特許第6482968号(P6482968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6482968床下空調システム及びそれを備えた省エネ住宅
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482968
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】床下空調システム及びそれを備えた省エネ住宅
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20190304BHJP
   F24D 11/00 20060101ALI20190304BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   F24F5/00 K
   F24F5/00 102C
   F24D11/00 A
   E04B1/76 200A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-130513(P2015-130513)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-15285(P2017-15285A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】511295276
【氏名又は名称】株式会社岡建
(74)【代理人】
【識別番号】100122552
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 浩二郎
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和彦
【審査官】 安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−115633(JP,A)
【文献】 特開平09−032260(JP,A)
【文献】 特開2005−069545(JP,A)
【文献】 特開2009−127927(JP,A)
【文献】 特開2012−117745(JP,A)
【文献】 特開2014−017068(JP,A)
【文献】 米国特許第4303058(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F24D 11/00
E04B 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光パネル及びパワーコンディショナーを有した太陽光発電装置で太陽光発電を行う住宅に適用されるものとして、所定の空調手段で床下空間の空調を行うことにより少なくとも床暖房を実施可能な床下空調システムにおいて、
前記パワーコンディショナーは、所定サイズ以上の収納空間を有したパワーコンディショナー収納室に収納されており、前記パワーコンディショナー収納室の上部空間から前記床下空間まで連通させる暖気通路が設けられているとともに、前記床下空間の下部側から前記パワーコンディショナー収納室の下部空間まで連通させる冷気通路が設けられており、前記パワーコンディショナーの作動に伴う排熱で暖められた前記パワーコンディショナー収納室内の空気が、前記暖気通路を介して前記床下空間に導入されることで少なくともその上部側の温度を上昇させて床板を暖めるものとされ、前記上部側の空気よりも低温の下部側の空気が前記冷気通路を介して前記パワーコンディショナー収納室に導入されることで前記パワーコンディショナーの冷却を行うものとされており、前記パワーコンディショナー収納室内と前記床下空間の間で空気を循環させながら前記パワーコンディショナーの排熱を熱源にして前記床暖房を行う、ことを特徴とする床下空調システム。
【請求項2】
前記暖気通路には電動式のファンが付設されており、少なくとも前記床暖房の際に前記ファンの作動により前記パワーコンディショナー収納室の上部空間の空気を強制的に前記床下空間に送出する、ことを特徴とする請求項1に記載した床下空調システム。
【請求項3】
前記ファンは、電子的制御手段によりその作動が制御されるものとされ、前記電子的制御手段は、前記床下空間及び前記パワーコンディショナー収納室に各々配設した温度センサを介して検知した温度データを基に、最適な床下空調及び適切な前記パワーコンディショナーの冷却を実現する方向で前記制御を行う、ことを特徴とする請求項2に記載した床下空調システム。
【請求項4】
前記パワーコンディショナー収納室には、前記太陽光発電装置に付設される蓄電手段が前記パワーコンディショナーとともに収納されており、その蓄電及び放電に伴う排熱も前記床暖房の熱源として利用される、ことを特徴とする請求項1,2または3に記載した床下空調システム。
【請求項5】
前記パワーコンディショナー収納室には、その上部空間又は前記床下空間上部側と屋外とを連通させる上部空気通路、及びその下部空間又は前記床下空間下部側と屋外とを連通させる下部空気通路が設けられており、前記パワーコンディショナーの冷却を行う場合又は前記床下空間の換気を行う場合に、前記両通路が各々連通して前記パワーコンディショナー収納室又は前記床下空間と屋外との間で空気を循環させる、ことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載した床下空調システム。
【請求項6】
前記太陽光パネル及び前記パワーコンディショナーを有した前記太陽光発電装置を備えて太陽光発電を行う住宅であって、前記パワーコンディショナーを収納した前記パワーコンディショナー収納室を備えており、且つ、前記パワーコンディショナー収納室の上部空間から前記床下空間まで連通させる前記暖気通路、及び前記床下空間の下部側から前記パワーコンディショナー収納室の下部空間まで連通させる前記冷気通路が設けられてなる請求項1,2,3,4または5に記載した床下空調システム備えている、ことを特徴とする省エネ住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下空調システム及びそれを備えた省エネ住宅に関し、殊に、太陽光発電装置の排熱を床下に導入して暖房に利用する床下空調システム、及びそのシステムを備えてエネルギー消費量を低減可能とした省エネ住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エコ意識の高まりや地球温暖化対策の要請もあって、太陽光発電装置を設けて商用電力の使用量を低減したりヒートポンプ給湯装置を設けて冷暖房用エネルギーの使用量を低減したりする、いわゆる省エネ住宅が普及している。例えば、本願発明者・出願人らは、先に特開2013−117353号公報において、夜間にヒートポンプ式給湯装置で生じた冷気を、底面及び側面が基礎コンクリートで囲まれた床下空間に導入して蓄熱(冷却)し、日中に外気を床下空間に導入して冷却しながら冷房に利用する方式の床下空調システムを提案している。
【0003】
一方、暖房についても、特開2014−190638号公報には、パワーコンディショナーを有した太陽光発電装置及びヒートポンプを備えた暖房システムが提案されており、太陽光発電装置による売電を考慮しながらヒートポンプによる暖房に使用するエネルギーを精密に制御するものとして、暖房運転における一層のコスト低減を実現している。
【0004】
また、特開2014−17068号公報には、太陽光発電装置等に付設した蓄電装置(バッテリ)の排熱を利用する技術として、その排熱で暖められた空気を床部に導入して蓄熱材に蓄熱させることで床暖房を行う方式が提案されており、従来排出するだけであった充放電時に生じる熱を活用することで、暖房に要するエネルギーを一層低減可能なものとしている。
【0005】
ところで、太陽光発電装置においては、太陽光パネルで発電された電圧の不安定な直流の電気を、家庭で使用可能な一定電圧の交流の電気に変換するためのパワーコンディショナーが不可欠である。しかし、このパワーコンディショナーの作動時に発熱することが知られており、その熱で暖められた空気はそのまま屋外に排出されて利用されていないのが現状であり、エネルギー効率の観点においては未だ不十分と言わざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−117353号公報
【特許文献2】特開2014−17068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、太陽光発電装置を備えた住宅について、エネルギー効率に優れた床下空調システムを低コストで実現できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、太陽光パネル及びパワーコンディショナーを有した太陽光発電装置で太陽光発電を行う住宅に適用されるものとして、所定の空調手段で床下空間の空調を行うことにより少なくとも床暖房を実施可能な床下空調システムにおいて、そのパワーコンディショナーは、所定サイズ以上の収納空間を有したパワーコンディショナー収納室に収納されており、そのパワーコンディショナー収納室の上部空間から床下空間まで連通させる暖気通路が設けられているとともに、その床下空間の下部側からパワーコンディショナー収納室の下部空間まで連通させる冷気通路が設けられており、パワーコンディショナーの作動に伴う排熱で暖められたパワーコンディショナー収納室内の空気が、前記暖気通路を介して床下空間に導入されることで少なくともその上部側の温度を上昇させて床板を暖めるものとされ、その上部側の空気よりも低温の下部側の空気が前記冷気通路を介してパワーコンディショナー収納室に導入されることでパワーコンディショナーの冷却を行うものとされており、パワーコンディショナー収納室内と床下空間の間で空気を循環させながらパワーコンディショナーの排熱を熱源にして床暖房を行うことを特徴とするものとした。
【0009】
このように、従来は過剰な温度上昇を防止するために排出されるのみであったパワーコンディショナーの排熱を、パワーコンディショナー収納室と床下空間との間に形成した空気の循環通路で床暖房に利用可能な構成としたことにより、設置コストの過剰な上昇を伴うことなく家屋全体のエネルギー効率を著しく高めることが可能となる。
【0010】
また、この床下空調システムにおいて、その暖気通路には電動式のファンが付設されており、少なくとも床暖房の際にそのファンの作動によりパワーコンディショナー収納室の上部空間の空気を強制的に床下空間に送出することを特徴としたものとすれば、2つの空間の間で空気の循環が能動的に行われて効率的で有効な空調を実現しやすいものとなる。
【0011】
この場合、そのファンは電子的制御手段によりその作動が制御されるものとされ、その電子的制御手段は、床下空間及びパワーコンディショナー収納室に各々配設した温度センサを介して検知した温度データを基に、最適な床下空調及び適切なパワーコンディショナーの冷却を実現する方向で前記制御を行う、ことを特徴としたものとすれば、効率的な床下空間の空調を実現しながらパワーコンディショナーの過熱によるトラブルを回避しやすいものとなる。
【0012】
さらに、上述した床下空調システムにおいて、前記パワーコンディショナー収納室には、前記太陽光発電装置に付設される蓄電手段が前記パワーコンディショナーとともに収納されており、その蓄電及び放電に伴う排熱も床暖房の熱源として利用されることを特徴としたものとすれば、捨てるだけであった熱エネルギーを有効に利用することで一層エネルギー効率に優れたものとなり、且つ両者が同時に作動することでより大きな熱源が得られることに加え、両者の作動のタイミングのズレを利用することで、一日のうち一層より長い時間を暖房可能となる。
【0013】
さらにまた、上述した床下空調システムにおいて、そのパワーコンディショナー収納室には、その上部空間又は床下空間上部側と屋外とを連通させる上部空気通路、及びその下部空間又は床下空間下部側と屋外とを連通させる下部空気通路が設けられており、パワーコンディショナーの冷却を行う場合又は床下空間の換気を行う場合に、前記両通路が各々連通してパワーコンディショナー収納室又は床下空間と屋外との間で空気を循環させることを特徴としたものとすれば、パワーコンディショナー収納室が過剰に高温となったり床下空間の湿度が過剰に高くなったりする事態を、有効に回避しやすいものとなる。
【0014】
そして、太陽光パネル及びパワーコンディショナーを有した太陽光発電装置を備えて太陽光発電を行う住宅であって、そのパワーコンディショナーを収納したパワーコンディショナー収納室を備えており、且つ、そのパワーコンディショナー収納室の上部空間から床下空間まで連通させる暖気通路、及びその床下空間の下部側からパワーコンディショナー収納室の下部空間まで連通させる冷気通路が設けられてなる上述した床下空調システム備えている、ことを特徴とする省エネ住宅とすれば、低廉なランニングコストで極めて優れたエネルギー効率を実現可能なものとなる。
【発明の効果】
【0015】
パワーコンディショナーの排熱をパワーコンディショナー収納室と床下空間との間に形成した空気の循環通路で床暖房に利用可能とした本発明によると、エネルギー効率に優れた床下空調システムを低コストで実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の床下空調システムを備えた省エネ住宅の構成を示す縦断面図である。
図2図1の床下空調システムで床暖房を行っている状態を示す縦断面図である。
図3図1の床下空調システムでパワーコンディショナー及び蓄電池の冷却を行っている状態を示す縦断面図である。
図4図1の床下空調システムで床下空間の換気を行っている状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態である床下空調システムを備えた省エネ住宅の構成を縦断面図で示している。この省エネ住宅は、屋根上に設置した図示しない太陽光パネルとこれに配線で接続されたパワーコンディショナー4及び蓄電手段としての蓄電池5からなる太陽光発電装置、及びこれを図示しない配電盤に接続するための配線を備えていることに加え、後述する床暖房等を実施するための床下空調システムを備えている。
【0019】
その床下空調システムは、パワーコンディショナー4と、このパワーコンディショナー4を収納するための所定サイズ以上の収納空間を有したパワーコンディショナー収納室35と、そのパワーコンディショナー収納室35の上部空間から床下空間25まで連通させる管体による暖気通路8aと、その床下空間25の下部側からパワーコンディショナー収納室35の下部空間まで連通させる管体による冷気通路8bを有している。
【0020】
斯かる構成としたことにより、パワーコンディショナー4の作動に伴う発熱で暖められたパワーコンディショナー収納室35の空気(暖気)が、暖気通路8aを介して床下空間25に導入されることで、少なくともその上部側の温度を上昇させて床板26を暖めながら床暖房を実施可能なものとなり、その上部側の空気よりも低温で重い空気(冷気)が、床下空間25下部側で開口した冷気通路8bを介してパワーコンディショナー収納室35の下部空間に導入されることで、パワーコンディショナー4の冷却を実施可能なものとされており、これが本発明の最大の特徴となっている。
【0021】
また、このパワーコンディショナー収納室35の上部側には、その上部空間又は床下空間25上部側と屋外とを連通させるための管体による上部空気通路7aが設けられ、パワーコンディショナー収納室35の下部側には、その下部空間又は床下空間25下部側と屋外とを連通させるための管体による下部空気通路7bが設けられている。これにより、パワーコンディショナー4の冷却又は床下空間25の換気を行う場合に、上部空気通路7a及び下部空気通路7bが各々連通して、パワーコンディショナー収納室35又は床下空間25と屋外との間で空気を循環させるようになっている。
【0022】
その床下空間25は、少なくとも床暖房を行うための部分が、底面及び側面をコンクリートで囲まれてなるベタ式の基礎コンクリート20で構成されており、そのコンクリート自体が蓄熱手段としても機能するようになっている。一方、パワーコンディショナー収納室35はその床下空間25に隣接して形成され、その下部空間が前述の床下空間25と同様に底面及び側面をコンクリートで囲まれ、その上部空間が階段下収納室30の床面から突出してなる箱体27で囲まれており、階段下収納室30側との間で空気の流通を閉止された状態となっている。
【0023】
本実施の形態においては、作動時に発熱するパワーコンディショナー4に加え、充放電時に発熱する蓄電池5がパワーコンディショナー収納室35内に収納されており、その充電と放電に伴う排熱も床暖房の熱源として利用される点も特徴となっている。また、熱源であるパワーコンディショナー4及び蓄電池5は、その放熱能を確保するために、側面が開放しながら上面が格子状とされて上下方向に空気の流通が可能な状態の支持台41でパワーコンディショナー収納室35のほぼ中心位置に支持されており、その底面・側面・上面に沿って空気が流通しやすいようになっている。
【0024】
また、パワーコンディショナー収納室35のパワーコンディショナー4及び蓄電池5の上方位置では、上部空気通路7aと暖気通路8aが切換弁61を介して接続されており、その切換弁61は、パワーコンディショナー収納室35と床下空間25を連通させながら上部空気通路7aを閉鎖した状態、パワーコンディショナー収納室35と屋外を連通させながら暖気通路8aを閉鎖した状態、床下空間25と屋外を連通させながらパワーコンディショナー収納室35への開口部を閉鎖した状態、の3つの状態を電動アクチュエータで切換え操作可能とされており、この切換弁16には電動式のファン6aが付設されて、パワーコンディショナー収納室35内の空気を床下空間25又は屋外へ強制的に送出するようになっている。
【0025】
そのファン6a及び切換弁61は、電子的制御手段及び操作・設定手段を備えてパワーコンディショナー収納室35の外(本実施の形態では階段下収納室30)に配置された制御盤10Aに配線(一点鎖線で示す)で接続されており、その作動を各々制御されるようになっている。また、冷気通路8bのパワーコンディショナー収納室35側の開口端にも電動式のファン6bが配設されており、これも制御盤10A側で作動制御されるようになっている。
【0026】
即ち、この制御盤10Aには、パワーコンディショナー収納室35a内に配設した温度センサ11aと床下空間25に配設した温度センサ11b及び湿度センサ11cのデータ信号が各々入力され、これを検知した電子的制御手段が、その温度データや湿度データを基に、床下空間25の最適な空調とパワーコンディショナー4及び蓄電池5の適正な温度管理を実現する方向にて、切換弁61、ファン6a,6bをフィードバック制御するようになっている。
【0027】
図2は、本実施の形態による床下空調システムで冬期に床暖房を行っている状態を示している。冬期であっても日中では太陽光パネルが活発に発電を行っていることから、パワーコンディショナー収納室35に内装したパワーコンディショナー4と蓄電池5は作動しながら多量の熱を発生しており、その周辺の空気は暖められてパワーコンディショナー収納室35上部空間に上昇して溜まっている。
【0028】
その制御盤10Aの電子的制御手段は、床下空間25が所定温度以下であることを検知するとともに、パワーコンディショナー収納室35の上部空間の温度が所定温度以上に達したことを検知することを条件に、床暖房を開始する設定となっている。また、この床暖房における制御では、切換弁61をパワーコンディショナー収納室35と床下空間25を連通させる位置にして、ファン6aを作動させるものとしている。
【0029】
これにより、パワーコンディショナー収納室35内の暖気は、暖気通路8aを介して床下空間25の上部側に導入されながら床板26の加温に使用されることになる。そして、加温に使用されて温度が低下した空気は、下部側に降りてそれよりも低温の基礎コンクリート20を暖めることでさらに温度を低下させた後、底面付近に開口した冷気通路8bを介してパワーコンディショナー収納室35の下部空間に戻される。本実施の形態では、その冷気通路8bにも制御盤10A側から作動制御されるファン6bが付設されてその作動時に冷気通路8bが連通しながら空気を送るようになっており、前記2つの空間の間の空気循環がスムースに行われやすいものとしている。
【0030】
そして、床暖房の開始から数時間経過すると、床下空間25全体の温度が上昇するため、蓄熱体でもある基礎コンクリート20内側部分の温度もある程度上昇することになる。そのため、太陽光パネルが発電を停止しパワーコンディショナー24が作動停止して床暖房を終了した夜の段階においても、床下空間25の温度はその基礎コンクリート20の熱により外部よりも高く維持されることから、夜間において床板26が冷たくなることを回避しやすいものとなる。
【0031】
一方、太陽光発電が終了した後で蓄電池5に溜めた電気を使用する場合は、その放電により蓄電池5が発熱することに加え、その直流の電流を交流に変換するパワーコンディショナー4も発熱することになる。この場合も、温度センサ11aで所定温度以上であることを検知することを条件にして、太陽光による発電の終了後においても床暖房を実施することができる。或いは、夜間の安価な商用電力を蓄電池5に溜めておくケースにおいても充電に伴う発熱があるため、それを熱源として床暖房を実施することが可能である。
【0032】
図3は、床暖房を行わずにパワーコンディショナー4と蓄電池5の冷却を行っている状態を示している。この場合は、例えば夏期などの気温が高く発電量も大きな時期において、パワーコンディショナー収納室35の上部空間が所定温度以上に上昇したことを、制御盤100Aの電子的制御手段が温度センサ11aで検知したことにより、切換弁61をパワーコンディショナー収納室35と屋外とを連通する位置に切換えてファン6aを作動させる制御を実行している。
【0033】
その際、冷気通路8bのパワーコンディショナー収納室35側の開口部は、ファン6bの位置で閉鎖されていることから、そのファン6aの作動で上部空間のパワーコンディショナー収納室35上部空間の暖気が屋外に排出されることにより、パワーコンディショナー収納室35内は全体として屋外と比べて負圧の状態になる。
【0034】
そのため、下部空気通路7bの開口端を塞いでいた圧力開閉式の開閉弁71が開弁して、屋外の空気をパワーコンディショナー収納室35下部空間に導入するようになり、パワーコンディショナー収納室35と屋外との間でスムースな空気の循環を実現しながら、パワーコンディショナー4と蓄電池5の冷却が適切に行われることになる。
【0035】
図4は、例えば梅雨時期など、床下空間25で湿気が溜まりやすい状況において、床下空調システムによりその換気を行っている状態を示している。この場合、床下空間25が所定湿度以上になったことを湿度センサ11cで検知した制御盤10Aの電子的制御手段は、切換弁61を床下空間25と屋外とを連通させながらパワーコンディショナー収納室35側の開口部を閉鎖する位置に切換えるとともに、下部側のファン6bを下部通路8bを連通させながら図2の場合とは逆向きに回転させる制御を実行する。
【0036】
これにより、パワーコンディショナー収納室35内は屋外と比べて負圧になるため、下部空気通路7bの開閉弁71は開弁して屋外の乾いた空気をパワーコンディショナー収納室35内に導入させるようになる。そして、導入された空気はファン6bにより床下空間25内に送出されてその内部を乾燥させる作用を発揮した後、暖気通路8b、上部空気通路7aを介して屋外に排出される。
【0037】
このように、ファン6bの作動により床下空間25と屋外との間で空気を循環させるようにしたことで、床下空間25内の空気が順次入れ替わりながらその換気が適切に行われて、床下空間25の湿度が適切に維持されるものである。尚、下部空気通路7bを介して導入される外気は、その一部がパワーコンディショナー収納室35内の空気と混合されることから、パワーコンディショナー4及び蓄電池5の冷却作用もある程度期待できるが、その上部空間の温度が所定温度以上になった場合は図3で示した状態に切り換える制御とすることが好ましい。
【0038】
このように、本実施の形態による床下空調システム及びそれを備えた省エネ住宅は、パワーコンディショナー収納室35と床下空間25と屋外との間の空気の連通状態を複数のセンサで検知した温度・湿度データを基に適宜切換える制御を実行する方式を採用したことにより、過大な設置コストや運転コストを要することなく、床暖房を含む適切な床下空調の実施とパワーコンディショナー4及び蓄電池5の適切な冷却を実現できるものである。
【0039】
尚、床暖房を行う床下空間は、利用する熱源のキャパシティに応じて例えばリビングの位置のみとするなど、家屋全体の床下空間のうち一部に限定してもよく、この場合、床暖房を行わない他の空間と区画するために、目的とする位置を囲むように基礎コンクリートや断熱性に優れた板材等で周壁を設ければ良い。その際に、周壁を構成する板材等の内周面側を保冷剤シート等の蓄熱手段で覆って蓄熱機能を与えても良い。
【0040】
以上、述べたように、太陽光発電装置を備えた住宅について、本発明によりエネルギー効率に優れた床下空調システムを低コストで実現できるようになった。
【符号の説明】
【0041】
4 パワーコンディショナー、5 蓄電池、6a,6b ファン、7a 上部空気通路、7b 下部空気通路、8a 暖気通路、8b 冷気通路、10A 制御盤、11a,11b 温度センサ、11c 湿度センサ、20 基礎コンクリート、25 床下空間、26 床板、27 箱体、30 階段下収納室、35 パワーコンディショナー収納室、61 切換弁、71 開閉弁
図1
図2
図3
図4