なる値に設定された所定範囲を用いてもよい。
【0087】
そして、劣化検出部26eは、上記した絶縁抵抗Rp,Rnや充電経路の素子の劣化状態の結果を示す情報を車両制御装置30等へ出力する。そして、車両制御装置30は、劣化状態に応じた車両制御やユーザへの報知動作などを行う。
【0088】
<3.充電状態監視処理および劣化検出処理の具体的動作>
次に、以上のように構成された電池監視システム20で行われる、充電状態監視処理および劣化検出処理の具体的な動作について
図11を参照して説明する。
図11は、電池監視システム20が実行する処理の処理手順の一部を示すフローチャートである。なお、
図11に示す各種の処理は、劣化検出装置23の制御部26による制御に基づいて実行される。
【0089】
図11に示すように、先ずキャパシタC1等を含む充電経路の素子の劣化検出処理を行う(ステップS1)。
図12は、劣化検出処理を示すフローチャートである。
図12に示すように、制御部26の充電経路形成部26aは、劣化検出用スイッチS7等を制御して第6経路P6を形成する(ステップS10。
図9参照)。次に、電圧検出部26cは、放電経路形成部26bによって形成された放電経路においてキャパシタC1の電圧VRpaを検出する(ステップS11)。
【0090】
続いて、充電経路形成部26aは、劣化検出用スイッチS7等を制御して第7経路P7を形成する(ステップS12。
図10参照)。その後、電圧検出部26cは、放電経路形成部26bによって形成された放電経路においてキャパシタC1の電圧VRnaを検出する(ステップS13)。
【0091】
次に、劣化検出部26eは、ステップS11,S13で検出されたキャパシタC1の電圧VRpa,VRnaが所定範囲Wa内か否かを判定する(ステップS14)。そして、劣化検出部26eは、キャパシタC1の電圧VRpa,VRnaが所定範囲Wa内の場合(ステップS14,Yes)、キャパシタC1等を含む充電経路の素子に劣化はないと判定する(ステップS15)。
【0092】
他方、劣化検出部26eは、キャパシタC1の電圧VRpa,VRnaが所定範囲Wa外の場合(ステップS14,No)、キャパシタC1等を含む充電経路の素子の劣化を検出する(ステップS16)。
【0093】
そして、劣化検出部26eは、充電経路の素子の劣化状態に応じて補正処理を行う(ステップS17)。具体的には、例えばキャパシタC1が劣化して静電容量が減少した場合は、キャパシタC1の充電電圧が増加することから、かかる増加分の電圧を相殺するような補正処理を行う。
【0094】
すなわち、補正処理では、増加分の電圧に応じて、以降の処理で検出されるキャパシタC1の電圧等を補正する際に用いられる補正係数を算出したり、劣化検出部26eのしきい値Vaを補正したりする。なお、電圧の補正係数としては、乗算係数や加算係数を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0095】
なお、ステップS15で充電経路の素子に劣化はないと判定した場合は、しきい値Vaの補正は行わない、あるいは、電圧の補正係数は補正量がゼロとなる値(例えば乗算係数の場合は1、加算係数の場合は0)が設定される。また、以下の説明では、補正処理として補正係数に基づいて各電圧を補正することとする。
【0096】
これにより、例えばしきい値Vaなどを、劣化状態に応じて補正された正確な値とすることが可能となり、よって組電池10の充電状態を正確に監視することができる。なお、補正の手法は、上記に限定されるものではない。また、補正処理自体を行わないように構成してもよい。
【0097】
なお、上記では、第6経路P6、第7経路P7の順で充電経路を形成するようにしたが、これに限定されるものではなく、第7経路P7、第6経路P6の順で形成してもよい。また、上記では、電圧VRpa,VRnaを検出した後に、所定範囲Waと比較するようにしたが、これに限らず、例えば電圧VRpaや電圧VRnaが検出される度に、所定範囲Waと比較するようにしてもよい。さらには、電圧VRpaと電圧VRnaとを加算し、加算された電圧を予め設定された別の所定範囲と比較して、充電経路の素子の劣化を検出するようにしてもよい。
【0098】
続いて、
図11に示すように、制御部26は、第1スタック12aの第1スタック電圧を検出し(ステップS2)、続いてキャパシタC1の電圧VRpを検出する(ステップS3)。次いで、制御部26は、第2スタック12bの第2スタック電圧を検出し(ステップS4)、続いてキャパシタC1の電圧VRnを検出する(ステップS5)。
【0099】
続いて、制御部26は、第1、第2スタック電圧、およびキャパシタC1の電圧VRp,VRnをステップS17で算出した補正係数により補正する(ステップS6)。これにより、例えばスタック電圧などを、劣化状態に応じて補正された正確な値とすることが可能となり、よって組電池10の充電状態をより正確に監視することができる。
【0100】
そして、制御部26の劣化検出部26eは、キャパシタC1の電圧VRp,VRnに基づいて絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を検出する(ステップS7)。ステップS7では、キャパシタC1の電圧VRp,VRnがキャパシタC1の劣化状態に応じて補正されていることから、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を精度よく検出することができる。
【0101】
次いで、制御部26は、劣化検出結果として絶縁抵抗Rp,Rnや充電経路の素子の劣化状態を示す情報と、組電池10の充電状態の監視結果として第1、第2スタック電圧を示す情報とを車両制御装置30へ出力する(ステップS8)。
【0102】
上述してきたように、第1の実施形態に係る劣化検出装置23は、キャパシタC1と、劣化検出用スイッチS7と、充電経路形成部26aと、電圧検出部26cと、劣化検出部26eとを備える。キャパシタC1は、電源に第1スイッチS1〜第6スイッチS6(接続用スイッチ)を介して接続される。劣化検出用スイッチS7は、電源と車体GND(接地点)との間に設けられる。充電経路形成部26aは、第1スイッチS1〜第6スイッチS6および劣化検出部26eを制御して、電源とキャパシタC1と車体GNDとを導通してキャパシタC1の充電を行う充電経路(第6、第7経路P6,P7)を形成する。電圧検出部26cは、充電経路で充電されたキャパシタC1の電圧VRpa,VRnaを検出する。劣化検出部26eは、キャパシタC1の電圧VRpa,VRnaに基づき、キャパシタC1を含む充電経路の素子の劣化を検出する。
【0103】
これにより、簡易な構成でありながら、キャパシタC1の充電を行う充電経路において、キャパシタC1を含む充電経路の素子の劣化を検出することができる。なお、キャパシタC1を含む充電経路の素子は急速に劣化が進むものではないため、
図11のステップS1の劣化検出処理をステップS2〜S5の電圧検出処理よりも低い頻度で実行するようにしてもよい。例えば、ステップS2〜S5の電圧検出処理を複数回実行するたびに1回ステップS1の劣化検出処理を実行し、補正係数を新たな値に更新するようにする。
【0104】
<4.第2の実施形態に係る劣化検出装置の構成>
(第2の実施形態)
次いで、第2の実施形態に係る劣化検出装置23を含む充放電システム1について説明する。なお、以下においては、第1の実施形態と共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0105】
第2の実施形態においては、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を検出する充電経路で充電されたときのキャパシタC1の電圧VRp,VRn、および、キャパシタC1の放電時の電圧に基づいて検出するようにした。
【0106】
詳説すると、充電されたキャパシタC1の電圧VRp,VRnは、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化状態のみならず、例えばキャパシタC1等の劣化状態によっても増減する。そのため、例えばキャパシタC1の電圧VRp,VRnが増加した場合、かかる増加が、キャパシタC1等の劣化に起因するものか、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化に起因するものか区別しにくく、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を精度よく検出することが難しかった。
【0107】
そこで、第2の実施形態では、劣化検出装置23を、キャパシタC1等の劣化状態を考慮しつつ、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を精度よく検出できるような構成とした。
【0108】
図13は、劣化検出装置23の劣化検出部26eの構成例を示すブロック図である。
図13に示すように、劣化検出部26eは、キャパシタC1の放電率Dを算出する放電率算出部26e1を備える。
【0109】
図14は、キャパシタC1の電圧の変化を示すグラフである。なお、
図14に示す例では、第1経路P1または第3経路P3が形成されてキャパシタC1の充電が終了し、放電を開始する時刻を「時刻t1」とし、時刻t1からキャパシタC1を所定時間放電させた時点を「時刻t2」とする。なお、時刻t1から時刻t2までの所定時間は、任意の値に設定可能であり、例えばキャパシタC1の放電を開始してから放電が完了するまでの時間よりも短く設定されることが好ましい。また、時刻t1は、放電開始時に限られず、例えば放電開始後少し経過した時刻としてもよい。
【0110】
図14に示すように、放電率Dは、充電されたとき(すなわち時刻t1)のキャパシタC1の電圧V1と、充電されたキャパシタC1を所定時間放電させたとき(すなわち時刻t2)のキャパシタC1の電圧V2とに基づいて算出される。なお、時刻t1におけるキャパシタC1の電圧V1は、上記した第1スタック電圧または第2スタック電圧に相当するが、ここでは理解の便宜のため、電圧V1と記載するものとする。
【0111】
具体的に放電率Dは、下記の式(1)に示されるように、充電されたときのキャパシタC1の電圧V1から所定時間放電させたときの電圧V2を減算し、減算した値を電圧V1で除して得られる値である。すなわち、放電率Dは、キャパシタC1の放電の割合、換言すれば、放電時のキャパシタC1の電圧減少割合を示す値である。
放電率D=(V1−V2)/V1 ・・・式(1)
【0112】
ここで、キャパシタC1等の劣化と放電率Dとの関係について説明すると、例えばキャパシタC1の静電容量が正常時に比べて減少している場合、放電経路における時定数は小さくなるため、放電が急激になる、言い換えれば放電率Dが正常時に比べて増加する。なお、
図14では、キャパシタC1の静電容量が正常時の電圧の変化を実線で示し、キャパシタC1が劣化して静電容量が減少しているときの電圧の変化を二点鎖線で示している。
【0113】
一方、例えばキャパシタC1が劣化して静電容量が正常時に比べて増加している場合、放電経路における時定数は大きくなるため、
図14に一点鎖線で示すように、放電が緩慢になる、言い換えれば放電率Dが正常時に比べて小さくなる。
【0114】
さらに、放電率Dは、キャパシタC1の電圧V1の値による影響を受けない。すなわち、放電率Dは、電圧V1が変化してもほぼ一定であり、時定数の変化により増減する。したがって、電圧V1は電池スタック12の充電状態によって次々変化するが、変化したとしても放電率Dを計算すれば、放電経路における時定数が変化したか否か、すなわちキャパシタC1等が劣化したか否かを正確に判定することができる。
【0115】
このように、第2の実施形態では、上記したキャパシタC1等の劣化と放電率Dとの関係に着目して、キャパシタC1の劣化を検出するとともに、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を精度よく検出するようにした。なお、キャパシタC1以外に、第5〜第7抵抗R5〜R7など放電経路の時定数に影響を及ぼす素子の劣化も、放電率Dと同様な関係を有する。
【0116】
<5.第2の実施形態における充電状態監視処理および劣化検出処理の具体的動作>
次に、第2の実施形態に係る電池監視システム20で行われる、充電状態監視処理、および、キャパシタC1や絶縁抵抗Rp,Rnの劣化検出処理の具体的な動作について
図15を参照して説明する。
図15は、第2の実施形態に係る電池監視システム20が実行する処理の処理手順の一部を示すフローチャートである。
【0117】
図15に示すように、制御部26は、先ず第1、第2スタック12a,12bの充電状態、および、キャパシタC1の劣化を検出する処理を行う(ステップS101)。
図16は、充電状態検出処理、および、キャパシタC1の劣化検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0118】
図16に示すように、制御部26は、第1スタック12aの第1スタック電圧を検出し(ステップS201)、続いて第1放電率D1を算出する(ステップS202)。詳しくは、制御部26は、キャパシタC1を充電して時刻t1のときの電圧V1を第1スタック電圧として検出し、その後所定時間放電させた時刻t2のときの電圧V2を検出し、検出された電圧V1,V2に基づいて第1放電率D1を算出する。
【0119】
次いで、制御部26は、第2スタック12aの第2スタック電圧を検出し(ステップS203)、第2放電率D2を算出する(ステップS204)。第2放電率D2の算出は、第1放電率D1の算出と同様である。すなわち、制御部26は、キャパシタC1を充電して得た電圧V1を第2スタック電圧として検出し、その後放電させて電圧V2を検出し、検出された電圧V1,V2に基づいて第2放電率D2を算出する。
【0120】
そして、制御部26の劣化検出部26eは、各放電率D1,D2が予め設定された所定範囲Wb内か否かを判定する(ステップS205)。なお、所定範囲Wbは、例えば劣化していない正常な状態のキャパシタC1の静電容量や第1〜第7抵抗R1〜R7の抵抗値に基づいて算出される正常時放電率を含む範囲に設定され、記憶部に予め記憶されているものとする。
【0121】
なお、ステップS205の処理では、第1、第2放電率D1,D2を平均化した値を放電率Dとして用いることができるが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、劣化検出部26eが、第1放電率D1と第2放電率D2とをそれぞれ所定範囲Wbと比較する、あるいは、第1、第2放電率D1,D2のいずれか一方を算出して所定範囲Wbと比較するなどしてもよい。
【0122】
劣化検出部26eは、各放電率D1,D2が所定範囲Wb内の場合(ステップS205,Yes)、キャパシタC1等を含む放電経路の素子に劣化はないと判定する(ステップS206)。なお、ここで「放電経路の素子」とは、例えばキャパシタC1や第5〜第7抵抗R5〜R7など、放電経路の時定数に影響を及ぼす電子部品を意味するものとする。
【0123】
他方、劣化検出部26eは、各放電率D1,D2が所定範囲Wb外の場合(ステップS205,No)、キャパシタC1等を含む充電経路の素子の劣化を検出する(ステップS207)。
【0124】
なお、上記した放電率Dの算出処理およびキャパシタC1の劣化検出処理を、ステップS201,S203の電圧検出処理よりも低い頻度で実行するようにしてもよい。例えば、ステップS201,S203の電圧検出処理を複数回実行するたびに1回ステップS202,S204〜207の劣化検出処理を実行してもよい。
【0125】
次いで、
図15に示すように、制御部26は、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を検出する処理を行う(ステップS102)。
図17は、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0126】
制御部26は、キャパシタC1の電圧VRpを検出し(ステップS301)、続いてキャパシタC1の電圧VRnを検出する(ステップS302)。以下、理解の便宜のため、検出された電圧VRp、電圧VRn、または、各電圧VRp,VRnを加算した電圧VRp+VRn等を含む意味で、「電圧VR」と記載する場合がある。すなわち、かかる「電圧VR」は、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を検出する充電経路(第4、第5経路P4,5)で充電されたときのキャパシタC1の電圧を意味している。
【0127】
制御部26の劣化検出部26eは、キャパシタC1の電圧VRがしきい値Va以上か否かを判定する(ステップS303)。劣化検出部26eは、キャパシタC1の電圧VRがしきい値Va未満の場合(ステップS303,No)、絶縁抵抗Rp,Rnに劣化はないと判定する(ステップS304)。
【0128】
劣化検出部26eは、キャパシタC1の電圧VRがしきい値Va以上の場合(ステップS303,Yes)、キャパシタC1の劣化が検出されているか否かを判定する(ステップS305)。
【0129】
劣化検出部26eは、キャパシタC1の劣化が検出されている場合(ステップS305,Yes)、キャパシタC1の劣化の影響で電圧VRがしきい値Va以上となっていると推定できるため、ステップS304に進んで絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を検出しない、すなわち絶縁抵抗Rp,Rnに劣化はないと判定する。
【0130】
これにより、劣化検出部26eは、キャパシタC1等の劣化に起因して電圧VRがしきい値Va以上となっている状態を、絶縁抵抗Rp,Rnが劣化していると誤検出してしまうことを防止でき、結果として絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を精度よく検出することができる。
【0131】
一方、劣化検出部26eは、キャパシタC1の劣化が検出されていない場合(ステップS305,No)、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を検出する(ステップS306)。すなわち、放電率Dが所定範囲Wb内でキャパシタC1等を含む放電経路の素子は劣化していないことから、キャパシタC1の電圧VRがしきい値Va以上となった原因は、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化にあると推定することができる。
【0132】
このように、劣化検出部26eは、キャパシタC1等の劣化状態を考慮することで、具体的にはキャパシタC1の放電時の電圧(放電率D)を用いることで、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を精度よく検出することができる。
【0133】
続いて、
図15に示すように、制御部26は、劣化検出結果として絶縁抵抗Rp,Rnや放電経路の素子の劣化状態を示す情報と、組電池10の充電状態の監視結果として第1、第2スタック電圧を示す情報とを車両制御装置30へ出力する(ステップS103)。
【0134】
上述してきたように、第2の実施形態に係る劣化検出装置23は、キャパシタC1と、電圧検出部26cと、劣化検出部26eとを備える。キャパシタC1は、絶縁された電源に接続されて充放電を行う。電圧検出部26cは、キャパシタC1の電圧を検出する。劣化検出部26eは、電源の絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を検出する充電経路で充電されたときのキャパシタC1の電圧VR、および、キャパシタC1の放電時の電圧V2に基づいて電源の絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を検出する。
【0135】
これにより、電源の絶縁抵抗Rp,Rnにおける劣化の検出精度を向上させることができる。また、第2の実施形態では、劣化検出用スイッチS7や劣化検出用抵抗R8を除去することが可能となり、かかる場合、部品点数を少なくすることができ、劣化検出装置23の小型化や低コスト化を図ることができる。なお、残余の構成および効果は、第1の実施形態と同一であるので、説明を省略する。
【0136】
<6.第2の実施形態の変形例>
次に、第2の実施形態の変形例について説明する。かかる変形例では、キャパシタC1の劣化が検出された場合、劣化状態に応じてキャパシタC1の電圧VRやしきい値Vaを補正するようにした。
【0137】
図18は、第2の実施形態の変形例に係る劣化検出装置23において実行される、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化検出処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図18のステップS401〜S405の処理については、
図17のステップS301〜S305の処理に概ね妥当するため、説明を省略する。
【0138】
変形例に係る劣化検出部26eは、電圧VRがしきい値Va以上でステップS405に進み、キャパシタC1の劣化が検出されている場合(ステップS405,Yes)、キャパシタC1を含む放電経路の素子の劣化状態に応じて補正処理を行う(ステップS406)。
【0139】
具体的には、劣化検出部26eは、上記したステップS6やステップS17で実行するような補正処理、すなわち、補正係数を用いた電圧VRの補正やしきい値Va等の補正を行う。
【0140】
なお、ここでは、検出された電圧VRを補正係数に基づいて補正する場合を例にとって説明するが、これに限定されるものではなく、しきい値Va等を補正してもよい。また、ステップS406の補正処理の具体的な内容は、上記したステップS6,S17と同じにしたが、これに限られず、異なる補正の手法を用いてもよい。
【0141】
次いで、劣化検出部26eは、補正された電圧VRがしきい値Va以上か否かを再度判定する(ステップS407)。劣化検出部26eは、補正後の電圧VRがしきい値Va未満の場合(ステップS407,No)、すなわち、キャパシタC1の劣化状態を考慮して電圧VRを補正した結果、しきい値Va未満となった場合、絶縁抵抗Rp,Rnに劣化はないと判定する(ステップS404)。
【0142】
このように、劣化検出部26eは、キャパシタC1等の劣化に起因して電圧VRがしきい値Va以上となっている状態を、絶縁抵抗Rp,Rnが劣化していると誤検出することがなく、結果として絶縁抵抗Rp,Rnの劣化をより精度よく検出することができる。
【0143】
一方、劣化検出部26eは、補正後の電圧VRがしきい値Va以上の場合(ステップS407,Yes)、すなわち、電圧VRを補正した後もなおしきい値Va以上となった場合、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を検出する(ステップS408)。また、劣化検出部26eは、キャパシタC1の劣化が検出されていない場合も(ステップS405,No)、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を検出する(ステップS408)。
【0144】
なお、上記において、第1の実施形態の絶縁抵抗Rp,Rnの劣化検出では、キャパシタC1の電圧VRp、電圧VRnをそれぞれしきい値Vaと比較するようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば電圧VRpと電圧VRnとを加算し、加算された電圧を予め設定された別のしきい値と比較して、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を検出するようにしてもよい。なお、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化検出において、キャパシタC1の電圧VRp、電圧VRn、電圧VRp+VRnのいずれを用いてもよい点は、第2の実施形態も同様である。
【0145】
また、第2の実施形態においては、第1、第2スタック電圧を検出する際に充放電されたときのキャパシタC1の電圧V1,V2に基づいて放電率Dを算出したが、これに限られない。すなわち、例えば、絶縁抵抗Rp,Rnの劣化を検出する際に充電されたときのキャパシタC1の電圧VRp,VRnと、それからキャパシタC1を所定時間放電させたときのキャパシタC1の電圧とに基づいて放電率Dを算出してもよい。
【0146】
また、第1、第2の実施形態において劣化検出処理を実行するタイミングは、上記に限定されるものではない。すなわち、例えば車両始動時や車両停止時、所定時間間隔や所定走行距離ごとなど、劣化検出処理を実行するタイミングを変更してもよい。
【0147】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。