特許第6482947号(P6482947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6482947尿素含有シラン、その製造方法およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482947
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】尿素含有シラン、その製造方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
   C07F7/18 WCSP
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-98985(P2015-98985)
(22)【出願日】2015年5月14日
(65)【公開番号】特開2015-218168(P2015-218168A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2018年2月26日
(31)【優先権主張番号】10 2014 209 239.6
(32)【優先日】2014年5月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】カーレン レーベン
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ モーザー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー マイアー
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−527627(JP,A)
【文献】 特開2002−201312(JP,A)
【文献】 特許第6275328(JP,B2)
【文献】 特開2015−218167(JP,A)
【文献】 J. Mater. Chem.,2009年,19,4746−4752
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
[式中、R1は、同一または異なって、C1〜C10−アルコキシ基であり、かつRは、同一または異なって、非分枝鎖状の、飽和の、脂肪族の二価のC1〜C30−炭化水素基である]の尿素含有シラン。
【請求項2】
式Iの尿素含有シランが、
((EtO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((EtO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((EtO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22S、
((MeO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((MeO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((MeO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((MeO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((MeO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((MeO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((MeO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22S、
((MeO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22S、または
((MeO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22
であることを特徴とする、請求項1に記載の尿素含有シラン。
【請求項3】
式Iの尿素含有シランが、
(EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2−S−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH2−Si(OEt)3
であることを特徴とする、請求項1または2に記載の尿素含有シラン。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、第一のステップにおいて、式II
【化2】
のアミノシランを、式III
【化3】
のイソシアネートと反応させ、前記式中、RおよびR1は、それぞれ請求項1に定義される通りであり、かつHalは、F、Cl、BrもしくはIであり、そして第二のステップにおいて、前記第一のプロセスステップからの生成物を、式(IV)
Na2S (IV)
のナトリウムスルフィドと反応させることを特徴とする製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、前記第一のステップを保護ガス雰囲気下で実施することを特徴とする製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、前記第二のステップを保護ガス雰囲気下で実施することを特徴とする製造方法。
【請求項7】
請求項4から6までのいずれか1項に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、前記第一のステップを−78℃〜100℃の間の温度で実施することを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項4から7までのいずれか1項に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、前記第二のステップを20℃〜150℃の間の温度で実施することを特徴とする製造方法。
【請求項9】
請求項4から8までのいずれか1項に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、エタノールを、第一のステップにおける溶剤として使用することを特徴とする製造方法。
【請求項10】
請求項4から9までのいずれか1項に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、エタノールを、第二のステップにおける溶剤として使用することを特徴とする製造方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、前記アルコールを、第一のステップまたは第二のステップの後で留去することを特徴とする製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、第一のステップにおいて、式VI
【化4】
のイソシアナトシランを、式VII
【化5】
のアミンと反応させ、前記式中、RおよびR1は、それぞれ請求項1に定義される通りであり、かつHalは、F、Cl、BrもしくはIであり、そして第二のステップにおいて、前記第一のプロセスステップからの生成物を、式(IV)
Na2S (IV)
のナトリウムスルフィドと反応させることを特徴とする製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、式VIIのアミンが、式VIのイソシアナトシランとの反応の前に、式VIII
Cl- +3N−R−S−S−R−NH3+Cl- (VIII)
のジアミンの塩酸塩から塩基の添加によって製造されることを特徴とする製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、使用される塩基がNaOEtであることを特徴とする製造方法。
【請求項15】
請求項12から14までのいずれか1項に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、生成物が乾燥されることを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素含有シラン、その製造方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CAS 1184961−62−3、CAS 442527−46−0およびCAS 498553−03−0は、式
【化1】
の化合物を開示している。
【0003】
更に、特許文献1(US20030191270A1)は、式
【化2】
のシランを開示している。
【0004】
特許文献2(JP2002201312A)は、式
【化3】
のゴム改質剤を開示している。
【0005】
更に、非特許文献1(J. Mat. Chem. 2009, 19, 4746-4752)は、メソポーラスシリカから形成されたSH官能化された骨格構造内部に金ナノ粒子を有するものと、尿素含有シランの製造を開示している。公知法においては、有機溶剤が使用される。
【0006】
公知の尿素含有ジスルフィドシランの欠点は、不十分な加工特性と、不十分なウェットスキッド性能と、低い動粘度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US20030191270A1
【特許文献2】JP2002201312A
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. Mat. Chem. 2009, 19, 4746-4752
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、ゴム混合物中で、先行技術から公知の尿素含有シランと比較して改善された加工特性とウェットスキッド性能と動粘度とを有する尿素含有シランを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式I
【化4】
[式中、R1は、同一または異なって、C1〜C10−アルコキシ基、好ましくはメトキシもしくはエトキシ基、C2〜C10−環状ジアルコキシ基、フェノキシ基、C4〜C10−シクロアルコキシ基、C6〜C20−アリール基、好ましくはフェニル、C1〜C10−アルキル基、好ましくはメチルもしくはエチル、C2〜C20−アルケニル基、C7〜C20−アラルキル基もしくはハロゲン、好ましくはClであり、かつRは、同一または異なって、分枝鎖状もしくは非分枝鎖状の、飽和もしくは不飽和の、脂肪族の、芳香族の、もしくは脂肪族/芳香族の混合型の二価のC1〜C30−炭化水素基、好ましくはC1〜C20−炭化水素基、より好ましくはC1〜C10−炭化水素基、更により好ましくはC1〜C7−炭化水素基、特に好ましくはC2およびC3−炭化水素基であって、場合によりF−、Cl−、Br−、I−、−CNもしくはHS−によって置換された基である]の尿素含有シランを提供する。
【0011】
尿素含有シランは、式Iの複数の尿素含有シランの混合物であってよい。
【0012】
プロセス生成物は、式Iの尿素含有シランのアルコキシシラン官能基の加水分解と縮合により形成するオリゴマーを含んでよい。
【0013】
式Iの尿素含有シランは、担体に、例えばワックス、ポリマーまたはカーボンブラックに適用されてよい。式Iの尿素含有シランは、シリカに適用されてよく、その場合に、結合は物理結合または化学結合であってよい。
【0014】
Rは、好ましくは、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH(CH3)−、−CH2CH(CH3)−、−CH(CH3)CH2−、−C(CH32−、−CH(C25)−、−CH2CH2CH(CH3)−、−CH(CH3)CH2CH2−、−CH2CH(CH3)CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−、または
【化5】
であってよい。
【0015】
1は、好ましくは、メトキシまたはエトキシであってよい。
【0016】
式Iの尿素含有シランは、好ましくは、
((EtO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((EtO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((EtO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22S、
((MeO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((MeO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((MeO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((MeO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((MeO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((MeO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((MeO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22S、
((MeO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22、または
((MeO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22S、
であってよい。
【0017】
特に好ましい化合物は、式
(EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2−S−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH2−Si(OEt)3
の化合物である。
【0018】
本発明は、更に、式I
【化6】
[式中、R1およびRは、それぞれ前記定義の通りである]の本発明による尿素含有シランの第一の製造方法であって、第一のステップにおいて、式II
【化7】
のアミノシランを、式III
【化8】
[式中、RおよびR1は、それぞれ前記定義の通りであり、かつHalは、F、Cl、BrもしくはI、好ましくはClである]のイソシアネートと反応させ、そして第二のステップにおいて、前記第一のプロセスステップからの生成物を、式(IV)
Na2S (IV)
のナトリウムスルフィドと反応させることを特徴とする製造方法を提供する。
【0019】
式IIの化合物は、好ましくは、
(C25O)3Si−CH2−NH2
(C25O)3Si−CH2CH2−NH2
(C25O)3Si−CH2CH2CH2−NH2
(CH3O)3Si−CH2−NH2
(CH3O)3Si−CH2CH2−NH2、または
(CH3O)3Si−CH2CH2CH2−NH2
であってよい。
【0020】
式IIIの化合物は、好ましくは、
OCN−CH2−Cl、
OCN−CH2CH2−Cl、または
OCN−CH2CH2CH2−Cl
であってよい。
【0021】
本発明による第一の方法においては、前記第一のプロセスステップと第二のプロセスステップは、1つの反応容器中で全ての反応物を添加することによって行うことができる。
【0022】
本発明による第一の方法の第一のステップにおいては、式IIのアミノシランは、式IIIのイソシアネート中に計量供給してよい。
【0023】
本発明による第一の方法の第一のステップにおいては、式IIIのイソシアネートは、好ましくは、式IIのアミノシラン中に計量供給してよい。
【0024】
本発明による第一の方法の第一のステップにおいては、式IIのアミノシランは、式IIIのイソシアネートに対して、0.85:1〜1.15:1のモル比で、好ましくは0.90:1〜1.10:1のモル比で、より好ましくは0.95:1〜1.05:1のモル比で使用することができる。
【0025】
本発明による第一の方法の第一のステップにおける反応は、空気を排除して行うことができる。
【0026】
本発明による第一の方法の第一のステップにおける反応は、保護ガス雰囲気下で、例えばアルゴンまたは窒素下で、好ましくは窒素下で行うことができる。
【0027】
本発明による第一の方法の第一のステップは、標準圧力、高められた圧力または低減された圧力で行うことができる。好ましくは、本発明による方法は、標準圧力で行うことができる。
【0028】
高められた圧力は、1.1バール〜100バールの、好ましくは1.5バール〜50バールの、より好ましくは2バール〜20バールの、非常に好ましくは2〜10バールの圧力であってよい。
【0029】
低減された圧力は、1ミリバール〜1000ミリバールの、好ましくは1ミリバール〜500ミリバールの、より好ましくは1ミリバール〜250ミリバールの、非常に好ましくは5ミリバール〜100ミリバールの圧力であってよい。
【0030】
本発明による第一の方法の第一のステップは、−78℃〜100℃で、好ましくは−70℃〜50℃で、より好ましくは−65℃〜25℃で行うことができる。
【0031】
本発明による第一の方法の第一のステップにおける反応は、溶剤を用いずに、または溶剤中で、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、アセトン、アセトニトリル、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ピリジンまたは酢酸エチル中で行うことができる。前記溶剤は、好ましくは、ジクロロメタン、エタノール、メチルt−ブチルエーテル、トルエン、酢酸エチル、ペンタンまたはヘキサンであってよい。
【0032】
本発明による第一の方法の第一のステップにおける反応は、有機溶剤を用いずに行うことができる。前記溶剤は水であってよい。
【0033】
本発明による第一の方法の第一のステップにおける溶剤は、引き続き除去することができ、好ましくは留去することができる。
【0034】
本発明による第一の方法の第一のステップにおける反応生成物は、引き続き濾過して、有機溶剤で洗浄することができる。好ましくは、洗浄のためには、アルカン、より好ましくはヘキサンが使用できる。
【0035】
本発明による第一の方法の第一のステップにおける反応生成物は、濾過の後に乾燥させることができる。前記乾燥は、20℃〜100℃の、好ましくは25℃〜50℃の温度で行うことができる。前記乾燥は、1〜500ミリバールの低減された圧力で行うことができる。
【0036】
本発明による第一の方法の第一のステップにおいて得られる式V
【化9】
の尿素含有ハロシランは、50%を上回る、好ましくは60%を上回る、非常に好ましくは70%を上回る収率で得ることができる。
【0037】
本発明による第一の方法の第二のステップにおける反応は、空気を排除して行うことができる。
【0038】
本発明による第一の方法の第二のステップにおける反応は、保護ガス雰囲気下で、例えばアルゴンまたは窒素下で、好ましくは窒素下で行うことができる。
【0039】
本発明による第一の方法の第二のステップは、標準圧力、高められた圧力または低減された圧力で行うことができる。好ましくは、本発明による方法は、標準圧力で行うことができる。
【0040】
高められた圧力は、1.1バール〜100バールの、好ましくは1.5バール〜50バールの、より好ましくは2バール〜20バールの、非常に好ましくは2〜10バールの圧力であってよい。
【0041】
低減された圧力は、1ミリバール〜1000ミリバールの、好ましくは1ミリバール〜500ミリバールの、より好ましくは1ミリバール〜250ミリバールの、非常に好ましくは5ミリバール〜100ミリバールの圧力であってよい。
【0042】
本発明による第一の方法の第二のステップは、20℃〜150℃で、好ましくは40℃〜100℃で、より好ましくは45℃〜80℃で行うことができる。
【0043】
本発明による第一の方法の第二のステップにおける反応は、溶剤を用いずに、または溶剤中で、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、アセトン、アセトニトリル、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ピリジンまたは酢酸エチル中で行うことができる。前記溶剤は、好ましくはエタノールであってよい。
【0044】
本発明による第一の方法の第二のステップにおける反応は、有機溶剤を用いずに行うことができる。前記溶剤は水であってよい。
【0045】
本発明による第一の方法の第二のステップにおける反応生成物は、濾過して、その濾過ケークを、有機溶剤で洗浄することができる。好ましくは、洗浄のためには、アルコール、より好ましくはエタノールまたはアルカン、より好ましくはヘキサンが使用できる。
【0046】
本発明による第一の方法の第二のステップにおける溶剤は、引き続き除去することができ、好ましくは留去することができる。
【0047】
本発明による第一の方法の第二のステップにおける反応生成物は、濾過と溶剤の除去の後に乾燥させることができる。前記乾燥は、20℃〜100℃の、好ましくは25℃〜50℃の温度で行うことができる。前記乾燥は、1〜500ミリバールの低減された圧力で行うことができる。
【0048】
本発明による第一の方法の第二のステップにおいて得られる式I
【化10】
の尿素含有シランは、50%を上回る、好ましくは60%を上回る、非常に好ましくは70%を上回る収率で得ることができる。
【0049】
本発明による第一の方法により製造される生成物は、25モル%未満の、好ましくは10モル%未満の、より好ましくは5モル%未満の、非常に好ましくは3モル%未満の式Vの尿素含有ハロシランの残留含量を有してよい。
【0050】
本発明による第一の方法により製造される生成物中の、式Vの尿素含有ハロシランの相対モル百分率は、1H NMRにおいて、式Iの尿素含有シランのSi−C2−基における水素原子に対する、式Vの尿素含有ハロシランの−CH22−Cl基中の水素原子の積分によって測定される。
【0051】
例えば式Vの物質(EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2−Clのためには、前記相対含量の測定のために、−CH22−Cl基の水素原子(δ=3.17ppm)の積分が使用される。
【0052】
本発明による第一の方法により製造される生成物は、10モル%未満の、好ましくは5モル%未満の、より好ましくは1モル%未満の、非常に好ましくは0.1モル%未満の式IIのアミノシランの残留含量を有してよい。
【0053】
本発明による第一の方法により製造される生成物中の、式IIのアミノシランの相対モル百分率は、13C NMRにおいて、式Iの尿素含有シランのSi−2−基における炭素原子に対する、式IIのアミノシランの−2−NH2基中の炭素原子の積分によって測定される。
【0054】
例えば式IIの物質(EtO)3Si−CH2−CH2−CH2−NH2のためには、前記相対含量の測定のために、−2−NH2基の炭素原子(δ=45.15ppm)の積分が使用される。
【0055】
本発明による第一の方法により製造される生成物は、25モル%未満の、好ましくは10モル%未満の、より好ましくは5モル%未満の、非常に好ましくは3モル%未満の式IIIのイソシアネートの残留含量を有してよい。
【0056】
本発明による第一の方法により製造される生成物中の、式IIIのイソシアネートの相対モル百分率は、13C NMRにおいて、式Iの尿素含有シランのSi−2−基における炭素原子に対する、式IIIのイソシアネートのON−CH2−基中の炭素原子の積分によって測定される。
【0057】
例えば式IIIの物質OCN−CH2−CH2−Clのためには、前記相対含量の測定のために、ON−CH2−基の炭素原子(δ=124.33ppm)の積分が使用される。
【0058】
本発明は、更に、式I
【化11】
[式中、R1およびRは、それぞれ前記定義の通りである]の本発明による尿素含有シランの第二の製造方法であって、第一のステップにおいて、式VI
【化12】
のイソシアナトシランを、式VII
【化13】
[式中、RおよびR1は、それぞれ前記定義の通りであり、かつHalは、F、Cl、BrもしくはI、好ましくはClである]のアミンと反応させ、そして第二のステップにおいて、前記第一のプロセスステップからの生成物を、式IV
Na2S (IV)
のナトリウムスルフィドと反応させることを特徴とする製造方法を提供する。
【0059】
式VIの化合物は、好ましくは、
(C25O)3Si−CH2−NCO、
(C25O)3Si−CH2CH2−NCO、
(C25O)3Si−CH2CH2CH2−NCO、
(CH3O)3Si−CH2−NCO、
(CH3O)3Si−CH2CH2−NCO、または
(CH3O)3Si−CH2CH2CH2−NCO
であってよい。
【0060】
式VIIの化合物は、好ましくは、
2N−CH2−Cl、
2N−CH2CH2−Cl、または
2N−CH2CH2CH2−Cl
であってよい。
【0061】
本発明による第二の方法においては、前記第一のプロセスステップと第二のプロセスステップは、1つの反応容器中で全ての反応物を添加することによって行うことができる。
【0062】
本発明による第二の方法の第一のステップにおいては、式VIIのアミンは、式VIのイソシアナトシラン中に計量供給してよい。
【0063】
本発明による第二の方法の第一のステップにおいては、式VIのイソシアナトシランは、好ましくは、式VIIのアミン中に計量供給してよい。
【0064】
本発明による第二の方法の第一のステップにおいては、式VIのイソシアナトシランは、式VIIのアミンに対して、0.85:1〜1.15:1のモル比で、好ましくは0.90:1〜1.10:1のモル比で、より好ましくは0.95:1〜1.05:1のモル比で使用することができる。
【0065】
本発明による第二の方法の第一のステップにおける反応は、空気を排除して行うことができる。
【0066】
本発明による第二の方法の第一のステップにおける反応は、保護ガス雰囲気下で、例えばアルゴンまたは窒素下で、好ましくは窒素下で行うことができる。
【0067】
本発明による第二の方法の第一のステップは、標準圧力、高められた圧力または低減された圧力で行うことができる。好ましくは、本発明による方法は、標準圧力で行うことができる。
【0068】
高められた圧力は、1.1バール〜100バールの、好ましくは1.5バール〜50バールの、より好ましくは2バール〜20バールの、非常に好ましくは2〜10バールの圧力であってよい。
【0069】
低減された圧力は、1ミリバール〜1000ミリバールの、好ましくは1ミリバール〜500ミリバールの、より好ましくは1ミリバール〜250ミリバールの、非常に好ましくは5ミリバール〜100ミリバールの圧力であってよい。
【0070】
本発明による第二の方法の第一のステップは、−78℃〜100℃で、好ましくは−75℃〜60℃で、より好ましくは−70℃〜40℃で行うことができる。
【0071】
第一のステップにおける反応は、溶剤を用いずに、または溶剤中で、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、アセトン、アセトニトリル、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ピリジンまたは酢酸エチル中で行うことができる。
【0072】
本発明による第二の方法の第一のステップにおける反応は、有機溶剤を用いずに行うことができる。前記溶剤は、好ましくは水であってよい。
【0073】
本発明による第二の方法の第一のステップにおける溶剤は、引き続き除去することができ、好ましくは留去することができる。
【0074】
本発明による第二の方法の第一のステップにおける反応生成物は、引き続き濾過して、有機溶剤で洗浄することができる。好ましくは、洗浄のためには、アルカン、より好ましくはヘキサンが使用できる。
【0075】
本発明による第二の方法の第一のステップにおける反応生成物は、濾過の後に乾燥させることができる。前記乾燥は、20℃〜100℃の、好ましくは25℃〜50℃の温度で行うことができる。前記乾燥は、1〜500ミリバールの低減された圧力で行うことができる。
【0076】
本発明による第二の方法の第一のステップにおいて得られる式V
【化14】
の尿素含有ハロシランは、50%を上回る、好ましくは60%を上回る、非常に好ましくは70%を上回る収率で得ることができる。
【0077】
本発明による第二の方法の第二のステップにおける反応は、空気を排除して行うことができる。
【0078】
本発明による第二の方法の第二のステップにおける反応は、保護ガス雰囲気下で、例えばアルゴンまたは窒素下で、好ましくは窒素下で行うことができる。
【0079】
本発明による第二の方法の第二のステップは、標準圧力、高められた圧力または低減された圧力で行うことができる。好ましくは、本発明による方法は、標準圧力で行うことができる。
【0080】
高められた圧力は、1.1バール〜100バールの、好ましくは1.5バール〜50バールの、より好ましくは2バール〜20バールの、非常に好ましくは2〜10バールの圧力であってよい。
【0081】
低減された圧力は、1ミリバール〜1000ミリバールの、好ましくは1ミリバール〜500ミリバールの、より好ましくは1ミリバール〜250ミリバールの、非常に好ましくは5ミリバール〜100ミリバールの圧力であってよい。
【0082】
本発明による第二の方法の第二のステップは、20℃〜150℃で、好ましくは40℃〜100℃で、より好ましくは45℃〜80℃で行うことができる。
【0083】
本発明による第二の方法の第二のステップにおける反応は、溶剤を用いずに、または溶剤中で、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、アセトン、アセトニトリル、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ピリジンまたは酢酸エチル中で行うことができる。前記溶剤は、好ましくはエタノールであってよい。
【0084】
本発明による第二の方法の第二のステップにおける反応は、有機溶剤を用いずに行うことができる。前記溶剤は水であってよい。
【0085】
本発明による第二の方法の第二のステップにおける反応生成物は、濾過して、その濾過ケークを、有機溶剤で洗浄することができる。好ましくは、洗浄のためには、アルコール、より好ましくはエタノールまたはアルカン、より好ましくはヘキサンが使用できる。
【0086】
本発明による第二の方法の第二のステップにおける溶剤は、引き続き除去することができ、好ましくは留去することができる。
【0087】
本発明による第二の方法の第二のステップにおける反応生成物は、濾過と溶剤の除去の後に乾燥させることができる。前記乾燥は、20℃〜100℃の、好ましくは25℃〜50℃の温度で行うことができる。前記乾燥は、1〜500ミリバールの低減された圧力で行うことができる。
【0088】
本発明による第二の方法により第二のステップにおいて得られる式I
【化15】
の尿素含有シランは、50%を上回る、好ましくは60%を上回る、非常に好ましくは70%を上回る収率で得ることができる。
【0089】
本発明による第二の方法により製造される生成物は、25モル%未満の、好ましくは10モル%未満の、より好ましくは5モル%未満の、非常に好ましくは3モル%未満の式Vの尿素含有ハロシランの残留含量を有してよい。
【0090】
本発明による第二の方法により製造される生成物中の、式Vの尿素含有ハロシランの相対モル百分率は、1H NMRにおいて、式Iの尿素含有シランのSi−C2−基における水素原子に対する、式Vの尿素含有ハロシランの−CH22−Cl基中の水素原子の積分によって測定される。
【0091】
例えば式Vの物質(EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2−Clのためには、前記相対含量の測定のために、−CH22−Cl基の水素原子(δ=3.17ppm)の積分が使用される。
【0092】
本発明による第二の方法により製造される生成物は、10モル%未満の、好ましくは5モル%未満の、より好ましくは1モル%未満の、非常に好ましくは0.1モル%未満の式VIのイソシアナトシランの残留含量を有してよい。
【0093】
本発明による第二の方法により製造される生成物中の、式VIのイソシアナトシランの1モル%を上回る範囲内の相対モル百分率は、13C NMRにおいて、式Iの尿素含有シランのSi−2−基における炭素原子に対する、式VIのイソシアナトシランの−NO基中の炭素原子の積分によって測定される。
【0094】
例えば式VIの物質(EtO)3Si−CH2−CH2−CH2−NCOのためには、前記1モル%を上回る範囲内の相対含量の測定のために、−NO基の炭素原子(δ=122.22ppm)の積分が使用される。
【0095】
本発明による第二の方法により製造される生成物中の、式VIのイソシアナトシランの1モル%を下回る範囲内の相対モル百分率は、当業者に公知の定量的FT−IR分光分析法によって測定される。該方法は、好適な濃度の較正溶液(例えばC2Cl4中)を使用することによって較正される。その測定のために、約1gのサンプルを25mlの丸口ボトル中に量り入れ、そして25gのC2Cl4を添加する。前記サンプルを、撹拌機上で1〜2時間にわたり撹拌する。その後に、下方の液相を20mmのIRキュベット中に慎重に量り入れ、FT−IR分光分析法(4000〜1200cm-1、分解能2cm-1)によって分析する。同じ条件下で、前記溶剤のスペクトルを減算のために記録する。
【0096】
例えば式VIの物質(EtO)3Si−CH2−CH2−CH2−NCOのためには、前記1モル%を下回る範囲内の相対含量の測定のために、2270cm-1での−NCO基の原子価振動の波長が使用される。
【0097】
本発明による第二の方法により製造される生成物は、25モル%未満の、好ましくは10モル%未満の、より好ましくは5モル%未満の、非常に好ましくは3モル%未満の式VIIのアミンの残留含量を有してよい。
【0098】
本発明による第二の方法により製造される生成物中の、式VIIのアミンの相対モル百分率は、13C NMRにおいて、式Iの尿素含有シランのSi−2−基における炭素原子に対する、式VIIのアミンの−2−NH2基中の炭素原子の積分によって測定される。
【0099】
例えば式VIIの物質H2N−CH2−CH2−Clのためには、前記相対含量の測定のために、H2N−2−CH2−Cl基の炭素原子(δ=39.47ppm)またはH2N−CH22−Cl基の炭素原子(δ=37.95ppm)の積分が使用される。
【0100】
式VIIのアミンは、式VIのイソシアナトシランとの反応の前に、式VIII
【化16】
のアミンの塩酸塩から、塩基、好ましくはNaOEtの添加によって製造できる。前記塩基は、pH7〜14に至るまで添加することができる。
【0101】
好ましい一実施形態においては、式I
【化17】
[式中、RおよびR1は、それぞれ前記定義の通りである]の尿素含有シランの第二の製造方法は、式VIII
【化18】
のアミンの塩酸塩を、エタノール中に溶解させ、そして塩基と反応させ、次いで、式VI
【化19】
のイソシアナトシランを添加し、次いで式IV
Na2S (IV)
のナトリウムスルフィドを添加し、該混合物を濾過し、そして溶剤を除去する、好ましくは留去することを特徴としうる。
【0102】
本発明による第二の方法により製造される生成物は、25モル%未満の、好ましくは10モル%未満の、より好ましくは5モル%未満の、非常に好ましくは3モル%未満の式VIIIのアミンの塩酸塩の残留含量を有してよい。
【0103】
本発明による第二の方法により製造される生成物中の、式VIIIのアミンの塩酸塩の相対モル百分率は、13C NMRにおいて、式Iの化合物のSi−2−基における炭素原子に対する、式VIIIのアミンの塩酸塩の−2−NH2・HCl基中の炭素原子の積分によって測定される。
【0104】
例えば式VIIIの物質HCl・H2N−CH2−CH2−Clのためには、前記相対含量の測定のために、HCl・H2N−2−CH2−Cl基の炭素原子(δ=41.25ppm)またはHCl・H2N−CH22−Cl基の炭素原子(δ=40.79ppm)の積分が使用される。
【0105】
本発明による方法によって製造される式Iの尿素含有シランは、当業者に公知の1H NMR法、13C NMR法または29Si NMR法によって特性決定することができる。
【0106】
本発明による方法によって得られる生成物中の式Iの尿素含有シランの、DMSO−d6中またはCDCl3中での可溶性成分は、内部標準、例えばトリフェニルホスフィンオキシド(TPPO)をDMSO−d6中またはCDCl3中に添加して、当業者に公知の1H NMR法によって測定される。
【0107】
式Iの尿素含有シランは、無機材料、例えばガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス表面、ガラス繊維もしくは酸化物充填剤、好ましくはシリカ、例えば沈降シリカおよびフュームドシリカと、有機ポリマー、例えば熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマーもしくはエラストマーとの間の接着促進剤として、または架橋剤として、および酸化物表面用の表面改質剤として使用できる。
【0108】
式Iの尿素含有シランは、充填剤が加えられたゴム混合物中でカップリング試薬として使用してよく、例は、タイヤトレッド、工業用ゴム製品または履物のソールである。
【0109】
式Iの本発明による尿素含有シランの利点は、ゴム混合物における、改善された加工特性と、ウェットスキッド性能と、動粘度である。
【実施例】
【0110】
比較例1:水中での[(EtO)3Si−(CH23−NH−C(=O)−NH−(CH22−S−]2の製造
精密ガラス撹拌機、還流冷却器、内部温度計および滴下漏斗を備える、N2パージされた1lのジャケット付の四ツ口フラスコに、脱塩水(382ml)中に溶解されたシスタミン二塩酸塩(108.39g、0.47モル、1.00当量)を初充填する。滴下漏斗によって、50%のKOH溶液(92.31g、0.82モル、1.75当量)を15〜23℃で量り入れ、そして該混合物を30分にわたり撹拌する。次いで、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(221.05g、0.85モル、1.8当量)を、内部温度30℃を超過しない速度で計量供給する。その後に、該混合物を24℃で1時間にわたり撹拌する。その白色の懸濁液を圧力下で濾過し、3回に分けて脱塩水で(全部で340ml)すすぎ、そして乾燥N2で2時間にわたり乾燥させる。濾過ケークを回転蒸発器中でN2流において35℃および166ミリバールで7時間にわたり乾燥させ、35℃および150ミリバールで10時間にわたり乾燥させ、そして35℃および100ミリバールで9時間にわたり乾燥させる。生成物の[(EtO)3Si−(CH23−NH−C(=O)−NH−(CH22−S−]2は、微細な白色粉末(246.38g、理論値の90.7%)である。
【0111】
1H NMR (δppm, 500 MHz, DMSO-d6): 0.52 (4H, t), 1.14 (18H, t), 1.42 (4H, m), 2.74 (4H, m), 2.96 (4H, m), 3.29 (4H, m), 3.74 (12H, q), 6.05 (4H, m)
13C NMR (δppm, 125 MHz, DMSO-d6): 7.3 (2C), 18.2 (6C), 23.5 (2C), 38.5 (2C), 39.6 (2C), 42.0 (2C), 57.7 (6C) 157.9 (2C)
29Si NMR (δppm, 100 MHz, DMSO-d6):−45.3(100%シラン)
TPPO内部標準を用いたd6−DMSO中の可溶性成分:86.0%
含水率(DIN 51777):0.7%
初融点:97℃
残留イソシアネート含量:0.08%。
【0112】
実施例1:(EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2−S−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH2−Si(OEt)3の、(EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH2、OCN−CH2CH2−ClおよびNa2Sからの製造(本発明による第一の方法と同様)
第一の反応ステップにおいて、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(73.05g、0.33モル、1.00当量)を、精密ガラス撹拌機、内部温度計、滴下漏斗および還流冷却器を備える4lの三ツ口フラスコ中でペンタン(2.5l)中に初充填し、そして−78℃に冷却する。2−クロロエチルイソシアネート(34.82g、0.33モル、1.00当量)を−78℃〜−70℃で4.5時間以内で滴加し、次いで該混合物を室温に温める。その白色の懸濁液を濾過し、ペンタンで洗浄し、そしてN2で一晩乾燥させる。中間体の(EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2−Cl(100.52g、定量的)は、白色のフレーク状の粉末である。
【0113】
第二の反応ステップにおいて、(EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2−Cl(100.00g、0.31モル、2.00当量)を、撹拌機、還流冷却器および内部温度計を備える500mlの三ツ口フラスコ中でエタノール(75ml)中に初充填する。乾燥ナトリウムスルフィド(Na2S、14.47g、0.18モル、1.17当量)を添加し、そして該混合物を加熱還流する。4.5時間の反応時間の後に、該混合物を室温に冷却し、そして該懸濁液を濾過する。濾液から溶剤を回転蒸発器上で除去し、そして減圧下で乾燥させる。生成物の(EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2−S−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH2−Si(OEt)3(93.34g、理論値の99.2%)が蝋様の淡緑色の固体として得られる。
【0114】
1H NMR (δppm, 500 MHz, CDCl3): 0.64 (4H, t), 1.22 (18H, t), 1.60 (4H, m), 2.66 (4H, t), 3.15 (4H, m), 3.39 (4H, m), 3.82 (12H, q), 5.2-6.4 (4H, br)
13C NMR (δppm, 125 MHz, CDCl3): 7.8 (2C), 18.3 (6C), 23.8 (2C), 32.8 (2C), 40.2 (2C), 42.8 (2C), 58.4 (6C), 159.2 (2C)。
【0115】
実施例2:(EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2−S−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH2−Si(OEt)3の、(EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH2、OCN−CH2CH2−ClおよびNa2Sからの製造(本発明による第一の方法と同様)
第一の反応ステップにおいて、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(159.39g、0.72モル、1.00当量)を、精密ガラス撹拌機、内部温度計、滴下漏斗および還流冷却器を備える4lの三ツ口フラスコ中でエタノール(3.0l)中に初充填し、そして−78℃に冷却する。2−クロロエチルイソシアネート(75.92g、0.72モル、1.00当量)を−78℃〜−69℃で2.25時間以内で滴加し、次いで該混合物を50℃に加熱する。乾燥ナトリウムスルフィド(Na2S、28.09g、0.36モル、0.50当量)を5回に分けて添加し、そして該混合物を加熱還流する。4.5時間の反応時間の後に、該混合物を室温に冷却し、そして該懸濁液を濾過する。濾液から溶剤を回転蒸発器で除去し、そして減圧下で乾燥させる。生成物の(EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2−S−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH2−Si(OEt)3(214.09g、理論値の96.7%)が蝋様の白色の固体として得られる。
【0116】
1H NMR (δppm, 500 MHz, CDCl3): 0.64 (4H, t), 1.22 (18H, t), 1.61 (4H, m), 2.67 (4H, t), 3.15 (4H, 30 m), 3.40 (4H, m), 3.82 (12H, q), 5.16 (2H, br), 5.43 (2H, br)
13C NMR (δppm, 125 MHz, CDCl3): 7.8 (2C), 18.3 (6C), 23.8 (2C), 33.0 (2C), 40.3 (2C), 42.9 (2C), 58.4 (6C), 159.3 (2C)。
【0117】
実施例3:(EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2−S−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH2−Si(OEt)3の、(EtO)3Si−CH2CH2CH2−NCO、HCl・H2N−CH2CH2−ClおよびNa2Sからの製造(本発明による第二の方法と同様)
第一の反応ステップにおいて、3−クロロエチルアミン塩酸塩(73.86g、0.70モル、1.00当量)を、精密ガラス撹拌機、内部温度計、滴下漏斗および還流冷却器を備える4lの三ツ口フラスコ中でエタノール(3.0l)中に初充填し、そして−78℃に冷却し、そしてナトリウムエトキシド(226.83g、0.70モル、1.00当量、エタノール中21%)を添加する。3−イソシアナトプロピル(トリエトキシシラン)(173.15g、0.70モル、1.00当量)を次いで−78℃〜−70℃で3時間以内で滴加し、そして次いで該混合物を50℃に加熱する。乾燥ナトリウムスルフィド(Na2S、27.31g、0.35モル、0.50当量)を5回に分けて添加し、そして該混合物を加熱還流する。4時間の反応時間の後に、該混合物を室温に冷却し、そして該懸濁液を濾過する。濾液から溶剤を回転蒸発器で除去し、そして減圧下で乾燥させる。生成物の(EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2−S−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH2−Si(OEt)3(212.68g、理論値の98.8%)が黄色の固体として得られる。
【0118】
実施例4:ゴム混合物
ゴム混合物のために使用される配合は、以下の第1表に具体的に示されている。この表中で、単位phrは、使用される原料ゴム100質量部に対しての質量部を意味する。本発明によるシランは、比較シランに対して等モル割合で使用される。
【0119】
第1表:
【表1】
【0120】
使用した物質:
a)NR TSR:SIR 20 SED, Aneka Bumi Pratama社製(TSR=技術的格付けゴム;SIR=標準インドネシアゴム)
b)BR:ポリブタジエン, Europrene Neocis BR 40, Polimeri社製
c)SSBR:Sprintan(登録商標)SLR-4601, Styron社製
d)シリカ:ULTRASIL(登録商標)VN3 GR, Evonik Industries AG社製
e)6PPD:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
f)DPG:ジフェニルグアニジン
g)CBS:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド。
【0121】
前記混合物は、慣用の条件下で2段階においてゴム混合物製造用の研究室用ニーダー(容量300ミリリットル〜3リットル)中で、まずは第一の混合段階(基礎混合段階)において、架橋系(硫黄および加硫に影響する物質)以外の全ての成分を145〜165℃(152〜157℃の標的温度)で200〜600秒にわたり混合することによって製造した。第二段階(調合段階)での加硫系の添加により、90〜120℃で180〜300秒にわたり混合して最終混合物を製造する。
【0122】
ゴム混合物およびそれらの加硫物の一般的製造方法は、「ゴム技術ハンドブック(Rubber Technology Handbook)」, W. Hofmann, Hanser出版 1994に記載されている。
【0123】
ゴム試験を、第2表に具体的に示される試験方法によって行う。
【0124】
第2表:
【表2】
【0125】
前記混合物を使用して、160℃で圧力下で加硫することにより試験片をt95(ISO 6502/ASTM D5289-12によりムービングダイレオメーターで測定)後で作製する。第3表は、ゴムデータを報告している。
【0126】
第3表:
【表3】
【0127】
実施例2からの本発明による尿素含有シランを含むゴム混合物IIは、等モル使用で比較例1(ジスルフィドシラン)を含む参照ゴム混合物Iと比較して、改善された加工特性(3番目の混合段階の後の低い最低トルク)、改善されたウェットスキッド性能(23℃での反発弾性)および高められた動粘度(0.15%伸び時のE’および8%伸び時のE’−0.15%伸び時のE’)を示している。
【0128】
[本発明の態様]
1. 式I
【化20】
[式中、R1は、同一または異なって、C1〜C10−アルコキシ基、C2〜C10−環状ジアルコキシ基、フェノキシ基、C4〜C10−シクロアルコキシ基、C6〜C20−アリール基、C1〜C10−アルキル基、C2〜C20−アルケニル基、C7〜C20−アラルキル基もしくはハロゲンであり、かつRは、同一または異なって、分枝鎖状もしくは非分枝鎖状の、飽和もしくは不飽和の、脂肪族の、芳香族の、もしくは脂肪族/芳香族の混合型の二価のC1〜C30−炭化水素基である]の尿素含有シラン。
2. 式Iの尿素含有シランが、
((EtO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((EtO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((EtO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22S、
((EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22S、
((MeO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((MeO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((MeO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((MeO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((MeO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH22S、
((MeO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH22S、
((MeO)3Si−CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22S、
((MeO)3Si−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22S、または
((MeO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH22
であることを特徴とする、1に記載の尿素含有シラン。
3. 式Iの尿素含有シランが、
(EtO)3Si−CH2CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2−S−CH2CH2−NH−CO−NH−CH2CH2CH2−Si(OEt)3
であることを特徴とする、1または2に記載の尿素含有シラン。
4. 1から3までのいずれかに記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、第一のステップにおいて、式II
【化21】
のアミノシランを、式III
【化22】
のイソシアネートと反応させ、前記式中、RおよびR1は、それぞれ1に定義される通りであり、かつHalは、F、Cl、BrもしくはIであり、そして第二のステップにおいて、前記第一のプロセスステップからの生成物を、式(IV)
Na2S (IV)
のナトリウムスルフィドと反応させることを特徴とする製造方法。
5. 4に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、前記第一のステップを保護ガス雰囲気下で実施することを特徴とする製造方法。
6. 4または5に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、前記第二のステップを保護ガス雰囲気下で実施することを特徴とする製造方法。
7. 4から6までのいずれかに記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、前記第一のステップを−78℃〜100℃の間の温度で実施することを特徴とする製造方法。
8. 4から7までのいずれかに記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、前記第二のステップを20℃〜150℃の間の温度で実施することを特徴とする製造方法。
9. 4から8までのいずれかに記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、エタノールを、第一のステップにおける溶剤として使用することを特徴とする製造方法。
10. 4から9までのいずれかに記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、エタノールを、第二のステップにおける溶剤として使用することを特徴とする製造方法。
11. 9または10に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、前記アルコールを、第一のステップまたは第二のステップの後で留去することを特徴とする製造方法。
12. 1に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、第一のステップにおいて、式VI
【化23】
のイソシアナトシランを、式VII
【化24】
のアミンと反応させ、前記式中、RおよびR1は、それぞれ1に定義される通りであり、かつHalは、F、Cl、BrもしくはIであり、そして第二のステップにおいて、前記第一のプロセスステップからの生成物を、式(IV)
Na2S (IV)
のナトリウムスルフィドと反応させることを特徴とする製造方法。
13. 12に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、式VIIのアミンが、式VIのイソシアナトシランとの反応の前に、式VIII
Cl- +3N−R−S−S−R−NH3+Cl- (VIII)
のジアミンの塩酸塩から塩基の添加によって製造されることを特徴とする製造方法。
14. 13に記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、使用される塩基がNaOEtであることを特徴とする製造方法。
15. 12から14までのいずれかに記載の式Iの尿素含有シランの製造方法であって、生成物が乾燥されることを特徴とする製造方法。