特許第6482916号(P6482916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JSR株式会社の特許一覧 ▶ JSRライフサイエンス株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482916
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】着色粒子分散液及び着色粒子の保存方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/46 20060101AFI20190304BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20190304BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   C09B67/46 B
   C09B67/20 F
   C09D17/00
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-58211(P2015-58211)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-176021(P2016-176021A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513133022
【氏名又は名称】JSRライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明子
(72)【発明者】
【氏名】小林 邦彦
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−262039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 67/46
C09B 67/20
C09D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油溶性染料を含有する着色粒子と、
前記着色粒子とは別の固形状の前記油溶性染料と
を含むことを特徴とする着色粒子分散液。
【請求項2】
油溶性染料を含有する着色粒子と、前記油溶性染料とを、水系媒体中で接触させる、又は、水系媒体中に分散させることを特徴とする着色粒子の保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色粒子分散液及び着色粒子の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、試料中の被検出物質を抗原抗体反応に基づいて免疫学的に検出するための方法として、イムノクロマトグラフ法が知られている。この方法では、標識抗体として、抗体を感作した着色粒子を用いた場合、標識抗体が判定領域に捕捉されると判定領域の色調が変化する。このような判定領域の色調等の変化を観察することにより、試料中の被検出物質の有無について目視判定を行うことができる。着色粒子としては例えば特許文献1及び2に記載されたものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−81369号公報
【特許文献2】特開平4−363331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イムノクロマトグラフ法に使用される着色粒子は、粒子径が大きいとメンブレンの目詰まりの原因となるため、粒子径は小さく、検出感度を保持した濃色の着色粒子が好ましいとされている。着色粒子は乾燥させた場合には凝集し、着色粒子を用いて標識抗体を作製する場合には、着色粒子を再度液体に分散させる必要が生じるために、着色粒子は通常であれば着色粒子分散液の状態で保存される。
【0005】
しかし、イムノクロマト法において目視判定ができる色調を有する着色粒子は、小粒径化すると染料が粒子から漏出しやすくなり色調が薄くなることが分かった。そのため、小粒径化しても着色粒子の保存安定性を保つことが可能な手段が必要であると考えられる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、着色粒子の着色濃度の低下を抑制することができる着色粒子分散液を提供すること、及び、着色粒子の着色濃度の低下を抑制することができる着色粒子の保存方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
なお、本明細書において、数値範囲を表す「a〜b」等の表記は、a以上、b以下と同義であり、a及びbをその範囲内に含むものとする。
【0008】
〈1〉油溶性染料を含有する着色粒子と、前記着色粒子とは別に前記油溶性染料を含有する染料漏出防止剤と、を含むことを特徴とする着色粒子分散液。
〈2〉前記染料漏出防止剤が固形状であることを特徴とする〈1〉に記載の着色粒子分散液。
【0009】
〈3〉油溶性染料を含有する着色粒子と、前記油溶性染料を含有する染料漏出防止剤とを、水系媒体中で接触させる、又は、水系媒体中に分散させることを特徴とする着色粒子の保存方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、着色粒子の着色濃度の低下を抑制することができるだけでなく、着色粒子から漏出した染料の析出(異常析出)も抑制することができ、着色粒子をその着色濃度の低下を抑制して長期間安定的に保存することができる。このため、イムノクロマト等の用途に好適に使用できる視認性が良い着色粒子を長期間保存することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪着色粒子分散液≫
本発明に係る着色粒子分散液(以下「本発明の分散液」ともいう。)は、油溶性染料を含有する着色粒子と、該着色粒子とは別に前記油溶性染料を含有する染料漏出防止剤とを含むことを特徴とする。このように、本発明の分散液は、着色粒子と染料漏出防止剤とを含むため、前記効果を奏する。
【0012】
<着色粒子>
前記着色粒子は、油溶性染料を含有する粒子である。染料の含有量は限定されないが、好ましくは染料の含有量が着色粒子1g当たり0.05g以上である着色粒子である。
【0013】
本発明の着色粒子のSEM画像を用いた画像解析で測定した個数平均粒子径(Mean Number Diameter)は、所望の用途に応じ、適宜選択すればよいが、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.1〜100μmである。なお、前述のように、イムノクロマトグラフ法等に使用される着色粒子は、粒子径は小さく、検出感度を保持した濃色の着色粒子が好ましいとされているため、本発明の着色粒子をイムノクロマトグラフ法等に使用する場合には、前記個数平均粒子径は、好ましくは100〜1000nmである。本発明によれば、このような粒子径の小さな着色粒子であっても、染料が粒子から漏出し難く、保存安定性に優れる分散液を得ることができる。
前記個数平均粒子径は、次の式により算出される。
個数平均粒子径(MN)=Σ(粒子体積(Ni)×粒子径(di))/Σ(Ni)
【0014】
なお、個数平均粒子径はSEMで撮像した任意の粒子3000個についてその最大径を測定し、前記式により算出したものとする。測定方法は、JIS Z 8827−1の5(画像検出)および6(画像解析)に従い、サンプル粒子数はJIS Z 8827−1附属書A(参考)「平均粒子径の推定に必要なサンプル粒子数に関する研究」に基づいて決定した。
【0015】
着色粒子の粒子径が前記範囲にあると、例えば、該着色粒子をイムノクロマト用途として使用した際に、該粒子が試験紙上を確実に流れ、かつ十分な検出感度を保持できるため好ましい。
【0016】
着色粒子の粒子径の変動係数(CV値)は20%以下であることが好ましい。20%を超えると、該着色粒子を用いて被検出物質の存在を該粒子の色により判別するための粒子(免疫測定用試薬)を調製する際のロット再現性が悪く、測定の再現性が低下することがある。CV値はより好ましくは15%以下である。前記粒子径の変動係数は、次式により算出される。
粒子径の変動係数(CV値)=粒子径の標準偏差/個数平均粒子径
なお、粒子径の標準偏差は、SEM画像を用いた画像解析で測定した値である。
【0017】
前記着色粒子は、表面に抗原(又は抗体)を結合することにより、抗原−抗体反応を利用した酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、ラテックス凝集法、イムノクロマトグラフ法等の生物学的反応を利用した種々の方法に好適に用いることができる。
【0018】
本発明によれば、充分に濃色な着色粒子を、その着色濃度の低下を抑制しながら保存可能である。結果として、該着色粒子を、被検出物質の存在を該粒子の色により判別するための粒子(免疫測定用試薬)として使用した際に、目視判定による検出感度のロットばらつきを抑制することができる。
【0019】
本発明の分散液中の着色粒子の含有量は特に制限されないが、保存安定性に優れる分散液が得られる等の点から、該分散液100質量%に対し、好ましくは0.01〜50質量%であり、より好ましくは0.5〜30質量%である。
【0020】
前記着色粒子は、特許文献1及び2に記載されているように、油溶性染料と粒子とを接触させるなどの従来公知の方法で製造することができる。
【0021】
(油溶性染料)
着色粒子に含まれる油溶性染料としては、水に不溶性でかつ油性有機溶媒に可溶であり、粒子を着色し得るものであればよく、色調、該染料を溶解する油性有機溶媒の種類、粒子の種類などに応じて適宜選択される。このような染料としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、バット染料、アゾイック染料、分散染料、水性染料、反応染料などが挙げられる。本発明では、前記染料として、水に不溶性でかつ油性有機溶媒に可溶である染料を使用することで、着色粒子からの染料の脱落を抑制できる効果がある。
【0022】
前記染料において、25℃における該染料の水に対する溶解度aと、25℃における該染料の油性有機溶媒に対する溶解度bとの比a/bは、好ましくは1/10以下、より好ましくは1/20以下である。この染料は油性有機溶媒への溶解度が高い染料ほど好ましく、具体的にはトルエン100gに対し0.7g以上溶解する染料が好ましい。このように油性有機溶媒に対する溶解度の高い染料を使用することにより、濃色の粒子を得ることができる。しかし、水に対する溶解度より油性有機溶媒に対する溶解度が十分に大きい染料であれば、実用上特に問題はない。
【0023】
前記染料としては、化学構造的には、親水性基を実質的に含まない、具体的には、1分子中に−OH、−COOH、−NH2、−SH、−CONH2などの親水性基を含まない又は1分子中のこれらの親水性基の数が2個以下であるアゾ系染料及びアントラキノン系染料からなる群より選ばれる少なくとも1種を好ましく使用することができる。
具体的にはソルベントレッド、ソルベントブルー、ソルベントイエロー、ソルベントグリーンなどの公知の染料を使用することができる。また、油溶性螢光色素、レーザー色素も前記染料として用いることができる。
【0024】
前記油性有機溶媒としては、トルエン、クロロホルム、ベンゼン、エチルベンゼン、塩化メチレン、キシレン、メチルシクロヘキサン、メチルイソブチルケトン、トリクロルエチレン、クロルベンゼンなどを例示することができ、ビニルトルエン、メチルメタクリレート、ジビニルベンゼン、スチレン、ブチルアクリレートを使用することもできる。
【0025】
(粒子)
前記粒子としては、特に制限されないが、樹脂製粒子が好ましい。該樹脂製粒子としては、従来から好ましいとされているポリマー粒子が挙げられるが、具体的には、例えば、スチレン、スチレンスルホン酸、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレングリコール−ジ−(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸トリブロモフエニル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール−(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、イソプレン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸などの(共)重合体よりなるポリマー粒子を用いることができる。
【0026】
樹脂製粒子としては、カルボキシ基又はスルホン酸(又はその塩の)基を有するポリマー粒子が好ましく、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−イタコン酸共重合体、スチレンスルホン酸(又はその塩)共重合体等からなる粒子が好ましい。これらの粒子は、その表面にカルボキシ基やスルホン酸(又はその塩の)基が存在する傾向にある。樹脂製粒子の表面にスルホン酸(又はその塩の)基が存在すると、該基同士の静電的な反発力により、樹脂製粒子の分散安定性が向上すると考えられる。また、樹脂製粒子表面にカルボキシ基が存在する場合には、分散安定性に寄与する一方で、本発明の着色粒子を標識抗体として用いる場合には、カルボキシ基部分は、該着色粒子と抗体との化学結合部位となり得るため好ましい。
【0027】
樹脂製粒子としては、(a)不飽和カルボン酸単量体などの酸性基を有する単量体0〜10質量%と、(b)単量体(a)と共重合可能なその他の単量体90〜100質量%(ただし(a)+(b)=100質量%)とを乳化重合して得られる共重合体ラテックス粒子であることがより好ましく、さらに、前記単量体(b)として芳香族ビニル単量体を単量体(b)全量の10〜100質量%用いて得られる共重合体ラテックスであることが望ましい。
【0028】
樹脂製粒子を製造するためには、乳化重合法、シード重合法、ソープフリー重合法、懸濁重合法、膨潤重合法などを利用することができる。この際に得られる樹脂製粒子の分子量は、特に制限されず、従来より用いられてきた樹脂製粒子と同程度の粒子であってもよい。
なお、粒径分布が狭くて粒子形状がより真球に近い樹脂製粒子を得るためには、これらの方法で重合した後に、適宜分級などの操作を行うことが好ましい。
【0029】
樹脂製粒子のSEM画像を用いた画像解析で測定した個数平均粒子径は、特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1〜100μmであることがより好ましい。
【0030】
本発明の製造方法で得られる着色粒子を被検出物質の存在を該粒子の色により判別するための粒子(診断薬用着色粒子)として使用する場合、特にクロマトグラフィー用途の場合には、極端に小径な粒子を使用すると、充分な検出感度が得られないことがあるため、個数平均粒子径が100nm〜1000nmの樹脂製粒子が好ましい。
【0031】
<染料漏出防止剤>
本発明の分散液には、前記着色粒子とは別に染料漏出防止剤が含まれる。本発明において、着色粒子とは別の染料漏出防止剤を含む分散液は、例えば、着色粒子の作成に用いた油溶性染料とは別の、新たな油溶性染料を着色粒子と混合する、又は、接触させることで得られる。該染料漏出防止剤は、前記着色粒子中に含まれる油溶性染料と同様の染料を少なくとも含有すれば特に制限されない。このような染料漏出防止剤を用いることで、着色粒子の着色濃度の低下を抑制することができるだけでなく、着色粒子からの染料の異常析出も抑制することができる。
【0032】
本発明では、着色粒子からの染料の異常析出を抑制することができる等の点から、樹脂製粒子と油溶性染料とを用いて着色粒子を作成し、次いで、該着色粒子に保持されなかった油溶性染料を取り除いた後に染料漏出防止剤を添加することが好ましい。
【0033】
前記染料漏出防止剤としては、前記効果がより顕著に表れる分散液を得ることができる等の点から、固形状の染料であることが好ましく、固形状で水系媒体に不溶な油溶性染料であることが好ましく、前記油溶性染料の結晶体または凝集体であることがより好ましい。
【0034】
固形状の染料とは、本発明の分散液中に溶解せずに存在している状態の染料のことを示す。固形状の染料を着色粒子(を含む分散液)に添加することにより、該固形状の染料が着色粒子の表面に吸着する方向に働くため、着色粒子からの油溶性染料の漏出を抑制する効果があり、着色粒子の保存安定性を向上できる。
【0035】
固形状の染料の種類は、色調、粒子の種類などに応じて適宜選択され、特に制限されないが、直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、バット染料、アゾイック染料、分散染料、水性染料、反応染料などが挙げられる。
【0036】
前記染料漏出防止剤中の、着色粒子中に含まれる油溶性染料と同様の染料の量は特に制限されず、前記染料漏出防止剤100質量%に対し、好ましくは3〜100質量%、より好ましくは10〜100質量%である。より着色粒子の着色濃度の低下を抑制することができる等の点から、着色粒子中に含まれる油溶性染料と同様の染料は、染料漏出防止剤の主成分であることが好ましく、具体的には、染料漏出防止剤100質量%に対し、該油溶性染料の量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0037】
本発明の分散液中の染料漏出防止剤の量は、十分に着色粒子からの油溶性染料の漏出を抑制できる等の点から、着色粒子100質量部に対し、好ましくは0.1〜100質量部であり、より好ましくは0.5〜50質量部である。
【0038】
本発明の分散液に含まれる染料漏出防止剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0039】
<分散媒>
本発明の分散液における分散媒としては、着色粒子から染料が漏出することを防ぐため、粒子と油溶性染料とが溶解しない分散媒が好ましく、このような分散媒としては、水系媒体が挙げられる。
前記水系媒体としては、例えば水、各種の緩衝溶液などを挙げることができ、少なくとも50質量%以上を水が占める媒体を指す。
【0040】
本発明の分散液には、分散安定性等の点から、前記着色粒子及び染料漏出防止剤以外の成分が含まれていてもよい。
【0041】
≪着色粒子の保存方法≫
本発明に係る着色粒子の保存方法は、油溶性染料を含有する着色粒子と、前記油溶性染料を含有する染料漏出防止剤とを、水系媒体中で接触させる、又は、水系媒体中に分散させることを特徴とする。このような方法によれば、着色粒子をその着色濃度の低下を抑制して長期間安定的に保存することができる。
この保存方法において、油溶性染料、粒子、着色粒子、染料漏出防止剤及び水系媒体は、前記本発明の分散液で例示したものと同様のものが挙げられ、好ましい例示も同様である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の実施例における「部」は、特に制限のない限り「質量部」を意味する。
【0043】
[実施例1]
(着色粒子の作製)
油溶性染料「KP PLAST Blue BR」(紀和化学工業(株)製:CI Solvent Blue 35)5部をトルエン240部へ分散させて染料分散液を調製した。一方、Sodium Dodecyl Sulfate(以下「SDS」ともいう)2部を水200部に溶解し、これを水系媒体(1%SDS水溶液)としてこれに前記染料分散液を加え、撹拌しながら10分間超音波を照射することにより、染料エマルションを調製した。得られた染料エマルション447部をポリスチレン粒子分散液[固形分30.8質量%、ポリスチレン粒子の平均粒径0.43μm、分散媒:水]324.68部と混合し、撹拌することにより染色処理を行った。
【0044】
この染料エマルションとポリスチレン粒子分散液との混合液から、スチームストリッピング法によりトルエンを除去し、その後、遠心精製法により粒子を沈降させ、上澄み液を除去し、純水を加え再分散させた。この操作(遠心精製と再分散)を上澄みの着色がなくなるまで繰り返した。上澄みの着色がなくなった後、純水を加え全固形分が10体積%となるように調整し、青色に染色された着色粒子1を含む分散液(着色粒子分散液)を得た。
【0045】
着色粒子1を含む分散液の色調L値を測定したのち、着色粒子1を含む分散液に、染料(KP PLAST Blue BR)を水への溶解度以上の濃度になるように0.1g/ml加え、超音波分散させた。その後、70℃の熱をかけて一晩静置した。翌日、遠心精製法により粒子を沈降させ、上澄み液を除去し、純水を加え再分散させた。さらに上澄みの着色がなくなるまで遠心精製と再分散とを繰り返した。洗浄完了後、純水を加え全固形分が10体積%となるように調整し、着色粒子1の再分散液を得た。着色粒子1の再分散液の色調L値を測定した結果を表1に示す。なお、この試験では、着色粒子の着色濃度の低下を長期間抑制することができるか否かを確認するため、染料を0.1g/ml加えた分散液を70℃で一晩静置している。
【0046】
[実施例2]
油溶性染料「Oil Red 5B special」((株)シラド化学製:CI Solvent RED 27)6部をトルエン240部へ分散させて染料分散液を調製した以外は実施例1と同様の方法で着色粒子を作製し、全固形分が10体積%である赤色に染色された着色粒子2を含む分散液(着色粒子分散液)を得た。着色粒子2を含む分散液の色調L値を測定したのち、着色粒子2を含む分散液に、染料(Oil Red 5B special)を水への溶解度以上の濃度になるように0.1g/ml加え、超音波分散させ、70℃の熱をかけて一晩静置した。翌日、実施例1と同様の方法で洗浄を行い、着色粒子2の再分散液を得た。着色粒子2の再分散液の色調L値を測定した結果を表1に示す。
【0047】
[実施例3]
油溶性染料「OIL GREEN 201」(オリエント化学工業(株)製)111部をメタノール17667部に分散させ、45℃で一晩撹拌した後、濾過することで、染料分散液を得た。
ポリスチレン粒子分散液[固形分30.8質量%、ポリスチレン粒子の平均粒径0.43μm、分散媒:水]を乾燥質量が100部となるよう秤量し、該分散液中のポリスチレン粒子を遠心分離機により沈降させた。沈降させたポリスチレン粒子を前記染料分散液に加え、超音波処理で再分散させて水からメタノールへと溶媒置換した。得られた分散液を41℃で加温、撹拌し、18時間後、精製水250mlを添加し、その後、再び水へと溶媒置換することで着色粒子3を含む分散液(着色粒子分散液)を得た。
【0048】
着色粒子3を含む分散液の色調L値を測定したのち、着色粒子3を含む分散液に、染料(OIL GREEN 201)を水への溶解度以上の濃度になるように0.1g/ml加え、超音波分散させ、70℃の熱をかけて一晩静置した。翌日、実施例1と同様の方法で洗浄を行い、着色粒子3の再分散液を得た。着色粒子3の再分散液の色調L値を測定した結果を表1に示す。
【0049】
[比較例1]
実施例1と同様の方法により、着色粒子4を含む分散液(着色粒子分散液)を得た。着色粒子4を含む分散液に染料を添加せずに70℃の熱をかけて一晩静置した。翌日、遠心精製法により粒子を沈降させ、上澄み液を除去し、純水を加え再分散させた。さらに上澄みの着色がなくなるまで遠心精製と再分散とを繰り返した。洗浄完了後、純水を加え全固形分が10体積%となるように調整し、着色粒子4の再分散液を得た。得られた着色粒子4の再分散液の色調L値を測定した結果を表1に示す。
【0050】
[比較例2]
実施例2と同様の方法により、着色粒子5を含む分散液(着色粒子分散液)を得た。着色粒子5を含む分散液に染料を添加せずに70℃の熱をかけて一晩静置した。翌日、遠心精製法により粒子を沈降させ、上澄み液を除去し、純水を加え再分散させた。さらに上澄みの着色がなくなるまで遠心精製と再分散とを繰り返した。洗浄完了後、純水を加え全固形分が10体積%となるように調整し、着色粒子5の再分散液を得た。得られた着色粒子5の再分散液の色調L値を測定した結果を表1に示す。
【0051】
[比較例3]
実施例3と同様の方法により、着色粒子6を含む分散液(着色粒子分散液)を得た。着色粒子6を含む分散液に染料を添加せずに70℃の熱をかけて一晩静置した。翌日、遠心精製法により粒子を沈降させ、上澄み液を除去し、純水を加え再分散させた。さらに上澄みの着色がなくなるまで遠心精製と再分散とを繰り返した。洗浄完了後、純水を加え全固形分が10体積%となるように調整し、着色粒子6の再分散液を得た。得られた着色粒子6の再分散液の色調L値を測定した結果を表1に示す。
【0052】
[試験例1:色調の測定方法]
着色粒子の色調Lab値の測定には、非接触色彩色差計CR241(コニカミノルタ(株)製)を用いた。Lab値は国際照明委員会(CIE)で規格化されており、人間の目の非線形な反応を擬似して、知覚される色を明度・色相・彩度の3要素で示す表色系である。測定方法は、色彩色差計の白色校正を行い、焦点を合わせたのち、スライドガラスに作製した着色粒子の再分散液を10μl載せて迅速にLab測定を行った。測定データのL値は色の明度の指標であり、L=0は黒、L=100は白の拡散色を表す。そのため、L=0に近づくほど着色粒子が濃色であることを示す。
【0053】
【表1】