(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記照射部は、前記薄切片試料と、前記スライドガラスとの間に水分が存在する状態で、前記薄切片試料の表面に青色光を照射する、請求項1に記載の薄切片試料評価装置。
前記薄切片試料評価装置によって、前記薄切片の表面状態に不具合を検出した場合に、前記カッター部の前記カッターを交換する、請求項6に記載の薄切片試料作製装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の態様に係る薄切片試料評価装置は、試料が包埋剤中に包埋された試料ブロックをカッターにより薄切りし、スライドガラスの上に載置した薄切片試料の表面状態を評価する薄切片試料評価装置であって、
前記スライドガラスの上に載置した前記薄切片試料の表面に青色光を照射する照射部と、
前記照射部から照射した光の前記薄切片試料の表面による拡散反射光を受光して、受光した光のうち異なる2色以上の光についての画像データを得る撮像部と、
前記撮像部で得られた前記2色以上の光についての前記画像データに基づいて、前記薄切片試料の表面状態を検出する表面状態検出部と、
少なくとも、前記撮像部と、前記表面状態検出部と、を制御し、前記表面状態検出部で検出した前記薄切片試料の表面状態について評価する制御部と、
を備える。
【0011】
第2の態様に係る薄切片試料評価装置は、上記第1の態様において、前記照射部は、前記薄切片試料と、前記スライドガラスとの間に水分が存在する状態で、前記薄切片試料の表面に青色光を照射してもよい。
【0012】
第3の態様に係る薄切片試料評価装置は、上記第1又は第2の態様において、前記撮像部は、前記薄切片試料の鉛直上方に配置され、
前記照射部は、前記撮像部を挟んで左右に配置されていてもよい。
【0013】
第4の態様に係る薄切片試料評価装置は、上記第3の態様において、前記照射部は、直線照明であってもよい。
【0014】
第5の態様に係る薄切片試料評価装置は、上記第3の態様において、前記照射部は、前記撮像部を囲むように配置された環状照射部であってもよい。
【0015】
本発明の第6の態様に係る薄切片試料作製装置は、試料が包埋剤中に包埋された試料ブロックをカッターにより薄切りして薄切片試料を作製する薄切片試料作製装置であって、
前記試料ブロックを搬送する試料ブロック搬送部と、
前記試料ブロックの表面をカッターによって薄切りして薄切片試料を得るカッター部と、
前記薄切片試料を、スライドガラスの上に載置する載置部と、
上記第1から第5のいずれかの態様の前記薄切片試料評価装置と、
少なくとも、前記試料ブロック搬送部と、前記載置部と、前記薄切片試料評価装置と、を制御する制御部と、
を備える。
【0016】
第7の態様に係る薄切片試料作製装置は、上記第6の態様において、前記薄切片試料評価装置によって、前記薄切片試料の表面状態に不具合を検出した場合に、前記カッター部の前記カッターを交換してもよい。
【0017】
第8の態様に係る薄切片試料作製装置は、上記第6の態様において、前記薄切片試料評価装置によって、前記薄切片試料の表面状態に不具合を検出した場合に、薄切片試料の作製を停止してもよい。
【0018】
本発明の第9の態様に係る薄切片試料評価方法は、試料が包埋剤中に包埋された試料ブロックをカッターにより薄切りし、スライドガラスの上に載置した薄切片試料の表面状態を評価する薄切片試料評価方法であって、
前記スライドガラスの上に載置した前記薄切片試料の表面に青色光を照射する照射ステップと、
前記照射部から照射した光の前記薄切片試料の表面による拡散反射光を受光して、受光した光のうち異なる2色以上の光についての画像データを得る撮像ステップと、
前記撮像部で得られた前記2色以上の光についての前記画像データに基づいて、前記薄切片試料の表面状態を検出する表面状態検出ステップと、
前記検出した前記薄切片試料の表面状態について評価する評価ステップと、
を含む。
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る薄切片試料評価装置、薄切片試料作製装置及び薄切片試料評価方法について、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0020】
(実施の形態1)
<薄切片試料作製装置>
図1は、本発明の実施の形態1に係る薄切片試料作製装置100の全体的な構成を示す概略図である。この薄切片試料作製装置100は、試料ブロック1を搬送する搬送部20と、試料ブロック1の表面を薄切りして薄切片試料を得るカッター部30と、薄切片試料を、スライドガラスの上に載置する載置部60と、薄切片試料評価装置10と、制御部90と、を少なくとも備えていればよい。制御部90は、試料ブロック搬送部20と、カッター部30と、載置部60と、薄切片試料評価装置10と、を制御する。なお、制御部90は、薄切片試料評価装置10の制御部を兼ねてもよい。
【0021】
この薄切片試料作製装置100は、さらに、試料ブロック保管部40と、位置調整部50と、伸展部70と、スライドガラス搬送部80と、を備えていてもよい。
以下に薄切片試料作製装置100を構成する各構成部材について説明する。
【0022】
<試料ブロック>
試料ブロック1は、例えば、生体試料11等をパラフィン等の包埋剤12の中に包埋(埋め込み)したものである。この試料ブロック1は、試料台(図示せず)の上に載せて使用される。この試料ブロック1は、表面が乾燥した状態で切断されると、試料断面が毛羽立つ等、良好な切片が得にくくなる。また、試料ブロック1は、温度の微妙な変化によって膨張及び収縮が発生しやすく、薄切り処理時に薄切片試料の厚さにムラが生じやすいという問題点を有する。このため、一定温度(例えば10℃〜25℃)及び一定湿度を維持するように、図示しない冷却機及び加湿器を備えている。なお、上記温度及び湿度の設定は、試料ブロック1として使用する試料11及び包埋剤12の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0023】
<試料ブロック保管部>
試料ブロック保管部40では、複数の試料ブロック1を取り出し可能な状態で保管する。
<位置調整部>
位置調整部50では、試料ブロック1の表面の傾斜及び高さ調整を行う。
【0024】
<カッター部>
カッター部30では、カッター31と試料ブロック1とを相対移動させることによって試料ブロックの表層部分を薄切りして薄切片試料32を得る。この場合に、例えば、試料ブロック1は、搬送部20によって搬送方向に沿って移動させ、カッター31は、搬送方向と垂直方向に移動させてもよい。カッター31を固定するのではなく移動させることによって、試料ブロック1と接する刃の部分をずらすことができ、薄切りの際に発生するパラフィンくずがとれやすくなる。
【0025】
また、カッター部30では、試料ブロック1の面出しのための粗削りと、薄切片試料を作製する本削りと、を行う。
粗削りの場合には、所定厚さまで試料ブロック1の表層部分を削って面出しを行う。
一方、本削りの場合には、試料ブロック1の表面をカッター31によって薄切りして薄切片試料32を作製する。作製した薄切片試料32は、供給リール33から供給されるキャリアテープ34の上に付着される。この場合に、加湿を行うことによって薄切片試料32をキャリアテープ34上に良好に付着することができる。なお、カッター部30にも高さ調整機構を設けても良い。
【0026】
<キャリアテープ>
なお、キャリアテープ34は、供給テープ33から、ガイドローラ35、36、37、38を経て、巻取リール39に巻き取られる。
【0027】
<試料ブロック搬送部>
試料ブロック搬送部20は、少なくとも試料ブロック1をカッター部30に搬送するものであればよい。
【0028】
<載置部>
載置部60は、少なくとも薄切片試料32をスライドガラス63の上面に載置するものであればよい。例えば、転写方式を用いた場合の載置部60は、キャリアテープ34の走行経路の上流側に配置された一対のガイドローラ61と、走行経路の下流側に配置された一対のガイドローラ62とを備えている。載置部60では、例えば、一対のガイドローラ61の間と一対のガイドローラ62の間で薄切片試料32が貼り付いているキャリアテープ21の一部分を挟み、その状態で一対のガイドローラ62又は一対のガイドローラ61を下方に移動させることで、キャリアテープ21を下方に撓ませる。これによって、上面に接着液(水分を含む)64を供給されたスライドガラス63の上面に薄切片試料32を接触させて、スライドガラス63の上面に薄切片試料32を転写する。なお、薄切片試料32を載置されたスライドガラス63を、薄切片試料付きスライドガラスという。なお、薄切片試料32をスライドガラス63の上面に載置する方法としては前記転写による方法が最も好ましいが、その他の例としては、液槽内の液体に浮かべた薄切片試料を、スライドガラスで掬い上げるようにしてもよい。
【0029】
<伸展部>
伸展部70は、加温板(図示せず)を備え、スライドガラス搬送部80により加温板(図示せず)上に載置された薄切片試料付きスライドガラス63に、上記加温板により、第1の加温(例えば40℃〜60℃程度、数秒〜数十秒)を行って薄切片試料32の皺の伸展を行うとともに薄切片試料32のスライドガラス63への貼付力を強くする。その後、さらに第2の加温(例えば40℃程度、数時間)を行って薄切片試料付きスライドガラス63上の水分を完全に蒸発させて、薄切片試料32をスライドガラス63に密着固定する。
【0030】
なお、上述のように、この薄切片試料作製装置100では、上記薄切片試料評価装置10、カッター部30、試料ブロック搬送部、載置部60を必須の構成部材として含むが、これらの構成部材以外に、試料ブロック保管部40と、位置調整部50と、伸展部70と、スライドガラス搬送部80と、を備えていてもよい。
【0031】
<薄切片試料評価装置>
図2は、本発明の実施の形態1に係る薄切片試料評価装置10の構成を示す概略図である。この薄切片試料評価装置10は、照射部3a、3bと、撮像部4と、表面状態検出部6と、制御部8と、を備える。照射部3a、3bは、スライドガラス63の上に載置した薄切片試料32の表面に青色光を照射する。撮像部4は、照射部3a、3bから照射した光の薄切片試料32の表面による拡散反射光を受光して、異なる2色以上の光についての画像データを得る。表面状態検出部6は、撮像部4で得られた2色以上の光についての画像データに基づいて、スライドガラスの上に載置した薄切片試料32の表面状態を検出する。制御部8は、照射部3a、3bと、撮像部4と、表面状態検出部6と、を制御し、表面状態検出部6で得られた薄切片試料32の表面状態について、刃キズ、穴、かすれ、載置不良等の不具合の有無を評価する。
【0032】
なお、薄切片試料32の評価にあたって、
図1に示すように、薄切片試料32をスライドガラス63の上に載置する際にあらかじめスライドガラス63の上面に水分64を供給しておき、その上に薄切片試料32を載置してもよい。
【0033】
このように薄切片試料32とスライドガラス63の間に水分を供給することによって、薄切片試料32を濡れた状態とすることで、試料(生体組織)11自体の模様を見えにくくでき、刃キズ、穴、かすれ、載置不良等の観察がしやすくなる。
上記薄切片試料32とスライドガラス63の間に存在する水分の効果について以下に説明する。まず、薄切片試料32には、試料(生体組織)11とパラフィン等の包埋剤12が含まれている。一方、薄切片試料32の表面に現れる刃キズ、穴、かすれ、載置不良等は、試料(生体組織)11自体の模様と類似する。そのため、試料(生体組織)11を乾燥した状態においた場合、試料(生体組織)11自体の模様が表面に浮き出てしまい、表面の刃キズ、穴、かすれ、載置不良等がまぎれてしまい観察できなくなるおそれがある。これに対して、薄切片試料32とスライドガラス63の間に水分が存在していると、試料(生体組織)11とパラフィンとの輝度差がつきにくくなる。このように試料(生体組織)11とパラフィンとの輝度差があまりないことは、試料(生体組織)11自体の観察を行う場合には不利となるが、ここでは表面状態を検出、評価することが目的であるので上記輝度差がないことは特に問題とならない。その一方、薄切片試料32とスライドガラス63の間に水分が存在することによって、試料(生体組織)11自体の模様を見えにくくできるため、表面の刃キズ、穴、かすれ、載置不良等の観察がしやすくなる。
【0034】
この薄切片試料評価装置10では、撮像部4で得られた異なる2色以上の光についての画像データに基づいて、薄切片試料32の表面状態を検出し、得られた薄切片試料32の表面状態について、刃キズ、穴、かすれ、載置不良等の不具合の有無を評価することができる。
【0035】
図3は、スライドガラス63の上に載置した薄切片試料32の画像の一例の平面図である。この画像では、
図3で矢印で示すカッター31の移動方向(紙面の上から下の方向)に対して角度βで傾斜して生じている一連のキズがあることがわかる。この角度βは、例えば、画像処理のハフ(Hough)変換等の直線抽出を行うことによって検出できる。この角度βで傾斜している一連のキズが刃キズであるかについて検討する。刃キズとは、損傷したカッターによって試料を薄切りする際に、薄切片試料32の表面に付けられるものである。なお、
図3の場合、試料ブロック1の搬送方向は、紙面の左から右の方向である。上記のようにカッター部30において、試料ブロック1の搬送方向と、カッター31の移動方向とが互いに直交している場合、刃キズはカッターの移動方向について角度αで傾斜して生じる。この角度αは、カッター31の移動速度と試料ブロック1の搬送速度とを互いに直交する2つの成分とする直角三角形において、試料ブロック1の搬送速度の成分を底辺とした場合の頂角αに対応する。そこで、上記一連のキズのカッター31の移動方向に対する角度βについて、刃キズの場合のカッター31の移動方向に対する角度αと対比し、角度βが角度αと実質的に一致する場合には上記一連のキズは刃キズであると考えられる。
【0036】
この薄切片試料作製装置100では、薄切片試料32の表面状態について、刃キズ、穴、かすれ、載置不良等の不具合が存在すると評価された場合には、カッター部30のカッターを交換してもよい。あるいは、薄切片試料32の作製を停止してもよい。
【0037】
この薄切片試料評価装置10を構成する各構成部材について説明する。
【0038】
<照射部>
照射部3(3a、3b)は、試料ブロック1の表面に青色光を照射するものであれば使用できる。青色LED照明を用いてもよいし、白色LED照明や白色の蛍光ランプに青色のカラーフィルターを組み合わせてもよい。なお、青色光のピーク波長は450nm−470nmの範囲にあるのが好ましい。さらに、照射部3としては、直線照明を用いてもよい。あるいは、面照明を用いてもよい。なお、照射部3として直線照明を用いる場合には、左右に直線照明3a、3bを配置してもよい。さらに、撮像部4を囲むように環状照明部(図示せず)としてもよい。環状照明部としては、リング状照明の他、ドーム照明または、直線照明を複数環状に並べて環状照明部を構成してもよい。
なお、上記記載は一例であって照射部3として利用可能な範囲を限定するものではない。
【0039】
<撮像部>
撮像部4は、異なる波長の2色以上の光についての画像データを得ることができるものであれば使用できる。例えば、カラー画像が取得できるカメラであってもよい。また、撮像部4として、エリアカメラを用いても良く、あるいはラインカメラを用いてもよい。
また、撮像部4は、どのように配置してもよいが、照明部3との配置において、薄切片試料の表面からの拡散反射光を受光できるように配置すればよい。例えば、撮像部4は、薄切片試料の鉛直上方に配置してもよい。この場合、照明部3を撮像部4と同軸に配置しない限り薄切片試料の表面からの拡散反射光を受光することができる。なお、上記記載は一例であって撮像部4として利用可能な範囲を限定するものではない。
【0040】
<表面状態検出部及び制御部>
表面状態検出部6は、得られた2色以上の光についての画像データに基づいて、薄切片試料の表面状態を検出する機能を有するものであれば使用できる。例えば、撮像部4から得たカラー画像データを処理し、表面状態を検出してもよい。画像データの処理方法としては、例えば、グレー化、シェーディング補正、エッジ抽出、2値化、ハフ(Hough)変換、等がある。なお、画像処理の方法は、上記の例に限定されない。また、制御部8は、少なくとも、撮像部4と、表面状態検出部6と、を制御し、表面状態検出部6で得られた表面状態に基づいて、表面状態を評価する機能を有するものであれば使用できる。なお、制御部8によって、さらに照射部3を制御してもよい。また、表面状態検出部6及び制御部8としては、例えば、パーソナルコンピュータを使用できる。パーソナルコンピュータとしては、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD(記憶部)、タッチパネル等の入力部、表示部等の必要な部材を備えていればよい。
なお、表面状態検出部6及び制御部8は、機能的に区別するため便宜的に2つに分けているが、物理的な構成として一体として機能するものであってもよい。例えば、CPU上で動作する制御部のプログラムが、上記画像処理のプログラムを呼び出すことで表面状態検出部を制御してもよい。また、撮像部4に内蔵されたCPUで上記画像処理を行ってもよい。その場合、撮像部4と表面状態検出部6は物理的な構成として一体となる。
【0041】
<薄切片試料の表面状態の評価方法>
図4は、実施の形態1に係る薄切片試料作製方法における、薄切片試料の評価方法のフローチャートである。この薄切片試料作製方法における、薄切片試料評価方法について、
図4を用いて以下に説明する。
(a)スライドガラス63の上に載置した薄切片試料32に青色光を照射し、薄切片試料32の表面による拡散反射光を受光して、受光した光のうち異なる2色以上の光についての画像データを得る(S01)。ここで得られる画像データは、カラー画像データであってもよい。また、青色光を照射するのは、刃キズや穴といった不具合の検出精度を高めるためである。青色光を照射し、その反射光の緑色成分で刃キズおよびシワを、青色成分で穴、かすれ、載置不良を判別することで、それぞれの不具合を高精度に検出できる。なお、拡散反射光を受光するのは、この場合に薄切片試料32の表面が乱反射するため明るく、一方、スライドガラス63の表面は乱反射せず暗くなるため、薄切片試料32からの画像データを得やすいためである。これに対して、正反射光を受光した場合には、薄切片試料32よりもスライドガラス63の輝度が高くなって薄切片試料32が相対的に暗くなり、評価に適した画像データを得にくくなる。
(b)得られた2色以上の光についての画像データに基づいて、薄切片試料の表面状態を検出する(S02)。例えば、得られたカラー画像データのうち緑色成分を使って、ハフ変換処理を用いた直線抽出を行い直線状のキズを検出してもよい。また、得られたカラー画像データのうちの青色成分を使って所定の閾値で2値化処理を行い、黒画素の部分を穴、かすれ、載置不良として検出してもよい。
(c)得られた薄切片試料32の表面状態について、刃キズ、穴、かすれ、載置不良等の不具合を評価する(S03)。例えば、直線状のキズの角度をカッターの引き角と比較して刃キズと判定してもよいし、一定以上の面積の穴、かすれ、載置不良があれば不具合と判定してもよい。
【0042】
この薄切片試料評価方法では、青色光を照射し、得られた2色以上の光についての画像データに基づいて、薄切片試料32の表面状態、具体的には刃キズ、穴、かすれ、載置不良等の不具合を検出、評価できる。そこで、薄切片試料作製にあたって薄切片試料32の表面状態の評価を的確に行うことによって、刃キズ等の発生を検出し、ロスを抑えることができる。
【0043】
なお、上記薄切片試料評価方法は、コンピュータ上で実行することによって、コンピュータによる薄切片試料評価方法を実現するためのコンピュータプログラムとすることもできる。この場合、上記コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えば、CD−R、DVD、BD等の光ディスク、USBメモリ、SDメモリ等の半導体メモリ、磁気ディスク、光磁気ディスク等、磁気テープ等であってもよい。
【0044】
<薄切片試料作製方法>
次に、
図5は、本発明の実施の形態1に係る薄切片試料作製方法の概略を示すフローチャートである。
図5を用いて、薄切片試料32付きスライドガラス63の作製方法の概略を説明する。
(1)薄切処理
試料ブロック1の表層部分をカッター部30のカッター31によって薄切りして薄切片試料32を得る(S11)。
(2)載置処理
薄切片試料32をスライドガラス63の上に載置する(S12)。
(3)評価処理
スライドガラス63の上に載置した薄切片試料32の表面状態を評価する(S13)。具体的には、表面状態が良好か否か判断する。この場合、薄切片試料32の表面状態について、刃キズ、穴、かすれ、載置不良等の不具合の有無を評価する。
不具合があった場合(NO)には、ステップS14に移行する。不具合がなかった場合には、そのままステップS15に移行する。
(4)カッターの交換
表面状態がよくない場合、つまり、刃キズ、穴、かすれ、載置不良等の不具合が見つかった場合にはカッター31の交換を行う(S14)。
(5)薄切回数のカウント
規定の薄切回数に達したか判断する(S15)。規定の薄切回数に達した場合には薄切片試料の作製を終了する(エンド)。一方、規定の薄切回数に達していない場合には、最初の薄切処理(S11)に戻る。
以上によって、薄切片試料32の作製を行うことができる。
【0045】
<薄切片試料32付きスライドガラス63の作製方法>
図6は、本発明の実施の形態1に係る薄切片試料32付きスライドガラス63の作製方法の詳細を示すフローチャートである。
図6を用いて、薄切片試料32付きスライドガラス63の作製方法の詳細について、以下に説明する。
(a)まず、試料保管部40から一つの試料ブロック1を試料ブロック搬送部20により取り出し、位置調整部50に搬送する(S21)。
(b)位置調整部50において、試料ブロック1の表面の傾斜及び高さ調整を行う(S22)。
(c)次いで、試料ブロック1を、試料ブロック搬送部20によって、位置調整部50からカッター部30に搬送する(S23)。
(d)カッター部30では、試料ブロック搬送部20とカッター31との相対移動によって、試料ブロック1の表層部分をカッター31によって薄切する(S24)。これによって、一枚の薄切片試料32が作製され、薄切片試料32がキャリアテープ34に貼り付けられる。
(e)キャリアテープ34に貼り付けられた薄切片試料32を、キャリアテープ34の移動と共に、載置部60に移動させる(S25)。
(f)一方、試料ブロック1の移動及び薄切片試料32の移動の間に、スライドガラス搬送部80によって、薄切片試料32を貼り付ける1つのスライドガラス63を載置部60に搬送して、上面に接着液23(水分を含む)を供給した後、キャリアテープ34上に貼り付けられた薄切片試料32とスライドガラス63とを対向状態とする(S26)。
(g)載置部60では、薄切片試料32が貼り付けられたキャリアテープ34の一部分を下方に撓ませて、薄切片試料32をスライドガラス63の上面の接着液64に押し当てて、薄切片試料32をキャリアテープ34の一部分からスライドガラス63の上面に転写する(S27)。
(h)薄切片試料評価装置10によって、スライドガラス63の上に載置された薄切片試料32の表面状態を検出、評価する(S28)。この薄切片試料評価方法については、上述の通りであるため説明を省略する。
(i)薄切片試料32が載置された薄切片試料付きスライドガラス63をスライドガラス搬送部80により、載置部60から伸展部70へ搬送する(S29)。
【0046】
(k)伸展部70では、搬送された薄切片試料付きスライドガラス63に対して、第1の加温(例えば40℃〜60℃程度、数秒〜数十秒)を行って、薄切片試料32の皺の伸展を行うとともに薄切片試料32のスライドガラス63への貼付力を強化する。その後、さらに第2の加温(例えば40℃程度、数時間)を行って、水分を完全に蒸発させて薄切片試料32をスライドガラス22に密着固定させる(S30)。
これにより、一枚の薄切片試料32付きスライドガラス63の作製が完了する。
以下、上記と同様にして試料ブロック搬送部20により試料ブロック1を搬送して、上記薄切り動作を、任意の回数、自動的且つ連続的に繰り返すことによって、任意の枚数の薄切片試料32を作製できる。
【0047】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。