(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の送風機のうちの前記曝気処理手段に気体を供給していた一方の送風機が停止した状態において、前記乾燥手段に対して気体を供給していた他方の送風機を、前記曝気処理手段に気体を供給するように切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の省エネルギー型汚泥処理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、エネルギーの消費の低減のために、汚泥乾燥処理として常温乾燥方式について検討を行っているが、常温乾燥方式に限らず汚泥乾燥処理においては、乾燥させる汚泥に対して多量の空気を連続供給することによって通気乾燥が行われる。また、本発明者の知見によれば、汚泥に対する乾燥性能は空気の湿度に大きく影響され、高い乾燥性能を確保するためには、乾燥に使用する空気の除湿が重要である。
【0006】
図5は、本発明者により検討された常温乾燥方式の乾燥設備100を示すブロック図である。
図5に示すように、常温乾燥方式の乾燥設備100においては、ブロワ101によって常温空気が除湿装置102に供給されて、除湿装置102によって常温空気が除湿される。除湿された空気は乾燥機103に供給される。乾燥機103においては、併設された下水処理設備(図示せず)からコンベア103aによって供給された汚泥が、除湿された常温空気により乾燥され、乾燥汚泥として排出される。一方で、汚泥の乾燥に使用された空気は、排気された後段設備104に供給される。
【0007】
しかしながら、このような常温乾燥方式の設備においては、空気を供給するためのブロワや、空気を除湿するための除湿設備が大型になることにより、次のような問題があった。
【0008】
すなわち、常温乾燥方式の設備においては、含水汚泥を乾燥させるために、含水汚泥に対して空気を多量に供給する必要がある。そのため、大容量のブロワを設置する必要があるとともに、供給する空気を除湿するために大きな動力が必要になる。これにより、大型のブロワなどの気体供給手段を設置するための設置スペースが増加するという問題がある。また、乾燥設備を新たに設置する場合には、初期設備に要するコストが高コスト化する。さらに、乾燥処理に大きな動力を要することから、乾燥処理のランニングコストが増加してしまう。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、乾燥手段に対して乾燥空気を供給するための気体供給手段を予備の気体供給手段と兼用することができ、低コストで空気を乾燥手段に供給することができる省エネルギー型汚泥処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、上記目的を達成するために、本発明に係る省エネルギー型汚泥処理システムにおいては、有機性排水に対して気体を曝気して処理を行う曝気処理手段と、曝気処理手段に気体を供給可能に構成された気体供給手段と、曝気処理手段における処理によって生じた有機性廃棄物に対して乾燥処理を行う乾燥手段と、を備える省エネルギー型汚泥処理システムにおいて、気体供給手段が複数の送風機からなり、複数の送風機のうちの少なくとも1つの送風機が、曝気処理手段と乾燥手段とに対して気体を供給可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る省エネルギー型汚泥処理システムは、上記の発明において、複数の送風機のうちの曝気処理手段に気体を供給していた一方の送風機が停止した状態において、乾燥手段に対して気体を供給していた他方の送風機を、曝気処理手段に気体を供給するように切り替え可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る省エネルギー型汚泥処理システムは、上記の発明において、複数の送風機のうちの乾燥手段に気体を供給する送風機から乾燥手段に至る配管に、送風機から送出された気体の圧力を、送風機の側に対して乾燥手段の側において低減させる圧力変更手段が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る省エネルギー型汚泥処理システムは、上記の発明において、曝気処理手段に気体を供給している送風機から送出する気体の熱量を、乾燥手段に気体を供給している送風機から送出する気体に伝熱させる熱交換手段をさらに備えることを特徴とする。また、この構成において、熱交換手段は、さらに前記送風機の駆動によって生じる熱量を、前記乾燥手段に気体を供給している送風機から送出された気体に伝熱させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る省エネルギー型汚泥処理システムによれば、乾燥手段に対して乾燥空気を供給するための気体供給手段を予備の気体供給手段と兼用することができ、低コストで空気を乾燥手段に供給することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
【0017】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態による省エネルギー型汚泥処理システムについて説明する。
図1は、省エネルギー型汚泥処理システムである汚泥処理システム1において、主にブロワおよび乾燥処理システムの構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、この第1の実施形態による汚泥処理システム1は、メイン曝気ブロワ11、予備曝気ブロワ12、減圧器13、熱交換器14、排水処理設備の曝気槽15、後段排水処理設備16、コンベア17aを有する乾燥機17、および後段設備18を備える。
【0019】
メイン曝気ブロワ11および予備曝気ブロワ12は、外部から吸引した気体を加圧して、所定の設備や装置に供給する気体供給手段である。メイン曝気ブロワ11および予備曝気ブロワ12は、配管19を通じて、減圧器13、熱交換器14、曝気槽15および乾燥機17に、空気などの気体を供給可能に構成される。また、配管19における空気の流動方向に沿った、減圧器13または熱交換器14の上流側においては、メイン曝気ブロワ11の下流側に開閉弁20a,20bが設けられているとともに、予備曝気ブロワ12の下流側に開閉弁20c,20dが設けられている。
【0020】
メイン曝気ブロワ11は、具体的に外部から取り入れた空気を160〜170kPa程度の圧力まで加圧する大型ブロワである。ここで、メイン曝気ブロワ11による空気の加圧によって、断熱圧縮が生じるため、空気の温度は例えば70〜80℃程度まで上昇される。この第1の実施形態においてメイン曝気ブロワ11は、主に、例えば生物処理を行う好気槽などの曝気槽15に空気を供給するための送風機である。
【0021】
他方、予備曝気ブロワ12は、汚泥処理システム1においてメイン曝気ブロワ11の予備のために設けられる大型ブロワであり、メイン曝気ブロワ11とほぼ同様の構成を有する。具体的に、予備曝気ブロワ12は、外部から取り入れた空気に対して加圧を行って、空気の体積を減少させる。そして、予備曝気ブロワ12は、圧縮した空気を曝気槽15や乾燥機17などの装置や設備に供給可能に構成されている。また、曝気処理は、汚泥処理システムを含む下水処理における基本的処理であることから、予備曝気ブロワ12は多くの下水処理設備に既設されている。この第1の実施形態において、予備曝気ブロワ12は、主に、有機性廃棄物としての例えば含水汚泥を乾燥させるための乾燥機17に、空気を供給するための送風機である。
【0022】
圧力変更手段としての減圧器13は、配管19内における空気の圧力を、空気の流れに沿って上流側から下流側に低下させる圧力調整器から構成される。
図2は、この第1の実施形態による減圧器13の構成を示す略線図である。また、
図3は、飽和水蒸気量の圧力依存性、すなわち1m
3の空気に含まれる水蒸気量の圧力依存性を空気の温度ごとに示すグラフである。
【0023】
図2に示すように、第1の実施形態による減圧器13は、口径変換器13aから構成される。口径変換器13aは、配管19において、空気の流れ方向に沿った上流側の配管19aの口径φ
aに対して、下流側の配管19bの口径φ
bを増加させる構成を有する。このように空気の流れに沿って配管19の口径を大きくすることによって、口径変換器13aの上流側の配管19a内の空気の圧力p
aに対して、配管19b内の空気の圧力p
bを低下させることができる。すなわち、配管19aの口径φ
aに対する配管19bの口径φ
bの比(φ
b/φ
a)に応じて、減圧によって温度が変化しないと仮定すると、圧力p
aに対する圧力p
bとの圧力比ΔP(=p
b/p
a)は、(1)式に示すようになる。
【数1】
【0024】
したがって、この第1の実施形態において、(1)式に基づいて、配管19a,19bの口径比(φ
b/φ
a)を所定値に設定することにより、圧力比ΔPが所望の圧力比になるように空気を減圧できる。例えば、メイン曝気ブロワ11や予備曝気ブロワ12から送出された空気の圧力が160〜170kPa程度である場合、配管19aの口径φ
aに対する配管19bの口径φ
bの比(φ
b/φ
a)を、1.14〜1.28程度にする。これによって、減圧器13の下流側の配管19bの圧力を、103〜130kPa程度にまで減圧できる。
【0025】
また、
図3に示すように、体積が1m
3の空気に含まれる水蒸気量の上限(飽和水蒸気量)は、圧力が増加するのに伴って単調減少する。なお、
図3において、空気の温度が70℃より高くなった場合には、飽和水蒸気量と圧力との関係を示す曲線は飽和水蒸気量の増加する側にシフトする。
図3に示す関係から、配管19a内の圧力p
aが配管19b内の圧力p
bにまで低下すると、配管19b内の空気の飽和水蒸気量を増加できる。すなわち、配管19a内の空気の温度と配管19b内の空気の温度が変化しないと仮定すると、配管19内の圧力の低下に伴って単位体積(1m
3)当たりの飽和水蒸気量が増加する。これにより、配管19a内の空気が口径変換器13aを通過して配管19bに流入すると、飽和水蒸気量が増加する。一方、配管19a,19bを通過する水分量は変わらないため、飽和水蒸気量に対する水分量の比、すなわち湿度が低下する。これにより、減圧器13(口径変換器13a)による除湿効果が得られる。
【0026】
ここで、減圧によって飽和水蒸気量が増加する現象について、例を挙げて説明する。この例においては、
図2に示す口径変換器13aの上流側(ブロワ側)の配管19aの口径φ
aを15mm(15A)、下流側(乾燥機側)の配管19bの口径φ
bを30mm(30A)とする。そして、配管19a内の空気の温度が70℃程度で、配管19a内の空気の圧力p
aがゲージ圧で例えば10kgf/cm
2・Gであった場合、
図3から飽和水蒸気量は例えば17.5g/m
3程度になる。この空気が口径変換器13aを通過することで、配管19b内において圧力p
bはゲージ圧で例えば((10+1)×(15/30)
2-1=)1.7kgf/cm
2・G程度にまで低下する。この際、空気の温度が70℃で変化しないとすると、飽和水蒸気量は例えば77g/m
3程度にまで増加する。このように、空気を減圧することによって、その飽和水蒸気量は大きく増加する。
【0027】
さて、気体の温度が上昇すると、単位体積での圧力は単調増加する。換言すると、気体の圧力の減少に伴って、温度は単調減少に低下する。そして、空気が配管19aから口径変換器13aを通じて配管19bに流動する場合、空気の圧力は、配管19a,19bにおける口径比(φ
b/φ
a)に応じて低下するため、空気の温度も低下する。さらに、
図3に示すように、飽和水蒸気量は空気の温度の低下に伴って減少する。このようにして、空気が配管19aから口径変換器13aを通過して配管19bに流れる場合、空気の圧力が低下しつつ温度も低下する。
【0028】
また、上述したメイン曝気ブロワ11や予備曝気ブロワ12による空気の圧縮から、減圧器13による空気の減圧までの一連の処理によって、空気の除湿、いわゆる圧縮除湿が行われる。この圧縮除湿について、詳細に説明する。
【0029】
圧縮除湿においては、まず、メイン曝気ブロワ11や予備曝気ブロワ12によって大気圧の空気を加圧して圧縮する。これにより、相対湿度が増加するため、飽和水蒸気量を超えた水蒸気は凝縮水として排出される。そして、後段の減圧器13によって圧縮された空気を減圧させて膨張させると、大気圧の空気の相対湿度を低減できる。換言すると、メイン曝気ブロワ11や予備曝気ブロワ12により圧縮された空気を減圧することで飽和可能な水分量を増加させる。
【0030】
具体的に、温度が20℃で湿度が60%の大気圧の空気を例にする。この場合、飽和水蒸気圧E(t)(hPa)は、テテンス(Tetens)の近似式((2)式)より、23.4hPaとなる。また、飽和水蒸気量a(t)(g/m
3)は、以下の(3)式より温度に依存して、17g/m
3となる。
【数2】
【数3】
そのため、温度が20℃で相対湿度が60%の空気の場合、単位体積当たり10.2g/m
3の水蒸気が含まれていることになる。したがって、飽和水蒸気量に対して6.8g/m
3の差がある。
【0031】
そして、減圧器13による減圧処理を等温変化で行った場合、ボイルの法則により、PV=一定(P:圧力、V:体積)が成立する。すなわち、曝気ブロワにより加圧された空気は、加圧圧縮されて一時的に体積が小さくなり、減圧器13を通過して、配管19の単位長さ当たりの体積が大きくなることによって、減圧膨張されて体積が大きくなる。ここで、上述したように、飽和水蒸気量は温度に依存するため、等温変化の場合において飽和水蒸気量は変化しない。
【0032】
具体的な例として、上述した大気圧の空気の体積を50m
3とした場合、飽和水蒸気量は(17×50=)850g、含有している水蒸気量(含有水蒸気量)は510gとなる。この空気を、メイン曝気ブロワ11や予備曝気ブロワ12によって加圧圧縮して、体積を例えば25m
3にする。この圧縮によって飽和水蒸気量の基準値および含有水蒸気量は変化しないので、飽和水蒸気量は(17×25=)425gとなる一方、含有水蒸気量は510gのままである。この時点で、含有水蒸気量は飽和水蒸気量を超えているため、飽和水蒸気量を超えた分の(510−425=)85gの水蒸気が凝縮水(ドレン水)として排出される。凝縮水を排出した後、圧縮された空気を減圧膨張させて、その体積を50m
3に戻すと、含有水蒸気量が425gである一方、飽和水蒸気量が850gとなることから、相対湿度は50%となる。以上のようにして、除湿効果が得られる。
【0033】
また、
図1に示すように、熱交換手段としての熱交換器14は、メイン曝気ブロワ11から曝気槽15に供給される空気の熱量を、減圧器13を通過する際の減圧によって温度が低下した空気に伝熱させる。なお、必要に応じてさらに、メイン曝気ブロワ11や予備曝気ブロワ12が駆動した際に発生する熱量を、空気に伝熱させても良い。この構成によって、熱交換器14における熱交換効率をより一層向上させることができる。
【0034】
具体的に、メイン曝気ブロワ11から曝気槽15に供給される空気の温度が例えば70〜80℃である場合、減圧器13を通過した40℃程度の空気は、60〜70℃程度にまで加熱される。なお、空気の温度の上昇によって圧力も若干増加するが、配管19aの口径φ
aに比して配管19bの口径φ
bが大きくなって配管19における単位長さ当たりの配管19内の体積が大きくなっていることから、温度の上昇に伴う圧力の増加は大きくない。そのため、温度の上昇に伴って、
図3に示すように飽和水蒸気量が増加する。具体的には、上述した例の場合、例えば配管19b内の空気の温度が60℃であれば、圧力は((1.7+1)×(333/313)-1≒)1.9kgf/cm
2・G程度になるため、飽和水蒸気量は例えば43g/m
3程度にまで増加する。そして、加熱されて飽和水蒸気量が増加した空気は、乾燥機17に供給される。
【0035】
乾燥手段としての乾燥機17は、例えばロータリキルンや流動床乾燥機などから構成される。乾燥機17には、外部からコンベア17aによって含水汚泥が搬入される。また、乾燥機17には、熱交換器14によって加熱された例えば60〜70℃の温度の空気が乾燥空気として供給される。これにより、温度が比較的高く、かつ飽和水蒸気量が増加された空気が乾燥機17に供給されることになるので、汚泥の乾燥処理を行う乾燥機17の乾燥能力を向上できる。さらに、乾燥機17に供給された空気は、減圧器13によって減圧されているため、臭気の拡散を防止するために乾燥機17の内部を大気圧より低い圧力(負圧)にした状態を維持できる。
【0036】
一方、メイン曝気ブロワ11から熱交換器14に供給された空気の温度は、熱交換器14において例えば70〜80℃から40℃程度にまで低下する。この熱交換器14によって温度が低下された空気は、曝気槽15に供給される。
【0037】
曝気処理手段としての曝気槽15は、例えば従来公知の生物処理等を行う好気槽であり、供給された空気は生物処理のために活性汚泥などに曝気される。この曝気を効率良く行うために、メイン曝気ブロワ11および予備曝気ブロワ12においては、空気を加圧して高圧の空気を曝気槽15に供給可能に構成されている。曝気槽15の後段側に設けられた後段排水処理設備16は、曝気槽15の後段に従来設けられる例えば固液分離槽などの公知の排水処理設備である。
【0038】
また、後段設備18は、乾燥機17から排出される空気を供給可能な、従来公知の汚泥処理設備である。具体的には、後段設備18としては、集塵機や、脱臭機等の排ガス処理系設備などを挙げることができる。なお、乾燥機17から排出された空気は、曝気槽15に供給しても良く、さらには大気開放させても良い。
【0039】
以上のように構成された汚泥処理システム1においては、メイン曝気ブロワ11から送出される空気を曝気槽15に供給し、予備曝気ブロワ12から送出される空気を乾燥機17に供給している。しかしながら、配管19における空気の流路を切り替えることにより、これらのメイン曝気ブロワ11と予備曝気ブロワ12とを、曝気槽15に供給する経路と乾燥機17に供給する経路とを相互に切り替えて使用することができる。そして、この空気の流路における相互の切り替えは、開閉弁20a〜20dの開閉によって行われる。
【0040】
すなわち、メイン曝気ブロワ11から送出される空気を曝気槽15に供給するとともに、予備曝気ブロワ12から送出される空気を乾燥機17に供給する場合、開閉弁20a,20cを閉状態にするとともに、開閉弁20b,20dを開状態にする。これにより、メイン曝気ブロワ11から送出された空気は、開閉弁20bを通じて熱交換器14および曝気槽15に順次供給される。また、予備曝気ブロワ12から送出された空気は、開閉弁20dを通じて減圧器13、熱交換器14、および乾燥機17に順次供給される。
【0041】
他方、メイン曝気ブロワ11から送出される空気を乾燥機17に供給するとともに、予備曝気ブロワ12から送出される空気を曝気槽15に供給する場合、開閉弁20b,20dを閉状態にするとともに、開閉弁20a,20cを開状態にする。これにより、メイン曝気ブロワ11から送出された空気は、開閉弁20aを通じて減圧器13、熱交換器14、および乾燥機17に順次供給される。また、予備曝気ブロワ12から送出された空気は、開閉弁20cを通じて熱交換器14および曝気槽15に順次供給される。なお、これらの開閉弁20a〜20dの開閉制御は、作業者が手動で行っても、例えばコンピュータなどから構成される制御部(図示せず)により行っても良い。
【0042】
以上説明したこの第1の実施形態によれば、曝気槽15に曝気に用いる空気を供給するために空気を加圧して送出可能なメイン曝気ブロワ11および予備曝気ブロワ12の少なくとも一方を用いて、乾燥機17に空気を供給している。これにより、新規に乾燥機17を設置した場合においても、乾燥空気を供給するための乾燥機17専用のブロワを別途新たに設置することなく、既存の曝気用ブロワを用いて乾燥機17に空気を供給することができる。したがって、乾燥機17用のブロワを設置するスペースを削減できるので、乾燥設備の省スペース化やコンパクト化を図ることができ、さらに乾燥処理におけるランニングコストを低減することが可能となる。また、減圧器13によって、メイン曝気ブロワ11または予備曝気ブロワ12から送出された高圧の空気を減圧できるので、乾燥機17に供給する空気の飽和水蒸気量を増加でき、空気の除湿処理を行うことができるので、除湿処理によるランニングコストを削減することができる。
【0043】
また、メイン曝気ブロワ11や予備曝気ブロワ12などの曝気ブロワは、曝気槽15における深い水深からの曝気処理に対応するため、大容量で高圧力の空気を送出可能に構成され、多くの下水処理場に設置されている。このような曝気用ブロワは、吐出圧が高いため、空気が断熱圧縮され温度が上昇する。この第1の実施形態においては、このようなメイン曝気ブロワ11または予備曝気ブロワ12によって断熱圧縮されて温度が上昇した空気を用いて、減圧器13によって温度が低下した空気を加熱し、この加熱された空気を乾燥機17における乾燥処理に用いていることにより、メイン曝気ブロワ11または予備曝気ブロワ12において空気を加圧するために消費したエネルギーを、乾燥機17における乾燥処理に利用することができ、乾燥性能をさらに向上できる。
【0044】
また、メイン曝気ブロワ11および予備曝気ブロワ12は、下水処理設備における根幹的施設であるため、ほとんど全ての下水処理施設に設置されている。一方、乾燥機17による乾燥処理は、時間を限定した運転、すなわち間欠的な稼働停止が可能である。これにより、下水処理に影響を与えることなく、通常使用されない予備曝気ブロワ12を有効利用できる。また、乾燥機17に供給される空気の温度が、例えば60〜70℃程度であることから乾燥機17の内部を120℃以下の比較的低温にできるため、乾燥処理中に乾燥機17に空気を供給している、メイン曝気ブロワ11または予備曝気ブロワ12がたとえ停止したとしても大きな問題は生じない。そのため、メイン曝気ブロワ11の機能低下などの時には、予備曝気ブロワ12からの空気を曝気槽15に供給して、乾燥機17への空気の供給を中断させることも可能である。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態による省エネルギー型汚泥処理システムである汚泥処理システム2について説明する。
図4は、この第2の実施形態による汚泥処理システム2における曝気ブロワの切り替え部分を示すブロック図である。
【0046】
図4に示すように、この第2の実施形態による汚泥処理システム2においては、気体供給手段として、第1曝気ブロワ21、第2曝気ブロワ22、および第3曝気ブロワ23の、3台のブロワが送風機として設置されている。また、これらの第1曝気ブロワ21、第2曝気ブロワ22、および第3曝気ブロワ23から、曝気槽15への空気の流路と乾燥機17への空気の流路とを切り替えるための、開閉弁24a,24b,24c,24d,24e,24fが設けられている。また、第1の実施形態と同様の減圧器13、熱交換器14、曝気槽15、および乾燥機17が設けられている。
【0047】
第1曝気ブロワ21、第2曝気ブロワ22、および第3曝気ブロワ23はそれぞれ、第1の実施形態によるメイン曝気ブロワ11や予備曝気ブロワ12と同様の構成である。そして、第1曝気ブロワ21に対して空気の流動方向に沿った下流側に開閉弁24a、24bが設けられている。開閉弁24aを開状態、開閉弁24bを閉状態にすることによって、第1曝気ブロワ21から送出される空気が熱交換器14を通じて曝気槽15に供給される。他方、開閉弁24aを閉状態、開閉弁24bを開状態にすることによって、第1曝気ブロワ21から送出される空気が減圧器13および熱交換器14を通じて、乾燥機17に供給される。なお、第1曝気ブロワ21を停止状態にする場合、開閉弁24a,24bをともに閉状態にする。
【0048】
この第1曝気ブロワ21におけると同様にして、第2曝気ブロワ22においては、開閉弁24c,24dの開閉によって、曝気槽15への空気の供給と乾燥機17への空気の供給と停止状態とが相互に切り替えられる。また、第3曝気ブロワ23においても、第1曝気ブロワ21の場合と同様にして、開閉弁24e,24fの開閉によって、曝気槽15への空気の供給と乾燥機17への空気の供給と停止状態とが相互に切り替えられる。なお、この第2の実施形態による汚泥処理システム2において、主として曝気槽15に空気を供給するブロワに対して、複数、具体的には2台のブロワが予備として設置されている。しかしながら、実際には、ブロワの1台当たりの負荷を分散させるために、これらの3台の第1曝気ブロワ21、第2曝気ブロワ22、および第3曝気ブロワ23は、定期的に切替えられ、空気の供給経路も同様に変更される。すなわち、第1曝気ブロワ21、第2曝気ブロワ22、および第3曝気ブロワ23はそれぞれ、曝気ブロワと停止ブロワと乾燥ブロワとの3種類の役割を果たし、これらのブロワの役割が定期的に切り替えられる。その他の構成は第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0049】
この第2の実施形態によれば、ブロワを3台使用した場合においても、既存のブロワから送出される空気を乾燥機17に供給可能に構成していることにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いても良い。
【0051】
上述の第1の実施形態においては、圧力変更手段としての減圧器13を口径変換器13aから構成しているが、減圧器13を、流入する空気の一部を外部に放出可能に構成された分岐配管から構成しても良い。減圧器13を分岐配管から構成した場合、分岐配管の上流側から流入された空気の一部が外部に放出されることにより、分岐配管の下流側における空気の圧力が低減される。この場合においては、減圧器13を通過する配管19aから配管19bにおいて断熱膨張が生じないため、空気の温度が低下しないので、熱交換器14を設けない構成も可能になる。また、減圧器13を減圧弁などの圧力調整器から構成することも可能である。
【0052】
また、例えば上述の実施形態において、ブロワの台数を4台以上にすることも可能であり、これらの4台以上のブロワを切り替えて、少なくとも1台のブロワから曝気槽15に空気を供給可能に構成するとともに、残った3台以上のブロワの少なくとも1台のブロワから乾燥機17に空気を供給可能に構成しても良い。