(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6482975
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】画像生成装置および画像生成方法
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20190304BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20190304BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
B60K35/00 A
B60R11/02 C
G02B27/01
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-141599(P2015-141599)
(22)【出願日】2015年7月15日
(65)【公開番号】特開2017-24444(P2017-24444A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】安本 貴史
【審査官】
二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−296701(JP,A)
【文献】
特開2009−044570(JP,A)
【文献】
特開2009−111556(JP,A)
【文献】
特開2012−240467(JP,A)
【文献】
特開2010−188811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00−37/06,
G02B 27/00−27/64,
G09F 9/00,
G09G 3/20−3/38,5/00−5/40,
G01D 7/00−7/12,
G01C 21/00−21/36,23/00−25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドアップディスプレイの表示画像を生成する画像生成装置であって、
車両の運転者の視点の位置を特定する視点位置特定部と、
前記視点位置特定部によって特定された前記視点の位置が、前記ヘッドアップディスプレイによって表示された前記表示画像を視認可能な所定の領域の範囲内から逸脱しているか否かを判定する逸脱判定部と、
前記逸脱判定部によって前記視点の位置が前記所定の領域の範囲内から逸脱していると判定された場合、前記視点の位置から視認される前記表示画像の一部の領域内に前記表示画像の全体の表示内容が収まるように、前記表示画像を補正する画像補正部とを備え、
前記画像補正部は、前記視点の位置から視認される前記表示画像の一部の領域内に前記表示画像の全体の表示内容が収まるように、当該表示内容に含まれている図形を縮小したときに、当該図形に含まれている文字列の文字サイズが所定の文字サイズよりも小さくなる場合、当該図形の代わりに、当該図形と同じ意味をなす文字列が前記所定の文字サイズよりも大きい文字サイズで表示されるように、前記表示画像を補正する
ことを特徴とする画像生成装置。
【請求項2】
前記画像補正部は、前記逸脱判定部によって前記視点の位置が前記所定の領域の範囲内から逸脱していると判定された場合、前記視点の位置から視認される前記表示画像の一部の領域内において、当該一部の領域のサイズが変化していくのに応じて、当該一部の領域に表示される表示内容がアニメーション動作するように、前記表示画像を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項3】
前記画像補正部は、前記逸脱判定部によって前記視点の位置が前記所定の領域の範囲内から所定時間以上逸脱していると判定された場合、前記視点の位置から視認される前記表示画像の一部の領域内に前記表示画像の全体の表示内容が収まるように、前記表示画像を補正する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像生成装置。
【請求項4】
ヘッドアップディスプレイの表示画像を生成する画像生成装置による画像生成方法であって、
前記画像生成装置の視点位置特定部が、車両の運転者の視点の位置を特定する視点位置特定工程と、
前記画像生成装置の逸脱判定部が、前記視点位置特定工程にて特定された前記視点の位置が、前記ヘッドアップディスプレイによって表示された前記表示画像を視認可能な所定の領域の範囲内から逸脱しているか否かを判定する逸脱判定工程と、
前記画像生成装置の画像補正部が、前記逸脱判定工程にて前記視点の位置が前記所定の領域の範囲内から逸脱していると判定された場合、前記視点の位置から視認される前記表示画像の一部の領域内に前記表示画像の全体の表示内容が収まるように、前記表示画像を補正する画像補正工程とを含み、
前記画像補正工程において、前記画像補正部は、前記視点の位置から視認される前記表示画像の一部の領域内に前記表示画像の全体の表示内容が収まるように、当該表示内容に含まれている図形を縮小したときに、当該図形に含まれている文字列の文字サイズが所定の文字サイズよりも小さくなる場合、当該図形の代わりに、当該図形と同じ意味をなす文字列が前記所定の文字サイズよりも大きい文字サイズで表示されるように、前記表示画像を補正する
ことを特徴とする画像生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像生成装置および画像生成方法に関し、特に、車載のヘッドアップディスプレイによって表示される表示画像を生成する画像生成装置および画像生成方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車載のヘッドアップディスプレイにより、各種情報(例えば、車速、進行方向、制限速度等)を示す表示画像を、車両の運転席の前方の表示面(フロントウインドウまたはコンバイナ)に投影する技術が利用されている。これにより、運転者は、視線を前方から逸らさずに各種情報を視認することができる。
【0003】
一般的に、ウインドシールド型のヘッドアップディスプレイは、ダッシュボード内の投影装置から出射された表示画像を、凹面鏡で反射させた後、ダッシュボードの上面に形成された開口部から出射させて、運転席の前方のフロントウインドウに照射するようになっている。一方、コンバイナ型のヘッドアップディスプレイは、運転席の前方に設置された凹面構造のコンバイナに対し、コンバイナと対面する位置に設置された投影装置から、表示画像を照射するようになっている。いずれにおいても、運転者は、表示面にて反射された表示画像の光路上に形成されるEYEBOX(運転者が表示画像を視認可能な領域)において、その表示画像の虚像を視認できるようになっている。したがって、EYEBOXの位置を、運転者が通常の姿勢で運転しているときの視点位置をカバーできる位置に調整できるようにすることが好ましい。
【0004】
このため、従来のヘッドアップディスプレイは、アイリプス(運転者の目の位置の分布を表す楕円)をカバーできるように、EYEBOXの位置を複数の位置(例えば、高位置、中間位置、低位置)のいずれかに調整することができるようになっている。
【0005】
図5は、従来のヘッドアップディスプレイの装置構成例を示す図である。
図5に示すヘッドアップディスプレイ500は、ウインドシールド型のヘッドアップディスプレイである。ヘッドアップディスプレイ500は、投影装置501、凹面鏡502およびフロントウインドウ503を備えている。投影装置501および凹面鏡502は、車両のダッシュボード520内に設置されている。このヘッドアップディスプレイ500は、投影装置501から投影された表示画像が、凹面鏡502によって反射され、ダッシュボード520の開口部520aを通過して、運転席の前方のフロントウインドウ503へ照射されるようになっている。
【0006】
このヘッドアップディスプレイ500では、運転者の視点の位置に合わせて、凹面鏡502の角度が調整されることにより、アイリプスEL内を包含するように規定されている3つの位置EB1〜EB3のいずれかに対し、EYEBOXが選択的に設定されるようになっている。例えば、EYEBOXの位置がEB1に設定されることにより、身長が比較的高い運転者が通常の姿勢で運転しているときの視点の位置を、当該EYEBOXによりカバーできるようになる。また、EYEBOXの位置がEB3に設定されることにより、身長が比較的低い運転者が通常の姿勢で運転しているときの視点の位置を、当該EYEBOXによりカバーできるようになる。
【0007】
しかしながら、従来、このようにEYEBOXの位置が調整されるとしても、EYEBOXの中心位置の調整範囲がアイリプスELの範囲内となっているため、運転者の視点の位置がアイリプスELの範囲から逸脱したとき、運転者によって視認される表示画像の一部が欠けてしまうといった問題が生じていた。
【0008】
例えば、
図6は、車両の運転者によって視認される従来の表示画像の一例を示す図である。
図6(a)に示す画像600,602は、従来のヘッドアップディスプレイにおいて、運転者の視点の位置がアイリプスELの範囲内に位置しているときに、運転者によって視認される表示画像の一例を示したものである。画像600は、車両の進行方向を示す図形と、車速を示す文字列とを表示内容に含んで構成されている。画像602は、車両の制限速度を示す図形を表示内容に含んで構成されている。
【0009】
一方、
図6(b)に示す画像600’は、従来のヘッドアップディスプレイにおいて、運転者の視点の位置がアイリプスELから上方に逸脱したとき(例えば、背の高い運転者が大きく背伸びしたり、シートの位置を高くしたりしたとき等)に、運転者によって視認される画像600を示したものである。画像600’では、
図6(a)に示した画像600の上方の一部が欠けてしまい、運転者による表示内容の把握が困難になっている。
【0010】
また、
図6(c)に示す画像602’は、従来のヘッドアップディスプレイにおいて、アイリプスELから下方に逸脱したとき(例えば、背の低い運転者が大きく屈んだり、シートの位置を低くしたりしたとき等)に、運転者によって視認される画像602を示したものである。画像602’では、
図6(a)に示した画像602の下方の一部が欠けてしまい、運転者による表示内容の把握が困難になっている。
【0011】
なお、下記特許文献1には、表示高さ調整スイッチの運転者の操作、または、視線検知カメラによって検知された運転者の視線位置に応じて、凹面鏡の角度を調整することにより、表示画像の虚像の表示高さ(すなわち、EYEBOXの高さ位置)を、統計上の例えば99%の人の視線が分布する範囲(すなわち、アイリプス)の範囲内で調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2014−210537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1の技術は、凹面鏡の投影方向を調整するための機構と、凹面鏡の投影方向に合わせてインストルメントパネルの開口の大きさを調整するための機構とを備えた構成となっている。このため、アイリプスの範囲外にまでEYEBOXの中心位置を調整できるようにすると、これらの機構を収容するインストルメントパネルの容積が大型化したり、インストルメントパネルに形成する開口部の大きさが大型化したり、これらの機構の動作音が運転者に不快感を及ぼしたりするなどといった問題が生じてしまう。
【0014】
本発明は、上述のような問題を解決するために成されたものであり、ヘッドアップディスプレイの表示画像を視認可能な領域から、運転者の視点の位置が逸脱した場合であっても、より簡易な装置構成で、運転者がその表示画像の表示内容を把握することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した課題を解決するために、本発明では、ヘッドアップディスプレイの表示画像を生成する画像生成装置において、車両の運転者の視点の位置が、ヘッドアップディスプレイによって表示された表示画像を視認可能な所定の領域の範囲内から逸脱していると判定された場合、視点の位置から視認される表示画像の一部の領域内に表示画像の全体の表示内容が収まるように、表示画像を補正するようにしている。
また、表示画像の補正の際、視点の位置から視認される表示画像の一部の領域内に表示画像の全体の表示内容が収まるように、当該表示内容に含まれている図形を縮小したときに、当該図形に含まれている文字列の文字サイズが所定の文字サイズよりも小さくなる場合、当該図形の代わりに、当該図形と同じ意味をなす文字列が所定の文字サイズよりも大きい文字サイズで表示されるように、表示画像を補正するようにしている。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成した本発明によれば、表示画像を視認可能な所定の領域の範囲から運転者の視点の位置が逸脱した場合であっても、その視点の位置から視認可能な表示画像の一部の領域内に表示された補正画像の情報により、表示画像の全体の表示内容を運転者が把握することができる。特に、本発明によれば、運転者の視点の位置に応じて画像を補正するだけでよいため、表示画像を視認可能な領域の位置を変更するための機構(例えば、特許文献1に記載の凹面鏡の投影方向を調整するための機構、開口の大きさを調整するための機構等)を設ける必要がない。したがって、本発明によれば、ヘッドアップディスプレイの表示画像を視認可能な領域から、運転者の視点の位置が逸脱した場合であっても、より簡易な装置構成で、運転者がその表示画像の表示内容を把握することができるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイの装置構成例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイの機能構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る画像生成装置による処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイが表示する表示画像の一例を示す図である。
【
図5】従来のヘッドアップディスプレイの装置構成例を示す図である。
【
図6】従来のヘッドアップディスプレイが表示する表示画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔ヘッドアップディスプレイ10の装置構成例〕
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ10の装置構成例を示す図である。
図1に示すヘッドアップディスプレイ10は、自動車等の車両に搭載されている装置であって、各種情報を運転席の前方のフロントウインドウ13に表示するウインドシールド型のヘッドアップディスプレイである。
【0019】
図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ10は、投影装置11、凹面鏡12、フロントウインドウ13およびカメラ14を備えている。投影装置11および凹面鏡12は、車両のダッシュボード20内に設置されている。投影装置11は、表示対象の表示画像を投影する。投影装置11としては、例えば、レーザプロジェクタ、液晶ディスプレイ等が用いられる。凹面鏡12は、投影装置11から投影された画像を反射することにより、当該画像をダッシュボード20の開口部20aを通過させて、運転席の前方のフロントウインドウ13の表示面13aへと導く。
【0020】
フロントウインドウ13の表示面13aは、投影装置11から投影された表示画像が凹面鏡12を介して照射されることにより、当該表示画像を表示する。運転者は、表示面13aにて反射された画像の光路上に形成されるEYEBOX(運転者が表示画像を視認可能な領域)の範囲e内において、あたかもその表示画像がフロントウインドウ13よりも前方に拡大して表示されているかの如く、その表示画像の虚像を視認できるようになっている。
【0021】
カメラ14は、運転者の前方(例えば、ダッシュボード20上)に設置されている。カメラ14は、少なくともアイリプスの範囲およびその周辺にある運転者の目を写し出すことができるように、その撮像方向が予め適切に設定されている。
【0022】
このように構成されたヘッドアップディスプレイ10は、運転者が通常の姿勢で運転しているときに、運転者の視点の位置がEYEBOXの範囲e内に収まるように、運転者の視点の位置がアイリプスELの範囲内にある限り、運転者の視点の位置をEYEBOXの中心位置として、凹面鏡12の角度が調整されることで、EYEBOXが適切な位置に設定される。これにより、アイリプスELの範囲内であれば、運転者の視点の位置がどの位置に移動しても、運転者の視点の位置はEYEBOXの範囲e内に収まり、運転者がフルサイズの画像(一部が欠けていない画像)を視認することができるようになっている。これを実現するため、所定の座標系(車内の空間の座標系、またはカメラ14によって撮像された画像の座標系)において、運転者の視点の位置毎に、EYEBOXの範囲eに対応する座標値の範囲が、予め設定されて記憶部(図示省略)に記憶されている。
【0023】
なお、EYEBOXの中心位置がアイリプスELの範囲内に制限されるため、運転者の視点の位置がアイリプスELから上方に逸脱した場合には、運転者によって視認される表示画像の上方の一部が欠けることとなる。また、運転者の視点の位置がアイリプスELから下方に逸脱した場合には、運転者によって視認される表示画像の下方の一部が欠けることとなる。
【0024】
〔ヘッドアップディスプレイ10の機能構成例〕
図2は、本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ10の機能構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、ヘッドアップディスプレイ10は、上述の各装置11〜14(
図1参照)に加えて、画像生成装置100を備えている。画像生成装置100は、各種情報(例えば、車速、案内方向、制限速度等)を表示するための表示画像を生成する装置である。
【0025】
画像生成装置100は、その機能構成として、情報取得部101、画像生成部102、視点位置特定部103、逸脱判定部104、画像補正部105および表示制御部106を備えている。
【0026】
上記各機能ブロック101〜106は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック101〜106は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0027】
情報取得部101は、フロントウインドウ13に表示させる情報を取得する。
図2に示す例では、情報取得部101は、車載のスピードセンサ21から車速を取得する。また、情報取得部101は、車載のナビゲーション装置22から案内方向および制限速度を取得する。
【0028】
画像生成部102は、情報取得部101によって取得された情報(例えば、スピードセンサ21から取得した車速、ナビゲーション装置22から取得した案内方向および制限速度)を表示するための表示画像を生成する。
【0029】
視点位置特定部103は、カメラ14によって撮像された画像に基づいて、車両の運転者の視点の位置を特定する。例えば、視点位置特定部103は、従来の画像認識技術により、カメラ14によって撮像された画像から、運転者の瞳を検出する。そして、視点位置特定部103は、画像から検出した運転者の瞳の位置を、運転者の視点の位置として特定する。車両の運転者の視点の位置は、所定の座標系(車内の空間の座標系、またはカメラ14によって撮像された画像の座標系)における座標値によって示される。なお、本実施形態では、運転者の視点の位置がアイリプスELから高さ方向に逸脱しているか否かを判定するようにしているため、視点位置特定部103は、運転者の視点の位置として、少なくとも高さ方向の位置を特定すればよい。
【0030】
逸脱判定部104は、視点位置特定部103によって特定された運転者の視点の位置が、アイリプスEL(ヘッドアップディスプレイ10によって表示された表示画像を視認可能な所定の領域)から上方または下方に逸脱しているか否かを判定する。さらに、逸脱判定部104は、運転者の視点の位置のアイリプスELからの逸脱量を判定する。例えば、画像生成装置100においては、所定の座標系におけるアイリプスELの範囲を示す座標値の範囲が、予め定められている。逸脱判定部104は、視点位置特定部103によって特定された運転者の視点の位置を示す座標値が、アイリプスELの範囲よりも上方の位置を示す場合、運転者の視点の位置がアイリプスELから上方に逸脱していると判定する。また、逸脱判定部104は、視点位置特定部103によって特定された運転者の視点の位置を示す座標値が、アイリプスELの範囲よりも下方の位置を示す場合、運転者の視点の位置がアイリプスELから下方に逸脱していると判定する。さらに、逸脱判定部104は、運転者の視点の位置を示す座標値と、アイリプスELの範囲を示す座標値の範囲とに基づいて、運転者の視点の位置の逸脱量を判定する。
【0031】
画像補正部105は、逸脱判定部104によって運転者の視点の位置がアイリプスELから逸脱していると判定された場合、その視点の位置から視認される表示画像の一部の領域内に表示画像の全体の表示内容が収まるように、画像生成部102によって生成された表示画像を補正する。
【0032】
例えば、画像補正部105は、逸脱判定部104によって判定された運転者の視点の位置の逸脱方向および逸脱量に応じて、運転者の視点の位置から視認可能な表示画像の一部の領域を算出する。例えば、運転者の視点の位置がアイリプスELから上方に逸脱した場合、表示画像の下部の領域(逸脱量に応じた高さ幅を有する領域)が、その視点の位置から視認可能な表示画像の一部の領域として算出される。反対に、運転者の視点の位置がアイリプスELから下方に逸脱した場合、表示画像の上部の領域(逸脱量に応じた高さ幅を有する領域)が、その視点の位置から視認可能な表示画像の一部の領域として算出される。
【0033】
そして、画像補正部105は、算出した表示画像の一部の領域(表示画像の下部または上部の領域)に表示画像の全体の表示内容が収まるように、画像生成部102によって生成された表示画像を補正する。
【0034】
具体的には、画像補正部105は、元の表示画像の全ての表示内容を、表示画像の一部の領域内に再配置する。このとき、そのままでは表示画像の一部の領域に収まらない表示内容については、当該表示内容を縮小して、表示画像の一部の領域内に再配置する。一方、そのままで表示画像の一部の領域に収まる表示内容については、当該表示内容を縮小することなく、表示画像の一部の領域内に再配置する。
【0035】
なお、画像補正部105は、上記のように図形を縮小したときに、当該図形に含まれている文字列の文字サイズが所定の文字サイズよりも小さくなる場合、当該図形の代わりに、当該図形と同じ意味をなす、所定の文字サイズよりも大きい文字サイズの文字列を表示画像の一部の領域に配置する。
【0036】
表示制御部106は、画像補正部105によって表示画像が補正された場合、画像補正部105による補正後の表示画像を投影装置11へ出力することにより、当該表示画像をフロントウインドウ13に表示させる。一方、表示制御部106は、画像補正部105によって表示画像が補正されなかった場合、画像生成部102によって生成された表示画像を投影装置11へ出力することにより、当該表示画像をフロントウインドウ13に表示させる。
【0037】
〔画像生成装置100による処理の一例〕
図3は、本発明の一実施形態に係る画像生成装置100による処理の一例を示すフローチャートである。
図3に示す処理は、例えば、ヘッドアップディスプレイ10の電源がONに切り替えられたタイミングで実行される。
【0038】
まず、情報取得部101が、フロントウインドウ13に表示させる情報を取得する(ステップS302)。次に、画像生成部102が、ステップS302で取得された情報を表示するための表示画像をフロントウインドウ13に表示可能なサイズの最大サイズで生成する(ステップS304)。
【0039】
次に、視点位置特定部103が、カメラ14によって撮像された画像を取得する(ステップS306)。そして、視点位置特定部103が、ステップS306で取得した画像に基づいて、車両の運転者の視点の位置を特定する(ステップS308)。
【0040】
次に、逸脱判定部104が、ステップS308で特定された運転者の視点の位置が、フロントウインドウ13に表示された表示画像を視認可能な領域であるアイリプスELから逸脱しているか否かを判定する(ステップS310)。
【0041】
ここで、運転者の視点の位置がアイリプスELから逸脱していると逸脱判定部104が判定した場合(ステップS310:Yes)、画像補正部105が、その視点の位置から視認される表示画像の一部の領域内に表示画像の全体の表示内容が収まるように、ステップS304で生成された表示画像を補正する(ステップS312)。そして、表示制御部106が、ステップS312で補正された表示画像を投影装置11へ出力することにより、当該表示画像をフロントウインドウ13に表示させる(ステップS314)。その後、画像生成装置100は、
図3に示す一連の処理を終了する。
【0042】
一方、運転者の視点の位置がアイリプスELから逸脱していないと逸脱判定部104が判定した場合(ステップS310:No)、表示制御部106が、ステップS304で生成された表示画像を投影装置11へ出力することにより、当該表示画像をフロントウインドウ13に表示させる(ステップS314)。その後、画像生成装置100は、
図3に示す一連の処理を終了する。
【0043】
〔表示画像の一例〕
図4は、本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ10が表示する表示画像の一例を示す図である。
図4(a)に示す画像400,402は、本実施形態のヘッドアップディスプレイ10において、運転者の視点の位置がアイリプスELの範囲内に位置しているときに、運転者によって視認される表示画像の一例を示したものである。画像400は、車両の進行方向を示す図形400aと、車速を示す文字列400bとを表示内容に含んで構成されている。画像402は、車両の制限速度を示す図形402aを表示内容に含んで構成されている。
【0044】
一方、
図4(b)に示す画像400’は、本実施形態のヘッドアップディスプレイ10において、運転者の視点の位置がアイリプスELから上方に逸脱したとき(例えば、背の高い運転者が大きく背伸びしたり、シートの位置を高くしたりしたとき等)に、運転者によって視認される画像を示したものである。
【0045】
この画像400’では、運転者の視点の位置から視認可能な下方の一部の領域400Aに、画像400に表示されていた全ての表示内容(図形400aおよび文字列400b)が表示されている。このうち、図形400aは、元々領域400Aに収まらないサイズであったため、領域400Aに収まるように縮小された状態で、領域400Aに表示されている。一方、文字列400bは、元々領域400Aに収まるサイズであるため、縮小されることなく、領域400Aに表示されている。この画像400’により、運転者は、視点の位置がアイリプスELから上方に逸脱しているときであっても、画像400の全ての表示内容を視認できるようになっている。
【0046】
また、
図4(c)に示す画像402’は、本実施形態のヘッドアップディスプレイ10において、運転者の視点の位置がアイリプスELから下方に逸脱したとき(例えば、背の低い運転者が大きく屈んだり、シートの位置を低くしたりしたとき等)に、運転者によって視認される画像を示したものである。
【0047】
この画像402’では、運転者の視点の位置から視認可能な上方の一部の領域402Aに、画像402に表示されていた全ての表示内容(文字列402a’)が表示されている。文字列402a’は、画像402に表示されていた図形402aと同じ意味(制限速度が80kmであること)をなす文字列であり、所定の文字サイズよりも大きい文字サイズが用いられている。このように、図形402aが文字列402a’に変更されたのは、領域402Aに収まるように図形402aを縮小してしまうと、図形402aに含まれている文字列(「80」)の文字サイズが所定の文字サイズよりも小さくなるからである。この画像402’により、運転者は、視点の位置がアイリプスELから下方に逸脱しているときであっても、画像400の全ての表示内容を視認できるようになっている。
【0048】
以上説明したとおり、本発明の一実施形態によれば、アイリプスELから運転者の視点の位置が逸脱した場合であっても、その視点の位置から視認可能な一部の領域400A,402A内に表示された表示画像400’,402’により、表示画像400,402全体の表示内容を運転者が把握することができる。特に、本発明の一実施形態によれば、運転者の視点の位置に応じて画像を補正するだけでよいため、EYEBOXの中心位置をアイリプスELの範囲外まで大きく変更するための機構を設ける必要がない。したがって、本発明の一実施形態によれば、ヘッドアップディスプレイの表示画像を視認可能な領域から、運転者の視点の位置が逸脱した場合であっても、より簡易な装置構成で、運転者がその表示画像の表示内容を把握することができるようにすることができる。
【0049】
なお、上記実施形態において、画像補正部105は、逸脱判定部104によって運転者の視点の位置がアイリプスELから逸脱していると判定された場合、その視点の位置から視認される表示画像の一部の領域内において、当該一部の領域のサイズが変化していくのに応じて、当該一部の領域に表示される表示内容がアニメーション動作(例えば、フェード、スライド、ズーム等)するように、表示画像を補正するようにしてもよい。
【0050】
例えば、
図4(b)に示す画像400’において、領域400Aが徐々に縮小されるにつれて、図形400aが縮小されつつ、図形400aおよび文字列400bが、縮小された領域400Aの中心位置上(高さ方向における中心位置上)を移動するようにしてもよい。
【0051】
また、
図4(c)に示す画像402’において、初めに、領域402Aが徐々に縮小されるにつれて、図形402aが縮小されつつ、縮小された領域402Aの中心位置上(高さ方向における中心位置上)を移動するようにしてもよい。そして、図形402aに含まれている文字列(「80」)の文字サイズが所定の文字サイズよりも小さくなったときに、図形402aがズームアウトしつつ、文字列402a’がスライドインしながら領域402Aに表示されるようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態において、画像補正部105は、逸脱判定部104によって運転者の視点の位置がアイリプスELから所定時間(例えば、1秒)以上逸脱していると判定された場合、その視点の位置から視認される表示画像の一部の領域内に表示画像の全体の表示内容が収まるように、表示画像を補正するようにしてもよい。この場合、運転者の視点の位置がアイリプスELから瞬間的に逸脱した場合であっても、所定時間内にアイリプスELの範囲内に復帰すれば、表示画像の切り替えが行われない。このため、表示画像が頻繁に切り替わってしまうことを防止することができる。
【0053】
また、上記実施形態において、運転者の視点の位置から視認可能な表示画面の一部の領域に、所定のサイズより大きいサイズの文字列を表示することができない場合、表示画像を補正せずにそのまま表示するか、または、表示画像を表示しないようにしてもよい。
【0054】
また、
図4(c)に示す例では、図形402aを縮小したときに、図形402aに含まれている文字列(「80」)の文字サイズが所定の文字サイズよりも小さくなる場合、図形402aの代わりに文字列402a’を表示するようにしているが、本発明はこれに限らない。例えば、図形402aの代わりに図形402aと同じ意味をなす別の図形を表示するようにしてもよい。また、他の例として、文字列を縮小したときに、当該文字列の文字サイズが所定の文字サイズよりも小さくなる場合、当該文字列の代わりに当該文字列と同じ意味をなす図形を表示するようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、車速、案内方向および制限速度をヘッドアップディスプレイ10に表示させるようにしているが、これ以外の情報をヘッドアップディスプレイ10に表示させるようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、運転者の視点の位置がアイリプスELから高さ方向に逸脱した場合に、その視点の位置から視認可能な表示画像の一部の領域に表示画像の全体の表示内容を表示するようにしているが、本発明はこれに限らない。例えば、運転者の視点の位置がアイリプスELから横方向に逸脱した場合に、その視点の位置から視認可能な表示画像の一部の領域に表示画像の全体の表示内容を表示するようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、本発明をウインドシールド型のヘッドアップディスプレイに適用しているが、本発明はこれに限らない。例えば、本発明をコンバイナ型のヘッドアップディスプレイに適用してもよい。
【0058】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 ヘッドアップディスプレイ
11 投影装置
12 凹面鏡
13 フロントウインドウ
14 カメラ
21 スピードセンサ
22 ナビゲーション装置
100 画像生成装置
101 情報取得部
102 画像生成部
103 視点位置特定部
104 逸脱判定部
105 画像補正部
106 表示制御部