(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動部は、設定値以上のトルクが加わった際に前記モータから前記駆動部の出力部材までの間で部材同士の連動を解除するトルクリミッタを有していることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫用扉開閉装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、「冷蔵庫本体」を「本体2」とし、「冷蔵庫用扉開閉装置」を「扉開閉装置1」と略して説明する。また、以下の説明では、扉3の回転中心軸線Zが延在している方向を、冷蔵庫100を設置した状態における上下方向として説明する。また、上下方向のうち、下側にはZ1を付し、上側にはZ2を付して説明する。
【0019】
(全体構成)
図1は、本発明を適用した冷蔵庫100の外観を示す斜視図である。
図2は、本発明を適用した冷蔵庫100における本体2と扉3との接続部分を拡大して模式的に示す斜視図である。
【0020】
図1および
図2において、本形態の冷蔵庫100は、前面が開口した本体2(冷蔵庫本体)の内部を貯蔵室としており、本体2の前面に貯蔵室を閉じる扉3を備えている。本形態において、扉3は左右の各々に設けられている。扉3は、本体2の開口の側部に沿う上下の軸線を回転中心軸線Zとして、回転中心軸線Z周りに回転して本体2の開口を開閉可能である。
【0021】
本形態の冷蔵庫100において、本体2の上壁2aと扉3の上端壁3aとの間には、2つの扉3を各々開閉駆動する一対の扉開閉装置1(冷蔵庫用扉開閉装置)が配置されている。なお、冷蔵庫100には、閉状態にある扉3を閉方向に付勢する付勢手段(図示せず)が設けられている。従って、扉3を確実に閉状態とすることができるとともに、扉3の閉状態を確実に保持することができる。かかる付勢手段は、例えば、本体2の側に配置された磁性体と、扉3の側に配置された永久磁石等によって構成することができる。なお、本体2の側に永久磁石を配置し、扉3の側に磁性体に配置してもよい。
【0022】
ここで、左右の扉3および扉開閉装置1は、同一の構成を有し、左右対称に配置されている。従って、以下の説明では、冷蔵庫100に向かって右側に設けられた扉3および扉開閉装置1を中心に説明し、冷蔵庫100に向かって左側に設けられた扉3および扉開閉装置1の説明を省略する。
【0023】
本形態において、扉開閉装置1は、扉3を回転中心軸線Z周りに開方向および閉方向に駆動する回転駆動装置10と、閉状態にある扉3を開方向に移動させる際に、扉3を本体
2から離間する方向の力を印加するアシスト装置90とを有している。アシスト装置90は、扉3を開方向に押し出す出力軸91と、出力軸91を出力軸91の軸線方向に駆動する駆動装置(図示せず)とを備えており、駆動装置は、例えば、モータと、モータの回転を出力軸91に伝達するラック・ピニオン機構等を有している。かかるアシスト装置90は、本体2および扉3の一方側に設けられるが、本形態では、本体2の側にアシスト装置90が設けられている。
【0024】
扉開閉装置1において、回転駆動装置10は、本体2および扉3のうちの一方側に設けられた駆動部20と、駆動部20の出力部材13と本体2および扉3のうちの他方側とに接続されたアーム18とを有している。本形態において、駆動部20は、本体2の上壁2aに固定されており、アーム18は、出力部材13の端部と扉3の上端壁3aに設けられた連結軸17とに接続している。後述するように、アーム18は、3つの連結部材(第1アーム部材14、第2アーム部材15および第3アーム部材16)からなり、出力部材13およびアーム18は、リンク機構12を構成している。連結軸17は、扉3の回転中心軸線Zから離間する位置に設けられている。また、扉3の上端壁3aには、第3アーム部材16と当接可能な第1ストッパ部34と第2ストッパ部35とが設けられている。
【0025】
本体2の上壁2a等に扉開閉装置1の制御部8が設けられ、制御部8は、扉3の外面(前面)等に設けられたスイッチ80に対する操作や、音声による指示に基づいて扉開閉装置1を制御する。
【0026】
(回転駆動装置10の全体構成)
図3は、本発明を適用した扉開閉装置1に用いた回転駆動装置10の斜視図であり、
図3(a)、(b)は、回転駆動装置10の外観を示す斜視図、および回転駆動装置10の内部構成を示す斜視図である。
図4は、本発明を適用した扉開閉装置1に用いた回転駆動装置10の平面図であり、
図4(a)、(b)は、回転駆動装置10の外観を示す平面図、および回転駆動装置10の内部構成を示す平面図である。
図5は、本発明を適用した扉開閉装置1に用いた回転駆動装置10において出力部材13等を外した状態の分解斜視図である。
【0027】
図3、
図4および
図5に示すように、扉開閉装置1の回転駆動装置10は、上ケース23と下ケース24を上下に重ねたケース21を有しており、ケース21によって駆動部20が支持されている。なお、駆動部20は、出力部材13を有しており、出力部材13は、ケース21の上側の面に沿って回転するように配置されている。ケース21は、矩形状部分と、矩形状部分から突出した略円形状部分とからなり、矩形状部分には駆動系の多くが収容され、略円形状部分には、第3歯車54等が収容されている。以下、略円形状部分を出力側駆動室22aとし、矩形状部分をモータ側駆動室22bとするが、その境界は厳密なものではない。本形態において、出力側駆動室22aは、モータ側駆動室22bから冷蔵庫100の本体2の前方に向けて突出している。
【0028】
上ケース23では、モータ側駆動室22bの上壁25bに対して出力側駆動室22aの上壁25aが段差をもって低くなっている。下ケース24には、回転駆動装置10を本体2に固定するための取付けブラケット33が複数設けられている。かかる取付けブラケット33の下面は、下ケース24の下面と面一である。下ケース24は、底板部28と、底板部28の外縁から上方に起立した周壁27とを備えており、ネジ29によって上ケース23と連結されている。
【0029】
(伝達機構5の構成)
駆動部20において、ケース21には、以下に説明するモータ50、出力部材13、モータ50の回転を出力部材13に伝達する伝達機構5が支持されている。まず、下ケース
において、モータ側駆動室22bでは、出力側駆動室22a側とは反対側の端部にモータ50が水平姿勢で配置されており、出力側駆動室22a側には、出力部材13が配置されている。
【0030】
本形態において、伝達機構5は、モータ50の側から出力部材13に向けて配置された輪列58を有しており、輪列58は、減速輪列として構成されている。輪列58は、モータ50のモータ軸(図示せず)に固定されたウォーム59、ウォーム59と噛み合う歯車51、歯車51と噛み合う第1歯車52、後述する遊星歯車機構6を介して第1歯車52の回転が伝達される第2歯車53、および第2歯車53と噛み合う第3歯車54を有している。歯車51、第1歯車52、第2歯車53、および第3歯車54は各々、扉3の回転中心軸線Zと平行に上下方向に延在する回転中心軸線L51、L52、L53、L54周りに回転可能である。
【0031】
歯車51は、ウォーム59に噛合するウォームホイール511と、ウォームホイール511より小径の小径歯車512とを有しており、ウォームホイール511は小径歯車512より上方に位置する。第1歯車52は、歯車51の小径歯車512と噛み合う平歯車である。第2歯車53は、遊星歯車機構6から回転が伝達される大径歯車531と、大径歯車531より小径の小径歯車532とを有しており、大径歯車531は、小径歯車532より上方に位置する。小径歯車532には第3歯車54が噛合している。第3歯車54の上面側において、中心部には、出力部材13がネジ57によって固定される結合部545が形成されており、出力部材13は第3歯車54と一体に回転する。
【0032】
このように構成した伝達機構5において、歯車51、第1歯車52、第2歯車53および第3歯車54は各々、下ケース24の底板部28から突出する軸部や筒部によって回転可能に支持されている。この状態で、第3歯車54の結合部545は、上ケース23から突出した状態にあるので、出力部材13の端部と第3歯車54の結合部545とをネジ57によって固定すれば、出力部材13の端部と第3歯車54とが連結される。従って、出力部材13には、モータ50の回転が伝達機構5を介して伝達されるので、出力部材13は、第3歯車54の回転中心軸線L54周りに回転する。
【0033】
(センサ70の構成)
図5に示すように、本形態の扉開閉装置1の回転駆動装置10には、扉3の移動を監視するセンサ7が設けられている。本形態において、センサ7は、伝達機構5に用いられた歯車の角度位置を検出する角度位置検出手段からなり、センサ7は、第3歯車54の角度位置を検出するポテンショメータ71からなる。ポテンショメータ71は、第3歯車54の角度位置に基づいて扉3の角度位置に比例した電圧を出力する。より具体的には、下ケース24において、第3歯車54を回転可能に支持する筒部284の内側には、ポテンショメータ71が配置されており、筒部284の周方向の一部を切り欠いた途切れ部分からは、ポテンショメータ71に接続する配線基板72が下ケース24の底板部28に沿って筒部284の外側に引き出されている。
【0034】
ポテンショメータ71は、連結部材75を介して第3歯車54に連結されている。具体的には、ポテンショメータ71には、上方に向けて開口する連結穴710が形成されており、かかる連結穴710に連結部材75の連結部76が挿入されて、連結部材75は、ポテンショメータ71の可動子(図示せず)と結合されている。連結部材75は、上方が開口した円筒部77を有しており、円筒部77の底部から下方に連結部76が突出している。また、連結部材75において、円筒部77には、周方向の一部が切り欠かれた切り欠き78が形成されており、切り欠き78に第3歯車54の連結板(図示せず)が嵌ることによって、連結部材75は、第3歯車54と一体に回転する。従って、第3歯車54が回転すれば、連結部材75が第3歯車54と一体に回転するため、ポテンショメータ71は、
第3歯車54の角度位置を検出することができる。それ故、制御部8は、ポテンショメータ71からの出力に基づいて、扉3が閉位置にあるか否か監視するとともに、扉3が閉位置、開位置、および閉位置と開位置との間の途中位置のいずれの位置にあるかを監視する。また、ポテンショメータ71によれば、扉3が閉位置から開位置までのいずれの位置にあるかを監視する。また、制御部8は、ポテンショメータ71からの出力に基づいて、第3歯車54の位置(扉3の位置)の変化、第3歯車54の速度(扉3の速度)の変化、第3歯車54の動き(扉3の動き)の反転を監視することもできる。本形態において、制御部8は、ポテンショメータ71からの出力(V)の単位時間当たりの変化(dV/dt)を監視し、第3歯車54の動き(扉3の動き)の反転を監視する。例えば、扉3の開き動作時には、dV/dtが正であるので、制御部8は、dV/dtが正から負に反転したとき、第3歯車54の動き(扉3の動き)が閉方向に反転したことを検出することができる。また、扉3の閉じ動作時には、dV/dtが負であるので、制御部8は、dV/dtが正に反転したとき、第3歯車54の動き(扉3の動き)が開方向に反転したことを検出することができる。
【0035】
なお、下ケース24の底板部28において、筒部284の径方向外側には、周方向で離間する2個所に突起243、244が形成されている。これに対して、第3歯車54の下面には、突起549が形成されている。従って、第3歯車54の回転可能な角度範囲の両端は、突起549と突起243とが当接する角度位置、および突起549と突起244とが当接する角度位置によって規定されている。
【0036】
(遊星歯車機構6の構成)
図6は、本発明を適用した扉開閉装置1に用いた回転駆動装置10の遊星歯車機構6の分解斜視図であり、
図6(a)、(b)は、遊星歯車等を外した状態の分解斜視図、および太陽歯車の分解斜視図である。
図7は、本発明を適用した扉開閉装置1に用いた回転駆動装置10の遊星歯車機構6の説明図であり、
図7(a)、(b)、(c)、(d)は、遊星歯車機構の平面図、側面図、ホルダを省略したときの平面図、および底面図である。
図8は、本発明を適用した扉開閉装置1に用いた回転駆動装置10の遊星歯車機構6の動作を示す説明図であり、
図8(a)、(b)は、扉3を開方向に駆動するときの遊星歯車機構の平面図、および扉3を閉方向に駆動するときの遊星歯車機構の平面図である。
【0037】
図2、
図3および
図4を参照して説明したように、本形態の扉開閉装置1に用いた回転駆動装置10において、駆動部20の伝達機構5は、モータ50によって回転駆動される第1歯車52と、第1歯車52の回転が遊星歯車機構6を介して伝達される第2歯車53とを有している。
【0038】
図6および
図7に示すように、遊星歯車機構6は、第1歯車52と噛み合う第1歯部621を備えた太陽歯車61と、太陽歯車61の回転中心軸線L61周りに回転可能なホルダ66と、ホルダ66に自転可能に支持された遊星歯車67とを有しており、遊星歯車67は、太陽歯車61の第2歯部631と噛み合っている。本形態において、太陽歯車61は、第1歯部621が形成された大径部611の上段側に、大径部611より小径の小径部612を備え、かかる小径部612の外周面に第2歯部631が形成されている。
【0039】
ホルダ66は、太陽歯車61を回転可能に支持する支軸26に回転可能に支持された回転レバーであり、ホルダ66の両端には、ホルダ66の両端から下方に突出する2本の軸部661,662、および2つのリング691,692によって、遊星歯車67として、第1遊星歯車671および第2遊星歯車672が回転中心軸線L671,L672周りに回転可能に支持されている。
【0040】
本形態では、扉3に対する駆動を休止している期間中、
図7に示すように、遊星歯車6
7(第1遊星歯車671および第2遊星歯車672)は、第2歯車53から離間している。これに対して、扉3を開方向に駆動する際、
図8(a)に示すように、モータ50による駆動によって第1歯車52が回転中心軸線L52周りに矢印A1で示す反時計周りに回転すると、太陽歯車61が回転中心軸線L61周りに矢印B1で示す時計周りに回転する。従って、第1遊星歯車671および第2遊星歯車672が回転中心軸線L671,672に矢印D1、E1で示す反時計周りに回転し、ホルダ66は、回転中心軸線L61周りに矢印C1で示す時計周りに回転する。その結果、第1遊星歯車671が第2歯車53の大径歯車531と噛み合う噛み合い位置に移動するので、第2歯車53は、第2歯車53の回転中心軸線L53周りに矢印F1で示す時計周りに回転する。
【0041】
そして、
図5を参照して説明したセンサ7(ポテンショメータ71)での検出結果において扉3が所定位置(開位置)まで移動し終わると、モータ50が反転し、ホルダ66、第1遊星歯車671および第2遊星歯車672は、
図7に示すように、大径歯車531との噛み合いが解除された解除位置(待機位置)まで戻る。
【0042】
これに対して、扉3を閉方向に駆動する際、
図8(b)に示すように、モータ50による駆動によって第1歯車52が回転中心軸線L52周りに矢印A2で示す時計周りに回転すると、太陽歯車61が回転中心軸線L61周りに矢印B2で示す反時計周りに回転する。従って、第1遊星歯車671および第2遊星歯車672が回転中心軸線L671,672に矢印D2、E2で示す時計周りに回転し、ホルダ66は、回転中心軸線L61周りに矢印C2で示す反時計周りに回転する。その結果、第2遊星歯車672が第2歯車53の大径歯車531と噛み合う噛み合い位置に移動するので、第2歯車53は、第2歯車53の回転中心軸線L53周りに矢印F2で示す反時計周りに回転する。
【0043】
そして、
図5を参照して説明したセンサ7(ポテンショメータ71)での検出結果において扉3が所定位置(閉位置)まで移動し終わると、モータ50が反転し、ホルダ66、第1遊星歯車671および第2遊星歯車672は、
図7に示すように、大径歯車531との噛み合いが解除された解除位置(待機位置)まで戻る。
【0044】
(復帰機構68の構成)
図3等に示すように、遊星歯車機構6の側方には、2本の復帰軸681,682を備えた復帰機構68が設けられている。復帰機構68は、
図8に示すように、遊星歯車67と第2歯車53とが噛み合った状態で停電した際、遊星歯車67と第2歯車53との噛み合いが解除される位置までホルダ66を移動させる外力をホルダ66に印加する。より具体的には、復帰軸681は、ホルダ66のうち、第1遊星歯車671が支持されている側の端部の側方に配置されており、
図8(b)に示す状態で停電した際、矢印P1で示す外力を加え、第2遊星歯車672と第2歯車53との噛み合いが解除される位置までホルダ66を回転移動させる。これに対して、復帰軸681は、ホルダ66のうち、第2遊星歯車672が支持されている側の端部の側方に配置されており、
図8(a)に示す状態で停電した際、矢印P2で示す外力を加え、第1遊星歯車671と第2歯車53との噛み合いが解除される位置までホルダ66を回転移動させる。
【0045】
(トルクリミッタの構成)
図9は、本発明を適用した扉開閉装置1に用いた回転駆動装置10のトルクリミッタ60の説明図であり、
図9(a)、(b)、(c)は、太陽歯車61に用いた第2回転部材63の底面図、太陽歯車61に用いた第1回転部材62の底面図、および太陽歯車61の底面図である。
【0046】
図6において、本形態では、駆動部20は、設定値以上のトルクが加わった際に駆動部20の出力部材13とモータ50との間で部材同士の連動を解除するトルクリミッタ60
を有している。本形態では、遊星歯車機構6用いた太陽歯車61にトルクリミッタ60が内蔵されている。より具体的には、太陽歯車61は、第1歯車52と噛み合う第1歯部621を備えた第1回転部材62と、遊星歯車67と噛み合う第2歯部631を備えた第2回転部材63とを有しており、トルクリミッタ60は、第1回転部材62と第2回転部材63との間に構成されている。
【0047】
図6および
図7に示すように、第1回転部材62は、第1歯部621が形成された大径部611を構成する外側円筒部622と、外側円筒部622と同心状の内側円筒部623と、外側円筒部622と内側円筒部623とを連結させる円環状の連結部629とを有しており、第1回転部材62の底面側には、外側円筒部622の内側に円形の凹部626が形成されている。また、凹部626の内周面626aには、周方向の複数個所で径方向外側に凹む係合凹部625が等角度間隔に形成されている。本形態において、係合凹部625は、等角度間隔に6つ形成されている。
【0048】
これに対して、第2回転部材63は、第2歯部631が形成された小径部612を構成する円筒状の胴部632と、胴部632の下端側に形成された円筒部633とを有しており、胴部632には支軸26が嵌る軸穴616が形成されている。また、胴部632を第1回転部材62の内側円筒部623に通すと、円筒部633が第1回転部材62の内側円筒部623に嵌って、第2回転部材63は、第1回転部材62を回転可能に支持する。ここで、第2回転部材63は、円筒部633の下端側で周方向に延在する複数の腕部634が形成されており、腕部634の先端部には、径方向外側に突出した係合凸部635が形成されている。本形態において、腕部634は、等角度間隔に3つ形成されている。このような構成の第2回転部材63を第1回転部材62に重ねると、腕部634は、第1回転部材62の凹部226の内側に嵌り、係合凸部の635が第1回転部材62の係合凹部625に嵌る。ここで、腕部634の先端側は、径方向内側に撓むことが可能である。
【0049】
このように構成した太陽歯車61は、第1回転部材62の係合凹部625に係合凸部635が嵌っているため、第1回転部材62と第2回転部材63とが一体に回転する。これに対して、例えば、出力部材13に設定値以上の負荷が加わっていると、モータ50からの回転が第1回転部材62に加わって、遊星歯車67が第2歯車53と噛み合っても、腕部634の先端側が径方向内側に撓んで係合凹部625から係合凸部635が外れる。このため、第1回転部材62と第2回転部材63との間では空周りが発生するため、第1回転部材62から第2回転部材63への回転の伝達が阻止される。
【0050】
(出力部材13およびアーム18の構成)
再び
図3および
図4において、アーム18は、アーム18の延在方向で連結された3つの連結部材(第1アーム部材14、第2アーム部材15および第3アーム部材16)からなり、出力部材13およびアーム18は、リンク機構12を構成している。
【0051】
出力部材13は、回転中心軸線L54を中心に湾曲した外周面を備えた扇形の基部131と、基部131の上面に一体に形成されたレバー部132とを備えており、回転中心軸線L54周りに時計周りCWおよび反時計周りCCWに回転する。レバー部132の時計周りCW側の側面には、第1アーム部材14のストッパ用凸部145との当り面を構成するストッパ用凸部135が形成されている。
【0052】
第1アーム部材14は、上方から見て上ケース23の前側壁215に沿って曲がった一定幅の板状であり、基端側の端部は、連結軸115を介して出力部材13のレバー部132の先端部に回転可能に接続されている。また、第1アーム部材14の外周面には、出力部材13が反時計周りCCWに回転した際にレバー部132のストッパ用凸部135と当接可能なストッパ用凸部145が形成されている。
【0053】
第1アーム部材14の先端側の端部は、第2アーム部材15の基端側の端部に連結軸116を介して回転可能に接続されている。第2アーム部材15は、上方から見て一定幅で延在する板状である。第2アーム部材15の先端側の端部は、第3アーム部材16の基端側の端部に連結軸117を介して回転可能に接続されている。第3アーム部材16は、上方から見て一定幅で延在する板状である。ここで、第2アーム部材15の外側の側面にはストッパ用凸部155が形成され、第3アーム部材16の外側の側面には、連結軸117を中心に第3アーム部材16が時計周りCWに回転した際にストッパ用凸部155と当接するストッパ用凸部165が形成されている。
【0054】
(扉3の通常時の開閉動作)
図10は、本発明を適用した冷蔵庫100および扉開閉装置1の回転駆動装置10における扉3の開閉動作を示す説明図であり、扉3が90°を越える全開位置から全閉位置までのリンク機構12の変化を示してあり、
図10(a)、(b)、(c)、(d)は各々、扉3の開き角が110°、40°、15°、0°(閉状態)の説明図である。
【0055】
冷蔵庫100および扉開閉装置1に電源供給されている通常状態においても、利用者がスイッチ80に扉3を開閉する操作を行わない限り、遊星歯車機構6では、
図7に示すように、第2歯車53と遊星歯車67とが噛み合っていない。従って、利用者は、手動により扉3を開方向あるいは閉方向に直接、動かすことができる。
【0056】
そして、
図10(a)に示すように、扉3が110°開いた状態で、利用者がスイッチ80に対して閉操作を行うと、制御部8はモータ50に通電し、遊星歯車機構6では、
図8(b)に示すように、第2歯車53と第2遊星歯車672とが噛み合う。従って、出力部材13が時計周りCWに回転する。その結果、扉3は閉方向に駆動され、
図10(b)、(c)に示す状態を経由して、
図10(d)に示すように、閉状態となる。そして、ポテンショメータ71により扉3が閉状態になったことが検知されると、制御部8は、モータ50を反転させて、
図7に示すように、第2歯車53と遊星歯車67とが噛み合っていない状態に戻す。なお、
図10(d)に示す状態で、第3アーム部材16のストッパ用凸部165は、第2ストッパ部35に当接するとともに、第2アーム部材15のストッパ用凸部155に当接し、かかる当接による力は、扉3を閉方向に押圧する力として作用する。
【0057】
また、冷蔵庫100および扉開閉装置1に電源供給されている通常状態において、
図10(d)に示す閉状態で、利用者がスイッチ80に対して開操作を行うと、制御部8は、アシスト装置90を動作させて扉3をわずかに開ける。また、制御部8は、モータ50に通電し、遊星歯車機構6では、
図8(a)に示すように、第2歯車53と第1遊星歯車671とが噛み合う。従って、出力部材13が反時計周りCCWに回転する。その結果、扉3は開方向に駆動され、
図10(b)、(c)に示す状態を経由して、
図10(a)に示すように、開状態となる。そして、ポテンショメータ71により扉3が開状態になったことが検知されると、制御部8は、モータ50を反転させて、
図7に示すように、第2歯車53と遊星歯車67とが噛み合っていない状態に戻す。なお、手動により扉3を開く際や、モータ50が暴走した場合を想定して、扉3に対しては、第3アーム部材16と第1ストッパ部34との当接によるストッパが構成されている。
【0058】
(扉3に対して負荷が加わった場合)
本形態では、扉3を開方向または閉方向に駆動中、利用者が扉3に力を加えると、扉3の移動速度が変化するので、かかる事態をポテンショメータ71が検出する。その結果、制御部8は、モータ50を反転させて、
図7に示すように、第2歯車53と遊星歯車67とが噛み合っていない状態に戻す。従って、扉3に対する駆動が停止する。それ故、利用
者の手が扉3に挟まれるという事態が発生しない。また、扉3に対する駆動が停止した以降、利用者は、手動によって扉3を開方向または閉方向に回転させることができる。
【0059】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の冷蔵庫用扉開閉装置1および冷蔵庫100において、回転駆動装置10では、第1歯車52と第2歯車53との間において、遊星歯車機構6では、遊星歯車67が太陽歯車61の周りで公転して第2歯車53と噛み合った噛み合い位置と第2歯車53との噛み合いが解除された解除位置とに移動する。このため、第1歯車52と第2歯車53とを遊星歯車機構6を介して機構的に接続した状態と、かかる接続を解除した状態とに切り換えることができる。従って、扉3をモータ50によって駆動することができるとともに、停電時等、遊星歯車67が解除位置に移動していれば、手動により扉3を開閉する際、小さな力で扉3を開閉することができる。
【0060】
また、モータ50は、扉3に対する駆動が終了した際、モータ50が太陽歯車61を反転させて遊星歯車67を第2歯車53との噛み合いが解除される位置まで移動させる。また、駆動部20は、扉3の移動を検出するセンサ7を有し、モータ50は、センサ7の検出結果に基づいて、遊星歯車67を解除位置まで移動させる。このため、第1歯車52と第2歯車53との機構的な接続が自動的に解除されるので、他の特別な操作を行わなくても、手動により扉3を開閉することができる。また、センサ7としてポテンショメータ71が用いられているため、簡素な構成で、第3歯車54の位置(扉3の位置)を監視することができる。また、ポテンショメータ71によれば、扉3が閉位置にあるか否か監視することができるとともに、扉3が閉位置、開位置、および閉位置と開位置との間の途中位置のいずれの位置にあるかを監視することも容易である。それ故、扉3の位置によって、モータ50による駆動速度を調整することができる。特にポテンショメータ71によれば、扉3が閉位置から開位置までのいずれの位置にあるかを容易に監視することができるので、扉3の位置によって、モータ50による駆動速度をより適正に調整することができる。例えば、モータ50を定速回転させた場合、リンク機構12の位置によって、扉3の移動速度が低下する区間がある場合でも、そのような区間では、制御部8がモータ50を高速回転させることにより、扉3が略定速度で移動させることができる。また、ポテンショメータ71によれば、扉3の位置を連続的に監視することができる。従って、特定の角度位置に扉3が到達しているか否かを監視する場合に比して、扉3の駆動に変化があったか否かを迅速に検出することができる。また、扉3のモータ駆動中に扉3が利用者の手と干渉した場合には、扉3の移動速度が低下するので、かかる事態をポテンショメータ71によって検出することができる。それ故、モータ50を反転させて、第1歯車52と第2歯車53とを遊星歯車機構6を介して機構的に接続した状態を解除することができる。
【0061】
また、遊星歯車機構6は、遊星歯車67として、太陽歯車61が一方方向に回転した際に公転して第2歯車53との噛み合い位置に移動する第1遊星歯車671と、太陽歯車61が他方方向に回転した際に公転して第2歯車53との噛み合い位置に移動する第2遊星歯車672とを有しているため、遊星歯車67の摩耗等を抑制することができる。
【0062】
また、駆動部20は、設定値以上のトルクが加わった際にモータ50から出力部材13までの間で部材同士の連動を解除するトルクリミッタ60を有しているため、扉3を駆動中、扉3に大きな力が加わっても、駆動部20が損傷することを回避することができる。また、トルクリミッタ60は、遊星歯車機構6において太陽歯車61を構成する第1回転部材62と第2回転部材63との間に構成されている。このため、太陽歯車61にトルクリミッタ60に内蔵させることができるので、駆動部20の構成を簡素化することができる。
【0063】
また、遊星歯車67と第2歯車53とが噛み合った位置から遊星歯車67と第2歯車5
3との噛み合いが解除される位置までホルダ66を移動させる外力を印加する復帰機構68が設けられているため、扉3を駆動中に停電しても、ホルダ66を移動させて遊星歯車67を解除位置まで移動させることができる。それ故、扉3を駆動中に停電が発生しても、扉3を小さな力で手動により開閉することができる。
【0064】
また、駆動部20は、モータ50により回転駆動されるウォーム59と、ウォーム59と噛み合うウォームホイール511とを有しているが、遊星歯車機構6によって、機構的な接続を解除することができる。従って、停電時等において、手動により扉3を開閉した場合でも、ウォーム59およびウォームホイール511に過大な負荷が加わることを防止することができる。
【0065】
また、扉3を閉状態から開方向に移動させる際に、扉3を本体2から離間する方向の力を印加するアシスト装置90が用いられているため、扉3を閉状態から開方向に容易に移動させることができるので、駆動部20の出力が小さくてよい。それ故、駆動部20の小型化等を図ることができる。
【0066】
また、駆動部20は、本体2側または扉3側のいずれの側に設けてもよいが、本形態では、本体2側に駆動部20が設けられている。このため、モータ50への配線等が容易である。
【0067】
(他の実施の形態)
上記実施の形態において、
図4に一点鎖線で示すように、ホルダ66の側方にプッシュスイッチ79等を設け、ホルダ66の位置を検出してもよい。
【0068】
上記実施の形態では、駆動部20を本体2の側に設けたが、扉3の側に駆動部20を設けてもよい。
【0069】
上記実施の形態では、センサ7にポテンショメータ71を用いたが、ホール素子等を用いた磁気センサを用いてもよい。
【0070】
上記実施の形態において、センサ7は、第3歯車54の位置(扉3の位置)の検出結果に基づいて扉3が利用者の手と干渉したことを検出したが、伝達機構5やモータ50の速度を監視する構成や、伝達機構5やモータ50に加わるトルクを監視する構成を採用してもよい。速度を監視する場合、速度がゼロになったとき、扉3が利用者の手と干渉したことを検出することができる。また、トルクを監視する場合、トルクが一定以上になったとき、扉3が利用者の手と干渉したことを検出することができる。
【0071】
上記実施の形態では、扉開閉装置1にアシスト装置90を設けたが、回転駆動装置10のみによって扉開閉装置1を構成してもよい。
【0072】
上記実施の形態では、2つの扉3を有する冷蔵庫100を例示したが、1つの扉3を有する冷蔵庫100に用いる扉開閉装置1に本発明を適用してもよい。