(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483018
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】型押し加工のための構造体スタンプ、装置および方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20190304BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20190304BHJP
B81C 99/00 20100101ALI20190304BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20190304BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20190304BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 B
B81C99/00
B82Y30/00
B82Y40/00
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-530303(P2015-530303)
(86)(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公表番号】特表2015-534721(P2015-534721A)
(43)【公表日】2015年12月3日
(86)【国際出願番号】EP2012067430
(87)【国際公開番号】WO2014037044
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2015年4月1日
【審判番号】不服2017-3551(P2017-3551/J1)
【審判請求日】2017年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ペーター フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト クラインドル
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ ハーミング
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーネ タナー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シェーン
【合議体】
【審判長】
森 竜介
【審判官】
小松 徹三
【審判官】
近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0197712(US,A1)
【文献】
特開2011−35346(JP,A)
【文献】
特開2012−60141(JP,A)
【文献】
特開平3−203645(JP,A)
【文献】
特許第4889133(JP,B1)
【文献】
特開平9−1776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027 , 21/30 , 21/46
B29C 53/00 - 53/84
B29C 57/00 - 59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体スタンプ(5)であって、
マイクロパターン化またはナノパターン化されたスタンプ面(2)に対応する型押し構造体を型押し面(6o)に型押し加工するための前記マイクロパターン化またはナノパターン化されたスタンプ面(2)を有するフレキシブルなスタンプ(1)と、
該フレキシブルなスタンプ(1)を張設するフレーム(3)と、
を備えている構造体スタンプ(5)において、
前記フレキシブルなスタンプ(1)は、該フレキシブルなスタンプ(1)が、型押しエレメント(8)によって、前記フレーム(3)により規定された表面平面を越えて、線状力を用いて伸長可能となるようにフレキシブルに形成されており、
前記フレキシブルなスタンプ(1)は、支持体と、構造エレメントを有する相応するスタンプ構成部分とから成っていて、前記支持体および/または前記スタンプ構成部分は、前記型押しエレメント(8)によって相応して変形され得るようにするためにフレキシブルに形成されており、
前記構造体スタンプ(5)は、前記フレーム(3)を、前記フレーム(3)の、前記スタンプ面(2)とは反対の側で収容する保持フレーム(11)を有しており、
前記構造体スタンプ(5)には、前記フレキシブルなスタンプ(1)の角度調整を自動で行うためのモータが取り付けられており、
前記フレーム(3)は、当該フレーム(3)の互いに向かい合って位置する2つの張設側(10,10´)に、一対の互いに向かい合って位置する張設条片(4,4´)を有しており、前記一対の張設条片(4,4´)の間に前記フレキシブルなスタンプ(1)が張設されており、前記一対の張設条片(4,4´)のうちの一方の張設条片(4)は、前記フレーム(3)に剛性的に取り付けられ、前記一対の張設条片(4,4´)のうちのもう一方の張設条片(4´)は、前記フレーム(3)と、複数のばね(12)から構成されるばねシステム(13)を介して連結されており、
前記支持体は、ガラス基板である、
ことを特徴とする、構造体スタンプ(5)。
【請求項2】
前記フレーム(3)が、互いに反対の側に位置するように、互いに平行に延びる2つの案内条片(9,9´)を有しており、該案内条片(9,9´)は、前記フレキシブルなスタンプ(1)の、前記スタンプ面(2)とは反対の側に配置された加圧側(2u)に沿って、前記型押しエレメント(8)を案内するために用いられる、請求項1記載の構造体スタンプ(5)。
【請求項3】
前記表面平面が、前記案内条片(9,9´)により規定されている、請求項2記載の構造体スタンプ(5)。
【請求項4】
前記フレキシブルなスタンプ(1)は、前記支持体と、該支持体の上のエラストマのスタンプ層とから形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の構造体スタンプ(5)。
【請求項5】
前記フレーム(3)に沿って案内される型押しエレメント(8)が設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載の構造体スタンプ(5)。
【請求項6】
前記型押しエレメント(8)は、前記保持フレーム(11)と前記フレーム(3)との間で、互いに反対の側に位置する前記張設側に対して平行に、前記型押しエレメント(8)が前記フレキシブルなスタンプ(1)に沿って案内可能となり、かつこのときに前記フレキシブルなスタンプ(1)を型押し力で加圧するように形成されるように案内されている、請求項4記載の構造体スタンプ(5)。
【請求項7】
型押し面(6o)に型押しパターンを型押し加工する装置であって、以下の特徴:
請求項1から6までのいずれか1項記載の構造体スタンプ(5)を収容しかつ運動させるスタンプ収容部と、
前記構造体スタンプ(5)に対向して型押し材料(6)を収容しかつ配置する型押し材料収容部と、
型押しエレメント(8)を前記構造体スタンプ(5)に沿って運動させる型押しエレメント駆動装置と、
を備えていることを特徴とする、型押しパターンを型押し加工する装置。
【請求項8】
型押し材料の型押し面に型押しパターンを型押し加工する方法であって、以下のステップ:
型押し材料に対向して、請求項1から6までのいずれか1項記載の構造体スタンプのスタンプ面を配置するステップと、
前記構造体スタンプに沿って型押しエレメントを運動させ、かつこのときに前記構造体スタンプを線状力によって加圧し、型押し材料をスタンプ面で加圧することにより型押し材料を型押し加工するステップと、
を備えることを特徴とする、型押しパターンを型押し加工する方法。
【請求項9】
前記フレキシブルなスタンプを、前記型押しエレメントによる型押し加工時に、前記フレームの案内条片により規定された表面平面を越えて伸長させる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記フレームを、そのスタンプ面とは反対の側で保持フレームにより収容する、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記型押しエレメントを、前記保持フレームと前記フレームとの間で、互いに反対の側に位置する張設側に対して平行に、前記フレキシブルなスタンプに沿って案内し、かつ該スタンプを型押し力で加圧する、請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の型押し加工(インプリント)のための構造体スタンプ、請求項9に記載の装置および請求項10に記載の方法に関する。
【0002】
表面のマイクロ構造化もしくはマイクロパターン化および/またはナノ構造化もしくはナノパターン化のための現在の公知先行技術は、とりわけフォトリソグラフィおよび種々異なる型押し加工技術である。型押し加工技術は、硬質のスタンプまたは軟質のスタンプを用いて作業する。最近では、とりわけインプリントリソグラフィ技術が普及していて、クラシカルなフォトリソグラフィ技術を圧倒している。インプリントリソグラフィ技術のなかでも、とりわけ軟質のソフトスタンプの使用がますます人気となっている。その理由は、スタンプの簡単な製造、効率の良い型押し加工過程、各スタンプ材料の極めて良好な表面特性、少ないコスト、型押し加工製品の再現可能性およびとりわけ離型時におけるスタンプの弾性変形の可能性にある。ソフトリソグラフィにおいては、マイクロパターン化もしくはナノパターン化された表面を有するエラストマから成るスタンプが使用され、これにより20nm〜>1000μmの領域の構造体が製作される。
【0003】
以下に挙げる6つの公知技術が存在する:
・ マイクロ−および/またはナノコンタクトプリンティング(μ/nCP)
・ レプリカモールディング(REM)
・ マイクロトランスファモールディング(μTM)またはナノインプリントリソグラフィ(NIL)
・ キャピラリ内マイクロモールディング(MIMIC)
・ 溶媒にたすけられたマイクロモールディング(SAMIM)および
・ 位相シフトリソグラフィ。
【0004】
エラストマのスタンプはマスタのネガ型として製造される。マスタスタンプは、金属またはセラミックスから成る硬質のハードスタンプであり、このハードスタンプは、相応して手間のかかるプロセスによって1回で製造される。次いで、マスタから任意の個数のエラストマのスタンプが製造され得る。エラストマのスタンプは、大きな表面にわたって均一でコンフォーマルなコンタクト(追従密着)を可能にする。エラストマのスタンプはそのマスタスタンプならびに型押し加工製品から容易に分離され得る。さらに、エラストマのスタンプは、スタンプと基板との容易でかつ簡単な分離のために小さな表面張力しか有しない。ソフトリソグラフィのプロセスの自動化された実現のためには、エラストマのスタンプを支持体によって支持することが必要となる。現在、種々の厚さを有するガラス支持基板が使用されている。しかし、厚いガラス基板の使用により、エラストマのスタンプはそのフレキシブル性を少なくとも部分的に失う。
【0005】
剛性的な支持体の使用は、型押し加工プロセス後のスタンプと基板との自動的な分離を困難にし、これによりプロセス自動化およびインプリントリソグラフィの工業的な使用可能性の実現が極めて困難となる。
【0006】
したがって、本発明の課題は、自動化および一層迅速なプロセス実行を保証することのできるようなマイクロパターン化および/またはナノパターン化のための装置および方法を提供することである。
【0007】
この課題は、請求項1、請求項9および請求項10にそれぞれ記載の特徴により解決される。本発明の有利な改良形は従属形式の請求項に記載されている。明細書、特許請求の範囲および/または図面に記載されている特徴のうちの少なくとも2つの特徴から成るあらゆる組合せも本発明の枠内にある。記載された値範囲に関しては、挙げられた範囲内にある値でも限界値として有効になり得る。その場合、任意の組合せが可能である。
【0008】
本発明によれば、マイクロパターン化および/またはナノパターン化された、特に少なくとも部分的にエラストマから成り、好ましくは大部分がエラストマから成るスタンプ、特にフィルムスタンプと、フレームとから成る構造体スタンプが使用される方法および装置が提供される。スタンプは、加圧側において、本発明によれば、その全長に沿って、特に連続的な1つのプロセスにおいて、特に長さに対して直交する横方向に延びる線状力を用いて加圧され、これにより構造体は型押し材料内に圧入される。有利には、前記加圧は型押しエレメント、特に、好ましくは剛性的な型押しローラを用いて行われる。
【0009】
以下において「スタンプ」とは、相応する構造エレメントをその表面に有し、かつ型押し加工プロセスの際に本発明におけるフレキシブル性を有するような、あらゆる種類の構成部分を意味する。スタンプは、単独の構成部分または組み合わされた構成部分であってよい。スタンプが単独の構成部分としてしか形成されていない場合、スタンプは、相応する構造エレメントが形成されているフィルムまたはフレキシブルなプレートから成っている。組み合わされたスタンプの場合には、スタンプが、支持体と、構造エレメントを有する相応するスタンプ構成部分とから成っている。支持体および/またはスタンプ構成部分は、この場合には、型押しエレメントによって相応して変形され得るようにするために、構成部分アッセンブリとして所要のフレキシブル性を有していなければならない。
【0010】
本発明において「線状力」とは、力負荷が、第1の方向、特にスタンプに沿った型押しエレメントの運動方向に対して直交する横方向において、少なくとも大部分が行われ、特に完全に行われ(つまり、たとえばスタンプの全有効幅を捕捉する)、それに対して、第2の方向(特に第1の方向に対して直交する方向)では、比較的極めて小さな範囲だけが(特に第1の方向に対して1対5、好ましくは1対10、有利には1対20、さらに有利には1対100の割合で)同時に負荷されることを意味する。したがって、同時に負荷されるスタンプの面全体に比べて比較的小さな負荷面もしくは加圧面が得られる。これにより、極めて規定された負荷が可能となるだけでなく、極めて均一な型押し加工も達成される。したがって、本発明はさらに、型押し加工法の大面積の使用を可能にし、特に0.5mよりも大きな幅、好ましくは1mよりも大きな幅、さらに有利には2mよりも大きな幅および/または0.5mよりも大きな長さ、好ましくは1mよりも大きな長さ、さらに有利には2mよりも大きな長さを有する型押し加工法の大面積の使用を可能にする。
【0011】
モジュール式のフレーム内でのスタンプの本発明における配置により、方法の自動化が可能となり、ひいては一層迅速なプロセス実行が可能となる。
【0012】
本発明による構造体スタンプの改良形では、スタンプが、2つの互いに反対の側に位置する張設側に配置された2つの張設条片によって張設される。張設条片は、特にスタンプを構造体スタンプに位置固定するための位置固定手段を有している。各張設条片は、直接にまたはばねシステムを介してフレームに位置固定されていてよい。しかし有利には、前記張設条片のうちの少なくとも一方の張設条片が、ばねによってフレームに取り付けられる。しかし特別な実施態様では、スタンプを長手方向に対して直交する横方向で位置固定し、かつ/または張設するために、さらに別の張設条片が長辺側において使用され得る。長手方向に対して直交する横方向に延びる張設条片は、特に(コントロールされていない)横方向収縮を減少させるために、特にこのような横方向収縮を回避するために働く。
【0013】
本発明によれば、構造体スタンプが、拡張された構成アッセンブリの一部であってよい。この構成アッセンブリは案内条片を有しており、これらの案内条片内で型押しエレメントを線状に運動させることができる。この構成アッセンブリには、スタンプの角度調整をも保証するために、調節ねじ(手動式の角度調整)またはモータ(自動式の角度調整)が取り付けられている。したがって、本発明の有利な実施形態では、スタンプの、スタンプ面とは反対の側に配置された加圧側に沿って型押しエレメント、特に型押しローラを案内するための、互いに向かい合って位置し、特に互いに平行に延びる2つの案内条片が設けられており、これらの案内条片は、構造体スタンプをも収容することのできる構成部分に型押しエレメントを案内するために使用される。したがって、型押しエレメントの運動は、スタンプを位置固定するフレームに直接に対応され、いわば、構造体スタンプを収容し、かつ制御装置によって構造体スタンプを制御するための、型押しエレメントを駆動する装置とは分離されている。スタンプの長手方向張設も少なくとも1つの張設条片によって、両長辺側のうちのいずれか一方の長辺側において、有利には両張設側において行われるような、相応する実施態様では、長辺側の張設側は、機能的には案内条片と同一となる。
【0014】
スタンプが、型押しエレメントによって、フレーム、特に前記案内条片により規定された表面平面を越えて伸長可能となるように構造体スタンプがフレキシブルに形成されている場合には、型押し加工したい型押し面に対する構造体スタンプの向き調整が容易にされ、特に一層容易に自動化可能となる。
【0015】
本発明の別の改良形では、スタンプが、支持体と、該支持体上にモールドまたはホットスタンプされた、特にエラストマのスタンプとから形成されている。これにより、構造体スタンプの製作が一層好都合となる。
【0016】
構造体スタンプが、前記フレームを、構造体スタンプの、スタンプ面とは反対の側で収容する保持フレームを有することにより、自動化、特に構造体スタンプの交換が、一層容易にされる。なぜならば、本発明における装置と構造体スタンプもしくは構造体スタンプのフレームとの間のインタフェースが提供されるからである。前記保持フレームは、特にフレームに沿って案内された型押しエレメントと相まって、独立した発明とみなされ得る。
【0017】
この場合、本発明および/または保持フレームの改良形では、型押しエレメントを保持フレームとフレームとの間で、特に互いに反対の側に位置する張設側に対して平行に、型押しエレメントがスタンプフィルムに沿って案内可能となり、かつこのスタンプフィルムが型押し力で負荷するように形成されるように案内することが考えられる。
【0018】
さらに、独立した発明として、型押し面に型押しパターンを型押し加工する装置であって、以下の特徴:
− スタンプ、特に前で説明したスタンプを収容しかつ運動させるスタンプ収容部と、
− 前記スタンプに対向して型押し材料を収容しかつ配置する型押し材料収容部と、
− 型押しエレメント、特に前で説明したように形成された型押しエレメントを前記スタンプに沿って運動させる型押しエレメント駆動装置と、
を備えていることを特徴とする、型押しパターンを型押し加工する装置が提供される。
【0019】
本発明による装置では、前で説明した本発明による方法を制御し、かつ装置の構成部分および/または構造体スタンプ、特に保持フレーム、フレームまたは型押しエレメントの前で説明した運動を実施するための制御装置も、個々にまたは一緒に開示される。これにより、前記運動を実施するための相応する駆動装置およびガイドエレメントは同じく前記装置に対応配置される。駆動装置は、特にx方向および/またはy方向および/またはz方向における保持フレームの、前記制御装置により制御された並進的な運動を可能にする。有利には、x軸および/またはy軸および/またはz軸周りの回転も可能である。駆動装置は有利には、型押し材料に対して相対的な保持フレームの前位置決め、ひいては構造体スタンプおよびスタンプの前位置決めを可能にする。
【0020】
さらに、独立した発明として、型押し材料の型押し面に型押しパターンを型押し加工する方法であって、以下のステップ、特に以下のシーケンス:
− 型押し材料に対向して構造体スタンプ、特に上で説明した構造体スタンプのスタンプのスタンプ面を配置するステップと、
− 前記構造体スタンプに沿ってスタンプを介して型押しエレメントを運動させ、かつこのときに型押し材料をスタンプ面で負荷もしくは加圧することにより型押し材料を型押し加工するステップと、
を備えることを特徴とする、型押しパターンを型押し加工する方法が提供される。
【0021】
この場合、本発明によれば、スタンプがフレキシブルに形成され、型押しエレメントによる型押し加工時に、前記フレーム、特に前記案内条片によって規定された表面平面を越えて伸長させられると有利である。フレキシブル性は、フレームと張設条片との間に場合によっては設けられるばねにより高められる。有利な実施態様は、ばねシステムを備えた実施態様であるが、しかしスタンプのフレキシブル性が十分であれば、ばねシステムを不要にすることができる。
【0022】
さらに本発明によれば、前記フレームを、そのスタンプ面とは反対の側で保持フレームにより収容することが有利である。
【0023】
この場合、本発明による方法の有利な実施態様では、型押しエレメントが、保持フレームとフレームとの間で、特に互いに反対の側の張設側に対して平行に、スタンプに沿って案内され、かつ該スタンプが型押し力によって加圧される。
【0024】
本発明による装置が、相応して大きく構成される場合には、型押し力も相応して大きく形成されなければならない。本発明を実施するための以下の例示的な値範囲が開示される。加圧する型押し力は、0N〜1000N、有利には0N〜100N、特に有利には0N〜50N、さらに特に有利には0N〜10Nの値範囲にある。
【0025】
本発明による装置および/または構造体スタンプの、開示された特徴は、方法の特徴としても開示されているとみなされ、またその逆も言える。
【0026】
本発明のさらに別の利点、特徴および詳細は、以下に図面付き説明する有利な実施形態から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態を示す概略的な横断面図、つまり基板に被着された型押し材料に対する本発明による構造体スタンプの位置調整の、本発明における第1の方法ステップを示す概略的な横断面図である。
【
図2】型押し加工したい型押し材料に構造体スタンプを近付ける、本発明における第2の方法ステップを示す概略的な横断面図である。
【
図3】構造体スタンプを型押しエレメントによって加圧する、本発明における第3の方法ステップ(型押し開始)を示す概略的な横断面図である。
【
図4】
図3に示した方法ステップを、型押し加工の終了時の状態で示す概略的な横断面図である。
【
図5】本発明による方法の第2実施形態を示す概略的な横断面図である。
【
図6】本発明による構造体スタンプの概略的な斜視図である。
【
図7】本発明による構造体スタンプをA−A線に沿って断面して拡大して示す斜視図である。
【
図8】組み込まれた型押しエレメントおよび案内条片を備えた、保持フレーム内の本発明による構造体スタンプを示す概略的な斜視図である。
【0028】
図面には、本発明の利点および特徴が、本発明の実施形態により、これらをそれぞれ識別する符号を用いて特徴付けられている。この場合、同一の機能または同一作用の機能を有する構成部分もしくは特徴は、同じ符号で示されている。
【0029】
図1〜
図5において本発明の特徴は、個々の特徴の機能を分かり易く示すために、縮尺通りには図示されていない。個々の構成部分のサイズ比も、部分的に実際のサイズ比通りではなく、このことは特に、著しく拡大して描かれたナノ構造体2eに帰因し得る。本発明により型押し加工されるか、もしくは対応するナノ構造体をワークに型押し加工するために使用されるナノ構造体2eは、ナノ領域および/またはマイクロ領域内にあり、それに対して機械構成部分のサイズオーダはセンチメートル領域内にある。
【0030】
型押しパターン2の個々のナノ構造体2eの寸法は、マイクロメートル領域および/またはナノメートル領域内にあることが好ましい。個々のナノ構造体2eの寸法は、1000μmよりも小さく、有利には10μmよりも小さく、特に有利には100nmよりも小さく、さらに特に有利には10nmよりも小さく、最も有利には1nmよりも小さい。
【0031】
図1〜
図4および
図6に示した第1実施形態では、構造体スタンプ5が示されている。この構造体スタンプ5は、フレーム3と、このフレーム3内に張設されたスタンプ1とから成っている。
【0032】
スタンプ1は、スタンプ1の支持側2oから突出した複数のナノ構造体2e(隆起部)を備えたマイクロパターン化もしくはナノパターン化されたスタンプ面2を有する。
【0033】
スタンプ面2とは反対の側に位置する加圧側2uは、平坦に形成されており、これによって加圧側2uにおけるスタンプ1のできるだけ均一な加圧が可能となる。
【0034】
加圧のためには、型押しエレメント8が用いられる。型押しエレメント8は本実施形態では、型押しローラとして形成されており、この型押しローラは、基板7に被着された型押し材料6(
図1参照)に対して構造体スタンプ5を位置調整し、かつ引き続き構造体スタンプ5を型押し材料6の型押し面6oに近付けた後に、加圧側2uへ降下される。
【0035】
フレーム3は、互いに向かい合って位置する2つの張設側10,10´に、少なくとも一対の互いに向かい合って位置する張設条片4,4´を有している。この張設条片4,4´内にスタンプ1が張設されている。張設条片4,4´は剛性的に、またはばねシステム13(
図6および
図7参照)を介して、フレーム3に取り付けられ得る。前記張設条片4,4´のうちの少なくともいずれか一方の張設条片とフレーム3との間の連結部としてばねシステム13を使用することは、型押しエレメント8によって加圧される際のスタンプ1のフレキシブル性を高めるために役立つ。
【0036】
ばねシステム13は、少なくとも2個の、有利には5個よりも多い、さらに有利には10個よりも多い、特に有利には20個よりも多いばね12から成っている。
【0037】
両張設側10,10´は、互いに向かい合って位置して互いに平行に延びる2つの案内条片9,9´により結合される。この場合、案内条片9,9´は特にスタンプ1のフィルムには接触しない。スタンプ1のフィルムは、両案内条片9,9´の内側でかつ両案内条片9,9´の間に延びていると有利である。
【0038】
型押しエレメント8による加圧側2uの加圧は、特にナノ構造体2eと型押し材料6との接触と同時に、もしくは型押し材料6内へのナノ構造体2eの侵入と同時に、行われる(
図3参照)。この場合、型押し材料6への構造体スタンプ5の接近は、
図2に示したように平行に(場合によってはスタンプ1または構造体スタンプ5の「ウエッジエラー」と呼ばれる最小の平行ずれ下に)行われる。ナノ構造体2eは、特に低い粘度の材料から成る型押し材料6内に侵入し、そして構造体スタンプ5が型押し材料6に近付けられる間、特にスタンプ1と型押し材料6との平行出し下に、型押しエレメント8によって加圧側2uに型押し力が伝達される。このときにスタンプ1は型押し材料6の方向で、フレーム3により規定された表面平面E、特に案内条片9,9´によって規定された表面平面Eを越えて変形する。
【0039】
また、まず両張設条片4,4´のいずれか一方において、型押し材料6の表面に対して本発明による構造体スタンプ5を平行に対して軽度に角度付けされた状態で近付けることも考えられる。これにより、ナノ構造体2eの侵入は順次に行われる。
【0040】
型押しエレメント8は、特に主として型押しエレメント8の型押し力に基づいて、型押し材料6に対してスタンプ1を近付けながら(かつ場合によってはスタンプ1の平行出し下に)、第1の張設側10から、反対の側に配置された第2の張設側10´に向かって、型押し材料6の表面に対して平行に運動させられる。
【0041】
図4に示した位置への到達後に、スタンプ面2は型押し材料6内に完全に押し込まれていて、この型押し材料6内で相応して型取りされている。
【0042】
引き続き、型押し材料6の硬化が行われる。型押し材料6の硬化後に、構造体スタンプ5を持ち上げることができる。硬化は、あらゆる公知の方法により表側または裏側から行なわれ、たとえばUV放射線、化学薬品または熱により、あるいはこれらの手段の組合せにより行なわれ得る。
【0043】
上で説明した手段に対して択一的に、規定された分離間隔を置いて型押し加工を行い、かつ反対の側から照射を行うと、相応する型押しエレメント力(および場合によっては張設ばね調節)によって、型押しエレメント8との接触および照射の後に直接的な分離を行うことができる。
【0044】
型押しエレメント8として型押しローラを使用することは、転動運動および型押し力による加圧の利点をもたらし、これにより、スタンプ1における剪断力が最小限に抑えられる。さらに、スタンプ1と型押し材料6との相互の垂直運動によりスタンププロセスを実施しようとする場合に必ず必要となる、複雑なウエッジエラー補償(平行出し)を十分に不要にすることができる。
【0045】
図5に示した別の実施形態では、型押しエレメント8による加圧が、反対の側から、つまり型押し材料6´の裏側6u´から、行われる。この場合、特にフレーム3の保持装置によって、この場合にも相応する反動力が作用する。型押し材料6´はこの場合には、圧力伝達のためにそれ自体適しているか、または
図1〜
図4に示した実施形態の場合のように、場合によっては基板7によって支持される。図示の型押し材料6´は、たとえば固形の、ただし型押し加工可能なフィルムであってよい。
【0046】
型押しエレメント8は、特に線状の1つのノズルまたは1つの線に沿って配置された複数の点状のノズルからのガス流によって、無接触式の力伝達が行われるように形成されていてもよい。
【0047】
図7から判るように、張設条片4,4´におけるスタンプ1の位置固定は、2つの扁平プロファイル(扁平成形材)14,15の間にスタンプ1を締付け固定することにより行われる。締付け固定のために必要となる締付け力は、位置固定手段16(この場合、ねじ)によって形成される。
【符号の説明】
【0048】
1 スタンプ
2 スタンプ面
2e ナノ構造体
2o 型押し側
2u 加圧側
3 フレーム
4,4´ 張設条片
5 構造体スタンプ
6,6´ 型押し材料
6o 型押し面
6u 裏側
7 基板
8 型押しエレメント
9,9´ 案内条片
10,10´ 張設側
11 保持フレーム
12 ばね
13 ばねシステム
14 扁平プロファイル
15 扁平プロファイル
16 位置固定手段
E 表面平面