(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した通り、高炉の吹き止め期間が長くなることは、多額の経済的損失を招く原因となるため、これを可能な限り抑制するために工期の更なる短縮が要望されている。
ここで、炉体のなかでも、朝顔部では、鉄皮の内側に沿って設置されたステーブの炉内側面の耐火材として煉瓦構造を用いており、かつ炉底部から積み上げられた煉瓦構造の最上部を構成することになる。
【0008】
このような朝顔部の煉瓦構造の施工には、炉容積によって異なるが、おおむね5日間が必要である。
しかし、朝顔部は、煉瓦積みの最上部であることから、炉底部から羽口部までの煉瓦構造の築炉が完了した後、最後に築炉される部分である。このような施工手順の制約により、朝顔部の煉瓦構造の施工に要する期間を短縮できない、という問題がある。
【0009】
さらに、朝顔部では、上側ほど直径が大きくなる逆円錐状を有する形状が一般的である。高炉の稼働後に、煉瓦は熱膨張により上方へ移動するが、それに伴い煉瓦とステーブの間がせん断されて縁が切れるとともに、逆円錐形となっていることから、煉瓦とステーブとの間に隙間が生じ、せり力が低下して、煉瓦の緩みにより脱落が生じやくなるという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、工期を短縮できる高炉朝顔部の耐火材構造および耐火材施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の高炉朝顔部の耐火材構造は、鉄皮の内面に沿って設置されたステーブを有する高炉朝顔部の耐火材構造であって、前記朝顔部の上方部分は、前記ステーブの炉内側面に固定された不定形耐火材で構成され、前記朝顔部の下方部分は、前記ステーブの炉内側面に沿って積み上げられた耐火煉瓦で構成され、前記不定形耐火材と前記耐火煉瓦との間には、前記高炉の稼働時に収縮または焼失する膨張吸収材が設置されていることを特徴とする。
【0012】
このような本発明では、朝顔部の下方部分の耐火煉瓦により、朝顔部より下方の羽口部等から積み重ねられる耐火煉瓦との連続性を確保することができる。
また、朝顔部の上方部分については、不定形耐火材の吹き付け等による事前施工を行うことができ、工期短縮の効果を得ることができる。
【0013】
朝顔部の上方部分に形成される不定形耐火材は、ステーブの炉内側面に通常設けられる不定形耐火材の固定用の溝を用いればよい。このようなステーブの溝は、一般に炉内側面に開口する側の溝幅が狭く、奥の方が広く形成されており、吹き付け等で溝内に入り込んだ不定形耐火材は溝に係止されて容易に脱落することがない。従って、鉄皮に固定された状態のステーブの炉内側面に不定形耐火材を施工してもよく、あるいは、予めステーブの炉内側面に不定形耐火材を施工しておき、不定形耐火材付きのステーブを炉内に搬入して鉄皮の内側に設置することもできる。
【0014】
朝顔部における上方部分の不定形耐火材と下方部分の耐火煉瓦との面積比率は、少なくとも耐火材が30%以上であれば、工期短縮に有効性を見出すことができる。
朝顔部における上方部分の不定形耐火材はさらに広くしてもよく、不定形耐火材の面積比率を高めることで、工期短縮の効果が高まる。しかし、不定形耐火材の面積が拡大し、朝顔部の下方部分に及ぶと、不定形耐火材はステーブの炉内側面にせり出す状態で形成されるため、朝顔部より下方で耐火物の施工を行う際に干渉し、施工できなくなることもある。このため、本発明では、不定形耐火材の施工は、朝顔部の上方部分に限定し、下方部分は後に耐火煉瓦で形成する。
なお、朝顔部の上方部分の不定形耐火材を施工する範囲は、朝顔部の傾きによって加減することが好ましい。
【0015】
朝顔部の下方部分に後で施工される耐火煉瓦は、朝顔部よりも下方の部分に耐火煉瓦を施工した後、最後に施工される。朝顔部の下方部分の耐火煉瓦は、高炉稼働後に熱膨張により押し上げられる。そして、押し上げられた耐火煉瓦が、朝顔部の上方部分に先に施工されている不定形耐火材をも押し上げる可能性がある。このような押し上げを避けるために、上方部分の不定形耐火材と下方部分の耐火煉瓦との間には、前記高炉の稼働時に収縮または焼失する膨張吸収材が設置されている。
高炉の稼働時に収縮または焼失する膨張吸収材としては、セラミックファイバーやクッションモルタルなど、高温に耐え、かつ可縮性のある材料であることが望ましい。
【0016】
本発明の高炉朝顔部の耐火材構造において、前記不定形耐火材内には、前記高炉の稼働時に収縮または焼失する格子状枠が設けられていることが望ましい。
【0017】
格子状枠は、高炉の稼働時に収縮または焼失し、耐火材の間には縦横に隙間が形成される。この隙間により、耐火材の熱膨張分が吸収され、高炉の稼働時においても耐火材の脱落などが生じにくくなる。
高炉の稼働時に収縮または焼失する格子状枠としては、熱可塑性樹脂の発泡体や成型品、木材や紙素材などが利用でき、具体的には200℃以上の温度で軟化もしくは燃焼する材料であることが望ましい。
格子状枠を形成する板材の厚さとしては、区画された範囲の熱膨張を吸収するとともに、格子状枠自体にある程度の保形性が必要であるため、1〜3mm程度の厚みとすることが望ましい。
【0018】
さらに、高炉の稼動時に、一部の不定形耐火材が脱落する状況があったとしても、格子状枠が収縮または焼失したのちに形成される隙間により、不定形耐火材多数のブロックに分割されており、広い領域にわたって一気に脱落することが防止でき、羽口詰まりを防止できる。
このために、格子状枠の区画寸法は、縦横150mm〜400mm程度、より好ましくは縦横200mm〜300mm程度とすることが望ましい。
【0019】
本発明の高炉朝顔部の耐火材構造において、前記不定形耐火材は、前記ステーブの炉内側面から起立するアンカーにより前記ステーブに固定されていることが好ましい。
【0020】
このような本発明においては、不定形耐火材は、ステーブの炉内側面の溝によっても固定されるが、ステーブの炉内側面から起立するアンカーを用いることで、ステーブに対してさらに強固に固定することができる。
なお、前述した格子状枠を用いる場合、各枠に少なくとも一本のアンカーが配置されるようにすることが望ましい。
【0021】
本発明の高炉朝顔部の耐火材施工方法は、鉄皮の内面に沿って設置されたステーブを有する高炉朝顔部の耐火材施工方法であって、前記高炉の設置現場とは別の地組場において、リング状またはブロック状に鉄皮を構築し、その内面に沿って複数のステーブを設置する工程と、前記ステーブと前記鉄皮との間および前記ステーブどうしの間に不定形耐火材を圧入施工する工程と、前記朝顔部の上方部分の前記ステーブの炉内側面に不定形耐火材を施工する工程と、によりリング状またはブロック状のマンテルを構築し、前記マンテルを前記高炉の設置現場に据え付けた後、前記朝顔部の下方部分に耐火煉瓦を施工する工程と、前記耐火煉瓦と前記不定形耐火材との間に前記高炉の稼働時に収縮または焼失する膨張吸収材を設置する工程とを行う、とすることができる。
【0022】
このような本発明では、高炉の設置現場とは別の地組場において、朝顔部用のリング状またはブロック状のマンテルを事前製造できるとともに、この際にステーブの炉内側面の朝顔部の上方部分に対する不定形耐火材の施工をも事前に行うことができる。
【0023】
本発明の高炉朝顔部の耐火材施工方法は、鉄皮の内面に沿って設置されたステーブを有する高炉朝顔部の耐火材施工方法であって、前記高炉の設置現場とは別の場所において、前記ステーブの炉内側面の前記朝顔部の上方部分に不定形耐火材を施工しておき、前記高炉の設置現場において、前記鉄皮の内面に沿って前記ステーブを設置した後、前記朝顔部の下方部分に耐火煉瓦を施工する工程と、前記耐火煉瓦と前記不定形耐火材との間に前記高炉の稼働時に収縮または焼失する膨張吸収材を設置する工程とを行う、としてもよい。
【0024】
このような本発明では、高炉の設置現場とは別の場所において、炉内側面に不定形耐火材が施工されたステーブが製造される。そして、この不定形耐火材つきステーブを高炉の設置現場に搬入し、鉄皮の内側に設置することで、朝顔部の上方部分に不定形耐火材が施工された状態とすることができる。この後、朝顔部の下方部分の耐火煉瓦の施工と、耐火煉瓦と不定形耐火材との間の膨張吸収材の施工を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の高炉朝顔部の耐火材構造あるいは高炉朝顔部の耐火材施工方法によれば、ステーブの炉内側面に不定形耐火材を事前施工することができ、工期を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1から
図11には、本発明の第1実施形態が示されている。
【0028】
図1において、高炉1は、下から順に炉底部1A、羽口部1B、朝顔部1C、炉腹部1D、シャフト部1E、炉頂部1Fを有する。
炉底部1Aからシャフト部1Eまでの領域には、鉄皮2の内面に沿って多数のステーブ3が設置される。さらに、炉底部1Aから朝顔部1Cまでの領域には、ステーブ3の炉内側面に耐火煉瓦4が築造される。羽口部1Bには羽口5が設置される。
【0029】
本実施形態の高炉1は、リングブロック工法を用いて構築される。このために、高炉1は、10個のマンテルB1〜B10に区画される。
炉底部1Aには、マンテルB1〜B2が割り当てられる。羽口部1B、朝顔部1C、炉腹部1Dには、それぞれマンテルB3,B4,B5が割り当てられる。シャフト部1Eには、マンテルB6〜B9が割り当てられる。炉頂部1Fには、マンテルB10が割り当てられる。
【0030】
このうち、羽口部1B用のマンテルB3および炉底部1A上段用のマンテルB2は、ステーブ3枚分の高さに設定されている。他のマンテルB1,B4〜B9は、ステーブ2枚分の高さに設定されている。
【0031】
これらのマンテルB1〜B10は、それぞれが設置現場とは別の地組場で製造される。
マンテルB1〜B10の製造にあたっては、それぞれ地組場で鉄皮2を円筒状に構築し、その内側にステーブ3および事前施工可能な配管類や装備が設置される。
ただし、耐火煉瓦4の設置は、マンテルB1〜B10を設置現場に積み上げてから行われる。これは、耐火煉瓦4が、炉底部1A側から朝顔部1Cへと、順に積み上げてゆく必要があるからである。
【0032】
本実施形態においては、朝顔部1Cにおけるステーブ3の炉内側面を覆う耐火煉瓦4の一部が、吹付式の不定形耐火材11で代替され、マンテルB4としての地組場での事前施工に組み入れられ、これにより工期の短縮が図られている。
【0033】
図2において、朝顔部1CのマンテルB4は、羽口部1BのマンテルB3と炉腹部1DのマンテルB5との間に設置されている。
【0034】
炉腹部1DのマンテルB5は、炉内側面の耐火材構造として、鉄皮2の内面に沿って多数のステーブ3が設置され、鉄皮2とステーブ3との間には不定形耐火材6が充填されている。ステーブ3の炉内側面には、炉内に露出された状態とされている。
【0035】
羽口部1BのマンテルB3は、炉内側面の耐火材構造として、鉄皮2の内面に沿って多数のステーブ3が設置され、鉄皮2とステーブ3との間には不定形耐火材6が充填されている。
ステーブ3の炉内側面には、多数の耐火煉瓦4が築造されている。一部のステーブ3と耐火煉瓦4との間にも不定形耐火材6が充填されている。
羽口部1BのマンテルB3には、羽口5が設置されている。羽口5は、鉄皮2に固定されている。羽口5の炉内側へ延びる部分を通すために、ステーブ3および耐火煉瓦4は当該部分を避けて設置されている。
【0036】
朝顔部1CのマンテルB4は、炉内側面の耐火材構造として、鉄皮2の内面に沿って多数のステーブ3が設置され、鉄皮2とステーブ3との間には不定形耐火材6が充填される。
マンテルB4に設置される2段のステーブ3のうち、上段のステーブ3の炉内側面の全面および下段のステーブ3の炉内側面の上側の一部(
図2の領域RCで示される朝顔部の上方部分)を覆うように、吹付式の不定形耐火材11が施工されている。
不定形耐火材11は、スラリー状にした不定形耐火材11をステーブ3の炉内側面に吹き付けて固化させたものである。
【0037】
下段のステーブ3の炉内側面の残りの部分(
図2の領域RBで示される朝顔部の下方部分)には、多数の耐火煉瓦4が築造されている。
耐火煉瓦4と不定形耐火材11との間には、膨張吸収材であるクッションモルタル13が充填されている。
なお、本実施形態において、吹付式の不定形耐火材11が施工される領域RCと、耐火煉瓦4で覆われる領域RBとの比率は、およそ2:1とされている。
【0038】
以下、本実施形態における高炉1の朝顔部1Cの構築手順と、具体的な細部構造について説明する。
図3において、本実施形態では、高炉1の設置現場での作業に加えて、地組場および工場での作業が行われる。
このうち、工場では、ステーブ3を製造するステーブ製造工程S11が行われる。
【0039】
地組場では、マンテルB4の製造、ステーブ3の設置ないし不定形耐火材11の施工までを行うために、マンテル地組工程S12、ステーブ設置工程S13、背面施工工程S14および内面施工工程S15が行われる。
設置現場では、地組場で施工されたマンテルB4を積み込んで高炉1を構築するために、マンテル据付工程S16、煉瓦積工程S17および仕上げ工程S18が行われる。
【0040】
ステーブ製造工程S11では、ステーブ3を製造する。
図4に示すように、ステーブ3は、銅または鋳鉄を鋳造してステーブ本体30を形成し、その炉内側となる表面に溝31を形成したものである。
この際、溝31は、炉内側面の開口幅に対して奥側が拡がって形成されている。このような形状により、ステーブ3の炉内側面に不定形耐火材11を吹き付け施工した際には、不定形耐火材11の一部が溝31内に入り込み(
図10参照)、容易に外れないようにできる。
【0041】
マンテル地組工程S12では、マンテルB4の外殻構造となるリング状の鉄皮2を形成する。
図5に示すように、地組場において台座21を円形に配置し、その上に鋼板をリング状に接続して鉄皮2を形成する。
ステーブ設置工程S13では、ステーブ製造工程S11で製造されたステーブ3を地組場に搬入し、このステーブ3を、
図5に示すように、マンテル地組工程S12でリング状に形成された鉄皮2の内面に沿って設置してゆく。
【0042】
背面施工工程S14では、ステーブ3が設置されたマンテルB4に対し、ステーブ3の背面(鉄皮2との隙間)およびステーブ3どうしの隙間に、それぞれ不定形耐火材6を充填する。
図6および
図7に示すように、不定形耐火材6を充填する際には、各隙間から漏れ出すことがないように、台座21とステーブ3との隙間をシール22で封止するとともに、上下のステーブ3どうしの隙間をシール23で封止し、横方向に並ぶステーブ3どうしの隙間をシール24で封止しておく。
なお、これらのシール23,24は、不定形耐火材6が固化した後、吹き付け工程16までの間に取り外しておく(
図10参照)。
【0043】
内面施工工程S15では、先ず、
図8および
図9に示すように、マンテルB4に設置されたステーブ3に対し、不定形耐火材11を吹き付け固着させる際に利用する保持具14を設置する。
保持具14は、水平方向に連続した長尺の保持板141と、保持板141に沿って所定間隔で配置された支持部材142とを有し、支持部材142はボルト143によりステーブ3の炉内側面に固定される。
保持具14は、
図8に示すように、領域RCの下縁に沿って、マンテルB4の下側のステーブ3に設置される。この際、保持板141は水平方向に連続して設置されるが、支持部材142は、各ステーブ3の両側と中間位置など、適宜な間隔で間欠的に設置される。
【0044】
内面施工工程S15では、保持具14の設置に続いて、ステーブ3の炉内側面に、スラリー状にした不定形耐火材11を吹き付ける。
図10に示すように、スラリー状の不定形耐火材11は、既存の吹き付け装置を用い、そのノズル110からステーブ3の炉内側面に向けて吹き付けられる。
【0045】
以上のマンテル地組工程S12から内面施工工程S15により、鉄皮2の内側に不定形耐火材6およびステーブ3が設置され、かつステーブ3の炉内側面の領域RCに吹付式の不定形耐火材11が施工されたマンテルB4が、地組場で製造される。
マンテルB4を含むマンテルB1〜B10が製造できたら、これらを地組場から設置現場へ搬送し、現場基礎上に積み込んで高炉1(
図1参照)を組み立てる。
【0046】
マンテル据付工程S16では、上方のマンテルから順に、現場基礎上に搬入し、炉体櫓に設置したジャッキ等で吊り上げてゆく。そして、炉底部1AのマンテルB1を固定した後、上方のマンテルを順次下降させ、下方で既に固定されたマンテルに固定してゆく。これらの作業は、既存のリングブロック工法に基づいて実施できる。
朝顔部1Cにおいて、マンテルB4および上下のマンテルB3,B5との固定ができたら、耐火煉瓦4を築造する煉瓦積工程S17および最終的な仕上げ工程S18が行われる。
【0047】
煉瓦積工程S17では、マンテルB4の炉内側面の領域RB(
図2参照)に耐火煉瓦4を築造する。
前述のように、マンテルB4の炉内側面は、上部2/3の領域RCが吹付式の不定形耐火材11で被覆され、下部1/3の領域RBが耐火煉瓦4で覆われる。領域RCの不定形耐火材11は、前述した地組場での内面施工工程S15により、施工が済んでいる。
【0048】
図2に示すように、仕上げ工程S18での耐火煉瓦4の築造は、羽口部1Bの耐火煉瓦4の上に積み重ねることで行われる。
すなわち、前述した
図1の一点鎖線で示すように、先ず、炉底部1AにおいてマンテルB1,B2の底面及び炉内側面に耐火煉瓦4を築造し、その上に積み上げるように、羽口部1BのマンテルB3の炉内側面に耐火煉瓦4を築造し、その上にマンテルB4の炉内側面の耐火煉瓦4を築造する。
【0049】
マンテルB4の炉内側面の耐火煉瓦4が、領域RCに既に施工されている不定形耐火材11の近傍まで達したら、
図2に示すように、不定形耐火材11の下面と耐火煉瓦4の上面との間に、耐火性のクッションモルタル13を押し込んで設置する。
以上により、マンテルB4の炉内側面の領域RBに耐火煉瓦4が築造され、領域RCを覆う吹付式の不定形耐火材11と併せて、マンテルB4の炉内側面の耐火材構造が完成する。
【0050】
このような本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態の不定形耐火材11は、ステーブ3の炉内側面を被覆するべく、ステーブ3の炉内側面に固着される。この際、ステーブ3への不定形耐火材11の事前施工は、吹き付けにより簡単かつ効率よく行うことができ、かつ高炉1の設置現場以外の地組場での事前施工が可能であり、高炉1の設置現場での他の作業と並行して行うことで、全体としての工期を短縮することができる。
【0051】
本実施形態では、不定形耐火材11は、高炉1の朝顔部1Cの上方部分である領域RCに施工され、不定形耐火材11より下方のステーブ3の炉内側面には、朝顔部1Cの下方部分である領域RBに耐火煉瓦4が貼られるものとした。
このため、朝顔部1Cより下方の羽口部1B等から積み重ねられる耐火煉瓦4との連続性を確保しつつ、朝顔部1Cにおける領域RC(耐火煉瓦4が築造される領域RBより上方の部分)については、不定形耐火材11の吹き付けによる事前施工を行うことができ、工期短縮の効果を得ることができる。
なお、朝顔部1Cにおける吹付式の不定形耐火材11と耐火煉瓦4との面積比率は、不定形耐火材11が2/3つまり67%程度に及ぶため、工期短縮に有効である。
【0052】
本実施形態では、朝顔部1Cの上方部分である領域RCに不定形耐火材11を施工し、朝顔部1Cの下方部分である領域RBには耐火煉瓦4が貼られるようにしたため、朝顔部1Cより下方の部分での耐火煉瓦4の積み込みに対する影響を解消できる。
【0053】
図11において、朝顔部1Cより下方の炉底部1A、羽口部1Bの耐火煉瓦4の積み込みには、炉内に設置されるクレーン49が多用される。
もし、朝顔部1Cの全高さにわたって不定形耐火材11を施工した場合、不定形耐火材11はステーブ3の炉内側面から所定厚みでせり出す。このため、せり出した不定形耐火材11とクレーン49のワイヤ48とが干渉してしまい、朝顔部1Cより下方の炉底部1A、羽口部1Bに耐火煉瓦4の設置が行えなくなる。
これに対し、本実施形態では、朝顔部1Cの上方部分である領域RCに不定形耐火材11を施工し、朝顔部1Cの下方部分である領域RBには耐火煉瓦4が貼られるようにしたため、ワイヤ48と干渉することがなく、朝顔部1Cより下方の部分での耐火煉瓦4の積み込みに対する影響を解消することができる。
【0054】
本実施形態では、耐火煉瓦4と不定形耐火材11との間に、高炉1の稼働時に収縮または焼失する膨張吸収材であるクッションモルタル13が設置されている。
このため、高炉1が稼働した際に、耐火煉瓦4および不定形耐火材11が熱膨張しても、膨張吸収材であるクッションモルタル13により変形が吸収され、耐火煉瓦4および不定形耐火材11の相互の衝突による脱落を未然に防止することができる。
【0055】
本実施形態では、高炉1を複数のマンテルB1〜B10を用いたリングブロック工法で構築するものとし、高炉1の設置現場とは別の地組場において、マンテルB4を製造するマンテル地組工程S12と、マンテルB4の鉄皮2の内面に沿ってステーブ3を設置するステーブ設置工程S13と、ステーブ3の炉内側面に対する内面施工工程S15と、を行うとともに、高炉1の設置現場において、マンテルを積み上げて高炉1を構築するマンテル据付工程S16と、煉瓦積工程S17と、仕上げ工程S18と、を行うものとした。
このため、高炉1の設置現場とは別の地組場において、マンテルB4あるいは他のマンテルを事前製造できるとともに、この際にステーブ3の炉内側面の不定形耐火材11の施工をも事前に行うことができる。
【0056】
〔第2実施形態〕
図12から
図14の各図には、本発明の第2実施形態が示されている。
前述した第1実施形態では、工場においてステーブ3を製造し、地組場においてマンテルB4の地組、ステーブ3の設置ないし不定形耐火材11の施工までを行っていた。
これに対し、本実施形態では、工場においてステーブ3の製造、および不定形耐火材11の施工を行っておき、設置現場のマンテルB4に、不定形耐火材11付きのステーブ3を装着する。
【0057】
本実施形態の高炉1は、前述した第1実施形態と同様に、下から順に炉底部1A、羽口部1B、朝顔部1C、炉腹部1D、シャフト部1E、炉頂部1Fを有する(
図1参照)。
図12に示すように、羽口部1Bには羽口5が設置され、鉄皮2の炉内側面には、耐火材構造として不定形耐火材6、ステーブ3および耐火煉瓦4が設置されている。また、炉腹部1Dの鉄皮2の炉内側面には、耐火材構造として不定形耐火材6およびステーブ3が設置されている。
【0058】
朝顔部1Cの炉内側面には、耐火材構造として不定形耐火材6、ステーブ3、吹付式の不定形耐火材11および耐火煉瓦4が設置されている。
このうち、吹付式の不定形耐火材11は、朝顔部1Cに設置された2段のステーブ3のうち、上段のステーブ3の炉内側面に施工されている。
【0059】
また、耐火煉瓦4は、朝顔部1Cに設置された2段のステーブ3のうち、下段のステーブ3の炉内側面に施工されている。
下段のステーブ3の炉内側面に施工された耐火煉瓦4のうち、炉内側のものは、一部が上段のステーブ3の下部まで延長され、吹付式の不定形耐火材11の下部を覆うように設置されている。
不定形耐火材11の下端と、下段のステーブ3の炉内側面に施工された耐火煉瓦4のうち、鉄皮2側のものの上端との間には、耐火性のクッションモルタル13が押し込んで設置されている。
【0060】
なお、本実施形態におけるステーブ3、耐火煉瓦4、不定形耐火材6、吹付式の不定形耐火材11、クッションモルタル13などは、前述した第1実施形態と同様のものであり、重複する説明は省略する。
【0061】
次に、本実施形態における高炉1の朝顔部1Cの構築手順と、具体的な細部構造について説明する。
図13に示すように、本実施形態では、予め工場でステーブ3を製造しておく(ステーブ製造工程S21)。
ステーブ製造工程S21においては、朝顔部1Cの上段に設置されるステーブ3に対し、その表面に、
図14に示すように、不定形耐火材11を吹き付け施工しておく(内面施工工程S22)。
【0062】
ステーブ製造工程S21におけるステーブ3の製造、このステーブ3に不定形耐火材11を吹き付けるための内面施工工程S22については、前述した第1実施形態のステーブ製造工程S11および内面施工工程S15と同様な手順が利用でき、保持具14(
図14参照)についても同様のものを利用することができる。
【0063】
ただし、前述した第1実施形態では、複数のステーブ3にまたがる領域RCに対する不定形耐火材11の施工であったが、本実施形態では、単独のステーブ3の炉内側面にそれぞれ不定形耐火材11を吹き付け施工する。
【0064】
一方、設置現場においては、マンテル据付工程S23、ステーブ設置工程S24、背面施工工程S25、煉瓦積工程S26および仕上げ工程S27を行う。
マンテル据付工程S23では、設置現場において鉄皮2を組立て、朝顔部1Cに据え付ける。高炉改修の場合には、旧炉体のマンテルB4を補修して再利用してもよい。
【0065】
ステーブ設置工程S24では、鉄皮2の内側にステーブ3を設置する。
背面施工工程S25では、ステーブ3と鉄皮2との間に、不定形耐火材6を設置する。
これらの工程は、前述した第1実施形態のステーブ設置工程S13および背面施工工程S14と同様である。
ただし、本実施形態では、上段のステーブ3に予め不定形耐火材11が施工されているので、この段階で、朝顔部1Cの鉄皮2の内側には、不定形耐火材6、ステーブ3および不定形耐火材11までが設置されることになる。
【0066】
この後、煉瓦積工程S26により、炉底部1Aないし羽口部1Bの耐火煉瓦4の築造に続いて、下段のステーブ3の炉内側面に耐火煉瓦4を積み、一部の耐火煉瓦4を朝顔部1Cの上段のステーブ3の不定形耐火材11の表面を覆うように設置する。さらに、仕上げ工程S27により、細部の仕上げを行うことで、
図12に示す朝顔部1Cの耐火材構造が完成する。
【0067】
このような本実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様な効果が得られる。
ただし、本実施形態では、地組場を必要としないで済み、地組場から設置現場へのマンテルB4の搬送も省略できる。また、不定形耐火材11の施工をステーブ3の施工に続いて工場で行っておくことができる。
一方で、吹付式の不定形耐火材11を適用できる範囲が、前述した第1実施形態では朝顔部1Cの2/3程度あったのに対し、本実施形態ではステーブ3単位となるため、例えば朝顔部1Cの1/2程度となる。しかし、工期の短縮効果としては十分に有効である。
【0068】
〔第3実施形態〕
図15から
図26の各図には、本発明の第3実施形態が示されている。
前述した第1実施形態では、工場においてステーブ3を製造し、地組場においてマンテルB4の地組、ステーブ3の設置ないし不定形耐火材11の施工までを行い、さらに設置現場においてマンテルB4の据付、耐火煉瓦4の築造を行っていた。
上述した基本手順は、本実施形態でも同様である。しかし、本実施形態では、ステーブ3に対する不定形耐火材11の施工の際に、アンカーおよび格子枠を用いる。
【0069】
以下、本実施形態における高炉1の朝顔部1Cの構築手順と、具体的な細部構造について説明する。
図15において、本実施形態では、高炉1の設置現場での作業に加えて、地組場および工場での作業が行われる。
このうち、工場では、ステーブ3を製造するステーブ製造工程S31が行われる。
【0070】
地組場では、マンテルB4の製造、ステーブ3の設置ないし不定形耐火材11の施工までを行うために、マンテル地組工程S32、ステーブ設置工程S33、背面施工工程S34、アンカー・格子枠取付工程S35および内面施工工程S36が行われる。
設置現場では、地組場で施工されたマンテルB4を積み込んで高炉1を構築するために、マンテル据付工程S37、耐火煉瓦4を築造する煉瓦積工程S38および最終的な仕上げ工程S39が行われる。
【0071】
ステーブ製造工程S31では、ステーブ3を製造する。
図16および
図17に示すように、ステーブ3は、銅または鋳鉄を鋳造してステーブ本体30を形成し、その炉内側となる表面の溝31に耐火材32を充填したものである。
この際、ステーブ3の炉内側面には、不定形耐火材11を吹き付け施工させる際(内面施工工程S36)に用いるプレート33を、溝31の間の表面に所定間隔で固定しておく。
【0072】
マンテル地組工程S32、ステーブ設置工程S33、背面施工工程S34は、それぞれ前述した第1実施形態のマンテル地組工程S12、ステーブ設置工程S13、背面施工工程S14と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0073】
アンカー・格子枠取付工程S35では、先ず、
図18ないし
図20に示すように、マンテルB4に設置されたステーブ3に対し、アンカー12を設置するともに、不定形耐火材11を吹き付け固着させる際に利用する保持具14を設置する。
【0074】
図20に示すように、アンカー12は、鋼製の棒材を用いた軸部121と、その先端に形成されたV字状の枝部122とを有し、全体としてY字状に形成された部材である。軸部121の根元には固定部としての雄ねじ部123が形成されている。
ステーブ3の炉内側面(耐火材32が充填される溝31でない部分)には、ステーブ製造工程S11においてプレート33が設置されており、このプレート33には雄ねじ部123を螺合可能な雌ねじ穴が形成されている。
アンカー12は、このプレート33に雄ねじ部123をねじ込むことで、ステーブ3の炉内側面に起立した状態で固定される。
【0075】
図18および
図19において、アンカー12は、マンテルB4の上側のステーブ3に対しては、その全面に設置される。一方、マンテルB4の下側のステーブ3に対しては、前述した領域RC(吹付式の不定形耐火材11が施工される領域、
図2参照)の範囲内にだけ設置される。
【0076】
図19に示すように、アンカー12は、Y字状の枝部122が垂直方向に対して斜めになるように固定され、かつ、それぞれ上下に並ぶ各列では交互に逆方向に向けられている。すなわち、
図11において、水平方向に並ぶある列のアンカー12は、枝部122が左上から右下に向かう方向に配置され、その上下に隣接する列のアンカー12は、枝部122が右上から左下に向かう方向に配列されている。
【0077】
図20において、保持具14は、水平方向に連続した長尺の保持板141と、保持板141に沿って所定間隔で配置された支持部材142とを有し、支持部材142はボルト143によりステーブ3の炉内側面に固定される。
【0078】
図18および
図19において、保持具14は、領域RCの下縁に沿って、マンテルB4の下側のステーブ3に設置される。この際、保持板141は水平方向に連続して設置されるが、支持部材142は、各ステーブ3の両側と中間位置など、適宜な間隔で間欠的に設置される。
【0079】
アンカー・格子枠取付工程S35では、さらに、
図21に示すように、ステーブ3に設置された保持具14を利用して、不定形耐火材11が吹き付けられるステーブ3の領域RCに、格子状枠15を設置しておく。
図22に示すように、格子状枠15は、板材151,152を格子状となるように縦横に組んで棚状あるいは書架状に形成した枠体ユニット150を並べたものである。
【0080】
格子状枠15を形成する板材の厚さとしては、区画された範囲の熱膨張を吸収するとともに、格子状枠自体にある程度の保形性が必要であるため、1mm〜3mm程度の厚みとすることが望ましい。
格子状枠15の区画寸法は、縦横150mm〜400mm程度、より好ましくは縦横200mm〜300mm程度とされる。
格子状枠15の材質は、高炉1の稼働時に収縮または焼失する材質とされている。例えば、熱可塑性樹脂の発泡体や成型品、木材や紙素材などが利用でき、200℃以上の温度で軟化もしくは燃焼する材料であることが望ましい。
【0081】
図23に示すように、枠体ユニット150を横方向に連結する際には、各々の水平な板材151の端部をジョイント板153で連結する。縦方向に連結する際にも、同様なジョイント板を用いることができる。
これらのアンカー・格子枠取付工程S35が済んだら、ステーブ3の炉内側面に不定形耐火材11を吹き付ける内面施工工程S36を行う。
【0082】
内面施工工程S36では、
図24に示すように、格子状枠15が設置されたステーブ3の炉内側面に、スラリー状にした不定形耐火材11を吹き付ける。
スラリー状の不定形耐火材11は、既存の吹き付け装置を用い、そのノズル110から格子状枠15の各枠内に向けて吹き付けられる。
【0083】
図25および
図26に示すように、不定形耐火材11の吹き付けにより、格子状枠15の各枠内にスラリー状の不定形耐火材11が充填され、各枠内のステーブ3の炉内側面に不定形耐火材11が付着するとともに、不定形耐火材11がアンカー12を包み込んだ状態とされる。
この後、時間の経過とともに、格子状枠15の各枠内の不定形耐火材11は固化し、ステーブ3の炉内側面に固着するとともに、アンカー12を介してステーブ3に強固に固着される。
【0084】
なお、格子状枠15は、高炉1の稼働時の温度では軟化して流失するため、不定形耐火材11の固化後も残留させておいてもよい。格子状枠15が高炉1の稼働時の温度では軟化して流失することで、不定形耐火材11の間に格子状の溝を形成することができ、不定形耐火材11が脱落するような状況になっても、区画毎の脱落で済ますことができる。
なお、格子状枠15は、不定形耐火材11がある程度固化した段階で取り外しておいてもよい。
【0085】
以上のマンテル地組工程S32から内面施工工程S36により、鉄皮2の内側に不定形耐火材6およびステーブ3が設置され、かつステーブ3の炉内側面の領域RCに吹付式の不定形耐火材11が施工されたマンテルB4が、地組場で製造される。
マンテルB4を含むマンテルB1〜B10が製造できたら、これらを地組場から設置現場へ搬送し、現場基礎上に積み込んで高炉1(
図1参照)を組み立てる。
この際、マンテルB4を据え付けるマンテル据付工程S37、耐火煉瓦4を築造する煉瓦積工程S38、仕上げ工程S39は、前述した第1実施形態と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0086】
このような本実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様な効果が得られるほか、次のような効果が得られる。
本実施形態の不定形耐火材11は、ステーブ3の炉内側面を被覆するべく、ステーブ3の炉内側面に固着される。この際、ステーブ3の炉内側面にはアンカー12が設置されているため、不定形耐火材11は、単にステーブ3の炉内側面に固着するだけでなく、ステーブ3の炉内側面から起立するアンカー12によってステーブ3に対して強固に接合される。さらに、不定形耐火材11は、アンカー12により、ステーブ3の炉内側面に沿った変位も防止される。
【0087】
従って、本実施形態によれば、ステーブ3への不定形耐火材11の固着を強固にすることができ、この不定形耐火材11に隣接してステーブ3の炉内側面に耐火煉瓦4が施工されても、この耐火煉瓦4の脱落を抑制できる。
【0088】
本実施形態では、アンカー12が、軸部121および枝部122を有するため、枝部122が不定形耐火材11に包まれて不定形耐火材11に食いつき、不定形耐火材11の固着性能を高めることができる。さらに、枝部122は、軸部121から枝状に延びる線材あるいは軸材で形成でき、製造が容易であるとともに、不定形耐火材11の吹き付け施工時に容易に包み込んで確実な固着状態を得ることができる。
本実施形態のアンカー12では、固定部として雄ねじ部123を用いたため、ステーブ3への固定が容易であるとともに、構造も簡略にできる。
【0089】
本実施形態では、耐火煉瓦4と不定形耐火材11との間に、高炉1の稼働時に収縮または焼失する膨張吸収材であるクッションモルタル13が設置されている。
このため、高炉1が稼働した際に、耐火煉瓦4および不定形耐火材11が熱膨張しても、膨張吸収材であるクッションモルタル13により変形が吸収され、耐火煉瓦4および不定形耐火材11の相互の衝突による脱落を未然に防止することができる。
【0090】
本実施形態では、高炉1の稼働時に収縮または焼失する格子状枠15、をステーブ3の炉内側面に沿って設置し、不定形耐火材11の吹き付けは、格子状枠15の各格子内に行うようにした。
このため、ステーブ3の炉内側面に吹き付けられる不定形耐火材11が、格子状枠15によって保持され、固化までの間に、自重で下方に流失したり変形したりすることを防止できる。
一方、格子状枠15は、高炉1の稼働時に収縮または焼失する材質とすることで、不定形耐火材11の間には縦横に隙間を形成することができる。このような隙間が形成された場合、不定形耐火材11の熱膨張分が吸収され、高炉1の稼働時においても耐火材の脱落などが生じにくくできる。
【0091】
さらに、高炉1の稼働時に収縮または焼失する格子状枠15を、不定形耐火材11に残留させておくことで、高炉1内において、不定形耐火材11が脱落する状況があったとしても、施工時の格子状枠15により、不定形耐火材11が多数のブロックに分割されており、広い領域にわたって一気に脱落することが防止でき、羽口詰まりを防止できる。
【0092】
〔第4実施形態〕
図27には、本発明の第4実施形態が示されている。
前述した第3実施形態は、前述した第1実施形態において、アンカー12および格子状枠15を追加し、そのために地組場での内面施工工程S36の前にアンカー・格子枠取付工程S35を追加していた。
本実施形態では、前述した第2実施形態において、アンカー12および格子状枠15を追加し、工場での内面施工工程S43の前に、アンカー・格子枠取付工程S42を追加するものである。
【0093】
なお、本実施形態において、工場におけるステーブ製造工程S41、内面施工工程S43、設置現場におけるマンテル据付工程S44、ステーブ設置工程S45、背面施工工程S46、煉瓦積工程S47、仕上げ工程S48は、
図13に示す第2実施形態のステーブ製造工程S21、内面施工工程S22、マンテル据付工程S23、ステーブ設置工程S24、背面施工工程S25、煉瓦積工程S26、仕上げ工程S27と同様であり、重複する説明は省略する。
【0094】
一方、本実施形態で追加されるアンカー12および格子状枠15の構成、およびアンカー・格子枠取付工程S42は、前述した第3実施形態で述べた通りであり、重複する説明は省略する。
【0095】
このような本実施形態によれば、前述した第2実施形態と同様の効果が得られるとともに、第3実施形態で追加された各効果を得ることができる。
【0096】
〔変形例〕
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれるものである。
吹付式の不定形耐火材11を固着させるためのアンカー12は、前述したY字状に限らず、L字状などであってもよく、ステーブ3に固定され、かつ不定形耐火材11と強固に接続できるものであればよい。
また、格子状枠15およびその保持具14の具体的な形状、構造、寸法、材質などは、実施にあたって適宜選択することができる。
【0097】
前述した各実施形態では、高炉1の朝顔部1Cの耐火材構造および耐火材施工方法について説明した。ただし、例えば炉底部1Aから築造される耐火煉瓦4が、炉腹部1Dまで達するような高炉1においては、本発明を炉腹部1Dの耐火材構造および耐火材施工方法として適用することもできる。