(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラ等で用いられているオートフォーカス機構では、レンズを移動させるメカニカル機構が必須であり、そのため小型化や耐衝撃性等に問題があった。これに対し、液晶への電圧印加に応じて、焦点距離を可変できる液晶レンズと称される屈折率勾配型レンズとして機能する液晶光学素子が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1の液晶光学素子は、同一構成の第1の液晶光学素子と第2の液晶光学素子を有し、第1の液晶光学素子における偏光軸と第2の液晶光学素子における偏光軸とが直交するように両者を光学装置の光軸上に配置している。
【0004】
これは、液晶光学素子には視野角特性があり、液晶層を通過する光のうち、偏光方向が各液晶光学素子の偏光軸と略一致した光のみが、液晶による屈折率変化の影響を受けるので、デジタルカメラ等の光学装置に入射する光の全ての偏光方向に対応できるように、2枚の液晶光学素子の偏光軸を直交させて配置する必要があるからである。
【0005】
また、特許文献1には記載されていない構成であるが、特定の偏光に対してレンズの効果を大きくしたい場合などでは、複数の液晶素子の偏光軸が一致するように重ねて配置することで、レンズ効果の大きな光学素子を実現できることも知られている。
【0006】
また、顕微鏡や光ピックアップなどの光学装置で発生する球面収差やコマ収差などの収差を補正するために、それぞれの収差に対応した複数の液晶光学素子を光軸に沿って重ねて配置して、収差補正を実現する提案がなされている(たとえば、特許文献2参照)。
【0007】
この特許文献2によれば、収差補正デバイスは、対称性収差補正素子と非対称性収差補正素子との二つの液晶光学素子である位相変調素子を積層して構成され、球面収差などの対称性収差やコマ収差などの非対称性収差の両方を補正できることが示されている。
【0008】
しかし、上記のいずれの場合でも、複数の液晶光学素子(位相変調素子)を重ねて配置するには、各液晶光学素子の光軸及び偏光軸を厳密に位置合わせして配置しなければ、目的とする光学特性を得ることができない。たとえば、特許文献1の第1の液晶光学素子と第2の液晶光学素子の光軸又は偏光軸がずれた状態で重ねた場合には、正確なフォーカス調整が出来ない問題が生じることになる。
【0009】
このように複数の液晶光学素子を積層して使用する場合、正確な位置合わせが必要となるが、複数の液晶光学素子を高精度に位置合わせして貼り合わせる方法が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【0010】
この特許文献3の貼り合わせ方法は、液晶光学素子である液晶パネル面内の非表示領域に透明電極からなるアライメントパターンを設け、さらに端子部にはアライメントパターンに対して通電するアライメントパターン点灯用端子を形成している。そして、位置合わせ工程において、アライメントパターン点灯用端子に所定の電圧を印加してアライメントパターンを点灯させ、各アライメントパターンが重なった時点で位置合わせ作業を完了させることが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図面に基づいて本発明の光学素子の具体的な実施の形態を詳述する。
[実施形態の特徴]
第1の実施形態の特徴は本発明の基本形であり、光変調を行う画素の一部にアライメントパターンが形成される構成である。第2の実施形態の特徴は、画素の有効領域以外の画素の一部にアライメントパターンが形成される構成である。第3の実施形態の特徴は、配線の一部にアライメントパターンが形成される構成である。
【0027】
なお、説明にあっては、その説明及び図は一実施形態であって、これに限定されるものではない。また、図面における寸法や形状は実際の形状を正確に反映したものではなく、
図面を見やすく、また、理解しやすくするため一部誇張して模式的に記載している。また、発明に直接関係しない一部の要素は省略し、各実施形態において同一要素には同一番号を付し、重複する説明は省略するものとする。
【0028】
以下の各実施形態において、光学素子は液晶光学素子であり、電圧印加に応じて偏光軸と略一致する偏光に対して焦点距離が可変可能な液晶レンズを例として説明を行う。
【0029】
[第1の実施形態]
[第1の実施形態の光学素子の構成説明:
図1、
図2]
第1の実施形態の光学素子の構成を
図1の平面図と、
図1で示す切断線A−A´による
図2の断面図を用いて説明する。
【0030】
図1及び
図2において、符号1は第1の実施形態の光学素子である。光学素子1は、一対の透明基板10、20と、この透明基板10、20の間に挟持される液晶2などによって構成される液晶光学素子である。
【0031】
透明基板10、20のそれぞれの対向面には、導電膜11、21が形成され、導電膜11、21のそれぞれの表面には、図示しない配向膜が形成されている。透明基板10、20の内周にはシール部材3(
図1:点線で示す)が配置され、このシール部材3の中に混在させた球状又は円柱状のスペーサー(ここでは図示せず)によって、透明基板10、20は所定の間隔で固定されている。液晶2(
図2:楕円形で示す)は、透明基板10、20の間にあって、シール部材3によって封入されている。
【0032】
2枚の透明基板10、20は、たとえばガラス材やプラスチック材を用いることができる。また、シール部材3は樹脂によって構成されている。また、導電膜11、21は、透明導電材料で構成され、たとえばITO(Indium Tin Oxide)が使用される。
【0033】
上述の導電膜11、21に電圧を印加すると、導電膜11、21に挟まれた液晶2は駆動され、非光変調状態から光変調状態となるため、光学素子1は、光学素子1の導電膜11、21を通過する光のうち液晶2の偏光軸と略一致した光を光変調する光学素子として機能する。
【0034】
[第1の実施形態の光学素子のパターン形状の説明:
図1]
次に、透明基板10に形成される導電膜11のパターン形状の一例について、
図1を用いて説明する。
図1において、導電膜11は複数の輪帯画素からなる輪帯画素群12や、各輪帯画素と接続される配線群15を形成している。
【0035】
輪帯画素群12は、光学素子1の光軸1sを中心に同心円の複数の輪帯画素12a〜12iに別れており、各輪帯画素間の実線はそれぞれを絶縁するための微小な隙間をあらわしている。ここで、中心の画素が輪帯画素12aであり、最外周の画素が輪帯画素12iである。
【0036】
なお、輪帯画素群12の画素数は限定されず、本実施形態では、図面を分かりやすくするために実際より画素数を少なく記述している。この輪帯画素12a〜12iのそれぞれに所定の電圧を印加することで、入射した光に対して位相の変調(屈折率変調)が行われ、光学素子1は液晶レンズとして機能する。なお、液晶レンズは公知技術であるので、詳細な説明は省略する。
【0037】
符号13、14は、本発明の特徴であるアライメントパターンである。アライメントパ
ターン13、14は、輪帯画素群12の領域の一部に形成される。アライメントパターン13、14はいずれか一つのみでもよいが、図面左右上下方向及び光軸1sを回転軸とする回転方向を高精度に合わせるためにも二つ以上形成するのが好ましい。また、アライメントパターン13、14間の距離や位置は特に限定されないが、距離が離れているほど位置合わせ精度が高くなり、位置合わせの対象中心に対して対称に配置することで位置合わせ作業を容易にできる。このため、
図1に示すように、アライメントパターン13、14は、輪帯画素群12のうち最外周の輪帯画素12i上であって、光軸1sを通る直線B(点線で示す)上で光軸1sに対して等間隔に対向するように形成されるのが好ましい。なお、直線Bの角度は限定されない。
【0038】
また、アライメントパターン13、14は、導電膜11を取り除くことで形成される。すなわち、アライメントパターン13、14の箇所には、導電膜11が存在しない。なお、アライメントパターン13、14の詳細な形状と動作は後述する。
【0039】
配線群15は、前述の輪帯画素12a〜12iにそれぞれ接続する配線15a〜15iで構成され、透明基板10の端部まで延ばされて、図示しない接続手段によって外部と電気的に接続される。すなわち、輪帯画素12a〜12iは、配線15a〜15iを介して外部に接続され、外部の駆動手段(図示せず)によって所定の電圧が印加されて駆動される。
【0040】
上述した輪帯画素群12、アライメントパターン13、14及び配線群15は、導電膜11をエッチング加工して取り除くなどの既知の方法によって形成することができ、マスクパターンを用いたフォトリソグラフィ技術により一度の工程で形成することができる。
【0041】
また、透明基板10に対向して配置される透明基板20に形成される導電膜21(
図2参照)のパターンは、ベタパターンであって、
図1では図示を省略している。
【0042】
[第1の実施形態のアライメントパターンの形状説明:
図3]
次に、第1の実施形態のアライメントパターンの形状の一例について、
図3を用いて説明する。なお、アライメントパターン13と14は、同一形状であるので、ここでは、アライメントパターン13について説明する。
【0043】
図3は
図1における領域Cの拡大図である。
図3において、アライメントパターン13は、たとえば導電膜11(すなわち、輪帯画素12i)の一部が取り除かれた5つの小さな四角形状のパターン13a〜13eによって構成される。パターン13aは、アライメントパターン13の中心に位置し、パターン13bはパターン13aに対して図面上の上側に位置し、パターン13cは図面上の右側に位置し、パターン13dは図面上の下側に位置し、パターン13eは図面上の左側に位置する。
【0044】
すなわち、中心に位置するパターン13aに対して、パターン13b〜13eが上下左右方向に等間隔で位置する。この構成により、アライメントパターン13の周囲の導電膜11(すなわち、輪帯画素12i)に所定の電圧が印加されると、上述した通り、導電膜11、21に挟まれた液晶は駆動され、非光変調状態から光変調状態となるが、導電膜11が取り除かれたアライメントパターン13の5つのパターン13a〜13eの領域においては、液晶2が駆動しないため非光変調状態のままとなる。
【0045】
これによって位置合わせを行うときに、アライメントパターン13、14と導電膜11との色のコントラストを大きくすることができるため、アライメントパターン13、14を正確に認識することができる。また、色のコントラストを調整でき、例えばアライメントパターン13の明度を導電膜11の明度よりも明るくすることにより視認性を良くする
ことができる。なお、アライメントパターン13、14の形状は限定されず、たとえば、円形や十字形などでもよい。
【0046】
[第1の実施形態の光学素子の位置合わせ工程の説明:
図4〜
図6]
次に、第1の実施形態の光学素子の2枚を積層して光軸及び偏光軸の位置合わせを行う工程について、
図4〜
図6を用いて説明する。
図4は位置合わせ工程を説明する斜視図であり、
図5は位置合わせ工程のフローチャートであり、
図6は2枚が積層された光学素子のアライメントパターンの見え方の一例を示している。
【0047】
なお、2枚の光学素子を積層する目的は、前述したように、液晶光学素子には視野角特性があるため、デジタルカメラ等で使用する液晶レンズを構成する場合、光の全ての偏光方向に対応できるように、2枚の液晶光学素子の偏光軸を直交させて配置する必要があるからである。
【0048】
はじめに、
図4に示すように、光軸方向に沿って画像センサ32、第1の偏光板25、第1の光学素子1A、第2の光学素子1B、第2の偏光板26を順に配置する。また、図示しない手段によって、画像センサ32と対向する側から観察光31を照射して、画像センサ3でアライメントパターンを観察することによって行われる。
【0049】
画像センサ32は、各光学素子のアライメントパターンを観察するものであり、ひとつの画像センサ32を移動可能にして、適時、アライメントパターン13A又は14Aの真上に位置するようにしてもよいし、アライメントパターン13A及び14Aのそれぞれの真上にひとつずつ配置してもよい。
【0050】
第1の光学素子1A及び第2の光学素子1Bは、偏光軸が互いに直交していることを除いて、共に前述した光学素子1と同様の構成である。ここで、第1の光学素子1Aの導電膜による構成要素は、輪帯画素群12A、アライメントパターン13A、14A、配線群15Aと称する。また、第2の光学素子1Bの導電膜による構成要素は、輪帯画素群12B、アライメントパターン13B(図示せず)、14B、配線群15Bと称する。
【0051】
偏光板25、26は、所定の方向の偏光のみを通過する偏光子である。偏光板26は後述する観察光31が無偏光(ランダム偏光ともいう)である場合に用い、観察光31を偏光にする。観察光31が偏光である場合には、偏光板26は無くてもよい。偏光板25は、第1及び第2の光学素子1A、1Bを通過した光のうち、光変調領域と非光変調領域を観察しやすくするためのものである。
【0052】
次に、位置合わせの工程について説明する。
図4において、2枚の第1の光学素子1Aと第2の光学素子1Bとを図示しない手段によって支持し、積層して2つの偏光板25、26の間に配置する(
図5のフローチャートにおけるステップS1:配置)。このとき、第1の光学素子1Aの偏光軸と第2の光学素子1Bの偏光軸は略直交するように配置しておくとよい。また、第1の光学素子1Aと第2の光学素子1Bとを光軸に垂直な面に対して平行になるように配置しておくとよい。
【0053】
第1の光学素子1Aと第2の光学素子1Bのいずれか一方又は両方は、図示しない手段によってX軸方向とY軸方向に移動可能であり、また、それぞれの光軸を基準にして回転可能であるとよい。
【0054】
偏光板25、26は、第1及び第2の各光学素子1A、1Bの光変調状態及び非光変調状態を通過した観察光31が観察できるように、偏光板25、26の偏光方向を第1及び第2の各光学素子1A、1Bの偏光軸を二分する方向に略一致するように配置するのがよ
り好ましい。
【0055】
なお、所定の偏光に対して光変調を行う光学素子を第1及び第2の光学素子として用いる場合は、各光学素子の偏光軸が一致するように配置するため、その場合、偏光板25、26の偏光方向は、各光学素子の偏光軸と平行又は光軸及び偏光軸に直交する方向に配置するのが好ましい。
【0056】
次に
図4において、第1及び第2の光学素子1A、1Bのそれぞれの配線群15A、15Bに、図示しない手段によって外部から所定の電圧を印加し、輪帯画素群12A、12Bを光変調状態にする(
図5におけるステップS2:電圧印加)。これにより、第1の光学素子1Aのアライメントパターン13A、14Aと、第2の光学素子1Bのアライメントパターン13B、14Bのみが非光変調状態となる。なお、輪帯画素群12A、12Bの最外周の輪帯画素12i(
図1参照)のみに電圧を印加して光変調状態としてもよい。
【0057】
次に
図4において、第2の光学素子1Bの図面上の下方側から、図示しない手段によって所定の観察光31を上向きに照射する観察光照射を行う(
図5におけるステップS3:観察光照射)。これにより、第1の光学素子1Aのアライメントパターン13A、14Aと、第2の光学素子1Bのアライメントパターン13B、14Bがそれぞれ重なっている領域は、観察光31が光変調されないまま通過する。よって、アライメントパターン13A、14Aとアライメントパターン13B、14Bが正確に一致していれば、所定のアライメントパターン通りのパターン像を観察することができる。
【0058】
次に
図4において、第1の光学素子1Aのアライメントパターン13A、14Bの図面上の上方に配置した画像センサ32によって、各光学素子を通過した観察光31を検出し、この画像センサ32で捉えた画像に基づいて各光学素子のアライメントパターンが一致しているか否かを判定するパターン観察を行う(
図5におけるステップS4:パターン観察)。ここで、アライメントパターンが一致していない判定(判定N)であれば、位置合わせを行うステップS5に進み、アライメントパターンが一致している判定(判定Y)であれば、次のステップS6に進む。なお、アライメントパターンが一致しているかの観察及び判定は、画像センサ32によって取得した画像と図示しない画像処理装置による自動判定としてもよいし、目視による判定でもよい。
【0059】
次にステップS4において、判定Nであった場合、第1及び第2の光学素子1A、1Bを支持している部材(図示せず)によって、第1及び第2の光学素子1A、1Bのいずれか一方又は両方を、X軸方向、Y軸方向又は回転方向に移動させて、第1及び第2の光学素子1A、1Bの光軸の位置合わせを行う(
図5におけるステップS5:位置合わせ)。なお、ステップS4で判定Yがなされるまで、ステップS4とステップS5を繰り返す。
【0060】
ここで、アライメントパターンの位置合わせについて説明する。
図6は第1の光学素子1A及び第2の光学素子1Bを通過した観察光31が、偏光板25を介して画像センサ32によって取得された画像であり、アライメントパターン13A、13Bの領域を観察した画像の一例を示している。なお、
図6で示す一致領域K(ハッチングで示す)は、非光変調状態のアライメントパターン13A、13Bの位置が平面方向で重なって見える領域であることを示している。
【0061】
図6(a)は、いずれか一方の光学素子が、+X方向と−Y方向に僅かずつずれている場合の一例であり、アライメントパターン13A、13Bの5つのパターンよる一致領域Kの形状は、共に四角形で大きさも同じであるが面積が小さいことを示している。この場合は、第1の光学素子1Aと第2の光学素子1Bのいずれか一方又は両方を図示しない手段によってX軸方向及びY軸方向に移動して位置合わせを実施する。
【0062】
また、
図6(b)は、第1及び第2の光学素子1A、1Bのアライメントパターン13A、13Bの中心は一致しているが、角度がずれている場合の一例であり、アライメントパターン13A、13Bの5つのパターンよる一致領域Kの大きさと形状が異なっていることを示している。
【0063】
この場合は、時計回りにずれている一方の光学素子をわずかに反時計回りに回転させて位置合わせを実施するとよい。なお、第1及び第2の光学素子1A、1Bの角度がずれている場合は、対となって対向しているアライメントパターン13と14の見え方が異なるので、その見え方の違いによって、角度のずれを調整できる。
【0064】
また、
図6(c)は、第1及び第2の光学素子1A、1Bのアライメントパターン13A、13Bが、X方向、Y方向、そして角度においても一致している場合であり、アライメントパターン13A、13Bの5つのパターンよる一致領域Kの形状が四角形であり、大きさもアライメントパターンの大きさと一致している。
【0065】
ここで、対向している二つのアライメントパターン13、14についてそれぞれ判定を実施し、二つのアライメントパターン13、14が共に
図6(c)のように見えるならば、2枚が重なった第1及び第2の光学素子1A、1Bは、光軸が一致し、互いの偏光軸が直交している状態であるということになり、ステップS4で判定Yと判断される。
【0066】
ステップS4で、アライメントパターンが一致した(判定Y)と判断されたならば、第1及び第2の光学素子1A、1Bへの電圧印加と観察光31の照射を停止する(
図5におけるステップS6:電圧及び観察光OFF)。
【0067】
次に、第1及び第2の光学素子1A、1Bの位置を固定するために、接着剤(図示せず)などによって、第1及び第2の光学素子1A、1Bを固定して一体化した後に、支持部材から外して位置合わせ工程を終了する(
図5におけるステップS7:固定)。
【0068】
このように、ステップS4で判定Yがなされるまで、ステップS4とS5を繰り返し、画像センサ32で捉えた画像を確認しながら、第1の光学素子1Aと第2の光学素子1Bのいずれか一方又は両方を、X軸方向、Y軸方向又は回転方向に移動することで、第1の光学素子1Aと第2の光学素子1Bの光軸及び偏光軸の位置合わせを実施する。
【0069】
ここで、前述したように、各アライメントパターン13A、14A、13B、14Bは、導電膜11が取り除かれることで形成されているので、輪帯画素群12A、12Bに所定の電圧が印加されると、輪帯画素群12A、12Bは光変調状態となるが、各アライメントパターン13A、14A、13B、14Bは非光変調状態のままとなる。
【0070】
その結果、
図6で示すように、2枚の第1及び第2の光学素子1A、1Bの各アライメントパターンが一致した一致領域Kのみが光変調をされず、それ以外の領域は光変調がされているので、アライメントパターンの重なり具合(すなわち、光学素子の位置ずれ)を明確に認識することができる。このとき、光変調領域と非光変調領域との色のコントラストが大きくなるように、第1の光学素子1A及び第2の光学素子1Bのそれぞれに印加する電圧や、偏光板25,26の方向を変えることが好ましい。
【0071】
以上のように、第1の実施形態の光学素子によれば、光変調を行う輪帯画素群12の領域の一部にアライメントパターン13、14を形成するので、アライメントパターンを点灯するための配線の引き回しが不要であり、その結果、光学素子外周の面積の増大がなく、外形が小型の光学素子を提供できる。また、光学素子の配線数が増加しないので、光学
素子に所定の電圧を供給する駆動手段(図示せず)の構成を簡素化できる。
【0072】
また、画素の導電膜11を取り除いてアライメントパターン13、14を形成することで、アライメントパターンのみが非光変調状態となって表示されるので、アライメントパターンが鮮明で視認性が向上し、その結果、光学素子の位置合わせ作業が容易となり、高精度の位置合わせを実現できる。
【0073】
また、アライメントパターン13、14は複数であり、光学素子1の光軸1sを基準に対向して形成されており、この対向するアライメントパターンをそれぞれ位置合わせすることで、光軸の位置合わせ誤差を最小にでき、複数の光学素子をきわめて高精度に位置合わせすることが可能となる。
【0074】
また、輪帯画素群12の領域中にアライメントパターン13、14を配置するので、アライメントパターンのための領域を確保する必要がなく、小型の光学素子を実現できる。また、アライメントパターンが視認性に優れているので、パターン形状を小さくでき、その結果、光学素子の大きさ(外径)をさらに小型化できる。
【0075】
次に、第1の実施形態の変形例の光学素子の構成について、
図7、
図8を用いて説明する。第1の変形例の特徴は、画素の一部にアライメントパターンを一つのみ形成して、アライメントを実施することであり、アライメントパターンの位置が異なる例を2つ説明する。第2の変形例の特徴は、画素の一部に4つのアライメントパターンを形成して、アライメントを実施する例を説明する。ぞれぞれの変形例においては、アライメントパターン以外の構成は上述した第1の実施形態の光学素子1(
図1、
図2参照)と同様であるため説明を省略する。
【0076】
[第1の実施形態の第1の変形例の構成説明:
図7]
第1の実施形態の第1の変形例の第1例である光学素子40について説明する。
図7(a)に示すように、輪帯電極群12の最外周の輪帯画素12iの領域の一部であって、配線群15の近傍に1つのアライメントパターン41が形成されている。ここで、配線群15は、光学素子40の光学特性(光変調)に寄与しないため、アライメントパターン41を配線群15の近傍に配置することで、アライメントパターン41が光学素子40の光学特性に悪影響を及ぼすことを防ぐ効果が期待できる。
【0077】
次に第1の実施形態の第1の変形例の第2例である光学素子42について説明する。
図7(b)に示すように、輪帯電極群12の最外周の輪帯画素12iの領域の一部であって、配線群15から離れた位置に1つのアライメントパターン43が形成されている。この配置によって、アライメントパターン43の周辺には輪帯電極群12以外のパターンが存在しないため、アライメントパターン43の視認性が向上する効果が期待できる。なお、各アライメントパターン41、43の形状は、第1の実施形態と同様(
図3参照)であるので説明は省略する。
【0078】
ここで、第1の変形例の光学素子40又は光学素子42の偏光軸を直交させて2枚を積層し液晶レンズを構成する場合は、第1の実施形態と同様の工程(
図4〜
図6参照)で位置合わせを実施する。ここで、第1の実施形態の第1の変形例の光学素子40又は42は、アライメントパターンが一つなので、一回の位置合わせ工程を実施すればよく、位置合わせ工程を簡略化できる効果がある。
【0079】
[第1の実施形態の第2の変形例の構成説明:
図8]
次に、第1の実施形態の第2の変形例の光学素子45の構成について、
図8を用いて説明する。この第2の変形例の特徴は、画素の一部に4つのアライメントパターン46〜4
9を形成して、アライメントを実施することである。
【0080】
各アライメントパターン46〜49は、輪帯電極群12の最外周の輪帯画素12iの領域の一部に、光学素子45の光軸45sを基準にして等間隔に対向して配置されている。すなわち、アライメントパターン46と47とが対向して形成され、また、アライメントパターン48と49とが対向して形成される。
【0081】
この第2の変形例の光学素子45の偏光軸を直交させて2枚を積層して液晶レンズを構成する場合は、第1の実施形態と同様の工程(
図4〜
図6参照)で位置合わせを実施する。ここで、第2の変形例の光学素子45は、アライメントパターンが4つあるので、それぞれのアライメントパターンを位置合わせすることで、さらに位置合わせ誤差を減らして高精度に光軸を合わせることが可能となる。
【0082】
たとえば、まず、対向して形成される一方のアライメントパターン46と47とについて、前述したフローチャート(
図5参照)に沿って位置合わせ工程を実施し、さらに、対向して形成される他方のアライメントパターン48と49とによって、位置合わせの確認と微調整を実施することで、位置ずれの少ない高性能な光学素子を実現できる。
【0083】
[第2の実施形態]
[第2の実施形態の光学素子の構成説明:
図9]
次に、第2の実施形態の光学素子の構成について、
図9を用いて説明する。第2の実施形態の特徴は、光学素子の有効領域以外の画素の一部にアライメントパターンが形成されることである。
【0084】
図9において、符号50は第2の実施形態の光学素子である。光学素子50の基本的な構成は、第1の実施形態の光学素子1(
図1、
図2参照)と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0085】
符号51は、光学素子50の輪帯画素群12に備えられる有効領域であり、この有効領域51を示す点線の内側の輪帯画素群12に入射する光に対して、光学素子50は所定の光変調を行い、液晶レンズとして機能する。
【0086】
符号52、53はアライメントパターンであり、アライメントパターン52、53は、輪帯画素群12に備えられている有効領域51を除いた外側の輪帯画素12iの領域の一部に、光軸50sを基準に対向して形成される。
【0087】
以上の構成により、第2の実施形態の光学素子50は、アライメントパターン52、53が光学素子50の有効領域51を除いた外側に形成されるので、アライメントパターン52、53が、光学素子50の光学特性に影響を与えることがなくなるため、高性能の光学素子を提供できる。また、アライメントパターン52、53は、第1の実施形態と同様に導電膜を取り除き、対向して形成されているで、第1の実施形態と同様に優れた効果を備えている。
【0088】
また、本実施形態のアライメントパターンの数は限定されず、第1の実施形態の第1の変形例(
図7参照)のように、1つのアライメントパターンを設けてもよいし、第1の実施形態の第2の変形例(
図8参照)のように、4つのアライメントパターンを設けてもよい。これによって、さらに、位置合わせ精度を向上させることが可能となる。
【0089】
[第3の実施形態]
[第3の実施形態の光学素子の構成説明:
図10]
次に、第3の実施形態の光学素子60の構成について、
図10を用いて説明する。第3の実施形態の特徴は、画素に接続される配線の一部にアライメントパターンが形成されることである。それ以外の基本的な構成は第1の実施形態の光学素子1(
図1、
図2参照)と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0090】
符号61、62は本実施形態の特徴であるアライメントパターンである。アライメントパターン61、62は、輪帯画素群12の最外周の輪帯画素12iに接続される配線15iにおける導電膜の一部を取り除くことによって形成され、輪帯画素群12の外側であって、基板10の対角線上に光学素子60の光軸60sを基準に対向して配置される。
【0091】
[第3の実施形態のアライメントパターンの形状説明:
図11]
次に、第3の実施形態のアライメントパターンの形状の一例について、
図11を用いて説明する。
図11は
図10における領域Dの拡大図である。なお、第3の実施形態のアライメントパターン61、62は、同一形状であるので、ここでは、アライメントパターン61について説明する。
【0092】
図11に示すように、配線15iは、一部が幅の広いアライメント配線15i´を有しており、アライメントパターン61は、このアライメント配線15i´を形成する導電膜11の一部を取り除くことによって配置される。
【0093】
アライメントパターン61は、第1の実施形態の光学素子1におけるアライメントパターン13と同様であり、アライメント配線15i´内部に、5つの小さな四角形状のパターン61a〜61eが形成されることで、アライメントパターン61が構成される。パターン61aは、アライメントパターン61の中心に位置し、パターン61bはパターン61aに対して図面上の上側に位置し、パターン61cは図面上の右側に位置し、パターン61dは図面上の下側に位置し、パターン61eは図面上の左側に位置する。すなわち、中心に位置するパターン61aに対して、パターン61b〜61eが上下左右方向に等間隔で位置する。
【0094】
以上の構成により、配線15i(すなわち、輪帯画素12i)に所定の電圧が印加されると、アライメント配線15i´は光変調状態となるが、導電膜11が取り除かれたアライメントパターン61の5つのパターン61a〜61eは、非光変調状態のままとなる。これにより、光学素子60に電圧印加したときに、アライメントパターンを明確に認識することができる。なお、アライメントパターン61、62の形状は限定されず、たとえば、円形や十字形などでもよい。
【0095】
以上のように、第3の実施形態によれば、アライメントパターン61、62が光学素子60の輪帯画素群12の外側に形成されるので、アライメントパターン61、62が、光学素子60の光学特性に悪影響を及ぼすことがなく、高性能の光学素子を提供できる。
【0096】
また、第1の実施形態と同様に、導電膜を取り除いてアライメントパターン61、62を形成することで、アライメントパターンのみが非光変調状態となって表示されるので、アライメントパターンが鮮明で視認性が向上し、その結果、光学素子の位置合わせ作業が容易となり、高精度の位置合わせを実現できる。また、アライメントパターン61、62は、配線15iの一部として形成されるので、アライメントパターン61、62を点灯するための専用の配線が不要であり、配線数が少ない小型の光学素子を実現できる。
【0097】
また、配線の幅を広げたアライメント配線15i´にアライメントパターン61、62を形成するので、アライメントパターン61、62の形成による配線抵抗の増加を防ぎ、画素への駆動電圧を正常に供給できる。
【0098】
また、
図10に示すように、基板10における輪帯画素群12を配置しない位置に形成することによって、余白領域を有効に使用することができるとともに、光学素子を大きくすることなくアライメントパターンを配置することができる。
【0099】
[第3の実施形態の変形例の説明:
図12]
次に、第3の実施形態の変形例の光学素子70の構成について、
図12を用いて説明する。この第3の実施形態の変形例の特徴は、画素に接続される配線の一部に複数のアライメントパターンを形成し、各アライメントパターンは、それぞれ異なる配線の一部として形成されることである。それ以外の基本的な構成は第1の実施形態の光学素子1(
図1、
図2参照)や第3の実施形態の光学素子60(
図10、
図11参照)と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0100】
アライメントパターン71は、輪帯画素群12の中心の輪帯画素12aに接続される配線15aの一部の導電膜を取り除くようにして形成される。また、アライメントパターン72は、輪帯画素群12の最外周の輪帯画素12iに接続される配線15iの一部の導電膜を取り除くようにして形成される。これにより、配線15aに電圧を印加したときは、アライメントパターン71が認識(制御)できるようになり、同様に配線15iに電圧を印加したときは、アライメントパターン72を認識(制御)できるようになるため、それぞれを独立して制御することができる。
【0101】
以上のように、第3の実施形態の変形例によれば、アライメントパターン71、72は、配線群15の一部として形成されるので、アライメントパターン71、72を点灯するための専用の配線が不要である。また、アライメントパターン71と72は、それぞれ異なる配線に分かれて形成されるので、配線15aと配線15iとに印加する電圧を個別に調整することで、アライメントパターン71、72のコントラストを個別に制御し、観察環境等に応じて各アライメントパターンを最適なコントラストに設定できる効果がある。
【0102】
また、第3の実施形態のアライメントパターンの数は限定されず、たとえば、第1の実施形態の第2の変形例(
図8参照)のように、4つのアライメントパターンについて光軸70sを基準にして等間隔に対向して配置してもよい。このように、アライメントパターンの数を増やすことで、さらに、位置合わせ精度を向上させることが可能となる。
【0103】
また、本発明の実施形態で示した光学素子として機能する導電膜の形状はレンズとして機能する輪帯画素群に限定されるものではなく、光学系上に発生する球面収差や非点収差などの収差を補正するための画素電極パターンや、ベクトルビームに変換するための光位相変調素子における画素電極にも適用できる。また、それ以外の構成要素についても本発明の要旨を満たすものであれば、任意に変更してよい。