(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示される放射温度計を含む従来の放射温度計は、測定対象物から放射される赤外線をサーモパイルに集光するフレネルレンズは周囲温度若しくは測定対象の温度により温度変化の影響を受けやすいため、
図9に示すようにフレネルレンズの端部近傍に温度補正用のサーミスタが配置されている。
【0008】
このフレネルレンズは、特にレンズ中央部が最も影響を受けやすいため、本来であればレンズ中央部付近にサーミスタを配置するのが理想的であるが、レンズ中央付近に配置してしまうと測定対象物から検出される赤外線の光路を遮ってしまうため、
図9に示すようにレンズ端部近傍に配置されている。
【0009】
しかしながら、サーミスタは接触式の感熱素子であるため、レンズ端部に設置した場合は下記に示す問題1〜3が起きることでレンズ端部とレンズ中央部との温度差により正確な温度補正ができないという問題があった。
(問題1)
レンズ端部では赤外線集光による直接的な温度変化の影響を受けないため、レンズ中央部よりも温度変化が小さくなるという問題がある。
(問題2)
レンズ端部はフレネルレンズが取り付けられる筒部と接触しているため熱容量が大きくなり温度変化が小さくなるという問題がある。
(問題3)
フレネルレンズの材質がアクリルやポリエチレンなどの合成樹脂で形成されるため熱伝動性が低く温度がレンズ端部まで伝わりにくく、温度変化が小さくなるという問題がある。
【0010】
また、上述した問題は、下記事例1、2に示すように、特に高温の測定対象物を測定するときや測定環境の温度が極端に変化することで起こりやすいため、レンズの温度変化による測定対象物の温度検知誤差を改善する方法が求められている。
(事例1)
例えば、周囲温度が約20℃、測定対象物が250℃に熱した金属であった場合、
図10(a)に示すように検出直後から所定時間は高温に熱された金属からの強い熱放射(あぶり)によりレンズの温度が上昇して実際の温度(250℃)よりも高めの温度(256℃)で検出されてしまい、約6℃の誤差が生じてしまう。
(事例2)
例えば、周囲温度が約40℃から20℃に変化し、測定対象が0℃の氷であった場合、
図10(b)に示すように検出直後から所定時間はレンズが周囲温度の影響で冷えていくため、実際の温度(0℃)よりも低めの温度(−2.2℃)で検出され、約2℃の誤差が生じてしまう。
【0011】
また、特許文献1の放射温度計では、第1温度センサと第3温度センサとの間に第2温度センサを設け、第1温度センサから放射される赤外線を検出して温度補償しているが、やはり上述したようなフレネルレンズのレンズ中央部における温度変化に起因する温度誤差までは補償することができない。
【0012】
さらに、特許文献2に開示される人体検知器では、人体検知処理の妨げにならないようにするため、監視領域全体を監視できるように設定した赤外線受光ゾーンを外したカバー内面に表面温度検出面を設けているが、監視領域の大きさや形状は監視する場所毎に全て異なるため、機器設計者は、人体検出用多角ミラーや表面温度検出用ミラーの角度調整をするにあたり幾度も実験を繰り返して赤外線受光ゾーンから外れた位置に表面温度検出面を設定しなければならず煩雑であった。
【0013】
これは、表面温度検出面の設置箇所がカバー内の何処でも良いわけではなく、画策行為を高精度に検出するため、人体検知器において画策行為されやすい部分(特にカバー表面における監視領域と対向する箇所)に表面温度検出面を設ける必要があるためである。
【0014】
また、監視領域が比較的広く、赤外線受光ゾーンを広範囲に設定しなければならないような場合、適切な位置に表面温度検出面を設けることができない可能性があるため、赤外線受光ゾーンの位置を考慮せずにカバーの画策検知ができる新規の人体検知器の開発が望まれている。
【0015】
以上のように、上述した赤外線検知装置である放射温度計や人体検知器に共通する問題点は、赤外線を透過する部材(放射温度計であればフレネルレンズ、人体検知器であれば赤外線透過カバー)が外部の熱的作用(例えば測定対象物からの熱放射、測定環境の温度変化、カバー表面が受ける画策行為など)の影響により赤外線透過部材自体に温度変化が生じ、検出結果(検出した赤外線量に応じた温度値や温度変化)に誤差が生じてしまうことである。
【0016】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、赤外線透過部材が何らかの外的要因によって生じた温度変化を検出するため、赤外線透過部材の温度変化に起因する赤外線のみを検出することのできる赤外線検出素子を提供することを目的としている。
また、この赤外線検出素子を利用して測定対象物から放射された赤外線強度に応じた温度値を補正する機能を有する放射温度計並びに赤外線透過部材に対する画策行為を検知する機能を有する人体検知器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記した目的を達成するため、請求項1記載の赤外線検出素子は
、赤外線透過部材を介して測定対象から放射される赤外線を検出する
測定用赤外線検出素子が検出した赤外線を補正するための赤外線検出素子であって、
前記赤外線透過部材における赤外線透過率が極端に低くなる不感帯域と同域の波長の赤外線のみを透過させる光学フィルタが赤外線検出面を覆うように設けられていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項2記載の赤外線検出素子は、請求項1記載の赤外線検出素子において、前記赤外線検出素子は、サーモパイルであることを特徴とする。
【0019】
また、請求項3記載の赤外線検出素子は、請求項1記載の赤外線検出素子において、前記赤外線検出素子は、焦電素子であることを特徴とする。
【0020】
また、請求項4記載の放射温度計は、測定対象物から放射された赤外線を、赤外線透過部材からなるフレネルレンズを介して検出する測定用赤外線検出素子と、
前記フレネルレンズが外的要因によって温度変化したときに生じた赤外線のうち、前記フレネルレンズにおける赤外線透過率が極端に低くなる不感帯域と同域の波長の赤外線のみを透過する光学フィルタが赤外線検出面を覆うように設けられた温度補正用赤外線検出素子と、
を備える赤外線検出部と、
前記測定用赤外線検出素子で検出した前記測定対象物が放射する赤外線の強度に応じた温度値を、前記温度補正用赤外線検出素子で検出した前記フレネルレンズが放射する赤外線の強度に応じた温度値を用いて温度補正処理を行う演算部と、
を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項5記載の人体検知器は、赤外線を透過するカバーを介して監視領域内に侵入した人体から放射される赤外線を検出してこの赤外線の変化量に基づき人体の有無を検知する人体検知部と、
前記カバーが画策行為されたか否かを判定する画策検知部と、
を備える人体検知器であって、
前記画策検知部は、
前記カバーにおける赤外線透過率が極端に低くなる不感帯域と同域の波長の赤外線のみを透過する光学フィルタが赤外線検出面を覆うように設けられた画策検出用素子を有する画策検知用赤外線受光部と、
前記画策検出用素子に入力される赤外線受光量に応じて発生する受光信号と、予め設定された画策判定用閾値とを比較して画策行為の有無を判定する画策判定部と、
と備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の赤外線検出素子は、赤外線透過部材における赤外線透過率が極端に低くなる不感帯域と同域波長の赤外線のみを透過させる光学フィルタが赤外線検出面を覆うよう設けているため、例えばこの素子を放射温度計に採用した場合、赤外線透過部材であるフレネルレンズが何らかの外的要因によってフレネルレンズ自体に温度変化が生じたときは、フレネルレンズを透過する測定対象物の赤外線を検出せず、フレネルレンズの温度変化に起因する不感帯域と同域の波長の赤外線のみを検出することができる。よって、測定対象物から検出した赤外線の強度に応じた温度値に誤差が生じたとしても、光学フィルタを設けた赤外線検出素子で検出した赤外線の強度からフレネルレンズ自体の温度値を知得することができるため、測定対象物の温度値を正しい値に補正することができる。
【0023】
また、本発明の赤外線検出素子を人体検知器に採用した場合、監視領域内に人体が侵入したときの赤外線は検出せず、カバーが画策されたときに生じるカバーの温度変化に起因する赤外線における不感帯域の波長域の赤外線のみを検出することができるので、画策行為を確実に検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者などによりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などは全て本発明の範疇に含まれる。
【0026】
本発明に係る赤外線検知装置1である放射温度計10や人体検知器20は、測定対象物Mや監視領域内に侵入する人体から放射される赤外線を検出する際に、各機器に搭載される赤外線検出素子が赤外線を透過する材料で形成された赤外線透過部材(放射温度計10であればフレネルレンズL、人体検知器20であればカバー20b)を透過する赤外線を赤外線検出素子(サーモパイル、焦電素子)で検出している。
【0027】
そして、本願出願人は、〔発明が解決しようとする課題〕の項でも記載した赤外線検知装置の赤外線透過部材が外部の熱的作用の影響による当該透過部材自体の温度変化によって起こる問題点を解決するべく鋭意研究を進めた結果、赤外線透過部材には赤外線透過率が極端に低い波長域(以下「不感帯域」という)が存在することを知得した。
【0028】
図1(a)は、赤外線検知装置1である人体検知器20のポリエチレン製のカバー20bにおける赤外線の波長(μm)と透過率(%T)との関係を示すグラフである。
図示のように、カバー20bには、赤外線透過率が極端に低い波長域(図中では、特に約3.5μm付近、約6.8μm付近及び13.8μm付近)が幾つか存在することが確認できる。つまり、本願発明者が知得した「不感帯域」とは、この赤外線透過率が極端に低い波長域のことであり、人体から放射される赤外線がカバー20bを透過しないため人体検知用として利用できない波長域のことである。
【0029】
なお、
図1(a)のグラフはあくまで一例を示しており、使用するカバー20bの材質や厚さによって赤外線の透過率や不感帯域の波長域は変化するが、不感帯域の定義としては、少なくとも赤外線の透過率が極端に低く人体検知に影響の及ぼさない波長域であればよい。
【0030】
ところで、赤外線検知装置として人体検知器20を例にすると、人体検知器20に対する画策検知は、画策行為によってカバー20bに生じる温度変化に起因する赤外線量の変化を検出しているが、上述した不感帯域以外の波長域の赤外線を検出してしまうと、検出した赤外線が監視領域内で人体の移動に伴う温度変化に起因する赤外線なのか、或いは画策行為の影響で生じた温度変化に起因する赤外線なのか判断が難しくなってしまう。
【0031】
しかしながら、上述した不感帯域を画策検出時における赤外線検出用波長域として利用し、
図1(a)に示すように画策行為によって生じた温度変化に起因する赤外線のうち、不感帯域の波長域の赤外線のみを検出することで、画策行為対策として特許文献1のようにカバー20bに表面温度検出面を設けることなく、カバー20bに対する画策行為で生じたカバー20bの温度変化に起因する赤外線量の変化と、監視領域内で生じた人体侵入に起因する赤外線量の変化とが区別できることを見出したのである。
【0032】
これは、赤外線検知装置1である放射温度計10における赤外線透過部材であるフレネルレンズLも同様であり、測定対象物Mの熱放射や測定環境によってフレネルレンズLの中央部が温度変化してしまうが、フレネルレンズL自体の不感帯域を利用してフレネルレンズLの中央部で生じた温度変化に起因する赤外線量を検出することで、測定対象物Mから放射された赤外線量と区別することができ、フレネルレンズLの不感帯域を通過した赤外線の強度に応じたフレネルレンズLの中央部の温度値で、測定対象物Mから検出した赤外線の強度に応じた温度値を補正することで、測定対象物Mの正確な温度値を知得することができる。
【0033】
以下、上述した新規の技術思想に基づき開発を進めた本発明に係る赤外線検知装置1(実施形態1として放射温度計10、実施形態2として人体検知器20)における各構成要件及び処理動作について説明する。
【0034】
[1. 実施形態1]
まず、本発明に係る赤外線検知装置1の第1の実施形態となる放射温度計10について説明する。
実施形態1で説明する放射温度計10は、接触式での測定が困難な各種物体の表面温度を非接触で測定する場合に用いられるもので、測定対象物Mの表面から放出される赤外線の強度を測定することで、その測定対象物Mの表面温度を計測する装置である。
【0035】
<1−1.機器構成について>
図2又は
図3に示すように、実施形態1に係る放射温度計10は、赤外線検出部11と、補償用温度検出部12と、増幅部13と、A/D変換部14と、演算部15と、温度表示部16とを備えている。
【0036】
赤外線検出部11は、測定対象物Mから放射された赤外線をポリエチレンなどの赤外線透過性を有する合成樹脂(赤外線透過部材)で形成されるフレネルレンズLの不感帯域以外の波長の赤外線を検出する測定用赤外線検出素子11aと、フレネルレンズLが何らかの外部要因によって温度変化したときに生じた赤外線のうちフレネルレンズLの不感帯域と同域の赤外線を検出する温度補正用赤外線検出素子11bとで構成される。
【0037】
測定用赤外線検出素子11aは、赤外線検出素子であるサーモパイル素子で構成され、フレネルレンズLを介して測定対象物Mから放射された赤外線を入射して受光し、この受光した赤外線の強度に起因する熱エネルギーを光電変換した電気信号(アナログ信号)を測定温度信号として増幅部13に出力する。
【0038】
つまり、測定用赤外線検出素子11aは、測定対象物Mから放射された赤外線を、フレネルレンズLにおける不感帯域以外の波長の赤外線を検出するための素子である。
【0039】
温度補正用赤外線検出素子11bは、赤外線検出素子であるサーモパイル素子で構成され、外部要因(測定対象物Mからの熱放射、測定位置の移動などに伴う測定環境の温度変化など)によってフレネルレンズL自体に生じた温度変化に起因する赤外線のうち、フレネルレンズLの不感帯域と同域の波長の赤外線のみを受光し、この受光した赤外線の強度に起因する熱エネルギーを光電変換した電気信号(アナログ信号)を補正用温度信号として増幅部13に出力する。
【0040】
また、温度補正用赤外線検出素子11bの赤外線検出面には、フレネルレンズLの不感帯域に含まれる波長の赤外線のみを検出させるようにする光学フィルタ11cが該検出面を覆うように設けられている。
【0041】
光学フィルタ11cは、フレネルレンズLの不感帯域に含まれる波長の赤外線のみを温度補正用赤外線検出素子11bに検出させ、不感帯域以外の波長域の赤外線を検出させないようにする、所謂バンドパスフィルタの役目を担う光学部品であり、温度補正用赤外線検出素子11bの赤外線検出面の前面に設けられている。よって、光学フィルタ11cの赤外線通過帯域は、使用するフレネルレンズLの赤外線透過率により決定される不感帯域に含まれる波長の赤外線のみが通過するように設定されている。
【0042】
なお、光学フィルタ11cの赤外線通過帯域幅は、少なくとも使用するフレネルレンズLの不感帯域と同域となるように設定され、フレネルレンズLが温度変化に起因する外部要因を考慮して予め実験などを行うことで、フレネルレンズLの温度変化に起因する赤外線が検出できるような波長域で設定される。従って、使用するフレネルレンズLによって不感帯域が複数存在する場合は、上記実験に基づき外部要因よる温度変化に起因する赤外線の波長域に応じて適切な不感帯域を選択し、その波長域のみを通過するように光学フィルタ11cを設計すればよい。
【0043】
つまり、温度補正用赤外線検出素子11bは、光学フィルタ11cを介することで、何らかの外部要因によってフレネルレンズLが温度変化したときに放射される赤外線のうち、フレネルレンズLにおける不感帯域と同域の波長の赤外線のみを検出できるようになっている。
【0044】
補償用温度検出部12は、サーミスタ等の温度センサで構成され、赤外線検出部11近傍に設置される。補償用温度検出部12は、測定用赤外線検出素子11a及び温度補正用赤外線検出素子11b自体の温度の変化を抵抗値の変化として検出し、この検出した抵抗値(アナログ信号)を補償用温度信号としてA/D変換部14に出力する。なお、機器の設計上、測定用赤外線検出素子11aと温度補正用赤外線検出素子11bの設置距離が離れてしまう場合は、各素子の近傍にそれぞれ補償用温度検出部12を設置することが好ましい。
【0045】
増幅部13は、測定用赤外線検出素子11aから出力されたアナログ信号である測定温度信号や、温度補正用赤外線検出素子11bから出力されたアナログ信号である補正用温度信号を受けて、これら信号をA/D変換部14において変換可能な信号レベルまで増幅した後、A/D変換部14に出力する。
【0046】
A/D変換部14は、増幅部13から出力されたアナログ信号や補償用温度検出部12から出力された抵抗値を示すアナログ信号をA/D変換してディジタル信号化した後、演算部15に出力している。
【0047】
つまり、A/D変換部14は、増幅部13から所定の信号レベルに増幅されたアナログ信号である測定用温度信号をディジタル信号に変換した後、このディジタル信号化した測定用温度信号を演算部15に出力する。また、A/D変換部14は、増幅部13から所定の信号レベルに増幅されたアナログ信号である補正用温度信号をディジタル信号に変換した後、このディジタル信号化された補正用温度信号を演算部15に出力する。さらに、A/D変換部14は、補償用温度検出部12から出力された抵抗値を示すアナログ信号をディジタル信号に変換し、このディジタル信号化した補償用温度信号を演算部15に出力する。
【0048】
演算部15は、例えばCPU(Central Processing Unit )などのプロセッサで構成され、A/D変換部14でディジタル信号に変換された各種信号(測定用温度信号、補正用温度信号、補償用温度信号)を用いて、赤外線検出部11の各素子11a、11bの温度補償を補償用温度検出部12で検出した補償用温度信号を用いて温度補償処理や、測定用温度信号及び補正用温度信号から測定対象物Mの温度値(絶対値)の補正処理及び温度値算出処理を行う。
【0049】
測定用赤外線検出素子11aがフレネルレンズLを介して検出した赤外線エネルギーには、測定対象物Mから放射された赤外線エネルギーに加えてフレネルレンズLから放射されたフレネルレンズL自体から放射される赤外線エネルギーも含まれている。
そのため、演算部15では、測定温度信号が示す測定用赤外線検出素子11aが検出する赤外線エネルギーである「測定対象物Mから放射された赤外線エネルギー+フレネルレンズLから放射された赤外線エネルギー」から、温度補正用赤外線検出素子11bが検出した「フレネルレンズLから放射された赤外線エネルギー」を減算することで、フレネルレンズLから放射された赤外線エネルギーを相殺され、測定用赤外線検出素子11aが検出した赤外線エネルギーが測定対象物Mから放射された赤外線エネルギーのみに補正される。
【0050】
例えば、測定対象物Mの温度を「150℃」、測定対象物Mの輻射の影響を受けたフレネルレンズLの温度を「35℃」としたとき、測定用赤外線検出素子11aは、測定対象物Mの温度である「150℃」に相当する赤外線エネルギーと、フレネルレンズLから放射されるフレネルレンズL自体の温度である「35℃」に相当する赤外線エネルギーを同時に検出するため、合計で「185℃」に相当する赤外線エネルギーを検出してしまい実際の測定対象物Mの温度と誤差が生じてしまう。
しかしながら、測定用赤外線検出素子11aで検出した「185℃」に相当する赤外線エネルギーから、温度補正用赤外線検出素子11bで検出したフレネルレンズL自体の温度である「35℃」に相当する赤外線エネルギーを減算することで、実際の測定対象物Mの温度である「150℃」に相当する赤外線エネルギーを温度値に換算することができる。よって、測定対象物Mの正確な温度値を取得することができる。
【0051】
温度表示部16は、ディスプレイ装置(LCD(liquid crystal display)など)で構成され、演算部15で算出された温度値を数値表示する。
【0052】
<1−2.処理動作について>
次に、上述した放射温度計10の処理動作について説明する。
【0053】
まず、測定対象物Mの温度測定を開始すると、測定用赤外線検出素子11aは、フレネルレンズLを介して測定対象物Mから放射された赤外線を検出し、温度補正用赤外線検出素子11bは、フレネルレンズL自体から放射される赤外線を検出する。また、これと平行して、補償用温度検出部12は、赤外線検出部11の各素子11a、11bの素子自体の温度の変化を抵抗値の変化として検出し、この検出した抵抗値(アナログ信号)を補償用温度信号としてA/D変換部14に出力する。
【0054】
このとき、温度補正用赤外線検出素子11bは、光学フィルタ11cを介して赤外線を検出するため、フレネルレンズLを通過する測定対象物Mからの赤外線は検出せず、フレネルレンズL自体から放射される赤外線のうちフレネルレンズLの不感帯域と同域の波長の赤外線のみを検出する。
【0055】
次に、測定用赤外線検出素子11aで検出した測定対象物Mの赤外線の強度に起因する熱エネルギーを光電変換した電気信号(アナログ信号)を測定温度信号として増幅部13に出力する。また、温度補正用赤外線検出素子11bは、外部要因によってフレネルレンズL自体に生じた温度変化に起因する赤外線のうち、フレネルレンズLの不感帯域と同域の波長の赤外線のみを受光し、この受光した赤外線の強度に起因する熱エネルギーを光電変換した電気信号(アナログ信号)を補正用温度信号として増幅部13に出力する。
【0056】
次に、増幅部13は、測定用赤外線検出素子11aから出力された測定温度信号や、温度補正用赤外線検出素子11bから出力された補正用温度信号をA/D変換部14において変換可能な信号レベルまで増幅した後、A/D変換部14に出力する。そして、A/D変換部14は、増幅部13から出力されたアナログ信号である測定温度信号や補正用温度信号、補償用温度検出部12から出力された抵抗値を示すアナログ信号をA/D変換してディジタル信号化した後、演算部15に出力する。
【0057】
演算部15では、赤外線検出部11の各素子11a、11bの温度補償を補償用温度検出部12で検出した補償用温度信号を用いて温度補償処理を行うとともに、A/D変換部14から出力された測定用温度信号及び補正用温度信号から測定対象物Mの温度値(絶対値)の算出処理を行う。すなわち、測定温度信号が示す測定用赤外線検出素子11aが検出する赤外線エネルギーから、補正用温度信号が示す温度補正用赤外線検出素子11bが検出したフレネルレンズLから放射された赤外線エネルギー分を減算することで、フレネルレンズLから放射された赤外線エネルギーを相殺し、測定対象物Mから放射された赤外線エネルギーのみを取得する。
【0058】
その後、演算部15において、補正処理によって取得した測定対象物Mから放射された赤外線エネルギーを温度値に換算し、この温度値の情報を温度表示部16にして温度表示させる。
【0059】
<1−3.実施形態1の効果>
以上説明したように、上述した実施形態1に係る放射温度計10は、フレネルレンズLを介して測定対象物Mから放射された赤外線を検出する測定用赤外線検出素子11aと、フレネルレンズLの不感帯域に含まれる波長の赤外線のみを検出させるようにする光学フィルタ11cが赤外線検出面を覆うように設けて外的要因によるフレネルレンズL自体の温度変化に起因する赤外線を検出する温度補正用赤外線検出素子11bとを有する赤外線検出部11を備えている。
【0060】
これにより、赤外線検出部11において測定対象物Mから放射された赤外線を検出する際に、温度補正用赤外線検出素子11bにおいて外的要因によってフレネルレンズL自体の温度変化したときに生じる赤外線のみを検出しているため、測定用赤外線検出素子11aで検出した赤外線エネルギーを、温度補正用赤外線検出素子11bで検出したフレネルレンズL自体の温度変化に起因する赤外線エネルギーで補正することができ、結果として測定対象物Mの正確な温度検出が可能となる。
【0061】
[2.実施形態2]
次に、本発明に係る赤外線検知装置の第2の実施形態となる人体検知器20について説明する。
【0062】
<2−1.機器構成について>
図4又は
図5に示すように、本例の人体検知器20は、検知対象となる人体の移動に伴う赤外線の変化量により監視領域内における人体の有無を検知する機能と、主にカバー20bの表面に例えばスプレーやペンキ、その他赤外線を吸収・遮断する液体、テープなどを噴射・塗布して人体検知器20による人体検知ができないようにする画策行為によってカバー20bが遮蔽されたか否かを検知する機能を実現するため、筐体20a内に人体検知部21と、画策検知部22と、制御部23と、出力部24と、電源部25とを具備する。
【0063】
また、人体検知部21、画策検知部22、制御部23、出力部24及び電源部25が外部に露出しないようにするため、これらを覆うカバー20bが筐体20aに取り付けられている。
【0064】
カバー20bは、例えばポリエチレンやポリプロピレンのような監視領域内に侵入する人体から放射される赤外線が透過しやすい素材(赤外線透過部材)で形成されている。また、カバー20bは、赤外線以外の外乱光の受光を避けるフィルタの役目と悪戯防止を目的として、内部部品が外部から視認できないように白濁色や明度が比較的低い色となるように色調調整されている。
【0065】
人体検知部21は、監視領域内に設定した赤外線受光ゾーンE1から赤外線を受光する人体検知用赤外線受光部21Aと、人体検知用赤外線受光部21Aで受光した赤外線量に応じて監視領域内の人体の有無を判断する人体判定部21Bとを備えている。
【0066】
人体検知用赤外線受光部21Aは、監視領域内での人体の移動に伴う赤外線の変化量を検出しており、赤外線受光ミラー21Aa、人体検出用素子21Abを有している。
【0067】
赤外線受光ミラー21Aaは、人体検出用素子21Abとにより、所望の監視領域内に赤外線受光ゾーンE1を形成するように、上下左右方向に複数の領域に分割された多角ミラーで構成される。赤外線受光ミラー21Aaは、監視領域内に設定した赤外線受光ゾーンE1に侵入した人体の移動に伴う赤外線を受け、この赤外線を光軸上の焦点に位置する人体検出用素子21Abの検出面に導いている。
【0068】
人体検出用素子21Abは、焦電素子やサーモパイルなどの赤外線検出素子であって、筐体20a内の回路基板20c上に固設される。人体検出用素子21Abは、太陽光などの外乱による誤検出を防止するため、極性の異なる2個の検出素子を差動接続して構成される。人体検出用素子21Abは、赤外線受光ミラー21Aaにより反射されて導かれる赤外線受光ゾーンE1からの赤外線を受光し、この受光した赤外線の受光量に応じて発生する受光信号を人体判定部21Bに出力している。
【0069】
人体判定部21Bは、人体検知用赤外線受光部21Aの人体検出用素子21Abに入力される赤外線受光量に応じて発生する受光信号と、予め実験で定めた閾値(人体判定用閾値)とを比較し人体の有無を判定している。
【0070】
詳述すると、人体判定部21Bは、例えば
図6に示すように、増幅器21Ba、比較器21Bb,21Bcを備えている。増幅器21Baには人体検出用素子21Abの受光信号が入力され、比較器21Bbには増幅器21Baの出力と閾値Vref1+が入力される。また、比較器21Bcには増幅器21Baの出力と閾値Vref1−が入力される。
【0071】
よって、人体判定部21Bには、予め算出された人体の有無を判定するために適当な閾値として、上限閾値Vref1+と下限閾値Vref1−がそれぞれ設定入力されている。そして、増幅器21Baにて増幅された人体検出用素子21Abからの受光信号が、人体判定時間T1以内に上記閾値Vref1+又はVref1−を所定回数(1回以上)超えたときに人体有りと判定し、そうでないときに人体無しと判定する。また、人体有りと判定したときのみ、人体検知信号を制御部23に出力している。
【0072】
なお、人体判定時間T1は、制御部23により人体検出用素子21Abから受光信号を入力したときの入力タイミングをトリガとして計時が開始され、所定時間計時するリセットされる。
【0073】
画策検知部22は、画策行為によってカバー20bに生じた温度変化に起因する赤外線を受光する画策検知用赤外線受光部22Aと、画策検知用赤外線受光部22Aで受光した赤外線量に応じてカバー20bに対する画策の有無を判断する画策判定部22Bとを備えている。
【0074】
画策検知用赤外線受光部22Aは、画策行為によるカバー20bの温度変化に起因する赤外線を検出する画策検出用素子22Aaと、画策検出用素子22Aaの赤外線検出面を覆うように設けられる光学フィルタ22Abとを備え、筐体20a内の回路基板20dに固設される。
【0075】
画策検出用素子22Aaは、焦電素子などの赤外線検出素子で構成される。画策検出用素子22Aaは、カバー20bの裏面に設定した画策検出ゾーンE2から画策行為により生じたカバー20bの放射熱に含まれる赤外線を受光し、この受光した赤外線の受光量に応じて発生する受光信号を画策判定部22Bに出力している。なお、画策検出ゾーンE2は、例えば
図1に示すように、カバー20bにおいて画策行為がされやすい部分(特に監視領域と対向するカバー20b表面の裏側)が含まれるように設定するのが好ましい。
【0076】
光学フィルタ22Abは、使用するカバー20bの不感帯域に含まれる波長の赤外線のみを画策検出用素子22Aaに検出させ、不感帯域以外の波長域の赤外線を検出させないようにする、所謂バンドパスフィルタの役目を担う光学部品であり、画策検出用素子22Aaの赤外線検出面と重なるように設けられている。よって、光学フィルタ22Abの赤外線通過帯域は、使用するカバー20bの赤外線透過率により決定される不感帯域に含まれる波長の赤外線のみが通過するように設定されている。
【0077】
なお、光学フィルタ22Abの赤外線通過帯域幅は、少なくとも使用するカバー20bの不感帯域と同域となるように設定され、さらに使用するカバー20bの状態(材質や厚さ)、人体検知器20の設置環境(設置高さ、温度、天候による環境変化の有無など)、想定される画策行為(例えば、遮光シールの貼着、スプレーによる液体噴射、刷毛による液体塗布、注射器による液体注入など)などの種々の要因を考慮して予め実験などを行うことで、人体検知器20が画策されたときに生じるカバー20bの温度変化に起因する赤外線が検出できるような波長域で設定される。従って、使用するカバー20bによって不感帯域が複数存在する場合は、上記実験に基づき知得される画策行為による温度変化に起因する赤外線の波長域に応じて適切な不感帯域を選択し、その波長域のみを通過するように光学フィルタ22Abを設計すればよい。
【0078】
このように、本例の人体検知器20に具備される画策検知部22は、
図1(b)に示すように、設定した不感帯域(図例では、不感帯域を3.3μm〜3.8μmに設定)と同域の波長の赤外線(図中の実線波形)のみを通過させる光学フィルタ22Abを、画策検出用素子22Aaの赤外線検出面を覆うように設けているため、監視領域内に人体が侵入したときの赤外線は検出されず、カバー20bに画策されたときに生じるカバー20bの温度変化に起因する赤外線のみを検出することができるため、画策行為を確実に検出することができる。
【0079】
画策判定部22Bは、画策検知用赤外線受光部22Aの画策検出用素子22Aaに入力される赤外線受光量に応じて発生する受光信号と、予め実験で定めた閾値(画策判定用閾値)とを比較し画策の有無を判定している。
【0080】
詳述すると、画策判定部22Bは、例えば
図6に示すように、増幅器22Ba、比較器22Bb,22Bc、論理和(オア)回路22Bdを備えている。増幅器22Baには画策検出用素子22Aaの受光信号が入力され、比較器22Bbには増幅器22Baの出力と閾値Vref2+が入力され、比較器22Bcには増幅器22Baの出力と閾値Vref2−が入力される。
【0081】
すなわち、画策判定部22Bには、予め算出されたカバー20bの温度変化の有無を判定するために適当な閾値として、上限閾値Vref2+と下限閾値Vref2−がそれぞれ設定入力されている。そして、増幅器22Baにて増幅された画策検出用素子22Aaからの受光信号が、画策判定時間T2以内に上記閾値Vref2+又はVref2−を所定回数(1回以上)超えたときカバー20bの画策有りと判定し、そうでないときにカバー20bの画策変化無しと判定する。そして、画策有りを判定すると、画策検知信号を制御部23に出力している。
【0082】
なお、画策判定時間T2は、画策検出用素子22Aaから受光信号を入力したときの入力タイミングをトリガとして制御部23により計時が開始され、所定時間計時するリセットされる。
【0083】
以上のように、本例の人体検知器20では、
図7(a)に示すように、監視領域内に設定した赤外線受光ゾーンE1から受光した人体の移動に伴う赤外線は、カバー20bを透過して人体検知用赤外線受光部21Aで受光されるが、画策検知用赤外線受光部22Aには光学フィルタ22Abが設けられているためカバー20bを透過する赤外線が受光されることはない。
【0084】
一方、
図7(b)に示すように、画策検知用赤外線受光部22Aは、スプレーなどによるカバー20bの画策行為によって生じた温度変化に起因する赤外線のうち、カバー20bの不感帯域と同じ波長域の赤外線のみが検出されるように画策検出用素子22Aaの赤外線検出面に光学フィルタ22Abが設けられているため、不感帯域以外の波長域の赤外線は検出されることがない。よって、人体から放射される赤外線を画策行為として誤検知することがなく、画策行為による温度変化のみを検出することができる。
【0085】
制御部23は、例えばCPU(Central Processing Unit )やROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)又はこれらの機能を具備するMPU(Micro-Processing Unit )等のプロセッサで構成され、人体判定部21Bからの人体検知信号や、画策判定部22Bからの画策検知信号に基づいて出力部24から出力先に対する異常信号(人体検知に伴う異常信号、画策検知に伴う異常信号)の出力制御をしている。
【0086】
また、制御部23は、タイマーなどの計時手段23aを備えており、人体検知処理時には人体判定時間T1の計時処理(計時開始処理や計時時間リセット処理)、画策検知処理時は画策判定時間T2の計時処理(計時開始処理や計時時間リセット処理)を行う。そして、制御部23は、人体判定時間T1又は画策判定時間T2を計時後、出力部24を介して出力先に所定の異常信号を出力する。
【0087】
出力部24は、人体検知の有無や画策行為の有無を示す異常信号を、制御部23の制御により出力先に出力する。
【0088】
異常信号の出力先としては、例えばブザーなどの鳴動機器、LEDなどの表示機器、監視領域を監視する警備会社のPC(personal computer )などがあり、これらに対して異常を示す異常信号を出力する。これにより、出力先となる各機器では、入力した異常信号に基づき、所定の警報動作(鳴動処理、点灯/点滅処理、表示画面における文字表示処理など)により異常発生を通知する。
【0089】
なお、出力先となる鳴動機器や表示機器を人体検知器20に具備させ、人体検知や画策検知したときに人体検知器20自身が警報動作するような構成としてもよい。
【0090】
電源部25は、一般的な商用電源ユニット、ボタン電池や乾電池(一次電池、二次電池を問わず)などの各種電池が着脱交換可能な電源ユニット若しくは光起電力効果を利用して太陽光や照明光などの光エネルギーを直接電力に変換する光電池モジュールの何れかで構成され、人体検知器20を構成する各部の駆動電源を適宜供給している。
【0091】
<2−2.処理動作について>
次に、上述した人体検知器20の処理動作について、
図8を参照しながら説明する。なお、本例の人体検知器20における処理動作としては、大別して監視領域内に侵入した人体を検知する人体検知処理に関する処理動作と、カバー20bに対する画策行為の有無を検知する画策検知処理に関する処理動作がある。
【0092】
(人体検知に基づく処理動作)
本例の人体検知器20による人体検知処理は、監視領域内に設定した赤外線受光ゾーンE1に人体が侵入すると、人体の移動に伴って赤外線受光ゾーンE1内に温度変化が生じる。そして、この温度変化に起因する赤外線がカバー20bを透過して人体検知用赤外線受光部21Aに受光される。
【0093】
次に、人体検知用赤外線受光部21Aは、赤外線を受光すると、
図8に示すように受光した赤外線の赤外線量に応じた受光信号(図例では5回)を人体判定部21Bに出力する。このとき、制御部23によって人体判定時間T1のカウントが開始される。
【0094】
人体判定部21Bは、入力した受光信号と、予め設定された人体判定用閾値とを比較し、人体検知用赤外線受光部21Aから入力した受光信号が、人体判定時間T1以内に人体判定用閾値を所定回数超えたか否かを判定する。例えば、受信信号が人体判定用閾値を超える回数を3回と設定した場合、
図8の例ではその回数を超えているため、人体有りと判定されることになる。
【0095】
そして、人体判定部21Bは、人体有りと判定したときのみ、人体検知信号を制御部23に出力する。制御部23は、人体検知に伴う異常信号を、出力部24を介して出力先に出力する。
これにより、出力先において監視領域内に人体が侵入したことが通知される。
【0096】
(画策検知に基づく処理動作)
本例の人体検知器20による画策検知処理は、カバー20bに何らかの画策行為がなされると、カバー20bに温度変化が生じる。そして、画策検知用赤外線受光部22Aは、光学フィルタ22Abを介して画策検出ゾーンE2内における温度変化に起因する赤外線のうち、不感帯域と同域の波長の赤外線のみをカバー20bの裏面から受光する。
【0097】
次に、画策検知用赤外線受光部22Aは、赤外線を受光すると、
図8に示すように受光した赤外線の赤外線量に応じた受光信号(図例では2回)を画策判定部22Bに出力する。このとき、制御部23によって画策判定時間T2のカウントが開始される。
【0098】
画策判定部22Bは、入力した受光信号と、予め設定され画策判定用閾値とを比較し、画策検知用赤外線受光部22Aから入力した受光信号が、画策判定時間T2以内に画策判定用閾値を所定回数超えたか否かを判定する。例えば、受信信号が画策判定用閾値を超える回数を2回と設定した場合、
図8の例ではその回数を超えているため、画策有りと判定されることになる。
【0099】
そして、画策判定部22Bは、画策有りと判定したときのみ、画策検知信号を制御部23に出力する。制御部23は、画策検知に伴う異常信号を、出力部24を介して出力先に出力する。これにより、出力先においてカバー20bに何らかの画策行為がなされたことが通知される。
【0100】
<2−3.実施形態2の効果>
以上説明したように、上述した人体検知器20は、監視領域内に侵入した人体を検知する人体検知部21と、カバー20bに画策行為がなされたか否かを判断する画策検知部22とを備え、画策検知部22には、カバー20bの不感帯域と同域の波長の赤外線のみを通過させる光学フィルタ22Abが画策検出用素子22Aaの赤外線検出面を覆うように設けられている。
【0101】
これにより、画策検知部22において監視領域内に人体が侵入したときの赤外線は検出されず、カバー20bが画策されたときに生じるカバー20bの温度変化に起因する赤外線のみを検出することができるため、画策行為を確実に検出することができる。