特許第6482956号(P6482956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482956
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】クロセチンの定量方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20190304BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   G01N31/00 V
   G01N21/59 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-113368(P2015-113368)
(22)【出願日】2015年6月3日
(65)【公開番号】特開2016-224006(P2016-224006A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村上 桂
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−067592(JP,A)
【文献】 特開2014−019692(JP,A)
【文献】 特開2010−281664(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/147092(WO,A1)
【文献】 特開2014−110765(JP,A)
【文献】 特開2011−085511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00−31/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(A)〜(F)を順次行うことを特徴とするクロセチンの定量方法。
(A):クロセチンを含有する組成物を高極性有機溶媒に溶解する工程
(B):工程(A)で得られた溶解液と低極性有機溶媒とを混合する工程
(C):工程(B)で得られた混合液中に生成した析出物を除去する工程
(D):工程(C)で析出物が除去された混合液とアルカリ性水溶液とを混合する工程
(E):工程(D)で得られた混合液を水相と有機相とに相分離させる工程
(F):工程(E)で得られた水相について、クロセチンに由来する吸光度を測定する工程
【請求項2】
高極性有機溶媒が、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、メタノール及びエタノールから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のクロセチンの定量方法。
【請求項3】
低極性有機溶媒が、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のクロセチンの定量方法。
【請求項4】
クロセチンを含有する組成物が、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、咀嚼剤、カプセル剤又はチュアブル剤である請求項1〜3のいずれかに記載のクロセチンの定量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロセチンの定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイドの一種であるクロセチンは、抗酸化作用、眼精疲労、睡眠障害の改善等の様々な生理機能を有するため、健康食品やサプリメント等の素材として使用されている他、ドリンクやゼリー等の飲食品にも配合されている。そこで、クロセチンを含有する製品の品質管理のため、クロセチンの含有量を定量する必要がある。
【0003】
カロテノイドの定量方法としては、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析する直接定量法が行われている(特許文献1参照)。しかし、この方法は、標準品として市販されている高純度のカロテノイドが入手できなければ正確な定量が行えず、また専用の分析機器を必要とするため、利便性に問題を抱えていた。
【0004】
他方、カロテノイドを含有する試料について分光光度計を用いて吸光度を測定し、文献に報告されているカロテノイドの吸光係数から該試料のカロテノイド含有量を算出する間接定量法も行われている(特許文献2参照)。しかし、この方法は、試料に含まれるカロテノイド以外の物質による光の吸収のため、実際のカロテノイドの含有量よりも高い数値が求められる傾向があり、正確な定量が比較的困難である。
【0005】
そして、上記直接定量法及び間接定量法における問題は、カロテノイドの中でも特にクロセチンの定量において強く解決が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−127905号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2014−110765号公報(明細書段落0058〜0059)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、クロセチンの標準品を用いることなく簡便に正確な定量が可能なクロセチンの定量方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、クロセチンを含有する組成物について特定の有機溶媒及びアルカリ性水溶液を用いてクロセチン以外の夾雑物を除去することにより、吸光度測定によるクロセチンの定量精度が向上することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の(1)〜(4)からなっている。
(1)以下の工程(A)〜(F)を順次行うことを特徴とするクロセチンの定量方法。
(A):クロセチンを含有する組成物を高極性有機溶媒に溶解する工程
(B):工程(A)で得られた溶解液と低極性有機溶媒とを混合する工程
(C):工程(B)で得られた混合液中に生成した析出物を除去する工程
(D):工程(C)で析出物が除去された混合液とアルカリ性水溶液とを混合する工程
(E):工程(D)で得られた混合液を水相と有機相とに相分離させる工程
(F):工程(E)で得られた水相について、クロセチンに由来する吸光度を測定する工程
(2)高極性有機溶媒が、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、メタノール及びエタノールから選ばれる1種以上であることを特徴とする前記(1)に記載のクロセチンの定量方法。
(3)低極性有機溶媒が、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンから選ばれる1種以上であることを特徴とする前記(1)に記載のクロセチンの定量方法。
(4)クロセチンを含有する組成物が、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、咀嚼剤、カプセル剤又はチュアブル剤である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のクロセチンの定量方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の定量方法によれば、クロセチンの標準品を用いることなく簡便に正確なクロセチンの定量が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で言うところのクロセチンとは、式
【0012】
【化1】
で表される化合物である。このクロセチンは、通常、カロテノイド系の黄色色素であるクロシン(クロセチンのジゲンチオビオースエステル)を加水分解することにより得られる。クロシンは、アカネ科クチナシ(Gardenia augusta MERRIL var.grandiflora HORT.,Gardenia jasminoides ELLIS)の果実、サフランの柱頭の乾燥物等に含まれるが、クロシンを得るための工業的原料としてはクチナシの果実が好ましく用いられる。
【0013】
本発明のクロセチンの定量方法は、クロセチンを含有する組成物について次の工程(A)〜(F)を順次実施することを特徴とする。以下、各工程について説明する。
【0014】
[工程(A)]
工程(A)は、クロセチンを含有する組成物(以下、単に「試料」ともいう)を高極性有機溶媒に溶解する工程である。高極性有機溶媒としては、後述の低極性有機溶媒よりも極性が高く、且つ該低極性有機溶媒と混和可能なものであれば特に制限はないが、例えばジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、メタノール、エタノール、メトキシエタノール、ベンジルアルコール、ニトロエタン又はジオキサン等が挙げられ、中でもジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、メタノール又はエタノール、が好ましい。溶解方法に特に制限はなく、例えば、攪拌による溶解、超音波照射による溶解、振とうによる溶解等種々の方法が使用可能であるが、超音波照射による溶解が好ましく使用される。高極性有機溶媒の使用量に特に制限はないが、試料100質量部に対し通常2000〜150000質量部、好ましくは4000〜24000質量部である。また、溶解温度に特に制限はないが、通常10〜90℃、好ましくは20〜80℃である。
【0015】
[工程(B)]
工程(B)は、工程(A)で得られた溶解液と低極性有機溶媒とを混合する工程である。低極性有機溶媒としては、上記高極性有機溶媒よりも極性が低く、且つ該高極性有機溶媒と混和可能なものであれば特に制限はないが、例えば、トルエン、キシレン又はエチルベンゼン等が挙げられる。混合方法に特に制限はなく、例えば攪拌による混合、振とうによる混合等、自体公知の方法が使用可能である。低極性有機溶媒の使用量に特に制限はないが、工程(A)で得られた溶解液100質量部に対し通常250〜2000質量部、好ましくは500〜1200質量部である。
【0016】
[工程(C)]
工程(C)は、工程(B)で得られた混合液中に生成した析出物を除去する工程である。析出物の除去方法に特に制限はなく、例えば、遠心分離、ろ過等、自体公知の固液分離方法が使用可能であるが、ろ過が好ましく使用される。ろ過方法に特に制限はないが、例えば、フィルターと慣用の装置とを用いて、常法によりろ過することができる。フィルターとしては、例えばシリンジフィルターを使用することが好ましく、Polytetrafluoroethilene(PTFE)製の疎水性シリンジフィルターを使用することがより好ましい。また、シリンジフィルターは、析出物による目詰まり防止のため、二層構造からなるものの使用が好ましい。
【0017】
なお、上記析出物は、試料中に含まれていた比較的極性の高い夾雑成分(即ち、クロセチン以外の成分)である。例えば、試料中にアントシアニン類、ポリフェノール類、水溶性ビタミン類等の夾雑成分が含まれていた場合、これら成分は、工程(A)において高極性有機溶媒に溶解し、その後、工程(B)で得られた混合液中に析出する。
【0018】
[工程(D)]
工程(D)は、工程(C)で析出物が除去された混合液とアルカリ性水溶液とを混合する工程である。アルカリ性水溶液としては、例えば、pH8以上のアルカリ性緩衝液を使用することが好ましく、中でもクロセチンのモル吸光係数及びクロセチン純品の色価が明らかとなっているKolthoff氏緩衝液(50mM NaCO−50mM Na;pH10.0)の使用がより好ましい。
【0019】
工程(D)における混合方法に特に制限はなく、例えば攪拌による混合、振とうによる混合等、自体公知の方法が使用可能である。アルカリ性水溶液の使用量に特に制限はないが、工程(C)で析出物が除去された混合液100質量部に対し通常400〜50000質量部、好ましくは900〜10000質量部である。
【0020】
[工程(E)]
工程(E)は、工程(D)で得られた混合液を水相と有機相とに相分離させる工程である。相分離させる方法に特に制限はないが、例えば、工程(D)で得られた混合液を、例えば1分間〜24時間静置しても良く、該混合液を遠心分離処理しても良い。
【0021】
尚、上記工程(A)〜(E)により、試料中のクロセチンは水相に移行し、クロセチン以外の比較的極性の低い夾雑成分は有機相に移行し、分離される。該夾雑成分としては、例えば、β−カロチン、リコピン、アスタキサンチン、ルテイン、β−クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、カプサンチン等のカロテノイド類とそのエステル体、ユビキノン等が挙げられる。
【0022】
[工程(F)]
工程(F)は、工程(E)で得られた水相について、クロセチンに由来する吸光度を測定する工程である。具体的には、例えば、紫外・可視分光光度計等の自体公知の吸光度測定手段を用いることにより、クロセチンに由来する吸光度(例えば、波長410〜430nmにおける吸光度、好ましくは波長420nmにおける吸光度)を測定することができる。尚、工程(F)では、吸光度の測定前に、上記水相に混入した微量の低極性有機溶媒を除去するため、例えば、Polyvinylidenedifluoride(PVDF)製やCellulose Acetate製等の親水性シリンジフィルターを用いて該水相をろ過することが好ましく行われる。
【0023】
次いで、工程(F)により測定された吸光度に基づき、自体公知の方法に従い、試料のクロセチン含有量を求めることができる。例えば、試料中のクロセチンは上記水相に移行しているため、上記吸光度とクロセチンのモル吸光係数(例えば、120500mol−1・L−1・cm(溶媒:Kolthoff氏緩衝液))又はクロセチン純品の色価(例えば、E10%1cm=36700(溶媒:Kolthoff氏緩衝液))等とに基づき、試料のクロセチン含有量又は含有率を求めることができる。より具体的には、例えば、工程(F)で得られたクロセチンに由来する吸光度及びクロセチン純品の色価(E10%1cm=36700(溶媒:Kolthoff氏緩衝液))に基づき、下式により、試料のクロセチン含有率を算出することができる。
クロセチン含有率(質量%)=CV/36700×100
CV:試料の色価(E10%1cm)=(10×A×F)/試料の採取量(g)
A:クロセチンに由来する吸光度
F:測定吸光度が0.1〜1.0の範囲に入るように調整するための希釈倍率
【0024】
ここで、上記式におけるCV(試料の色価)は、「第8版 食品添加物公定書」(日本食品添加物協会)に記載された「色価測定法」に準じて測定される。但し、該「色価測定法」においては、「通例、色価は、着色料溶液の可視部での極大吸収波長における吸光度を測定し、10w/v%溶液の吸光度に換算した数値(E10%1cm)で表す」と定められている。しかし、本発明においては、「可視部での極大吸収波長における吸光度」ではなく、クロセチンに由来する吸光度(例えば、波長410〜430nmにおける吸光度、好ましくは波長420nmにおける吸光度)を用いて色価を求める点において、その定めとは異なる。
【0025】
また、上記式における「F:測定吸光度が0.1〜1.0の範囲に入るように調整するための希釈倍率」は、上記「色価測定法」に示される希釈方法に従い決定する。例えば、試料に溶媒等を加えて100mLとすることにより、吸光度が0.1〜1.0の範囲内の検液を調製した場合、希釈倍率は「1」である。また、試料に溶媒等を加えて100mLとし、そのうち2mLを取り、これに溶媒等を加えて希釈して50mLとすることにより、吸光度が0.1〜1.0の範囲内の検液を調製した場合、希釈倍率は「25」である。
【0026】
従って、上記式におけるCV(試料の色価)を求める場合、本発明の実施に用いる高極性有機溶媒、低極性有機溶媒及びアルカリ性水溶液の使用量は、工程(E)で測定されるクロセチンに由来する吸光度が0.1〜1.0の範囲に入るように調整する必要がある。
【0027】
本発明の定量方法の実施対象であるクロセチンを含有する組成物に特に制限はなく、例えばクロセチンを含有する食品、食品材料、医薬部外品、医薬品、医薬品材料、医薬部外品材料であってもよい。該組成物に含有されるクロセチン以外の成分に特に制限はないが、例えば、アントシアニン類、ポリフェノール類、水溶性ビタミン類等の比較的極性の高い成分や、β−カロチン、リコピン、アスタキサンチン、ルテイン、β−クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、カプサンチン等のカロテノイド類とそのエステル体、ユビキノン等の比較的極性の低い成分が挙げられる他、薬学的若しくは食品衛生上許容される各種の担体、例えば賦形剤、滑沢剤、安定剤、分散剤、結合剤、希釈剤、香味料、甘味料、風味剤、着色剤等を例示することができる。
【0028】
上記組成物の形態は、本発明の効果を奏するものである限り特に制限されず、例えば、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、咀嚼剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセルに充填されたもの)、チュアブル剤等が挙げられる。
【0029】
但し、上記組成物が水を含むものであると、工程(B)で得られた混合液が水相と有機相とに相分離し、定量精度が低下する虞があるため、該組成物は実質的に水を含まないもの(例えば、水分含有量が10質量%未満の組成物)であることが好ましい。
【0030】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
[ソフトカプセル剤の製造]
クロセチンを含有する組成物として、ソフトカプセル剤を製造した。先ず、DHA含有脂肪酸組成物(製品名:DHA−27W;マルハニチロ食品社製)1578.6g及びソフトカプセル安定化剤(製品名:エマックスBW−36;理研ビタミン社製)240gを約60℃に加温しながら混合し、これにビタミンE(製品名:理研Eオイル710;理研ビタミン社製)を加え、同温度で更に混合した。得られた混合物を室温まで冷却し、これにクロセチン(製品名:クロビットP;クロセチン含有量76.5質量%;理研ビタミン社製)55.1g、マリーゴールド色素(製品名:RKマリーゴールド500;理研ビタミン社製)330g、β−カロチン含有組成物(製品名:バイオカロチン30MCT;協和発酵工業社製)99g、ビルベリーエキス(製品名:ビルベリーカンソウエキスET;インデナジャパン社製)250.1g、カシスポリフェノール(製品名:明治カシスポリフェノール;明治フードマテリア社製)250.1g、ビタミンB1塩酸塩(DSMニュートリションジャパン社製)15g、ビタミンB2(製品名:リボフラビンF;三菱化学フーズ社製)16.5g、ビタミンB6塩酸塩(DSMニュートリションジャパン社製)15g、ビタミンB12含有水溶性粉末(製品名;ビタミンB12含有量0.1質量%;DSMニュートリションジャパン社製)30g及び葉酸(DSMニュートリションジャパン社製)0.8gを添加し、ミキサー(型式:ウルトラタラックスT−25ベーシック;IKAジャパン社製)を用いて8000rpmで10分間攪拌・混合した。得られた分散液を目開き212μmの篩に通した後、脱泡処理を行い、ソフトカプセル中身液約3000gを得た。得られた中身液をソフトカプセル充填機により内容量が200mgとなるように充填し、ソフトカプセル剤(1カプセル当りのクロセチン含有量2.81mg/cp)を得た。尚、ソフトカプセル剤の皮膜は、ソフトカプセル剤の製造に通常用いられるゼラチンとグリセリンの混合物を用いた。
【0032】
[実施例1]
上記ソフトカプセル剤の中身液150mgを試料として採取し、100mL容メスフラスコに秤量した。これに高極性有機溶媒としてジメチルスルホキシド10mLを加えて45℃に加温しながら超音波処理により該中身液を溶解した。得られた溶解液に低極性有機溶媒としてトルエンを加えて100mLに定容し、これを良く撹拌・混合し、析出物を生成させた。該析出物を含む混合液をPTFE製の疎水性シリンジフィルター(製品名:25mmGD/Xシリンジフィルター(PTFE0.45μm);GEヘルスケア・ジャパン社製)にて約10mLろ過した。ここで、ろ過初期に流出した約5mLのろ液は廃棄し、その後流出した約5mLのろ液を試験管に回収した。回収したろ液のうち2mLをホールピペットで採取して50mL容メスフラスコに入れ、これにKolthoff氏緩衝液(50mM NaCO−50mM Na;pH10.0)を40〜48mL程度加えて激しく振とうした。その後、メスフラスコの内容物が2層に分かれるまで静置し、これに同緩衝液を加えて下層(水相)を50mLに定容した。これを再度激しく振とうして混合し、該混合液の一部を遠沈管に移して遠心分離処理(3000rpm;5分間;室温)した。遠心分離処理により得られた下層(水相)を約10mL採取し、PVDF製の親水性シリンジフィルター(製品名:25mmGD/Xフィルター(PVDF0.45μm);GEヘルスケア・ジャパン社製)にてろ過した。ここで、ろ過初期に流出した約5mLのろ液は廃棄し、その後流出した約5mLのろ液を試験管に回収した。回収したろ液(水相)について、波長420nmでの吸光度を紫外・可視分光光度計にて測定し、次式によりソフトカプセル剤1カプセル当りのクロセチン含有量(mg/cp)を求めた。
クロセチン含有量(mg/cp)=200×クロセチン含有率(質量%)/100
クロセチン含有率(質量%)=中身液の色価(E10%1cm)/36700×100
中身液の色価(E10%1cm)=(10×A×25)/試料の採取量(mg)×1000
【0033】
尚、上記式中、「200」は、ソフトカプセル剤1カプセル当りの中身液量(mg)であり、「36700」は、クロセチン純品の色価(E10%1cm=36700)であり、「A」は、波長420nmにおける水相の吸光度であり、「25」は、測定吸光度が0.1〜1.0の範囲に入るように調整された希釈倍率である。
【0034】
[実施例2]
実施例1のジメチルスルホキシド10mLに替えて、ジメチルホルムアミド10mLを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施し、ソフトカプセル剤1カプセル当りのクロセチン含有量(mg/cp)を求めた。
【0035】
[実施例3]
実施例1のジメチルスルホキシド10mLに替えて、ピリジン10mLを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施し、ソフトカプセル剤1カプセル当りのクロセチン含有量(mg/cp)を求めた。
【0036】
[実施例4]
実施例1のジメチルスルホキシド10mLに替えて、メタノール10mLを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施し、ソフトカプセル剤1カプセル当りのクロセチン含有量(mg/cp)を求めた。
【0037】
[実施例5]
実施例1のジメチルスルホキシド10mLに替えて、エタノール10mLを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施し、ソフトカプセル剤1カプセル当りのクロセチン含有量(mg/cp)を求めた。
【0038】
[実施例6]
実施例1で100mLに定容するために用いたトルエンに替えて、キシレンを使用したこと以外は、実施例1と同様に実施し、ソフトカプセル剤1カプセル当りのクロセチン含有量(mg/cp)を求めた。
【0039】
[実施例7]
実施例2で100mLに定容するために用いたトルエンに替えて、キシレンを使用したこと以外は、実施例2と同様に実施し、ソフトカプセル剤1カプセル当りのクロセチン含有量(mg/cp)を求めた。
【0040】
[実施例8]
実施例3で100mLに定容するために用いたトルエンに替えて、キシレンを使用したこと以外は、実施例3と同様に実施し、ソフトカプセル剤1カプセル当りのクロセチン含有量(mg/cp)を求めた。
【0041】
[実施例9]
実施例4で100mLに定容するために用いたトルエンに替えて、キシレンを使用したこと以外は、実施例4と同様に実施し、ソフトカプセル剤1カプセル当りのクロセチン含有量(mg/cp)を求めた。
【0042】
[実施例10]
実施例5で100mLに定容するために用いたトルエンに替えて、キシレンを使用したこと以外は、実施例5と同様に実施し、ソフトカプセル剤1カプセル当りのクロセチン含有量(mg/cp)を求めた。
【0043】
[比較例]
上記ソフトカプセル剤の中身液150mgを100mL容メスフラスコに秤量した。これにKolthoff氏緩衝液(50mM NaCO−50mM Na;pH10.0)90mLを加えて45℃に加温しながら超音波処理により該中身液を溶解した。得られた溶解液に同緩衝液を加えて100mLに定容し、PVDF製の親水性シリンジフィルター(製品名:25mmGD/Xフィルター;孔径0.45μm;ワットマン社製)にてろ過した。ここで、ろ過初期に流出した約5mLのろ液は廃棄し、その後流出した約5mLのろ液を試験管に回収した。回収したろ液のうち2mLをホールピペットで採取して50mL容メスフラスコに入れ、これに同Kolthoff氏緩衝液を加えて50mLに定容し、撹拌した。得られた溶液について、波長420nmでの吸光度を紫外・可視分光光度計にて測定し、実施例1と同じ式によりソフトカプセル剤1カプセル当りのクロセチン含有量(mg/cp)を求めた。
【0044】
上記実施例1〜10及び比較例により求められたクロセチン定量値(mg/cp)及び該定量値についてのクロセチンの理論含有量(2.81mg/cp)を基準とする回収率(%)を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1の結果から明らかなように、本発明の定量方法(実施例1〜10)によれば、比較例の定量方法に比べ、100%に近い回収率でクロセチンを定量できた。