(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記繊維強化樹脂積層シートに対する照明光の入射角を45度とし、前記繊維強化樹脂積層シートの観察角度を0度(前記繊維強化樹脂積層シートに対し鉛直方向)とし、前記繊維強化樹脂積層シートの観察方向が、経糸方向が垂直になるように測定したときと、緯糸方向が垂直になるように測定したときに、前記観察視野内で前記2方向で測定したときの前記色差が変化する請求項1に記載の繊維強化樹脂積層シート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の繊維強化樹脂積層シートは、第1の織物層の表面に第1の樹脂層が積層された構造である。第1の織物層の経糸と緯糸は、高融点ポリマー成分と低融点ポリマー成分を含む複合繊維糸で構成されている。これにより、第1の樹脂層との融着一体性に優れる。また、織物の経糸と緯糸の色調は異なる。さらに、第1の樹脂層は無色透明又は無彩色透明である。無彩色透明の場合は、例えばグレー色で透明である。透明の度合いは第1の樹脂層の外側から第1の織物層の織柄が見える程度であればよい。これにより、立体感があり、織柄の外観が良好で高級感を出せる。本発明の繊維強化樹脂積層シートは、単に積層シートということもある。
【0010】
本発明の繊維強化樹脂積層シートは、繊維強化樹脂積層シートに対する照明光の入射角を45度とし、前記繊維強化樹脂積層シートの観察角度を0度(前記繊維強化樹脂積層シートに対し鉛直方向)としたときに、観察視野内で経糸と緯糸とに色差が存在するのが好ましい。例えば、観察視野内で経糸の明度が高く緯糸の明度が低い場合には、2色の間に色差が存在する。さらに観察方向によって色差の大きさが異なるのが好ましい。例えば、(繊維が綾織の場合には、)観察視野内で明度の高い色の糸(例えば経糸)が垂直方向になり、明度の低い色の糸(例えば緯糸)が水平方向になるように設置して観察した時の2色の色差と、観察視野内で明度の低い色の糸(例えば緯糸)が垂直方向になり、明度の高い色(例えば経糸)の糸が水平方向になるように設置して観察した時の2色の色差とが異なっても良い。すなわち、観察角度や光の当たる角度によりそれぞれの色の色調が変化しても良い。
【0011】
前記繊維強化樹脂積層シートは、(繊維が綾織りの場合には、)観察視野内で経糸と緯糸がそれぞれ垂直方向に長手となるようにシートの観察方向を変えて観察した時の、観察視野内で明度の高い糸の色と明度の低い糸の色の色差ΔE
*が5〜25であるのが好ましく、さらに好ましくは5〜23である。前記の範囲であれば、さらに織柄の外観が良好で高級感を出せる。なお、ΔE
*はJIS Z 8730:2009に準じて、国際照明委員会の規定するCIE色差式を用いてL
*値、a
*値、及びb
*値を求め、
ΔE
*=[(ΔL
*)
2 +(Δa
*)
2+(Δb
*)
2]
1/2,(CIE1976L
*a
*b
*式)
(ここで、ΔL
*=L
*1−L
*2、Δa
*=a
*1−a
*2、Δb
*=b
*1−b
*2である。)
の式によって算出する。
なお、L
*1とL
*2 a
*1とa
*2、b
*1とb
*2 のそれぞれの大小関係は、ΔE
*の計算時に差の二乗を使用するため、大小関係がどちらになっても結果に影響は出ない。
【0012】
第1の織物層の経糸と緯糸は、海島型又は芯鞘型複合繊維であり、島成分又は芯成分がポリプロピレン、海成分又は鞘成分が前記島成分又は芯成分より低融点のオレフィン系ポリマーからなる複合繊維糸であるのが好ましい。海成分又は鞘成分を構成する低融点のオレフィン系ポリマーの接着性又は溶着性は良好なため、第1の織物層と第1の樹脂層との強固な一体化が可能となり、層間剥離がなく、軽量であり、曲げに対する物理的強度も高いものとなる。
【0013】
前記第1の織物層の経糸と緯糸は、いずれも扁平糸又はスリットヤーンであるのが好ましい。これにより明瞭な織柄を出せる。同様な理由から、前記第1の織物層の経糸と緯糸は、いずれも無彩色であるのが好ましい。
【0014】
一例として、第1の織物の経糸と緯糸の一方の糸はグレー色に原着され、他方の糸は白色であることにより、立体感があり織柄のコントラストが目立つ繊維強化樹脂積層シートが作成できる。別な例として、第1の織物の経糸と緯糸の一方の糸はグレー色に原着され、他方の糸は黒色に原着されている。これにより、立体感があり織柄の高級感がある繊維強化樹脂積層シートが作成できる。
【0015】
前記グレー色に原着されている糸は、島成分又は芯成分にグレー色の着色剤が添加されていることが好ましい。これにより、第1の織物層と第1の樹脂層とを例えば融着又は低融点フィルムを介して接着一体化しても、グレー色の島成分又は芯成分がにじみ出ることはなく、鮮明な織柄となる。
【0016】
前記第1の織物層の裏面にはさらに第2の樹脂層が積層されていても良い。これにより繊維強化樹脂積層シートの物理的強度はさらに高くなる。第2の樹脂層はポリプロピレンを主成分とする樹脂が好ましく、シート状又はフィルム状で積層されているのが好ましい。ポリプロピレンを主成分とする樹脂は、実用的に物理的特性を満足し、コストも安い利点がある。前記において主成分とは、樹脂成分全体を100モル%としたとき、プロピレンユニットが50モル%以上をいう。
【0017】
第2の樹脂層はプロピレン-エチレンランダムコポリマー(RPP)であっても良い。RPPはプロピレンユニットが50モル%以上、エチレンユニットが50モル%以下のランダムコポリマーで、融点は135〜150℃であり、一般的に市販されている。RPPは熱融着性に優れる利点がある。コア層の好ましい厚さは0.1〜2mmであり、より好ましくは0.2〜1.5mmである。
【0018】
第2の樹脂層は非発泡ポリプロピレン系シートを使用するのが好ましい。非発泡ポリプロピレン系シートはプレス成形によってもコア層が潰れることはなく、真空成形、熱変形を利用した曲げ加工成形等も容易にできる。
【0019】
前記第2の樹脂層の外側にはさらに第2の織物層が積層されていても良い。この織物層は第1の織物層と同一の織物を使用できる。但し、着色はしなくても良い。
【0020】
前記第1の織物層と第1の樹脂層、前記第1の織物層と第2の樹脂層及び/又は前記第2の樹脂層と第2の織物層は直接接着又は接着層を介して接着されているのが好ましい。接着層は低融点樹脂フィルムを使用して熱ラミネートにより接着するのが好ましい。一例として、接着層は熱融着ポリオレフィン系フィルムを使用するのが好ましい。熱融着ポリオレフィン系フィルムは低密度ポリエチレン(LLDPE)又はRPPであるのが好ましい。LLDPEやRPPは熱加工性、接着性、透明性に優れる。
【0021】
第1及び第2の織物層は島成分又は芯成分がポリプロピレン、海成分又は鞘成分がそれより低融点のポリオレフィン系成分からなる海島型複合繊維又は芯鞘複合繊維を含む糸を使用し、接着層として熱融着ポリオレフィン系フィルムを使用すると、織物層と他の層との加熱加圧接着が可能となり、積層一体化しやすい。
【0022】
第1及び第2の織物層を構成する複合繊維は海島型又は芯鞘型複合繊維が好ましい。島成分又は芯成分はホモポリマーのポリプロピレンであり、海成分又は鞘成分はプロピレン-エチレンランダムコポリマー(RPP)、ポリプロピレンとポリエチレンのブレンド物又はポリエチレン樹脂であるのが好ましい。これによりさらに加熱接着しやすくなる。
【0023】
第1及び第2の織物層は平織、綾織(斜文織)、朱子織、その他の変化織など、どのような組織の織物であっても良い。この中でも綾織(斜文織)は織柄が目立つことから好ましい。織物を構成する糸は、繊度が1000〜3000deci texのモノフィラメントが好ましい。織物の単位面積当たりの重量(目付)は50〜500g/m
2の範囲が好ましい。
【0024】
本発明の第1の樹脂層は、外部から織物層が見える程度の透明性があるのが好ましい。外部から織物層が見えると高強度に見え、美装状態を高く保つことができる。この意味から、光学的カバー層ということもできる。第1の樹脂層は、一例としてポリプロピレン系樹脂シート透明層と透明又は無彩色層とポリプロピレン系樹脂シート保護層で構成するのが好ましい。前記ポリプロピレン系樹脂シート透明層は比較的厚いシートが好ましく、例えば100〜300μm、好ましくは150〜250μmの厚さにする。このようにすると、立体感と厚み感を発揮できる。透明又は無彩色層を設ける場合は、好ましい厚さは0.1〜2μm、さらに好ましくは0.2〜1μmである。無彩色層はグレー色の任意の色調を選択できる。
【0025】
ポリプロピレン系樹脂シート透明層は、ホモポリマータイプポリプロピレン(HPP)とプロピレン−エチレンランダムコポリマー(RPP)のブレンド物又はポリマーアロイであるのが好ましい。また、透明層を100重量%としたとき、ホモポリマータイプポリプロピレン(HPP)とプロピレン−エチレンランダムコポリマー(RPP)が、HPP:RPP=50:50〜90:10の範囲が好ましく、さらに好ましくはHPP:RPP=60:40〜80:20である。前記の範囲であればランダムタイプポリプロピレン(RPP)の非晶質による高い透明性と、ホモポリマータイプポリプロピレン(HPP)の耐摩耗性を保持できる。
【0026】
透明又は無彩色層の上にはプロピレン系樹脂シート保護層を設けるのが好ましい。この透明又は無彩色層は、2軸延伸されたポリプロピレン系樹脂シートが好ましい。2軸延伸ポリプロピレン系樹脂シートは耐摩耗性が高いことから好ましい。2軸延伸ポリプロピレン系樹脂シートの好ましい厚さは5〜50μmであり、さらに好ましくは10〜40μmである。
【0027】
本発明は、第1の織物層の表層に好ましくは接着層を介して第1の樹脂層を積層したことにより、外部から厚みのある透明層の下に織物層が透けて見え、織物のしっかりした美しい織柄がそのまま積層シートの表面に現れる。裏面は好ましくは第2の織物層であり、この織物層に対して射出成形による部品を一体化させると、織物表面は凹凸面となっているため射出成形部品が一体化しやすく、かつ織物層は加熱による変形が無く、ヒケやシワ等の欠点も入りにくい。その結果、光沢や着色等の外観に優れた積層シートとすることができる
。
【0028】
さらに本発明の積層シートは、第1の織物層と第2の樹脂層との間に多軸繊維シートを加えることもできる。多軸繊維シートは倉敷紡績株式会社製、商品名“クラマス”を挙げることができる。一例として多軸繊維の方向は0°/+60°/−60°、1平方メートル当たりの重量(目付け)は350g/m
2であり、トータル繊度1850deci texのPPフィラメントを多数本使用し、ステッチ糸としてポリエチレンテレフタレート糸を使用した多軸繊維シートがある。
【0029】
本発明の繊維強化樹脂積層シートを製造する方法は、一例として、予めポリプロピレン系樹脂シート透明層と透明又は無彩色層とポリプロピレン系樹脂シート保護層を積層一体化しておき、これを第1の樹脂層とする。前記透明層の表面に直接又は接着用フィルムを介在させて第1の織物層を配置して加熱加圧し、次いで冷却する。予めポリプロピレン系樹脂シート透明層と透明又は無彩色層とポリプロピレン系樹脂シート保護層を積層一体化しておくのは、最終の積層処理工程の効率化のためである。
【0030】
別の製造方法としては、上から順番に第1の樹脂層の透明層の表面に直接又は接着用フィルムを介在させて第1の織物層を配置し、前記第1の織物層の裏面に直接又は接着用フィルムを介在させて第2の樹脂層を配置し、第2の樹脂層の下に直接又は接着用フィルムを介在させて第2の織物層を配置し、全体を加熱加圧し、次いで冷却する。
【0031】
加熱加圧工程の雰囲気温度は120〜150℃が好ましく、さらに好ましくは130〜145℃である。加圧力は1MPa程度が好ましい。加熱時間は0.5〜5分間が好ましく、さらに好ましくは1〜4分間である。冷却工程の時間は0.5〜5分間が好ましく、さらに好ましくは1〜4分間である。冷却温度は30程度℃以下になるまでが好ましい。
【0032】
成形後の積層シート全体の厚みは0.5〜5mmが好ましく、さらに好ましくは0.8〜4mmである。特に好ましくは、0.9〜1.6mmの範囲が好ましい。この範囲であれば軽量化ができるとともに外観性が向上する。また、第1の樹脂層と第1及び第2織物層と第2の樹脂層の層厚の関係は、第2の樹脂層>第1の織物層=第2の織物層>第1の樹脂層であるのが好ましい。これにより軽量化ができるとともに外観性が向上する。
【0033】
本発明の製造方法は連続法に限らず、1回ごとの加熱加圧プレスと冷却法によっても製造できる。サンプルを作製したり、小規模に製造する際にはこの方法で十分である。連続的方法は大量生産に好ましい。
【0034】
次に図面を用いて説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を示す。
図1は本発明の一実施態様の積層シート7の模式的断面図である。この積層シート7は第1の織物層1aの表面に接着層2aを介して第1の樹脂層6が積層一体化されている。第1の樹脂層6は、ポリプロピレン系樹脂透明層3と透明又は無彩色層4とポリプロピレン系樹脂保護層5が予め積層一体化されたものである。
【0035】
図2は本発明の一実施態様の積層シート9の模式的断面図である。この積層シート9は第1の織物層1aの表面は前記と同様であるが、裏面には接着層2bを介して第2の樹脂層と、その下側に接着層2cを介して第2の織物層1bが積層一体化されている。
【0036】
図3は本発明の一実施態様における積層シート製造装置10を示す模式的断面図である。この積層シート製造装置10は、原料シートの供給ロール11a〜11gと、加熱加圧領域18と、冷却領域19から構成され、連続的生産が可能である。原料シートは次のように供給する。
(1)供給ロール11aから第1の樹脂層6となるシートを供給する。
(2)供給ロール11bから接着層2aとなる接着用フィルムを供給する。
(3)供給ロール11cから第1の織物層1aとなる織物を供給する。
(4)供給ロール11dから接着層2bとなる接着用フィルムを供給する。
(5)供給ロール11eから第2の樹脂層8となるシートを供給する。
(6)供給ロール11fから接着層2cとなる接着用フィルムを供給する。
(7)供給ロール11gから第2の織物1bとなる織物を供給する。
それぞれを加圧ロール15a,15bで積層する。加圧ロール15a,15b及び20a,20bには金属製加圧板16,17がエンドレス状に組み込まれており、まず加熱加圧領域18で加圧加熱される。次に、冷却領域19では冷却用エアーが矢印aから供給され矢印bから排出されることにより冷却される。効率の良い冷却をする場合は、冷却用エアーに加えて冷却領域19に水冷パイプを配置して冷却する。加圧ロール20a,20bから取り出された積層シート21は所定の長さにカットされる。
【0037】
得られた積層シートは、真空成形、プレス成形、熱変形を利用した曲げ加工成形等が可能であり、成形サイクルが短く、加工コストも安価である。加えて、
図2における第2の織物層1bに対して射出成形により部品を一体化させると、織物表面は凹凸面となっているため射出成形部品が一体化しやすく、かつ織物層は加熱による変形が無く、ヒケやシワ等の欠点も入りにくい。
【0038】
図4Aは本発明の一実施態様で使用する複合繊維糸の断面図、
図4Bは本発明の別の実施態様の複合繊維糸の断面図である。
複合繊維糸22は海島型複合繊維糸であり、島成分23はホモポリマーのポリプロピレンであり、海成分24はポリプロピレンとポリエチレンのブレンド物である。複合繊維糸22はモノフィラメントであることが好ましい。また複合繊維糸は
図4Bのような扁平糸であることが好ましい。
図4Bにおける26はポリプロピレンであり、
図4Bにおける27は26と比べて低融点のポリプロピレンである。モノフィラメント糸でかつ扁平糸であると、織物にしたときに織り目(織柄)を目立たせることができる。複合繊維糸25はスリットヤーンであり、扁平糸である。
【0039】
図5は本発明の一実施態様の織物組織
図28である。この例は2/2の綾組織であり、経糸29と緯糸30は互いに2織り目ごとに表面と裏面に現れる組織である。織り目(織柄)が目立つことから好ましい組織である。この例では経糸29は白色、緯糸30はグレーである。
【実施例】
【0040】
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0041】
<測色評価>
(1)L
*値、a
*値、及びb
*値
JIS Z 8730:2009に準じて、国際照明委員会の規定するCIE色差式を用いてL
*値、a
*値、及びb
*値を求めた。なお、L
*値は、色の明度を0〜100の値で表し、0に近いほど暗く、100に近いほど明るいことを示している。a
*値は、色の赤緑位置を表し、正の数値は赤寄りの色を、負の数値は緑寄りの色を示している。b
*値は、色の黄青位置を表し、正の数値は黄寄りの色を、負の数値は青寄りの色を示している。
(2)測定機器
測定は倉敷紡績株式会社製 画像色差計 オフライン計測タイプAUTAS IIを用いた。
この画像色差計AUTAS IIは、照射角度45度/受光角度0度の光学系を持ち、柄のある試料であってもその表面を画像として測定してピクセル単位に三刺激値XYZに色分解し、画像中の同じ色調の柄部分ごとに色の平均計測値L
*a
*b
*を出力することができるものである。
本発明の繊維強化樹脂積層シートにおいては、例えば経糸に白、緯糸にグレーを使用しているが、前記画像色差計を使用すると、白部分のみの平均値およびグレー部分のみの平均値を測定、計算で求めることができるので、柄物であっても各色部分の色彩値や部分ごとの色差ΔE
*などを求めることができる。
(3)色差ΔE
*
色差ΔE
*は前記L
*値、a
*値、及びb
*値から、
ΔE
*=[(ΔL
*)
2 +(Δa
*)
2+(Δb
*)
2]
1/2,(CIE1976L
*a
*b
*式)の式によって算出した。
ここで、ΔL
*=L
*1−L
*2、Δa
*=a
*1−a
*2、Δb
*=b
*1−b
*2であり
織物の経糸方向または緯糸方向のいずれかが測定画面内で垂直になるように画像色差計にセットして測定した時の経糸、緯糸の測定データのうち、L
*値の大きなほうの測定データを(1)(L
*1、a
*1、b
*1)とし、L
*値の小さなほうの測定データを(2)(L
*2、a
*2、b
*2)とする。
実施例1、3では、経糸方向が垂直になるように測定し、実施例2、4では緯糸方向が垂直になるように測定している。
なお、L
*1とL
*2 a
*1とa
*2、b
*1とb
*2 のそれぞれの大小関係は、ΔE
*の計算時に差の二乗を使用するため、大小関係がどちらになっても結果に影響は出ない。
<曲げ弾性率と曲げ応力の測定方法>
JIS K7171に準拠した3点曲げ試験で測定した。試験片サイズは幅20mm、長さ50mm、試験速度は1mm/minとした。押さえジグの形状はR5、支点の形状はR2、支点間隔24mmとした。
<光沢及び硬度>
積層シートの光沢は、外観目視により判断した。光沢があるものを「A」、光沢がやや不足しているものを「B」、光沢が無いものを「C」とした。積層シートの硬度は、実用上の硬度十分であるものを「A」、若干硬度が不足するものを「B」とした。なお、織物が表面に来る場合の硬度評価は実施しなかった。
<立体感>
積層シートの立体感は、外観目視により判断した。立体感があるものを「A」、立体感がやや不足しているものを「B」、立体感が無いものを「C」とした。
<織柄の外観評価>
織柄の外観評価は、積層シートの外観を目視により評価した。織柄のコントラストが明確であり高級感のあるものを「A」、織柄のコントラストがやや不足しており高級感がやや欠けるものを「B」、織柄のコントラストが無く高級感もないものを「C」とした。
【0042】
(実施例1〜2)
<織物層>
図2に示す織物層1a,1bとして、島成分が融点160℃のポリプロピレン、海成分がポリプロピレンとポリエチレンのブレンド物(融点110℃)からなる海島構造の複合繊維からなるモノフィラメント糸を使用して織物を製造した。この複合繊維糸の複合割合は、島成分65wt%、海成分35wt%、繊度1850 deci texである。織物は
図5に示す2/2綾織組織とし、単位面積当たりの重量(目付)は190g/m
2であった。この織物の経糸の島成分は白色に原着され、経糸全体としても白色であった。緯糸の海成分はグレー色であった。
<第1の樹脂層>
図2に示す第1の樹脂層6の透明層3として、ホモポリマータイプポリプロピレン(HPP)とプロピレン−エチレンランダムコポリマー(RPP)が、HPP:RPP=75:25のブレンド物又はポリマーアロイのシート(厚み200μm)を使用し、その上に厚み1μmの透明層4と、厚み25μmのホモポリマータイプポリプロピレン(HPP)2軸延伸シート5(透明)を予め積層一体化したものを使用した。第1の樹脂層6は全体しても無色透明であった。
<第2の樹脂層>
図2に示す第2の樹脂層8として市販のホモポリマータイプポリプロピレン(HPP)のシート、融点160℃、厚み500μm、単位面積当たりの重量450g/m
2を使用した。
<接着フィルム>
図2に示す接着層2a,2b,2cとして、市販の低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、融点110℃、厚み30μm、単位面積当たりの重量27g/m
2を使用した。
【0043】
<積層シートの作成>
図3に示すように樹脂層6,8と、織物層1a,1bと、接着フィルム2a,2b,2cを積層し、温度145℃、圧力1Mpa、2分間プレス成形し、その後室温(27℃)まで冷却した。これにより接着フィルムを溶着させて全体を一体化し、積層シートを得た。この積層シートの模式的断面図は
図2に示すとおりである。
【0044】
得られた積層シートの測色評価は表1にまとめて示し、その他の評価は表2にまとめて示す。曲げ弾性率及び曲げ応力のデータはMD(長さ方向)の測定値である。
【0045】
(実施例3〜4)
織物の経糸を黒色、緯糸をグレー色とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0046】
(比較例1〜2)
織物の経糸を白色、緯糸も白色とした以外は実施例1と同様に実施した。経糸と緯糸に同じ色を使っているが、全く同じ色には見えず、織り方と測定光学系に由来する、比較的小さい色差ΔE
*が存在する。しかし、観察方向による色差の変化はほとんどなかった。
【0047】
【表1】
表1における糸の色の後の(1)(2)はそれぞれ、
(1):L
*1 、a
*1 、b
*1 のデータであることを示す
(2):L
*2 、a
*2 、 b
*2 のデータであることを示す
【0048】
【表2】
【0049】
表1〜2から明らかなとおり、本発明の実施例品は曲げ弾性率、曲げ応力、硬度が高く、層間剥離はなく、軽量であり、曲げに対する物理的強度も高く、光沢、立体感、織柄の外観評価も良好な積層シートであった。この積層シートは熱可塑性であり、真空成形、プレス成形、熱変形を利用した曲げ加工成形等に好適で、安価な積層シートであった。さらに、織物層は熱融着ポリオレフィン系フィルムを介してコア層に接着しているため、後に加熱して成形しても織物を構成する繊維の収縮はなく、織物の美しい織柄がそのまま積層シートの表面に現れた。加えて、前記積層シートの片面は織物層であるので、この織物層に対して射出成形によりリブ部品を一体化させると、織物表面は凹凸面となっているため射出成形部品が一体化しやすく、ヒケやシワ等の欠点も入りにくいことが確認できた。
これに対して比較例1〜2は、織物の経糸も緯糸も白色であったため、立体感と織柄の外観評価は低かった。